dxとdyの解析学 オイラーに学ぶ[増補版] 453578776X, 9784535787766

672 150 9MB

Japanese Pages 239 Year 2015

Report DMCA / Copyright

DOWNLOAD FILE

dxとdyの解析学 オイラーに学ぶ[増補版]
 453578776X,  9784535787766

Table of contents :
I. いくつかの素朴な疑問......Page 6
1. 初めに......Page 8
2. デデキント......Page 11
3. 変数分離型の微分方程式......Page 13
4. 微分方程式の解......Page 16
5. 積分(1) 定積分......Page 22
6. 積分(2) 微分方程式の積分......Page 28
7. 接線(1) 微分係数と接線......Page 30
8. 接線(2) 微分計算と接線......Page 33
9. ディリクレの関数......Page 39
IL オイラーの世界......Page 44
1. オイラーの三部作......Page 48
2. オイラーの関数......Page 50
3. 代数関数......Page 53
4. 正弦と余弦......Page 54
5. 指数と対数......Page 59
6. 無限小の比......Page 60
7. 指数関数......Page 63
8. 二項定理......Page 66
9. 対数関数......Page 69
10. オイラーの公式......Page 71
III. 微分計算......Page 74
1. 五つの基本公式......Page 76
2. 一個の変化量の代数関数の微分......Page 78
3. —個の変化量の超越関数の微分......Page 82
4. 多くの変化量を含む関数の微分......Page 89
5. 接線と接平面......Page 91
6. 円の面積......Page 93
7. 曲面の表面積(1) 球面積......Page 101
8. 曲面の表面積(2) ヴィヴィアニの穹面......Page 109
9. アルキメデス......Page 115
10. 高階微分......Page 117
11. 平面曲線の曲率......Page 123
12. 級数展開......Page 133
13. 極大と極小(1) ー変数関数......Page 135
14. 極大と極小(2) 多変数関数......Page 144
IV. 積分計算......Page 150
1. 独立変化量......Page 152
2. 微分積分学の基本定理......Page 157
3. ルベーグ積分......Page 161
4. 積分公式......Page 163
5. オイラー積分(1)......Page 164
6. オイラー積分(2)......Page 169
7. オイラー積分(3)......Page 177
8. ベータ関数とガンマ関数......Page 181
9. 円積分......Page 183
V. 微分方程式......Page 186
1. 接線法と逆接線法......Page 188
2. 逆接線法と求積法......Page 190
3. 微分方程式の世界......Page 204
VI. 素朴な疑問への解答......Page 210
あとがき......Page 218
増補版のあとがき......Page 232
索引......Page 234

Citation preview

dxとdyの解析学 [増補版] オイラーに学ぶ

● CONTENTS

I . いくつかの素朴な疑問 1 . 初めしこ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 3

2 .

デデキント・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6

3 . 変数分離型の微分方程式………••………………………… ·8 4 . 微分方程式の解 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 5 . 積分 ( 1 ) 定積分 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 1 7 6 . 積分 ( 2 ) 微分方程式の積分…•………………………… ··23

7 . 接線 ( 1 ) 微 分 係 数 と 接 線 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .… . .・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 2 5 8 . 接線 ( 2 )

9 .

微分計算と接線• ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 2 8

ディ リ ク レの関数 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 3 4

I L オイラーの冊界 1 . オイ

2 .

ラ ーの三部作

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 4 3

オイ ラ ーの関数• ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 4 5

3 . 代数関数 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 8

4 . 正弦と余弦 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 9 5 . 指数と対数 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 5 4

6 . 無限小の比 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5 5 7 . 指数関数 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5 8 8 . 二項定理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 1 9 . 対数関数 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 4 1 0 . オイ

ラ ーの公式・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 6 6

I I I . 微分計算 1 . 五つの基本公式 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 1

2 .

—個の変化量の代数関数の微分•……………•………… ·73

3 . —個の変化量の超越関数の微分………………………… 77

4 .

多くの変化量を含む関数の微分………………•……….. g4

5 . 接線と接平面 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 6 6 . 円の面積 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 8 7 . 曲面の表面積 ( 1 )

球面積……………………•………… "'96

8 . 曲面の表面積 ( 2 ) ヴィヴィアニの弯面…………… 1 0 4

9 . アルキメ デス ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ "'"'110 1 0 . 高階微分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ """112 1 1 .平 面 曲 線 の 曲 率 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .1 1 8 1 2 . 級数展開 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 2 8 1 3 . 極大と極小 ( 1 ) ー変数関数…………………………… 1 3 0 1 4 . 極大と極小 ( 2 ) 多変数関数…………………………… 1 3 9

I V . 積分計算 1 . 独立変化量 ・ ・ ・ ・ ・ ・ , ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 4 7 2 . 微分積分学の基本定理…………………………………… 1 5 2 3 . Jレ ベ ー グ 積 分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・・ 1 5 6

4 . 積分公式 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 5 8 5 . オイラー積分 ( 1 ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ : ・ ・ ・ ・ 1 5 9

6 . オイラー積分 ( 2 ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 6 4 7 . オイラー積分 ( 3 ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 7 2 8 .

ベータ関数とガンマ関数………• ………•• …•• •……• ・ ・ ・1 7 6

9 . 円積分 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 7 8

V . 微分方程式 1 . 接線法と逆接線法…..……• ………...… . .…•• ………….. ・ ・ ・1 8 3 2 . 逆接線法と求積法・・…...…………….......…………..…… ・ 1 8 5 3 .

微分方程式の世界……• … . . . . .……•• •……………………… 1 9 9

V I . 素朴な疑間への解答 素朴な疑問への解答

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 2 0 7

あとがき• ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・" 2 1 3

増 補 版 の あ と が き . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .227 索弓 I ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ "229

I いくつかの素朴な疑問

初めに デデキント 変数分離型の微分方程式 微分方程式の解 積分( 1 )定積分

2 )微分方程式の積分 積分( 接線( 1 )微分係数と接線

2 )微分計算と接線 接線(

ディリクレの関数



初めに

微分積分学は古い歴史をもつ学問で,ニュートンが流率法を発見

6 6 5年と 1 6 6 6年 1) であり,微分計算をテ したと言われているのが 1 ーマとするライプニッツの第 1論文2) と,積分計算を取り扱う第 2 論文3) が出たのは,それぞれ 1 6 8 4年と 1 6 8 6年の出来事である.西 暦が 2000 年に達した今 H の時点から見て,略々 310~330 年前とい

う遠い昔の日の(しかもぼくらにとっては異質の文化圏において発 生した)物語である. 当初は「無限小量」などの基礎概念に概念上の困難があると見ら れていたが,ベルヌイ一族,オイラー,

ラグランジュなど,幾人も

8i ! ! :紀いっぱいかかってめざましい進展を見 の後継者に恵まれて, 1 た .

9i ! ! :紀に入っていわゆる厳密化への欲求が起こり, ところが 1

堅固に設定された士台の上に精密な理論体系の構成がめざされた, というのが近代数学史における通説である.実際,今日ぼくらが普 通に教えられる微積分の実体は,この「厳密化された微積分」の理 路整然とした理論体系なのであり,ニュートンやライプニッツが発 見した微積分の原初の姿でないことはもとより,後述するオイラー の三部作に見られる微積分と忍大きく様相を異にしている.微分積 分学それ自体は一個の有機的なまとまりをもつ学問であろうと思わ れるが,

目を近づけてその地層を観察すれば,

ニュートンとライプニッツが発見した古層 オイラーの三部作に象徴される第二層 近代微積分



3 いくつかの素朴な疑問

という,三つの異質の層がくっきりと見分けられるのである. 歴史の進歩はつねに直線的であるとして,古層はそのまま第二層 へと展開し,第二層を厳密化していけば即座に近代微積分が成立す るというのであれば,事は簡明である.だが,実状はおそらくそう ではないであろう.三つの層は画然と分かたれていて,「進歩」と見 えた事象の真相は実は非常に大がかりな「変容」だったのではある まいか.

もしそうなら,ぼくらの手には,似てはいるが非としなけ

ればならない都合三種類の微積分があることになる. ぼくは微積分の勉強を初めてからこのかた,この大きな疑問を終 始抱き続けてきたが,ニュートンとライプニッツによる「古層」に ついては二,三の解説書を見て遠望するのみで,原典に目を通した ことはない.それゆえ, この「古層」の相貌は依然として推測の域 内にとどまっている.本書ではもっばらオイラーを取り上げて,ぼ くの目に映じたオイラーの解析学の世界を紹介しつつ,「微積分の 第二層」の姿形を明示できるよう,

さまざまに努力を重ねたいと思

よノ

• 昭和 2 8-29年 ( 1 9 5 3 5 4年)ころのことであろう,岡潔先生は奈

良女子大学での講義でコーシーの積分定理を述べる前に「事実の感 知と時代精神の察知」という一節を設け,

I )に立ってはるかに積分の所を遠望してみ さて私達は立脚点 ( ましょう.この当時,知られていたこと以外は何も知らないとし て,問題は,ここから今日コーシーの第一定理の名でよばれてい る定理の存在が感知出来るかということです. それで感知という言葉の意味ですが,これは私達の新語であっ て,定理やその証明法の想像や探索をおこさせるもとになるなに がしかのものであって,表現すれば,アッと恩ったり,チラッと 見えたりするものです.普通正しい意味で数学といっているもの は,主観の世界に生い立った数学を文章の世界へ投影した,いわ ば影ですから,これがなければ眼前三寸に一切が備わっていても いつ

誰も何時までも気付かないのです 4). ●4

という話をしたという.ここに明快に表明されている先鋭な問題意 識こそ,数学史家がひとしく範とすべき基本精神であろう. ぼくらは普通,近代微積分のあらましを承知したうえでオイラー

9世紀に始まる‘厳密性への関心’は少なかっ の世界を振り返り,「 1 9世 紀 の コ ー シ ー が や っ た よ う な , 画 期 的 な た」5) と批評したり,「 1 定理一一基本定理や存在定理—を樹立する,

なく,

というようなことは

‘計算’に終始していた」6) と い う 評 価 を く だ し た り す る . だ

が,オイラーのように,ひとつの自立した数学的精神が長い歳月を 費やして創造した世界の骨格が曖昧模糊としているはずはない.ぼ くらはむしろ立脚点をオイラーに移し換え,はたしてオイラーの泄 界から近代微積分を感知することは可能なのかどうか,

というふう

に問題を設定するべきなのではあるまいか.

1 ) ニュートンの著作『光学」の付録「曲線の求積について」 ( 1 7 0 4年)の中に,

「私は 1 6 6 5年と 1 6 6 6年に流率法を発見した」と記されているという.カジョ リ『初等数学史』(復刻版,小倉金之助補訳,共立出版, 1 9 9 7年 ) , 3 4 7頁参照. 2 ) 「分数量にも無理量にも適用される,極大と極小および接線に対する新し

い方法ならびにそれらのための特殊な計算法」 3 ) 「深い場所に秘められた幾何学,および不可分量と無限の解析について」

4 ) 『岡潔集』(学習研究社)第四巻月報に掲載された藤田玲子「奈良女子大学の

岡先生」より. 5 ) この言葉は「数学辞典』(第 3版岩波書店)の項目「オイラー」の中に出て

いる. 6 ) これは,オイラーの三部作のうち,『微分計算教程」と『積分計算教程』に

向けられた批評である.小堀憲『 1 8世紀の数学』(共立出版), 48頁参照.

, ' ! ,

. 5

いくつかの素朴な疑問

2 デデキント

デデキントの論文「連続性と無理数」 1) の対象をなす考察は 1 8 5 8 年の秋に導き出された,

とデデキントは語っている.当時,デデキ

ントはチューリヒのスイス連邦工科大学の教授として,初めて微分 学の基礎知識を講義しなければならない立場にあった.

ところが,

そのとき,「それ以前にも増して,数の理論の真に科学的な基礎が欠 けていることを痛感した」2) というのである.デデキントの言薬は こんなふうに続いていく.

変動する大きさが一つの固定した極限値に近づくという概念に際 して, ことには絶えず増大しながらも, えては増大しないという大きさは,

しかもあらゆる限界を超

どれでも必ず一つの極限値に

近づかなければならないという定理3)の証明に当って,私は幾何 学的な明証に逃げ道を求めていた.いまでも私はこのように幾何 学的直観に助けを借りることは,はじめて微分学を教えるのに教 育的見地からは非常に有用であり,余り多くの時間を掛けまいと すれば,欠くことのできないものとさえ考えている丸

さらに続けて

しかしこのような微分学への導入が科学性を有すると主張できな いことは,誰も否定できないであろう.当時私にとってこの不満 の感じはおさえ切れないものになったので,その結果私は,無限 小解析の原理の純粋に数論的な全く厳密な基礎を見いだすまでは いくらでも永く熟考しようと固く決心した丸 ●6

これは,厳密化の基本契機を語る証言として,随所で好んで引用 される一文である. ここで表明された定理について,デデキントは, 「いっそう精密な検討によって,この定理またはこれと同等な,どの 定理もいわば無限小解析にとっての十分な基礎と見なすことができ る 」6) と確信するにいたった.ただしそれは,「その本来の起源を数 論の基礎知識のうちに発見し,それと同時に連続性の本質について の真の定義を獲得したうえでのことである」 7). この企てにデデキ

8 5 8年 1 1月 2 4日のことであり,数日後,熟考 ントが成功したのは 1 の結果を親友のデュレージに打ち明けたという. デデキントの影響は今日もなお大きく残り,「厳密な微積分」の根 底に横たわるのは依然としてデデキントの実数論(「切断の理論」と 言われる)であり続けている.

日本でもっとも有名な教科書である

高木貞治の著作『解析概論』8) も,「数の概念」(「第 1章

基本的な概

念」の第 1節)から説き起こされている.だいぶ前のことではある が,この書物の参考書として能代清『極限論と集合論』9) などが推奨 された記憶も鮮明である. デデキントの実数論について語るのであれば,無限集合論のカン

0 トールも引き合いに出さなければならないし,それならそれで E 論法のコーシー,

フーリエ級数のフーリエ,

リーマン積分のリーマ

ン,ディリクレ,ヴァイエルシュトラス等々へと話は果てしなく広 がって,大きな物語が紡ぎ出されることであろう.だが,この微積 分の厳密化の経緯は数学史の恰好の話題であり,広く知られている 事柄でもあるから,今ここで取り立てて再現する必要はないであろ

8 5 8年 1 1月 2 4日」という日付に着目し,記憶 う.ここではただ,「 1 に留めておきたいと思う. 古い微積分の論理的根底の危うさに向けられたデデキントの批判 にはもっともなところも確かにあるが,論理的に破綻のない理論構 成は,微積分とは何か,

という根源的な問いに答えることとは本来,

関係がなく,古ぃ学問に通有のさまざまな意匠のひとつにすぎない であろうとぼくは思う.「実数の連続性」の認識はそれ自体として



は大きな発見ではあるが,それはそれとして微積分にはどこまでも 7

いくつかの素朴な疑問

古色がつきまとい,厳密化や精密化の努力をもってするのではぬぐ いさることのできない不思議さがここかしこに影を落としている. いくつかの素朴な疑問を列挙してみよう.

1 ) 1 8 7 2年の論文.『数について

連続性と数の本質』(岩波文庫,河野伊三郎

訳 , 1 9 6 1年 1 1月 1 6日発行)所収序文が執筆されたのは 1 8 7 2年 3月 2 0日 . この岩波文庫にはデデキントの二つの論文の邦訳が収録されている.「連続 性と無理数」を第一篇として,第二篇は 1 8 8 7年の論文「数とは何か,何である べきか」である. 2 ) 同上, 9頁参照 3 ) 「実数の連続性」を明示する命題.高木貞治『解析概論」第 1章,定理 6「 有 界なる単調数列は収束する」(定本, 8頁)参照. 4 ) ,5 ) 『数について

連続性と数の本質』, 9頁参照.

6 ) ,7 ) 同上, 1 0頁参照 8 ) 岩波書店岩波講座〈数学〉(全 3 0巻.昭和 7年 1 1月 2 0日,第一回刊行. 昭和 1 0年 8月 1 5日,完結)の一冊として執筆され,昭和 1 3年( 1 9 3 8年 ) 5月 1 0 日,単行本として刊行された.昭和 1 8年 ( 1 9 4 3年 ) 7月 1 5日,増訂第二版発行. 昭和 3 6年 ( 1 9 6 1年 ) 5月 2 7日,改訂第三版発行.昭和 5 8年( 1 9 8 3年 ) 9月 2 7日 , 改訂第三版軽装版発行. ぼくの手元にあるのは,昭和 4 3年 6月3 0日発行の改訂第三版第 9刷である. 9 ) 岩波書店昭和 1 9年( 1 9 4 4年 )1 1月 1 0日発行.

3 変数分離型の微分方程式

微分積分学の学習を進めていく途次,ぼくらが次々と出会うあま たある諸記号の中で,

dxや dyと い う 微 分 記 号 ほ ど 謎 め い た も の は

ない.今, P(x)と Q(y)は そ れ ぞ れ 変 数 x,yの 関 数 と し て , 変 数 分 離型の微分方程式 ●8

(1)

坐 =P(x) dx

Q(y)

を考えよう.この微分方程式の解となる

=f(x)を求め

X の関数 y

るには,変数を分離して方程式 C2) Q(y)dy= P(x)dx

を作り,そのうえで両辺を積分すればよい.たとえば, m は実定数 とするとき,微分方程式 C3)

l _坐=一 y dx

X

x2-mx+l

は変数分離型である.この微分方程式はすべての m に対して解く ことができて, y=f(x)という形の解をもつが,一例としてもっ とも簡単な場合,すなわち m=2の場合を考えてみよう.この場

3 )は 合,方程式 (

1dy =Y dx

X

(x-1)2

となる.変数を分離すると,

dy xdx 一 (x-1)2・ y= 両辺を積分すると, Cは定数として,

J(xx-d1x)2+ c = Jxd-x1f(xd-x1)2+ c

logy=

1

=-log(x-1)+ +c. x-1 よって,

logy(x-1)=

1

+c. x-1

よって, 1

y(x-1)=が ・ e戸 . そこで A =否と置くと,

y=

A

e圭

x-1

. 9

いくつかの索朴な疑問

という表示式が得られる.

ところで分離方程式 ( 2 )において,記号

dx,dyは何を意味するのであろうか. 微分の概念を追放して微分係数を中心に据えようとする今日の微

x )が微分可能であるとき,その 禎分の流儀によれば,関数 y=f( 導関数,すなわち各々の X に対して定まる極限値

f(x+h)-f( x ) l i m h→ 0 h を , り

(ニュートンの用例)



(ライプニッツからの伝統)

y'=f'(x) Cラグランジュの用例) DxYまたは Dxf(x)または単に Df(x) Cコーシーの用例) 1) dy などという記号で表わすと取り決めるのであった.一ーという記号 dx には, これ自体において,あるひとつのまとまった意味が付与され るのである.

2 )に移行する段になると,記号 ところが分離方程式 (

dy はさながら dyの dxによる商のようであり, dxや d yはそれ自 dx 体において何かしら固有の意味をもつ何物かであるかのように振る 舞っている.

ここには概念操作の上での混乱が現われているように

思う. 方程式 ( 1 )から方程式 ( 2 )への移行を微分方程式を解くための便宜 上の措置と見ることも可能であろう.だが,アーベルの論文「楕円 関数研究」の序文を見ると,冒頭にいきなり変数分離型の微分方程 式が登場し,

このような関数[楕円関数2)]の最初のアイデアは,分離方程式

dx



dy

位 +Sx+r. 五 + 記 +cx4 la+洵 + が + 犀 +2y4

=O

が代数的に積分可能3) であることを証明する際に,オイラーによっ て与えられた 4).

.10

と記されている.このような記述を見たうえで二つの方程式 ( 1 )と

( 2 )を再考すれば,ぼくらはだれしも,微分係数ではなくて,微分そ れ自体が主役をつとめた時代がかつてあったのではないかという想 念に誘われるのではあるまいか.微分計算はあくまでも微分の概念 から出発するのが本来の姿であり,微分係数はふたつの微分の商, すなわち微分商として後天的に認識されるというのが実際の歴史的 経緯であったと思われるのである.

1 ) 高木貞治『解析概論』定本, 3 7頁参照.

2 ) アーベルの言う楕円関数は楕円積分を意味する. 3 ) 「代数的に積分可能」という言葉の意味は本論第 I V章「積分計算」で詳述 する.

4 ) 高瀬訳『アーベル/ガロア楕円関数論』(朝倉書店), 3頁参照.

4 微分方程式の解

微分の概念を放棄して微分係数を全面的に押し出そうとする構え を取ることにするならば,微分方程式というのは一般に「未知関数 の導関数を含む方程式」と理解されることになる.その未知関数を 求める手順が微分方程式の解法なのであるから,この場合,関数概 念は先天的に前提にされているのである. それゆえ,微分方程式の解はつねに何らかの関数になるのが当然 である.だが,実際には必ずしもそのようにはならず,解法手順を 押し進めていくと,変数間の関係を定める方程式や図形が出現する



ことがある.いかにも不可解な事態であり,微積分の謎のひとつで 1 1

いくつかの素朴な疑問

ある.

. 微分方程式 例1

鷹= y + R石;

(1) x

は変数分離型ではないが, y= uxと置いて新しい変数 uを導入す ると,

dy du =u+x dx dx ( y= uxの両辺を xに関して微分した.だが,オイラーなら直接微 分して, dy= udx+xduという微分の関係式を導くであろう)によ り,変数分離型の徽分方程式

(2)

竺=五石戸 dx

X

に変換される.変数を分離して分離方程式

(3)

dx X



du

バ丁戸

を作り,積分すると, aは定量として,

logx= loga+log(u+五戸) y+f;; 江了 = loga+log(

X)

R+F;)

= loga+log( となる.

X

これより微分方程式 ( 1 )の解

(4) y=

2 X2-a

2a

が得られる. この例では,解として首尾よく関数が求められた尺

例2 . 微分方程式

dy dx

C5) (x-y)-= x+y

は変数分離型ではないが,例 lでそうしたように y=uxと置いて .12

新しい変数 uを導入すると,変数分離型の微分方程式

(6)

du 1 l+u2 =ー・ dx x 1-u

に変換される.変数を分離して分離方程式 (7)

dx X



1-u 2d u l+u

を作り,積分すると,

l o gx= a r ct a nu-log 凸~+c という解が得られる.すなわち, ( 5 )の解として y

(8) l o g丘可デ=C+arctanX

という超越的な(すなわち,代数的ではない)方程式が得られる.



こで Cは定量を表わす. この方程式から y=f(x)という形の表示を取り出そうと試みる のは,困難で,むなしい作業である竺

微分方程式の解の多様性を伝える計算例をもう少し続けよう.

例3 . 微分方程式

) 慶

(9) y-x~Y= aJI+(

3

( aは正の定数)

を解くために,一— =p と置くと,

dx ( 1 0 ) y-px=a釘二戸

となる

C V ― は 3乗根).これを xに関して微分すると,

dp x-= r 1 x

-a が

Vo十炉)

2

dp dx

となる.これより

dp -a 炉 - = O または x = / 3( 1十炉) 2 dx となる.前者から

P= a

C aは定数).



9 )に代入すると,定 よって y=ax+CCCは定数). これを方程式 ( 1 3

いくつかの素朴な疑問

数 C の形が決定されて, C=a訂二『ーとなる.

これより微分方程

9 )のひとつの解 式(

( 1 1 ) y=ax+a釘 が得られる.これは xの関数である. 後者を方程式 ( 1 0 )と組み合わせると, yの Pによる表示式が得ら れる.合わせて,

( 1 2 )

X

=

-ap2

1 3( 1+ p 3 ) 2,

y=

a

1 3( 1+ p 3 ) 2

となるが,これは pをパラメータとする平面代数曲線の表示式であ る .

これをこのまま微分方程式 ( 9 )の解と見てもさしつかえないが,

試みに pを消去してみよう. る .

まず xをyで 割 る と , 炉 = ー 王 と な y また, ( 1 2 )の第二式の両辺を 3乗して,

炉=

a 3 ( 1+炉) 2

を作り,これをがについて解くと,

p3=~-l= 炉

a贔ー

y / y

yん

が得られる.そこで炉の 3乗 と 炉 の 2乗を作って等置すると,

(―:い (a~i/yr すなわち

( 1 3 ) が +(afa —約厄) 2=0 という代数方程式,すなわちふたつの変数ぶ yの間の代数的な関係 式が得られる(これを (xy) —平面上に描かれた図形と見たものが代

数曲線である).

これは微分方程式 ( 9 )のひとつの代数的積分である.

この方程式を yについて解けば,解として

X

の関数

( 1 4 ) y=(a 贔土 xi二~)¾

が手に入るが,これは二価,すなわち (x=0は除外して,一般に) x のひとつの(負の実数)値に対応する yの(実数)値がふたつ存在する という性質を忍つ関数であり,関数の一価性は失われてしまう.関 数概念に一価性を要求する今日の流儀から見れば,

これを関数と呼

.14

ぶことは許されない. ふたつの分枝

の各々は一価関数であり,いずれも微分方程式 ( 9 )の解になる.



Y=(a贔 +x仁~)t と Y =(a 贔— xi二;) t

かしこれらを別個の関数と見て,ふたつの解が得られたと認定する のは心理上の抵抗感が大きすぎるであろう.

こうしてこの場合,(関数概念になお論点が残されているが)微分 方程式の解は代数曲線,代数方程式,(二価)関数という三通りの姿 で現われる 3).

例4 . 今度は微分方程式

( 1 5 )

が + 戸 ) dx

3

= ax竺

dx

が提示されたとしよう.例 3で そ う し た よ う に 鷹

=pと置くと,

1 5 )は 微分方程式 (

06) x 3十炉=a x p と書き表わされる. そこでさらに p= uxと置いて新しい変数 uを 導入すると,

07) x =

au2

au 1+u3'

p= 1+u3

という表示が得られる.これは, ( 1 6 )を代数曲線(「デカルトの葉 線」と呼ばれる曲線である. 8節で詳述する)と見たときのパラメー タ表示式にほかならない. 式( 1 7 )を uに関して徽分すると,

dx a(l-Zuり = du ( 1+u乎 dy du

dy dx dx du

dx dx ― ― =u x du du

-=--=p

) au a(l-2か = u・ ・ 1十か (l+u叩 =

が記 (1-2 か )

( 1十 u s ) s



1 5

いくつかの素朴な疑問

となる(微分係数から離れないように計算したが,オイラーなら,

dx=

a(l-2か ) 3 zd u , ( 1+u)

dy=uxdx=

が記 (1-2か ) du ( 1十か) 3

と計算するところである).

これを積分して, yの uによる有理関

数表示 記 (1-2か ) du ( 1十記) 3

Y=a2J

1 2 かー 1 1 2 1 =a2 +-a 6 ( 1+u叩 3 1+u3+c が得られる (Cは定数) .x =

a u 1+u3

と合わせると,これで微分方

程式 05)の解が,「パラメータ表示された代数曲線」の形で得られた のである. この例ではパラメータ u を消去するのはあまり容易ではないが, 遂行すれば, x と yの間の代数方程式が得られるであろう.それは, 提示された微分方程式の代数的積分にほかならない 4).

こうして微分方程式の解は必ずしも関数ではない.解として

X

とyの間の(代数的または超越的な)方程式が得られたとして,それ を通じて yを xの関数(「陰関数」と呼ばれることがある)と見るこ とが許されるとしても,そのようにして入手されるのは一般に多価 関数であり,一価関数が認識される場合は稀である.関数とその導 関数を対象として構成される厳密な理論体系の守備範囲は狭すぎて, 微分方程式の批界の多様性を十全に把握することはできないのであ る .

この例はオイラー『積分計算教程』第 1巻,第 2部,第 1章から採った. 6 4頁参照 オイラー全集 I-11, 2 2 ) オイラー『積分計算教程』第 1巻,第 2部,第 1章より.オイラー全集 I -11, 2 6 3 2 6 4頁参照 1 )

.16

3 ) オイラー「積分計算教程』第 1巻,第 3部より.オイラー全集 I-11,4 5 9 頁参照

4 ) オイラー『積分計算教程』第 1巻,第 3部より.オイラー全集 I-11,4 3 9 頁参照

5 積分 ( 1 ) 定積分

微分記号 dxは 積 分 『 J(x)dx1)の中にも現われる.これは,数 直線上において,関数 J(x)を点 a から点 bまでの区間全域に渡っ て積分したときの値を表わす記号であり,定積分と呼ばれる積分で ある.では,定積分記号のもとにおいて,微分記号 dxは何を意味 するのであろうか. 近代数学史の通説では定積分の精密な概念規定を初めて試みたの

8 2 3年の はコーシーとされていて,高木貞治の『解析概論』でも, 1 コーシーの著作『無限小計算要論』2) を参照するよう,指示されてい る3). コーシーが取り上げたのは連続関数の定積分だが, フーリエ

8 5 4年のリ 級数の収束条件を論じるディリクレの二論文4) を経て, 1 ーマンの論文「三角級数による関数の表示可能性について」5) に移 る過程で連続性への執着は放棄され,一般に有界関数の定積分が考 察されるに至った. 積分論の理論構成の場で問題になるもっとも基本的な論点は定積 分の存在条件,すなわち関数の積分可能条件の確定であり,当然の ことながら,積分の概念規定の様式に左右されるのである.歴史は なるべく広い範囲の関数が積分可能と見られるようにするという方

9 0 2年 , 向に進展し, 1

Jレベーグにより J レベーグ積分6) の概念が提案



されて,時代が画されたと言われている.今日,ぼくらはまず初め 1 7

いくつかの素朴な疑問

にリーマン積分を学び,次いで Jレベーグ積分に移るのが普通である (高木貞治『解析概論』では,第 3章「積分法」がリーマン積分論,

e b e s g u e積分」が Jレベーグ積分論にあてられている). 第 9章「L 定積分の概念規定にあたり,

リーマンはまず初めに,

『 f(x)dxというのはいかなるものと考えるべきであろうか在 a

という,

きわめて根源的な(すなわち,素朴な)問いを提出する.ニ

, b間に次々と点 X 1 , X 2 ,…,X n 1を取り,表記を簡単にするため 点a に xi-aをふで表わし, x2-x1を必で表わし,…, b-Xn-1を ふ で 表わす. c1,E:2,…, gは正の真分数とする.このように状勢を設定し たうえで,

リーマンは,



S =ふJ(a+c:心)+ふ J(x叶 e ふ) (x3+£ふ)+…+ふ J(x 叶 E nふ ) +ふ J の値は,区間 8と量 eの選定に依存して定まることになる.そこ で今,もしこの和には, 8とeがどのように選ばれたとしても, 8 がすべてみな無限に小さくなっていくとき,ある定まった極限 A に限りなく近づいていくという性質が備わっているとするなら, そ の と き そ の 値 を 『 J(x)dxと呼ぶのである 8). a

と語っている. ここに見られる和 Sが「リーマン和」であり,その 極限として定積分が規定されるのである.

これがリーマン積分であ

る.リーマン積分『 f(x)dxはこれ自身がひとつのまとまった意 a

味をもつ記号として規定された.この点ではコーシーの積分も Jレベ ーグ積分も同様であるから,積分記号下の微分記号 dxに固有の意 味は認められず,いわば無意味な符牒にすぎないと理解しなければ

dy dx

ならないことになるだが,これでは微分係数―ーにおける微分記 号との間に内的関連を認識する(岡潔先生の言葉なら,「感知する」) .18

のは不可能であろう.微分係数も定積分も概念の定義は定義として 知的承認を廿受しなければならないが,その反面,依然として謎は 残り,ぼくらはまたしても多大な心理的抵抗感を感じざるをえない のである.

8 2 3年以前の微積分(無 さて,積分の定義のない時代,すなわち 1 限小解析という呼称が相応しい)の世界にも積分は存在し,曲線の 弧長や曲面の表面積の計算などが行なわれた.一例として,アーベ ルにならってレムニスケートの弧長を計算してみよう 9). レムニス

x , y )平面上で,方程式 ケートというのは, ( Cl) (が十 y叩 = が 一 y 2 によって規定される無限大記号「 00」の形をした代数曲線である(図

5 .1参照). y 工

図5 . 1

弧 AM=s, 弦 AM=r10i, 角 MAP=0と置いて,極座標 C2 ) x= rc o s0 ,

y= rs i n0

を導入すると,方程式 ( 1 )は (3)

r=/c 函窃

という形に変換される. これが,

レムニスケートの極方程式である.



これをオイラーの流儀にならって微分すると(すなわち,ふたつの 1 9

いくつかの素朴な疑問

T

(ds)'= (dx)'+( d y ) 2 図5 .2

変数 r ,0の間の方程式 ( 3 )をそのまま微分して,ふたつの微分 dr と d0の間の一次関係式を導出すると),

(4) dr=

-sin20 d 0 ,



d0=-

dr/c 函冠 sin20

となる. 弧 A M上の一般の点 Q においてレムニスケートに接線を引き, 無限小直角三角形 QST(図 5 . 2参照)に対してピタゴラスの定理を 適用すれば,線素,すなわち弧長を表わす変化量 II)S の無限小変分

d s 1 2 )が次のようにして算出される.まず極座標を与える方程式を 微分すると,

dx= c o s0dr-rs i n0d 0 , dy= s i n0dr+rc o s0d0 となり,二通りの微分の組 d r,d0と dx,dyの間の関係が与えられ る .

よって, ( 4 )により, 戸c o s20 d s 2= d x 2十 d炉 =dr吐 r 2 d が =d r 2 ( 1+ s i n 22

。 ) .

方 程 式 r= l e 冨20から cos20= r月 sin220=l-cos220=1-

r 4 . それゆえ,

土 +11:_4r4)= ld-rr24'

d s 2= dr よって,

.20

(5) ds=

dr

ハニ戸

というふうになる. これを積分して,

= f r dr 。五二戸

(6) s

が得られる.これがレムニスケート積分と呼ばれる積分(「楕円積 分」の一種)であり,

レムニスケートの弧長を表わす積分である.

この計算例では, d x ,d y ,d r ,d 0 ,d sなどの微分記号はみな同一の 意味をもっている.すなわち, これらは「無限小量」と呼ばれる量 である.

レムニスケートの弧長計算にあたって,ぼくらはひとまず

通常の変化量の織りなす世界から無限小量の世界へと身を移し(こ の過程が微分計算である),その世界に置いてしかるべき計算を遂 行した後に,ある手続き(すなわち,積分計算)を経て再び通常の変 化量の世界に舞いもどるのである. レムニスケート積分 ( 6 )は「無限小量

dr



を , 0から rまでの

区間全域に渡って寄せ集めて得られる量」として理解されている. これはたしかに論理的明確さを欠く解釈ではあるが,本来の積分概 念をあるがままの姿で表象する質実で強力な受け止め方でもあり, 物理や工学の現場では今も生きて働いている.数学では様相が異な り,微積分の厳密化の過程が進行していく中で,無限小量は次第に 理論の表層から捨てられていき,やがて完全に消滅した.

ところが

微分係数と定積分の精密な概念規定がなされると,今度は微分記号 の意味が不明朗になるという意外な局面に逢着してしまうのである. 理論の厳密化は必ずしも概念の本質の理解に寄与するわけではな く,厳密化が進行すればするほど,かえって本質から遠ざかってい くような感慨もある.

ここにはやはり微積分の謎のひとつがひそん

でいると見なければならないのではあるまいか.

1 ) このような定積分の表示記号の提案者はフーリエと言われている.コーシ



0 1頁にそのように書かれてい -『無限小計算要論』(下記註記 2参照),邦訳書 1

2 1

いくつかの素朴な疑問

る.コーシー全集第 2輯第 4巻 , 1 2 6頁参照.この書物には,

f f ( x ) d x [ ; ] .f f ( x ) d x [ : :; ] などの記号も紹介されている.

2 ) 原著の標題をそのまま訳出すると,『無限小計算に関して王立理工科学校

8 2 3年刊行.二巻本の予定で,「第一巻」と で行なわれた講義の要約』となる. 1 銘打たれたが,第二巻は刊行されなかった.コーシー全集第 2轄第 4巻所収. , 共立出版, 1 9 6 9年 小堀憲による邦訳『微分積分学要論』(現代数学の系譜 1

7月 2 0日発行)がある. 3 ) 『解析概論』定本, 1 1 8頁参照. 4 ) 「与えられた限界の間の任意の関数を表示するのに用いられる三角級数の

1 8 2 9年,ディリクレ全集 1 , 第V I I I論文);「まった<任意の関数の, 収束にいて」 ( 1 8 3 7年,ディリクレ全集 1 , 第1 X論 正弦級数と余弦級数による表示について」 ( 文 )

5 ) 1 9 9 0年にシュプリンガ一社から刊行された新版のリーマン全集では, 2 5 9 ~303 頁(本文 38 頁目次 1 頁註記 6 頁).ゲッチンゲン大学の教授資格取得

論文として提出された 1 8 5 4年の論文ということになっているが, 1 8 5 4年は

1 8 5 3年 ) 教授資格取得講演が行なわれた年であり,実際に提出されたのは前年 ( 2月初めである. の1 リーマンは教授資格取得のための試験講演のために,前もって三つの題目を 提出したそれらは,「三角級数による関数の表示可能性に関する問題の歴 史」;「ふたつの未知量をもつふたつの 2次方程式の解法について」;「幾何学の 根底に横たわる仮説について」であった ( D .ラウグビッツ「リーマン

人と業

績』,山本敦之訳,シュプリンガー・フェアラーク東京,による).ガウスは第

8 5 4年 6月 1 0日,リーマンはガウス先生の前で,「幾何 三の顆目を選定した. 1 学の根底に横たわる仮説について」というテーマで講演を行なった

6 ) ルベーグ積分の初出は 1 9 0 2年のルベーグの論文「積分,長さ,面積」(学位 3 ) ,7 , 231~359 頁)である.吉田耕作と松原稔によ 論文.純粋応用数学年報 (

る邦訳『積分•長さおよび面積』(現代数学の系譜 3, 共立出版)が出ている. 7 ) 1 9 9 0年版のリーマン全集, 2 3 9頁参照. 8 ) 同上. 9 ) この計算はアーベルの論文「楕円関数研究」に出ている.高瀬訳『アーベ ル/ガロア楕円関数論」(朝倉書店), 90~91 頁参照.

1 0 ) アーベル自身は弧 AM=a, 弦 AM=xという表記を用いているが,こ こでは今日の通例に従った.

1 1 ) これまでのように「変数」と言わずに,ここで唐突に「変化量」という言 葉が登場したこれについては次章以降で詳しく説明する.

1 2 ) この言葉の意味も次章以下で説明するおおまかに言うと,変化量とそ .22

の無限小変分の概念が放棄されて,関数とその微分係数の概念へと移行してい く過程が,微積分の厳密化に呼応する.

6 積分 ( 2 ) 微分方程式の積分

定積分のほかに,積分という言葉には,

もうひとつのまったく異

質の用法が存在する.それは,微分方程式の積分と言われる場合の 積分である. これは第 3節で紹介した事柄だが,アーベルの論文「楕円関数研 究」の冒頭で,楕円関数論の起源と見られるオイラーの着想が回想 された際,分離方程式,すなわち変数分離型微分方程式の解は(代数 的な)積分という言葉で言及されたのであった.この用法は今日も

1次 生きていて,微分方程式の解を与える図形はしばしば積分曲線 ( 元の場合)と呼ばれたり,積分超曲面(余次元が 1の場合)と呼ばれ たり,一般に積分多様体と呼ばれたりすることがある.いかにも不 息議な用法であり,何かしら深遠な歴史的根拠に根ざしているよう な雰囲気がただよっているように息う. 裔木貞治『解析概論』の記述によれば,関数 f(x)が与えられた とき,

それを導函数とする函数,すなわち F '(x)=f(x)なる F(x)凡

すなわち微分方程式

dy = f(x) dx



を解いて得られる関数 y=F(x)を,もし存在するなら, f(x)の原

2 3

いくつかの素朴な疑閤

始関数と呼び,積分記号を用いて

F(x)=ff(x)dx と表記する.ただちに問題になるのは原始関数の存在の有無を知る ことだが,連続関数の場合,その原始関数はつねに存在し,

しかも

それは定禎分で定まる積分関数

F(x)=fxf(x)dx

( aは定点)

で与えられる巴原始関数の表記に積分記号を用いる理由もまさし くここにあり,その結果,連続関数の原始関数は不定積分と呼ばれ ることにもなるのである. これをさらに換言すれば,微分方程式 F '(x)=f(x)の解は定積 分を通じて構成されるということになる.そこで一般に微分方程式 の解を積分と呼ぼうとするのも,いくぶん飛躍が大きすぎるような きらいはあるが,必ずしも不適切とは言えないように思う. 『解析概論』の記述をもう少し続けると,連続関数 f(x)のひとつ の原始関数 F(x)が見つかったなら,

fbf(x)dx=F(a)-F(b) という公式が成立し,これによって定積分の値が算出される.これ が微分積分学の基本公式3) である.連続関数の範囲内でのことでは あるが,これで微分と積分の関係が明らかにされたと見るのが,近 代微積分の有力な立脚点である.論理的には別段,問題はなく,均 整のとれたみごとな情景が現われたのである. だが, このような理論構成には,

どこかしら空々しい感じが伴う

こともまた否めない.なぜなら,ここには,この情景を感知するこ とを可能にする追筋の数々がまった<途絶えているからである.厳 密な微積分にどれほど精通しても,それだけではまだ何かが足りず, 微分と積分と微分方程式の間に存在する有機的関連を真に理解した とは言えないのではあるまいか.

.24

1 ) 高木貞治『解析概論』定本, 9 7頁 .

2 ) 同 上 , 1 0 1頁 , 104頁の定理 3 1 ,1 0 9頁の定理 3 5参照 3 )

同 上 , 109頁参照

7 接線 ( 1 ) 微分係数と接線

高木貞治『解析概論』第 2章「微分法」の最終節(第 2 7節)は「接 線および曲率」と題されていて,曲線の接線,曲率,第二曲率また は捩率(れいりつ.「ねじれ」とも言う),伸開線,縮閉線などが論じ られている.

まず初めに「本章の終りにおいて曲線の接線および曲

率に関して述べる」と宣言され,続いてすぐに,「それは微分法発祥 の問題である」という言葉が語られる u . この指摘はおそらくその 通りであろう. 1 6 8 4年のライプニッツの第一論文の標題は, 「分数量にも無理量にもさまたげられることのない極大・極小な らびに接線を求めるための新しい方法,およびそれらのための特 異な計算法 J というもので,ここにはすでに「接線を引くための新しい方法」が うたわれているのである.ぼくらが微分法を学ぶ際にも,微分係数 の意味は「接線の傾き」として諒解するよう教えられるのが普通で ある.だが,素朴な疑問はここにもつきまとっている. 一例として (x,y) —平面上に半径 a ( a>0 )の円周

(1) 正+炉=a2

を描き,この円周上の任意の点 p=( x ,y )において接線を引くこと を考えてみよう. P の y—座標の正負に応じて場合を分け,まず y>O とする.円周



の上半部分,すなわち x—軸に関して上側の部分は,関数

2 5

いくつかの素朴な疑問

y

/ I

y=~

I

I



'

ハ ヽ 、--------_ , / ヽ

\ \



Y=a. x ~

図7 . 1

(2) y=f(x)={a す二戸 のグラフとして表示される.微分係数を作ると,

dy dx

y'=~= 『 (x)

が得られる.

=

-x

X

=- r a 亡了y

よって点 Pにおける接線の方程式は,接線上の一般の

点を ( X ,Y)(「流通座標J と呼ばれることがある)で表わすとき,

Y-y= —凸 X-x) y

2 . すなわち, となる. これを整理すると, yY+xX=x2十 炉 =a 2 (3) yY+xX= a となる. これが,求める接線の方程式である.

y0は定数)

の 上 の 任 意 の 点 p=(x,y)において接線を引くには,まず方程式

( 3 )を直接微分2) して,微分方程式

a F

a F

dF=-dx+-dy 函

a y

= 3(x2-ay)dx+3(y2-ax)dy= 0 を作り,その後に微分 dxとdyをそれぞれ X-x, Y-yで置き換え ればよい.ただこれだけの操作で,接線の方程式

(4) (x2-ay)(X-x)+(y2-ax)(Y-y)= 0 が得られるのである凡 X =0 , y=0の場合にはこの方程式は消失 してしまい,無意味だが,デカ)レトの葉線は原点では二本の枝が交 叉しているため,単一の接線を忍たないのである. 原点で交叉する二本の枝のそれぞれには,原点において接線を引 くことができる.それを見るために,デカ)レトの薬線のパラメータ

表示式 .30

(5) x =

3 a t 1+t3'

a t 2 Y= 3 1+t3

(-ooく

t 旦f ' ( x )+-f"(x)+-f"'(x)

l !

.

が得られるが,量 aが十分に小さいとき,右辺の第一項

a

—-f'(x) l !

は第二項以下の総和

… +

a 2 が -j"(x)+-!'"(x)

2 !

3 !

に比してはるかに大きいから,不等式 ( 3 )の右辺の符号は第一項に 左右されることになる.そうして aは正でも負でもありうる以上, 不等式 ( 3 )が成立するためには第一項は 0 , すなわち /'(x)=0で なければならない.この事情は極小値の場合にも同様であるから, 極値の必要条件

' ( x )=0 (4) f が確定する. この条件のもとで不等式 ( 2 )は不等式



> 誓f"(x)+凰戸(x)~

(5) 0

に移行する.右辺の符号は初項

—-j"(x) に依存して定まるから,

2 !

もし f "(x)キ 0であれば,必然的に !"(x)0) ゜ というのは,(広義)積分で規定される ガンマ関数

(1) B (x,y )

のことであり,

2 )

関数

' ( x )= (2) I

= f et t x l d t

( x>0 )





を指す言葉である(ガンマ関数は一変数 xの関数として考察され る).ベータ関数とガンマ関数とは無縁ではなく,

(3) B(p,q )=

I ' ( p )「( q ) I'(p+q)

という関係で相互に結ばれている. オイラー積分

( p _ q )とベータ関数と忍もちろん無縁ではない.実

際,変数変換

t=x内

1

x=t元

1 1 dx=-t万― 1 d t n

を行なってオイラー積分を変形していくと,

(4)

( f )=~l『;1(1-t)7tデ dt =上『心—1(1-t) 条一1dt no

= 上B ( p _! L ) n

n'n

6

●7 ー

というふうになる.

t=

ところで,変数変換

u 1 =1l+u l+u'

du d t= ( 1+u)2

を行なってベータ関数を変形すると,表示式

o o J

B(x,y)=

u x 1 d u 0( 1+u)X+Y

が得られる. これを用いてオイラー積分の変形 ( 4 )を継続し,特に

p+q=nの場合を考えると, IV章 6節の基本公式 ( 2 )により,

( p _ )=上 B ( p _ '且 )=1-J= 占—1dt n

q

n n

n o( 1+t)~

=l _Joo 片—ldt =J o oUP-ldu3) no 1 +t

o 1+un



.P 1 C .

nsm ー

n

よって, C5)

B ( p _1 一 之 )= [ 7 n'n s i n『

となる.これを ( 3 )に基づいてガンマ関数を用いて書き直すと,

I ' ( l )=1より,整数 n,pに対して成立する関係式 (6)

r(~)叶 1-~)=.7[匠 sm

(l~p~n)

n

が得られる. これは有名なガンマ関数の相補公式(の特別の場合)に ほかならない. 相補公式を一般的に記述すると, (7) I ' ( x )「(1-x)=



s i n冗X

となる.この関係式それ自体は整数以外のすべての実数 xに対し て成立するが,本書ではオイラーにならって限定された場合のみを 記述した.

というよりもむしろ歴史的には話は逆で,円積分に始ま

るオイラー積分の考察の中から自然に相補公式の萌芽が現われたと ●



7 7

積分計箕

見るべきであろう.ベータ関数やガンマ関数から出発する理論展開 は整然としてみごとだが,それはそれとして,オイラーの初心はあ くまでも積分値そのものへの興味にあったことを等閑視してはなら ないと思う.

1 ) ベータ関数はビネの論文「オイラーの定積分について」(理工科学校雑誌 1 6 , 123-343頁)において導入された.ジャック・フィリップ・マリ・ビネ

( 1 7 8 6 1 8 5 6年)はフランスの数学者. ベータ関数は第一種オイラー積分と呼ばれることもある. 2 ) 呼称は別にすると,ガンマ関数の考察はオイラーに始まる.オイラーが考 察したのは

f ( 1 o g ± t d xという形の積分だが,これは変数変換 x = e―リによ

りガンマ関数に移行する. ガンマ関数という呼称と表記記号 I ' ( x )はルジャンドルに由来する.初出は ルジャンドルの著作『さまざまな位数の超越関数と面積の算出に関する積分計

1 8 1 4年).同書 4頁参照.ルジャンドル自身は第二種 算演習』(全 3巻)第 2巻 ( オイラー積分と呼んだが,ルジャンドル以降ガンマ関数という呼称が定着し た . 3 ) ここで変数変換



t=u " ,

d t ndu = t u

を行なった.

円積分

単 位 円 周 上 の , 中 心 角 0に 対 応 す る 円 弧 の 長 さ は , 円 積 分 , す な

わち

Cl)

e= 『。ハニ dx 豆 ●

8 7 ー

という形の積分で表示される.ふたつの変化量 x と 0は方程式 x

=sin0を通じて相互に結ばれている.

また,対応する微分の関係

は方程式

(2) d0=

dx

~

で記述される. 円積分の形状を一般化していくとオイラー積分に導かれるが,他 方,正弦関数の加法定理はある種のタイプの変数分離型微分方程式 の代数的積分をぼくらに教えてくれる.それを見るために,今, 0 といま変化量,

T は定量として,

s i n0=X, と置こう.

S i l l< p=Y ,

S i l lr=c

また, 0と¢ は

(3) s i n0=s i n ( < p +) て という関係で結ばれているとする.

このとき加法定理により,

(4) s i n0=s i n< pc o sT+c o s< ps i nT となるが,これを書き直すと, xとyの間に成立する代数的関係式

(5) x=y五二戸+五二戸c が得られる.他方,方程式 ( 3 )の両辺の微分を作ると,

dx= cos(