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Japanese Pages [192] Year 2011
日本人の
わかる 日本語
森田六朗著
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アスク出版
日本語を学ぶ方たちへ
日本列島は周りを海に囲まれています。 そのため中国のように長期にわたって異民族に支配さ
れる歴史も、 アメリカのようにさまざまな外来の民族が新しい国家をつくるというような経験も
なく、 日本は長い間、外部の人々と交流する機会が少ないまま近代を迎えました。 日本語や日本
文化の中に、外国の人たちから見ると、なかなか理解しにくい事柄が見られるのはそのためだと 思われます。
た と え ば 、 「日 本 人 は 礼 儀 正 し い 」 と よ く 言 わ れ ま す が 、 本 当 に そ う な の で し ょ う か 。 も し そ
う だ と し て 、 そ れ は な ぜ な の で し ょ う か 。 ま た 、 「日 本 人 は 、 自 分 の 本 当 の 考 え や 意 見 を な か な
か言わない」などと言われますが、それはどうしてなのでしょうか。
こ の 本 は 、 「人 目 」 や 「人 並 み 」、 「控 え め 」 や 「け じ め 」 な ど 、 簡 単 な よ う で 、 実 は い ろ い ろ
な意味を持って使われていて、外国人にわかりにくい言葉を取り上げ、 その意味や使い方をくわ
しく見ながら、その背景にある日本人の感じ方や考え方について考えてみようとしたものです。
日本人は、どのように思ってこう言うのか、またこう言ったときはどのように感じているのか、 ということを、 できるだけわかりやすく書いたつもりです。
3
韓国語の訳がつけてありますので、それを参考にして、読み進んでく
心 理 学 な ど の 専 門 家 の 見 方 な ど 、 興味
どこからでもかまいません。 この本で取り上げた日本語を、 ひとつひとつ研究していって、 日
本人がお辞儀をするとき、遠慮するとき、笑ったとき、怒 ったとき、どのように感じてその言葉
を使っているのかがわかるようになったら、あなたの日本語はそうとう進歩していることでしょ う。 この本があなたの日本語の学習に役立てば幸いです。
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ま た 「い さ ぎ よ い 」 「品 」 「義 理 」 な ど 、 日 本 人 が 昔 か ら 価 値 あ る も の 、 美 し い も の と 考 え 、 毎
中国語
日 の 生 活 の 中 で 大 切 に し て き た 事 柄 、 考 え 方 な ど に つ い て も で き る だ け 取 り 上 げ ま し た 。 難しい 単語には、英 語 ださい。
哲 学
」 を読んでみてください。 その中で、 その言葉
社会学
•
さ ら に く わ し く 知 り た い 人 は 、 「も っ と 深 く と関係のあるいろいろな知識や、民 族 学
•
•
深い話題を取り上げています。文章は少し難しくなっていますが、挑戦してみてください。
•
!
•
日本語を教える方たちへ
refrain 「
f r o〜m 」 で す 、 と 言 っ
中 国 語 の 「客 気 」 と 同 じ で す よ 、 と 言 っ て 説 明 し た こ と に な る の だ ろ う か
その先生がたまたま英語の単語を知っていて、 こ れ は
日 本 語 の 授 業 の 中 で 、 た と え ば 「遠 慮 す る 」 と い う 言 葉 が 出 て き た と す る 。 そ れ を ど う 説 明 す るか てすむだろうか
して、 それで学生たちは理解するだろうか
あ る い は 日 本 語 で 「相 手 の こ と を 考 え る こ と 、 そ し て 何 か を し な い こ と 」 で す よ 、 と 説 明 し た と
?
とはできないものか、と少しずつではあるが、 メモを取り始めた。 そのうちに、平素なにげなく
一人の日本人として、 その言葉のイ メ ー ジ や 背 景 に あ る 日 本 人 の 感 性 な ど を 、 なんとか伝えるこ
それらの言葉の全体像をとっさに過不足なく説明することなど、とてもできない相談なのだが、
うな言葉に出会うたびに、 いつも歯がゆい思いをしてきた。
慮 」 を は じ め と し て 、 「照 れ る 」、 「い さ ぎ よ い 」、 「品 」 な ど 、 な か な か 一 言 で は 説 明 で き な い よ
学 生 の 日 本 語 の レ ベ ル に よ っ て 、 説 明 の 仕 方 が 変 わ っ て く る の は も ち ろ ん だ と し て も 、 こ の 「遠
日 本 語 の 教 師 を し て い る と 、毎 日 が こ う い う 悩 ま し い 自 問 自 答 の 連 続 だ と 言 っ て い い 。 相手の
?
使 っ て い る 簡 単 な 言 葉 の 背 景 に 、 意 外 に 深 い 文 化 の 根 が か く れ て い る の に 気 が つ い た り 、 日本人
5
?
?
が日常生活の中で、何を 考 え 、どんな風に感じて生きてきたのか、ということが少しずつ見えて
き た り し た 。 大 学 院 の 「日 本 文 化 研 究 」 の 授 業 の 中 で 、 日 本 人 の 価 値 観 や 美 意 識 に つ い て 説 明 す
るのに、そのメモの一部を使ったところ、今までにない手応えがあったことから、本書の執筆を 思い立った。
本 書 は 、 日 本 人 の 感 性 に 深 く 関 わ る よ う な 意 味 を 内 包 す る 言 葉 、 そ の 意 味 す る と こ ろ 、 用例な
ど に 注 目 し て 、 日 本 人 の 生 活 感 覚 や 感 性のありようを探ってみたものである。 日本語を学んでい
る外国人や、 日本語を教える先生、さらには外国人とのつきあいの中で日本人の心について語ろ うとする人々にとって、何かしら手がかりになれば幸いである。
本書の出版については、 アスクの河野麻衣子さんの並々ならぬご尽力と社長の天谷修身氏の温
北京にて
かいご支援をいただいた。心から感謝申し上げる。
ニ〇一一年四月吉日
森出六朗
6
目
. . . . . .
. . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . .
H
5
3
日本人の心がわかる日本語
日本語を学ぶ方たちへ
日本語を教える方たちへ
12
28
わ
18
33
そと
内と外
23
36
うち
世間
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
内と外を分ける
しつけ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
次
第 一 章
けじめ
素直
甘、 える
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. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
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-
第 二 章他人の目を意識する
第 三章周囲に配盧する 遠慮 気をつかう 人 並 み :: 空気を読む
第 四 章人間関係を大切にする つきあい 愛 想 ::
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42
47
53
59
60
66
70
75
83
: .
:
84
88
照て恥せ人? 目め れ る
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
102
97
礼餅
109
本音と建前
⑵
おかげさま
124
おさ
129
. . . . . . .
ひょうげん
134
.
第 五 章表 現 を 抑 え る
137
控 え め
142
. . . . . .
ほのめかす
根 性
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
第 六 章精 神 主 義 を 好 む
無理
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
ヵんはる
修 行
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
武 士 道 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 93
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
171166
159
156
152
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
第 七 章日 本 人 の 価 値 観
品
やまとなでしこ
派 手 ・地 味
•
義 理
176
恩
80
. . . . . . . . . . . . . . . . . . .
いさぎよい
:
もったいない
121106
あ い さ つ は と て も 大 切 ::
148
. . . . . . . . . .
コラ ム —— 日 常 の 会 話 か ら
「いってらっしゃい」——
. . . . .
. . . . . . .
相づちを打つ
「 なるほど」——
-
表現をやわらかく
①
「 ちょっと」——
191180
②
まず謝ることが大切
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
③
「 すみません」
参考文献
索引 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
④
. . . . . . 151
内達 と章 外: を 分わ け る
内と外
関風キ ワ—ド
j世 間 け じ め
「内 と 外 」 と い え ば 、 第 一 に 、 自 分 の 「家 庭 」 と そ の 外 側 に あ る 「社 会 」 を 意 味 し ま す 。 「家 」
と い う 漢 字 を 「う ち 」 と 読 む の は 、 そ の こ と を 象 徴 的 に 表 し て い ま す 。
日 本 人 に と っ て 、 一 番 初 め に 出 会 う 「内 」 は 自 分 の 「家 」 で す が 、 そ の 後 成 長 す る に し た が っ
て 、 だ ん だ ん 学 校 や 会 社 な ど 自 分 が 所 属 し て い る 組 織 を 「内 」 と 意 識 す る よ う に な り 、 「う ち の
会 社 」 「う ち の 学 校 」 と 言 う よ う に な り ま す 。 そ し て 、 「内 」 以 外 の 人 や 組 織 を 、 「外 」 と 考 え る の で す 。 「外 」 は ま た 「よ そ 」 と も 言 い ま す 。
」 とねだっ
子 ど も の 頃 は 、 友 だ ち の 家 庭 を う ら や ま し い と 思 う こ と が よ く あ り ま す が 、 「〇 〇 く ん は 新 し
い ゲ ー ム を 買 っ て も ら っ た 」 と い う よ う な 話 を 聞 い て 、 自 分 の 親 に 「ぼ く も 欲 し い
です。
!
決まり文句
ねだる
-
子 ど も 「お 母 さ ん 、 あ の お も ち ゃ 買 っ て よ 。 み ん な 持 っ て る ん だ よ 」
1
組織
所属する
@象徴的に
»
た 繆 魏 は 誰 に で も あ る で し ょ う 。 そ ん な と き の 日 本 の 親 の 「決 ま り 文 句 」 が 例
例
1
12
第一章内と外を分ける
母
親
「よ そ は よ そ 、 う ち は う ち
がまんしなさい
」
先生 、 こんにちは。うちの子どもがいつもお世話になっています。
!
例
そっちの部長は優しくていいなあ。うちの部長なんていつも怒ってばかりで大変だよ。
うちの会社はよその会社と比べて給料がいい。
)
の場で変わります。 (
す る こ と を 、 「う ち う ち で 片 付 け る 」 と 言 い ま す 。 こ れ は 、 「外 」 に は 情 報 を 出 さ な い 、 と い う 意
た と え ば 、 あ る 組 織 で 何 か 事 件 が 起 き た と き に 、 そ れ を 「身 内
内部の関係者 」だけで処理
こ の よ う に 、 「内 と 外 」 と い う の は 、 自 分 が 所 属 す る 集 団 の 枠 組 み の 変 化 に よ っ て 、 そ の 場 そ
例
人 」、 ほ か の プ ロ ジ ェ ク ト チ ー ム の 人 は 「よ そ の チ ー ム の 人 」 と な り ま す 。
に な り ま す 。 そ し て 同 じ 部 署 の 中 で も 、 自 分 と 同 じ プ ロ ジ ェ ク ト チ ー ム の 人 は 「う ち の チ ー ム の
人 」 と 言 い 、 会 社 の 中 で も 同 じ 部 署 の 人 は 「う ち の 部 の 人 」、 ほ か の 部 署 の 人 は 「よ そ の 欝 の 人 」
大 人 に な っ て も 、 自 分 の 家 庭 は も ち ろ ん 「内 」 で す が 、 自 分 と 同 じ 会 社 の 人 も 「う ち の 会 社 の
例
!
3
味です。
13
2 4
部署枠組み処理する
)
もう長いつきあいなんだから、 いつまでもそんなによそよそしい話し方をしないで、
(
は 「よ そ 行 き 」 の 言 葉 で す 。 そ の た め 、 親 し く な っ た の に い つ ま で も 敬 語 を 使 っ て い る と 、 相 手
に と っ て は 、 親 し み を 感 じ な い 態 度 に 見 え て し ま い ま す 。 し か し 、 あ ま り 親 し く な い の に 、 親し そ う に す る の も 「な れ な れ し い 」 と 嫌 が ら れ る か も し れ ま せ ん 。
日 本 人 に と っ て 「内 と 外 」 と い う の は 、 自 分 の 言 葉 づ か い や 態 度 、 行 動 を 決 定 す る 上 で 、 非 常 に重要な基準なのです。
倉文字通りくだけた目上なれなれしい
14
ま た 、 普 段 は 着 な い よ う な き れ い な 服 を 「よ そ 行 き の 服 」 と 言 っ た り 、 親 し い 相 手 な の に 距 離
が あ る よ う な 態 度 を と る こ と を 、 「よ そ よ そ し い 」 と 言 っ た り し ま す 。 ど ち ら の 言 葉 も 文 字 通 り 、
「よ そ 外 」 に 行 く と き の 服 、 「よ そ 外 」 の 人 に 対 し て と る よ う な 態 度 、 と い う 意 味 で す 。
例
)
もっとくだけた話し方をしてよ。
(
敬 語 は 、 目上の人やあまり親しくない人に使う場合は丁寧に聞こえる話し方ですが、基本的に
5
第一-章内と外を分ける
いも っ と 深 く
哲 学 辻 哲 郎 は そ の 著 『 風 土 』 の中で、 妻 が 夫 の こ と を 「 う ち の 人 」 と 呼 び 、 夫が妻のこ かない よ くべつ 2 と を 「家 内 」 と 呼 ぶ 日 本 の 例 を 出 し て 、 「こ の よ う な 『 うち』 と 『 そ と 』 の 区 別 は 、 ヨーロッパ
の 言 語 に は 見 い だ す こ と が で き な い 」 と 言 っ て い る 。 ま た 社 会 人 類 学 者 の 中 根 千 枝 は 、著 書 『 タ
テ 社 会 の 人 間 関 係 』 の中で、 日 本 人 の 「 内 と 外 」 の意識は、 組 織 の 一 体 感 を 強 め る も の だ が 、 そ の反面、 同 じ 組 織 以 外 の 人 を 排 除 す る こ と に も な る と 言 っ て い る 。
へ
日本語には、 「 内 」 や 「外 」 を 使 っ た 表 現 が い ろ い ろ あ る 。
「 内弁慶」
家 庭 の 中 や 会 社 の 中 で は 強 い が 、 そ の 「外 」 に 出 る と 弱 い 人 。 「 弁 置 」 は、 非 常 に
「内 輪 の 事 情 を 外 に 漏 ら す 」 “自 分 の 所 属 し て い る 組 織 の 中 の 事 情 を 、 そ れ 以 外 の 人 に 言 う こ と
g
(
強い力を持っていたといわれる平安時代末期の僧
)
( "
)
僧
排除する
/
「内 祝 い 」 家族や親しい者だけで祝うこと 「 そ づら うち たいど ひょうじょう 「 外面がいい」 「 内 」 の人に対しては態度がよくないのに、 「 外 」 に対してはいい表情をした
)
( " ( "
り、慶しい熊度をとったりすること
15
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社会人類学一体感
見いだす
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