折紙工学入門: 折紙-幾何学-ものづくりの架け橋 4759820620, 9784759820621

平安時代から親しまれてきた折り紙。 その折り紙の特性を生かし工学的に応用するために「折紙工学」が提唱されている。 ソーラーセイルやハニカムコアなど、コンパクトに収納でき、 強靭で軽量な構造物への応用が期待され、近年では世界的にも注目を集めて

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折紙工学入門: 折紙-幾何学-ものづくりの架け橋
 4759820620, 9784759820621

Table of contents :
まえがき
第1章 折紙工学とは
1.1 折紙工学の考え
1.2 折紙手法と幾何学の基礎および新たに考案した双対折紙
1.3 数理化とものづくり
第2章 幾何学の基礎と折紙への応用
2.1 幾何学の基礎
(a) 平面充填形(タイル貼り)
(b)正多面体(プラトンの立体)と半正多面体(アルキメデスの立体)
(c) 正多面体から半正多面体を作る手順
2.2 半正多面体の展開図
(a) 正充填形(正6角形、正方形)を用いた5種の半正多面体の展開図
図2.12
図2.14a
図2.15a
図2.15c
図2.15f
図2.15h
(b) アルキメデスの充填形を基にした8種類の半正多面体の展開図
図2.16a
図2.16e
図2.16g
図2.17a
図2.18a
図2.19a
図2.20a
図2.21f
(c) 平面充填形を用いて半正多面体を作った結果のまとめ
2.3 正多角反柱の展開図
図2.23a
図2.23f
2.4 正多面体と半正多面体間の相互の関連とそれらの折紙模型:双対折紙(Dual Origami)の提案
図2.25h
図2.26a
図2.27a
図2.27d
図2.28a
図2.28e
2.5 内心連結折紙による半正多面体の模型製作
(a) 立方体の展開図ベース
(b) 正8面体の展開図ベース
(c) 正12面体の展開図ベース
(d)正20面体の展開図ベース
(e) 立方体と正12面体の展開図をベースにした変形立方体と変形12面体の展開図とその模型
2.6 半正多面体とその双対体(カタランの立体)の折紙模型の製作:双対折紙による相互変換
(a) 切頂8面体 (No.3) ⇔ 4方6面体の相互変換
図2.36a
図2.37c
図2.37f
(b) 立方8面体 (No.6) ⇔ 菱形12面体の相互変換
図2.38c
(c) 20・12面体(No.7) ⇔ 菱形30面体の相互変換
(d) 切頂20面体(No.5) ⇔ 5方12面 体の相互変換
図2.39j
(e) 斜方20・12面体(No.9) ⇔ 凧形60面体の相互変換
図2.40g
(f) 変形12面体(No.13) ⇔ 5角60面体の相互変換
図2.41f
(g) 双対折紙で製作されるカタランの立体模型の形状誤差の評価
2.7 折り線が追加付与された多面体の展開図による模型製作:双対折紙の拡張も含めて
(a) 菱形12面体と菱形30面体
(b) 正多面体の変形・加工の例
図2.45d
図2.45g
(c) 星型多面体
図2.46i
図2.46j
2.8 正多面体による空間充填とそれらの折紙模型
(a) 単独の正多面体による空間充填
(b) 2種類の正多面体の組み合わせでできる空間充填
【コラム】星型正多面体の構成と内部構造
大星型12面体 (小星型12面体も含む)
大20面体
第3章 螺旋構造と折り畳みの基礎事項
3.1 螺旋
(a) アルキメデスの螺旋とその描き方
(b) 等角螺旋とその描き方
(c) 円筒状の3次元の螺旋
(d) 円錐状の3次元の等角螺旋
3.2 螺旋模様の折り線で作られる円筒と円錐殻:最強の構造と最弱の構造
図3.5c
図3.5e
図3.5g
図3.6i
図3.6j
3.3 折紙の基本事項
(a) 折り線、折り目
(b) 節点で折り畳むための条件
(c) 折り畳み法の拡張
(d) 等角螺旋の組み合わせで描かれた展開図の節点での折り畳み条件
(e) 頂点の構成
【コラム】自己相似とノーモン
第4章 折り畳みのできる模型と形が可変な立体模型
4.1 円筒、円錐の折り畳みモデル
(a) 塑性圧縮座屈試験
(b) 紙の捩り座屈試験
(c) 2種の座屈の展開図の関連と折り畳み可能な円筒の展開図の作成
(d) 螺旋型の折り畳み円筒
図4.4a
図4.4b
図4.4e
(e) 折り畳みのできる円錐
図4.5d
図4.5f
【コラム】折り畳みのできるペットボトルの試作・開発
4.2 3重螺旋を用いて螺旋型折紙の変遷を見る
図4.6a
図4.6b
図4.6c
図4.6g
図4.6h
4.3 長方形断面の筒の捩り折りによる2重螺旋の模型
図4.7e
4.4 円錐形状の2重、3重螺旋の模型
図4.8a
図4.8c
図4.9a
4.5 円錐/角錐体等の組み合わせによる折り畳みのできる模型
4.6 造形美と機能に優れた製品製作への応用
4.7 円形の平面膜の巻き取り収納モデル
(a) アルキメデスの螺旋の修正型を用いた円形膜の巻き取り収納モデル
図4.14b
図4.14c
図4.14d
図4.14e
図4.14f
図4.14g
(b) 等角螺旋状折り線による円形膜の折り畳み収納モデルの一般化
図4.16a
図4.16b
図4.16c
図4.16d
【コラム】ひまわりの小花の螺旋状配列と折り畳み模型
(c) 中央にハブを設けて巻き取る模型の製作(膜の厚さの考慮)
(d) 服飾品のデザインヘの応用
4.8 形が可変な立体のデザイン
図4.19a
図4.19c
図4.20a
図4.21a
図4.22b
【コラム】折り畳み円筒模型の展開
第5章 2枚貼り折紙
5.1 対称2枚貼り合わせ折紙(2枚貼り折紙)の基本模型
5.2 環状筒の折り込み模型
5.3 角錐や角錐形の袖や胴からなるT字分枝形の洋服模型
5.4 幾何学模型の製作
(a) 捩れ多面体
(b) 立方体型の捩れ多面体の折紙模型の製作
(c) 新しい2枚貼り折紙による枝部の長いモジュールの模型
(d) 空の多面体の折り畳み
第6章 コアバネルと3次元のハニカムコア
6.1 コア材料とは
6.2 平行6面体による空間充填形を用いたコアパネル
(a) コアパネルのモデル化と模型製作
(b) コアパネルの試作
【コラム】金属結晶の構造と空間充填
6.3 3次元ハニカム
(a) 基本の厚さ一定(等厚)のコア
(b) テーパのある(上面が下面に対して傾斜する)コア
(c) 両側にテーパのあるコア
(d) 湾曲した断面のコア
6.4 折り畳みのできる仕分け箱の設計
(a) 仕分け箱(底なし)の基本形
(b) テーパ箱(底なし)
(c) 底部分の付与と底のある箱の折り畳み
(d) 仕切り数の多い箱:3段型の箱
(e) 上蓋付きの仕分け箱(底あり)
(f)上蓋付きの箱(底あり)の簡便な製作法
第7章 折紙の工学化の課題と期待
7.1 ものづくりの課題
(a) 簡便加工法の開発
(b) マイクロ折紙
7.2 折紙手法の学術的な課題
7.3 新しい素材と機能を用いた折紙製品
7.4 教育への応用の課題
(a) 折紙の知見を用いた幾何学の教育資材の開発
(b) 幾何学的な知見に基づく多目的に使える加工素材の開発
7.5 折紙技術と他の学術研究との関連付けと他分野への寄与
(a) アサガオの雷の開花のモデル化
(b) 昆虫の後翅の折り畳みとその進化
付録
付録1 コルゲート模型の製作法
付録2 黄金比、黄金角とフィボナッチ数
(a) 黄金比と黄金の鈍角および鋭角2等辺3角形
(b) 黄金分割と黄金角
(c) フィボナッチ数
付録3 等角螺旋状折り線による円形膜の折り畳み収納モデルの一般化
付録4 折紙模型の製作
(a) DNA型2重螺旋模型の制作
(b) コラーゲン型の3重螺旋模型
(c) 円形膜の巻き取り模型(膜厚を考慮した模型)
(d) 全面凹の12面体と芯部が可視化された大20面体の模型製作
付録5 捩り試験
(a) 円筒の捩り座屈の実験と折り畳みのできる円筒の設計
(b) 円錐殻の捩り座屈の実験と折り畳みのできる円錐の設計
参考文献
(1)-(22)
(23)-(47)
索引
あかさ
たな
はまやら
奥付
「折紙工学入門」展開図無料ダウンロードHP
第2章
図2.12
図2.14a
図2.15a
図2.15c
図2.15f
図2.15h
図2.16a
図2.16e
図2.16g
図2.17a
図2.18a
図2.19a
図2.20a
図2.21f
図2.23a
図2.23f
図2.25h
図2.26a
図2.27a
図2.27d
図2.28a
図2.28e
図2.36a
図2.37c
図2.37f
図2.38c
図2.39j
図2.40g
図2.41f
図2.45d
図2.45g
図2.46i
図2.46j
第3章
図3.5c
図3.5e
図3.5g
図3.6i
図3.6j
第4章
図4.4a
図4.4b
図4.4e
図4.5d
図4.5f
図4.6a
図4.6b
図4.6c
図4.6g
図4.6h
図4.7e
図4.8a
図4.8c
図4.9a
図4.14b
図4.14c
図4.14d
図4.14e
図4.14f
図4.14g
図4.16a
図4.16b
図4.16c
図4.16d
図4.19a
図4.19c
図4.20a
図4.21a
図4.22b

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I n t r o d u c t i o nt oOrigami-basedEngineering

折紙工学入門 折紙―幾何学_ものづくりの架け橋

野島武敏

T a k e t o s h iNojima

化 学 M人

まえ がき

表題の 「 折紙工学」は、折紙手法をものづくりに応用しようと 考えた著者の造語である。 折り 畳みの研究を始めたきっかけは、 NASAが打ち上げたスパルタン 207衛星の レンズアンテナ を支える、折り畳まれたチュ ーブ状の支柱が宇宙空間で奇妙な形で展開する様子を見たことや、 使用済みペッ トボト ルの減容化の話を受けたことなどによる。このような状況で、円筒、円錐 、 パラボラ面や球などの基本要素の折り畳み法を数理的に開発しておくことが必要だろうと考え た。折り畳み可能な模型製作、環境負荷を軽減する折り畳み容器の創作、折紙特性を生かした 軽量構造の開発などを錦の御旗に、折紙研究を始めた 。当 時、大学レベルで研究を始めていた のは、英国ケンブリッジ大学のグループのみであったが、彼らの研究手法は工学的ではあるが 学術 的な品位も感じた 。彼らに伍すため、座屈の様式、植物のパターンの解析、昆虫の翅の折 り畳みなど、折り畳みに関連 • 寄与する と思われ るあらゆるものを研究テ ーマの候補とした 。

折紙工学を学術的に組み上 げる縦糸として幾何学を 、横糸として 他の学術研究との関連付け を目指した 。捩れ多面体や空間充堰についての幾何学的知見を軽量コアの模型作りに応用した。 折紙手法によるものづくりを更に深化するためには、幾何学的意味を持つ折紙模型を教育現 場に提供し、幾何学に精通した工学研究者や折紙愛好家を育てねばならない 。 このように考え、 本書では幾何学に関する記述に多くのページを費やした。‘双対”の考えに甚づき、多面体の展 開図形の内心点を結ぶ線分を折り線群とする‘双対折紙”を提案し、多面体を別の多面体 に変換 する手法や星型多面体などの難解な幾何学の立体模型を中学高校生が自作し、理解できるよう にすることを目指した 。折紙手法が 3次元の幾何学の解釈に何らかの形で寄与するこ とができ るようになれば、これらが逆にものづくりに大きく貢献するに違いないと考えた。本書では折 紙幾何学 に重心を 置きつつ、主に著者がこれまでに得た研究成果を総括し、コンパク トに 記述 しよ うと考えている。 最後に、 折紙研究を始めた ころ共同で研究された亀井岳行氏(現、弁理士)、その後 、研究で 尽力いただいた斉藤淳( 三菱重工業株式会社 )、斉藤一哉( 九朴I 大学 ) 、石田祥子 ( 明治大学)ら諸 氏、長きにわたり甚大な協力を賜った杉山文子氏(元、京都大学 )に感謝する 。ま た、本書の執 筆 に際し的確 なご指摘を数多くいただいた 化学同人の浦留貴彰氏に深甚なる謝意を表 したい 。

2022年 6月 野島武敏

目次 第 1章折紙工学とは..................................................................1

1 . 1 折紙工学の考え ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1 . 2 折紙手法と幾何学の基礎および新たに考案した双対折紙...........................5 1 . 3 数理化とものづくり ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 第 2章

幾何学の基礎と折紙への応用・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .・ ・ ・ 1 3

2 . 1 幾何学の基礎・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 4 2 . 2 半正多面体の展開図 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 5 2 . 3 正多角反柱の展開図 ・ 2 . 4 正多面体と半正多面体間の相互の関連とそれらの折紙模型:双体折紙 ( D u a lO r i g a m i ) の提案 ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 6

2 . 5 内心連結折紙による半正多面体の模型製作・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・42 2 . 6 半正多面体とその双対体(カタランの立体)の折紙模型の製作:双対折紙による相互変換・ ・50 2 . 7 折り線が追加付与された多面体の展開図による模型製作:双対折紙の拡張も含めて… 60 2 . 8 正多面体による空間充填とそれらの折紙模型..............・・ . . .. . . .. . . . . . . . . . . .・67 コラム

第 3章

3 . 1

星型正多面体の構成と内部構造........ . . . . . .. . . . .. . . . . . . .. . .. . . . . . . . . . . . . .7 0

螺旋構造と折り畳みの基礎事項・・・・....... . .. . . . . . . . . . . . . .. . .. . .. .. . . . . . . . . . .75 螺旋..........................................・ . . . . . . . . . . .・ . . . . .. .. . . . . . . . . .7 6

3 . 2 螺旋模様の折り線で作られる円筒と円錐殻:最強の構造と最弱の構造・・・・・・・・・・・・・ ・ 8 1

3 . 3 折紙の基本事項.....・.......・..........・・・・・・・・・・・・・ ・.....・.............・....8 4 コラム

第 4章

自己相似とノーモン・・・・・・・・・.............................................88

折り畳みのできる模型と形が可変な立体模型・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・89

・ ・ ・. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .90 4 . 1 円筒、円錐の折り畳みモデル・・・ ・ コラム

折り畳みのできるペットボトルの試作・開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・..96

4. 2 3重螺旋を用いて螺旋型折紙の変遷を見る ・ ・. . . . . . . . .. . . .. .. .. . . . . . . . . . .. .. . .. . . .9 8 4 . 3 長方形断面の筒の捩り折りによる 2重螺旋の模型..........・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100 4 . 4 円錐形状の 2重 、 3 重螺旋の模型・ ・ ・ ・ ・ ・ . .・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . .・ ・ ・ . .・ ・102 4 . 5 円錐/角錐体等の組み合わせによる折り畳みのできる模型・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 0 3 ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 5 4. 6 造形美と機能に優れた製品製作への応用 ・

4 . 7 円形の平面膜の巻き取り収納モデル・・・・・・・・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 6 コラム

ひまわりの小花の螺旋状配列と折り畳み模型・・・・・・・・・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・1 1 1

・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 4 4 . 8 形が可変な立体のデザイン・・・・・・・・・ ・ コラム

第 5章

折り畳み円筒模型の展開・ ・ ・・・・・・・・・ ・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・ ・・・・・・ ・・・・・ ・116

2枚貼り折紙・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・117

5 . 1 対称2枚貼り合わせ折紙 ( 2 枚貼り折紙) の基本模型・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・1 1 8 5. 2 環状筒の折り込み模型・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 2 2 5 . 3 角錐や角錐形の袖や胴からなる T字分枝形の洋服模型・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 3 5 . 4 幾何学模型の製作・・・・・・・・・・・・・・........................・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 4 第 6章

コ ア パ ネ ル と 3次元のハニカムコア・・・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・1 3 3

6 . 1 コア材料とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ . .・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・ ・ ・・ ・・・・・・ ・・・・・ 1 3 4 6 . 2 平行6面体による空間充埴形を用いたコアパネル・・・・・・・・・・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 3 5 コラム

金属結晶の構造と空間充填................ . . . . . . . .・・・・・・・・・ ・ ・・・・・・・・・・・ ・139

6. 3 3次元 J¥ニカム・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 4 1 6 . 4 折り 畳みのできる仕分け箱の設計・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・146 第 7章折紙の工学化の課題と期待...............・・.....................・・・........1 5 3

7 . 1 ものづくりの課題・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 5 4 7 . 2 折紙手法の学術的な課題..... .. . . . . .. .. . .. .. . . . . . . . .. .. . .・ . . .. .. . . . . . . . . . . . . .1 5 5 7 . 3 新しい素材と機能を用し 9た折紙製品・・・・・・・・・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ 1 5 5 7 . 4 教育への応用の課題・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・157 7 . 5 折紙技術と他の学術研究との関連付けと他分野への寄与・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 5 9



録・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 6 3 付録 1 コ)レゲート模型の製作法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 6 4 付録2 黄金比、黄金角とフィボナッチ数........................・・・・・ ・ ・・ ・・・・ ・・・・・・ ・166 付録3 等角螺旋状折り線による円形膜の折り畳み収納モデルの一般化・・・・・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ 1 6 9 付録4 折紙模型の製作・・ ・ ・ ・・ ・・ ・・・ ・ ・・・・・・ ・・・ ・・・・・・ ・ ・・・ ・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・ ・・ ・・・・・ ・・・・・ 1 7 1 付録5 捩り試験・ ・ ・・・・・ ・・・・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・・・ ・・・ ・・・・・・ ・・・・ ・ ・・ ・・・・・・ ・・・・ ・ ・・ ・・・・ ・・・・・・ 1 7 8

参考文献....................・ . . .・ ・ ・ ・ • •・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ •・ ・ ・ ・ •・ ・ ・ ・ ・ •・ •・ ・• ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・• ・ •・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ •・ ・ ・ •・ ・ 1 8 1 索弓 I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 8 3

本書に掲載した展開図の一部を、化学同人ホームページで公開しています。

h t t p s : / / w w w . k a g a k u d o j i n . e o . j p / b o o k / b 6 1 4 4 6 8 . h t r n l

第 1章 折 紙 工 学 と は

第 1章

1 . 1 折紙工学の考え

折紙工学とは

折紙構造が持つ折り畳み機能と軽量構造強

工学的に簡素な加工をもたらすならば、平面

化機構などの優れた特性を工学に応用するこ

紙へのスリットや切り抜き 、糊付けなども容

とを考え、折紙の研究を始めてからおよそ 2 0

認した極めて広いものを 言 う 。

年余が過ぎた。最初、折り畳み ・展開ができ

折紙遊びは古く平安時代にもさかのぼると

る宇宙構造の創出を念頭に、甚本的な構造と

も言 われ、折紙やそれから派生した種々の手

なる円筒や円錐、円形膜などの折り畳み法の

法はわれわれの日々の生活に溶け込んでいる。

数理化を系統的に行い (I-7)、切紙の手法を応

そのため、わが国では折紙や切紙を遊びとし

用して任意の断面形状を設計できる 3次元ハ

て捉え 、学術的観点からその本質を明らかに

ニカムコアと名付けた強靭な軽量構造の折紙

しようとする努力を怠って来たとの感は否め

モデルを創出した (8¥ これらの研究結果を

ない。近年、世界中で折紙の持つポテンシャ

ベースに折紙の工学的な応用をめざした表題

ルに着目し、学術的な研究が盛んになってお

0年前に提唱し、京都 の「 折紙工学 」をほぼ 2

り、わが国でも伝統に培われた膨大な知見を

新聞でこれが最初に紹介された。その後、

利用し研究開発を更に進展させねばならない。

『 ネイチャー』誌 (9)、日米の 10紙余の日 刊紙

あまり語られることはないが、多くの工業

や NHKの 「 サイエンス ・ゼロ 」などで紹介さ

製品の軽量化のため隠れた部分で頻繁に用い

れ、折紙の産業応用に大きな関心を持っても

られ、今日の航空 • 宇宙産業の隆盛をもたらし

らえたと考えている

ここで言 う折紙

た図 1 . 1( a )に示す超軽量 、高剛性のハニカム

工学とは、広い意昧で折紙の手法を用いるも

コア(蜂の巣構造)は、終戦直後 、英国の技術

ので、伝統的な平面シートの折紙のみならず、

. 1( b) ( c )Jを基に 者がわが国の七夕飾り [ 図 1

( a )

(1 0-1 4 )0



( b )

( c )

図1 . 1 (a)ハニカムコア(蜂の巣構造) 、上下に表面板を貼り付けることで積層板となり、軽皇で高剛 性の航空宇宙材料を作成、 (b)( c )七夕でんぐり

2

出し 、螺旋状の折り線を用いてこれらの構造

どは定かでないが、先人の残した優れた折紙

をデザインした。また、折り線の作る螺旋模

の玩具に秘められた本質をわが国では工業的

様と植物や貝などの生物のそれらには数学的

に用いる機会を失った。例えば、わが国の先

な類似性(アナロジ一)があることに着目し、

端技術の 1つであるロボット工学は江戸期の

数理面から統一的な解釈を与える努力を行っ

からくり技術を基にしたと 言われる。伝統技

た (208、22)。これによって開発された折紙模型

術の多くは手仕事であるため、まさにローテ

を、逆に生物の形態や構造 、動作などの理解

クではあるが、学術的な手が加わると先端技

を深めるためのモデル製作に用いた。それゆ

術に変貌する場合も多い。そうであるならば、

え、本書では非対称な螺旋のパターンが折り

折紙技術も先端技術に脱皮させ得る残された

畳み構造の主要なキーワードの 1つになって

伝統文化の 1つではないだろうか?

いる。

著者はこのような考えで、折り 畳まれた状

自然界には螺旋形状を呈するものが極めて 多いにも拘らず 、学校教育ではこれに十分な

あるいはこれらを組み合わせて作られる半球 、

関心が払われることがなかったように思われ

パラボラ面などの構造の折り畳み方法を数理

る。非対称な螺旋とはどのようなもので、わ

的に定式化し 、数多くの模型を世界に先駆け

れわれはどこでそれらを見ているのであろう

て提案してきた ( l-7、 1 5-20A) 。 4方の端が自由に

か。以下に 2つ幾何学模様を紹介する。 図 1 . 2

動く l枚の紙では折り畳みとその展開は自由

( a )は正方形の 4辺の中点 A、B、C、D を結

にできるが、円筒、円錐、球など閉じた、ある

んで正方形の内部に小さな正方形を描き、

いは一部が閉じた力学的な拘束がある構造を

れを繰り返すことにより得たものである。 図

折り畳むのは、思うほど簡単なことではない。

1 . 2( b )は作られた図形に色付けしたもので



態から良好に展開できる円筒、円錐や円形膜、

らせん

著者は 、折り線を螺旋状に配置することで構

典型的な対称の形状である。普通は決して螺

造に折り畳みと展開の性能が生じることを見

. 2( b )を( c )の 旋状には見えないのだが、 図 1

( a )

( b )

( c )

a )、 ( b )〕と螺旋模様 ( c )(各辺の中央点を連結) 図1 . 2 対称な模様〔 (

折紙工学の考え

発明したとも 言われる。この通説の真偽のほ

3

第 1章

さくなる半径上にある 。それゆえ 、螺旋図の ( d )

( e )

折紙工学とは

境界線は等角螺旋と呼ばれる曲線になる[例 えば、 図 1. 2( c )の螺旋のカドの点では常に 半径方向と 45°である]。本書においては、 折り畳み模型の大部分は(歪んだ) 4角形の自



1 . 2(続き) 対称な模様 (d)と螺旋模様 (e)

己相似形をもとにした展開図で作られたもの を使用する。

ように色を塗りかえると 4本の螺旋が描く螺

図 1. 3( a )は細長い 2等辺 3角形(底辺部は

旋模様がくっきりと表れる (23)。人の目は意外

斜め切断)を色分けして示すように相似形の

に、当てにならないのである。同じ操作を正

少し歪んだ台形形状になるよう同じ角度で

8角形に行うと 図 1 . 2( d )( e )を得る。

切断 したも のである。 図 1 . 3( b )( c )がそのう

これらの螺旋図は数学的に面白いことを含

ちの 2つを取り出したもので、図 1. 3( c )の

んでいる。いずれの医も相似の 3角形で全面

ように右の部分を裏返して貼り付けてゆくと

が埋め尽くされており(自己相似という)、そ

図1 . 3( d )の巻貝の螺旋形になる(第 3章末コ

れらの頂点は等比級数的に(一定の比率で)小

ラム参照)。

( a )

( d)

鼻 ( b )

( c )

図1 . 3 対称形状から螺旋形状への変換、 ( a )相似形の台形要素に分割、 ( b )分割時の要素の配置、 ( c ) 隣の要素を裏向けて配置、 ( d )螺旋状の模様(半径方向も螺旋形状)

4

双対折紙 ものづくりや教育に用いられることを期して記述した本書の概要を以下に示す。最初に、折 紙模型を作る際に必要と考える基礎的な事項と折り畳みの模型製作の具体例を示す。次に、折 紙とものづくりをつなぐ基礎となると考える幾何学の基本的な知見について述べる 。また、幾 何学の多面体間の関連に関する双対の考えを用いた、新たに考案した双対折紙の手法を述べる。

( a ) 折紙手法

わせて著者自身が考案したぐうたら万能法で

折り 畳みのできる模型を作る のに不可欠な

ある。 この手法はエ レガンス には欠けるが、 応

基礎的知見は意外に少なく、折り線が集まる

用の範囲に特段の制限がなく 、かつ、折り畳

節点で平坦に折り畳む条件(補角条件)や節点

みの本質的なところにつながっていると自負

に集まる折り線数を偶数(例えば、 4本 ; l節

する代物である 。最初に 、正方形状に折り畳

点 4折り線法、 図 3 . 9参照)にせねばならな

まれる筒を例にしてこ の手法の概略を述べる。

いことなど、簡単な事項のみである (24)。 しか

図1 . 4(a)に示すように薄 い紙 に等間隔で

しながら、 このような基本的な知見だけで折

水平の折り線を 十数本引く。 図 1 . 4( b )のよ

り畳みのできる模型をすぐに作れるわけでは

うな短冊を中心軸と

なく、これらの必要な条件を所望する模型に

と直角に曲がる[ 図 1 . 4( c ) Jことを 考 慮 し



a=45°で折り曲げる

うまく嵌め込むことが必要である。本書で主

て、最上段 にこれ らの折 り線と 45°になる よ

に用いる折り畳み方法は 4つの手法を組み合

う 5本の折り線用のガイド線を描いておく。

( a )

( c )

山 : こ : 折 り



o l

図1 . 4 重ね折りと斜め切断による折 り畳み可能な筒の製作、( a )短冊状の折り目の導入、( b )( c )短冊 の折り曲げ

1 .2 折紙手法と幾何学の基礎および新たに考案した双対折紙

1 . 2 折紙手法と幾何学の基礎および新たに考案した

5

第 1章 折紙工学とは

( d )

( f )

( e )

二盆

5、 6枚折 り 重ねた状態

— 山折 り-- — 谷折 り

A



( h )

( g )



( i )

開く

折り畳み

( j )

ご閃 i 誓 こ 時

( k )



I : 悶 け 時

図1 . 4( 続 き ) ( d )折り重ねた状態、 ( e )重ね折り、切断、 ( t )表裏則を用いて折り線の組み替え、 ( g )( h) 折り畳みの状態と引き伸ばしたときに生じる両端の離れ、 ( i )斜め切断による折り線の螺旋化 (3段上がり の場合)、 ( j )( k )折り畳み特と展開特の折紙模型の様子

図 1 . 4( d )の よ う に 水 平 の 折 り 線 で 山 、 谷 交

ような折り線図とする(表裏則)。これを折る

互に折り、短冊状に折り畳む。これを 1枚の

. 4( g )のように 4角形状にすき間なく と図 1

. 4 紙と見なし、ガイド線に沿って強引に 図 1

閉じた形で折り畳まれるが 、引き伸ばすと両

( e )のように折り畳む(重ね折り)。このとき 、

. 4( h) J。離れた両端を接合す 端が開く [ 図 1



1 . 4(a)の 左 右 端 の ガ イ ド 線 を 一 致 さ せ 、

る と 筒 の 伸 縮 が 困 難 な の で 、図

1 . 4( i )のよ

糊代部分を残してハサミで切り捨てる。平面

うに(例えば) 3段 上 が り で 斜 め に 切 断 す る

. 4( f )の に戻 し 、 山、谷折りを入れ換えて 図 1

(斜め切 断法による折り線の螺旋化。 )

6

に一致する(閉じる)ことを表す。円筒な

すると 図 1 . 4( j )( k )のような伸縮のできる模

どの閉じた構造の折り畳みを実現する基

型が得られる。閉じる条件は、個別に検討し

本である( 図 4 . 3参照)。

なければならないが、斜め切断法を用いたこ の模型では、 図 1 . 4(g)で元々担保されてい

( b ) ものづくりを支える幾何学の知見と

るので考慮が不要である。 a=30° として、

双対折紙による多面体の創作と変換

後述の 図 4 . 4( e )の 6角形の模型が自作でき

折り畳みのできる模型などをデザインする

れば、円筒の折り畳み模型の設計法をほぼ習

とき展開医は繰り返しの図形になる。このよ

得したものとしても良いと考える。

うな模様は幾何学の平面充填の考えが韮礎に

上で用いた 法則をまとめると

なる。また 3次元の模型を製作する際には、

( 1 )表裏則;節点で 1つの折り畳み方法があ

多面体や空間充填などの知見が何らかの形で

ると、(裏の)もう lつ別の方法が必ずあ

その設計に寄与する。本書では、折紙の手法

る。これを 用い ると折り畳みのできる模

を用いたものづくりを考え、新しい折紙模型

型の設計が極めて楽になる。 1節点 4折

の創成に役立つと信ずる幾何学の基本事項を

り線のとき、他に 1つ[ 図 3.10( a )( b ) l、 記述する。

1節点 6折り線のときには、 他に 2つあ

( 1 )正充填形やアルキメデスの平面充填形と

半正多面体 (25-281などの立体の展開図と

る 。 ( 2 )重ね折りと対称性;(矩形の)紙を短冊状

の関連を確認するため、平面充填形を直

に折り重ね、 1枚と見立てて一度に折る。

接用いて半正多面体の展開図を作る方法

開けてみると、対称の折り目が多数作ら

を採用する。これは、平面充填と多面体

れている。折り線の対称性は折り畳みを

の間の関連など幾何学の基本部分の理解

可能にし 、折り畳み構造を設計する際の

を明確にすることを意図するものであ

キーワードの 1つになる。

る 。

( 3 )斜め切断による螺旋模様の模型の製作;

( 2 )多面体における双対の考えを用いてその

対称に描いた折り線図を斜め切断するこ

展開図に折り線を付与し、別の多面体を

とで、折り線図の螺旋化がなされる。結

作る方法を創案した。この手法を双対折

果、折り畳みのできる筒などを簡単に製

紙 (DualOrigami)と名付けた[ 第 2章

作できる (l、 2 )

2.4( b )J 。これは 、展開図を作る要素図

0

( 4 )閉じる条件 (l、 2 );筒などの展開図を平坦に

形の中心(一般的には内心)を相互に結び

折り畳んだとき、展開図の左右端が完全

折り線とし、 1つの多面体を別の多面体

2 折紙手法と幾何学の基礎および新たに考案した双対折紙

筒状にして左右 (A-B、A'-B')を糊付け

7

第 1章

折紙工学とは

( a )

( c )

( b )

造形

→ ( d )

難解な幾何学 模型の製作

全面凹の正 20面体 ( 大1 2面体 ; 透明体) 黄金の鋭角 2等辺三角形 による 3角錐

内部の見える 大星形 12面体 中心部の芯 ;正 1 2面体 図1 . 5

中心部可視化の大星形 12面体

(a)~(c) 多面体の造形加工、コルゲート面の立方体、その変形体および切頂 20 面体(サ ッ

カーボール)、 ( d )( e )双対折紙による中心部が可視化された大星型 1 2面体(透明体部;大 1 2面体、芯; 正1 2面体)、 20個の外付けのツノ部分;黄金の鋭角の 2等辺 3角形を面とする正 3角錐

に変換する手法である。このような創作

すべてに黄金の鋭角 2等辺 3角 形 3個 で

の過程で 、図 1.S (a)~(c) に示す波紋状

作 ら れ た 正 3角錐を配置すると、大星型

のコルゲート面からなる立方体、その変

1 2面 体 に な る 。また 、 そ の 一 部 を 取 り

形 体 や 切 頂 20面体(サッカーボール)な

2面 体 の 芯 部 分 を 可 視 去ると、大星型 1

どの半正多面体が作られ、平面からなる

2面 できる。この模型により 、大 星 型 1

多面体模型を細工し、多面体に造形性を

2面体を芯とし 、これに 12枚 の 体が正 1

付与できることが分かった 。

. 5( e )の 外 枠分]を 貼 星 型 正 5角形[ 図 1

2面 体 の 展 開 図 に 双 対 折 紙 また、正 1

り付けて作 られていることが目視に より

を行うことによって著名なケプラー ・ポ

理 解 ・納得できる。また 、星型多面体の

2面 アンソの星型正多面体の一つ、大 1

lつの大 20面体の可視化模型も双対折紙

体が瞬時に作られることが示された [ 図

により作られ、この手法による一連の模

1 . 5( d )中央の透明体、 図 2.27( j )( k )参

型作りにより、難解な星型正多面体の理

2面 体 の 内 部 に 正 1 2面 体 照 ]。 こ の 大 1

解が容易になることが示される[ 第 2章

を 芯 と し て 配 置 し 、外 側 の 20個 の 凹 面

末のコラム および付 録 4( d )参照]。

8

( a ) 数理化、定式(公式)化

み型のボ トルも素晴らしい製品が試作された

アルキメデスの螺旋や等角螺旋の甚本的な

にも拘らず、なぜか製品化 はできなかった苦

性質とそれらの利用法、主に折り畳み模型の

い経験も し た。ものづくりはその創案• 発想

モデル化 などへの応用については第 3章、第

から、設計、製作して製品を作り上げるまで

4章で述べる。折り畳みのできる円筒(角筒)

の長い道のりを克服する力を必要とする。

の展開図を作ることは 、慣れればそれほど難

多くのものの習得がそうであるように、も

しいことではない。等角螺旋の基本がマス

のづくりも最初は広い意味で模倣である。し

ターできれば、円錐のそれらの設計も自由に

かし 、 ものまね 、パクリはひんしゅくもので

できるようになる。等角螺旋やアルキメデス

ある。ここでは生物の機能や構造の模倣やお

の螺旋を用いた折り畳み模型は、円筒、円錐

もちゃのハイテク化などを 、その候補として

や円形膜については数理的に定式化している

推奨したい。生物の模倣はバイオミメテ ィク

ため (1-7、20A)、無数にある折り畳みのできる

ス(生物模倣学)と呼ばれ 、実際、多くの製品

折紙模型を自由に創作できる 。 また 、( 本書

がこの手法で実用化されている。初心者で

では述べていないが)等角螺旋と関連する極

あっても 比較的取り組みやすい新しい研究分

座標変換を学校教育で習得済みであれば、こ

野である (29)。本書で述べる円形膜の巻き 取り

れを併用することで模型の創作範囲が一挙に

収納法は 、ヒマワリ の種子の配列の模倣から

増えるとともに、パソコンや市販の円形グラ

スター トしている 。また 折り 畳み構造をしな

フ用紙を用いて数学の実習教育にも採用でき

やかな構造と見て、昆虫や植物の構造に興昧

ると考える。数理化 して 一般式を作ることは

を持ち、その分析と応用を考えてきた。その

学術研究の王道でもあり 、数理化が進んで 、

ため本書では植物の形態などについても 記述

新たな分野が開発されることを期待している 。

し 、 第 7章では著者自身の未解決の問題とし て、朝顔の開花模型や昆虫の翅の折り 畳み に

( b ) ものづくり

ついて記した。最初に述べたように 、ハニカ

折紙の手法を用いてものづくりを具現化す

ム構造は玩具の模倣と見ることもでき 、少し

る際には著者も難渋することが多い。実際、

の遊び心とそれによる発想の転換で面白いも

製品化されたものは比較的高額なもので、汎

のが創作でき る夢は大き い。 図1 . 6( a )-( e )は JAXAのイカロスと名付



用品は数少ない 。著者が最も期待した折り 畳

3 数 理 化 とものづくり

1 . 3 数理化とものづくり



第 1章

折紙工学とは

( a )

( b )



図1 . 6

( f )

( e )

( d )



( g )



( a )JAXA のソーラーセイル(イカロス)、 © JAXA 、 (b)~(e) 展開時とその収納過程、 (f) ( g )

夕顔の語の開花・展開

関連する面白い研究領域なのである。 これら

ル(30)で 、 その収納過程を想定したものであ

のことに関して、最後に次のことを記してお

る 。 この折り畳みのキーは十文字 に設けられ

きたい 。 ものづくりにおいては、 ピュアで常

た折り線である。著者がこれを見たとき、最

識的な感性や感覚が何といっても正解への近

初に思いついたのが夕顔の展開と収納 [ 図

道なのではなかろうか?

1 . 6( f )( g )l である。ただ、この折り畳みがど

は同じ部材の柱を使って家の側面を作ったと

のような着想でこのようになったのかの経緯

きのポンチ絵である。直感的に、 どの構造が

については知らない。

地震に対して安全と感じるだろうか?

本章の最初に述べた折り畳みの機能は、



けられた宇宙ヨットと呼ぶべきソーラーセイ

図 1 . 7(a)-(d)

普通

は図の ( a )、( b )、( c )は同じで ( d )が最弱、あ

なやかに展開 ・収納ができる 柔軟な折り畳み

るいは ( a )、( b )、( c )、( d )の順に選ぶのでは

(最弱ともいえる)構造をもたらし( 第 4章、 )

ないだろうか 。図 1 . 7( d )はいかにも壊れそ

構造の強化の機能は軽量のハニカムコアや強

うである 。折り 畳み構造の展開図は、正にこ

靭なパネルの創成をもたらす(第 6章)。これ

の壊れやすさの普通の感覚に従って作られる

らの機能は相反する両極端の特性で、折紙に

( 図4 . 6参照 ) 。最強の構造と最弱の構造はほ

よるものづくりは、正にこの両極端の特性に

とんど紙― 璽 ちょっとした違いであるとも

1 0

( b )

( a )

( c )

3

( d )



理 化 と

も の づ





















図1 . 7 同じ量の材料を使った骨組み構造の強度や変形しやすさの感性による評価

. 7 ( d )の段あたりの 数を 言える。また 、図 1

折紙を 甚にする工学について 、公表されたす

5つ 6つに増やして丸めると、対角線と鉛直

べての研究成果を網羅したものではない。な

方向の線分が円筒状に巻く螺旋となり、 図

お、従来の折紙手法による幾何学模型の製作

1 . 4で述べた閉じた模型の折り畳みは螺旋構

については川村みゆき著 『 多面体の折紙」(31)、

. 6 造のストーリーが成り立つのである( 図 4

前川純著『折る幾何学」

参照)。

アプローチした幾何学的な知見については、

など、純学術的に

(32)

最後に、本書の内容は主に 、著者が永年に

永年、著者が参考にして来た一松信著 「正多

わたり考えてきた折紙の工学化についての考

面体を解く 』(25)、幾何学全般の極めて幅広い

えを記述したもので、幾何学の基礎的部分や

知見の習得は、格段に詳しい宮崎興二著 『 多

折紙の基本事項を除いて、ほとんどすべては

面体百科』 (28)、高度な幾何学模型の製作につ

著者自身や共同研究者と行った仕事の記述か

いてはウェニンガー著 『 多面体の模型』(33)な

らなっている。そのため、著作内容は現在の

どを参照、参考にして欲しい。

1 1

第 2章

幾何学の基礎と 折紙への応用 ものづくりの際に必要な平面充填形や空間充 撰形の基礎的知識、および種々の多面体などの 幾何学の基礎的な知見について述べる 。正多面 体の展開図については、正多角形を組み合わせ て作る慣用のものではなく、正充填形やアルキ メデスの充填形などの平面充填形を用いて作る ことを新たに試みる。また、多角形の面の中心 (内心)を結ぶ線分を新たな折り線として付与し、 多面体を加工 • 創製する新たに考案した双対折

紙と名付 けた折紙手法を紹介する 。

第 2章

2 . 1 幾何学の基礎 (25-28)

幾何学の基礎と折紙への応用

( a ) 平面充填形(タイル貼り)

角形で作られるタイル貼りに対して、 これら

平面充填とは 、ある形の図形で平面を隙間

8種類の充填形は何種類かの正多角形の組み

なく敷きつめることを言い、敷きつめられた

合わせによるもので、 アルキメデスの充填形

平面全体を平面充填形(タイル貼り)と言う。

と呼ばれる。結局、正多角形だけによるタイ

タイル貼りは 1種類だけによるものあるいは

ル貼りは 図 2 . 1の 3つとあわせて合計 1 1種

数種類の組み合わせによるものなど、その方

類になる。これらの充填形は 1つの頂点に集

法は無数にあるが、基本となるものには正充

. 2の各図の まる多角形の組み合わせで、 図 2

填形とアルキメデスの充填形などがある。

下に記した記号で呼ばれることが多い 。例え

. 1に正方形や正 6角形を基にする代表 図2

ば図 2 . 2( a )は 1つの頂点のまわりに集まる

的なタイル貼りを示す。基本となる周期的な

多角形が正 3、6、3、6角形の順であるため

タイル貼りのうち、 1種類の正多角形のみで

( 3 ,6 ,3 ,6 ) と記され、そのように呼ぶこと

平面を充填できるのは図に示されるように正

も多い。

3角形、正方形(正 4角形)および正 6角形の

図2 . 3に正方形などの多角形を基本とする

みであり、単一の正多角形だけを用いて作る

代表的なタイル貼りの例を示す。このような

ため正充填形と呼ばれる。

タイル貼りの模様は無数にある。関連する問

図2 . 2に示された平面充填形は、 2種類以 そ

上の正多角形の組み合わせによるもので、

題として 、タイル貼りをした後、色分けする 方法の問題、凹凸を設けたタイルの陰影によ

れらは正方形、正 3、 6、 8、12角形の組み

る模様の変化など幾何学的あるいは実用的に

合わせからできている。 図 2 . 1の単一の正多

興味深く面白い課題が多い (26、27¥

( a )

( b )

( c )

図2 . 1 単一の正多角形(正 3角形、正方形、正 6角形)による平面充頌 (タイル貼り)

14

( 3 ,6 ,3 ,6 )

( f )

( e )

( 3 ,4,6,4)

( d )

( c )

( 4,8 ,8 )

( 3 ,12,1 2)

( 4,6 ,12)

( h )

( g )

( 3 ,3 ,4,3 ,4)

2 . 1 幾何学の基礎

( b )

( a )

( 3,3 ,3 ,3 ,6)

( 3,3 ,3 ,4,4)

図2 . 2 正多角形(正方形、正 3角形、正 6角形、正 8角形、正 1 2角形)の組み合わせで作られる 8種類 のアルキメデスの平面充填形



( b ).



( e )

口 図 2. 3 タイル貼りの例、基本形は正方形などの組み合わせ、色付け、凹凸による 3次元化、色付けや 陰影などの処理で別の充蹟形に見える、 ( a ) 正方形、 ( b )寸法の異なる正方形の組み合わせ、 ( c )正方形と 平行 4辺形、 ( d )正方形に半円 2個の模様、砂時計模様による平面充填との考え可能、 ( e )正方形と 8角 形の組み合わせ〔(株)平田タイル提供〕

15

第 2章

( a )

( b )

( c )

幾何学の基礎と折紙への応用

I 図2 . 4 双対の関係図、 ( a )( c )正 3角形の内心を結んで得る正 6角形のタイル貼り、正 6角形の内心を 結んで得る正 3角形のタイル貼り、 ( b )正方形自身の自己双対

( b ) ( 4 ,8 ,8 ) ベース

( d )

( e )

( c )



( a ) ( 3 ,6 ,3 ,6 ) ベース

( f )

\ふ// ( h )

り 図 2. 5 8種類のアルキメデスの充填形の双対形(充填形の基本図形は充填図の右に記載)、正多角形の中 心(内心)を結んで得られる新しい平面充填形、基本図形:菱形、凧形、 5角形および各種 3角形など

1 6

もに、本章で後述する半正多面体の双対多面

で示された正 3角形のタイル貼りの中心(白

体(カタランの立体、 図 2. 35)を理解する際

丸点)を結ぶと正 6角形によるタイル貼りに、

のイメージづくりに役立つ。双対形の甚本図

図 2. 1( c )の正 6角形のタイル貼りの中心を

形は菱形、直角 2等辺 3角形、凧形、 2等辺



結ぶと正 3角形によるタイル貼りになる。

3角形、直角不等辺 3角形および 5角形など

のためこれら 2つは対の関係にあるとし、双

になる。基本図形中に引かれた点線は各辺に

対であると言う。一方、 図 2 . 1( b )に示す正

垂直で中心点からの長さが等しい。すなわち、

方形によるタイル貼りでは中心と頂点が入れ

これらの図形の中心点は図形の内心であり、

替るだけであるため、自己双対と呼ばれる 。

図2 .5の双対形から 図 2. 2のアルキメデスの

8種類のアルキメデスの充填形( 図 2.2) の

充填形を定める際にも内心を中心点と考える。

双対形を示すと 図 2 .5のようになる。これら

アルキメデスの平面充填形 8種の双対充填形

の充填形は新たな平面充填形を提示するとと

の基本図形は以下のようになる。

アルキメデスの平面充填形 8種の双対充填形の基本図形 99999999

1,` ー、ヽ` , 4 64 , ’ ' ‘,l4 2 ) 3ヽl' 6 3 4 ,', ,ヽ 1 2,' , 3 8l 6, ,1433 2,' , 6,8'4 1 6 3 3 3 ,' 3 433433 3 ,1、'ー、' ー' ,1、 , 1, 'ー 、 ︵ ︵

①②③④⑤⑥⑦⑧

菱形(尖った頂角 60° ) 直角 2等辺 3角形 凧形(尖った頂角 60° 、直角)

2等辺 3角形(頂角 120゜ ) 直角 3角形 ( 9 0 , 60、30゜ )

5角形 (120° 3個 、 90°2j ) 固 5角形 (120゜ 4個 、 60゜1個 ) 5角形 (120゜ 3個 、 90゜ 2個 )

17

2 . 1 幾何学の基礎

図2 .4( a )( c )のように、 図 2 . 1( a )の点線

第 2章

( a )

( b )

幾何学の基礎と折紙への応用

正4面体

( c )

( d )

面の数 F 頂点数 V 辺数 E

正 6面体 正 8面体

面の数 F 頂点数 V 辺数 E

4 ←→ 4

6

6

sX

8 6

( e )

面の数 F 頂点数 V 辺数 E

正 12面体 1 2 正 20面体 20

12 12

X

20 1 2

30 30

c ) g( e ) @ d ) @( ロ ロ( ( h i e◎ ロ ◎ @ R ~ 図2 .6

( a l

(a)~(e) 正 4 面体、立方体、正 8 面体、正 12 面体、正 20 面体

( b l

No.2

切頂 6面体

[ 3,6 ,6 )

[ 3,8 ,8 ]

( g )

c

No.I

切 頂 4面体

No.3

No.4

切頂 8面体

切頂 1 2面体

No.5 切頂 20面体

[ 4 ,6 ,6 ]

[ 3 ,10,10)

[ S ,6 ,6 ]

( i )

( f )

No.6

[ 3 ,4 ,3 ,4 ]

( j )

No.8

No.7 20・12面体 [ 3 ,5 ,3 ,5 ]

立方 8面体

( k )

斜方立方 8面体

No.9 斜方 20・12面体

[ 3 ,4 ,4 ,4 ]

[ 3 ,4 ,5,4]

( l )

( m l

No. 10

No.11

No.12

斜方切頂立方 8面体

斜方切頂 20・12面体 [ 4 ,6 ,1 0 ]

変形立方体

( 4 ,6 ,8 ]

( 3 ,3 ,3 ,3 ,4 ]

園2 . 7 半正多面体(アルキメデスの立体)の外観、切頂 N面体と呼ばれる 類の半正多面体 (f)-(m)の呼び名と外観図

18

No.13 変形 1 2面体 [ 3 ,3 ,3,3 ,5 ]

5つの立体 (a)-(e)と、 8種

に列挙する。各模型に付した番号は模型の呼

多面体 ( アルキメデスの立体) (25)

I正多面体

び名が専門的であるため付与したもので、本

すべての面が同一の正多角形で作られてお

書特別のもので慣用のものではない。[]内

り、すべて の頂点において会合する面の数が

に並べた数字は頂点を構成する面の正多角形

等 しい閉じ た多面体は正多面体あるいはプラ

の角数で、 例 えば、図 2.7 ( a ) での表示 [ 3 ,

トンの立体と呼ばれる。正多面体には図 2 . 6

6 ,6 ] は切頂 4面体のすべての頂点が正 3角

に示す正 4面体、正 6面体(立方体)、正 8面

形と正 6角形 2つからなること、すなわち、

体、正 12面体および正 20面体の 5つがある。

[ 3角形 ,6角形 ,6角形] を表す 。呼び名の

正多面体や後述の半正多面体( 図 2.7)などの

説明は順次記述する。

凸多面体については、正多面体の面の数 F、頂 点の数 V、辺の数 Eの間には下に示すような オイラーの多面体定理と呼ばれる関係がある。

V+F=E+2

( 2 . 1 )

( c ) 正多面体から半正多面体を作る手順 5つの正多面体から 13の半正多面体を作 る過程は 、①頂点を削る切頂、②切頂を辺の 中央まで行う中央切 り、③ ④ 2重切りや辺

5つの正多面体の面数、 頂点数をみると、正

を削る削辺、⑤捩り切りなどと呼ばれ分類さ

4面体では同数、正 6面体と正 8面体および

れている 。 以下、 ③④の分類 • 名付けは本稿

正 12面体と正 20面体ではこれらが各々入れ

記述の参考とした文献 ( 2 5 )とは少し異なる

替わり 、辺数は同じである。これらの正多面

が、大略、こ の文献の分類法に従って製作法

体間にも 2. 4節 で後述するように自己双対、

を述べる。 a )-( e )の 半 正 多 面 体 の う ち 、 図 2.7(

双対の関係がある。

I半正多面体

No. 1-5は 、 5つの正多面体(図 2 . 6) の頂点

半正多面体はアルキメデスの立体とも呼ば ー

れ、面が 2種類以上の正多角形からなり、

部分を 、各面が正多角形になるまで削り取っ て作られる。この操作で作られる半正多面体

つの頂点に集まる面の組み合わせが、すべて

は、その頭に切頂を付けて呼ばれる。以下で

の頂点で同じである多面体のことを言う。こ

簡単にその製作過程を述べる。

のような立体は 13種類あることが分かって

19

2 . 1 幾何学の基礎

いる。これらを 図 2.7に番号、呼び名ととも

( b )正多面体(プラトンの立体)と半正

ロ ゆ

1 1 3 [

( c)

S l &

/L し

‘ 、 -

, ‘ ・

幾 何 学 の 基 礎 と 折 紙 への 応 用

' ⑬/ ー

第 2章

( a )

( e )

1 8

( 2+ 1 ⑫)



6 ) ( 3 ,1 0 ,10]

2(l+cos36° )

@ [ 5,6 ,6 ]

図 2. 8 (a)~(c) 正 4 面体と正 8 面体の正 3 角形の面の頂点部を正 6 角形になるよう削って切頂 4 面体 と切頂 8面体を作成、 ( d )( e )立方体の正方形の面が正 8角形になるよう削った切頂 6面体と正 8角形、( f) 2面体の正 5角形の面が正 1 0角形になるよう 削った切頂 1 2面体と正 1 0角形、 (h)正 2 0面体 ( g )正 1

の正 3角形の面が正 5角形になるよう削って作られた切頂 2 0面体

. 8( a )のように正 3角形の面からなる 図2

6面体 ( N o . 2 )を得る 。

正 4面体[ 図 2 . 6(a)Jの 4つの頂点部分を(中

.8( f )( h )に 示 す よ う に 正 1 2面体[ 図 図2

心に向け)削 ってゆく 。正 3角形の 面の l辺

2 . 6(d)l の 頂 点 に 集 ま る 正 5角 形 の 面 を 正

の長さの 1/3を図 2 . 8( b )まで削ると面は正

1 0角形になるよう 、また 、正 20面体[ 図 2 . 6

6角形になる 。 この削り取りで、 正 6角形の

( e )l の正 3角形の面を正 6角形になるよう頂

面が 4つと 4つの頂点部に 4つの正 3角形か

2面体 (No.4)、切 点部を 削ると各々、 切頂 1

らなる 図 2 .7( a )の切頂 4面体 ( No.l )が作ら

頂2 0面体 (No.5)が作られる。切頂 20面体

れる 。同様 に正 8面体[ 図 2. 6( c )Jの 6つの

0でサッカーボールの形になり 、 は頂点数が 6

頂点部分を削ると正 6角形の面が 8つ、正 4

カーボン C60とも 呼ばれる 。 これら 5つの

角形の面が 6つからなる切頂 8面体 (No. 3 )

半正多面体は正 多面体 5個の切頂体として グ

を得る。 図 2 .8( d )( e )のように立方体の正方

ループ Iとして分類する。

、 立方体 形の面を正 8角形にな るよう 削 ると

これらの半正多面体は平面充填の場合と同

の 8つの頂点の下 に正 3角形が作 られ、切頂

じように頂点に集まる多角形の面の角数を並

2 0

2 . 1 幾何学の基礎







立方 8面体



( c )

’面

面体

]

/ 正8

:~ 2

立方 体 \ \

ジ/



E ¥ 2 0 0i @

( a )

図2 . 9( a )正 6面体の中央切り、 ( b )正 8面体の中央切り、 ( c )立方 8面体 ( N o . 6 )、 ( d )正 12面体の中 e )正 20面体の中央切り、 ( f )20・12面体 ( N o . 7 ) 央切り、 (

べて呼ばれる。例えば、切頂 4面体 ( 図2 .8

組み合わせで作られており、双方の名前を残

( a )l のすべての頂点は正 3角形 1つと、正 6

して 、立方 8面体 ( N o . 6 )と呼ばれる[図 2. 9

角形 2つで作られている。それゆえ 、 これを

( c )l 。

[ 3 ,6 ,6]と呼ぶ。同様に、 図 2 . 8( c )( d )( f )

正1 2面体を中点まで削ると 図 2.9( d )、正

( h)を各々順に [ 4 ,6 ,6] 、[ 3 ,8 ,8 ]、[ 3 ,1 0 ,

20面体を中点まで削ると 図 2.9( e )のような

5 ,6 ,6 ]と呼んでいる。 1 0 ]、 [

立体になる。これらも同じ形状で 20・12面

次に、削る置を更に大きくし辺の中点まで

7 )と呼ばれている [ 図2 . 9( f ) J。これ 体 (No.

削る中央切りと呼ばれる場合を考える。立方

らは 、正 6面体と正 8面体、正 1 2面体と正

体を頂点から中点まで削ると 図 2 . 9( a )に示

20面体が互いに双対であることに由来し、こ

. 9 す形状に 、正 8面体を中点まで削ると 図 2

れら 2つの名付けの由縁が良く分かる 。 これ

( b )のような形状になる。 これらの形は同じ

ら 2つを中央切りとしてグループ Iとする。

で、その頂点は正 3角形 2個と正方形 2個の

a )に示すように 、立方体の奥行方 図 2.10( 21

第 2章 幾何学の基礎と折紙への応用

ピラミッド 削除跡

② ’

正方形

切削帯

a

( f )

( d )

図 2. 10 (a)~(c) 立方体の全辺を削辺後、 8 つの頂点部を削り斜方立方 8 面体を作成 、 (d) 正 12 面体 の頂点を作る 3面の模式図、 ( e )稜線部の出っ張りを削辺、幅 a、 ( f )頂点部を更に削って斜方 20・ 12面 g )斜方 20・ 12面体 体を作成、 (

( a )

( b )

( c )

( d )

( e )

@ 斜方切頂 20・12面体

斜方切頂 立方 8面体

固2 . 1 1 ( a )( b )立方 8面体の頂点が正 6角形になるよう更に切り込み、 ( c )( d )斜方切頂 8面体の模型と 0 ・ 12面体の正 3角形を更に削って正 6角形を作成 斜方切頂 2

向の稜線①、左右方向の稜線②と垂直方向の 稜線③各々 4個 を 切 削帯(①,_③ ')を作るよ

8面 体 ( No.8)を得る。 図 2.10( d )は正 1 2面 体 の 頂 点 を 作 る 正 5

う削 ると 、立方体の頂点下に正 3角錐のピラ

角 形 3個 を 表 す も の で 、 図 2.10( e )のよう

ミッドが作られる [ 図 2.10( b ) ]。 この 3角

に稜線部を削り幅 aの切削帯を作ると、 正 5

錐部分を底面まで更に削ると、頂点下に正 3

角形の面が削られ小さくなり 、元 の 正 12面

角形面が作られる 。切 削帯の幅を調節するこ

体 の 頂 点 部 に 正 3角錐が作られる。 この 3角

とで 、稜線部にできる矩形を正方形にするこ

L ' . ' . lABC)まで削る。 この時 、 錐をその底面 (

とができ 、結 果 、図 2.10( c )に示す斜方立方

図 2.10( f )に示 す よ う に 、 L ' . : lABCの 3辺に

22

I I、Nの これをグループW とする。グループ I

正 5角形を設けることができる。 これが 図

命名は文献 ( 2 5 )と少し異なっている 。これは

2.10( g )に示す正 3角形、正方形、正 5角

製作方法の説明の都合上生じたものである。

形からなる斜方 20・ 12面 体 (No. 9)である。

1種の半正多面体の成り立ちを述 以上、 1

これらは稜線を削るため削辺と呼び、本書

べた。残り 2つは捩り形と呼ばれる変形立方

ではグループ I I lとする。

体と変形 1 2面体 (No.12、 1 3 )である。 これ

図2 . 1 1( a )は 立 方 8面体模型[ 図 2.10

らは次節で述べる平面充填形を用いた模型作

( b ) )の切削帯(①'-③')を引き伸ばしたもの

りによる説明の方が分かりやすいと考え、詳

である。切削幅 a と同じ長さになるように上

細はそこに譲る。半正多面体 13種の製作過

面、側面に長さ aの線分 DE、FGと HIを定

. 1のようにまとめられる。 程は表 2

める。 こ れ ら の 線 分 が 作 る 正 6角 形 の 面

なお 、半正多面体の呼び名が著書により異

DEFGHIは L ' . : l A B Cの面に平行で、この面ま

なるものがある 。本書 が参考にした 『 正多面

で更に深く削り取る。 3つの切削帯上に辺長

体を解く 』(25)では‘切頂”が‘切隅”と表記され

aの正方形を 3個設け、上面と 2つの側面上

る。例えば、切頂 8面体が切隅 8面体である。

. 1 1( b )であ に正 8角形を設けたものが 図 2

また、‘斜方”が‘小菱形”、‘斜方切頂”が‘ ‘ 大菱

る。同様に 8つの頂点部を作ると 図 2 . 1 1( c )

形”である。すなわち、斜方立方 8面体が小

の斜方切頂立方 8面体 ( No.10)を得る。

菱形立方 8面体、斜方切頂立方 8面体が大菱

同 じ よ う に 20・12面 体 の 頂 点部を 、図

形立方 8面体となっている。また、半正多面

2.10( f )の L IABCを正 6角形になるよう削

体(アルキメデスの立体)は‘‘準正多面体”と表

ると 図 2 . 1 1( d )のようになり 、図 2 . 1 1( e )

記されている。

に示す斜方切頂 20・12面体 ( No.11)を得る 。 表2 . 1 半正多面体(アルキメデスの立体)の関連と分類

正 4面体ー→ 切頂 4面体 ( No.1)

/ー → 変形立方体 立方体

(No. 1 2 )

>切頂 6面体 (No.2)

〉 ー >立方 8面体 (No. 6 )→ 斜方立方 8面体 ( N o . 8 )→ 斜方切頂立方 8面体 (No.10) 正 8面体―→ 切頂 8面体 (No.3)

/―→ 変形 12面体 (No.13) 正 12面体→ 切頂 12面体 (No.4) 20・12面体 (No. 7 )→ 正 20面体 →>切頂 20面体 ( No . 5 )

>•

斜方 20・ 12面体 ( N o . 9 )→ 斜方切頂 2 0 ・ 12面体 (No. 11 )

23

2 . 1 幾何学の基礎

接 す る よ う 正 方 形 ABDEを 、 その外側に

第 2章

2 . 2 半正多面体の展開図

幾何学の基礎と折紙への 応 用

5つの正多面体のうち、正 5角形からなる正 12面体以外の正多面体は正方形や正 3角形 に よる正充墳形(図 2 . 1)の一部を用いて作られる 。ここでは、半正多面体が正充頒形やアルキメ デスの充撮形(図 2.2)と強く関連している ことを示すことを目的として 、これらの充墳形を直 接用いて半正多面体の展開図を作ることを試みる 。前節の切頂や削辺法に比べ、半正多面体の 成り立ちを折紙の立場からより理解しやすいと考え る故であ る 。

( a ) 正充填形(正 6角形、正方形)を用い

l

た 5種の半正多面体の展開図

l

は凹の切頂 4面体になる。 切頂 8面体 (No.3); 正 6角形によ る平面充填

切頂 4面体 ( No . 1 ); 正 6角形による平面充填

形ベース

形ベース

図 2.13( a )のように正 6角形による 平面

a )に示 すよ うに、正 6角形の平 図 2.12(

充填形をベースにし、正 6角形 8個と正 6角

面充填形から、正 6角形 4個と正 6角形の半

形の 2 /6(緑色部)を除去した要素 6個から な

b )の 分 4個 を用 いて展開図を作る。 図 2.12(

る図を展開図とする。 図 2.13( b )に示す よ

緑色部)を除去 した図 ように正 6角形の半分 (

うに切 り取った切断部端を互いに糊付け 、あ

形から正 3角形を 1つだけ用い、残り 2つを

るいは切断部分を糊代に して正 4角錐を作る。

内部(裏側)に折り込ん で糊付 けする と 、 図

この 4角錐部分を内部に設けると、凹の切頂

2.12( c)に示す切頂 4面体の模型を得る。 図

8面体 [ 図 2.13( c ) Jになり 、外部に設けると

2.12( d )の展開医で、谷折り線を用 いて 3

図 2.13( d )のように正 8面体になる。切頂 8

角錐を作りこれ らを 内側に押し 込 むと、 図

面体自体はこ の 4角錐部分を正方形の平面に

2.12( c )の正 3角形の面が凹んだ切頂 4面体

e )( f )のよう して作る 。 ここでは、 図 2.13(

型の立体が作られる [ 図 2.12( e )J 。

に緑色を切り取った後、正方形部分を残し残

逆に 、 この谷折りを 図 2.12( f )のように 山

h )( i ) 部を押し込む方法、ある いは図 2.13(

折り線にすると切頂 4面体に正 3角錐を外付

のように正方形を直角 2等辺 3角形 2個で置

図 2.12( g)J 。図 けした形の正 4面体にな る [

き換える方法を例示する。作られる切頂 8面

2.12( h )はこれらをまとめたもので 、平面の

g )と図 2.13( j ) のようにな 体は各々 図 2.13(

場合は半正多面体の切頂 4面体、外向き角錐

13( e )の緑色 る。なお 、慣用の展開図は図 2.

の場合には正 4面体 に、内向き角錐の場合に

とピンク色部分を除去したものである。

24

( c )



正 3角形の面 ( 平面)



口正 誓 凹3

二 り 取 り 除 去

( e l

角錐

( d i

( g ) < [j~ 口い な ら 折 ( f )

山折り

外向き 4角錐 ( 正 4面体)

角錐

平面 ( 切頂 4面体)

.12 ( a )( b )正 6角形の平面充填形一部除去、内部に折り込み、 ( c )切頂 4面体模型、 ( d )( e )折り込 図2 f )( g )折り込み部を山折 り 、 正 4面体、 ( h )正 み部を谷折りにして作られる一部凹面の切頂 4面体模型、 ( 3角錐を外/内向きに配置の様子 ( a )

( c )

悶猛悶

( d )

正 4角錐



( e )

□→ D

□[

(f)6 ~ti~

) b ( R w巳 ( g )

正方形

~



( j )

図2 .13 (a)正 6角形の平面充填形をベース にした展開図、 ( b) 両端糊付け /押し込んで糊付け、 ( c )( d ) 凹の切頂 8面体(正 4角錐;内向き)、正 8面体(正 4角錐 ;外向き) 、 ( e )- ( g )正 4角錐部を平面にする 展開図と切頂 8面体模型、 (h)-( j ) 正 4角錐部分を平面にする別の展開図 と切頂 8面体模型

25

2 . 2 半正多面体の展開図

@

折って内部に 押し込み

( b ) :

( a )

第 2章

二 : 部 に ( R(

( a )

幾何学の基礎と折紙への応用

贔 儡 間

( d )

( e )

□/は 開 1 0 0 @

( h )

正5角形

図2 . 1 4 (a)正 6角形の平面充填形をベース、 (b)切り取り後、糊付け、 ( c )押し込んで糊付け、 ( d )頂点 部が凹の切頂 20面体、 ( e )正 2 0面体、 ( f )( g )正 5角形を作る展開図とその作成法、 ( h )切頂 2 0面体 (サッカーボール)

l

切頂 20面体 ( N o . 5 ); 正 6角形による平面充

部除去)。切頂 20面体はこの正 5角錐部分を

填形ベース

正 5角形の平面にしたものである。ここでは

正 6角形の平面充填形を基にして、正 6角

図 2.14( f )( g )のように緑色部を切り取り後、

形 20個 と 正 6角 形 の 1 / 6(緑色部)を切り

星形の折り線部を設けこの部分を内部に押し

取った要素を 1 2個設けた 図 2.14( a )を展開

込む方法を用いる。 図 2.14( h )に、作られ

b )( c )に示すように切り 図とする。 図 2.14(

た切頂 20面体の模型を示す。緑色部を含む

取った部分の両端を糊付け、あるいは切り取

正 6角形をすべて正 5角形に個き換えたもの

り部分を糊代にして正 5角錐を作る。この角

d ) 錐部分を内向きに配置すると、 図 2.14(

l

が展開図として通常用いられている。 立方 8面体 ( N o . 6 ); 正方形による平面充填形

に示す正 5角形の面が凹のサッカーボール、

ベース

図 2.14( e )の よ う に 外 向 き に 配 置 す る と 正

正方形の充填形を用いて立方 8面体を作る

20面 体 に な る 。 す な わ ち 、正 20面体は 図

展 開 図 の 例 を 図 2.15( a )に、 その模型を 図

2.14( a )のような展開医でも作られる(緑色

2.15( b )に示す。立方 8面体の正 3角形の面

26

(~ニ

折 って内部に

押し込み

ゾ ◇ 正 3角錐部分

( f )

~

正 3角形 ( h )



ご起 6個

正 3角錐形成

図 2.15 正方形の平面充填形をベース、 ( a )( b ) 立方 8 面体を作る展開図とその模型、 (c)~(e) 正 3 角形 部を正 3角錐にしたときの展開図と凹の立方 8面体(正 3角錐内向き)と立方体(正 3角錐外向き)、 ( f )( g ) 斜方立方 8面体の展開図とその模型、 ( h)図 ( g )の正 3角形部分を正 3角錐にした展開図 、 ( i )( j )凹の斜 方立方 8面体(正 3角錐内向き)と外向き模型(突起状)

を 3角 錐 に し た と き の 展 開 図 を 図 2 .15( c )

2 . 2 半正多面体の展開図

( c )

□:

R

( a )

l

斜方立方 8面体 ( N o . 8 ); 正方形による平面充

に示す。正 3角錐部分を内向きに配 したとき

澳形ベース

には 図 2 .15( d )に 示 す よ う に 凹 面 の 立 方 8

.15( f )( h)は斜方立方 8面 体 の 展 開 図 図2

面体に、外向きに配したときには 図 2 .15( e )

に関するもので、展開図の構成と製作手順は

のように立方体になる。すなわち 、立方体は

先の模型と同じである。 図 2 .15( g )に斜方立

図2 .15( c )の ピ ン ク 色 部 を 切 り 取 っ た 残 部

方 8面体、 図 2 .15( i )に 3角錐部分を内向き

の直角 3角形と正方形とを組み合わせた展開

に配した凹の斜方立方 8面体を示す。 3角 錐

図でも作られることが分かる。同じことは、

部分を外向きに配した模型は 図 2 .15( j )に示

正 6角形と正 3角形の組み合わせで作られる

すように 3角錐形状で尖ったツノ型の突起と

正 20面 体 ( 図2 .14( e )J でも見られる。

して現れる。 27

第 2章

( b ) アルキメデスの充填形を基にした

幾 何 学 の 基 礎 と 折 紙 への応 用

8種 類 の 半 正 多 面 体 の 展 開 図

l

斜方切頂立方 8面体 (No.10);アルキメデス の平面充填形 ( 4 ,8 ,8 ) ベース

正多角形の充填形からは半正多面体 1 3種

斜方切頂立方 8面体の凹面体、および正 6

のうち上述の 5種が作られた。以下では、ア

角錐を外向きにして作られたツノ型の突起を

ルキメデスの充填形を用いて残された模型を

.16( g ) 持つ立体を作る展開図と模型を 図 2

l

-( j )に示す。 図 2.16( k )は正 6角形を作る

製作する。 切頂 6面体 (No.2); アルキメデスの平面充墳

展開図で、 図 2 .16( I )の両端を糊付けし、 5

4 ,8,8 ) ベース 形 (

つの 3角形部分を押し込み糊付けして正 6角

アルキメデスの充填形 ( 4 ,8,8 )をベース

形を作り、これで正 6角錐部分[ 図 2 .16( h ))

に 作 っ た 切 頂 6面 体 の 展 開 図 と 模 型 を 図

を置き換えると 図 2 .16( m)に示す斜方切頂

2.16( a ) -(d )に 示す。 図 2.16( c ) ( d )は

立方 8面体の模型を得る 。

各々 3角形の面が凹の切頂 8面体と正 3角錐

120・12面体 (No.7);アルキ メデスの平面充

を外向きすることで得た立方体である。切頂

3 ,6 ,3 ,6 ) ベース 填形 (

6面体の展開図と模型を 図 2.16( e )( f )に示

3 ,6 ,3 ,6 )を基に アルキメデスの充填形 (

す。立方体が図 2 .16( a )の展開図(ピンク、

( c )

3



( d )

に成 部形

っし

内み錐り て込角取

折押正切

, t ,

( a )

図2 .17( a )に示す。 図 2.17( b )は 20・ 12面

:︹合

o o

緑色部除去)でも作られることが分かる。

12面体の展開図の基本形を して作 った 20・

糊付け

( f )

( e ) 9





切り取り

折 っ て 内 部 に 押し込み

正 3角形

図 2.16 アルキメデスの充填形 ( 4 ,8 ,8) の切頂 8面体、立方体と切頂 8面体

28

をベースにした展開図による模型、 (a)~(f) 正 3 角形の面が凹

20面体になる。すなわち正 20面 体 は 図 2.17

換 え る た め の も の で 、 正 6角 形 の

( a )の よ う な 展 開 図 ( ピ ン ク 色 の 正 3角 形 部

l/6を切

り取り、 こ れ を 用 い て 正 5角 錐 を 作 る 。 この

分除去)でも作ることができる 。

5角 錐 を 内 向 き に 配 置 す る と 図 2.17( c )の



5角 形 の 面 が 凹 の 20・1 2面 体 に 、 正 5角 錐 を外向きに配置すると 図

2.17( d )に 示 す 正

2.17( e )を 用 い て 角 錐 部 を 平 面 の 正 5角

形にすると半正多面体

20・1 2面 体 の 展 開 図

になり 、製 作 模 型 は 図

2.17( f )のようになる 。

内部へ

( h )

( g )

R , _ _ _,

押し込み

( i )

---,•:--, '' 、 正 6角錐形成



ご〗

••



て込

部.、 内み

け 付



( j )

/ 疇

` 糊付け 切 り 取 り

( m)





図2 .16(続き) (g)~(m) 正 6 角形の面が凹面の斜方切頂立方 8 面体、正 6 角錐の突起が貼り付けられた 形の斜方切頂立方 8面体、斜方切頂立方 8面体と正 6角形面の作成法

b ( @S ! i : , t

( c )

[ 0 2 7

' , ,、 ‘ 、 ' 正 5角錐形成



( d )

( f )

固2 .17 ( a )平面充填形 ( 3 ,6 ,3 ,6 )を基に作った展開図 、 ( b )正 5角錐を作成、 ( c )正 5角錐を内向きに d )正 5角錐を外向きにした凸の模型(正 20面体模型)、 ( e )緑色部切り 配した凹の 20・12面体模型、 ( f ) 作られた正 5角形の面を用いて作った 20・12面体模型 取り後、正 5角形の面に加工、 (

29

2 . 2 半正多面体の展開図

体 の 展 開 図 の 正 5角 形 の 面 を 正 5角 錐 に 置 き



第 2章 幾何学の基礎と折紙への応用

) b ( @悶 : : : こ ( c )

( d)

図2 . 1 8( a )平面充頃形 ( 3 .1 2 ,1 2 )を基に作った展開図、 ( b )切り取り後、両端糊付けして 10角錐を作 c )( d )1 0角錐を内向きと外向きに配した凹の切頂 12面体と正 20面体 成 、 (

l

切頂 12面体 ( N o . 4 ); アルキメ デスの平面充

l

斜方 2 0 ・ 12面体 ( N o . 9 );アルキメデスの

填形 ( 3,1 2 ,12)ベース

平面充漢形 ( 3 ,4 ,6 ,4)ベース

3 , 12 ,1 2 )を基に 、 アルキメデスの充填形 (

アルキメデスの充填形 ( 3,4,6 ,4 )を基に

切頂 1 2面体を作る展開図の基本形を 図 2.18

作った斜方 20・12面体の展開図を 図 2.19

( a )に示す。 図 2.18( b )は、切 頂 12面体の

( a )に示す 。図の緑色部 は切り取り部で 、正

0角形の面を正 10角錐に置き 換 展開図の正 1

5角錐 、正 5角形などの製作は上述してきた

えるためのもので 、正 12角形の 2/12を切

製作法と同じである。 図 2.19 (b)~(e ) に 正

り取り、これで正 10角錐を作る 。 この正 10

5角形の面が凹面、凸面および平面(斜方 20・

角 錐 を 内 向 き に 配 し た も の が 図 2.18( c )に

2面体、外 示す正 10角形の面が凹んだ切頂 1

l

12面体)の模型 を各々示す。 斜方切頂 20・12面体 ( No.11) ; アルキメデ

d )の切頂 1 2面 向きに配したものが図 2.18(

4 ,6 ,12)ベース スの平面充填形 (

体の正 1 0角形の面に正 10角錐を貼り付けた

4 ,6 ,1 2 )を基 に アル キ メ デ ス の充填 形 (

模型で、頂点を結ぶ折り線をあらかじめ設け

作った斜方切頂 20・12面体の展開図の基本

ておくと正 20面体の形状になる。切頂 1 2面

a )に示す。 図 2.20( b )のよう 形を 図 2.20(

体の模型は正 1 0角形部分を折り込む方法で

に 2/12だけ切除した扇形で正 10角錐を作

は作りづらいため 、図 2. 18( b )の( 緑色部を

り、 これで展開図 の正 12角形の面を 置き 換

含む)正 12角形部分を正 10角形に置き換え

える。角錐を内向きに設けると凹面の斜方切

た通常の展開図を用いる方が簡単である。

頂 20・12面体[ 図 2.20( c )J 、外向きに配置

30

2 . 2 半正多面体の展開図



( b )

( a )

) ( d @a ; :

( e )



図2 .19 ( a )平面充填形 ( 3 ,4 ,6 ,4 )を基に作った展開図、 ( b )( c )正 5角形の面が凹面と凸面の斜方 20・ 12面体模型、 ( d )( e )5角錐を正 5角形にする図形と斜方 2 0 ・ 12面体の模型

M ( b )

切り取り

( c )

(d)

` 晶 ° 角 錐

図 2.20 ( a )平面充填形 ( 4 ,6 ,1 2 )を基に作った展開図、 (b)正 10角形の面を正 10角錐で置き換え、 ( c ) 正 10角形の面が凹んだ斜方切頂 2 0 ・ 12面体、 ( d ) 斜方切頂 20・12面体に正 1 0角錐を外向きに付け た突起のある多面体

すると 図 2.20( d )に示すような尖った多面体

l

変形立方体 (No.12);アルキメデスの平面充

になる。斜方切頂 20・ 12面体自体は、通常行

損形 ( 3 ,3 ,4 ,3 ,4 ) ベース

a )の 正 12角 形 部 分 す われるように 図 2.20(

アルキメデスの充填形 ( 3 ,3 ,4 ,3 ,4 )を

べ て を 正 10角 形 に 置 き 換 え て 作 る の が 簡 便

ベースにして変形立方体の展開図を作る。正

である。

方形の周りに正 3角形を配した 図 2.21( a )の 31



第 2章

二︺

幾何学の基礎と折紙への応用

( f )

\ 底

( i )

( j )

( k )

図 2. 21 平面充填形 ( 3 ,3 ,4 ,3 ,4 )ベース、 ( a )基本とする 4角形の星型、 ( b)-(e )基本形の接合手順と ( b )を用いて作った正 3角形の穴のある模型、 ( f )圏 ( b )を基に穴部を補完した展開図(ピンク、緑色部除 去 ) 、 ( g )( h)補完部の正 3角形 ( g )と正 3角錐面 ( h )の仕様、 ( i )変形立方体、 ( j )内向きの正 3角錐からな る凹面の変形立方体、( k )正 3角錐が外向きの凸面の変形立方体

ような 4角 形 の 星 型 を 基 本 形 に し 、 これを

左側②に接合する鏡像型も同様の手順で作る

(立方体の面数 6を考慮して) 6つ用意する。

こ と が で き る 。 こ の 模 型 の 8つ の 穴 を 図

.21( a )の 星 型 の 下 端 の 左 右 ① ② の い ず 図2

2.21( e )のように埋めると変形立方体の模型

れかを決めて別の星型を貼り付ける。立方体

になる。

の展開図を作るように 4角形の星型を 6つ 貼

上の変形立方体の展開圏を示したものが図

21( b )あるいは ( c )のように り付けると 図 2.

2.21( f )で、穴 部 分 に 現 れ た 正 3角形部分は

.21( b )を矢 なる。右に貼り付けた場合の 図 2

.21( g )に 示 す よ う に 正 方 形 の 一 部 を 内 図2

.21( d )のような 印のように接合すると、 図 2

部に押し込んで作る方法で置き換えている。

正 3角形の穴が(立方体の頂点数に対応する)

.21( h )は正方形を 4分割し 、 1つを内部 図2

8つ開いた模型を得る 。図 2.21( c )のように

に押し込んで正 3角錐を作る場合を示す。 図

32

尺 戸

2 .2 半 正 多 面体の 展 開図



l a ( {}

(c)

(d)

( f )

( e l

折 って内部へ 折 り込み



正 5角錐の

( g )

『 み)」(

(h) ◎2個OJ~

図2 . 2 2 (a) 基本とする 5 角形状の星形 、 (b)~(d) 基本形の接合法、正 3 角形の穴付き模型と穴の配置、 ( e )正 5角形を正 5角錐で置き換え、 ( f )置き換えと 20個の穴あき部を補完して作られた展開図(平面充 3,3,3,3 ,6 )型 〕 、( g )( h )正 5角形の面が凹の変形 12面体と正 5角錐が 12個外付けされた形の変 填形 ( 2面体、 ( i )( j )正 5角形の作成図とこれを用いて作られた変形 1 2面体の模型、( k )コルゲート面の変 形1 形 12面体模型

2 . 2 1( g )を用いると、 図 2 . 2 1( i )に示す変形

配した星型図形[ 図 2 .22( a )Jを基本にする。

立方体の模型を得る。 図 2 . 2 1( h )を用いる

これを 図 2. 21と同じように 1 2個貼り付ける

と、正 3角錐を内向きに配したときには凹面

と図 2 .22( b )のようになる。 これよ り、 20

の変形立方体を示す図 2. 21( j )、外向きにし

個の穴があいた 図 2 .22( c )に 示 す 模型 を 得

たときには 8方 に 尖 っ た 立 体 形 状 の 図 2 . 2 1

る 。 図2 .22( d )はこ れ ら の 穴 を 正 3角 形 で

l

埋めたもので 、正 5角形周りの 3角形の配置

( k )が得られる 。 変形 12面体 (No. 13):アルキ メデスの平面

がよく分かる。 図2 .22( b )の 星 型 図 形 の 中 央 の 正 5角 形

充填形 ( 3 ,3 ,3 ,3 ,6 ) ベース

を図 2 .22( e )の 正 6角形を 用 い て 作 った正 5

型をアルキメデスの充填形 ( 3 ,3,3,3 ,6 )を

角 錐 で す べ て 置 き 換 え る 。 結 果、 図 2 .22

基に作る。正 5角形の固りに 正

( b )は図 2.22( f )のような展開図になる。

3角形を 5つ



変 形 12面 体 と 呼 ば れ る 立 体 の 展 開 図 と 模

33

第 2章 幾何学の基礎と折紙への応用

れは平面充填形 ( 3 ,3 ,3 ,3 ,6 )である。この

体( N o . 4 )は除く]では、削られる部分が凹面

/ 6の部分を 図 2 . 2 2 展 開 図 の 正 6角形の 1

として模型化され、その凹面を外向きに配置

( e )に示すように内部に押し込んで糊付けす

すると元の正多面体模型になることが分かっ

. 2 2( g )の正 5角形部分が凹面の変 ると、 図 2

た。なお、除外した切頂 1 2面体は、 正 1 2面

形1 2面体模型が作られる 。逆に、星型部分

体の正 5角形の面からなる頂点部を削って作

すべてを外向きにすると 図 2 . 2 2(h)の変形

られるが、正 5角形を含む平面充填形がない

1 2面体の 5角形部が 5角錐にな った立体に

ため、平面充填形 ( 3 ,1 2 ,1 2 )を用い た。その

なる 。変形 1 2面体自体の展開図は正 6角形

ため、外向きの模型は正 1 2面体ではなく正

部分を 図 2 . 2 2( i )の正 5角形で置き換えるこ

20面体になっている [ 図2 . 1 8(d)]。グル ー

とにより作られ、その模型を 図 2 . 2 2( j )に示

J Iに属する斜方立方 8面体と斜方 2 0 ・ 1 2 プI

. 2 2( g )の 5角錐の凹面部 をコルゲー す。図 2

面体、グループ I Vに属する斜方切頂立方 8面

ト面にする手法[付録 1、図 A1( p )-( r ) ]を

体と斜方切頂 2 0・1 2面体およびグループ V

用いて作ると 図 2 . 2 2( k )に示す模型を得る。

に属する 2種の変形型の多面体も同様に凹面 の模型になるが、それらの外向き模型はすべ

( c )平面充頌形を用いて半正多面体を

作った結果のまとめ

て突起型になっている。 上で作られた 多面体の 凹面を作 る角錐部分

平面充填形と多面体の関連を明らかにする

は、次節で述べるようにほぼ平面と見なせる

目的で、平面充填形を用いて半正多面体の展

コルゲート面に加工する ことができる [ 例え

開図を作った 。結果、半正多面体 1 3種のう

ば 、 図2 . 2 5( j )、付録 1参照]。そのため、幾

ち、正充填形から 5種 、 7つのアルキメデス

何学で最も基本の平面充填形を用い 、 コル

の平面充填形から残り 8種が作られることが

ゲート折りなどの折紙手法と組み合わせるこ

2 . 1節 ( c )で述べた 正多面体の頂

とで、多面体を種々 の形 に加工して新たな形

分かった。

I 点部分を削る方法で作られたグループ Iと 1

状の折紙模型を作ることができる。このよう

に属する No . 1-7の半正 多面体[切頂 1 2面

な模型製作を次節以降で述べる。

34

平面の正充填形と 7種のア ルキメデスの平

ている。これらは半正多面体の要件を満たす

面充填形を 用 いることで 1 3種類すべての半

ため半正多面体ではあるが 、上下面の正多角

正多面体が作られる ことを上述した。アルキ

形の角数が無数にあることから慣例的に除外

メデスの充填形 8種のうち 図 2 .2( h)に示す

されている。

充填形が使用されずに残された。この平面充

古くから知られたこれらの幾何学模型は 、

填形を用いて作った模型の 例 を図 2.23に示

コーヒー 缶や酎ハイ缶のデザインにも採用さ

す。作られた模型は正多角反柱と呼ばれるも

れている極めて重要なものである。これらの

ので 、これらの模型の頂点は正多角形の上、下

正多角反柱を積み上げて作られる円筒構造を

面と複数の正 3角形からなる 側面で構成され

折 り畳み模型と関連させて 3.2節 で述べる。

( d )

i‘ ` f 、 し

• ( e )

9 999 9 99

99 9 9999 9999999

9999999

9999999

9999 9 9 9

9999999

完成模型

上面図

( i )

9 99 9 999

99 999 99

9 9 9 9999

完成模型

上面図 ( h )

図 2.23 正 4 角反柱 (a)~(e) と正 6 角反柱 (f)~(i) 、製作する展開囮、製作過程とそれらの折紙模型の

順に表示

35

2 . 3 正多角反柱の展開図

2 . 3 正多角反柱の展開図

第 2章

2 . 4 正多面体と半正多面体間の相互の関連とそれら

幾 何 学 の 基 礎 と 折 紙 への 応 用

D u a lO r i g a m i )の提案 の折紙模型:双対折紙 ( 図2 . 4と図 2 . 5で述べた平面充填形での双対と同じように多面体の間にも双対の関係があ る。この双対関係を多面体の展開図の変換に適用し、双対折紙と新たに名付けた折紙手法を説 明する。また、これを用いた模型製作の例を示す。

ができる。正 6面体と正 8面体、正 12面体

( a )正多面体の双対関係

5つの正多面体( 図 2. 6) の間には、双対と

0面体をそれぞれ互いに ‘対”の関係と と正 2

. 2 4( a )に示すよ 呼ばれる関係がある 。図 2

みなして、双対関係にあると 言 う。また、

うに、立方体の 6つの面の中心を結ぶと頂点

図2 . 2 4( e )は正 4面体の正 3角形の面の中心

を 6つ持つ正 8面体が内部に作られる 。逆に、

を結ぶと小さい正 4面体ができることを示す。

図 2. 24( b )のように正 8面体の面の中心を

そのため、これを自己双対と 言 う。

結ぶと立方体ができる 。図 2 . 2 4( c )のように 正 12面体の正 5角形の面の中心を結ぶと正

20面体ができ、 図 2 . 2 4( d )のように正 2 0面 体の正 3角形の面の中心を結ぶと正 12面体

( b ) 双対折紙による正多面体の折紙模型 の製作 正多面体の展開図を作る正多角形の内心

正 3角形の 面の中心点

(cl~

外枠;正 1 2面体 中央部;正 2 0面体

( d )@ 外枠 ; 正 20面体 中央部;正 1 2面体

~

外枠;正 4面体 中央部;正 4面体

図2 . 2 4正多面体の双対関係、 (a)立 方 体 ⇔ 正 8面体、 (b)正 8面体⇔立方体、 (c)正 d )正 2 0面 体 ⇔ 正 1 2面体、 (e)正 4面 体 ⇔ 正 4面体(自己双対) 体 、 (

36

1 2面 体 ⇔ 正 2 0面

d )の模型が得られる。これは正 8面 図 2.25(

折り線とする内 心連結による双対折紙と名付

体の全面に直角

けた折紙手法を用いる。

錐を 8個外付けした形状である。

I立方体 ⇔ 正 8面体の双対関係

3角形の錐面からなる正 3角

一方、 図 2.25( e )のように山 、谷折 り線を

最初に、立方体⇔正 8面体の双対に関する

タイプ A とは真逆に設けたタイプ Bの折り線

折紙模型を考える。 図 2.25( a )の正 6面 体

を用いると 、正 8面体の全面を内向きの正 3

の展開図の正方形に、内心から 4辺に垂直に

角錐で置き換えた 図 2. 25( f )の正 8面体のス

谷折り線、頂点へ山折り線を 図 2.25( b )のよ

ケルトン(骨格)構造を得る。 図 2.25( g )の

うに描き、 これをタイプ A の折り線とする。

ように山、谷折り線を交互に複数設けたタイ

このような折り線を設けた正 6面体の展開図

プ C の折り線を用いると、展開図は 図 2.25

は図 2.25( c )のようになる。 この展開図(元

( h )のようになる。 この折り線により、角錐

の正方形の 4辺がないものとして)を折ると

面はジグザグ状に折られて概略平面と見なせ



( g

タイプC

( c )

( b )

( e )

E E [

( d )

□ ︹ ]

( a )

( f )

正 3角形の 面の中心点

: 亨 → 3角錐

概略平面化

( コルケート面)

図 2.25 ( a )立方体の展開図、 ( b )( c )正方形の内心から頂点へ山折り、辺に垂直に谷折り線を導入(タイ d )正 8面体の 8面に直角 3角形面の 3角錐を貼り付け、 ( e )図( b )と逆の山、谷 プ A)、導入後の展開図、 ( f )タイプ Bの展開図で作った正 8面体のスケルトン模型、 ( g )( h )山、谷折り線を交 折り線(タイプ B)、( )角錐面のコルゲート化、(」)正 8面体のコルゲート模型 互に設けたタイプ Cの展開屈、 (i

37

2.4 正 多 面 体 と 半 正 多 面 体 間 の 相 互 の 関 連 と そ れ ら の 折 紙 模 型 ﹂双対折紙 (DualOrigami)の提案

(正多角形では内心と中心は一致)を結ぶ線を

第 2章 幾 何 学 の 基 礎 と 折 紙 への 応 用

2等辺 3角形の面 (頂角; 60° )

: R

二 ゅ ~

6個

( h )

( f )

(el~

) ; ( M

正 4角錐

( c )

( a)

) l ( .( ) n r

(kl

タイプA

タイプ C

図 2.26 ( a )正 8面体の展開図、辺に垂直の谷折り線、頂点へ山折り線を付与(タイプ A)、( b )( c )立方体 の 6 面に 4 角錐を貼り付けた模型、 (d)~(f) タイプ B の折り線、折り線に幅を設けた模型、 (g) ( h )タイ プ Cの折り線とコルゲート面の模型、 ( i )(j) 正 4 面体の展開図とタイプ A の折り線、 (k)~(m) 正 4 面体 の 4面に正 3角錐を貼り付けた模型と角錐部をコルゲート化した正 4面体模型

るコルゲート面 [ 図 2.25( i )l にな るから 、図

b )に示す折紙模型を得る。 れより 図 2.26(

2.25( j )のようなコルゲート面の正 8面 体 模

これは立方体の 6面に正 3角形の錐面からな

型を作ることができる。すなわち、正多面体

る正 4角錐を貼り付けた星型形状である[ 図

の展開図を作る正多角形面の内心を結ぶ線を

2.26( c )J。山、谷折り線を逆に した 図 2.26

折り線にする内心連結による双対折紙によっ

( d )のタイプ Bの折り線を用いると 、図 2.26

て、立方体の展開図から双対の正 8面体に関

( c )の 4角錐が高すぎて、 6個 す べ て を 立 方

連する種々の折紙模型が作られる( 付 録 1参

体内に配置することができない。それゆえ、

照 ) 。

e )のように、稜線部に幅を持たせて 図 2.26(

a )は正 3角 形 の 中 心 か ら 辺 に 垂 図 2.26(

f )の模型を作った。 山、谷折り線を 図 2.26(

直の谷折り線、頂点へ山折り線を引くタイプ

交互に設けた(微修正した)タイプ Cの折り

38



A の折り線を設けた正 8面体の展開図で、

g )l を用いると 図 2.26( h )のよ 線[ 図 2.26(

( b )

o o [ o

タ イ プA

( e )

( g )

図 2. 27 ( a )( b )正 1 2面体の展開囮と模型、 ( c )タイプ Aの折り線図、 ( d )( e )タイプ Aの折り線を用い 2面体の展開図(半分)とその折紙模型、 ( f )タイプ Bの折り線図、 ( g )タイプ Bの折り線入り展開図 た正 1

うなコルゲート面の立方体を得る。

ダヴィンチの星として知られ、正多面体の数

I正 4面体の自己双対

だけ 、すなわち 5種 ある。 図 2.26( b )と ( k )

図 2.26( i )の正 4面体の展開医の正 3角形

は正 3角形で作られたこの角錐が外付 けさ れ

要素にタイプ A の折り線[ 図 2.26( j )Jを用い

ているため、 これらはダヴィンチの星と呼ぶ

k )の正 4面体の 4面に正 3角 ると 、図 2.26(

ことができる。

錐を貼り付けた形の模型になる。先の例と同

I正 12面体⇔正 20面体の双対関係 正 1 2面 体 の 代 表 的 な 展 開 図 と 模 型を 図

することはできない。タイプ Cの折り線にし

2.27( a )( b )に示す 。図 2.27( c )のように正

て稜線部にゆとりを持たせた展開図[ 図 2.26

12面体の面に タイプ A の折り線 を設ける。

( I )Jを用いて正 4面体形状のコルゲート模型

この折り線で作った展開図(半分)と模型が図

を作ったものを 図 2.26(m)に示す 。 これよ

2.27( d )( e )である 。山 、谷折り線を逆 のタ

り正 4面体の自己双対性が分かる。

イ プ B に し た 図 2.27( f )を 用 い る と 、



様にこの 3角錐を元の正 4面体の内部に収納

なお、正多面体のすべての面に、‘‘正 3角

2.27( g )の展開図 になる。 この展開図の色付

形”の錐面からなる角錐を貼り付けた形状は

h )に けして示した基本の 3角形は、 図 2.27( 39

2.4 正 多 面 体 と 半 正 多 面 体 間 の相互 の関連とそ れら の折 紙模 型 ;双対折紙 (DualOrigami)の提案

( a )

第 2章 幾何学の基礎と折紙への応用

(ニ

( j )

( i )

内向き

( 凹)の 正 3角錐 ( 2 0面 )

' → ←

凹の正 3角錐 の形成

( I ) .

( k )

タイプ C

図 2.27( 続き) ( h )黄金の鈍角 2等辺 3角形(底辺と等辺長の比;黄金比(/)= c1 . 618) 、( i )黄金の鈍角 2 等辺 3角形 3個で作る正 3角錐の展開図、(」)凹面の正 20面体の折紙模型 (ケプラ ーの星型;大 12面体)、 ( k )大 12面体の模式図(同一面;同一色 ) 、 ( l )コルゲート面を作るタイプ C の折り線図、 (m)タイプ C の 折線を用いて作られたコルゲート面からなる正 20面体の折紙模型

示 す底辺と等辺の長さが黄金比の、黄金の鈍

紙模型を小、中学生が簡単に作ることができ

角 2等辺 3角形と呼ばれるものである(付 録

るようになったことは特筆すべきことと考え

2参照)。 図 2 . 2 7( g )の展開図は凹の正 3角

る 。

錐を作る 図

2 . 2 7( i )に示 す 図 形 1 0個 分から

なっている。 図 2 . 2 7(g)を 2枚貼り合わせて 折ると、 図

2 . 2 7( j )に示す全面凹の正 2 0面

体を得る 。 この折紙模型はケプラー ・ポアン ソの星型正 多面体の 図

図2 . 2 7( f )に換 えて 、図

2 . 2 7( 1 )のタイプ

Cの折り線を用いると 、図 2 . 2 7( m)のよう なコルゲート面からなる正

20面体を作るこ

とができる 。すなわち 、正 12面体の展開図

1つの大 1 2面体である 。 より双対の正 20面体に関連する模型が作ら

2 . 2 7(k)に模式的に 示すようにピンク 、黄

色 、緑色や紺色などの同色面が同一平面上に

れる。 逆に、 図

2 . 2 8(a)に示す正 20面体の展 開

2 . 2 8( b )の タ イ プ Aで折り線を配す

あり(章末コラム参照)、それら(同色面)の外

図に 図

枠の形状は正 5角形である 。慣用の 正 12面

ると 図 2 . 2 8( c )のような 折紙模型 になる。 こ

体の展開図に双対折紙を行 う容易な手法で、

れは正 12面体の各面に正 3角形の錐面の正

高度なケプラー ・ポアンソの星型多面体の折

5角錐を貼り付けたダヴィンチの星である。

40

( c l

( f )

正5角錐 の凹面

口□ [ ゅ

( e )

タイプ B ( h )

図2 . 2 8( a )正 20面体の展開図、 ( b )(c) タイプ A の折り線図とこの折線で作られた折紙模型、 (d)~(f) タイプ Bの折り線の正 3角形とそれを用いた展開図、凹面からなる正 1 2面体の折紙模型(大 20面体の g )( h)タイプ Cの折線固とこれにより作られたコルゲート面からなる正 1 2面体 骨格構造として使用)、 ( の折紙模型

.28 付与する山、谷折り線を逆にした 図 2

2.28( a )J の正 3角形に用いると 図 2 .28( h )

( d )のタイプ Bの折り線を用いると、展開図

に示すような全面コルゲート面の正 12面 体

は図 2 .28( e )となり、折紙模型は 図 2 .28( f )

が作られる。

に示すような全面が凹の正 5角錐からなる正

なお 、上述の正 12面体の展開図から双対

12面体形状の模型になる。 この折紙模型は

折 紙 を 用 い て 作 ら れ る 全 面 凹 の 20面体(大

ケプラーに続いておおよそ 2世紀後に発見さ

12面体)には 図 2.47( b )で示すケプラーの小

れたポアンソの星型正多面体の 1つの大 20

星型 12面体が、正 20面体の展開図から双対

面体の中心部の骨格になる重要な構造を与え

折 紙 で 作 ら れ る 全 面 凹 の 12面体には、 図

る( 章末コラム 参照)。 図 2 .28( d )に換えて、

1 . 5( e )や 図 2.47( i )で 示 す ケ プ ラ ー の 大 星

図2 .28( g )の山 、谷折り線を交互に設けるタ

型 12面体がスッポリと収納される重要な幾

イ プ Cの 折 り 線 を 正 20面 体 の 展 開 図 ( 図

何模型であることを注記しておきたい。 41

2.4 正 多 面 体 と 半 正 多 面 体 間 の 相 互 の 関 連 と そ れ ら の 折 紙 模 型 ; 双対折紙 (DualOrigami)の提案

/︹ 回

( a )

第2 章

2 . 5 内心連結折紙による半正多面体の模型製作

幾 何 学 の 基 礎 と 折 紙 への 応 用

正多面体の展開圏を構成する正多角形を等分に分割し 、細分された図形を基本図形とする 。 基本図形の内心点を結ぶ線分を山折り線、 内心点と元の正多角形の頂点を結ぶ線を谷折り線と し、これらの折り線が追加付与された正多面体の展開図を用い新たな多面体を作ること を試み る。山折り線で内心を結ぶことで新たな正多角形を元の展開図上に形成し、 元の多面体の頂点

2面体および正 20 部が凹面になるよう谷折り線を設ける。 ここでは、 立方体、正 8面体、正 1 面体等の正多面体の展開図をベースに、 一部が凹面の半正多面体および凹面をコルゲー ト面に

. 1節で述べた’’ 切頂”や’ ’削辺”など した半正多面体の例を示す。このような展開固の作成法は 2 の手法を用いて半正多面体を作る幾何学的な手法に換え、これらを折紙的な手法で導出するこ とを目的として考案されたものである。

( a ) 立方体の展開図ベース 図 2.29( a )のように、正方形を対角線で

8 )の凹面模型と コ られる斜方立方 8面体 (No. ルゲート面模型を各々 図 2.29( f )( g )に示す。

4等分 して得た直角 3角形を(元の)正方形の

正方形を対角線 2本で 4等分し 、分割して

辺上で 2個組み合わせて正方形を作り、それ

作られた直角 3角形の内心 を結ぶ線分を山折

らの 内心(白丸点) を定める。新しい 内心点は

り線、内心点と正方形の頂点を結ぶ線分を谷

元の正方形のすべての辺の中点にある。 これ

折 り線として得た 図形とそ れによる展開図 を

らの 内心点を結んだ線を山折り 、元の正方形

h )に 、 正 6角形の面が凹面とコ ル 図 2.29(

の辺を谷折りとして作 った ( 立方体の ) 展開図

ゲー ト面の切頂 8面体 (No. 3 )模型を各々 図

[ 図 2.29( b )l と作 られた正 3角形の面が全面

2.29( i )( j )に示す。

o . 6 )の模型を 図 2.29( c ) 凹の立方 8面体 (N

k )のように正方形を直角 3角形で 図 2.29(

に示す。この 凹面をタイプ Cの折り線を用い

8等分 した 3角形の内心を結んだ展開図を用

d )に てコ ルゲー ト面にした模型を 図 2.29(

1 )(m)に示す凹面とコ ル いると 、図 2.29(

示す。

ゲー ト面の斜方切頂立方 8面体 (No. 1 0 )の模

正方形を 鉛直線と水平線で 4等分 し、それ

型を得る。またこの直角 3角形を 2つ合わせ

らの 内心 を結んだ線分を 山折 り線、 内心点と

た図形の内 心を 結んだ 図 2.29( n )の展開図

正方形の頂点を結ぶ線分を谷折り線とした図

o)( p )の 切 頂 6面 体 を用 いると 図 2.29(

形とこれを用いた展開図を 図 2.29( e)に、作

( N o . 2 )の模型になる。

42

2

) c l f 3 / J

ロ~

l e (



内 心 連 結



No.6 立方 8面体

1

、 ヽ ' , 、 七: ヽ. : 、 、

( h i

包〉

( d

5



e n

, , T . 1 t t , , r 1 t 1 /

紙 に







半 正

( g )



面 体 の

悶 製 作

No.8 斜方立方 8面体



( i )

} I

( j )



[ : _ . i さ 、l 炉--↑・↓ ' .ど ↑ ---、[文:

No.3 切頂 8面体

鳳 麗 『 口n " 'e

( k

No.IO 斜方切頂立方 8面体 ( o )

ビ No.2 切頂 6面体

. 2 9 立方体の展開図を基本、正方形を等分割、内心点と折り線の付与、凹面とコルゲート面模型の製 図2 作、 (a)~(d) 立方 8 面体 (No.6) 、 (e)~(g) 斜方立方 8 面体 (No.8) 、 (h)~(j) 切頂 8 面体 (No.3) 、 (k) ~(m) 斜方切頂立方 8 面体 (No. 1 0) 、

(n)~(p) 切頂 6 面体 (No.2)

43

幾 何 学 の基 礎 と 折 紙 への 応 用



第 2章

( a )

(b)

図2 . 3 0 立方体の展開図をベースに切頂 4面体を作成、 ( a )正方形を対角線で 2等分し、内心点(白丸)を b )正 3角錐 4個内向き配置、正 6角錐 4個外向き配置、 (c)A、B、Cの角錐部の 定め展開図を作成、 ( すべてをコルゲート面で概略平面化した切頂 4面体 ( N o .1 )

図 2.30( a )のように正方形を対角線で 2等

して折り線図とす る 。 図2 . 3 1( a )は正 3角形

分して得た直角 3角形の内心を結ぶと 、正 3

を 3分割し、 2個を辺上で接合して得られる

角錐 4個と正 6角錐 4個を切頂 4面体の 8面

菱形の内心を結んだ図形、 図 2 . 3 1( d )( g )は

に貼り付けた立体の展開図になる。 これらす

異なる形で正 3角形を 3等分して得た展開図

べての角錐面を凹面にすると、凹面が大きい

. 3 1( j )は 6等分して得た である。また、 図 2

ため立体内部に収めることはできない。 図

図 、 図2 . 3 1(m)は 6等分して得た直角 3角

2.30( b )は正 3角錐の部分だけを内部に押し

形を 2つ辺上で接合した 2等辺 3角形を基本

込む形で配置し、正 6角錐部分 4個を外付け

図形にして得た展開図である。

したものである。すべての面をタイプ C の

上記の種々の分割により作られる模型は 図

折り線にすると、全面コルゲート面からなる

2.30と同じ半正多面体 [ 上から順に 、立方 8

l )模 型 が 作 ら れ る [ 図 切 頂 4面 体 の (No.

面体 ( N o . 6 )、斜方立方 8面体 (No. 8 )、切頂

2.30( c )J 。

6面体 ( N o . 2 )、斜方切頂立方 8面体 (No.10)、 切頂 8面体 ( No.3))であるが、凹面になる面

( b ) 正 8面 体 の 展 開 図 ベ ー ス 立方体の場合と同じように正 3角形を等分 割した基本図形の内心を定め、 これらを連結

44

が異なっている。また、凹面部をタイプ Cの 折り線でコルゲート面にした折紙模型を各々 示す。

2 5

. 墨 へ ゞ " '( J / 0 >~ (~心い (e) ~ (f) ~ I No.6

V

I J " i/. J. . l . L .ノ. Ju 皿

( g )

( h )

ふ 'IW>f«."7•:.+凶`玲: 1沿 り 心 "'

1 ' t "

・: -r ' ' り 】

No.2

( k )



切頂 6面体

( l )

, , , ., . , 0

湿'.--日こ認 日--峙;、:、ヤゴ沿I 9

製 作

( i )

影乞

V





拿 よ

立方 8面体

\ \ / 、 、 、 '

~

No.10

斜方切頂立方 8面体

No.3 切頂 8面体

図2 . 3 1 正 8面体の展開図を基本、分割図、内心点と折り線入り展開図、凹面模型とコルゲート模型、 (a) ~(c) 立方 8 面体、 (d)~(f) 斜方立方 8 面体、 (g)~( i) 切頂 6 面体(図 (h) は 8 角錐部 6 個す べて内向きに 配置不可のため、

2 個分のみ内向きに)、

(j)~( l ) 斜方切頂立方 8 面体、

(m)~(o) 切頂 8 面体

45

言會

第 2章

( a)

( b)

幾何学の基礎と折紙への応用

No.7

2 0・1 2面体 ( d)

( e)

◎ ( f )

No.9 斜方 20・12面体 ( g)

( j )

( h )



e

( i )

( k )

No. 1 1 " Q i 蕊‘そ 斜方切頂 20・12面体

( m)

( n)

( o)

、 ー : , ' " 図 2. 32 正 12面体の展開図を基本、分割法と基本図形、内心点と折り線入り展開固、凹面模型とコル ゲート模型、 (a)~(c) 20 · 12 面体、 方切頂 20 · 1 2 面体、

(d)~(f) 斜方 20· 1 2 面体、

(g)~( i ) 切頂 20 面体、 (j)~(l) 斜

( m )~(o) 切頂 12 面体

( c ) 正 12面 体 の 展 開 図 ベ ー ス

とし 、その内心を結んだものである。 図 2. 32

正 5角形を等分割して得た図形の 内心点を

( j )は 10等分した図形を 、図 2.32( m)は 10

連結して折り線図とする。 図 2. 32( a )は正 5

等分した医形を辺上で接合したものを基本図

角形を中心より描いた放射線で 5等分後 、辺

形にしている。 これら 5種類の分割による展

2個を接合して得た菱形の内心を結んで

開図で作られる半正多面体の凹面模型とコル

上で

得た展開図である。 図 2. 32( d )( g ) は凧形と

ゲート面の模型は、 20・12面体、斜方 20・

2等辺 3角形で各々 5等分したものを基本図

12面体、切頂 20面体、斜方切頂 20・12面

46

v

(g) ~

A

9





2 . 5 内 心連 結 折 紙 に よ る 半 正 多 面 体 の 模 型 製 作







( d i



、、¥'ヽ’’、,'ヽ、 ヽ ヽ、 ` ‘’、‘‘、 ''

( b l

( e )

( h )



( k )

曇 瓜冒

, _I 、 i

氾こ



'VNo. 1 1 斜方切頂 2 0・12面体

0

( n )



O i ; O J

切 益

図2 . 3 3 正 20面体の展開図を基本、分割法と基本図形、内心点と折り線入り展開図、凹面模型とコル ゲート模型、

(a)~(c) 20 · 1 2 面体 、 (d)~(f) 斜方 2 0 · 12 面体、

(g)~(i) 切頂 1 2 面体、 (j)~(l) 斜

方切頂 20 · 12 面体、 ( m )~(o) 切頂 20 面体

体、切頂 12面体である 。

れらの展開図で作られる半正多面体の凹面模

2面 体、 型とコルゲート模型は上から、 20・1

( d ) 正 20面体の展開図ベース

斜 方 20・ 12面 体、切 頂 12面 体、斜 方 切 頂

本節 ( b )で示した正 8面体の場合と全く同

2 0 ・ 1 2面体 、切 頂 20面体の 5種類である。

様に正 3角形を分割したものを基本図形とし

2面体の展 開医をベー スに 双対関係より正 1

て、正 20面体の展開医の正 3角形にも用い

した ものと 基本構造が同 じも のになるが、正



. 3 3に示す。 る 。 この展開図と模型を 図 2

1 2面体ベースの ものとは凹面の場所が異なる。 47

第2 章

( e ) 立 方 体 と 正 12面 体 の 展 開 図 を ベ ー ス

幾 何 学 の 基 礎 と 折 紙 への 応 用

にした変形立方体と変形

12面 体 の 展

開固とその模型

心点でもある。 図 2.34( g )に示すよう に、変形 12面体の 場合は 2つの正 5角形の間に正 3角形 2個か

前節 (a)~(d) では展開図を構成する正多

らなる平行 4辺形を配置した形になる。 2つ

角形を等分割し 、分割後の図形の内心を結ぶ

の正 5角形の中心を Fと G、その中点を H と

方法で 13種の半正多面体のうち 1 1種の展開

する。点 Hで線分 FGを垂直に横切る線分 I J

図を作った 。 ここでは残された 変形立方体と

を引く。同じ操作をこの正 5角形まわりの残

変形 1 2面体を 、立方体と 正 12面体の展開医

り 4辺についても行うと 、正 5角形の外側に

をベースに作図する方法を述べる 。

大きな正 5角形 IJKLMが作られる[ 図 2.34

図 2.21 で述べたように、変形立方体の展

( h )J 。 ここで、 正 3角形の辺の部分を山折り

開図は正方形の 4辺に正 3角形を貼り付けた

線 、内側 の正 5角形の頂点と外側のそれらを

形を基本図形にして作られた。この基本固形

結ぶ線を谷折り線とした。この正 5角形で正

2つを正 3角形の辺でつなぐと、 図 2.34( a )

12面体の展開図 (半分 )を作ると 図 2.34( i )

に示すように 2つの正方形 (ABCDと 印J K、

となり、これを 2個用いることによ り正 3角

中心 E と F )の間に、正 3角形 2個からなる

形の面の一部が凹の変形 12面体の折紙模型

平行 4辺形が作られる。線分 EFの中点 Gで

[ 図 2.34( j )Jが作 られる。

EFに垂直な線分 LMを引く。同じ作図を正

変形立方体の 図 2.34( f )に倣 って 、正 5角

方 形 ABCDの 4辺について行うと、 この正

形を分割し内心連結による双対折紙の手法で

方形の外側に大きな正方形 LMNPが作られ

展開図の作成が可能か否かを調べる。正 5角

る。この部分を取り出し[ 図 2.34( b)J、正方

形の対角線を結んで黄金の鋭角 2等辺 3角形

形L MNP内部の折り線を示すと 図 2.34( c )

6 ° 、底角 (頂角 a = 3

となる 。 ここでは 、正 3角形の辺の部分を 山

し、 これらの内心点(白 丸)を結んで小さな正

折り、内側の正方形の頂点と外側 のそ れらを

5角 形 を 作 図 す る と 図 2.34( k )とな る 。 図

結ぶ線を谷折り線としている。この正方形で

2.34( 1 )は外側 の正 5角形を 2つ配置し 、隣

立方体の展開図を作ると 図 2.34( d )となり 、

り合う内心点を結んだものである 。図 2.34

これより 図 2.34( e )の正 3角形の面の一部が

(m)はこ の図の連結部の 3角形 2つからなる

凹面になった変形立方体の折紙模型が作られ

平行 4辺形を 示したものである。 この平行 4

る 。 なお、上で定めた内部の正方形の頂点

辺形の寸法を算出すると 、a=1のとき 、b

A-D は図 2.34( f )に示すように配置 した角

=C::;:0. 945となる。すなわち 、これら

度 30°と 60°からなる 4個の直角 3角形の内

の 3角形は厳密には正 3角形にはならな い。

48

/ 3= 720)を 5つ配置

2つ

2 . 5 内 心 連 結 折 紙 に よ る 半 正 多 面体の 模 型 製 作



( e )



戸 3

( g)

3 0

: o K

( j )

J ( l )

( k )

(m)

D

A

t s } a=l , b=C= ;0. 945

B

C

図2 . 34 変形立方体の展開図と模型製作、(a)正方形の 4辺に正 3角形を貼り付けた図形の接合、(b)( c ) 大きな正方形の取り出しと折り線の導入、 ( d )( e )折り線入りの正方形の展開図とその折紙模型、( f )内心 を定めるための正方形の分割と配置法、( g )正 5角形の 5辺に正 3角形を貼り付け後接合、 ( h)-( 」 ) 折 り 線入りの正 5角形、展開図の半分と模型、 (k)-(m)内心点を求めるための正 5角形の分割図と内心(白 丸)、連結部の様子と寸法指定

結果、(残念なことに)黄金の鋭角 2等 辺 3角

k )で a 鋭 角 2等 辺 3角形に換えて 、図 2.34(

k )を用い 形の内心を結んで作られる 図 2.34(

3= ; :73. 14°(a+f 3=108°;正 : : ; :34. 86° 、/

2 た展開図を用いると 、作 られる模型は変形 1

5角形の内角)とした不等辺 3角 形 を 用 い 、

面体の近似体になる。

h ) そ の 内 心 点 を 結 ぶ こ と に よ り 、 図 2.34(

なお、定規とコンパスで作られる上述の幾 何学的な手法から逸脱するが、上記の黄金の

と同じ(正確な寸法の模型を与える)展 開図 が 作られることを付記しておく。 49

第 2章

2 . 6 半正多面体とその双対体(カタランの立体) の

幾何学の基礎と折紙への応用

折紙模型の製作:双対折紙による相互変換 正多面体の双対関係の延長として、半正多面体の双対のカタランの立体と呼ばれる多面体の 折紙模型を双対折紙の手法を用いて作る。 これは 、図 2 . 5に示したアルキメデスの平面充填形 とその双対形の関係を 3次元の立体の問題に拡張したものである。

. 7に示 した 1 3種の半正多面体に対応 図2 する双対多面体の名称と形状を 表 2 . 2と図

2.35に示す。それらは表 2 . 1で示したアル

( N o . 6 ) と 20・12面体 (No. 7 ) を基にす 2面体と菱形 30面体 る菱形 1 ③④

二重切りや削辺法で得た 4つの半正

多面体、すなわち斜方立方 8面体 (No. 8 )

に大別される 。

と斜方 20・12面体 ( N o . 9 ) に対応する 2



キメデスの立体の分類に 準拠し、以下の 5つ

図2 . 7の No. 1-5の切頂多面体に対応す

つの凧形多面体、および斜方切頂立方 8面

の 5種

に対応する 6方 8面体および 6方 20面体

中 点 ま で 削 っ て 作 られ た 立 方 8面 体



体( N o . 1 0 )、斜方切頂 20・ 12面体 ( N o . 1 1 )



る双対多面体で、 O方O面体と呼ばれるも

変形立方体 ( N o . 1 2 )、 変 形 1 2面 体

表2 . 2 半正多面体およびその双対多面体(カタランの立体)とそれらの面の形状 半正多面体名

50

対応する双対体名(要素の形)

N o . 1

切頂 4面体 [ 3 .6 ,6 ]

3方 4面体

(不等辺 3角形)

No.2

切頂 6面体 [ 3.8 ,8 ]

3方 8面体

(不等辺 3角形)

No.3

切頂 8面体 [ 4 .6 ,6 ]

4方 6面体

(不等辺 3角形)

No.4

切頂 12面体 [ 3 ,1 0 ,1 0 ]

3方 20面体

(不等辺 3角形)

No.5

切頂 20面体 [ 5 .6 ,6 ]

5方 12面体

(不等辺 3角形)

No.6

立方 8面体 [ 3 .4 ,3 ,4 ]

菱形 12面体

(菱形対角線長比; 1 . 4 1 4 )

No.7

3 .5 ,3 ,S J 20・12面体 [

菱形 30面体

(菱形対角線長比; 1 . 6 1 8 )

No.8

斜方立方 8面体 [ 3 .4 ,4 ,4 ]

凧形 24面体

(凧形)

No.9

斜方 20・12面体 ( 3 .4 ,5 ,4 ]

凧形 60面体

(凧形)

No.10

斜方切頂立方 8面体 [ 4 .6 ,8 ]

6方 8面体

(不等辺 3角形)

No.11

斜方切頂 20・12面体 [ 4.6 ,1 0 ]

6方 20面体

(不等辺 3角形)

No.12

変形立方体 [ 3 .3 ,3 ,3 ,4 ]

5角 24面体

(5角形)

No.13

変形 12面体 [ 3 .3 ,3 ,3 ,S J

5角 60面体

(5角形)

3方 8面 体

3方 4面体

4方 6面 体

R 6方 8面体



菱形 30面 体

凧形 24面 体

@

6方 20面体

5方 1 2面体

~

c

1 2面 体

3方 20面体

0

< $ ? )@ 菱形

◎ @ 凧 形 60面 体

5角 60面 体

5角 24面 体

図 2.35 13種のアルキメデスの多面体の双対多面体(カタランの立体)とそれらの名称

(No. 13 ) に 対 応 す る 5角 24面体と 5角

( a)切頂 8面 体 ( No.3) ⇔ 4方 6面 体 の

60面体

相互 変 換

上述した半正多面体とその双対のカタラン

図 2.36( a )に示 す 切 頂 8面 体 の 展 開 図 の

の 立 体 (25)の 代 表 的 な 模 型 に つ い て 以 下 で 述

b )のようにタ 正 4、6角形すべてに 図 2.36(

べる。

イプ Bで山、谷折り線を描き(折ることなく)、 c )の ようにな る。折り 模型を作ると 図 2.36(

( a )

( b ) r n @

( c )

タイプ B

図 2.36 ( a )( b )切頂 8面体の展開図とタイプ Bの折り線図、 ( c )山、谷折り線を描いた切頂 8面体の外 面の内心、 O:頂点

観、 A~C:

51

2 . 6 半正多面体とその双対体︵カタランの立体︶の折紙模型の製作;双対折紙による相互変換

口 ~ ~

A

幾何学の基礎と折紙への応用

ロニ

'[ `

ー' ` g

第 2章

( ロ

( e)

( d)

等辺長/底辺長

=0.75

二→ 」 (t j l 図 2.36( 続 き ) ( d )全面凹の 4方 6面体(カタランの立体)の模型、 (e)-( h )4方 6面体の外観、基本要 素の形状と 4角錐面の製作、全展開図、 ( i )内心から折り線を配置(タイプ B )、( j )折り線図 4 i 固を接合、 ( k )全面凹の切頂 8面体模型

線 AB、BC、CAを山折りにして、切頂 8面

h )が 4方 6面体の展開図とな いだ 図 2.36(

体の白丸で示した頂点部 0 を内部に押し込

る。双対折紙を行うため、 この立体の展開図

むように折る。 これを 24個の頂点すべてで

36( f )J に図 2.36( i )のよう の基本図形[ 図 2.

行うと 図 2.36( d )のような 3角錐(頂点 0)

に内心を 0 としてタイプ Bの折り線を設け 4

が内向きに配置された全面凹の多面体になり、

個貼り合わせると、 図 2.36( j )を得る。 この

この多面体の稜線が作る外枠は 4方 6面 体

h )を作ると、 ような折り線を付与して展開図 (

( 図 2.36( e )Jと呼ばれるカタランの立体の

図 2.36( k )に示す全面凹の(双対の)切頂 8

形状になる*。

面体模型となる。

e )で分かる 上述した 4方 6面体は 図 2.36(

正多面体の内心連結による双対折紙と同様

ように正 4角錐を立方体の 6面に貼り付けた

に、半正多面体の展開図を用いタイプ Bの折

形状である。 この 4角錐は等辺と底辺長の比

り線で双対折紙を行うと、対応する双対のカ

f )J4個から が 3/4の 2等辺 3角形[ 図 2.36(

タランの立体の全面凹の多面体が作られる。

なる 図 2.36( g )に示す展開図で作られること

逆に、カタランの立体の展開図でタイプ Bの

が分かっている (25)。 この 4角錐を 6個つな

折り線で双対折紙を行うと、全面凹の双対の

52

* 厳密には小さな誤差を伴う近似体である。近似度合は本項 p . 5 8で議論

I

~

< b l

b/a=v 2

$ タイプB

( h)

( e )

( f )

( c )

( g ) E E l &

( 」 ) 。 (口: タイプ B

タイプ C 図2 . 37 (a)~(c) 菱形 1 2 面体の模型、面形状と展開図、 (d) タイプ B の折り線、 (e) 全面凹の立方 8 面 体、( f )( g )立方 8面体の展開図とタイプ Bの折り線図、( h )全面凹の菱形 1 2面体、 (i )( j )タイプ Cの折 り線と全面コルゲート面の菱形 1 2面体模型

半正多面体を得る。

に垂直の 山折 り線、頂 点 に 谷 折 り 線 を 設 け

.37( c )に用いる (タイプ B)、この菱形を 図 2

( b ) 立 方 8面 体 (No . 6 )⇔ 菱 形 12面 体 の相互変換

と、図 2 .37( e )に示す双対の立方 8面体の全 面凹の模型を得る。

上とは逆に、 カタラン体の菱形 1 2面体か

逆に 、立方 8面体の展開図[ 図 2 .37( f )l の

ら半正多面体の(全面凹の)立方 8面体を作る。

正 方 形 と 正 3角形を 図 2 .37( g )に示したタ

菱形 1 2面体[ 図 2.37( a )Jは後の 図 2 .48で

.37( h ) イプ Bの折り線で置き 換えると 、図 2

述べるように単独で空間を充填できる幾何学

に示す全面凹の菱形 1 2面体の模型を得る。 図

的に重要な立体である。その展開図は図 2. 37

2. 37( i )に示したタイプ Cの折り線で置き 換

(b)に示 す よ う に 対 角 線 長 が 白 銀 比

( J 百 キ

えると、 図 2 .37( j )に示す全面コルゲート面

1 . 4 14 )の 菱 形 12面からなる[ 図 2.37( c )J 。

からなる菱形 1 2面体の模型を作ることがで

.37( d )のように、 菱形の内心より 4辺 図2

きる。 53

2 .6 半 正多 面体 と そ の 双 対 体 ︵ カタ ラ ン の 立 体 ︶ の 折 紙 模 型 の 製 作 ; 双 対 折 紙 に よ る 相 互 変 換

( a )

第 2章

( 三

幾何学の基礎と折紙への応用

( a )

$ •プB

( h)

( c )

1 . 61 8

( f )

( g)

( 『0

Lh@ タイプB

( j )

タイ プC 図2 . 38 (a)~(c) 菱形 30 面体の形状、面の形状とその展開固 、 (d) 菱形の内心よりタイプ B の折り線、 ( e )全面凹の 2 0 ・1 2面体の模型、 (020・ 12面体の展開図(半分)、 (g)正 3、5角形要素にタイプ Bの h )全面凹の菱形 3 0面体の模型、 (i )( j )タイプ C の折り線とコルゲート面の菱形 30面体模型 折り線、 (

( c ) 20・12面体 (No.7)⇔ 菱 形 30面 体の相互変換 図 2.38( a )に示す菱形 30面 体 は 対 角 線 が

展開図(半分のみ表示)の正 5角形と正 3角 形 を図 2.38( g )の タ イ プ Bの 折 り 線 を 設 け て

h )に 示 し た 全 面 凹 の 菱 形 30 折ると 図 2.38(

黄 金比(約 1 .618)の菱形 [ 図 2.38( b )J30面

面体の折紙模型になる。 図 2.38( g )に替えて

からなる。代表的な展開図を 図 2.38( c )に示

図 2.38( i )の タイプ Cの折り線を 設けて折る

す。 図 2.38( d )のように、この菱形の内心を

と、図 2.38( j )に示した全面コルゲート面か

定 め タ イ プ Bの折り線を設ける。この折り線

らなる菱形 30面体の模型を得る。

図 が描 か れ た 菱 形 を 図 2.38( c )の 展 開 図 に 用いると、 図 2.38( e )の全面凹の 20・12面 体の折紙模型を得る。

f )に示した 20・12面 体 の 逆に、 図 2.38( 54

( d ) 切 頂 20面体 (No.5)⇔ 5方 12面 体の相互変換 5方 12面 体 の 基 本 要 素 は 図 2.39( a )に示

『ク

5x @

( i )

( g )

sx @



ロ *︹

三〗

( e )

タイプ B

5個 正6

基本の 2等辺 3角形 R 等辺長 /底辺長=,,0. 887

( l )

(m)

図2 . 3 9 (a) ~ (c) 5方 1 2面体の面の形状、 5つを一組、これを 6個つないだ半球分の展開固、 ( d )5方 12面体模型、 (e)( f )5方 1 2面体のタイプ Bの折り線図、 ( g )凹面の切頂 20面体模型、 ( h)( i )折り線図 j )( k) 切頂 20面体の展開図とタイプ Bの折り線固、 ( l )( m) 全面が凹お とコルゲート面の切頂 20面体、 ( 2面体模型 よびコルゲート面の 5方 1

す等辺長と底辺長の 比 が約 0 . 8 8 7の 2等 辺 3

( f )の折り線で 図 2.39( c )を作り、 これを 2

角 形 (R とする)からなる (25)

つ用いて正 12面体を作るように接合 して折

0

これを 5つ用

いて正 5角錐の展開図を作る[ 図 2.39( b )J 。

ると 図 2.39( g )の凹面の切頂 20面体を得る 。

この正 5角 錐 の 底 面 を 正 5角 形 と 見 て 、正

図 2.39( f )に換え 図 2.39( h)の タ イ プ C の

12面体の展開図を 作 る要領でこの図を配置

折り線を用いると 図 2.39( i )に示 すコルゲー

すると 図 2.39( c )を得る 。これを展開図の半

ト面の切頂 20面体(サッカーボール)が作ら

分とし、 2個用いて作った 5方 1 2面体の模

れる。逆に、 図 2.39( j )の切頂 20面体の展

型を 図 2.39( d )に示す。

開 図 の 正 5角 形 と 正 6角形に 図 2.39( k )に

図 2.39( e )のように 基 本の 2等 辺 3角 形

示 す タ イ プ Bの折り線を付与すると 図 2.39

R の内心 0 を定め 、 タイプ Bの折り線を設

( 1 )の全面凹の 5方 12面体、これをコルゲー

け た も の が 図 2.39( e )( f )である 。 図 2.39

ト面に した図 2.39( m)の模型を得る 。 55

2 . 6 半正多面体とその双対体︵カタランの立体︶の折紙模型の製作ぶ双対折紙による相互変換

i

,‘ d , t、

@ 二*

ニ lbw ~

( a l



9Eし

.-. d

4

: [

幾何学の基礎と折紙への応用

:芦

第 2章



(cl~

( f )

O O r n△ ( h )

i

( i )

タイプ B

図2 . 4 0 (a)~(c)

凧形 60 面体の基本面形状、 5 個つないだパーツ、凧形 60 面体、 (d) ( e )タイプ Bの

折り線の凧形と展開図を作るパーツ、

(f) 全面凹の斜方 20·12 面体模型、

展開固、タイプ Bの折り線、凹面の凧形 6 0面体模型

( e ) 斜方 20・12面 体 (No.9)⇔ 凧 形 60 面体の相互変換 斜方 2 0・ 12面体の双対形の凧形 60面体

(g)~(i) 斜方 20·12 面体の

プ B型にすると 図 2 . 4 0( d )を得る。 5個用い

. 4 0( e )のパーツを作った後、これで正 て図 2 2個用いて正 1 2面体 5角錐を作り、 これを 1 を作るようにつなぐと 図 2 . 4 0( f )に示す、全

に示す寸法比の不等辺 3角形を対称に貼り合

面が凹の斜方 20・12面体が作られる。逆に、

. 4 0(b)に示 わせた形状である。 これを 図 2

図2 . 4 0( g )に示す斜方 2 0・ 12面体の展開図

すように 5個つなぎ、 つないだものを正 1 2

を用いて全面が凹の凧形 6 0面体を作る。

面体を作るように 1 2個貼り合わせると、 図

の展開図の正 5、 4、 3角形を 図 2 . 4 0( h )の

2 . 4 0( c )のような凧形 6 0面体が作られる。

ようなタイプ Bの折り線を設けたものに置き

凧形の内心を定め、 ここから 4辺に垂直に山

換えて折ると、 図 2 . 4 0( i )のすべての面が凹

折り線、頂点に谷折り線を 4本ずつ設けタイ

の凧形 6 0面体を得る。

56



の模型を作る。基本となる凧形は 図 2 . 4 0( a )

( c)

: c6 7.45° a=

/ 3= : c1 18.14° al b= : c1 .750

( d)

R

( f )

( e)

( g o o △

( ; ) . ふ

、 イプ B

タイプ C

( h)

( j )

図2 . 4 1 (a)- (c)基本の 5角形の形状、 5個つないだ展開図のパーツ 、パーツ 1 2個で作られる 5角 60 面体、 ( d )タイプ Bの折り線を設定、( e )全面が凹の変形 1 2面体、 ( f )変形 1 2面体の展開図、 (g)(h)正 3、5角形にタイプ Bの折り線を設定、この折り線で製作された全面凹の 5角 60面体、 ( i )( j )タイプ C の折り線と製作された コルゲート面の 5角 60面体模型

( f ) 変形 12面体 ( No.13)⇔ 5角 60面 体の相互変換

ものが図

2 . 4 1( d )で 、 この図を 1 2個貼り合

わせて展開図とすると 、図

5角 60面体の基本となる 5角形の面は 図

の(全面が凹の)変形

2 . 41( e )の 双 対

1 2面体の模型を得る。

2 . 4 1( f )に示す変形 1 2面体の展開

2 . 4 1( a )に 示 す よ う な 対 称 形 状 で あ る 。 図

逆に 、図

2 . 4 1( b )の よ う に 5個 つ な い で 5角 錐 を 作

図の正 3角形と 5角形を 、図

1 2面体を作るよ

すタ イプ Bの山 、谷折り線で置き換えた後こ

1 2個のパーツをつなぐと 図 2 . 4 1( c )の

れを折ると 、図 2 . 4 1(h)に示す全面凹の 5角

るパーツを作り、 これを正 うに

ような 5角 60面体の模型を得る 。 図

2 . 41(g)に示

2 . 4 1( a )の 5角形に定めた内心点より 、

60面体の 折 紙模型が作られる。 図 2 . 4 1( f ) の展開図に 図 2 . 4 1( i )のタイプ Cの折り線を

タイプ Bの折り線(辺に垂直に山折り 、頂 点

用いると 図 2. 4 1( j )に示す全面がコルゲー ト

ヘ谷折り線)を設ける。 これを 5個つないだ

面の 5角 60面体を 作ることができる。 57

2 .6 半 正 多 面体 と そ の 双 対 体 ︵ カタ ラ ン の 立 体 ︶ の 折 紙 模 型 の 製 作 ﹂ 双 対 折 紙 に よ る 相 互 変 換



( a)

第 2章

( g ) 双対折紙で製作されるカタランの立

789になる。 出すると、図の右に示すように 0.

幾何学の基礎と折紙への応用

すなわち、作られる模型は 4方 6面体[ 図

体模型の形状誤差の評価 半正多面体から双対のカタランの立体、お

2.36( e )Jの基本寸法比 0.75より 約 5%大き

よびその逆のプロセスで折紙模型を作る方法

い値になっている。また、切頂 20面体から

を述べた。前者の場合、厳密にはその形状に

5方 12面体に変換する例の場合には、切頂

少し誤差を伴う問題がある。最初、誤差が生

20面体[ 図 2.42( f )l の展開図が図 2.42( g )

No.6)→菱形 12面体およ じない立方 8面体 (

に示すように正 5角形と正 6角形で成り立っ

び2 0 ・ 12面体 (No. 7 )→菱形 30面体の変換

ているから 、図中の ABと BCの長さの比は

について述べ、次に誤差を伴う例として切頂

0. 897になり、 図 2.39( a )の 5方 60面体の

8面体 (No. 3 )→ 4方 6面体と切頂 20面 体

基本 3角 形 R の 0.887より 1%強大きくな

(No.5)→ 5方 12面体の変換の 2つを代表例

る。このような誤差は元の半正多面体が正方

にして、生じる誤差の量を評価する。

形をベースにする半正多面体では大きく、正

a )は立方 8面体の外観である。凹 図 2.42(

上では半正多面体→カタランの立体の変換



の菱形 12面体は図中の線分 AB、BC、CD、

12角形をベースにする場合は小さい 。

DAを叫斤り線にして、頂点 0 部分を 内部に

の際に生じる誤差について述べた。逆に、

押し込む形で作られた 。図 2.42( b )に示す

タランの立体→半正多面体の変換を行う場合

展開図上では頂点 0周りには正 3角形と正

には、半正多面体がすべて正多角形で作られ

方形が交互に配置されていることが分かる。

るため、形状の問題を伴うことなく正しく変

このため 、線 分 AB、BC、CDと接合部の

換されることを注記しておきたい 。

DF+EAの長さが等しくなり、作られる菱 こ

形 1 2面体の稜線寸法に誤差は生じない。

半正多面体の展開図を用いて双対のカタラ ンの立体の近似模型を作る例を示した。初等

れは正多角形の組み合わせが異なる 20・12

幾何学を超えた幾何模型を記述した意図は、

面体を基にし、菱形 30面体へ変換する場合

小中学生でも簡単に作れる半正多面体の展開

c )l 。 も同様である[図 2.42(

図に 内心連結によ る双対折紙を用いる簡単な

次に、誤差を伴う切頂 8面体→ 4方 6面体

方法で、高度な幾何模型が作れ、幾何学の面

の場合を述べる。 図 2.36で述べたように 、

白さを体感できると考えたことによる。カタラ

d )の点 A-B-Cを結ぶ線分が 4 図 2.42(

ンの立体の詳細については幾何学の教科書 (25)

方 6面体の一面を作る。 図 2.42( e )にこの部

やインターネットで検索できる W ikipediaな

分を展開図で示す。正方形と正 6角形で作ら

どを参考にして欲しい。

れるこの展開図上の線分 ABと BCの比を算 58

2 . 6 半正多面体とその双対体 ︵ カタラ ン の 立 体 ︶ の 折 紙 模 型 の 製 作 ; 双 対 折 紙 に よ る 相 互 変 換

( b )

( c )

( d )

一 辺の長さ

l

AB=l/2+~/2 BC=2(~/2) AD=1/2 3 / 2 CE=J AB/B C = . =0.789

( f )

AB= l/(2tan36° )+氾 /2 BC=2( 占 /2) AD=l/(2tan36° ) DE=辺 12 AB/BC引 0. 897

図2 . 4 2( a )( b)立方 8面体とその展開図の一部、 ( c )20・12面体の展開図の一部、 ( d)( e )切頂 8面体 の頂点 0 周りの折り線の説明図、切頂 8面体の展開図上で 4方 6面体の基本の 3角形 ABCの寸法を算 f )( g )切 頂 20面体の頂点 0周りの折り線の説明図と切頂 20面体の展開図上で 5方 1 2面体の基本 定 、 ( の 3角形 ABCの寸法算定

59

第 2章

2 . 7 折り線が追加付与された多面体の展開図による

幾何学の基礎と折紙への応用

模型製作:双対折紙の拡張も含めて 前節では展開図の要素図形の内心を結ぶ折り線を導入し模型作りを行った。これを折り線を 追加付与して立体模型を創製する新たな折紙手法と考える。ここでは、菱形 12面体や菱形 30 面体に折り線を付与する例、折り線を付与して正多面体を新たな形状に加工する例や星型多面 体の製作例について述べる。

( a ) 菱 形 12面 体 と 菱 形 30面 体

に数分割し、分割された図形の内心を結ぶ双

菱形 1 2面体の展開図[ 図 2.37( c )Jの菱形

.43 対折紙の手法で折り線を設けると、 図 2

(対角線長さ比;約 1 . 4 1 4 )に折り線を追加 ・

( e )- ( h )のようになり、一部あるいは全面凹

付与して、新たな模型作りを行う例を 示す。

の 4つの半正多面体が作られる[ 図 2 .37( c )

菱形の短い対角線を山折り線として追加し、

の菱形 1 2面体のうち、 2面分だけ表示]。そ

境界を谷折り線にすると、 6つの正 4角錐の

れらは正方形や正 8面体から派生する切頂 6

頂点が(立方体の)中心で会合し、 図 2 . 2 6( f )

面体 (No. 2 )、切頂 8面体 ( N o . 3 )、斜方立方

で困難であった立方体のスケルトン模型を作

8面 体 ( N o . 8 )、 斜 方 切 頂 立 方 8 面 体

ることができる[ 図 2 .43( a )J。交互に 山、谷

( N o . 1 0 )の一部凹面体などである。

.43( b )に示すコル 折り線を設けると、 図 2 ゲート面の立方体を得る。

.38( c )Jの菱形 菱形 30面体の展開図[ 図 2 (対角線長さ比;約 1 . 6 1 8、黄金比)に折り線

長い対角線を山折り線、菱形要素の辺を谷

を追加 ・付与して、新たな模型作りを行った

折りにすると、 図 2 .43( c )に示す浅い凹面

例を示す 。折り線の設定法は菱形 1 2面体の

の正 8面体のスケルトン状の模型を得る。

場合と基本的に同じである。

.43(d)のように交互に山、谷折り線を 図2

短い対角線を山折り線として追加し、菱



形の辺を谷折り線にすると、全面凹の正

ゲート模型は不完全なスケルトンに基づくた

図2 .44 ( a )J 。 12面体の模型を得る [

め 、 図2 .25( j )のそれとは厳密には異なるも のである。

2 . 5節で正多面体の正多角形要素を分割し て模型を作ったように、この菱形要素を等分 60



加えると、コルゲート模型を得る 。このコ ル

長い対角線を山折り、菱形要素の辺を谷

折り線にすると、凹面の正 20面体状の模 図2 .44 ( b )J 。 型になる [ 図示はしないが、前述の菱形 1 2面体の 図

( b )

, '︱

, '

‘ 、

( d )

( c )

( f )

(e) ~ o2)

, ' ( ¥

] j: J I J ‘ ‘ ’ ’

三 胃I L

( h )

( g )

~o!OI

~08)~

図2 .43(a)~(d) 対角線長さ比約 1.414 の菱形からなる菱形 12 面体の展開図〔図 2 . 37 ( c )〕を用い、そ の菱形図形に種々の折り線を追加して立体模型を製作 、 (e)~(h) 菱形 12 面体の展開図〔図 2 . 37 ( c )〕 を 用い、菱形要素を複数個に等分割、分割された図形の内心を結ぶ双対折紙の手法で製作される半正多面体 の凹面の折紙模型

( a )

I

( b )



図2 .44菱形 30面体の展開図 ( 図 2. 38( c )〕を用い、 その菱形(対角線長比;約 1 . 618、黄金比)に種々 の折り線を追加して立体模型を製作

61

2 . 7 折り線が追加付与された多面体の展開図による模型製作;双対折紙の拡張も含めて

'`



` 、 ` `



' , ‘‘、‘

( a )

第 2章

( d )

( c )

幾何学の基礎と折紙への応用

(No . 4)

( e )

(No . 5)

( f )

( No. 9)

( No. 1 1)

図 2.44( 続き)菱形 30面体の展開図 ( 固 2.38( c )〕を用い、その菱形(対角線長比;約 1 .618、黄金比) に種々の折り線を追加して立体模型を製作

2.43( b )( d )と全く同じように平行な山、谷

4種の半正多面体 、およびそれらの基である

折り線を交互に複数個追加するとコルゲー ト

立方体 、正 8面体などの幾何学的特性を合わ

面状の正 12面体や正 20面体が作られる。

せ持つ中間的な立体であると考えられる。同

. 4 4 基本の菱形要素を等分に分割し、 図 2

2面体や正 20面体 様に 、菱形 30面体は正 1

( c )- ( f )のように分割された図形の内心を結

図 2.38( e )J を基にし、双対の 20・12面体 [

んだ折り線図(菱形の面 3つ分だけ表示)を用

および図 2 . 4 4(c)~(f) の半正多面体の特性

いると、一部あるいは全面凹の 4つの半正多

が融合した立体であると言える。

面体の模型を作ることができる。それらは 、 切頂 1 2面体 (No. 4)、切頂 20面体 (No.5)、 斜方 20・12面体 (No. 9 )、斜方切頂 20・12 面体 (No.11)の一部凹面の多面体である。

(b) 正多面体の変形•加工の例

上では主に、多面体の面の 内心を結んでデ ザインする双対折紙により凸の多面体を凸凹

上述のことより 、菱形 1 2面体は 、その双

の面からなる立体に変形する操作を述べた。

対の立方 8面体や 図 2.43( e )-( h )で示した

多面体の頂点部を角錐の頂点と見なすと 、通

62

( b )

( d )

( c )

~c

( e )



( f )

( g )

図 2.45 ( a )立方体を 4面 (ABC、ADB、ACD、BCD)で切断、 ( b )4つの 3角錐をコルゲート面にする 展開図、 (c) 製作模型、

(d) 糊付けの容易な展開図へ書き換え、

(e)~(g) 正 8 面体の展開図で概略円形の

コルゲート面の立方体を製作

常の(凸の)多面体を星型として取り扱うこと

( d )は糊付け加工が容易になるように展開図

ができる。以下では、折り線を新たに付与し

( b )を修正したものである (A→ A '、B→ B '、

て異なる形状の模型を創製する例を紹介する。

C→ C 'へ移動)。

多面体の頂点部を角錐の頂点と見な す例と

図 2.45( e )の よ う に タ イ プ C の折り線を

a )のよ して、 立方体を取り上げる。 図 2.45(

基に正 3角形に折り線を設け、双対折紙で正

うに、 立 方 体 を 4面 (ABC、ADB、ACD、

8面体の展開固でコルゲート面の立方体を作

BCD)で切断すると正 4面体が中央に残る。

る 。 ここでは概略円形のコルゲート面になる

これを 正 4面体に正 3角錐を 4個貼り付けた

よう正 3角形の頂角部を 4分割した後、展開

星型多面体と見て 、角錐面をコルゲート化し

図の緑色で示した凧形 6 個 (A~F) を移動し

b )のように立方 て略平面にする。 図 2.45(

た図 2.45( f )を用いた 。製作さ れた折紙模型

体の展開図に山、谷折り線を交互に設け、角

を図 2 .45( g )に示す 。

錐部分をコルゲート状に折ると 、図 2.45( c )

正 20面体の展開図を用いて 、双対の正 12

のコルゲート面の正 4面体を得る。 図 2.45

面 体 の 変 形 模 型 を 作 る 例 を 示 す 。 図 2.45 63

2 . 7 折り線が追加付与された多面体の展開図による模型製作;双対折紙の拡張も含めて

( a )

第 2章

( i )



幾何学の基礎と折紙への応用

( j )

( l )

( k )

図2 . 4 5(続き) (h)折り目を付与した正 3角形と頂点部の拡大図、 (i )図( h )をSf 劉接合した図(正 2 0面体 の展開図の一部)、 ( j )固 ( i )の中心部のピンク色部分を折った折紙模型、 ( k )凹面の正 12面体〔図 ( h )の正 3角形 20枚からなる正 20面体の展開図で製作〕、 ( l ) 山、谷折り線を逆にして作られる切頂 20面体(サッ カーボール)

( h )のような折り線を正 3角形の内部に設け

た図 2 .28( c )など、正多面体に角錐面が正 3

る。これで正 20面体の展開図[ 図 2 .28( a )l

角形の角錐を貼り付けた模型はダヴィンチの

の正 3角形をすべて置き換え新たな展開医と

星型とも言われる。 図 2 .46( a )- ( c )に示す

.45( i )のように すると、展開図の一部は 図 2

ように、 これら 3つの星型を作る角錐基部の

なる。この図の中央のピンク色部は 5角錐を

0 ° の錐面が 6つあり、 会合点(図中、丸印)で 6

形成する。 この 5角 錐 部 分 は 折 る こ と で 図

ちょうど 3 6 0 ° となる 。 そのため 、単純に平

2.45( j )のようなジグザグ面の星型形状にな

面紙を折り返すことで模型を作ることができ

る。結果、これを 1 2面に用いると 、図 2.45

る 。 しかしながら、 図 2 .46( d )( e)に示す 正

( k )に示すような変形型の正 12面体が作ら

8面体、正 20面体状の星型では 、角錐基部で

.45( h )の山 、谷折り線を逆にして れる 。図 2

各々 8個 ( 4 8 0° ) 、1 0個 ( 6 0 0 ° )の正 3角形の

折ると、 図 2 .45( I )に示すような正 5角形の

面が会合するため平面 ( 3 6 0 ° )では賄いきれ

面が星型状に窪んだサッカ ーボー ルを得る。

ない。このよう な模型 を作るには 、3 6 0 ° 以上 の角度を確保する必要がある 。 ここでは 、簡

( c ) 星型多面体

(25、26)

正 4面体に正 3角錐を貼り付けた 図 2 .26

( k )、正 6面 体 に正 4角 錐 を 貼 り 付 け た 図

2.26( b )、正 1 2面体に正 5角錐を貼り付け 64

便な方法として、会合点周りの一部を内部に 折り込んで 360 °以上の角度を作る手法を採 用する。 図2 .46( f )は正 3角形に図のような谷折 り

正 6面体 ( f )

( g )

・ -B 折り込み互

いに糊付け

(h@~;:;:;J

( j )

鸞凰凰鸞喜

固2 . 4 6ダヴィンチの星型の簡便製作法、 (a)-(c)正 4、6、1 2面体をベース、 ( d )(e)正 8面体と正 20 面体形のダヴィンチの星型、 ( f )( g )折り線を設けた正 3角形と正 8面体の展開図、 ( h )内部に折り込んで 糊付け、 ( i )展開図 ( g ) を更に簡略化した製作用展開図、( ) 」正2 0面体形のダヴィンチの星型用展開図

上述の簡便法を用いて幾何学で著名な 2つ

折り込む方法を示す。 この正 3角形で正 8面

. 4 7( a )の よ の星型模型を作る例を示す。 図 2

体の展開固を作ると 、図 2 . 4 6( g )とな る 。 図

うな折り線 、中央部には Y字形のスリットを

2 . 4 6( h )は図 2 . 4 6( f )の 3つの頂点部 (ABよ

設けた正 3角形を作り 、ピンク色部を 2つ折

り上部)を切り取って作った正 6角形で 、これ

りにして 内部に折り込む (a=l8°) 。 この折

で図 2 . 4 6( g )の正 3角形部分を更に置き 換え

り線入りの正 3角形で正 2 0面 体 の展開図 を

ると 図 2 . 4 6( i )となり、 こ れ を 用 い る と 図

作ると 図 2 . 4 7(b)に示 す ケ プ ラ ー の 小 星 型

2 . 4 6( d )に示す星型多面体が簡便に作られる 。

1 2面 体 と 呼 ばれる星型模型が作られる。

正2 0面 体の展開図の正三 角形に 図 2 . 4 6(h)

れは大 1 2面体[図 2 . 2 7( g )J の双対体であり 、

を用いると展開図は 図 2 . 4 6( j )のよう になり、

この 小星型 1 2面体を大 1 2面体の展開 図に 内

これで図 2 . 4 6( e )に示す正 2 0面体型の星型

心連結による双対折紙の手法を用いて 作る こ

模型を簡便に作ることがで きる。

ともできる 。正 5角形 からな る正 1 2面体の



線(点線)を付与し、図中の菱形部分 を内部に

65

2 . 7 折り線が追加付与された多面体の展開図による模型製作;双対折紙の拡張も含めて

( c )

第 2章

( b )

幾何学の基礎と折紙への応用

Y字スリ ッ ト

( i )



図2 . 4 7(a)( b )ケプラーの小星型 1 2面体模型の製作、正 3角形(折り込み用の折り線付与)で作られた正 20面体の展開図を使用、 (c)-(e)模型 (b)を作る別の展開図(正 1 2面体の展開回が基本)、 ( f )- ( i )ケ 2面体模型の製作、 (g)頂角 36゜ の 2等辺 3角形 3個分を残し、残部を折り 込み、( h ) プラーの大星型 1 0面体の展開図を使用 正2

展開図 、す な わ ち 、 大 1 2面 体 の 展 開 図 [図

3辺上に底辺を持つよう 3個設け、残 りを 内

2.27( g )Jの 一 部 を 図 2 .47( c )で表す。 L ' . : l

0面 部に折り込む展開図とする。 これを正 2

.47(h)となる [ 図 ABCの内心 0 を定め 、 3辺に垂線を引くと 、 体の展開図に用いると 図 2 展開図(半分)として 図 2 .47(d)を得る 。簡素

2 . 2 8(a)の 5列のうち、 2列 分 の み 表 示 ]。

.47( c )の 3重 点 部 分 (DOEA) 化 のため 図 2

この展開図を用いると、 図 2 .47( i )に示すケ

を取り去ると 図 2 .47(e)となる 。この展 開図

プラーの大星型 1 2面体と呼ばれる正 20面 体

を用い、 ピンクの部分を内部に折り込むと 図

型の星型が簡便に作られる。模型作りの際に

2.47(b)のケプラーの小星型 1 2面体を作る

は折り重ねがあるためコピー用紙程度の薄

ことができる。

い紙を用いることを推奨する (ケプラー ・ポ

. 4 7( f )に示すように 、正 3角形を基本 図2 にし、 図 2 .47(g)のように頂角

a=36°とし

た 2等辺 3角形(緑色部)を、元の正 3角形の 66

アンソの星型模型の幾何学的観点よりの説明 は章末コラム参照)。

( a ) 単独の正多面体による空間充填

に立方体の中心を通る 面で切断して作られる

平面を隙間なく埋めたものを平面充填形と

6個の 4角錐(例えば正 4角錐 ABCDO)を

呼ぶのと同様に、空間を隙間なく埋めたもの

もう lつ別の立方体の 6面に貼り付けた 形状

を空間充填形と言う。正多面体のうち 、単独

f )Jであ る。立方体の 右面に貼り 付 [ 図 2.48(

で空間を隙間なく詰め込みできるものは 図

けられた 4角錐の 1つの面と上面に貼り付け

2.48( a )( b )に示す立方体だけである 。半正

られた 4角錐 の 1つの面は同一面上にある ;

多面体では 、図 2.48( c )( d )に示す切頂 8面

貼り付 けた 6個の正 4角錐の面はすべて隣の

4面体)で単独で空間を充填 体(ケルビンの 1

それらと面ーになり[ 図 2.48( g )J、角錐面 は

できることが知られて いる。これらの多面体

菱形を形作る。上述のことより 、菱形 12面

による空間充填については第 5章でねじれ多

体は立方体 2個で作られることが分かる。 これらのことか ら図 2.48( h)に示すよう

面体と関連させて記述する 。 単独で空間の充填ができる立体にカタラン

2面 体 が 立 方 体 の ス ケ ル ト ン (図 に菱形 1

体の 1つである菱形 1 2面体( 図 2.37)があ

2.43( a )Jにぴ ったりと嵌るように置ける。こ

e )に示すよう る。菱形 12面体は 、図 2.48(

の嵌め込みは 3方向にできるから 、これを繰

□ • 西 ~:o~: 三 (~[三~ > (bl ~ (c)



h

~

, o

'

体 面ン

菱形 12面体を形成

9 [, ‘ ¥

(g) ~ -

A

菱 形2 縦横比1

I " ' h

図 2.48 空 填涸 、( a b )立 c )( d ) 回つ 匹間 聴充 右 っ)( 古方 亡体 イ、 太 ( 切頂 8面体、 ( e )立方体を正 4角錐 6個に 分離、( f )( g )角錐を立方体の 6面に貼り付

け、角錐の面が隣と面ーとなり、菱形 12面 体を形成、 ( h )菱形 12面体と立方体のスケ ルト ンの完全な嵌め込みの状況

67

2 . 8 正多面体による空間充填 と そ れ ら の 折 紙 模 型

2 . 8 正多面体による空間充填とそれらの折紙模型 (25-27)

幾何学の基礎と折紙への応用

: [

第 2章



( a )A

→ / 口 /

(bl ~

正 4面体

平行 6面体

図2 .49 ( a )( b )正4面体 2個と正 8面体 1個で作られる平行 6面体、 ( c ) 平行菱形 6面体によ

る空間充填の様子 り返すと空間が菱形 1 2面体で隙間なく埋め

填することができる。この空間充填形を用い

尽くされることが分かる。 この菱形 1 2面体

ると、強靭なコア構造をデザインすることが

は体心立方構造の格子点を結んで作られたも

できる。この充填形については第 6章のコア

のであり、立方体に角錐を 6個貼り付けた星 型と見ることができる(第 6章のコラム参照) 。

l

構造の項で述べる 。 切頂 4面体と正 4面体の組み合わせによる空 間充填

( b )2種 類 の 正 多 面 体 の 組 み 合 わ せ で

できる空間充頌 2種類の正多面体や半正多面体を組み合わ

図2 .50( a )に 示 す よ う に 切 頂 4面体[ 図

2.50( b )l を平面上に隙間なく並べたものを 重ねて置くと、間に正 4面体の空洞ができる。

せることにより空間充填できるものが 4組あ

すなわち 、切頂 4面体と正 4面体の組み合わ

る (25)。それらのうち、模型の製作が容易な

せで空間充填される 。正 3角形の面 4個を取

① 正 4面体と 正 8面体の組み合わせによる

り去った切頂 4面体は図 2 .50( c )のように正

充填形、②切頂 4面体と正 4面体に基づく空

6角形 4個の展開図で作られる。 図 2.50( d )

l

正 4面体と正 8面体の組み合わせによる空間

合すると 図 2 .50( e )を得る。 図 2 .50( c )を

充填

.50( f )のように辺を 参考にして 、これを 図 2

.49( a )( b )に示すように正 8面体 Bの 図2

接合すると 、 1辺に 3個並べた 図 2 .50( g )の

両端に 2つの正 4面体 A をつなぎ合わせると

" 3個模型”を得る。 1辺に 4、5個並んだ模型

頂角 6 0 ° の菱形面からなる平行 6面体と呼ば

も図 2 .50( c )をつなげて作ることができる。

れる Cが作られる 。この 6面体は立方体の上

図2 .50( h )は 1-5個からなる模型を積み上

面を対角線方向にマッチ箱をずらすように押

げたピラミッド模型で 、これは 1-5個模型

しつぶした形と 見ることができ 、この立体で

の展開図を矢印部でつないだ図 2 .50( i )で作

図2 .49( c )に示すように空間を隙間なく充

られている。

間充填について述べる。

68

のようにこれを 6つ分配置し 、矢印部分を接

( b )

△正

4面体

2 . 8 正多面体による空間充填とそれらの折紙模型

( a )

( c )

~



接合部 ①

( i ) ( f )









実線;山折り、点線;谷折り ( g )

( h )



図2 .50 ( a )( b )平面上での切頂 4面体の隙間なしの配列;正 4面体と切頂 4面体による空間充填形、 (c) 切頂 4 面体の製作、

(d)~(g) 切頂 4 面体を 6 個つないだ模型を製作する展開図の作成法とその

模型、 ( h l1 ~ s 個模型を積み上 げたピラミッド模型 、 (i) 模型 (h ) を作る展開図 、 (1 ~ 5 個模型 を 作 る 5個の展開図を矢印部で接合)

69

第 2章

【コラム】

星型正多面体の構成と内部構造

幾何学の基礎と折紙への応用

発見さ

観のみで推測することは容易ではない。また、

2面体と、 ③ 大星 れたケプラーの、 ① 小星型 1

b 4 )から分かるように、正 ④ 大 20面体は 図 (

型1 2面体、その約 2世紀後にポアンソにより

12面体に星型断面の角錐を 12個貼り付けた

発見された、 ② 大 1 2面体と、 ④ 大 20面体の、

一見分かりやすい形状ではあるが、どのような

表に示す 4種からなる 。正 5角形、正 3角形ま

寸法の正 3角形 20枚を芯の正 20面体の各面

たは図 ( a )の星型正 5角形のいずれか 1種を芯

に貼り付ければこの模型が作られるのかを理

とする正 1 2面体あるいは正 20面体の(全)面

解・ 納得することは、幾何学の初心者には困難、

に貼り付けて作られる。星型の呼び名は芯の形

否、ほほ不可能に近いと思える 。そのうえ、こ

状で定まる 。② 大 1 2面体〔図 ( b 2 )、図 2.27

の困難に明快に答えてくれる分かりやすい解説

( j )〕は正 1 2面体を芯とし、その 12面に(色分

や幾何模型が容易に見当たらないことが残念な

けした)正 5角形を各 1枚貼り付けて作られて

ことである 。

星型正多面体は 17 世紀初頭に考案•

2面体 C図 ( b 1 )、図 2.47 いる。 ① 小星型 1

2面体と④大 20面体の芯 上述の③ 大星型 1

( b )〕 と ③ 大星型 1 2面体〔 図 ( b 3 )、図 2.47

部分の基本構造は本章で記した双対折紙で作ら

( i )〕の双方ともに、 図 ( a )の星型正 5角形を正

れる全面凹の 1 2面体〔大 12面体、 図 2.27( j )〕

12面体の芯に貼り付けて作られる(図は同一面

と全面凹の 20面体〔 図 2 .28( f )、正 20面体の

を A、Bなど、色分け表示)が、星型の寸法が

第 3の星型 (33)〕と関連している 。これら 2種の

異なる 。小星型 1 2面体の形状は比較的簡単に

凹面体をアクリルや塩ビ板などの透明板で作り、

理解できる 。一方、大星型 1 2面体は、正 12

芯とする正多面体を内接保持し、その芯の部分

面体を芯にしてその周りに正 3角錐 20個が形

を可視化することにより、難解な星型模型の基

成されるよう星型正 5角形 1 2枚を組んで作ら

幹部分を初心者でも目視により明快に理解する

れたものであるが、芯の正 1 2面体と星型正 5

ことができると考えられる 。

角形の面がどのような位置関係にあるのかを外

星型正多面体名

構成す る面の形と数

辺数

( 外 ) 枠の形状

(中心部)芯の形状

①小星型 12面体

星型正 5角形

12枚

30

正 20面体

正 12面体

②大 1 2面体

正 5角形

12枚

30

正 20面体

正 12面体

③大星型 12面体

星型正 5角形

12枚

30

正 12面体

正 12面体

④大 20面体

正 3角形

20枚

30

正 20面体

正 20面体

70

コラム

. ' ¥ / ¥ (

(b 2 )

同一面 ( 正 5角形)、 同一色 大1 2面体

小星型 1 2面体

( b 3 )

( b4 )

A

B

同一面(星型)、 同一色

0面体 大2

大星型 1 2面体

( c)

同一面( 正 3角形) 、 同一色

( d)

凹の正 3角錐

R @c; 正1 2面体 の 3面

凹の 正 3角錐

側面図

E 上面図

大星型 12面体(小星型 12面体も含む)

に示すように凹 20面体の凹んだ正 3角錐と正

図( c )に透明な塩ビ板で作った大 12面体 〔凹

12面体の頂点を作る 3角錐は相似で、頂点 P

面の 20面体、 図 2 .27( j )〕を示す。ここで中心

で接合され、 この点で点対称に配置さ れている。

2面体の全頂点が内向きの 3角錐の凹 部の正 1

それ故、 正 5角形の 3つの面 C R、cなど)は外

面の頂点 P、D、E、Fなど 20点で内接するよ

側に配置さ れた凹面を作る 3つの錐面(R' 、 ◎

うに保持されている。 図 ( d )の側面図と 上面図

など)と各々‘同一面”上にあることが分かる。 7 1

星型 正 多 面 体 の 構 成 と 内 部構造

( a )

第 2章

( g t : J f }

幾何学の基礎と折紙への応用

l 外枠

( i )



黄金の鋭角 2等辺 3角形 を錐面とする正 5角錐 g ) l l 2個を [ 図( 正1 2面体に貼り付け

B 八:

正 5角形



A;黄金の鋭角 2等辺 3角形 ( j )

と 内部が可視化された大星型 1 2面体 2面体) (中央空洞部;小星型 1

芯;正 1 2面体 正 5角形の辺長 l

図( e )( f )は大 12面体の折紙模型と外観の模 c )の内部 に 式図で、図中の 5つの赤丸点が図 (

配された芯の正 1 2面体の頂点に対応する。す

〉 ご

芯 の正 1 2面体を作る 正 5角形の辺長 1 ( 外形;星型中央の正 5角形)

を芯にして図 ( f )の大きさの星型 5角形(ピンク 色部)を貼り付けることで作ることができる。 i )に上部が黄金の鋭角 2等辺 3角形 3個 、 図(

なわち、中央の正 5角形が正 1 2面体の 1つの

下部が鈍角 2等辺 3角形 3個からなる 2種の 3

面になる。 これらの各点を介して正 5角形と面

角錐を一体化した展開図と模型を示す。 この合

①、② ••• ⑤は各々同一面上に くる、結果、 面①

体模型の下部は 図 ( c )の大 12面体の凹面に

∼⑤は同じ平面上にあるこ とが説明できる。

きっちりと収まり、 20個配置すると大星型 1 2

錐面とする正 5角錐の展開図と模型を示す。



図( g )は黄金の鋭角 2等辺 3角形(付録 2) を

面体となる。 図 ( j )は大星型 1 2面体の凹面に 5 個配して芯部分を可視化した模型と、芯となる

の正 5角錐は図 ( h )に示すように、大 12面体の

正 12面体の正 5角形、貼り付ける星型正 5角

内部に配した正 12面体の各面を底面にして大

形の位置の関係を示したもので、大星型 12面

12面体の枠内にスッポリと収納される。 12個

体は芯の正 12面体を作る正 5角形よりひと回

配することで小星型 12面体となる。すなわち

り大きな星型〔図 ( j )の外枠〕を、正 12面体に 12

2面体(正 5角形の面の辺長 1) この星型は正 1

個貼り付けて作られていることが分かる。

72

コラム

( k)

( l )

凹の正 5角錐

星型正多面体の 構成 と内部 構造

I

正 5角錐 (頂点 P)

I



( 盆 謬t:;/ cとr

正3角形で 作られる 正 5角錐形の 2個 凹面 1

同一の 乎面上

F

( n )

( p)

面①、②、③ ; 凹の正 5角錐の 錐面の 1つ 芯;中央の正 20面体 枠;正 3角形

q >=1.618

大 20面体

n )の 6角形の 3つの短辺を延長 して示す。 図 (

図( k )は透明の塩ビ板で作った正 5角錐形の

して、新たに正 3角形の面④∼⑥を付与し、 図

2面体〔図 2.28( f )〕で正 20面体を内 凹面の 1

( o )に示す大きな正 3角形を作る。この大きな

l )に示す 接するように保持する様子を示す。 図 (

正 3角形 20枚を芯の正 20面体の各面に以下

ように凹面の正 5角錐と内部の正 20面体の頂

p )に示 のように貼り付ける。正 20面体は図 (

点を作る 5角錐は相似で、それらは図の点 Pで

すように、上部と下部が正 5角錐、中央部は正

点対称の形で配置されている。それ故、正 5角

3角形が上向 きと下向きに交互に 5個ずつ、計

錐の正 3角形の 5面(R、⑧、c…)は外側に配

10個帯状に配されている。 図 ( p )で色付け して

置された凹面を作る 5つの面(R'、⑥、◎ . . . )

示した 中 央部の 下 向きの 5 つの正 3 角形 (@~

の 1つと各々同一面上にある。

R)部分に図 ( o )の大きな正 3角形を中心部の点

図 (m)は図 ( k )を模式化したもので、 3つの

A、B、Cが一致するよう 各々 1枚(計 5枚)貼

白 丸点 A~C が図 (k) の前面中央下向きの正 3

o )の水平の線分 DE り付ける。 これにより、 図 (

角形の頂点に対応し、 これらの頂点を介してこ

より 上にある正 3角形④の部分 5枚が図 ( q )( r )

の正 3角形と面①∼③ は同一面上にある。 図

に示すように 5角形の星型を形作って交差する。

( n )に中央の(正 20面体を作る)正 3角形と 図

各辺は互いに黄金比で分割され、 5枚の 5つの

(m)の①∼③面が同一面上にあることを模式化

頂点は中心 Fに集まる。 5枚の④で代表される 73

第 2章

⑪の延長面 Rの延長面

( r )

幾何学の基礎と折紙への応用

二 口 こ こ

Rの[長面

==

¢ = 2 ¢ +¢ +¢ ¢ l

H DD F

F

( u)

内部が可視化された大 20面体 ( 中心部 ;正 20面体)

﹁ ユ

上面図

大 20面体

a " "82.239°

F[ 輝

/ 3"75. s22・

; ,22.239 ° o= y= ; ,37. 761 ° y+o=60° a+y=120・

H

F

' 上面

c;2等辺 3角形 ( 底辺長 , P) ( y)

正 3角形は図 ( q )( r )に示す ような星型断面の角

形を 用いて得た図 ( v )を基本図形 とし、 これを

錐を作る(製作方法は後述)。 この角錐を 3個作

5つ並べた図 (w)を星型断面の角錐の展開図と

り、 図 (m) の r ~ 皿の部分にこれらを貼り付け

v )の◎の片方を糊代にして上から貼 する。 図 (

たものが図 ( s )で、大 20面体の芯の部分が可視

り付けると、 図 ( x )に示す所望す る星型断面の

k )の 12の凹みすべて 化できる模型になる。 図 (

角錐の模型 を得る。 この模型の裏面の形は正 3

t )に示す大 に星型断面の角錐を 配置すると 図 (

角形 5つで作られた 5角錐〔図 ( y ))にスッポ リ

20面体の模型になる〔角錐部分も透明板で作っ

m)の凹 と嵌る形状である。 この角錐形状は図 (

d )、図 A9( k) 参照〕。 た模型は付録 4(

み形状そのものである。なお、芯の正 20面体

最後に 、 星型断面の角錐の製作法を述べる。

o )より 、大 20 の 3角形の 1辺を 1とし て図 (

u )に示すよ うに正 3角形の 3辺を、 点 D、G、 図(

面体を作る際に 20面体(正 3角形の辺寸法 1)

E・ ・・ のように黄金比で分割 し、頂点と分割され

に貼 り付ける正 3角形の 1辺の長さはの +2

た点、分割された点同士をすべて結ぶと、 3角

の戸6 .85になり、極めて大きな正 3角形であ

形R 、⑭と◎などの形が定まる。 これらの 3角

ることが分かる。

7 4

第 3章

螺旋構造と折り 畳みの基礎事項 円筒や円錐などは螺旋状の折り線を用いると 良好に折り畳まれる。また、力学的な観点から もこのような螺旋を用いる利点が明らかにされ ている (20A)。このことから、螺旋の特性を知る ことは折り畳みのできる折紙模型を設計する際 には必要不可欠なものと考えられる。螺旋の語 源は貝殻を意味する螺で、わが国では渦巻き状 のものを広く螺旋と呼ぶ。英語では平面状(上) の螺旋をスパイラル、 3次元の立体状のものを ヘリックスと言い分ける 。ここでは、最初に平 面状の螺旋の代表的なアルキメデスの螺旋と等 角螺旋 (26、 27)について、次に、折り畳み模型を 作ることを念頭に円筒状の螺旋や円錐状の 3次 元の螺旋の概要について述べる。

第 3章

3 . 1 螺旋

螺旋構造と折り畳みの基礎事項

( a ) アルキメデスの螺旋とその描き方

l、2、3 ・ ・ ・ となるアルキメデスの螺旋を示す 。

アルキメデスの螺旋は 図 3 . 1( a ) に示すよ

折紙模型を製作する際に用いる展開図は、こ

うに、等間隔の幅の渦巻きのものを 言 う。図

の固のように少し角張った略曲線を用いたも

3 . 1( b )( c ) のように太さ 一定のロープを巻

のになる 。

いてできる螺旋や、渦巻き形状の蚊取り線香

図3 . 1( e )のように多数の螺旋を同時に描

のようなものを考えると分かりやすい。螺旋

くこともできる 。図 3 . 1( f )は円形膜の中心

上の点の半径は回転角に比例して大きくなる 。

部に(正 6角形の)ハブを設け、その外側部分

すなわち、 X 軸から反時計回りで回転角 0

をハブに巻き取る折紙モデルの折り線図を示

=aX 8

す。 ここでは、正 6角形の頂点から 6本のア

をとり、回転角 8 の点の半径「を「

として定める (a;定数) 。定数 aは等間隔の

ルキメデスの螺旋状の折り線③、(略)半径方

渦巻きの幅になり、 aが大きいほどゆったり

向の山、谷折り線①②を設け 、 これらを組み

. 1( d )に Oが45° 、 とした巻き方になる 。図 3

合わせて折り線図とするもので、詳細は次章

90° 、1 35° 、180°と 45° 増えるごとに径「が

で記述する 。

( e )



X

( d )

( c)

( b )

( a )

( f )

図3 . 1 ( a )アルキメデスの螺旋の定義、 ( b )( c )アルキメデスの螺旋の例、 Dープの巻き取りと蚊取り線 香の螺旋、 ( d )反時計回りに 45° 回転するごとに半径が 1増えるアルキメデスの螺旋 ( 1周で 8増 加)、 ( e ) 複数の螺旋、 ( f )複数の螺旋状折り線を組み合わせて巻き取る折り畳み模型製作への応用例

76

( d)

3 .1 螺旋

( c)

(b)

( e )

図 3. 2( a )円を 12分割、半径 p、 p2 、p3 ,…の点を結ぶ (p=0.9、半径 1 )、 乙 OAB=乙OBC=乙o c o : 螺旋が半径と等角度、 ( b )サザエの貝殻の蓋に見る等角螺旋、 ( c )双方向の螺旋の組み合わせ、 ( d )ハート e )複数の等角螺旋の組 貝に見る螺旋模様、 (

( b ) 等角螺旋とその描き方

OAB=乙 OBC=乙 OCDとなる。これは

市販の円形(丸形)のグラフ用紙を用いて、

螺旋が半径となす角が等角度になることを

等角螺旋を用いた折紙モデルを作成するのに

示し、これが等角螺旋と名付けられる由縁で

必要な、この螺旋の描き方の例を示す。最初、

ある。円を 3 0 ° で分割したため螺旋にはカド

図3 . 2( a )に示すように、中心角 3 6 0 °を1 2

が現れるが、分割の角度を小さくすればする

分割して 3 0 ° ごとに放射線を引く(中心; 0)。

ほど曲線(等角螺旋)に近付く。点 A、B、C、

次に、円形グラフの外周の半径を 1とし、外

D…を各々 、直線で連ねた線は近似的な折れ

周上に点 A を定め、 3 0 ° ずつ回転した半径上

線状の等角螺旋であるが、各点は等角螺旋上

に半径を p、p2 、p3 ,. . .( p B

A4 : _ ミー

~

A(B)

図3 . 4( a ) 3次元の螺旋、 ( b )円形域に等角螺旋の描画、 ( c )図 ( b )を6分割、 ( d )図( c )を頂角 6 0 ° の円 弧状にまとめて描画、 ( e )図( d )を用いて作られる円錐殻、 ( f )図( e )の円錐殻を螺旋に沿って切断したとき の展開図と模型、 ( g )巻貝に見る 3次元の等角螺旋

( d ) 円 錐 状 の 3次 元 の 等 角 螺 旋 . 4( a )に円錐形状のコイルバネ形の螺 図3

3 . 4( e )のような円錐形状の折紙模型になる。 円錐殻上に描かれた螺旋模型を真上から見る

旋を示す。このような螺旋を平面の等角螺旋

と、 これも等角螺旋になっている。分割数 n

を甚に設計する。 図 3 . 4( b )のように 、円形

を変えることにより任意の頂角の円錐形模

° の放射線で3 6等分し 、 グラフを中心角 10

型を作ることができる。

94として 、点 A から等角螺 縮小比率 pを 0.

図3 . 4( e )に示す折紙模型を螺旋の最下点

0 ° で 6個 旋を描く。次に、この図を中心角 6

A から螺旋に沿ってハサミで切ると 図 3 . 4

(n=6 )に等分割し切断すると、 図 3 . 4( c )に

( f )のようになり、これはこの円錐の別の展

0 °の 示すように螺旋の一部が描かれた頂角 6

開医である。図中の白丸点を一致させて切断

扇形パーツ 6枚が作られる。これら 6枚を順

線を糊付けすると、元の円錐形状にもちろん

. 4( d )のような図形を得る。 に重ねると 図 3

戻る。このような螺旋形状を呈するものの l

ここで 、点 D、F、H、Jは各々点 C、E、G、

つが 図 3 . 4( g )に示す巻貝であり、その形状

Iと同じ半径上にある。これは展開図の頂角

は図 3 . 4( d )の緑色で表した歪んだ矩形を相

が6 0 ° の円錐上に 3次元の等角螺旋を描いた

似的に小さくしながらつなぎ合わせた形で作

ものに対応し、図の左右端を接合すると 図

られている(本章末コラム 参照)。

80

最強の構造と最弱の構造 四方の端部が自由に動く平面紙を折ることは簡単である。しかし前節で述べたように丸めて 筒状にすると、自田に動ける紙の端部は上下の円形部分だけに限定されるため、軸方向に折り 畳むことは想定以上に厄介な課題である。 ここでは円筒を多角形断面の筒に置き換え、このよ うな多角形筒の特性を調べ、折り畳みの可能な筒をデザインする手がかりとする。

図3 . 5( a )は図 2.23で述べた正 5角反柱で

各々 2、 3列にすると、幾何学では公知の正

ある。これを積み上げて作られる筒状体とそ

4面体をその稜線で 5個連ねた模型( 図 3 . 5

の展開図を 図 3 . 5( b )( c )に示す 。この展開図

( f )Jや正 8面体を 5個 積 み 上 げ た 筒 状 模 型

は右上がりと左上がりの螺旋が 5本ずつ、交

. 5( h )Jが作られる 。図 3 . 5( i )は正 3角 [ 図3

点を結んだ水平の谷折りが引かれた対称形の

形を頂角 120°の 2等辺 3角形にしたもので、

螺旋模様になっている。 図 3 . 5( c )の太線で

塑性座屈の模型( 第 4章 ) や 2枚貼り模型の製

切断し 、左側部分を右端に貼り付けると 図

作 ( 第 5章)に用いる対称塑の折り畳み模型の

3.5( d )の斜め鉛直方向 5列の図に書き換え

代表例である 。図 3 .5( j )は弾性座屈の研究に

. 5( e )( g )のように られる。 この列数を 図 3

用いられた頂角 9 0 ° の有名なヨシムラパター

( a )

( b )

( c )

( h ) ― ー

, /

w , 1 f )(三 ( )」 ( f )

図 3.5 ( a )(b) 正 5 角反柱と積み上げた模型、 (c) 展開図を斜めに切断、 (d)~(h) 正多角反柱の連結体の 展開図と模型、 ( i )( j )頂角 120° 、90° の 2等辺 3角形に変換、ヨシムラパターン、 ( k )コーヒー缶に見ら れるパターン 8 1

3 . 2 螺旋模様の折り線で作られる円筒と円錐殻[最強の構造と最弱の構造

3 . 2 螺旋模様の折り線で作られる円筒と円錐殻:

第 3章

( b )

( a )

( c )

螺旋構造と折り畳みの基礎事項



( d )

口除去~

谷折り線

( e )

( f )

( g )

( h )

( j )

( 二

旋型 反転螺旋型

図 3. 6( a )正 6角反柱を作る展開図、 ( b )( c )正 3角形を 2つ組み合わせて平行 4辺形にした基本要素の 採用、対角線;谷折り、 (d)正 6角反柱、黒丸点を押すと ( e )のように潰れ、 ( f )のようにつまむと復元、 ( g )( h) 正 6角反柱を同方向と逆方向に積み上げ、 ( i )( j )順螺旋型と反転螺旋型と名付けた模型の展開図

ンの展開図で、コーヒー缶[ 図 3 . 5( k )l など で実用に供されている、幾何学 では古くから 知られた模型である 。

②凸の多面体の一部を凹にすること などが必要不可欠である 。 以下、これらのことを 図 3 . 6( a )に示す正

上述のように 3角形の形状と水平方向の個

6角反柱の展開医を用いて試みる 。展開図中

数を選ぶことで種々の模型がデザインできる

の正 3角形 2つを組みにして平行 4辺形を作

が、いずれの模型も構造的に最も安定な形状

り、対角線を除去しこれらを基本の要素形状

の 3角形を用いて作られた凸の多面体を基本

とする[ 図 3 . 6( b )( c )J 。 また、平行 4辺形の

とする。そのため、このような多面体は極め

長い対角線を図に示すように谷折り線にして

て安定で最強の構造の部類に属すと考えられ

凸の面を凹面に換える。このような衣替えを

る。このように安定な構造を折り畳みができ

行った模型を 図 3 . 6( d )に示す。図の中央の

るものに変えるためには

黒丸点を指で押すと 図 3 . 6( e )のように容易

① 3角形要素に替えて変形の可能な 4角 形の要素形状を用いること 82

に潰れ 、図 3 . 6( f )の矢印方向につまむと元 の正 6角反柱に 戻 る。すなわち、 天井や底が

図3 . 7( a )( b )正 6角反柱を積み上げた模型の角錐形への変換の図による説明、 ( c )( d )正多角反柱状 の角錐形状模型

あるにもかかわらず、変形が容易で’’折紙的”

心に近づくほど円弧の半径を等比級数的に小

. 6( g )のよう には変形は可逆的である。 図 3

さくしている。それゆえ、左、右上がりの曲

に同方向に積み上げた模型はもちろん 、図

線は等角螺旋である。上向きの 3角形と下向

3 . 6( h )のように逆方向に積み上げた場 合も

きの 3角形の形状は少し異なるが、各々それ

容易に折り畳まれる。 図 3 .6( g )( h )の模型を

ら自身で相似である。 2個合わせて作られる

.6( i )( j )のようにな 展開図で表すと各々 図 3

ゆがんだ相似形の菱形(図中、着色部)でこの

る。前者を順螺旋型、後者を反転螺旋型と呼

展開図は平面充填されている。すなわち、 図

び、後者も力学的には螺旋構造と考えて取り

3.7( b )に示すように、展開図の右上がりの

扱うことができる。前者は捩れて折り畳まれ、

線①を 1本の曲線とみると、 3角形の頂点で

後者はその展開図から推測できるように、バ

半径方向と常に等角である。 1つ飛びの点を

ネが縮むように鉛直方向に折り畳まれる。各

つないだ概略曲線②も等角螺旋である。

段ごとに独立に折り畳まれるため、折り畳み

図3 . 7( a )の円弧を谷折り線、左、右上がり

時に上部が回転するか否かの相違だけで、両

の等角螺旋状の曲線を山折り線にすると、 図

者の折り畳みの機能はまったく同じである。

3 . 7( c )に示す角錐形の多角反柱を積み上げた

これらの模型が次章で述べる折り畳み模型の

模型になる。展開図の頂角を大きく ( 1 2 0 ° )と

甚本形となる。

ると、 図 3 . 7( d )のような模型を得る。また、

正 6角反柱を積み上げた模型の展開図[ 図

図3 . 7( b )の③のように 4角形を採用すると、

3.6( a )l を角錐状の模型の展開図にしたもの

図3 .6( i )( j )と同じように折り畳み模型の設

が図 3 . 7( a )である。 図 3 .6( a )の正 3角形の

計ができる。実際、円錐殻の折り畳み模型は

底辺が作る水平線をこの図では円弧にし、中

このような展開図で設計される( 図 4 . 5参照)。 83

3 . 2 螺 旋 模 様 の 折 り 線 で作 られ る円筒 と円錐殻 [最 強の構造と 最 弱 の構造

( c )

第 3章

3 . 3 折紙の基本事項

螺旋構造と折り畳みの基礎事項

( a ) 折 り 線 、 折 り目 (20A)

られよう。折り線が合流する点を節点と名付

l枚の紙は、 図 3 . 8( a )に示すように直線の

ける。 4本の折り線で折るとき、節点で折れ

折り線①②で 2つ折りにはできるが、紙の端

るか否かは山折り線と谷折り線の組み合わせ

3 .8( b )に示す折り

による。 4本の折り線のすべてが山折り(ある

から端まで貫通しない 図

線①②、あるいは屈曲した折り線③では折る

いは谷折り)線の場合には折ることができず 、

ことができない。また、折り線の数が 3本で

山折り線 3本、谷折り線 1本の場合に限り折

は折れないが [ 図

3. 8( c )J 、 4本 で 始 め て 折

ることができる(山 、谷折り線数が逆も可)。

れ[ 図3 .8( d )l 、平面から 3次元へ変形でき

以下で 、折紙の分野ではよく知られた 、折

る。これらのことは経験から自然に受け入れ

( a )

( b )

り畳むための基本的な条件を簡単に述べる。

( d )

( c )

図 3. 8( a )折り線が紙を貫通して折り目が入る例 、( b) 折り線に折り目が入らない例、 ( c ) 折り線 3本の d )折り線 4本で折り目付け可能 ため、折り目付け不可能、 (

( a)

( d )

( b )

‘ ` ` `

‘ -

--

` ` `‘'-'



図3 .9 ( a )山折り線数 3、谷折り線数 1の基本形と角度の定義、 ( b ) 折り畳み後の形状より O ' .- / 3= 5 ーア、 ( c )基本形の貼り合わせ(左右個別に折り畳み可)、 ( d )節点の合体で作られる 1節点 6折り線図

84

3.3

②/

( a)

( d)

l

l

折紙の基本事項

③ l

ll

に ( e)



@ ; 山/谷折り線入れ換え 図3 .10 ( a )(b) 折り線③ と ④の山 / 谷を交換、 2 種類の折り畳み可能(折り畳みの表裏則)、 (c)~ ( e ) 紙

を折り重ねて短冊にした後、折り重ねた状態で平行に折り畳み

1節点 6折 り線の場合も 6個の中心角を 1

( b ) 節点で折り畳むための条件 4本の折り線を折り畳むと、折り線で表と 裏が交互に現れる [ 図3 . 9( b )参照 ] 。紙 には

つ飛びに合算して 1 80°になるとき折 り畳 む ことができる 。

表と裏しかな いこ とから 、平坦に折り畳むた めには節点で合流する折り線の数は偶数でな

( c ) 折り畳み法の拡張

. 8( a )の直 ければならないことが分かる [ 図3

図1 . 4で簡単に述べた 、著者がよく使う方

。角度を 図 3 . 9( a )のよ 線②は 2本と 考 える ]

. 9( a )の 法を別の例 を用いて再記する 。図 3

うに定義 しこれを折り畳むと 図 3 . 9( b )のよ

基本の折り畳み形の谷折り線③と山折り線④

うになり 、a-/ 3=c 5-yが成り立つこ とが

の山/谷を交換すると別の形で折り畳まれる

分かる 。 a+/3十 y+c5=360 °であるから

[ 図 3. 10( a )( b ) )。これを著者は折 り畳みの

(a+y)=( { 3+o)=1 80°

( 3. 1)

表裏則と名付け、新しい折り畳み模型を考え る際に頻繁に用いている。この例を以下に示

.10( c )( d )のようにコピー用紙を 4 す。図 3

1つ飛びに足すと 1 80゜(補角条件) 、すな

つ折りに し 、 これを折 り重 ねて一体にして平

わち、裏の部分と表の部分を個別に合算した

行 の 折 り 線 4本で折る(重ね折り)と、

. 9( a )の展開 角度が等 しいことを 示す。 図 3

3.10( e )のように なる(表の折り 畳みとする )。

図が 1節点 4折り線法の基本折り線図となる。

これを平面に 戻 して 、一部の折り線を山から

l節点 4折り線の基本図を 図 3.9( c)のよう

谷折りに換えると、山 /谷折りの変換を行う

に左右から貼り合わせると 、左右の半平面が

必要が生じ 、結果 、(ほぼ)自動的に裏の折り

個別に折れる。こ れら 2つの節点を合体させ

畳みにあたる 図 3 .10( f )が得られる。これは

ると 図 3 . 9( d ) の 1節点 6折り線になる 。

最も簡単な基本の平面折り(ミウラ折リ)であ



を得る。 これは 図 3 . 9( a )で 4つの中心角を

85

第 3章

( f )

螺旋構造と折り畳みの基礎事項

K H f 1

( h ) 30 0



( i )

( g )

:三戸:

( j )

( k )

( o)

( l )

パ ( n )

三~~三

-f-~—

( m)

(pl

図3 . 1 0(続き) ( t )( g )元の平面に戻し折り直し(表裏則)、 ( h )( i )折り重ねて短冊に し、方向を交互に折っ j )( k )折り直したときの展開固と模型、 ( l )図( t )の展開図の平行 4辺形に対角線を追加、 て輪っかを作成、 ( ( m) 追加して得た 1節点 6折り線図を 1節点 4折り線図に分離、 ( n )分離後の折 り線図 、 (o)(p)展開図 ( l ) ( n)に対応する折り畳みの様子

る [図 3 .10( g )J。 図3 .10( h )のように 4つ折りした短冊を、

0 ° になるよう反対方向に 6回折る 上下辺と 3

で折ることができる。これは 1節点 4折り線 法によっても、湾曲した模型を作ることがで きることを示す。

と 、 図3 .10( i )のように 6角形の輪っか状で

.10 折り畳まれる 。開 いて折り 直すと 、図 3

(d) 等角螺旋の組み合わせで描かれた展

( j )( k)のような筒状模型を作る展開囮になる

開図の節点での折り畳み条件 (4)

(表裏則)。等辺の平行 4辺形を短冊上に描い

図3 . 7( a )は時計 回り と反時計回り の対称

.10( f )に図 3 .10( 1 )のように谷折りの た図 3

形の等角螺旋と円弧で作られている対称型の

対角線を追加すると 、 1節点 6折り線からな

. 7( b )の反時計 螺旋模様である。 一方、図 3

.10( 0 )に示すよ る展開図を得る。これは 図 3

回りの螺旋①、螺旋②と円弧を用いると、 図

うに湾曲した形で折られる。この 1節点 6折

3 . 1 1( a )のように非対称の螺旋になる 。こ れ

り線図を、 図 3 .10(m)に示すように分離し

.7( b )の③のよう に歪んだ平行 4辺 形 は図 3

て l節点 4折り線の展開図にす ると 図 3 .10

が埜本要素になり、展開能に富んだ折り畳み

( n )になり 、図 3 .10( p )のよう にほぼ同じ形

のできる円錐の展開図の基本形を得る。ここ

86

3 . 3 折紙の基本事項

口 □

図3 . 1 1 ( a )非対称な螺旋模様、折り畳みのできる円錐の基本形、 ( b )( c )白丸点で折り畳み条件が自 動的に成り立つ

( b )

□口

図3 . 1 2 ( a )( b )矩形の紙箱の隅を作る際の折り線の配置 ( 1節点 5折り線)と模型、 ( c )( d )立体の頂点 を両側から谷折り線で押し込んで作る展開図と模型 ( 1節点 7折り線)

で注目すべきことは、等角螺旋で作図すると

件成立で検討不要

き甚本の図形すべてが何らかの形で相似形に

である 。 ここに等角螺旋を折り畳みに用いる

a )の一 なることである(自己相似)。 図 3.11(

大きな利便性を見る。

b )の中央の白丸点、 部を取り出した 図 3.11( a )か ら 取 り 出 し た 図 3.11 あるいは 図 3.7( ( c )の白丸点には、いずれも 6つの辺が集ま

( e ) 頂点の構成 折り 畳みのできる折紙模型を作る場合には 、

り、各点周りに角度は 6分割されている。図

すべての節点で、集まる折り線を偶数としな

形を作る 3角形は 2つのグループからなり、

ければならない。奇数の場合は折り畳むこと

それらはグループ内で互いに相似であるから、

はできないが 、立体の頂点などを 作る場合に

6分割された角度を 1つ飛びに足す (a+/ 3

用いられる。代表的な例は 図 3.12(a)(b)に

+ァ)と 1 8 0 ° になる。すなわち、自己相似性

示す矩形の紙箱の隅を作る際の 5折り線の場

をもたらす等角螺旋を 3本組み合わせた折り

合である。黄色部分の谷折り線でこの部分を

線群 ( 1節点 6折り線)を用いると、節点での

内側に押し込んで外観を整える際に用いられ

折り畳み条件が自動的に成り立つ 。すなわち 、

る 。 図 3.12( c)(d)は 7折り線で両側から押

等角螺旋→ 自己相似→節点での折り畳み条

し込む折り線図と折紙模型の例である 。 87



【コラム】

自己相似とノーモン

章 螺旋構造と折り畳みの基礎事項

( f )

( d )

> ( j )

( l )



図( a )に示すように、長方形 A に黄緑で示し

〔 図( i )〕の進化もこのモデルにより幾何学的な

た L字形 Bを外付けし、接合後の長方形 (A+B)

障害がなかったことが推察・ 理解されるだろう 。

が元の Aと相似形になるとき、 L形部分をノ ー

Nauti l u s )は、数十気圧の水 結果、オウムガイ (

モン (gnomon)と呼ぶ。この外付けを繰り返す

圧に耐える力学的に優れた湾曲壁からなる構造

と自己相似の形で大きくなる。また、元の長方

を持ち、同時期に繁茂したアンモナイトが絶滅

形 A もこのような過程で大きくな ったと考え

した白亜紀末の隕石衝突時にも、深海と海面を

る 。 図( b )( c )は 直 角 3角形と歪んだ 4角形の

行き来して生き延びたとされる。オウムガイの

場合で、これらは各々図 1 . 2C c )、図 3 . 4( f )に

多数の隔壁で仕切られた骨殻は、高圧力に耐え

基づく 。こ のような過程で硬化しながら成長す

る見事な構造になっている。湾曲隔壁の中央に

るものに貝殻や動物の角などがあり、 図 ( b )( c )

細い穴があり、低圧の窒素を主たる成分とする

から分かるように、これらは等角螺旋と直接関

気体の内圧を用いて水圧と対抗す るとともに内

連し、その模様は等比級数的に大き くなる。 図

圧を変化させ、個体の比重を変えて浮揚、沈降

( d )のように、ノーモンを球面の一部からなる

する。正に米潜水艦ノーチラス号があやかる超

椀状の曲面〔図 ( e )〕からなるとすると、 図 ( f )の

軽量高性能のマシーンである。このように力を

ように滑ることによって直線型の自己相似形が

曲面方向に逃がす構造的な工夫は、われわれの

螺旋型のそれに容易に変化できる 〔 図( g )〕。すな

生活の中でも見られる 。例えば、発泡 して内圧

. 3で示した無理を伴う裏返す過程が わち、 図 1

j )〕の底も類似の形で が上がるビールの缶 〔 図(

解決される 。直角貝 C の化石、 図 ( h )〕から進化し

あり、また図 ( k )( l )に示す航空機の後部に設け

たとされ、生きた化石 とも 言われるオウムガイ

られた圧力隔壁も同じような形状になっている。

88

第 4章

折り畳みのできる模型 と形が可変な立体模型 円筒、 円錐や円形膜の折り畳みモデルの開発 は簡素な収納と確実な展開が要求される宇宙構 造 (31)、例えばインフレータブル(風船型)構造や 巨大なソーラーセイル(宇宙ヨット)の設計、折 り畳み可能なプラスチックボトル、各種容器な どの設計にも応用できる 。ここでは、力学的な 拘束が弱く、容易な伸縮をもたらす螺旋状の折 線を用いて折り畳みのできる模型を設計する方 法を記述する (20A、21)0

第 4章

4 . 1 円筒、円錐の折り畳みモデル (1、2、20A)

折り畳みの出来る模型と形が可変な立体模型

平面の展開図を丸めて作られる円筒や円錐等の折 り畳み模型をデザインするには、①折り線 が合流する節点で平坦に折り畳まれることに加え、 ②作られる模型全体がきっちりと平坦に折 り畳まれること、 ③その模型の伸び縮みが可能である(展開能を持つ)か否かなどの検討をしな ければならない。第 1章で述べたように、著者は②の構造全体が折り畳まれる条件を円周方向 に閉じる条件 (1)と名付け、折り畳み構造の開発 ・創成を解析も含めて検肘してきた。 本章では、折り畳みの全体像を大まかに把握するため、最初、軸圧縮と捩 り座屈の実験結果 を取り上げる。折り畳みのできる円筒などをデザインしようとするとき、多くの技術者が最初 に思いつくのは座屈の知見の収集・応用ではないだろうか?

座屈とは工業材料製の円筒など

が軸方向に圧縮されたとき瞬時にグシャと潰れたり、上端あるいは下端から折り畳まれるよう に潰れることをいう。瞬時にグシャと潰れるまでを弾 性座屈、ゆっく り押し潰される過程を塑 性座屈と言い、ここでは後者の場合を考える 。

( a )塑性圧縮座屈試験

(208)

折り目部分で局所的に巧妙に大きく伸びるこ

塑性座屈試験で薄い塩ビ管が正 3角形状で

とで折り 畳まれており 、伸 びることができな

折り畳まれた模様と下面の様子を模式化し 図

い紙等の材料では、いくらうまく 圧縮して も

4 . 1( a )( b )に示す。塩ビ材は形状記憶材料で

このような折り 畳みは できない 。薄い円 筒

. 1( a )の あるため 、熱湯に浸すと数秒で図 4

(PET製)の場合には概略正 4角形状で折り

. 1( c )のよ ように折り畳まれた状態から 図 4

畳ま れる[ 図 4 . 1( e )l 。これらの結果を参考

うに折り目の痕跡を明瞭に残して(おおよそ)

. 1 に対応する展開図を作ると、それぞれ図 4

元の円筒形状に 戻る。 折り目部分は大きく伸

( f )( g )のようになり、折り畳みが 3角形状 [N

びたことの証左であるクレージングと呼ばれ

=3、固 4 . 1( a )J のときには 2等辺 3角形の

る白化線で作られている。引き戻した円筒を

底角 aは 30 ° 、4角形状 [N=4、図 4 . 1( e) J

切り開くと 図 4 . 1( d )のようになっている。

の場合は 2 2 . 5 ° である。すなわち a=l80°/

ここには 2等辺 3角形状からなる典型的な対

( 2N)とすることで対称型の折り畳み線図を

称形のパターンが見られ、これが折り畳みの

描くことができる。

展開図の 1つの基本形になることを示唆す る。しかしながら 、上述したように塩ビ管は 90

. 1 塩 ビ製の円錐殻の折り畳みの様子は 図 4 ( h )のようになり、その展開図と折紙模型は

4 ( a )

( f )



0 u直 ( c ) _,.

( b )

/ ぺ : : ンペ…ンベミ・ ・ ジ

( d )

( g ) 文:--—之べこ―ーージペーーーンペ:--:;:.;,-

{Q

乙-::~

( n )

( k )



( h )

れ つ ヽ;

旦 ' . . . '

肇~.



モ フ ー

レ )

( l )



図4 . 1 ( a )( b )圧縮座屈で得た塩ビ管と折り畳み後の下面の様子、 ( c )( d )熱湯に浸して元に戻した様子 とこれを長手方向に切断して平面化した試料、 ( e )PET製の極薄円筒の座屈後の様子 ( 4角形状での折り f )( g )図 ( b )( e )に対応する展開図 (2等辺 3角形の底角 ;30° 、 22.5゜ )、 (h)~( 」)塩ビ製の円錐 畳み)、 ( 殻の折り畳み、対応する展開図と折紙模型、 ( k )薄肉銅板製の円錐台形状殻の座屈、( l )薄肉銅板製の円錐 n )解体、平面化した試料とその一部分の拡大図、 ( o )3角形要素を引き 台殻の座屈後引き伸ばし、 (m)( 伸ばし た台形要素で構成された座屈模様の展開図

. 1( i )( j )の よ う に な る 。 薄 肉 の 銅 製 の 円 図4 . 1( k )の よ う に な 錐模型の座屈の様子は図 4

ことが分かる。 なお 、円筒 の 折 り 畳 み 模 型 と し て 度 々 引 用

る 。 高 温 下 で 引 き 伸 ば した後 [ 図4 . 1( 1 ) )、切

されるヨシムラパターンは、図 4 . 1( f )で 3

. 1(m)(n)で ある。 図 4 . 1 り開いたものが図 4

角形の頂角を 9 0 ° にして弾性座屈の強度評

( n)は図 4 . 1(m)の一 部分の拡大図で、この角

価 に 用 い ら れ た も の で 、折 り畳むことはでき

4 . 1(o)の よ う な 3角 形 要

ず、それゆえ、ここで述べた折り畳み様式と

錐殻の展開図は図

素を引き伸ばした台形要素で構成されて いる

円 錐

折 り

. _ , . ( j )

円 ’同 ’ ’ ’

は直接関連しない。

91

第 4章

G

B D F

I

汽 ; / / / / l , / / / l

折 り 畳 み の 出 来 る模 型 と 形 が 可 変 な 立 体 模 型

( c )

A

C E

H

(d) ~ ( e )

( f )

図 4.2 紙製試料の捩り座屈、 ( a )紙製円筒に空缶を 2つ挿入、中央部に長さ Lの隙間を設定後、上下を國 んで捩り試験、 ( b )Lを変えて得た捩られた試料の緻の様子、 ( c )( d )捩り試験で生じた鐵を引き伸ばした 模様を模式化した図、 ( e )円錐形の試料の捩り試験後の様子、 ( f )模式化した展開図

( b )紙の捩り座屈試験 市販の空き缶(外径 D)がぴったり入るよ

ボール紙のような厚紙を用いて頑丈な円錐台 を 2個作り、これらを用いて円筒と同様に行

う紙で円筒を糊付けして製作し、 図 4 .2( a )

うことができる。試験で得た試料の様子を 図

に示すように、空缶を円筒の上下に挿入した

4.2( e )に示す。これより 、跛 の 形 は 歪 ん だ

Lの隙間を設ける。両手で

4辺形が円弧状に連なった形で模式的に表さ

後、中央部に長さ

上下部分をしっかり掴み、少し引っ張り気味

.2( f ) )。 れる[ 図 4

にして捩ると、隙間部分は捩られて折り畳ま

これらの捩り試験では、得られる鍛の形状

.2( b )に中央部の長さ L を変化さ れる。 図 4

は図 4 .2( c )( d )および ( f )に模式的に示すよ

せたときの捩り座屈の様子を示す。試料を解

うに 、すべ ての 4辺形が同じ大きさになるこ

体すると、 N = 7 -十数個の鍛が生じてい

とはほとんどない 。こ れらの寸法を揃えたり、

ることが分かる。鍛の数 N は Lが大きくな

生じる個数を所望する数にするためには 、円

るど威る領向にある (LくD)。跛を模式化す

形の空き缶に代えて正多角形の筒などを用い

.2( c )( d )のような平行 4辺形ある ると、 図 4

る必要がある。この実験法に手を加えた手法

いは平行 6辺形が並んだ展開図になる。

を付 録 5で述べる。

円錐殻の捩り試験は、缶に代えて、例えば、 92

4

( b )

( c)

斜め切 断

( d)

( el

螺旋型 a = 3 0 ° 、3 /= 3 0 °

( g)

円錐の折り 畳 みモデル

三 ~ 対称型

円筒

( a )

( h)

( f )

三 a =30° 、{ 3 =3 0 °

J@ O

図 4. 3 ( a )圧縮座屈で得られた展開図の斜め切断、 ( b )( c )切断で得られる展開図 (a=f 3= 30°)、(d) ( e )捩り座屈の展開図 ( f )a =30° 、f 3=20゜ の展開図、 ( g )( h )図 ( a )の折り畳み、伸ばすと左右端離 反 、 ( i )図( e )の折り畳み

( c ) 2種の座屈の展開図の関連と折り畳

.3 ものを対称型、捩り座屈で得られた 図 4

み可能な円筒の展開固の作成 (1)

( e )に基づくものを非対称型の螺旋模型と呼

圧縮座屈で得られた基本の展開図[ 図 4 . 1

ぶ。対称型の展開図を折り畳むと 図 4 .3( g )

( f )l を図 4 .3( a )のように右下がりの太線で

のように 6角形状に折り畳まれるが、引き伸

斜め切断すると、 図 4 .3( b )あるいは 図 4.3

ばすと 図 4 .3( h )のように左右端が離れ、元

( c )、すなわち 図 4 .3( d )あるいは ( e )が得ら

の平面に戻る。これでは折り畳んだ 図 4 .3

れる。これらの図は捩り座屈で得られた 図

( g )の状態で左右端を糊付けすると伸びない

4. 2( c )を積み重ねたものと同じである。以

ため、折り畳み構造として不可である。一方、

後、圧縮座屈で得られた 図 4 .3( a )に基づく

図 4.3( e )の螺旋型の模型は 図 4. 3( i )のよう 93

F

第 4章

( j )

展開図

G

折り畳みの出来る模型と形が可変な立体模型

右端

( k )

B

( 。 ロ

E

図4 . 3( 続 き ) ( j )引き伸ばし時、左右端を糊付け可能、 ( k )図 4 . 2( c )の平行 4辺形 3個分の折り畳みの状 l )e x =30゜ 、f 3=20゜ の模型〔図 4 . 3( f )〕の折り畳み時の上面の形状 況 、 (

に折り畳まれ 、引伸ばした状態[ 図 4.3( j )]

配角と呼ぶ。 この方法で作られる折り畳み型

でも左右端を糊付けできる 。 これより、後者

の円筒模型は伸縮する際、紙の微小な伸縮に

の非対称の螺旋構造は伸縮可能な展開能に富

よるひずみを伴うことが示されている (208)

んだ構造であることが分かる 。

模型の伸縮のしやすさは角度

0

Bで変わる 。

図4 .2( c )の展開図の平行 4辺形 6個のうち

展開能は 、生じるひずみを力学的に評価しな

3個分を折ると 、図 4.3( k )のようになる 。図

ければならない 。折り線をトラス部材で置き

中 、 図4 .2( c )の対角線 AB、CD、EFは角度

換えた解析では、正 6角形状で折り畳む場合

2aずつ回転していることが分かる 。 6個分

には

6 0 °、 すべて折ったときの回転角 2aX6が 3

展開能の点からベストであった。

3 fが 30°より少し大きい 35°の選択が、

すなわち 、 a =30°のとき、展開図は 図 4 .3

( i )のように環状に閉じるように折られ、[ 図 4.2( c )の] 左辺 AGと右辺 HIが完全に 一致し

( d ) 螺旋型の折り畳み円筒 (1、5) 前節で述べた方法で作った模型を示す 。捩

て平坦に折り畳まれる 。 a を 30°にすると、

り型の 6角形状で折り畳む概略円筒の、基本

3 /値が 30°以外の角度 、例えば図 4. 3( f )のよ うに 3 /=20°の場合であっても閉じて折り畳

形の展開図と模型を 図 4. 4( a )に示す。図中

まれる[ 図 4. 3( I )J 。このような螺旋型の折り

立に折り畳まれるから、段ごとに逆方向に配

線の場合には、 N を水平方向の要素数として

.4( b )Jでも同様の挙動に 置した展開図[ 図 4

a = 360°/(2N)

( 4 . 1 )

の平行 4辺形 6個を並べた展開図は各段で独

なる 。 この模型も螺旋の特性を 100%保持し、 これを反転螺旋型の折り畳み、前者を順螺旋

を選ぶと、閉じる条件が満たされ平坦に折り

型の折り畳みと呼ぶ。順螺旋の模型の上部は

( / 3とNは任意に選択可) 。以降、こ

一方向に回転しながら折り畳まれるが、反転

の閉じる条件を満たす角度 a を折り畳みの支

型の場合には段数を偶数にすると上端は回転

畳まれる

94

4 . 1 円筒、円錐の折り畳みモデル

( a )

折り 畳み時 ( c )

T

臼4

( d )

<又C> → <二~二 > 節点の分離



折霜み時

^ v

( f )

— ·—- ·--~

伸びない

折り畳み時 上下面

図 4.4 ( a )伸縮可能な(概略)円箇の基本形の展開図と模型 (a={3=30゜ 、 )( b )反転螺旋型の展開図と模型 (a=f 3=30°)、( c )6折り線の節点を 4折り線の節点 2つに分離、 ( d )節点分離によって得た算盤玉形の 3(a)ベース〕 、( e )対称型展開図 ( d )の斜め切断(水平方向と 30゜ )による螺旋型展開 要素による展開図〔図 4. f )矩形状に折り畳む対称型展開図と模型 図とその模型、 (

しない優れた特性を持つ 。 図4 . 1( f )の 対 称 型 の 展 開 図 の 6折 り 線 か

われる-とは t ょい 。展開機能が欠如する(.__の 対 称 型 の 展 開 図 を 、 30 °で 斜 め 切 断 して谷折

らなる節点を 図 4 .4( c )の よ う に 分 離 す る と 、

り線を螺旋状に したものとその模型を 図 4.4

平行 4辺 形 が 算 盤 玉 形 状 に な っ た 図 4 .4( d )

( e )に示す 。 図 4 .4( f )は 矩 形 状 の 筒 を 折 り 畳

を得る 。図 3 .10で 述 べ た よ う に 、 このよう

む展開図と模型で 、図 3 .10( j )の重 ね折りの

な折り線の分離で閉じる条件などの特性が失

手法でこの展開図は作られている。展開能を 95

第 4章

( h)

折り畳みの出来る模型と形が可変な立体模型

)(

折 り畳み時側面

~ 折り畳み時上面

図 4.4(続き ) ( g )( h )矩形状に折り畳む螺旋型展開図と模型

持った折り畳み構造にするため、斜め切断し

( e ) 折り畳みのできる円錐

( 2、6)

て作られた展開図とねじり飴型の模型の側面

折 り畳みがで きる円錐殻の展開 図の作図法

と上面の様子 を図 4 . 4( g )( h )に示す。上述の

を図 4 .5( a)を用いて 述べ る [ 図4 .2( f )を参

例か ら分 かるように 、重ね折 り法 で得 られ た

照] 。円グラフ(中心 0)を用意 し 、 円の外周

対称型の展開図と斜め切断法 を組み合わせる

部に角度 0ごと に点 A、B、C … をN個定め

ことで、展開能に 富 む非対称型の螺旋構造の

る。点 A か ら線分 ABと角

展開図を自由にデザインで きる 。本章の後半

を引 く。点 Bから線分 BCと角

でこの斜め切断法を 多用する 。

なる 線分 BEを引く(点 Eはこれ ら 2つの線分

Bをなす線分 AE ( a+/3)と

【コラム】 折り畳みのできるペットボトルの試作・開発 写真で示したペ ッ トボ トルは、 10年以上も前に大手の 飲料メーカー とと もに試作したものである 。円筒の折 り畳 み手法を用 い収縮も容易 で大きな問題も なく、折り畳みの 技術的観点からは、ほぽ最高クラスの出来栄えであ った と 記憶する。2011年の震災を境にして、なぜかこ の製作プ ロジェ ク トは急速に頓挫した。ただ、変形が容易すぎるた め PL法や輸送時の問題点などが課題となったと記憶 して いる。何はともあれ、このような容器の実現は研究を始め たときからの目的の 1つであり、今後の利用の拡大も見込 めると考えるため、わが国の産業界でできるだけ早く実現 される ことを強く希望している 。 96



f 3を与えると、点 Eの半

rと乙 BOE= 〇*(振り角と名付ける)が

定まる。これらを用い、半径 rの円弧を描い

a= ( 3 6 0 ° ―8)/ (2N) 円筒の場合と同様に、角

( 4. 2 )

f 3は自由に選択

て点 D、E、F. .を定め展開図の 1段を描く。

できる (0=0のとき円筒)。 図 4 . 5( b )( c)

2段目以降は上で得られた「を用い戸、「 3

は l段分が折り畳まれる様子である。 図 4 . 5

の円弧を描き、振り角分だけずらしながら中

( d )はN =6、◎ =6 0 ° 、 a =25° 、/ 3=2 5 °

心に向けて打点する。得られる曲線は等角螺

とした展開図、 図 4 . 5( e )はその模型と折り

旋になる。ここで、折り畳みの支配角 a は展

畳まれた様子である。上の振り角〇*を段ご

開 図 の 頂 角 ◎ (=NB)を考慮して 、次式で

とに逆にして配置を繰り返すと、反転螺旋模

得た角度とする 。

. 5( f )Jになる。模型と折 り畳 型の展開図[ 図 4 み後の様子を 図 4 . 5( g )に示す。

( b )

( c )

ぐり◎ 忍

'"'. , . 折り畳み時 下面

~

{~

折り畳み時 上面

. 5( a ) 外周上に点を N1 固設定、 O ' . =乙 DAE=乙 E B F = ・・・、f 3=乙 EAB=乙 FBC=… 、 O ' . +f 3= 図4 乙 DAB=乙 EBC=…、半径「と〇*を決定、半径「ヽ戸、「 3...の円弧を描画、 ( b )( c )1段分の折り畳 、 ( f )( g )反転螺旋によ る展開図と模型 みの様子、 (d)(e)順螺旋によ る展開図と模型

97

4 . 1 円筒`円錐の折り畳みモデル

の交点)。角 a と

第 4章

4 . 2 3重螺旋を用いて螺旋型折紙の変遷を見る

折り畳みの出来る模型と形が可変な立体模型

螺旋模様の折り畳みのできる折紙模型は造

突き当たり、紙に厚さがあると折り畳むこと

形的な面白さに富むうえ、 2重 螺旋 、 3重螺

ができない 。それゆえ、この折り畳み模型を

旋は DNAやコラーゲンなどの構造を摸擬で

ものづくりに応用することは、ほぼ不可能で

きるなどの 学術的意味をも有している 。 ここ

あると考えられる 。

では捩る形で折り畳む模型創作の変遷をたど る 。 図

4 . 6( a )は正 3角形状に折り畳む古典

異なる形の 3重螺旋の模型を斜め切断法に より作る 。図

4 . 6( d)のように短 冊 を長手方

3等分し、 3 f-ァ =aが 60°になるよ

的な折紙の展開図と模型である 。展開図は長

向に

方形を基にし、それらの対角線を谷折り線に したものである。 図 4 . 6( b )( c )は平行 4辺形

3 fの 山 折 り 、 ァ の 谷 折 り 線 を 3組 設 けると閉じる条件 2( f 3-ァ)X 3=360°が

の要素を用いたもので、このような螺旋型の

満たされ、 図

折り畳み線図を用い N角形に折り畳むときに

この短冊状の折り線図を積み上げたものが図

は折り 畳みの支配角 a として 用いる 。前者を第 すると、第

360° I(2N)を

I世代、後者を第 I世代と

I世代のものは折り畳まれたとき

う角度

4 . 6( e )のように折り畳まれる。

4 . 6( f )である 。 これを斜め切断すると 図 4 . 6 ( g )を得る 。図 4 . 6( h )は展開図を分離したも ので、貼り合わせ後、斜め切 断すると 図 4 . 6

中心部に穴が開くことがない 。 このため、折

( i )の折り畳み模型を得る。これを第 I世代の

り畳み途中に折り畳まれた谷折り線どうしが

変形型と考える。

( a )

側面図

上面図

図 4. 6 (支配角 a =36Q°/( 2 N ) (N=3、N;水平方向の要素数)、 ( a )長方形の要素で作られた展開図 と模型(第 I世代)、折り畳み時、中央に穴なし(伸縮困難)

98

( c )

_ _ . ; .

謬 き

~ n

( d )



( f )

4 . 2 3 重螺旋を用いて螺旋型折紙の変遷を見る

( b )

ぇ : : : : : :

ー , 言

: ;I, -て

二 =

碑・ ---―/

-/,,---

1 0 °

巳 三 二 ( h )

( e )

a=/3-y



( i )

→ ← 図 4.6( 続き) ( b ) ( C )平行 4辺形の要素を用いた展開図(第 I世代)、折り畳み時、中央に穴形成(伸縮開始 d )( e )角度 Bの山折り、ァの谷折り線を設定 ( f 3ーァ =a=60 ゜ )した短冊とその折り畳 時、拘束少)、 ( h )展開図 ( f )を分離、 ( i )3色にし みの様子、 ( f )( g )短冊を積み上げた展開図と斜め切断して得た展開図、 ( て接合後、斜め切断で得た展開図で作られた折り畳み模型

99

第 4章

4 . 3 長方形断面の筒の捩り折りによる 2重螺旋の模型

折り畳みの出来る模型と形が可変な立体模型

ワトソンとクリックが示した DNAの 2重 螺旋を摸擬できる折り畳みモデルの創作は 、

で表される。これより折り畳み条件は次式で 与えられる。

著者が研究を始めたころからの大きな目的の

1つであった。これを実現するためには、 図

4.4( a )で等分配されている平行 4辺形の水 平方向の辺の長さに長短をつけて長方形の 断

/ 3 1 = / 32

( 4 . 4 )

黒丸の点でも同じ関係式を得る。閉じる条 件は次式で与えられる 。

面状で折り畳む必要があった。このように不 等分配した展開図を用いると、節点での折り 畳み条件が必然的に満たされなくなり、折り 畳みが不可能になる。これを克服するため 、

2(a1 + a2 )x2= 3 6 0 ° aげ a2= 90°

( 4 . 5 )

4. 4)( 4 . 5 )を満たす 2つの例を 以下に式 (

平行 4辺形をジグザクに配置する手法を用い 、 示す。 図 4 .7( d )は C TJ = 60° 、a2= 3 0 °、 折り畳み条件を満たす角度を数値計算で算

0 ° とし、これらを l段として積 / 3I= 凡 =3

出し模型を作った (5)。その後、この模型の設

.7( e )を得る。これより 、図 み重ねると 図 4

計が非常に簡単にできる簡便法を見出 した 。

4.7( f )のような模型が作られる。 図 4 .7( g )

以下、この方法とそれによる製作の例 を述べ

は C TI=6 0 °、 a2= 3 0 °、 / 3I= / 32= 20°の

.7( a )に示すように、長さの異なる る 。 図4

例であり、 図 4 .7( h )の展開図になる。この

平行 4辺形を対とし、これを 2対組み合わせ

. 7( i )のような模型が作ら 展開図より 、図 4

たものを展開図の基本図とする。 図 4 .7( b )

れる 。こ れらの折紙模型は大きな抵抗もなく

はこの短冊が折り畳まれる様子を示したもの

収縮 ・伸展する 。上述の 2つの模型の相違は

である。短冊を 2段積み重ねた 図 4. 7( c )で

折り畳まれるときの長方形の長辺と短辺の比

角度を図のように定めると、中央の白丸点

にあり、後者の方がこの比が大きいため 、よ

での折り畳みの条件は 、この点周り 1つ飛び

り 2重螺旋のように見えると考えられる。こ

の角度の和が 180゜(補角条件)になること

の折り畳み模型の作り方を仮に第 I I I世代と呼

より、

ぶことにする。 付録 4でこのような模型の実

a2+/31+(180°-a2-/ 32 )= 180° ( 4. 3 )

100

際の作り方を述べる。

4

ロ → □〗

( b ' .

3 長

方 形 断 面



60°

( d )

^ 同 ^

の 捩

り 折 り @



c







る 2 ( e )



( f )



の 模 型

! 怜

( g )

( h )

、'' 、

+ +

' .

'、‘、`、‘、‘、ヽヽ

@ ¥ ¥ 、 ‘ ‘ ‘ 、 ‘ 、 ‘ 、 ` 、 ‘ 、 、 ‘ 、 、 、 ‘ 、 ‘ 、 ‘ 、 、 、 ‘ 、 ‘ 、 . _ 、 ' ¥ 、 、 、 ' . 、 ‘ 、 ’ 、 、 ‘ 、、 ‘ ‘ ‘ 、 、 、 ‘ 、 ‘ 、 、 9

,'ヽ‘、'、‘、‘、._'、‘、‘、`、‘、‘、

⑧ --ゞゞゞゞゞゞゞゞゞ‘ゞゞ----・->-,ヽヽ

、 、 、、

'''''''' '

、 ‘ 、 、 ‘ ‘ 、 、、`、‘、¥、‘‘、‘‘、‘‘、‘、''、、‘‘、¥ ''、‘、、ヽ、‘、ヽ、‘、‘、ヽ、‘、'、’、‘、 c'. ''''''''','、`、‘、‘、 9

c

R

R

' ' ' ' ' ' ' ' '

⑪ ‘`ゞゞゞゞゞゞゞゞゞ\``````‘‘‘ヽ、>--

( i )

^ ← ~

図4 . 7 ONAの 2重螺旋を摸擬する折り畳みモデル、 ( a )( b )異なる平行 4辺形を組み合わせて作られる ジグザグの展開図の基本形とその折り畳みの様子、 (c) 角度の定義、 (d)~(f) 展開図の基本図形の例(模型

N o . 1 ;a . , =60゜、 a .2=30°、 企 = 凡 =30゜ )、基本図形を積み重ねた展開図と折紙模型、 (g)~(j) 展開図の基本図形の例(模型 No . 2;a .,=60゜、a .2=30゜、/ 3 ,={ 32 =20゜)、展開図と折紙模型の様子

101

第 4章

4 . 4 円錐形状の 2重 、 3重螺旋の模型

折 り 畳 み の 出 来 る 模 型 と 形 が 可変 な 立 体 模 型

円錐形の 2重螺旋や 3重 螺旋も同様に設計 できる。ここでは 図 4 . 6(c)の筒に対応する

3

c )( d )に示す。この展開図は節 模型を 図 4.8( 点での折り 畳み条件と閉 じる条件を 与 え て 数

4 . 7で 示

重螺旋の例として最も製作の容易な模型を 図

値計算で求められたものであり 、図

4.8( a )( b )に示 す。 こ こ で 支 配 角 a (固中

した DNA螺旋を模した折紙模型のように簡

● )は式 ( 4. 2 )に従って求めている。 DNAの

素な形でのモデル化は未だなされていないと

2重螺旋模型に対応する円錐模型の展開図と

考えている。

( c )

( d)

図 4, 8 正 3角形と長方形断面の角錐形状の筒を作る展開図、その折紙模型と折り畳み時の上面、下面の a )( b )3重螺旋、 ( c )( d )DNAの 2重螺旋模型をベースにデザインした捩り模型 様子、 (



畳 り

︳ 一●

折 こ



H i

←→

図4 .9 円錐を対称に貼り合わせて作った折り畳みのできる模型(正 6角形で近似)、 (a)頂角 g o ・ 、順螺旋

102

できる模型 頂角 9 0 °、1 8 0 ° 、240°の展開図で折り畳

4.10に示す。貼り合わせるため、底面の 正

みのできる円錐を作り 、同じ ものを底面で 2

多角 形の角数と寸 法を調整するだけである。

個対称に貼り付けて作 った模型の展 開図(片

造形性に富む作品が容易かつ自由にデザイン

方)と模型を 図 4 .9( a )( b )( c )に示す。図は

でき 、模型作りに手間がかかるが創作の可能

正 6角錐形状で、順螺旋と反転螺旋の角錐の

性 は 無 限 で あ る 。例 え ば、図 4.10( d )の折

展開図とそれを用いて作られる提灯型の折り

り畳みの でき る(概略)楕 円球は 3種類の角 錐

畳み模型で 、単体と 同じように折 り畳 まれ る 。

(水平線で表示) を 接合して半球分を作り 、こ

異なる頂角の円錐/角錐を 2、 3個組み合

れを 2個貼り合わせて作られてい る 。

わせることで作られる立体模型の例を 図

( b )

上述の貼り合わせ の手法を異なる形で行 う

( c )

中 □夏~ ~ 牛 図4 . 9( 続き) ( b) 展開図の頂角 1s o ・ 、反転螺旋、 ( c )展開図の頂角 270 ゜ 、順螺旋

( a )

上面図

↓折り畳み 平坦に

図 4. 10 同じ角錐や頂角の異なる形状の角錐を接合して作られる平坦に折り畳みのできる製品の例〔 ( b ) ( d ); 2、3種類の異なる頂角の円錐を接合〕

103

4 . 5 円 錐/ 角 錐体 等 の 組 み 合 わ せ に よ る 折 り 畳 み の で き る 模 型

4 . 5 円錐/角錐体等の組み合わせによる折り畳みの



4 章

( a )

( b )

< C I □>

( e )

( d )



り 畳

( c )









A

A

の 出

図4 . 1 1 (a)~(e) 折り畳みのできる浮き輪形状の折紙模型 (A: 正 6角形断面の筒)

悶 と 形

が 可 変 な

( a )

( b )



jL ' 体



( e )

( f )

→ 図4 .12 ( a )( b )十文字状に交差する筒の模型(正方形断面箇)とその折り畳み、 (c)-(e)正 3角錐の底面 f )正 4 部で正 4面体を作るよう貼り付けて作られたテトラポッド、折り畳み模型の上面と側面の様子、 ( 面体の 4面上に折り畳み収納される模型

と種々の模型がデザインできる。折り畳みの

うに接合した折り畳み模型で 、 6本の枝部は

で き る 正 6角 形 断 面 の 筒 を 図 4 . 1 1( a )の A

立 方 体 を 作 る よ う に 折り 畳まれる [ 図 4.12

部に 、図 4 . 1 1( b )を折って作られる 図 4 . 1 1

( b ) )。正 3角形断面の角錐を 4個用い、正 3

( c )に示すパーツを頂点の B部に配置して接

角形の底部を 図 4.12( c )のように正 4面体を

合すると、 図 4 . 1 1( d )に 示 す よ う な 浮 き 輪

作 る よ う に 配 罹 し て 接 合 す る と 、 図 4. 12

. 1 1( e )の よ う に 効 状の模型が作られ、 図 4

( d )( e )の よ う な テ ト ラ ポ ッ ド 状 の 折 紙 模 型

率よく 収納される 。

になり、 図 4.12( f )のように正 4面体上に収

図 4.12( a )は 折 り 畳 み の で き る 正 方 形 断 面の筒 6個をそれらの端部が立方体を作るよ 104

納され る。これは正 4面体型の星型多面体の 折り 畳み模型でもある。

折紙の面白い造形性を建築構造やペ ーパ ー

LED光が柔らかな光となった 。折り線部には

クラフト等のデザイン設計に取り入れ ようと

ラボが持つ溶着技術が駆使されて構造強化が

する流れがある 。数理的に造形された無機質

なされ、骨なしで安定 な構造が達成さ れてい

とも思える折紙構造が、デザイナーの手によ

る。技術的な観点か らみても余分なも のが排

り輝きを放つことが期待される。著者が折り

除され、結果 、耐久性が大きく確保され たと

畳み構造として開発 し 、 本章で述べた基本モ

思われる。 折 り畳み機能を備えており、様々

デルが、三宅一生と リア リティ ・ラボ によ り

な観点からエコに配慮が施されている 。 これ

芸術性が付与 され、新たな形に変貌している

はイタ リアを代表する 照明メーカー 、アルテ

( 図4 . 1 3) 。陰醗 I N-E II SSEYMIYA KEと名

ミデから世界に向けて販売が開始されている 。

付けられた照明器具で、リ アリティ ・ラボが

用いられた構造は正 4角筒、3角筒、 6角錐

発想 し、デザインおよび開発を行った。 ここ

殻の折り畳みモデルであり 、それらはミ ノム

では再生 PETの 不 織 布 を 採 用 し た こ と で 、

シ、タツノオトシゴなどと名付けられて いる。

~

~

図 4. 13 造形美と折り 畳みの機能性をあわせ持つ照明器具の創作 (陰賠 I NEl 、I S SEYMI YAKEより転載)

10 5

4 . 6 造 形美 と機 能 に 優 れ た 製 品 製 作 へ の 応 用

4 . 6 造形美と機能に優れた製品製作への応用 (34)

第 4章

4 . 7 円形の平面膜の巻き取り収納モデル

折 り 畳みの 出 来 る模型と 形が 可 変 な 立 体 模 型

アルキメデスの螺旋や等角螺旋状の折り線を用いて円形膜、およびこれを基に作られる円錐 形状膜を巻き取り収納する方法を述べる。この収納法は折り畳みのできる製品を創出すること や深宇宙の探査用に期待される、太陽光で推進する宇宙ヨット(ソーラーセイル)の帆などの宇 宙構造の基本デザインを提案することを目的として考案された 。この折り畳み法は、服飾吊な ど想像だにしなかった分野で応用がなされた。このような折り畳み収納法は数理的に定式化し たため、ほぼ、どのような要求にも応えられる状況にあると考えている 。 アルキメデスの螺旋を用いた収納法 (20A)ではハブの周りに積み重ねて巻き取られるため、用 いる素材は薄い膜の使用に限定される。等角螺旋の場合には、(中心部を除いて)ゆったりと巻 き取られるため特段の制限はないと考える。

( a )アルキメデスの螺旋の修正型を用いた 円形膜の巻き取り収納モデル

るための条件は著者によって定式化されてい

a )に示すように中心に正 N 角形 図 4.14( (図は N=4)のハブを設け、その頂点(コー ナー)から、略放射状の山折り線①と谷折り 線②を、それぞれ 1本を対として 4対設ける。 医のように折り線①と②がなす角を

4.14( b )-( f )のように、ハブの周りに巻き取

Bとす

る(20A)。この条件は上述の角

Bと Y が

3 f+y =( 1+2/N)X 9 0°

( 4 . 6 )

を満たすよう選ぶことである(角 a は自由に 選べる)。角度

3 f、ァと

aなどの組み合わせ

る(谷折り線②とハブの辺がなす角; a)。ハ

を選ぶことで、ハブ面に対して上下対称に、

ブの頂点からハブの辺に対して角度 Y で折

あるいは下方に、裾広がりにあるいは先細り

り線をスタートし、時計回りの方向に螺旋状

に巻き取る模型を自由自在に設計できる。 図

の折り線③を引く。この折り線③を略放射状

4.14( b )は上下対称に巻き取るもの、 図

の折り線①、②と交叉するごとに常に対称に

4.14( c )は非対称に少し下方に巻き取るも

なるように描く(この螺旋状の折り線③は①、

の 、 図 4.14( d )は下方に末広がりでコップ

② と交叉するごとに山、谷折りを 交互に入 れ

状に巻き取ったものである。 図 4.14( e )は

替える)。このとき、折り線③が図 4.14( b )

底に少し凹みを持たせて底部分を強化したも

のようにアルキメデスの螺旋状になるため、

のである。 図 4. 14( f )は外周部を整形した例

アルキメデスの螺旋折りと名付けている。 図

14( g )に示すようにハブを正 である。 図 4.

106

4 ( a )

①\、

7 心 ‘, 9

旦 の 平 面









き 取



醤 ( b )

( d )

//プ~

( c )

モ フ ー

~-



( e )

底の拡大 ( f )

( g )

図4 . 1 4( a )中央に正 4角形のハブ、略放射状の山折り線① と谷折 り線② を 4対設定、角 B、 r 、 aの 3+ァ=( 1+2/N)X 90' 、e x;角度の選択自由、N;ハブの多角形数、本例; 定義(巻き取り条件; f N =4)、時計回りの螺旋状の折線③を設定、( b )上下対称に巻き取り 、( c )非対称に下方に巻き取り、 ( d) 下方末広がりで巻き取り、 ( e )底部分を強化 、 ( f )模型の外周部分を整形した例、 ( g )ハブを正方形から長 方形に変換

107

ー1 ー



ー・



l

t f

`‘ m .

(m)



1 . J'



型 模







•一

, 1 ,

図 開

展 た







O

ェ鰤 悶



方形から長方形に換えても、 図 4.14( a )を

、 ‘

~

ー, '

短平

辺邸

ヮ国



_



、 ` . 子 、 1、 ︶様 h , _、む ︶畳 きり 澤折



図捩

/][ l

. ‘ -

( k )



( j )

ー ﹁ [ [ ﹂ ニ ロ 丁 \ロ 口 / ー

‘•

( i )

" " " " " " " " " " " " " " "

、 .

‘ ‘

‘ ‘

‘ ‘



4る

折り畳みの出来る模型と形が可変な立体模型

[ ︱

第 4章

( h )

ねばならない(本節 ( d )参照] 。

描いたときと同じように巻き取り模型のモデ ル化を行うことができる 。このハブの短辺を 短くすると、 図 4.14( h )の展開図となり、

( b )等角螺旋状折り線による円形膜の折 り畳み収納モデルの一般化

( 7 )

ゼロにすると 図 4.14( i )の展開図が得られ

前節で述べたアルキメデスの螺旋による方

る 。 これを折ると 図 4.14(j)-( I )を経て 図

法に比し、等角螺旋を折り線とするこの方法

4.14(m)のように平坦に折り畳まれる。

はより数学的になることは否めない。一般的

なお、円筒などをジグザグ状に上方から折

な手法の詳細は付録 3に記すものとし、ここ

り畳むこととは異なり、 この巻き取り収納法

a )に 示 す 円 形 を 1 2等 分 では、 図 4.15(

では上から積み重ねるようにして巻き取るた

(N=12 )した例を用い 、 この手法の甚本の

め、何重にも重ねて巻き取ることは困難であ

部分を説明する。図は概略半径方向で中心に

る。すなわち、厳密には 、紙の厚みがハブの

2本の螺旋①と 、 向かう主の折り線と呼ぶ 1

寸法に比して無視できる程薄い場合にのみ巻

大きく湾曲して時計回りで中心に向かう副の

き取りできる。経験的には、展開図を A4サ

12本の螺旋②の、 2種の等角螺旋状の折り

イズ大の寸法とすると 、うまく折り畳めるの

線で構成されている。円形域は折り線で形成

はコピー用紙の厚さ以下の場合である。なお 、

された歪んだ相似の台形で埋め尽くされてい

この膜 ( 紙 ) の厚みの影響で折り畳みが困難に

る。すなわち、すべての交点における折り線

なる場合には数理的な手立てを加えて 解決せ

の配置は相似である。

108

4 ( b )

7

円 形



①主の折 り線 ②副の折 り線 M;山折 り V;谷折 り



2

面 膜 の 巻 き 取 り

( c)









tl~ 懲罰\~



レ )

図4 . 1 5 (a)等角螺旋状折り線による円形膜の折り畳みの基本形 ( 1 2等分、 1 2段上がり ) 、 (b)図( a )の点 1周りの拡大図、角度 a、B、U、のの定義と図示、 (c)N=1 2の展開図と折紙模型の折り畳み収納の 様子

図4 . 1 5( b )で、折り線①の点 B、 l、C ・・ の半径は一定の比率 rで(等比級数的に)小さ くなるとする。時計回りの折り線②の各点(点

1→ 1 2 )も、比 S で同様に小さくなるものと

であるから、 r-s=Oである。すなわち、

s i n1 4Is i n( 4 1+a)-si n ¢/ s i n(¢+/ 3 ) =O

( 4. 7 )

・ ・ は中心角度 する。折り線①上の点 B、1、C

を得る。代表点 lでの折り畳みの条件は

aで分配され、螺旋②を形作る点 1-1 2は

乙 Cl2十乙 Al B = l 8 0 ° より

角 度 Bで 配 置 さ れ て い る も の と す る 。 図

4. 15( a )で外周部の点 Aを起点に、①上の ●

(¢+4 1 )+(¢+4 1+a+/ 3 )=1 8 0 ° ( 4. 8 )

点を右上に 1 2段上がったとき、点 Aより出 る時計回りの螺旋②を 1 、2、3を経て 1 2個

となる。角度 a、/ 3、¢ と↓ が未知数である。

分進んだ点 1 2で会合するとする。これより

3=29°を与えると 、式 例として a=l、 /

1 2a+1 23 f=3 6 0 ° となり、 a +f 3= 3 0 °を

( 4. 8 )より 、 ¢ =7 5 ° ―¢ を得る。この関係

得る。 L ' . IOB 1とL ' . IOA1[ 図4 .15( b )参

と式 ( 4. 7 )を用い ると 、数 値 計 算 で 似 次 に

照]に 3角 関 数 の 正 弦 定 理 を 用 い る と 、

¢が定まる。得られた角度は

「= 01/0B=s i n仇/ s i n( < j J + a )、s=01/

5 . 0 9 °、 「= s : : : ; :0. 9093を得る。 なり 、¢ : : ; :6

OA=sin¢/sin(¢+( 3 )を得る。 OA=OB

この T( =s) 値 を用いて描いた展開図と模型

4 1: ;9. 9 1°と

1 09



4 章





. ..





の 出

I三、ご寸



t ミ嗜闘ミ刃 →¥、ゞ~;!;:/ →・ l " ' ¥ I I¥¥ 1

来 る

模 型 と 形

が 可 変 な

立 体

模 型



L' 令ヽ.i_,_,';

·~./•

)→• t,'~、 ) →









図4 . 1 6 (a)(b)N=2、3分割し、 2角形状(平坦に折り畳み)、正 3角形状に巻き取る展開図と模型の 収納の様子、 ( c)N=4分割し、正 4角形状に巻き取る展開図と模型の収納の様子、 ( d )2分割し、副の 螺旋をジグザグ状に与えて得た平坦に折り畳む展開図と中心部分が上に突き出た形で折り畳む模型

110

の巻き取り の様 子 を図 4. 15( c )に示 す 。

グ状 に与えて 得た 2角 形状 、 す なわち 平 坦 に

4

上 で述べ た 方 法 を一般 化 し た 成 果 ( 付録4

折 り 畳 む展開図と 中心部分 が上に突き 出 た形

7

参 照 )を用いる と 、 巻き 取 り型の 折 り畳 み の

で 折 り畳 まれ る模型の様子を示 したものであ

模 型 を自由にデザイ ンで きる。 代表 的 な例を

る。巻 き取 り収納す る多角 形の辺数が多 い図

16(a)-( c )は円形 を そ れ 以 下 に示す。 図 4.

4 .15( a )のよ うな場合に は主 の 螺 旋 の 折 り線

ぞれ N=2、 3、4分割し(①の等角 螺旋状折

だけ をし っか りと折 り、細かな間 隔の副 の螺

) 2角 形 ( 平 り線を それぞ れ 2、3、4本 配置、

旋 は 明 瞭 に折 らずに補 助 的 な 折 り 線 と し て



坦、 ) 3角 形、4角 形状 に巻き 取 る展開 医と そ

ロール状 に巻き取りながら 収納する ことがで

収 納

れ らの折 紙 模型 の収 納の様 子 を 示す 。図 4 .16

きる(付 録 4、図 AS参照) 。

円 形



平 面

膜 の 巻



モ フ ー

レ )

( d )は 2分 割 し 、 時 計 回 りの螺 旋 ② を ジ グ ザ

【コラム】 ひまわりの小花の螺旋状配列と折り畳み模型 写真 ( a)のひまわりの種子の配列 の模様は反

1本の螺旋で作 時計回り 34本 と時計回りの 2

( a)

られ、 21と 34は連続するフィボナッチ数か らなる 。その数比は無限大のとき黄金比になる ため、最も無理数に近い有理数比とも言われる。

b )で 、 この模様を模した螺旋を示したものが図 ( 図は反時計回りの螺旋① 34本と時計回りの螺 旋② 21本で円形域を網目状に分割したもので、



( b)

円形域は(自己)相似の矩形で充填されている 。 最下点 Aから反時計回りの螺旋①上を 34目分 中心に向け進む と、点 Aから出る時計回りの螺 旋②上を 21目進んだ点で合流するようデザイ ンされている 。時計、反時計回りの螺旋の交点 で折り畳み条件を満たすように定式化したもの が上述の巻き取り型の折り畳みモデルである 。

1 1 1

第 4章

( a )

( d )

( b )



折り畳みの出来る模型と形が可変な立体模型

→ ←ゞ〖 Xゞ3 →

( e )

( f )

\•

( g )

→ 等間隔の隙間

-一了 1

図4 . 1 7 (a)

~ (d) 薄い膜 を想定、厚さを考慮 して数値計算で得た円形膜の巻き取 り収納模型の展開図と

隙間なく巻き取りされる様子、 (e)~(g) 厚い膜を想定した展開図と等間隔の 隙間 で巻き取られる様子、

( h )展開固 ( a )を 4分割(簡易な製作用)

( c )中央にハブを設けて巻き取る模型の製

作(膜の厚さの考慮)

4.17( b )( c )を経て 図 4.17( d )に示すよう に ハ ブの周りに隙間なく巻き取り 収納さ れる。

直径 100m級の巨大膜製のソーラーセイ

ボール紙のように厚い紙を想定(膜厚 /半径

ルが考えられている 。上述のア ルキメデスの

=0. 1 )したときには 図 4.17( e )のように放

螺旋を用いて何重 にも 巻き取るとその厚みで

射線状の折り線はさらに湾曲したものになる。

徐々に巻き取り作業が困難になる。この課題

この模型を薄手の模造紙で作ると 、図 4.17

に対処するため、素材の厚みを考慮に入れた

( f )を経て 図 4.17( g )に示す ように等 間隔の

折り 畳みの解析を行 った。 この解析 は十数年

.17(h)は 隙間をあけて巻き取られる。 図 4

前に斉藤淳氏(現、三菱重工)とともになさ れ

( a )を 4等分したもので、 付 録 4( a )で述べ

た。薄い膜を想定し 、膜 厚 / 半 径 =0 . 0 1と

る模型作りのための展開図である 。

して数値計算で得ら れ た も の が 図 4 .17( a ) の展開図である。 図 4 .14( a )のアル キメデス

( d ) 服飾品のデザインヘの応用

の巻き取り法では直線である半径方向の折り

図4 .15に示した手法でデザインされた円

線は等角螺旋のように少し湾曲していること

形膜の巻き取り収納法は世界的なデザイナー

が分 か る 。 こ の 展 開 医 で 作 ら れ た 模 型 は 図

のグループによりエレガン トな服飾品に変身

1 1 2

4

7



( b )

( c )

円 形



平 面 膜





( e )

: i ' t r ' _

( g )

~~

( h )

i

7 h /f l

^ 、 ' . P

( f )

き 取 り



収 納

モ フ ー

) レ

( i )

図 4.18 ( a )円形膜を 2分割し、折り線の数を極力減らした展開図、 ( b )( c )折り畳みの過程と折り畳みの (d)~(f) 下方に巻き取る図 4.16 ( d )を少し変えた展開図の 1/6を用いた円錐の展開図と平坦に折り畳まれる模型、 ( h )( i )デザインされた服飾品 ( l s s e yMIYAKE服 飾カタ Dグより抜粋) (35、36) 様子〔この模型を基に作られた服飾品 (g)) 、

し、新たな命が与えられた。その例を以下に

作られた服飾品が図 4 .18( g )である。 図

.16( b )に示した円形の膜を平坦に 示す。 図 4

4.16( d )に 示 し た 展 開 図 と 同 じ 考 え で 作 ら

折り畳む展開図と同じ考えで、円形膜を 2分

れた展開図の 1/6を示したものが、 図 4 .18

割し、折り線の数を極力減らして折り畳みし

( d )である 。この展開図より 図 4.18( e )のよ

.18( a )に 、 やすくデザインした展開図を 図 4

うな円錐形状が得られ、これは 図 4 .18( f )の

その折り畳みの過程と折り畳みの様子を 図

ように平坦に折り畳まれる。これをベースに

4.18 ( b )( c )に示す。この展開図をベースに

作られた服飾品が図 4 .18( h )( i )である。 113

第 4章

4 . 8 形が可変な立体のデザイン (19、37)

折り畳みの出来る模型と形が可変な立体模型

ここでは、変形できるが平坦に折り畳む機

た展開図を斜め切断して得た展開図と模型の

能を持たない構造模型の 例 を述べる。 図 3. 3

様子を示したものである。最初に述べた 3次

( a )や図 3 . 4(a)に示したコイルバネ状の模

元の螺旋模様を呈するコイ ル状の形状になっ

型を設計する例を述べる。最初、基本形と し

ている。このコイル形状は(円筒の)外面部を

て円弧状に折れ曲がる 4角断面の筒状模型を

伸縮させず、内面部だけを縮めた結果もたら

図 4.19( a )の展開図を用いて製作する。展開

されるもので、内面部を縮めるほどコイルの

図は 、内面部 ( AB)はジャバラ状の折り線に

状態は顕著になる。逆に 、 (折紙模型では製

より折り畳まれ、外面部 (CD)は折れ 曲がる

作は不可能であるが)内面部の 伸縮を 抑 えて

が伸縮しない。展開図は内 、外面間を 3角形

外面部を伸ばす何らかの工夫ができれば、同

状に折り線を設けてつないだものになってい

様の挙動を呈する機能材や模型を作ることが

る。上、下辺 ABと CDを糊付けして折ると

できる。

b)を得る。 図 4.19( a )を基にこ れ 図 4.19(

図4 . 2 1( a )は図 4.19( c )を基に直線状の

c )の展開図とな を角錐状にすると 図 4.19(

模型を等角螺旋状にした展開図で、螺旋状に

り、その模型は平面状に巻く貝殻様の螺旋模

巻く角錐等を形作ることができる。模型の様

型になる。

子を 図 4 . 2 1( b )-( d )に示す。これは 4角錐

a )( b)は図 4.19( a )を基に作られ 図 4.20(

( a ) A

B

置 靡買 : '

: ' ' :

: ' ' :

: ' : ' ,

:: ' '

' :

:: ' '

: '

: ' ' :

:: ' '

'

; ¥ 汽 ; : ' ¥ 膚 ;: ' ¥ ; が . ; 汽 ;: ' ¥ 汽 ;/ ¥ ・ パ : ' ‘ . . ヽ ;

( c )

~虚罪崩訂 叫 囮 匹 D

I 内面

' i '¥

\ 外面 I D

C

( b l

を斜めに切断して回転させながら積み重ねて

AA

i . r i . . .

~

(dl

図 4.19 ( a )( b )円弧状に曲がる 4角形の筒状体の展開図と折紙模型(基本形)、 ( c )( d )角錐状にしたときの 展開図と折紙模型

114

4 . 2 1

ゆえ、反転点の左右の巻き数は同じになる。こ

( e )l のように 3次元に巻く螺旋を摸擬してデ

の反転は 1方向の回転だけでは自身がねじ切

ザインしたものである。

れるため必然的に生じるものと思われる。

. 2 2( a )は糸瓜の蔓が左端で棒に巻き付 図4

このような螺旋状の構造を摸擬するために

きコイル状になった状態を示す。最初 、蔓は

. 2 0の模型では対応できない。ここで は図 4

直線状に伸び、左の先端部の触毛で捕まえる

は、最も簡単な斜め切断法で得た正 5角形の

ものを感知し、しっかりと巻き付く。その後、

断面の折り 畳み円筒を用いる。用いた展開図

中央に反転点を設け、その両側で互いに逆方

とこれで作 った全体が螺旋状に少し捩れた折

向に巻くコイルを作りながら成長する。それ

. 2 2( b )( c )にそれぞれ示す。 紙模型を 図 4

( a ) A

( b )

, . ,., /,』''. I,'• I,'I,', •,'• I B , ' 、:,'I',' ' ' ' ' ' ' ., , , .ヽ ' , ' : ・ , : : , 1 , i :、 ・ . : : , 1 , i : ヽ·,::,、',:.'I,:,'",:,'••,:,'I,: :: :::::::::::::::::::::

,

: : , i i , . !i i , . !i i ,i i ,i i , !i i , !

' . : I .'1'.'1•,'I

.'1•,'1'.'•'.'I•I

,'1',,'.I

C

D

図4 . 2 0 (a)( b )コイル状に巻く 3次元の螺旋を作る展開図と折紙模型

(b) 巳~肇~ (c) D ( d )

c 図4 . 2 1 様子

( a )

(a) 捩れた円錐状の模型を作る展開図、 (b)~(d) 模型の変形の様子、

(e) 捩れたクヅーの角の

△ 3 6 0

( c )

図 4. 22 ( a )コイル状に巻く糸瓜の蔓(中央に逆方向に巻くための反転点、両側で巻く方向が逆)、 ( b )斜 め切断による 5角形状断面筒の折り畳みの展開屈、 ( c )引き伸ばされたときの筒

1 1 5

4 . 8 形が可変な立体のデザイン

作られる形のもので、ラムやクヅー [ 図



第 4章

( d)

( e)

折り 畳 みの出来 る模 型 と 形 が 可変 な立体模型

図4 . 2 2( 続き) ( d )( e )折り畳まれた状態とコ イル状の様子、 ( f )反転点付近を摸擬した模型



4 . 2 2( d)に折 り畳んだ状態、 図 4 . 2 2

( e)に円筒の片 側 (赤い )部分を 伸 びな いよ う

長する手法をうまく用いて複雑 な形状 を演 出 しているものと推測 している。

にし 、 反対側部分だけを引き 伸 ば してコ イル

これらの模型は構造の動作機能を 調べる目

状にし た状態を示す。 図 4 . 2 2( f )は最初 、 片

的も兼ねてデザインしたもので、蔓のような

側 だけを 引 き伸 ば し 、 次に反転点付近で逆に

複雑な動作の模擬は困難と しても 、単純な動

その反対側 を伸 ば した後、元の片側 だけ伸 ば

きのものについては 、例 えばゴムなどで これ

すと反転点が作ら れる様子を模型で示 したも

を製作 し 、 密封 して流体圧で コイル化 させ る

のである。蔓性植物は このような局所的に成

ことができると考えている。

【コラム】

折り畳み円筒模型の展開 左図は円筒を反転型螺旋で折り畳む 図 4.4 ( b )を基本にするもので平行 4辺形の辺長はお

およそ 200mmで、比較的大型の構造物を想定 して、その展開にどのような困難があるのかを 知るために模型製作と展開実験を行った 。展開 図の鉛直方向の 6本の ジグザグの山折り線部分 すべてにビニール製のパイプを配し、空気圧を 用いて折り畳み構造を展開し、動作が比較的容 易であるこ とを実証したときのものである (15)。 116

第 5章

2枚貼り折紙

折り畳みのできる同じ展開図、あるいはほと んど同じ展開図を裏表にして対称に 2枚貼り合 わせて作る折り紙、略して 2枚貼り折紙につい て述べる。折り畳みの基本は折 り線の対称性に ある。折り鶴を作成して元の平面に戻すと、対 称の折り線が数多く見られる 。これは折り線を 対称に設けると無条件に折り畳まれることと関 連する(例えば、重ね折り)。折り畳みのできる 立体をデザインすることは、折紙に造詣が深く ても簡単なことではないが、対称に 2枚貼るこ とで、この厄介さが一挙に解決されることが多 い。これが 2枚貼り折紙を推奨する基本の考え である。 この手法によって、湾曲した筒、環状の筒な どの折り畳み模型、 Y字や亀の子モジュ ールと 名付けた部品や、これらをつなぎ合わせた複雑 な構造の折り畳み模型が作られた。本章では、既 報の著作 (16)を基に、基本の考え方、代表的模型 とその後に作られたより複雑な模型について述 べる。

第 5章

5 . 1 対称 2枚貼り合わせ折紙 (2枚貼り折紙)の基本

2枚 貼 り 折 紙

模型 図5 . 1( a )は 最 も 甚 本 的 な 折 紙 模 型 で 、 長

から見て同じになるように して 上下端を貼り

手方向に折り畳みができる 4角断面の細い管

合わせ 、 図5 . 1( b )の よ う に ジ グ ザ グ の 筒 を

を作る展開図を示したものである。平行 4辺

作った後、 図 5 . 1( c )のように折り畳む。 図

形をジグザグに配置した折り線図 A と Bを表

5 . 1( d )は こ の 過 程 を 模 式 的 に 表 し た も の で

( a)

A[口/し――~(b) ~

(c)

□□□三□□三

B

( d )

( e)

~~;O. →ニ

図 5. 1( a )2枚の同じ展開園、 ( b )片方の上下を逆にして、展開図が見える面を表にして裏から貼り付け、 ( b )( c )模型の様子とジグザグに折り畳まれる過程、 ( d )折り畳まれるときの断面の変化、 ( e )展開図 ( a ) を縦長にした場合

( c )

( e)

( f )

( d )



( a)

( g)

::::::::::二:~:::::::::::ロ ニ : : : : ロ ニ : : : :¥ : ¥ : : : : : : :二: :〗~

-一 疇 疇 --: --、 : : -- -、 ` 図 5.2

(a)~(d) 展開図と模型の側面、斜め上から見た様子と折り 畳み 、 (e) 折り 返して 2 枚貼り を 1 つ

の展開図で表示、 (f) ~ (h) 唇形模型の 展開図と折り畳み

118

( h)

ある。管の状態から半径方向に押し付け ると

畳まれる。この例より、同じ展開図を対称に

自然に折れ曲がり、管はまるで 1枚の短冊を

貼ることの基本的な条件が満たされれば、

折るようにスムーズに折り畳まれる。 図 5 . 1

個々の展開図中の折り線の配置を自由に変え

( a )を垂直方向に引き伸ばし、平行 4辺形の

ることができることが分かる。

5

対 称

2

数を増やすと 図 5 . 1( e )のようになる。 図 5 . 1

第 1章の図 1 . 4で対称型の折り線で作られ

( e )の展開図を縦方向にさらに引き伸ばし 、

る折り畳み模型を引き伸ばすとき 、両端が離

枚 貼 り 合 わ

9 0 ° 回転させると 図 5. 2( a )になり、太い 4

れ半円筒の状態を経て元の平面に戻るため 、

せ 折

角管の展開図(の片面)になる。図中の中央の

このような折り線図では伸縮自在な円筒の折

ジグザグの折り線①は水平方向と 30°をな

り畳み模型を作ることはできないことを述べ

. 2( b )の 4角形断 す 。 2枚貼り合わせると 図 5

た。しか しながら、これを 2枚対称に配置 し

. 2( c )( d )のように頂角 面の筒になり 、図 5

て貼り合わせる場合には 、伸縮時に 2枚の紙

紙 、 一

120°の平行 4辺形状に折り畳まれる。折り

の両端は全く同じ動作をするから 、対称性に



線①を傾き 45°のジグザグにする と正方形

より相殺されて拘束がなくなると推測できる 。

状で折り 畳まれる。 図 5 . 2( a )を 2枚貼り合

. 3( a )のように 折り 正方形断面の筒は 図 5

わせる展開図は 、中央の垂直線で折り返す図

. 4 畳まれる。図中の垂直線で折り返すと、図 1

5 . 2( e )の展開図で置き換えることができる。

( f )の展開図に新たに谷折り線が追加されて

. 2( a )の展開図の折り線①を山折り線 図5

. 3( b )のようにな り、その模型は 図 5 . 3 図5

から谷折り線にして、両側に 2本のジグザグ

( c )の左半分 A のように折り畳まれる。これ

の山折 り線②を追加し たものが図 5 . 2( f )で

を 2個作り 、図のように対称に配置 (Aと B )

ある。この展開図と元の展開図[図 5 . 2( a )l

して接合する。すなわち 、これは 図 5 . 3( b)

を貼り合わせると 図 5. 2( g )のような筒にな

の左右端に糊代を設けて 2枚貼りすることで

. 2( h )のように唇形状で折り り、これは 図 5

達成される。作られた模型を伸 ばした様子は

接合

( a)

折 り

返し

接合

図 5.3 ( a )( b )正方形断面筒の折り畳み、谷折り線を追加して折り返しを設けた展開図、 ( c )展開図 ( b )で 折り 畳まれた模型 2つの接合前の対称配置

11 9

紙 2 ^ 枚 貼 り



の 本 模 型

第 5章

( d )

< > < > < > < 三 ( g)

( e)

2枚 貼 り 折 紙

~

( f )

( h )

( i )

山折り I

中央の

折り返し ( j )

: t : :

( k)

:::::::----::::::: • : : : : ~ ー:

( l )

(m)

( n )

(o )

図5 . 3(続き) ( d )展開図 ( b )の 2枚貼りで作られた模型、 ( e )対称型で正 6角形状に折り畳む展開図の 1 段分、 ( f )図 ( e )の算盤玉 1つと両腕分、 ( g )展開図 ( f )の折り畳みで得た模型の対称配置、 ( h )( i)短冊 ( f) を積み上げた展開図(左半分)を中央で折り返して得た展開図と模型、 ( j )( k )展開図 ( h) の菱形を台形にし た展開図、その模型と折り畳みの様子、 (l)~(o) 正 10 角形状に折り畳む展開図、模型と折り畳みの様子

図5 . 3( d )のようになり、 図 5 . 3( c )で示す接

. 3( g )の 上 半 分 に な る 。 こ の 折り畳むと 図 5

合した形状で折り畳まれる。

短冊を積み重ねると 図 5 . 3( h )の 左 半 分 を 得

図5 . 3( e )は 対 称 型 で 正 6角 形 状 に 折 り 畳 む模型の展開図[ 図

4 . 1( f )Jの l段 だ け を 表

. 3( h )は こ れ を 用 い て 中 央 で 折 り 返 る 。 図5 し 、

2枚 貼 り を 1つ の展 開 図 に し た も の で、

したものである 。 これより取り出した算盤玉

. 3( i )の よ う に な る 。 図 その折紙模型は図 5

lつ と 両 腕 分 の 短冊 状の展開図、 図 5 . 3( f )を

5. 3( j )は図 5 . 3( h )の展 開 図 の 菱 形 を 引 き 伸

120

( b )

) c ( [ b →¥ vャ←



平坦に折り 畳み 図 5.4 ( a )( b )長方形断面形状の筒の展開図と模型の折り畳みの様子、 ( c )( d )L字形断面の筒の展開図と その模型の折り畳みの様子

ロ ロ



( a )

( b )

( c )

(d) ~



固5 . 5 長方形断面筒と L字形断面の筒の貼り付けにより作られる、異形断面筒の折り畳み模型と折り畳 みの様子、折り畳みの方向を考慮に入れて接合

ばした展開図で、模型とその折り畳みの様子

の水平方向の中央にある山折り線をずらすと

を図 5 . 3( k )に示す。正 10角形状に折り畳む

折り畳みのできる長方形断面の筒になり、そ

円筒の半分を貼り合わせて作る展開図と模型、

の折紙模型と折り畳みの様子を 図 5 . 4( b )に

折り畳まれた模型の上面の様子を 図 5 . 3( 1 )

示す。 図 5 . 4( c )( d )に L字形断面の筒を作る

-( o )に示す。

展開図、その折紙模型と折り畳みの様子をそ

上述の例は重ね折りを基本にするため模型

れぞれ示す。

の設計は比較的簡単で、注力すべき課題は両

図5 . 4の長方形断面の筒や L字断面の筒を

端での貼り合わせの工夫だけである。 これら

いくつか作り、 これらを曲がる方向を考慮し、

の模型は対称に接合されるため力学的には 1

より複雑な断面形状の筒の折り畳み模型を貼

枚の紙と同じ挙動になり、変形時にひずみを

り合わせて作ることができる。 このような例

伴わない利点を持つが、底をつけることが難

を示したものが図 5 . 5( a )- ( d )に示す 4つ

しいという大きな課題が残されている。

の折紙模型である。図のような断面で貼り付

本手法を異形断面の筒状体の製作に用いた 例を示す。 図 5 . 4( a )に示すように 図 5 . 1( a )

けられたいずれの模型も、一体となって l枚 の紙のように良好に折り畳まれる。 1 2 1

5 . 1 対 称 2枚貼り合わせ折紙 ( 2枚 貼 り 折 紙 ︶ の基本模型

D





5 . 2 環状筒の折り込み模型 (16)



2枚 貼 り 折 紙

2枚貼り法でドーナツ様の環状筒を折り畳

作られた模型およびそれらの折り畳みの様子

む模型を作る例を示す。長い短冊の両端を 糊

を図 5 . 6( d )-( k )に示す。図に示すドーナツ

付けして円形に したものが図 5 . 6( a )である。

状の模型は 、最初、両手で持って左右中央の

この輪っかを折り畳む方法は種々考えられる

出っ張りを押すとジグザグに折れて、良好に

が、 ここでは 図 5 . 6( b )のように 、上下に直

折り畳まれる 。折紙による模型製作は糊付け

線部を 2つ設けて上から押し付けて折り畳む

部が多く面倒であるが、プラスチックなどで

方法、 図 5 . 6( c )のように直線部を 1つ設け

成形 し、融着接合すれば製作も比較的簡単で

て残りの部分をジグザグに折り 畳み 、その後 、

あると思われる。構造には適度の剛性を付与

直線部で挟み込んでコンパクトに折り畳む方

できるため、時間のかかる空気の注入なし に

法を採用する。このような考えで環状の管を

瞬時に展開できる救命浮き輪などに応用でき

折り畳むための展開図 、 これを 2枚貼りして

ると考えている。



( a )

B

ゅ佃

( e )

( f )

A

( j )

A B

( g )

A

A

( i )

B

◎〇 裏

) c ( 0

•[ >

( k )

A B

図5 .6 (a)-(c)環状にした短冊で折り畳みの過程を摸擬、 ( d )-( g )図 ( b )の様式でデザインした折り畳み のできる浮き輪状模型とその折り畳みの様子、 ( h)-( k )図 ( c )の様式でデザインした折 り畳みのできる浮き 輪状模型とその折り畳みの様子

122

5 . 3 角錐や角錐形の袖や胴からなる T字分枝形の洋服 模型 (16) 3つの角筒や角錐を突合せた構造で、 T字 分枝と 名付けた折り 畳み模型を応用した 、洋

り線を設けることによって 、こ の平坦折りは 達成さ れてい る 。

服の折り畳み模型を示す。 図 5 . 7( a )( b )は展

上述の基本形の袖部や胴体部分に 図 5 . 1の

開図を前後において対称に 2枚貼り付けて作

折り畳み方法を採用し、これらの部分も同時

られる甚本形を示したものであり、袖部分を

. 7( c )( d )に示す。首回 に折り畳む模型を 図 5

胴に貼り付けるように平坦に折り畳むことが

りは穴 が開くので 自由に裁 断で きるため、前

できる。 図 5 . 7( a )で示す よ うに 、展開図上

面と後面の展開図の外形は首回りの部分で少

で袖と胴部分が作る脇の角を 2等分する谷折

し異なっている 。

( a )

i f i l m 脇角

2等

( b l

一 →



( d )

字 分 枝 角 錐 形 や の 洋 袖 服 胴 か 模 ら な る 型 T 5 . 3

図5 . 7( a )( b )T字形で洋服を摸擬した模型(左右の袖を胴部と一緒に平坦折り)、 ( c )( d )折り 畳みので

袖 と胴部分を細か くジグザグ折り) きる洋服を 2枚貼りで摸擬 (

123

第 5章

5 . 4 幾何学模型の製作

2枚 貼 り 折 紙

正多面体や半正多面体、あるいはこれらに類似する任意形状の凸の多面体の模型を、単独に

1つ作ることは難しいことではない。しかしながら空間充填形の模型のように複雑に入 り組ん だ模型を 1枚の紙から作るのは容易ではない。ここでは空間充碩形 ( 2 . 8節 ) を基にする捩れ多 面体と呼ばれる立体に関連する折紙模型を紹介する。正多面体による捩れ多面体には立方体、 切頂 8面体および切頂 4面体に関するものがあり、ここでは前の 2つを述べる。

( a ) 捩 れ 多 面 体 (26、38)

5.8( b )の正方形の穴の下は立方体が直線状

図5 .8( a )( d )はラピッドプロト、今でいう

に並んだ貫通穴になっており 、こ の様子は側

3Dプリンターで製作した代表的な捩れ多面

面、裏面から見ても全く同じである。 図 5 .8

体のプラスチック模型である。 図 5 .8( a )は

( a )中の◎印点では図 5.8( c )に示すように正

正方形の充填形に対応するもの、 図 5 .8( d )

方形の頂点が 6つ集まった状態である。すな

は切頂 8面体に対応するものである。 図 5 .8

わち、合計の角度が 540°であり、頂点部が

( b )に色分けして示すように、上面を見ると

捩れているとみなしてこのように呼ばれるも

穴 が 2つ の グ ル ー プ に 分 け ら れ、穴 Iか ら

のと思われる。 図 5 .8( d )は切頂 8面体の 6

入った人は穴 l Iから入った人と決して内部で

個の正方形の面を取り除いて穴にしたものを

出会うことはできない面白い構造である。 図

平面上に並べ、これを積み上げたものである

垂直の正方形状

" / .

1

水平の正方形状

( b )

穴 I穴 I



貫通穴

( c )

>

貫通穴

図5 . 8( a )( d )捩れ多面体のプラスチック模型、立方体型、切頂 8面体型(九州大、斉藤一哉氏製作)、 ( b ) 模型 ( a )の穴の配置の様子、 ( c )正方形 6つ(合計角 540 ゜ )で作られる頂点(白丸点)

124

垂直方向の対角線を谷折り線にした菱形が交

から見た様子は全く同じで、 図 5 .8( a )と異

互に配置されている。 図 5 . 9( b )に示すよう

なるのは正方形の穴の下に瓢箪のように絞れ

にスリッ トのある菱形部分を谷折り線で折り 、

た切頂 8面体の空洞が連続的に、直列状に連

内部に折り込み糊付けすると、 図

なっていることである。 このような構造はス

ような切頂 8面体の半分を連続に連ねた模型

ポンジあるいはトンネル構造と簡単に呼ばれ

を得る。 これを 2枚 貼 り す る ことで図

ることも多い (26、27)。

( d )の切頂 8面体による空間充填模型が作ら

図5 .8( a )の模型の製作は本節 ( b )で後述

れる。また 、図

5 . 9( c )の 5 . 9

5 . 9( e )のように中央で折り

するとし 、ま ず、切頂 8面体の空間充填形に

返すように展開図を修正すると 、何回も折り

ついて述べる。正 6角形と正 3角 形 2個 で

返して 図 5 . 9( c )を作り積層 してゆくことが

作った菱形で平面充填された 図 5 . 9( a )を展

でき、 図

開医として用いる。図中、切り抜き部とする

よって空間充填されたスポンジ状の構造を作

黒塗りの菱形と水平方向の対角線にスリッ ト、

ることができる。

( a )

( b ) 糊付け

切り抜き/

十字カット

( c )

5 . 9( f )の よ う な 切 頂 正 8面 体 に

貫通穴 I

( d )

貫通穴 I

裏ヘ 押し込み 自身で 糊付け

! ' '

裏面の パーツと 糊付け

スリ ッ ト

貫通穴 I

( f )

“-

',.

9999

︱︱

︱ ︱





999

',.





,',.

9999

,',.

︱︱

9999

',.

ー一

︱︱

( e )

9

折り返し

図 5.9 ( a )切頂正 8面体を半割りした形を作る展開図の基本形、( b )製作方法、( c )( d )切頂 8面体の半分 を連ねた模型と貼り合わせた状態、 ( e )( f )折り返して 1段分を作る展開図と 積層 して作られた切頂正 8 面体の空間充碩によるスポンジ状模型

125

5.4 幾何学模型の製作

[ 図 2.48( d )参照]。 この模型でも上面、側面

第 5章

( b ) 立方体型の捩れ多面体の折紙模型の

2枚 貼 り 折 紙

製作 立方体型の捩れ多面体の成り立ちを考える。 図 5.10( a )のように、基本とする立方体を

4個組み合わせたものを 2つ用 意し 、それら

ように配置して貼り付ける。でき上がったも のを捩れ多面体の管の基本型(モジュールと 呼ぶ)とする。このモジュールを上下左右に 無限につなぐと立方体型の捩れ多面体になる。 捩れ多面体の基本型を 2枚貼り折紙で作る。

を A、B とする。 図 5.10( b )のように A、B

図 5.10( d )を水平面で 2等分割したものが図

を組み合わせると、寸法 2倍の立方体になる。

5 . 1 1( a )である。これを作る展開図が図 5 . 1 1

この立方体を上下左右に積み上げ(充填し)、

( b )で、太線は切断線である。中央の水色の

Bのすべてを(頭の中で)取り去る。あるいは、

正方形は切り抜くか、 X 印形に切断し別のモ

これを考慮して A だけを接着すると、取っ

ジュールをつなぐときの糊代にする。正方形

手の短いジャングルジム状の模型ができ上が

の頂点の外側にある 4つの

る。抜かれた Bの部分は立方体の空洞をつ

と谷折り線で、谷折り線で折り内部に押し込

ないだもので、 A と全く同じ形である。立方

み[ 図 5 . 1 1( c ) J糊付けする。これにより平面

体をつないだ A の接着面を取り去ると、ジャ

0 ° の頂角 6つ ( 5 4 0 ° )分を からでは不可能な、 9

ングルジム状に四方八方に枝分かれした正方

調達することができる。これで作られた模型

形断面の管になる。この管が作る面は空間を

を 2個対称に貼り合わせると 図 5 . 1 1( d )に

ジグザグに 2等分する面になる。

なる。模型は 図 5 . 1 1( e )を経て 図 5 . 1 1( f )の

c )のように 上の模型を作るため、 図 5.10(

X

部分は切断線

ように折り畳まれる。この折り畳みのメカニ

寸法 Lの正方形断面で長さ L/2の管を作る。

ズムは、頂点を蝶番にした骨格構造 [ 図5 . 1 1

6個用いて 図 5.10( d )のように立方体を作る

( g )l のそれと同じである。 図 5 . 1 1( b )の展

( d )



図5 .10 ( a )( b )立方体 4 1 固からなる立体の晦み合わせ模型を用いた捩れ多面体の説明、 ( c )( d )正方形断 面筒の貼り合わせによる捩れ多面体のモジュールの製作

126

このモジュールを関節部として使い、

用いると甚本型の半分が連続した 図 5 . 1 1

ジュールの枝部に正方形断面の筒を差し込ん

( h )を得る。 こ れ を 作 る こ と は 容 易 で あ る が、

.12( a )J。 で枝部の長い模型を製作した[ 図 5

精度よく

2枚を貼るには熟練を要するため、

作られた模型はきわめて良好に作動し、図

この模型の実用化は非常に難しいと思われる。

5.12( b )に示すように簡単に折り畳まれる。

図5 . 1 1( d )の 模 型 で は 6個 の 出 っ 張 り 部

この手法を用いると、 ジャングルジム型の 巨

(枝部)を長くすることはできない。そこで、

( a )

大な折り畳み構造の設計が容易にできる。

( c )

( b )

スリ ッ ト

IC ( h )

( f )

図 5. 1 1 ( a ) ( b )基本モジュールの形状と展開図(太線;切断線、中央 X 印 ; 切断線/糊代に代用)、 ( c ) ( d )4 個の切断線部を内部に押し込み糊付け、 2 個貼り合わせてモジュ ール製作 、 (e)~(g) 折 り畳みのメ カニズムとその様子、 ( h )基本型の半分の連続模型

( b )

( a ) 捩れ立方体

モジュール

図 5.12 ( a )( b )格子点部にモジュ ールを用い、これに正方形の筒を差し込んで作ら れたジャ ングルジム 状模型とその折り畳みの様子

127

5 . 4 幾何学模型の製作



開医を正方形と見て、 これを連ねた展開図を

第 5章

( c )新しい 2枚貼り折紙による枝部の長い

2枚 貼 り 折 紙

モジュールの模型

垂直にすると

c-c、E-Eが平面状にな

り、 2枚貼りができる。 2個作り対称に貼り

ここでは、上述のように平面の展開図を 2

.13( d )のような 4本 の 長 合わせると、 図 5

枚貼り付けるのではなく、あらかじめ模型の

い枝部を持つジャングルジムの格子点部分が

一部を半立体状に作ったパーツを 2枚貼り付

. 1 1( d )と同じよ 作られる。この模型は 図 5

ける方法を紹介する。例として、立方体型の

.13( e )は 図 5.13 うに折り畳まれる。 図 5

捩れ多面体の枝部を長くした模型を 、新たに

( a )を対称に配置して節が 2つある場合のも

別 の 方 法 で 製 作 す る 。 最 初 、図 5 .13( a )の

ので 、図 5 .13( f )の片側模型の製作を経て 、

展 開 図 で 下 段 の A と A、B と Bを糊付け し 、

2枚 貼 り 法 で 図 5.13( g )のような 2個 の 節

次に D と D、上 段 の C と C を糊 付 けする。

(格子点)を持つ模型が得られる。この模型の

.13( b)の よ う な 枝 部 に な これにより 、図 5

製作法は 、 2枚貼り手法のさらなる拡張の可

る角筒を 2個持つ模型の単片を作ることがで

能性を示唆していると考えている。

.13( c )のように枝部を きる。 この単片は 図 5

" 'c ol I I ,, I ,IHI •〗ご) '~ B Ii I I IB I I A II 『 スリ ッ ト スリ ッ ト ( e )

~I II III ~

(f)

~

( g )

スリ ッ ト

図 5.13 ( a )( b )枝部の長い立方体型の捩れ多面体模型の展開図(垂直の中心線の下半分 ; スリット)と(単 枝)単片模型、 ( c )( d )2 枚貼り合わせる前の形と完成後の形状、 (e)~(g) 節(格子点)が 2 個ある場合の 展開図を節 1個の展開図を接合して製作、片側片と 2枚貼り合わせて製作された複節模型

128

きない。

2枚貼り手法をさらに拡張し、上述の捩れ

菱形 1 2面体[ 図 2.37( a )J の模型を作る例

c ) J を下で述べる 。正方形断面の筒[ 図 5.14(

yhedron)と 表題の空の多面体 (VacantPol

の下縁に糊付け部を設け、 6個を 図 5.14( d )

14( a )に示した は著者の造語であり、 図 5.

のように正 6角形の穴を作るように貼り付け

模型のように頂点部は自由に動き、稜線だけ

る。結果、 6本枝の部品が作られ、中央穴部

で作った(中が空の)多面体のことを 言 う。す

の上下にそれぞれ 6辺分の縁ができる。次に、

べての面が 4角形や 6角形など偶数の正多角

筒 3個を用いて 3脚を作るように貼り付ける

形からなるとき折り畳まれる。 図 5.14( b )

と、上部に 6つの縁(糊代付き)が作られる

に示すように、色付けして示した枝部を取り

[ 図 5.14( e ) J。6つの糊代部を 図 5.14( d )の

付けることができ、枝部の長さに制限はない

上面の穴の 6辺の縁に貼り付け、下面も同様

が、稜線が作る各面に 「 垂直に 」角筒状に取り

にすると 図 5.14( f )を得る。これにより、中

付けられていなければならない。 一部でも角

心部に空の菱形 1 2面体が作られ、 この模型

錐(台)形状に取り付けると折り畳むことはで

は図 5.14( g )のように平坦に折り畳まれる。

( a)



多面体の 立方体モジュールの発展形を考える。

( c)

( d)

( b l口 枝 部

( f )

( g)

固5 .14 ( a )頂点の回転自由、稜線だけの空の多面体、 ( b )枝部は各面に垂直、 ( c )糊代付きの正 4角形断 面筒、 ( d )糊代部をつないだ正 6角形状の穴のある部品 (6本 枝)、 ( e )3脚状に 3個連結 (3本 枝)、 ( f )( g ) 図( d )の上下面の穴部と 3本枝パーツを糊付けした空の菱形 12面体の模型と折り畳みの様子

1 29

5 .4 幾 何 学模 型 の製作

( d )空の多面体の折り畳み

第 5章

2枚 貼 り 折 紙

(h)

~



( j )

短 い枝部

( l )

( k )

C l I E

E l

Bl 3本枝

Fl6本枝

太線:切込み スリッ ト

h

AI C

G

DI F

図 5.14( 続 き ) (h)~(j) 菱形 12 面体の骨格構造を作る部品、製作模型とその折り畳み、 (k) ( l )6本足部 d ) )と3脚部品〔図 ( e )〕 を 1枚の紙で作る展開図〔図 ( k )の太線部はス リッ ト〕 、4つの長方形で筒 品と〔図 ( 1 1 固を製作(箇を作るための糊代自作 )

正方形(あるいは、菱型)断面の筒を非常に短

接合すると 図 5.14( f )を得る。菱型 12面体

くしたものが図 5.14( h )である。これを 12

の模型も 図 5.14( k )( 1 )の h を極端に短くし

個作り、 上 と同じようにして作 った 模型が図

て作ることができる。

5.14( i )の 菱 形 12面 体 の 稜 線 に よ る 折 り 畳

同 じように折 り畳める多面 体の骨格構造に

みのできる骨格構造である 。折り畳んだ状態

図 2. 38で 述 べ た 菱 形 30面 体 が あ る 。 図

を図 5.14( j )に示す 。

5.15( a )はその菱形 30面体の外観を示した

図 5.14( d )の 6本枝の部品は、 図 5.14

もので、稜線が作る骨格形状は、 5本の稜線

( k )の展開図を用いてより簡便に作ることが

が集まる頂点が 12個 、 3本の稜線が集まる

できる(太線部;スリット)。ここで (Aと A)

頂点が 20個の合計 32個からなる 。 このよう

)の 6か所を糊付けし て 4角形の筒 -( Fと F

な頂点部を短冊が集まる形で示したも のが図

を 6個作った後、次に G の上辺と右の G の

5.15( b )で、中央の太線部分にスリットを設

下辺を糊付けする。 図 5.14( e )の 3本 枝 部

け加工する。 図 5.15( b )のパーツ R を 谷 折

品は 回 5.14( I )を用い、 3か所糊付けして 4

りし、 図 5.15( c )のように中央の正 5角形部

角形筒を作り、最後に D と D を糊付けする。

分のすべてを内部(裏側 )に押し込 んで糊付 け

6本枝部品 を中央に して上下から 3本枝部品

すると、稜線部は 図 5.15( d )のように V 字

を 2個貼り、全体では「 3枚貼り」するように

形の梁が 5本合体し た形 になる 。パー ツ⑧も

130

5.4 幾何学模型の製作

し:ぃ

( a )

( c )

( b

@~

太線:スリ ット 点線:谷折り

谷折りして糊付け 5つ

( e )

( d )

( g )

( f )

( h )

~

( i )

~

;り

線折 点谷

図 5. 15 ( a )菱形 30面体の外観、 ( b )頂点部の 5角形Rおよび 3角形内⑧の太線部にスリットを導入後、 裏に押し込み糊付け、 ( c )5角形の部分をすべて(裏側に)押し込む様子、 ( d )5本の稜線からなる頂点部、 (e) 外観を参考に頂点部を連結、 (f) 図 (e) を連結したときの半球分の外観、 (g)~(i) 菱形 30 面体の骨格

模型と折り畳まれる様子

中 央 部 を 押 し 込 ん で 同 様 に 作 る 。 菱 形 30面

頂点部を内部に押し込んで糊付けする。対称

体の折紙模型を作り、 この模型の稜線の成り

に 2個 貼 り 付 け て 作 っ た 菱 形 30面 体 の 骨 格

.15( e )の よ う に 立ちを参照しながら 、図 5

模型は図 5 .15( g )のようになり、 こ れ は 図

半球分の 1 6個 を 貼 り 付 け る と 、 図 5.15( f )

5.15( h )を経 て 、 図 5.15( i )のように(任意

.15( d )を作った要領で、 を得る 。 これを 図 5

の)頂点を頭にして折り畳まれる 。

131

第 6章

コアバネルと 3次元の

八ニカムコア

( 8、39)

折紙で作る構造は一般に軽量であるが、強化 機能を付与することで、軽量で高強度、高剛性 の構造材料を創出する可能性を秘める 。軽量で 頑丈なこのような構造は、芯や核などを意昧す る「 コア」という言葉を用い、広くコア材料や コ ア構造と呼ばれる。本章ではコアパネルの設計 例や試作模型、および任意の断面形状のハニカ ムコア をモデル化する方法を述べたのち、こ の 手法を折り畳み可能な仕分け箱の製作に用 いた 例を述べる。

第 6章

6 . 1 コア材料とは

コア パネ ル と 3次元のハ カムコア

図6 . 1( a )はコア材料の代名詞で もあるハ

ニカムは高価で ある問題や 、曲面などに対応

ニカムコアを示すもので 、蜂の巣[ハニカム 、

する際には平板の既製品を長時間かけて曲げ

図6 . 1( b ) ]のように正 6角形状の筒を敷き詰

るなどの苦労を伴う課題等がある。このよう

めた形状のものである。 図 6. 1( c )のように

な産業上の課題に対応できる 、高強度の軽量

コアの両面にアルミ合金板などを貼り付ける

コア材料を折紙の手法でモデル化することが、

と高剛性の板に変身する 。 これはハニカムコ

本章を記述する目的である。

ア( サンドウィッチ)と呼ばれ、曲げに対する

ここでは、①幾何学の空間充填の考えを用

高 剛 性と強度を有し 、コア部だけ見れば比重

いコアパネルを創成する手法と製作品 (39)お

/1 0- 1/20の超軽量材である 。 このハ が1

よび②著者が十数年前に創成した、周期的に

ニカムコアの発明なしに、現在の航空宇宙産

導入したスリットと折り目とを組み合わせて

業の発展はなかったといっても過言ではない。

製作する 3次元ハニカムコア (8)を紹介する。

身近なところでは、机やテーブルなどの天板

また、ハニカムコアのデザイン法を転用し 、

の内部にダンボール製の種々の形状 [ 図6 . 1

折り畳みのできる仕分け箱を製作する方法な

( d )l のハニカムコアが用いられている。飛

どを述べる。

行機や ロケッ ト 、 車両などに用いる工業用ハ

( a )

( b )

正6角形状 ハニカム コア

( c )

( d ) 表面材

( 化粧 板 ) 段ボール ハニカ ムコア

図 6. 1 ( a )ハニカムコア、 ( b )蜂の巣(ハニカム) 、( c )ハニカムサ ンド ウ ィッチ、( d)机などの天板の強化

に用いられるダンボール製の 3角形状のハニカムコア

134

( a ) コアパネルのモデル化と模型製作

徴は正 3角形だけで構造が組み上げられた最

ここでは空間充填形の中からものづくりの

強の トラスである 。 このトラス構造は大型の

際 の 作 り や す さ を 考 え 、 平 行 6面体( 図

構造物や飛行場の大屋根など、注意深く見れ

2.49) による空間充填形を用い 、平面状のコ

ば町中のいたるところで見ることができる。

アを折紙の技術によってモデル化する。 図

図6 . 2( b)の模型を 5個上下方向に並べる

6 . 2( a )( b )に正 4面体と正 8面体からなる平

と図 6 . 2( e )になる。この模型の上下面は正

行 6面体と 、 これを 5個横に並べた棒状の模

3角形の網目模様を呈する。 図 6 . 2(b)を用

型を各々示す。 図 6 . 2(b)の左下の正 4面 体

いると色々な形のトラス構造をデザインでき、

を右下に移すと 図 6 . 2( c )のようになる。こ

その例 を図 6 . 2( f )( g )に示す。ここでは、 図

の棒状模型の(多面体の)稜線だけを取り出す

6 . 2( f )のカ ドに は 正 4面 体 と 正 8面 体、図

と図 6 .2( d )となる。これはオクテット ・ト

6.2( g )の 中 央 に は 正 8面 体 が 不 足 す る た め

ラスと呼ばれる著名な トラス構造で、その特

補充されている 。

正4面体

全体で P単体と仮称

ー 五戸

( d)

下向き正 4面体の上面

( b )



( c : f )

( g )

図6 . 2( a )平行 6面体 (p単体と呼ぶ)、 ( b )p単体を 5個並べたもの、 ( c )P単体を 5個並べたものの変 形体、 ( d )p単体 3個の変形体、正 4面体と 正 8面体の稜線のみを表示、稜線はオクテット ・トラスと 呼 ばれる最強のトラス構造を形成、 P単体による平面充填、 ( g )p単体を組み合わせて作 られる簡単 な構造模型の例

( e )

( f )

1 35

6 . 2 平行 6面 体 に よ る 空 間 充 填 形 を 用 い た コ ア パネル

0 . 2 平行 6面体による空間充瑣形を用いたコアパネ ル(20C、39)



6 章

( a )

I








( f )

A





Iヽ

ヵ ム





( h )

図 6. 3( a )( b )正 3角形の網目上に 1つ飛びに正 4面体を並べたパネルを 2枚用意し、頂点を ( b )の●点 に合致、 ( c )2枚の間に正 8面体を形成して ( 1層の)空間充填形を形成、 ( d )( e )スリットの導入位置、内 f )3角錐を作る様子、 ( g )( h )模 部に折り込む部分の説明、三角形 A、B、Cが正 4面体の錐面を構成、 ( 型製作のための展開固と折紙模型(タイプ I)

図6 . 2(e)の上面の正

3角形の網目模様を

骨格構造は面心立方金属の格子構造と同じで、

基にコア構造を作る手順を以下で述べる。 図

きわめて安定なものである(本章コラム 参照)。

6 . 3( a )に示すように正 3角形の網目模様上

この模型を作る展開図を 図 6 . 3( d )に示す。

に 1つ飛びに正 4面体を並べ、これを模型R

図中の水平方向の太い実線はスリット、垂直

とする。模型Rと同じ模型⑧の 3角錐の頂点

方 向 の 破 線 は 谷 折 り 線 で あ り 、 正 3角 形

をRの 3角形の網目の交点[ 図 6 . 3( b )の●

A-C3個で 3角錐形状ピラミッドの錐面を

点 ]に合わせると 、Rと⑧の角錐のすべての

作り、谷折り線のある正 3角形はこの折り線

稜線も合致し、正 8面体が内部に自動的に作

で内部に折り込む。この製作過程を示したも

られる。 図 6 . 3( c )のように稜線で貼り合わ

のが 図 6 . 3( e )で、正 3角 形 Eの部分を谷折

せると 、正 4面体と正 8面体による空間充填

り線でピラミッドの内部に折り込む様子が図

形の模型が得られ、タイプ Iのコアパネルと

6 . 3( f )で示されている。 図 6 . 3( d )を甚に

名付ける強靭なパネル模型が作られる。この

作ったものが図 6 . 3( g )で、これより 図 6 . 3

136

( b )

(c)

V 内部に 折り込み

( e )

( f )

正4面体が作られる空洞 ( i )

( j )

~



固6 . 4 (a)平行菱形 6面体の連結棒を積み上げた模型と切断面、

( b) 正 8面体の対称面が並んだ切断面、

(c) 正 8 面体半分のピラミッドを作る展開図と折り込みの様子、 (d)~(f) 4角錐形のピラミッドを 4個並

g )4 i 固のピラミッドの稜線が作る谷間に正 8面体の半分が入る様子、 ( h) べた模型を作る展開図と模型、 ( ( i )拡張した展開図と模型、 ( j )( k )2枚作って貼り合わせる過程とコアパネルの折紙模型(タイプ I I )

( h)の正 4面体を並べた模型を得る。 2枚を

半分の 4角錐状のピラミッドを平面上に並べ

稜線で貼り合わせると、コアパネルと名付け

る模型を製作する。このピラミッドは 図 6 . 4

たタイプ Iの模型が作られる。このコアパネ

( c )を用いて、谷折り線で中央部上下の正 3

ルの優れた特性は 、単片では 1枚の薄板のよ

角形部分を内部に押し込んで作る。 図 6 . 4

うに柔軟に曲げられるが、 2枚固かい合わせ

( d )に 4個のピラミッドを作る展開図(太い実

て貼り合わせると、強靭な構造の別物に変身

線;スリッ ト) を 、 図6 . 4(e)( f )に製作の過程

する点にある。

と模型を示す。 図 6 . 4(g)に示すように 4個

図6 . 2( b )の平行 6面体の連結棒を 6個 積

のピラミッドの稜線が作る中央の谷問に 、正

み 重 ね た も の が図 6 . 4( a )である。これを点

8面体の半分のピラミッドがすっぽりと入る。

線で示した面で切断すると 、正 8面体の中央

図6 . 4( d )の展開図を拡張した 図 6 . 4( h )を

の対称面が平面上に並んだ面を切断すること

用いると 図 6 . 4( i )の模型を得る。 2つ作 って

になり、切り口は 図 6 . 4( b )に示 す 正方形の

貼り合わせる [ 図6 . 4( j )Jと、図 6 . 4( k )に示

平面充填形になる。これを基に、正 8面体の

すタイプ Iと呼ぶコアパネルの模型を得る。 137

6 . 2 平行 6面 体 に よ る 空 間 充 填 形 を 用 いたコ アパ ネ ル

> • 4 ! ! f i f ?

( a )

6 章



ア /ゞ ネ

::

::



レ )

と 3

次 元

図6 . 5 幾何学的手法を用いて、尖った頂点や稜線を削り糊代部を持つ模型に修正



Iヽ



( a )

( b )

( d )

( c )







( f )

( g)

図6 .6 ( a )( b )PETで加工された角錐の突起を並べたパネル片と接合面を広くするため稜線部を設けた パネ ル片 、 ( c )(d) 鋼板とアルミ合金板製のパネ ル片、 (e)~(g) 曲面状の高剛性のパネル片〔城山工業 (相

模原市)製作〕

貼り合わせた

2枚の間には正 4面体が周期的

. 5に示すように 図6

3角錐については点を 6

.4( g )) 、このパネルも平行 6面 に配 され [ 図6

角 形、稜線を長方形に 、 4角錐については点

体の空間充填形に基づいていることが分かる。

を 4角 形 、 稜 線 を 長方形にする改良を 加 え、

コアパネルの角錐からなるパネル片は角錐

糊代部を充分設けたモデルを開発した (39)。

の先端はとがり 、稜線はカド張る 。 また 、 2 枚のパネル片を接合する際 、接合面が少なく 、

( b ) コアパネルの試作 (13、14、40)

ものづくりのためには改良を要する 。 これに

上述したコアモデルを基に 、 プレス加工に

対処するため 、幾何学的観点から検討を加え

よってプラスチック 、鋼板、アルミ 合金製の

. 8-2 . 1 0で用いた正多面体の頂点や た。図 2

6( a )( b)は パ ネ ル 片 が 製 作 さ れ た 。 図 6.

稜線を削って半正多面体を作る手法を応用し、

PETで 試 作 し た各々 3角 錐 形 状 コア 、頂 点

138

と稜線部に幅を持たせたパネル片である。プ

( c ) コアパネルの利便性

ラスチック製パネルに関しては 、成形性の良

薄い素材で作られたパネル片は、巻き取り

さから比較的低温でも加工が可能であった。

でき 、あるいは 1枚の平坦な紙のように重ね

図6 . 6( c )( d )は鋼板とアルミ合金板製のパ

て積み置きできるため 、小 スペースでの保管

ネル片である。パネルは平板のみならず 図

ができる。それゆえ 、ロ ケットのフェア リン

6 . 6( e )-( g )のような 曲面版も試作されてい

グ部の 小 さなスペースに収納 し 、 宇宙空間で

る。このようなパネルは機械力学的あるいは

巨大構造を建設することなどに利用されるこ

構造力学的観点から 、車両のみならず 、建築

とを夢見て開発されたものであり、 図 6 . 7は

部材や民生品に一部実用 化 されている。

そのような構想を示したものである。

【コラム】 金属結晶の構造と空間充填 ちゅうみつ

金属結晶には体心立方、面心立方、桐密 6方

6面を底面とする 4角錐 6個に立方体を分割し、

金属などがあり、前の 2つが本書で述べた空間

これらを別の立方体の 6面に貼り付けて得られ

充填と関連する 。図 ( a )の体心立方格子は立方

る菱形 12面体〔図 ( b )〕は単独で空間充填する

体の頂点と中心に原子がある 。中心を頂点とし

。 ことを述べた(図 2.48)

( a) 立方体の中心

頂点

( b)

( c )

139

6 .2 平行 6 面 体 に よ る 空 間 充 填 形 を 用 いた コ アパネル

図 6. 7 巻き取ったパネル片を 0 器み合わせ接合し、巨大構造を作るイメージ図

図( c )は原子が最も桐密に並ぶ対角 面を示し

実際の金属では図に示すすべての格子点に原



たものである 。図 ( d )のように面心立方格子の

子が配列されることはなく、線状に欠落した転



原子は立方体の頂点と面の中央に原子が配され

位と呼ばれる線欠陥がほぽ無数と言えるほどに

/ ゞ

る 。 図( e )は面心立方格子の格子点を結んだも

存在する。金属は限界値を超えて強い負荷を受

ので、中央に正 8面体(双対との関連)があり、

けると転位の移動が始まり、あたかも地震の断

その各面の頂点と立方体の 8つの頂点を結ぶと

層すべりのようにナノスケールですべりが生じ



8つの正 4面体が中央の正 8面体の全面に貼り

る。このすべりの蓄積が金属特有の延性をもた

Iヽ

付いた形状、すなわちダヴィ ンチの星型 8面体

らす。転位のすべりはその性質上、最桐密面を

力 ム

になっている〔図 2.46( d ) 。 〕 図( f )の斜めの面

選好する。最も密で強靭と思われる面心立方金

旧 K を見ると、メッシュ状に配された正 3角形

属が実は延性に富むのである。密なるがゆえに

の頂点と立方体の面の中点 A、C、Dを結ぶと

変形しやすいという皮肉な結果である。面心立

正 4面体の列 (AIBE、CBHF、DEFK)が現れる 。

方金属が延性に富む特性は精密な加工に適し、

. 3( h )に示したコアバネルの形状を これが図 6

硬貨やメダルの製作に用いられる。それらは、

与える 。斜めの面上の正 3角形のメ ッシュ 状の

金、銀、銅、プラチナを始めとし、アルミ、ニッ

g )で、この面が最 原子配列を示したものが図 (

ケルなどであり、わが国の硬貨はすべて面心立

も禾周密に原子が配置される面になる 。比較のた

方金属とその合金で作られている。体心立方金属

め図 ( h )に面心格子のセルの側面の原子の配置

には高い強度を持つ (a)鉄、タングステン、モリ

を示す。体心立方格子の最桐密な面の原子の配

ブデンなどがある(鉄は高温で面心立方にもな り 、

列は図 ( i )でずいぶん粗いことが分かる 。

またステンレス鋼も面心立方のものがある)。



6



ネ レ ) と 3 次







面の中心

頂点

J

( d )

( e )

( f )

G

G

ご 140

H

H

( g )

( h )

( i )

>



( a ) 基本の厚さ一定(等厚)のコア

のスリットを含む折り線群は山と谷折り線を

1枚の薄板や紙にスリット/切り抜きを周

、V、M、V ・ ・ ・ )に、鉛直方向の折り 交互 (M

期的に設け 、 これを折り曲げ 3次元化するこ

線群は 山折り線を 2本、谷折り線を 2本 l組

とにより、通常のハニカムコアの製造法では

として交互 (M、M、V、V…)に設けている。

困難な任意の断面形状を持つハニカムコアの

折り線の両側にある矩形の斜線部分 A と Bお

デザイン法を提案した。 図 6. 8( a )( b )は基

よび A 'と B 'の 裏 面 を 貼 り 合 わ せ る [ 図6 . 8

本の等厚のコア模型とその展開図を示したも

( c )J。この糊付けを状況が同じすべての部分

のである。 ここで水平方向の折り線上の太い

で行う。左右を引っ張ると通常の等厚のハニ

実線は切断部(スリット)で、 スリットが 3マ

カムコアになる。 図 6 . 8( d )-( f )は鉛直方向

ス分、未切断部分が lマス分の折り線の繰り

だけを折った状態、水平方向を折って切断部

返しとなっている 。 この折り線の上下には、

が開いた状態、裏面を糊付け後、引き伸ばし

同じピッチで切断部と未切断部が配された折

た状態を各々示す。製作されるコアの厚さは

り線を 2マス分ずらした形で設けている。山

水平方固の折り線間の幅で決まる。

折り線を M、谷折り線を V で表し、水平方向

( a )

( d )

( b )

( c )

( e ) ( f )

図 6.8( a )( b )等厚のコアの外観と基本の展開図(太い実線;スリット)、 ( c )折紙模型の製作過程 ( A、Bの 裏面を糊付け)、 (d)鉛直方向だけを折った状態、 ( e )水平方向を折って切断部が開いた状態、 ( f )糊付け後、 引き伸ばした状態

1 4 1

6 . 3 3 次 元 ハニカム

6 . 3 3次元ハニカム (8、41)

第 6章

( c )

( d)

① ② ③ ④ ⑤ ⑥



コアパネルと 3次 元 の ハ ニ カ ム コ ア

( ロ

( e )

---

( g )

( h )



: : : : : : : : : : _ : : : : ー : : _ ー : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :

・ : :: : :, : : : : : _ : : : : : :, : : : : : : : : : : : : : : : :・ :

:



:

----

aab b c c d

d

e

e

図 6. 9( a )テーパ(傾き)のあるコアの側面の模式図、 ( b )側面固の寸法、 ( c )展開図、傾きの大きさは p値 で決定、 (d)(e)製作過程と模型、 (f)-( h )セルの個数を多くしたときの展開図と模型

( b ) テーパのある(上面が下面に対して 傾斜する)コア

うに描く。結果、水平方向の切断線は 、図 6 . 9

( c )の展開図に示すようにジグザグ形になる。

上記の基本のコア構造に手を加えると色々

水平方向のジグザグのス リットの振幅 pは上

な断面形状のハニカムコアをモデル化できる。

面の傾きの度合いを 示 し 、 b=a+p、c=b

最初に下面がフラットで上面に傾きがある 、

+pとして図を描かれているから 、b-a

すなわち厚さが一様に変化する 図 6 . 9( a )の

=c-b=pとなる 。すなわち、傾きが一

. 9(b)が側 ようなコアをデザインする。 図 6

定となる。基本モデルの場合と同じように 、

. .のように変わると 面図で、高さが a、b、C .

鉛直方向には山折り、谷折り線 2本ずつを組

b-a=c-b=d-c )。 図 する (

6 . 9( c )の

みにして交互に設け 、水平方向の折り線は 、

6 . 9

ように水平方向に太い実線で示されているス

山折り、谷折り線を交互に設ける。 図

リットは 3マス分で同じであり 、裏面を貼り

( c )の 折 紙 模 型 の 製 作 過 程 と 模 型 を 図 6 . 9

付ける①と①、②と②、③と③を 1組とし、

( d )( e )に 、 図6 . 9( f )- ( h )にこれを拡張し

高さがそれぞれ(同じ値の) a、b、cとなるよ

た展開図と作 った模型をそれぞれ示す。

142

ぃ 戸

( c )

D

B

( d)

: B f f i f f i E

A ( g )

( e )

DD

C

( f )

C

( i )

( j ) ( k )

図 6. 10( a )上下面にテーパ(傾き)のあるコアの側面の模式図、( b) 図6 . 9( c )を水平方向の折り線 /切断 4つのパーツをそれぞれ対称に貼 り合わせ、 ( g )( h )貼り合わせで得た 4つの

部で 4 つに切断、 (c)~(f)

パー ツを積み上げて得た展開固と模型、 ( i ) ~ (k) 図 (a) をさ らに対称にしたコアの側面 図 、 展開図とその

折紙模型

( c ) 両側にテーパのあるコア

I

片側テーパの 図 6 . 9( c )を 組 み 合 わ せ て 、

6.1Q( c )-(f)を 得 る 。 得 ら れ た 4つ の 対 称 パーツを鉛直方向に積み重ねたものが図

図6 .10( a )に示 す よ う な 両側 に テ ー パ の あ

6.10( g )である。その折紙模型は 図 6.10( h)

るコアをデザインする。 図 6 .9( c )を 水 平 方

のよう になる 。この模型を 図 6 .10( i )に示す

.10(b)の 向の折り線部で切り離すと 、図 6

ように、対称に配置した模型の展開図と作成

ように A-Dの 4つのパーツに分けられる。

された折紙模型を各々 図 6 .10( j )( k )に示す。

これら 4つをそれぞれ対称に接合すると 、図 143

6 . 3 3 次 元 ハニカム



□ m m 汀n c: 二

(b)IJIDI

第 6章

( d ) 湾曲しと 匪匪のコア

られるが、細か く曲面の形成を行うこと がで

コア パネ ルと 3次元のハ カムコア

テーパのあるコアを基にして、丸みを帯び

きる [ 図6 . 1 1( h ) ]。一方、図 6 . 1 1( i )に示す

た断面形状のコアを設計する方法を述べる。

ように 、タイプ I型の場合にはスリット線で

図6 . 9( c )で示した水平方向のス リットの振

. 1 1 切断後、折り返すと切断後の 2面は 図 6

幅を 図 6 . 1 1( a )のように p>q>「に選ぶと、

( j )のように同一の平面上にくるため、切断角

図6 . 1 1( b )の模型のように徐々に傾きが小

を選ぶことで凸 、凹曲面いずれの製作にも 対

さくなり 、丸みを帯びた凸の断面のコア模型

応できるが、 2つの切断面が 1組になるため

がデザインできる。ここで、この模型は 図

曲面の形成が粗くなる性質がある。

6.10( j )と同じように左右対称に接合して

所望するコアの断面が決 まれば、最初 、上

作った展開図を用いた。スリットの振幅を 図

下面、さらには左右面に分けてスリットを構

6 . 1 1( c )のように p q>「)、上面が凸面状、 (b)凸面の模型、 ( c ) スリットの振幅 p、q、「 ( p +1

とができる。 1つは黄金 の鈍角 2等辺 3角形

( 2 )

と呼ばれる L ' . ' . l F A Bのような頂角 1 0 8 °、底角

図 A2( b )に示すように、黄金の鈍角 2等

3 6 ° の 2等辺 3角形、もう 1つは黄金の鋭角

辺 3角形は小さな鋭角 2等辺 3角形と 2つの

2等辺 3角形と呼ばれる L ' . ' . l A F Jのような頂角

鈍角 2等辺 3角形でできており、底辺 と等辺

36° 、底角 72°の 2等 辺 3角 形 で あ る 。 4

の長 さの比は 黄金比である 。図 A2( a )の 4

ABGは鋭角の 2等辺 3角形であるから、辺

ACDの黄金の鋭角 2等辺 3角形は黄金の鈍

A Gの長さは 1である。すなわち、 CG=X

角 2等辺 3角形と鋭角 2等辺 3角形か らでき

-1である。 L ' . ' . l A B CとL ' . ' . J B G Cは相似である

てお り、この 3角形 も底辺と等辺の長 さの比

から、これ らの 3角形の辺の比の関係より、

c)に示す。 は黄金比であ る 。 これを 図 A2( 黄金比は正 12角形 に関連す る正 12面体 、

X/1= 1/(X- 1 )となる 。すなわち 、次式を

A凡

A

、] , c 9 [`

( b )

( a )

E

B

B

D 図 A2 ( a )正 5角形の対角線による分割 、 黄金の鋭角 2等辺 3角形と鈍角 2等辺 3角形が多数出現、( b ) ( c )黄金の鈍角 2等辺 3角形(頂角 108 ゜ ) と黄金の鋭角 2等辺 3角形 (頂角 36° )

166

付録2

正2 0面体などの正多面体やサッカーボール

比に分割する点を与える 。

な幾何学模型の寸法諸値に頻繁に表れるきわ

( c ) フィボナッチ数

めて重要な数値である。

黄金比、黄金角に関連する数列にフィボ ナッチの数列があり、

l、1、2、3、5、8、1 3、2 1、34、55、89、

( b ) 黄金分割と黄金角

a )に示すように線分 AC(長さ 1 )を 図 A3(

1 44、233、3 7 7 ・・・

黄金比に分割することを黄金分割と言う。す

のように表される。 この数列は 1からスター

なわち b /a=¢ である 。この比に分割すると

トし、各項はその前の 2項の数の和、例えば

a=l/(¢+l)、b=¢/(¢+1)となる ( a

34はその前の 2数 、 21と 1 3の和である。こ

+b=1 )。aと bを よ り 簡 易 に 表 記 す る と

の数列の隣り合う項の数比は無限大のとき 、

a )の下部、算出式参照 ] [ 図 A3(

黄 金 比 に な る な ど の 性 質 を 持 つ 。 例 え ば、

; :0. 61 8( 3 ) a=2¢ : : : : ; :0. 3 8 2、 b=¢-1:

3 4 / 2 1: : ; :1 . 6 1 9で黄金比 ¢にきわめて近い値 となる。黄金比¢ とこの数列の関係の一例を

となる。また、 ( a+b )/ b=1 1(¢-1 )=¢

示すと以下のようになる。式 ( 2 )を用いて、 順

となり、全長 ( a+b)と分割後の大きなほう

次、 両 ) を算出する。

の長さ bの比もまた黄金比となる。

a )を丸めて円にしたものを 図 A3 図 A3(

炉 =1¢+1

( b )に示す。 ここでは、小さい弧 aの部分の

¢3=¢ 2 ¢ =(¢+1 )q J=¢ 2 +q J

p=360°X( 2- < / J ): ; :1 3 7 . 5 0 7 7 6°を 角度
a=1 1(< / >+1 )=( < / >1 )II ( < / >+1 )( < / >1 )l=( < / >-l lI( < / >2 -1 ) =( < f > 1) /< f > =( 2< / > < / >りl< / > = 2 < f > = ; , 0. 382 b = < f >l( < f > + l )= < / >( < f > 1 )/{ ( < f >+l)( < / > l l l =< / >(< / >-1 )/(< / >2 -1 )=< / >(< / >-1 )/< / >=< / >-1= ; ,0. 618

図 A3 ( a )長さ 1の直線を黄金比で分割 (bla=の ) 、 (b)黄金角山;円周長を黄金比で分割したときの短

いほうの円弧が中心に張る角度

167

黄 金 比 、 黄 金 角 と フ ィ ボ ナ ッチ数

などの半正多面体、星型正多面体などの重要



¢4= ¢2 ¢2=(¢+l)(¢+1)



大きくすると、隣り合う数の比が黄金比に近

=炉 +2¢+1=(¢+1 )+2¢+1

付くため、最も無理数に近い有理数といわれ

=3¢+2

ることもある。

¢5 = ¢3 ¢2=(2¢+1) (¢+1) =2炉+3¢+1=5¢+3

フィボナッチ数列は、生物、特に植物の葉 や花の螺旋状の配列の説明に頻繁に用いら

が=8¢+5

れてきた。松ぼっくりの球果[ 図 3 . 2( f )l やひ

炉 =13¢+8

まわりの種子の配列( 第 4章コラム )の模様

炉=21¢+13

に見 られる、時計回り と半時計回りの螺旋の

5と 8 ) 数は連続する 2つのフィボナッチ数 ( すなわち、炉は¢ の 1次式 p¢+qの形

や( 2 1と 34)からなっており、これらの配列

で表され、係数 pと qはフィボナッチ数列の

や模様がうまく説明できるとされる。なお、

隣り合う 2数である 。こ れらの式から、黄金

これらの螺旋は本文の 図 3 . 2( h )で述べたよ

比 ¢ とフィボナッチ数には強い相関関係が

うに、等角螺旋で描かれた生成螺旋上に黄金

あることが分かる。フィボナッチ数は公約数

角で等間隔に配置された点を結んで作られ

を持たないことがその特徴で、項数を無限に

ている。

168

図 A4に示すように、円形膜円(半径; R ) 。

張る角を j◎ とする。角¢ と

xを交互に取

の外周上の点 A から右上方向に 、半径方向と

り、点 H、I 、J …を定める。この組合せを 1

角度↓ をなす線分 ABを引く。ここで線分

組としてジグザグの(副の)折り線②を描く。

ABが中心に対して張る角を n◎ とする( 図

(M/2)回ジグザグを繰り返して点 Iに来ると

4.15においては、 n8を a、後述の m ◎ と

し、医のように点 Iが点 Bと一致する場合を

霞を

Bで表している)。次に点 Bから同じ

l段上がり 、点 Iが点 C と一致する場合を 2

角 り と n◎ を用いて線分 BCを描き、順次

段上がりと呼ぶ。図は 1段上がりのモデルで

同様の手順で、点 C、D…を定める。これら

. .からも、螺旋①を得たのと ある。点 H、J

の点を結ぶと等角螺旋を形作る。これを(主

同様に角度↓ で等角螺旋群を描き、 これら

の)折り線①と呼ぶ。次に点 A から反時計回

を折り線③、④とする。

りに動いた外周上の点 Eから左上方向に、半

乙ABH= c j J+ X+ ( n+j )e、乙 JBC=

径方向と角度¢ をなす線 EFを引き、線分

c j J+¢ であるから、 1つの代表点、点 Bで

EFが中心に対して張る角を m 8とする。次

の折り畳み条件は

に、点 Fから半径方同と角度

xをなす線分

FGを引く。ここで線分 FGが中心に対して

¢+2