理工学,および経済学や統計学への応用のために学ぶ読者を対象に,線形代数を初歩から解説. 紙数を惜しまず,例や説明を豊富に入れ,わかりやすさに努めました. また,定義の仕方から例,演習問題に至るまで,全体的に応用する立場に立って書きました.
213 69 11MB
Japanese Pages 336 [333] Year 2013
Table of contents :
はじめに
目次
第1章 ベクトル
1-1 2次元・3次元ベクトル
1-2 高次元ベクトル
1-3 抽象的ベクトル・公理論的ベクトル空間
第1章の演習問題
第2章 2次元・3次元ベクトルの1次変換と2次・3次正方行列
2-1 線形写像と1次変換
2-2 2次元(平面)ベクトルの1次変換と2次正方行列
2-3 3次元(空間)ベクトルの1次変換と3次正方行列
第2章の演習問題
第3章 行列(一般論)
3-1 線形写像と行列
3-2 行列の和と差・スカラー倍
3-3 行列の積
3-4 行列式
3-5 逆行列
3-6 線形写像の核
3-7 線形写像(行列)の階数
3-8 連立1次方程式
3-9 行列の区分けによる演算
3-10 行列の一覧
第3章の演習問題
第4章 固有値と座標系の変換
4-1 固有値と固有ベクトル
4-2 固有値問題の紹介
4-3 座標系の変換・行列の相似
4-4 実対称行列の固有値と固有ベクトル
4-5 ハミルトン-ケイリーの定理
4-6 固有値の摂動展開(固有値の近似解法I)
第4章の演習問題
第5章 正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解
5-1 実対称行列と正規行列の対角化
5-2 一般の正方行列の対角化
5-3 2次形式
5-4 固有値の変分表現(固有値の近似解法Il)
5-5 対角化できない正方行列の標準化
5-6 非正方行列の特異値分解
第5章の演習問題
第6章 固有値問題
6-1 条件付き極値問題
6-2 2次曲線の分類
6-3 数列の連立漸化式から一般項を求める方法
6-4 主成分分析【統計学】
6-5 複合振動系【力学】
6-6 歪みと応力【弾性体力学】
6-7 遷移確率行列・マルコフ過程【確率論・統計物理学・数理経済学】
6-8 レオンチェフ・モデル【数理経済学】
6-9 微分方程式I 微分方程式の解曲線群の大域的性質
6-10 微分方程式Il 微分方程式の固有値問題 (シュトゥルム-リウヴィルの固有値問題) [13, 第6章]
6-11 微分方程式III 係数特異点の分類
第6章の演習問題
演習問題の解答
1-1
1-6
1-8
1-13
2-1
2-7
2-10
3-1
3-5
3-7
4-1
4-2
4-3
4-7
5-2
5-3
5-5
5-7
5-11
5-13
6-1
6-3
6-4
6-5
6-6
6-8
6-12
参考文献
あとがき
索引
●本書のサポート情報を当社 Webサイトに掲載する場合があります. 下記の URLにアクセスし,サポートの案内をご覧ください. http://www.morikita.eo.jp/support/
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はじめに
大学教養課程で線形代数を学ぶ学生の 9 5%以上は,各分野の問題に応用すること を目的に数学を学ぶ,数学以外を専攻する学生である.それゆえ,線形代数の講義お よびテキストは,応用のために学ぼうとする聴講者,読者を念頭におくことが求めら れている.本書は,より高度な線形代数につなげる線形代数入門ではなく,理工系の 科学者・技術者また経済学や統計学への応用を志向する読者のために,応用のための 線形代数を初歩から解説することを目的としている.中でも,実験・観測・資料など の分析に統計学を利用する分野は,物理学・工学のみならず,経済学・政治学・ 心理 学・教育学・ 薬学・医学・ジャーナリズムなど多岐にわたっている. ある点を基準とした相対的な位置,位置の移動である変位,その微分である速度, 加速度そして力も,さらに電場・磁場も,すべて大きさのみならず向きをもつ「有 向線分」すなわちベクトルである.それゆえ線形代数を初歩から学び始める読者にと り,物理現象を記述する道具ないし言葉として,ベクトルに習熟しておく必要がある ことは十分納得できる. ところが行列はというと,それがベクトルからベクトルヘの写像を表現するもので あることは理解できても,行列を、学ぶことがどのように役立つのか,ベクトルの場合 ほどにははっきりしない.連立 1次方程式を解くだけなら中学で解決ずみである.固 有値問題も一見すると,連立微分方程式の解が一意的に定まらない特異例のように見 え,それがどのような果実(成果)をもたらすのか,いま一つはっきりしない.理工系 の大学生の大半が必修科目として教養課程で履修せざるを得ない線形代数の講義は, 学生にとって「難しかった割に何の役立つのかわからない」まま時間切れとなること が多いのではないだろうか 実は,理工系および経済学・統計学を履修する大学生,科学者,技術者に対して,線 形代数が与えてくれるもっとも重要な果実は固有値問題である.本書は,第 6章にお いて幅広い分野に固有値問題を取材し,固有値問題を解くことが理工学・経済学・ 統 計学などの諸分野の問題を解決するのにどう役立つかのを具体的に示し,科学者・ 技
i
はじめに
術者に線形代数の学習指針• 学習意欲を与えようと意図するものである.著者の知る
範囲においてなるべく広い分野から固有値問題を収集したので,やや専門的なものや 微分方程式論など大学初年度では学習していない題材も含まれているが,後年これら の果実を収穫することを楽しみに読んでいただきたい. 高校では,これまで 2年次に数学 Bで平面および空間ベクトルを学び, 3年次に数 学 C で主に 2次正方行列を学ぶことになっていたが,平成 24年度入学以降の高校数 学教育からは行列が完全に削除されてしまった.大学で一般的な(抽象的な)線形代数 を学ぶ前の準備として,視覚的にも理解しやすい 2次.3次正方行列で線形代数を学 ぶ訓練をすることは大変有意義であったのに残念な教育課程の変更である.本書では この事態に対処して,つまり,高校で行列について何も学んでいない大学初年度の学 生を念頭に,平面および空間ベクトルおよび 2次 .3次正方行列からやや詳しく説き 起こすこととした. なお,それぞれの章で詳しく述べるが,応用のために線形代数を学ぶ読者を意識し て,内積・外積・行列式の定義を,数学の専門家の著したテキストとは異なる流儀で 与えることにした. また,本書全体にわたり,例題および演習問題を選択する際,数学を専攻しない学 生には重要でない「純粋数学」的題材より,理工学および経済学,統計学への応用を 重視した.
2013年 9月 著 者
ゾ
目 次
第 1章 ベ ク ト ル 1 1
1
2次元・ 3次元ベクトル. .• •. .• .• .• • .• ...• ......• • • .
1
1 : 1 1 ベクトルの相等................................... 2 1 1 2 ベクトルの成分. .• ..............................• . 3 1 1 3 ベクトルの和と差 .....• .......• ..............• .... 4 1 1 4 ベクトルの実数倍 ................................. 7 1 1 5 内 積 . • ......• ....................• .......• .• . . 1 0 5 1 1 6 シュヴァルツの不等式. ..• .......• ................... 1 1 1 7 ベクトルの 1次独立.1次従属.....• ..• .......• ......... 1 5 9 1 1 8 ベクトルの分解. .• • ...........................• .• . 1 1 1 9 外積.....
............................... 2 2
1 1 1 0 図形への応用(ベクトル方程式) ........• .......• ......... 3 4
9 1 2 高次元ベクトル... :..• .• • .• ..• ...• ............ 3 1 2 1 ベクトルの相等........• . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
40
1 2 2 ベクトルの和と差 ........• ...• .................... 4 1 1 2 3 ベクトルのスカラー倍.....
.................. 4 1
1 2 4 内積..............................
.......... 4 2
1 2 5 シュヴァルツの不等式. .........• • ................... 4 3 3 1 2 6 ベクトルの 1次独立・ 1次従属. ....• ................• ... 4 1 3 抽象的ベクトル・公理論的ベクトル空間. .• ....• ....• .• .. 46 1 3 1 ベクトル空間と計量ベクトル空間
....•....•..............
4 6
1 3 2 部分(ベクトル)空間.......................• . . . . . • . . .
4 9
1 1 3 3 正規直交系 ....• ...........• ...............• .... 5 第 1章 の 演 習 問 題 . • ..• .• ..• ....• ..........• .• .• • .•
第 2章 2 1
2次元・ 3次元ベクトルの 1次変換と 2次 .3次正方行列
線形写像と 1次変換. ...• • • ..• • • • .• • .......• .• • .•
52 54 54
2 2 2次元(平面)ベクトルの 1次変換と 2次 正 方 行 列 . ........... 56 0 2 2 1 行列の相等...• ........................• ........ 6 0 2 2 2 行列の和と差・スカラー倍......................• ..... 6 1 2 2 3 行列の積.....• ............• ....• .........• ..... 6 2 2 4 2次元ベクトルの回転・座標系の変換
................. 6 4
9 2 2 5 逆行列と行列式.........• ...• .........• • .........• 6 2次 ) .............• ......• ... 7 4 2 2 6 ハミルトンーケイリーの定理 ( 2 3 3次元(空間)ベクトルの 1次変換と 3次 正 方 行 列 . ........... 74 9 2 3 1 行列の相等・................• .• • .....• ............ 7 9 2 3 2 行列の和と差・ スカラー倍....• .................• ..... 7 0 2 3 3 行列の積.....• ..............• .........• ........ 8 2 2 3 4 3次元ベクトルの回転・座標系の変換........•. .......• ..... 8 4 2 3 5 逆行列と行列式'.• . . . . . . . • . . . . :• ..• ................• 8 3次)....... 2 3 6 ハミルトンケイリーの定理 (
............ 9 1
第 2章 の 演 習 問 題 . ................................ 9 1 第 3章行列(一般論)
3 1
94
線形写像と行列................... ;........... 94
3 2 行列の和と差・スカラー倍...
..................... 98
3 3 行列の積....................... 3 4 行列式
........... 99
........................ 1 0 3
0 3 3 4 1 行列式の定義.................................... 1 0 7 3 4 2 行列式の性質.................................... 1 3 5 逆 行 列 . ................................... 110 3 6 線形写像の核
・・・・・・・・・・・・・・・・. ・. ............. 1 12
1 5 3 7 線形写像(行列)の階数........................ :.. 1 3 8 連 立 1次方程式 ............................... 1 1 7 1 8 3 8 1 行列の基本変形・基本行列............................ 1 2 0 3 8 2 ガウスの消去法................................... 1 2 3 3 8 3 階数による解の分類................................ 1 3 8 4 行列の基本変形による逆行列の求め方・ ・• ・・· . . • • . . . . . . . . . . . . 1 2 4 2 7 . 3 9 行列の区分けによる演算.......................... 1 2 7 3 9 1 行列の積....................................... 1 2 8 3 9 2 行列式の計算.................................... 1 2 9 3 9 3 逆行列の計算...........................•......... 1
3 1 0 行 列 の 一 覧 . • • • • .• • ....• .• • • • .• .• .• .• • .• ....• 1 3 0 第 3章の演習問題................................. 1 3 4 第 4章
4 1
固有値と座標系の変換 固有値と固有ベクトル
135 • · • • . . . •• • ・・• ・•. ..• ...• • • • • 1 3 6
4 1 1 固有値と固有ベクトルの基本性質 •••••••••••••••••••••••• 1 3 8 4 1 2 固有値と固有ベクトルの求め方.......................... 1 3 9 4 2
固有値問題の紹介.............................. 1 4 4
4 3 座標系の変換・行列の相似......................... 1 4 5 4 3 1 抽象的ベクトル空間への基底の導入.........
...... 1 4 6
4 3 2 座標系(基底)の変換....:••••••••••••••••••••••••••• 1 4 7 牛3 3
直交変換•直交行列................................
1 5 0
5 4 4 4 実対称行列の固有値と固有ベクトル.................... 1 4 5 ハミルトンーケイリーの定理....... 4 6
.............. 1 5 6
固有値の摂動展開(固有値の近似解法 I) ..
..... 1 5 7
第 4章の演習問題................................. 1 6 0 第 5章
5 1
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解 実対称行列と正規行列の対角化....
1 6 2
................. 1 6 3
6 3 5 1 1 実対称行列の対角化................................ 1 5 1 2 正規行列の対角化..;••••••••••••••••••
............ 1 6 7
5 1 3 実対称行列と正規行列のスペクトル分解.. ...........
..... 1 7 1
5 2 一 般 の 正 方 行 列 の 対 角 化 . • ..• .• • ....• .• ...• • .• • • .. 1 7 5 5 3 2次形式.......... 5 4
.................. 1 7 7
固有値の変分表現(固有値の近似解法 I l ) ................. 1 7 9
8 2 5 5 対角化できない正方行列の標準化..................... 1 5 5 1 ベキ零行列 ••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 1 8 4 5 5 2 ベキ等行列 .......................
.... 1 8 5
8 6 5 5 3 固有空間....................................... 1 5 5 4 ジョルダン標準形 ................................. 1 9 0 5 6 非正方行列の特異値分解.......................... 1 9 9
第 5章の演習問題..... 第 6章 固 有 値 問 題
6 1
...................... 202 204
条件付き極値問題.............................. 205
v i
目 次
6 1 1 ラグランジュの未定乗数法............................ 2 0 5 0 7 6 1 2 2次形式の条件付き極値問題........................... 2 •..••••.....•••••..•...•••••... 2 11
6 2 2次曲線の分類 6 3
数列の連立漸化式から一般項を求める方法................ 220
6 4 主成分分析【統計学】.....
.................. 227 ........ 234
6 5 複合振動系【力学】.... 6 6 歪みと応力【弾性体力学】.......
................ 236
3 7 6 6 1 歪みテンソル .................................... 2 6 6 2 応カテンソル .................................... 2 3 9 6 7 遷移確率行列・マルコフ過程【確率論・統計物理学・数理経済学】... 242 6 7 1 決定論的過程と確率過程.
............... 2 4 2
6 7 2 確率変数.・・・.'......
............... 2 4 3
6 7 3 マルコフ過程と一様マルコフ過程 ..........
........:. .2 4 3
6 7 4 遷移確率行列と固有値問題..... ....................... 2 4 5 4 8 6 7 5 ペロンの定理.................................... 2 6 8
レオンチェフ・モデル【数理経済学】.................... 253
6-9 微 分 方 程 式 I 微分方程式の解曲線群の大域的性質........... 255 6 9 1 1階連立微分方程式 . . . . . . . . . • . . . . . . • . . • . . . . . . . . . . . . 2 5 5 6 9 2 定数係数線形斉次 1~Jji:立微分方程式...................... 2 5 6 6 9 3 線形常微分方程式の位相平面解析 . . • . . . . . . . •• ............. 2 5 9 6 9 4 非線形常微分方程式の位相平面解析ー解曲線群の大域的性質の解析..... 2 6 2 I 微分方程式の固有値問題..... 6-10 微分方程式 I
.......... 266
6 6 6 1 0 1 フーリエ級数と微分演算子のスペクトル分解.................. 2 6 1 0 2 変分法........................................ 2 7 2 6 1 0 3 差分方程式..................................... 2 7 5
6 1 1 微分方程式皿
係数特異点の分類........
第 6章の演習問題..
............ 277 .... 284
演習問題の解答
288
参考文献
318
あとがき
319
索 引
320
章
第
ベクトル
ベクトル ( v e c t o r ) _という概念が出現する以前,数学が取り扱ってきた「量」は単一の 数たとえば長さ,面積体積時間,質量,比重,弾性率,温度,比熱,熱伝導 率,電荷,抵抗などのように,なんらかの尺度で測った「(符号を含む)大きさ」のみ を示すものであった.一方, 2次元平面あるいは 3次元空間内の現象に現れる物理量 の中で,(ある点を基準とした相対的な)位置,位置の移動である変位,その微分である 速度,加速度そして力,さらに電場・磁場などを過不足なく表現するためには,それ らの大きさのみならず向きも指定する必要がある.このように大きさ(長さ• 絶対値)
と向きをあわせもつ量をベクトル(詳しくは数ベクトル)と呼ぶ. 本章では,物理学を記述する言葉として登場した 2次元.3次元(数)ベクトルを,物 理との関連をやや強調しつつ論じ,最後にそれを一般化した,高次元ベクトル ( 1 2節 ) と抽象的ベクトル・公理論的ベクトル空間 ( 1 3節)まで解説する. 2次元・ 3次元(数) ベクトルの内容は第 2章「2次 .3次正方行列」に,また後半の内容は第 3章「(一般 の)行列」に引き継がれる.
1 1 2次元・ 3次元ベクトル 2次元(平面) .3次元(空間)ベクトル(以下, 1 1節では単にベクトルとかく)は有向 線分(矢印)で表すことができ,有向線分の長さと矢印の向きが,それぞれベクトルの
1のように始点 0 と終点 A を明記して 大きさと向きを示すベクトルは図 1 す場合と,一つのアルファベットに矢印をつけたもの
0 Aと表
v ,あるいは太字 F などと表す
場合がある.本書では,例外を除いて,アルファベットの太字でベクトルを表す.数 学としての線形代数においてはもっぱら小文字を用いるが,物理学においては力 F ,
ル A
゜
寸 ------
\
図1 1 ベクトルの表示方法 電場 E など大文字も用いる.なお,符号を含む大きさのみをもち,単一の数で表すこ
s c a l a r )と呼ぶ. とのできる量を,ベクトルに対比してスカラー ( ベクトルの演算のうち,加法・減法および実数倍は,誰が考えてもそうとしか定義 しようのないもっともな定義がなされるが,ベクトル同士の乗法には,内積と外積の 2種類があり,
しかも高校教科書で採用されている定義式の中に二つのベクトルのな
す角の余弦ないし正弦が現れることには,唐突感を抱く高校生も多いことだろう.本 書では,物理学に応用すべく 2次元・ 3次元ベクトルが登場した歴史的事実を重視し, どのようにして内積と外積の概念が生まれる必要があったのかを説明し,それに沿っ た,必然性の理解しやすい内積と外積の定義を用いる.
● 1 1 1 ベクトルの相等 ベクトルはその大きさと向きを指定すれば完全に定まる. したがって,有向線分で あるベクトルには始点と終点があるが,等しい二つのベクトルは始点と終点がそれぞ れ同じである必要はなく,平行移動により完全に重なる二つのベクトルは,大きさと 向きが一致するゆえ等しい.図 1 2の二つのベクトル F 1 ,凡は,大きさと向きが等し
3において等しい力 F 1 ,凡 の 物 体 いので等しいベクトル(力)である.とはいえ,図 1 A への働きが同じだというわけではない.一般に,二つの等しい力(ベクトル)であっ てもその作用点が異なるとき,物体の回転に影響を与える力のモーメントは異なるか
1 1 9項 ) . らである (
F1 F2 F2
図1 2 等しいベクトル
図1 3 等しいベクトルの異なる作用
1 1 2次元・ 3次元ベクトル
そこで,すべてのベクトルの始点を座標原点にとることにすれば,ベクトルの終点 の座標が個々のベクトルと一対ーに対応する.つまり, 2次元ベクトル全体は 2次 元 平面上の点全体と一対ーに対応し, 3次元ベクトル全体は 3次元空間内の点全体と一
2次元ユークリッド空 対ーに対応する.すなわち, 2次元ベクトル全体と 2次元平面 ( 3次元ユークリッド空間)は等価 間)は等価であり, 3次元ベクトル全体と 3次元空間 ( である.
● 1 1 2 ベクトルの成分 2次元ベクトル aの始点を 2次元デカルト座標 ( C a r t e s i a nc o o r d i n a t e s , または直角座
標 t( r e c t a n g u l a rc o o r d i n a t e s ),xy座標)の座標原点としたときの aの終点の x-y座 標 ~ax, a y )をそのベクトルのそれぞれ x , y成分といい,
a = ( : )
( 1 1 1 )
と表記する(図 1 4 ) . また, 3次元ベクトル aの始点を 3次元デカルト座標 ( x-y-z座標)の座標原点とした ー
a x a y a z [
ときの aの終点の x-y-z座 標 ( a x ,a y ,a 2 )をそのベクトルのそれぞれ x , y , z成分といい,
a
=
( 1 1 2 ) 、)
と表記する(図 1 5 ) . 式( 1 1 1 ,2 )の右辺をベクトルの成分表示という.二つのベクト ルが等しいとき,二つのベクトルの各成分がそれぞれ等しい.逆に,二つのベクトル の各成分がそれぞれ等しいとき,二つのベクトルは等しい. 三平方の定理により,ベクトルの大きさを次のように成分で表すことができる. z
y
a z
y
゜
: '
ax
a xD -立 ' ,
X
X
図1 4 2次元ベクトルの成分
図
1 5 3次元ベクトルの成分
t 直交座標 ( o r t h o g o n a lc o o r d i n a t e s )は,直角座標のほか極座標,球座標,円筒座標など,局所的に座 標軸が直交するものの総称である.
ニj
l a l ={ a 7 x
( 2次元)
lal=~
( 3次元)
I[単位ベクトルと基本ベクトル] 一般に,大きさが 1であるベクトルを単位ベクトル ( u n i tv e c t o r )と呼ぶ.
とくに,デ
カルト(直角)座標軸の正の向きをもつ単位ベクトルを基本ベクトル ( b a s i sv e c t o r )と呼 ぶ. 2次元ベクトルでは,
三(~)
三 じ ) ,
e x
e ,
がそれぞれ x , y軸の基本ベクトルであり(図 1 6 ) , 3次元ベクトルでは,
e x: 三
[ H. , 三:[〗J, n r e ,: 三
がそれぞれ x , y , z軸の基本ベクトルである(図 1 7 ) . ここまで, 2次元ベクトルと 3次元ベクトルそれぞれを併記してきたが, 3次元ベク トルの記述から対応する 2次元ベクトルの記述を類推することは容易であるから,本 節の以下では例外を除き, 3次元ベクトルについての記述に限ることにする.
z
y 01 ex
y
e y X
X
図1 6 2次元基本ベクトル
図1 7 3次元基本ベクトル
1 1 3 ベクトルの和と差 図1 8において,点 0 から点 A に移動しさらに点 A から点 B に 移 動 し た と き あ わせて点 0 から B に移動したことになる.そこで,変位ベクトル
QAと囚6 の和を
魂と定義するのが自然である.また,図 1 9において,川岸に対する川の流れの速度 ベクトルを
VRO,
川の流れに対する船の速度ベクトルを
VBR とすると,上で定義した
1 1 2
川岸 !~~鵡災P&&M#!iii!ilk亨瓢疇“““麟曇~~ ~~
上流
VBR
⇒下流
、 ; : : : , : : p > A 攣―鷲[i竺'令@'m、~ 疇瓢疇"璽疇彎”疇”冑””瓢胃疇疇疇疇疇
川序
図1 8 ベクトルの和
ように,
VRO の終点
図1 9 速度ベクトルの合成
A に VBR の始点を一致させたときの収oの始点 0 から
B に向かうベクトル
o oが川岸に対する船の速度ベクトル v
VBR の終点
+VBR
V =VRO
である. 上の和の定義は,加え合わせる二つのベクトルの始点を一致させたときの,始点から 平行四辺形における対角の頂点に向かうベクトルと言い換えることもできる(図 1 8 ) . したがって,和は成分表示では
a=[:lb=[~)
に対して
a+b=[~ 冒
( 1 1 3 )
となる.
● [位置ベクトル] すべてのベクトル rの始点を原点 0 にとることにすれば,すでに述べたようにベク
6 P自身とその終点 Pが一対ーに対応する.
トル r=
y Y I -一 ― ― ― み P(x,y )
゜
X
X
図1 1 0 位置ベクトル
このとき,ベクトル rの終点の
6
第 1章 ベ ク ト ル
座標とベクトル rの成分が一致する.つまり,ベクトル rは点 P を表すことができる ので,位置ベクトル ( p o s i t i o nv e c t o r , または l o c a t i o nv e c t o r )と呼ぶ(図 1 1 0 ) . 内角の 2等分線 ( I )( 例1 3に再訪)
→
→
→
LAOBの 2等分線上の任意の点 Pの位置ベクトル OP=pは , OA=a ,OB=bを
) ユ
p = k ( ! ! : _
J a l J b l
.
用いて,
( k :実数)
と表すことができる(図 1 1 1 ) .
A
゜
図1 1 1 角の 2等分線
● [逆ベクトルと零ベクトル]
ve~) と呼ひ—aとかく 成分表示ては—a= =:J
ベクトル a=[: と大きさが等しく向きが反対のベクトルを,ベクトル aの逆ベ
クトル ( i n v e r s e
[
となる(図 1 1 2 )
また,大きさが 0であり,それゆえ向きを定義できないベクトルを零ベクトル ( z e r o
v e c t o r )と定義し, 0とかく.成分表示では 0=(~
となる.
零ベクトルは「大きさと向きをもつ量」という。[クトルの条件に反するようである が,今後の理論の記述の便宜のためにベクトルに含むことにする.これは集合論にお いて,ある条件を満たす要素の集まりを集合と定義したのにもかかわらず,要素のな い集合として空集合を導入するのと同様の取扱いである.
,bの差を a-b=cと定義する(図 また, b+c=aであるとき,二つのベクトル a 1 1 3 ) . 成分表示では,
1 1 2次元・ 3
bv a-b= C
図1 1 2 逆ベクトル
図1 1 3 ベクトルの差
( 1 1 4 )
a-b=[:=::J となる.
1 1 3 ,4 )より,以下の性質を容易に導くことが 成分を用いたベクトルの和と差の式 ( できる.
a+b=b+a
(交換の法則)
(a+b )+c=a+( b+c )
(結合の法則)
したがって, a+b+cとかける
O+a=a+O=a a+(-a)=a-a=0
1 1 4 ベクトルの実数倍 ベクトル aの正の実数 A倍 Aaは,ベクトル aの向きを保ったまま,大きさを A倍
1 4 ) . Aが自然数であれば,ベクトル aの A倍は,ベクトル したものと定義する(図 1
aを A個加えたものと一致する(図 1 1 5 ) . すなわち, Aa=a+a+ ・・ ・+a( aが A個 ) である. ベクトル aの負の実数 A倍は,ベクトル aの向きを反転し,大きさを川倍したも iが負の整数であれば,ベクトル aの A倍は,ベクトル aの逆ベクト のと定義する. ;
ル—a を凶個加えたものと一致する(図 1-16).
ベクトルの実数倍を成分表示すると
ン/ン/ 図1 1 4 ベクトルの 実数倍
図1 1 5 ベクトルの 自然数倍
図1 1 6 ベクトルの 負の整数倍
8
第 1章 ベ ク ト ル ー
[axayaN
a
=
Aa=[~]
に対して
となる.
冒[ベクトルのスカラー倍汀
[A A=A
成分表示を用いると,複素数 Aを含むスカラー倍を次のように定義できる.
axayaN
ー
a
A
( 1 1 5 )
2次元・ 3次元の実ベクトルを扱う場合にも,たとえばベクトルの回転を表現する行 列( 2 2 4項)の固有値 ( 4 1節)は複素数であるので,複素数成分の演算が必要になる. ただしこのとき,ベクトル Aaの幾何学的意味すなわち,大きさと向きは失われる. 成分を用いたベクトルのスカラー倍の定義式 ( 1 1 5 )より,以下の性質を容易に導く
A , μ はスカラー). ことができる ( A ( a+b )=la+Ab
(分配の法則)
( A+μ)a=Aa+μa
(分配の法則)
A ( μ a )=( A μ ) a
(結合の法則)
したがって, i l μ aとかける.
la=a Oa=0
( l ) a=-a
I[微分演算子 I] 物理学では 3次元ベクトルに作用する(偏)微分演算子が頻出する.たとえばベクト ルに作用する線形演算子である.時間 tによる微分演算子を,それが各成分に作用す るものと定義し,位置ベクトル
口 () i
r ( t )=
と速度ベクトルの関係を次のように簡潔に表現することが可能になる.
t 以下,
とくに断らないかぎり,スカラーは複素数を意味する
1 1 2次元・ 3
ー‘、
ハ ン 血如 ︵ Nク テ d-dtd-dtd-dt ポ こベ
ー -l
〇関ょ H、 d-dt
=︶ り ︵ス vbl
ナ
ブ
子 算 演
分 微
偏 レ ︶
卜 ク
ベ
こ‘
る す 用 作
d
凡現
,
▽f ( x , y , z )三
ハ し
て
8 a x 8 a y 8 a z
その演算を
い表
f
︶ し レ ︶ と ア
卜
レ
/︶
(i 数う
一の
ラ次
カを
a ,a
た5 まラ
▽=
••
i: t : :
( 1 1 6 )
l f ( x , y , z )= [
と定義すると,形式上はベクトルのスカラー倍の演算に一致しており,式 ( 1 1 6 )の右 辺に比べ格段に簡便な表現である▽f ( x , y , z )を用いることができる.▽f ( x , y , z )をスカ ラー関数 fの勾配 ( g r a d i e n t )と 呼 ぶ ベ ク ト ル ▽f ( x , y , z )の 方 向 は 等 ポ テ ン シ ァ ル 線
f ( x , y , z )=c (一定)に垂直である(図 1 1 7 ) . また力学的エネルギーが保存する保存力
Fは,そのポテンシァル fを用いて F =― ▽f と表現することができる.
c 1
X l ぬ
, ー *n*n2 x x ...
Xlix
xx
2*1*1
積 *X 2 2 1 2
序
ー
│
.
x
I xn
..~ *2 x n
lxlXl:・Xn
•
*n x
*2 x
*1 x
,_│I
は︶
と
た順ー まの 数逆︱︱
は
*n x
X
t
* x
~XIXl:·Xn
*2= X
x k 積 ︵ ヽ)内~ XIXlxn,
=\ー/
x
卜
レ'︵ ‘
P
︵
t *
=
x
ク(•こ――――-=-―ーニー__\
ベ .,." 万
次
元叶
n
I x 旧=X図
︵ \ の.
I[ 身 寸 景 ク1 子 万I J
( i= 1 ,2 ,. . ., n )
1
Px 三— xx*t を x への射影行列と呼ぶ.
l x l 2
本章で取り扱う行列は, ( 1次変換に限定しない)線形写像を表現する一般の行列であ
4節および 3 5節では,正 るが,それでもなお,正方行列はとくに重要であり,以下 3 方行列特有の項目について述べる.
3 4 行列式 行列式は,行列の正則性の判別式を意味する.つまり,行列式が 0でなければその 行列は正則であり逆行列をもつが,行列式が 0であればその行列は正則でなく(特異で あり)逆行列をもたない.行列式は,連立方程式の解法に関連して導入された概念であ るが,固有値問題を介してさまざまな分野で応用される. 行列式の定義の仕方にはいくつかの方法があり,邦書では置換による定義が多いよ うに見受けられるが,置換はやや抽象的にすぎ,その他の場面で科学者・技術者の前 に姿を見せることもないので,本書では余因子展開の帰納的定義を採用する.
3 4 1 行列式の定義 n次正方行列 A の行列式は,行列 A の要素 { a i j }により定義されるスカラーであり,
au a12・ ・ ・a1n I A I=detA=
a 2 1 a22・ ・ ・a2n .
( 3 4 1 )
a n 1 an2・ ・ ・ann
という記号で表される.本書では行列式を以下のように帰納的に定義する. 2 5項で求めた通り, まず, 2次正方行列の行列式を, 2 a 1 1 a 1 2 a 2 1 a 2 2
( 2 2 1 9再掲)
_ =a 1 1 a 2 2-a 1 2 a 2 1
と定義する.そして, n-1 次正方行列 (n~3) の行列式までが定義されているとして,
n次正方行列 A の行列式を, n=3の場合の式 ( 2 3 1 7 ,1 8 )を一般化した形に, n
IAl=L佑K位 =an知 + a i 2知+・・・ + a i n位 k = l ""'~
(任意の i行による展開) ( 3 4 2 )
および I A I=Lak 心 =a l i知 + a 2 i知+・・ ・ + a n i知 k = l
(任意の i列による展開) ( 3 4 3 )
と定義する.ここに, / ) , . i j三 ( 1 Y + jM i jは行列式 I A Iにおける a i jの余因子 ( c o f a c t o r )と 呼ばれるものであり,また Mijぱn次正方行列 A からその i行および j列を削除し i jの小行列式 ( m i n o r )と呼ば た n-1次正方行列の行列式であり,行列式囚における a
れる.
22
12 a a
11
12 a a
Mij=
a 1 j l
au+1
a 1 n
a 2 1 1
a 2 1 + 1
a 2 n
a r 1 1 a i 1 2
a i l j 1 a i I j + l
a i + I I
佑+ 1 2
a i + I J 1 a i + I J + I
a n l
a n 2
nj + 1 a nj 1 a 1
・ -i a i l n1 a i + l n
( 3 4 4 )
a n n
なお,以下のように,任意の行または列による展開がいずれも一致することを示すこ とができる. 証明) 任意の行または列による展開がいずれも一致することを数学的帰納法により証明する i) 2次行列式については, 2行 2列いずれの展開も同一である
3 4
I :: = I (二::~:;:『〗
a11a22+a12(-a21)
a12(-a21)+a22釘 l
i i )
n-1次行列式について,任意の行または列による展開がいずれも一致することを仮定する.
まず,異なる行による展開が等しい値をもつことを示す.行列式囚を i行により展開する. n
( 3 4 2再掲)
=ail知 +ai2位+・・.+ain'1in
IAl=L佑 K位 k = I
余因子 ~ik 三 (-IY+kMik に対応する小行列式 Mik は n-1 次小行列式であるから,仮定により任
意の行または列による展開が一致する.そこで, Mik を j( j>i )行で展開すると, n
Mik= L 約l~ik,jl = aj I位 ,j I+aj2~ik,j2 l=I,# k I =L
・ +・ ・ +ajn△ik,jn
n
ajz(-l)(j— I)+l Mik,jl 十こ州— l)(jー I)+(l-I) M i k , j t
l = I
l = k + I
となる.ここに, M 比j l は Mik における a j z の小行列式であり,また△i k , j l は Mik における a j zの 余因子である. k
; au
a12
a1k-I
a1k+l
a1Z I
a1z + 1
a1n
a21
a22
a2k-I
a2k+l
a2z-1
a21+1
a2n
ai-11
佑ー 1 2
ai-Ik-I
ai-Ik+I
ai-Iz 1
ai-1l + l
ai-ln
ai+ll
佑 +12
ai+lk-I
ai+Ik+I
ai+Iz 1
ai+Il + I
ai+ln
aj-1k-1 aj-lk+l
aj-11-1 aj-Iz + 1
Gj-In
aj+Ik-I aj+lk+l・ ・
+ I . . aj+Iz 1 aj+Il
aj+ln
I← . .
l
Mik,jl=
I aj-ll
—
aj 12
. .
aj+Il aj+l2
Gnl
an2
Gnk-1
ank+I
anl 1
anl + l
. .
I~---;
ann
ゆえに,式 ( 3 4 2 )は n i l i k IAl=L佑 k k = I n
=
k 1
I :叫— ii+k I :州— l)U-l)+t k = l
n
n
M i k , j l十 と 叩 (-1i+k
l = I
となる. 次に,行列式,Al を j(j>i)行により展開する
k = l
I :の
l = k + l
z(-l/+1Mik,jt
( 3 4 5 )
行列(一般論) n
区 aj心 =a11的
IAI=
( 3 4 2 ' )
+a 吟 }2+・ ・・+ajn/':,.jn
l = l
余因子△j l三 (-I)i+lM1z に対応する小行列式 MJlは n-1 次小行列式であるから,仮定により任 )行で展開すると, 意の行または列による展開が一致する.そこで, MJl を i(j> i n
Mjz= L 佑 k△j l , i k= a i l1 1 j l , i l+a吟 j l , 1 ' 2+ ・ ・・+a i n△j l , i n k = l , i ' l =
l 1
n
k = l
k = l + l
I :叫— 1 戸Mjl.ik 十区叫— 1i+(kー l) Mjl,ik
となる.ゆえに,式 ( 3 4 2 ' )は n
=区 a吟 jl
I A I
l = l
t
l ー1
心 崎 l)j+/区a;k(-li+kMjt,ik心 疇 l)j+l i = l
となる. MJZ,ik=
k = l
1 = 1
( 3 4 6 )
佑k(-l i + C k l )M j t , i k
k = l + l
n l 1
n k 1
1 = 1k = l
k = ll = l
n
n
M北jl であり, tt と LL および区〗こと L 区は一致するので, k = ll = k + l
1 = 1k = l +1
式( 3 4 5 )の第 1項と式 ( 3 4 6 )の第 2項が,また,式 ( 3 4 5 )の第 2項と式 ( 3 4 6 )の第 1項が
3 4 5 ) と j行による展開式 ( 3 4 6 )は一致する. 一致する.その結果, i行による展開式 ( 続いて,異なる列による展開が等しい値をもつことを示す.行列式囚を i列により展開する n
( 3 4 3再掲)
I A I= Laki位 =au知 +a2i知+・・・+a n i ! ' ! , . n i k = l
余因子△k i三 (-ly+kMki に対応する小行列式 Mkiは n-l次小行列式であるから,仮定により任
意の行または列による展開が一致する.そこで, Mki を j(j>i)列で展開すると,
応
叫 =, ;
=
l j位 ,I i= a , / , k i . l i+a,i△k i , Z j+'''+aaj△k i , o j
k 1
n
1 = 1
l = k + l
I :叫— l)U·--:l)+I Mki,lj 十こ叫— l)(j-1)+(1— l) Mki,11
となる.ゆえに,式 ( 3 4 3 )は n
=区 akitiki
I A I
k = l n
k 1
n
n
=L 叫— 1/+i L azj(-1)()— 1)+1 fl.{幻,11+L 叫— i/+i L 叫— l)(j-1)+(/-1) f l . { 幻 ,l j ( 3 4 7 ) k = l
1 = 1
k = l
l = k + l
となる. 次 に , 行 列 式 囚 を j(j>i)列により展開する. n
I A I= L a け知=a1j知 l = l
+a2j知+・・・+anj位
( 3 4 3 ' )
3 4 行列式
107
余因子 ! i l j三 (-li+iMlj に対応する小行列式 M りは n-1 次小行列式であるから,仮定により任
意の行または列による展開が一致する.そこで,
Mlj を i( j>i )列で展開すると,
n
t j , k i= a u l : ! . . t j , I i+a吟 l j , 2 i+. . .+Gni△l j , n i
Mtj= L 叫 k = I ,ヰl l I
n
= I :叫— l 臼Mtj,ki k = I
十こ叫— 1 i+Ck-1)Mtj,ki k = l + I
となる.ゆえに,式 ( 3 4 3 ' )は n
I A I= Lakj△kj k = l l 1
n
= I :叫— 1i+j I :叫— 1 戸 Mzj,ki l = l k = I n
となる . f , ; f 心 j= M z j , i kであり,
n
+L 叫— 1i+j l = l n l I
I :知(ー l i + C k l )M [ j , k i
( 3 4 8 )
k = l + l n k I
n
n
L Lと 区 L ぉよび L L と L Lは一致するので, i k = Il = k +I l = Ik = I k = ll = l l = lk = l +1
列による展開式 ( 3 4 7 )と j列による展開式 ( 3 4 8 )は一致する. また,式 ( 3 4 5 ,6 ) と式 ( 3 4 7 , 8 )は一致する.すなわち,任意の列による展開式と任意の行による展開式は一致する(演習問題
3 4 ) .
圃 3-4-2
行列式の性質
行列式の主な性質をまとめる(④∼⑥の証明は演習問題 3 5 ) .
I A t l=I A I
① 転置行列の行列式はもとの行列の行列式に等しい.
証明)行の展開と列の展開が等しいから. この性質により,②∼⑥の列ベクトルに関する性 質がそのまま行ベクトルにも適用できる
② 列(行)ベクトルのスカラー倍と行列のスカラー倍 一つの列(行)ベクトルを c倍 す る と 行 列 式 は c倍になる.
I a1 ... cak ... anI =c la1 ... ak ... anI l c A I=c n l A I
n次正方行列を c倍 す る と , 行 列 式 は c 汀音になる. 証明)各列(行)について線形であるから.
③ 行列式の分解 ある列(行)の列(行)ベクトルが二つのベクトルの和であるとき,その行列式は それぞれ片方の列(行)ベクトルを代入した(他の列(行)はもとのまま)二つの行 列式の和に等しい.
I a1 ・ ・ ・
II
I +I a1 ・・・ ak2 ・・・ l l nI
(a ぃ +ak2) ・・・ lln = a1 ・・・ akl ・・・ lln
1 0 8
第 3章行列(一般論)
証明)各行(列)について線形であるから.
④ 列(行)ベクトルを交換すると行列式の符号が入れ替わる.
I a1 ... ak ... az ... anI =I -a1 ... az ... ak ... anI ⑤ 列(行)ベクトルに他の列(行)ベクトルのスカラー倍を加えるとき,行列式は不変.
I a1・ ・・ak・ ・・az・ ・・anI =I a1・ ・・ak+caz・ ・・az・ ・・anI ⑥ 列(行)ベクトルが 1次従属のとき,とくに列(行)ベクトルに等しいものがある とき,行列式は 0である.
⑦ 行列の積の行列式は行列式の積に等しい.
I A B I=I A II B I
(両方とも n次正方行列)
証明) 3 8 4項で行う
I[クラメルの公式] n個の変数 X1,X公...,Xn に関する, n個の連立 1次方程式 a11ふ +a12X2+・・'+a1nふ =c . 1 a21打 +a22め+・'.+a2nふ =C2
( 3 4 9 ) anl功.+an2X2+・..+annふz= Cn
において, n次正方行列である係数行列 A =( a i j )が正則である場合にその解を求める. 式( 3 4 9 )の第 K番目の式 ( 1 : : ;k : : ;n )に 1 1 . k j( j:任意, 1 : : ;j : : ;n )をかけて Kについ てすべて加えると,
言 ( 心)功 +(t 叩~j) 功+・+ ( t a,
k=l
となる.
t c . ! J .
akni¥k;)ふ = k=l
幻
( 3 4 1 0 )
ところで,行列式
au の2
・ ・ ・
a1n
a21 a22・ ・・ a2n
J A i= .
: .
anl an2 . . .
( 3 4 1 1 )
ann
を第 j列で展開すると, n
I A I= L a k j知 k=l
=alj知
+a2j位+・..+{lnj△nj
( 3 4 3再掲)
3 4 行列式
109
︸
レも
トを ク︶ ベ︸卜 O 万 ノク の 目ダ 番い i 第等
こ
、 ‘
.Jjj
、• 』 I/C
-l
12 a a a...
ーこ
a.J
レ 生、 ). トの ク式 ベ列
列行 の 目と
番る j
n
第入 の代' ︶ ー をら
4D
-#
4
式、︵︶で
。
l i
っ
子 / 1
レ
ベ
マ " "
し
ノ
,
,l
よ
ー I
⑥ 質
,
i
囚....
す
.aaa る (.¥t 得=式 を a i
••
よ
ヵヽ る ぁ
n z o
列
n Lak 心
=ali知
+a2i鯰+・..+ ani知
=0
( 3 4 1 2 )
( ii =j )
k=l
を得る.式 ( 3 4 1 2 )により,式 ( 3 4 1 0 )の左辺
n-I個の項はすべて 0である.
n I:a k i△k j(1~i~n) k=l
のうち, i
*jの
したがって,式 ( 3 4 1 0 )は
位 ふ 心 心 k j ' : ¥ . k j )
k=l
k=l
となる.すなわち, n
=区叫kj
IAlxj
k=l I A I: : f : . 0で あ れ ば 連 立 方 程 式
を得る.ゆえに,
( 3 4 9 )の唯一の解
n
I:c k ! i k j k=l
ぷ;=
I A I
(1~j~n)
( 3 4 1 3 )
すなわち, n k I = : lCk~kl
X1 X2
I
=一 1
kL = nlCk△k 2
( 3 4 1 4 )
I A I Xn
I k E = n lck△k n
を得る.式 ( 3 4 1 3 ,1 4 )をクラメルの公式という.式 ( 3 4 1 3 )においては,分母の行列 式
I A I( 式
( 3 4 1 ) )の j列目を
c でおきかえたものが分子になっている.
1 1 0
第 3章行列(一般論)
゜
3 5 逆行列
n次正方行列 A の行列式が 0でないときに存在する A の逆行列を求める. C1
C z
式( 3 4 9 )の右辺の定数ベクトル
に m 番目の基本ベクトル
C=
1 1(m行) I を代 ¥ 〇
Cn)
入すると,式 ( 3 4 1 3 )は x 戸言『となる.このとき,式 ( 3 4 9 )は △ml lim2 limn ••• + a1nー a uー +a12ー +
I A I
I A I
I A I
=0
箇 綺 + ・ ・ ・ 苛=0
a21
+a22
+a2n
△ml / j , _ m 2 / j , _ m n a m 1 -+ a m 2 -+ ・ ・・+amn- = I(m行 )
I A I
△ml
anlー
I A I
I A I
△ △ 一 + ・ . . ― =0 I A I I A I
+an2
m2
すなわち, a11
a12
a21
a22
I A I
amI am2
+ann
1 戸
a1. a2n
amn I
an2・..
Gnn J
lr~
生 I A I I A I △m2 一~.m,._.4 一 I A I =A I A I
I11
(m行 )
11mn an1
mn
I A I
! : : , . . m n
I A I/ 〇 ¥
となる.ここで, m を一般項とする列ベクトルを 1から
を
nまでまとめ,余因子行列△
3 5 逆行列
△11~12
b . . 1 m
△In
△21~22
112m
1 1 2 n
△ml △m2
11mm
f . . m n
△nl~n2
11nm
△nn
, J :
1 1 1
と定義すると,
( 3 5 1 )
A~=I I A I
を得る.同様に △t -A=l
( 3 5 2 )
I A I
も示すことができるので(演習問題 3 8 ) , △t
A―1= -—•一
I A I
~ji
すなわち, ( A―1)・・=1
I A I
( 3 5 3 )
を得る.式 ( 3 5 1 ,2 )は A~t =~tA = I A I I
( 3 5 4 )
を意味する.ただし,式 ( 3ふ 3 )は逆行列を実際に算出する上で実用的でない.通常
8節の行列の基本変形による計算を用いる は , 3
I[逆行列の性質] ① A の逆行列は一つのみである. 証明) B,Cがいずれも A の逆行列であると仮定すると,
AB=CA=I を満たすので,
B =IB=(CA)B=C(AB)=C を得る.
② AA-1 =A-1A= I ③ 積の逆行列は次式のようになる. (AB)ー 1= B-lA―l 面E~) 月
B-1A-1(AB)=B-1(A-1A)B=B-1B=I
1 1 2
第 3章行列(一般論)
④ ( A 1戸 = A ⑤ (Aーi y=(Aり-1 ⑥ (A2戸
=(A 1)2 ー
正方行列に関して,
もう一つ説明すべき事項が残っている.
冒[正方行列の跡] a i j )の対角項の和 n次正方行列 A =( n
t r ( A )三
I . : a k k k=l
を行列 A の跡 ( t r a c e )と呼ぶ.跡には次の性質がある(②∼④の証明は演習問題 3 7 ) . n
① t r ( A )=
LAk
( 4 5節で証明する)
k=l
② t r ( Aり=t r ( A ) n
n
=LI . : a f j
③ tr(AAり=t r ( A t A )
1 = 1j = l
④ ぷAx=t r ( x t Ax)=t r ( A x x り
3 4 ,3 5節の正方行列の理論から,再び一般の行列のやや抽象的な理論にもどる.こ れは,連立 1次方程式の一般理論の準備を兼ねる.
3 6 線形写像の核 n次元ベクトル空間 vnから m 次元ベクトル空間 vmへの線形写像 f を表現する m 行 n列行列 A を考える. f:x→y=Ax,
XEVn
まず,ベクトル空間 vnに属するすべての要素 xの写像 f による像 Axの集合 f(V り三 { yIYE V 庄 y=Ax,xE V り
は,ベクトル空間 vmの部分空間 ( 1 3 2項)である.なぜならば任意の Y1Ef( V n ) ,Y2E f(V りについて, Y 1+Y2=Aふ + A ゎ =A( ふ +x ガ , ふ + ゎ Eyn
であるから,和 YI+Y2は f(V りに属し,また,任意の yEf(V りについて, ky=kAx=A ( k x ) ,
kxEyn
3 6 線形写像の核
1 1 3
であるから,スカラー倍 k yも f(V りに属するからである.ベクトル空間 vmの部分空 間f (Vn)を , 3 1節ですでに述べたように写像 fの像と呼ぶ 一般に,ベクトル空間 vnの部分空間 W に属するすべての要素 xの写像 fによる像
Axの集合 f(W)三 {ylyEV 庄 y=A x,xEW}は,匠の部分空間である. f(W)を写 像 fによる部分空間 W の像と呼ぶ. 次に,写像 fによる像 Axが零ベクトルになるような,ベクトル空間 vnに属するす べての要素 xの集合
Ker(!)三 { xIxEV 叫 Ax=O }
( K e r( A )とかくこともある)
は,ベクトル空間 vnの部分空間である.なぜならば,任意の x 1EK e r ( ! ) ,x2EKer(!) の和ふ+ゎは,
A( ふ +X 2 )=Aふ +A ゎ =0 ,
ふ + ゎ Eyn
であるので,和ふ +x2は Ker(/)に属し,また,任意の XEKer(/)について,
A ( k x )=kAx=0 ,
kxEyn
であるので,スカラー倍 kxも K er(!)に属するからである.ベクトル空間 F の部分
k e r n e l )と呼ぶ 空間 Ker(/)を写像 fの核 ( 次の定理は写像 fの核の直交補空間の次元と写像 fの像の次元が等しいことを示す ものである. 定理 3 2 n次元ベクトル空間 vnから m 次元ベクトル空間 vmへの線形写像 f
f:x→y=Ax,
XEvn
について,その核 K e r ( ! )と像 f(V りの次元 ( 1 3 2項)の和は nに等しい.
dim(Ker( ! ) )+dim(f(V り ) =n (次節で dim(f(V り)を fの階数と定義し, r a n k ( ! )とかく) 証明) d i r n ( K e r( f ) )=n-lと し , K e r ( ! )の基底を ( b z + I ,h z + 2 ,. . ., b n )とする.定理 1 2により, これに加えて適当な ( b 1 ,b 2 ,. . ., b z )を選び, ( b 1 ,b 公...,切..., b n )をベクトル空間炉の基底と することができる.このとき, f(V り ={ { f ( b 1 ) ,f ( b 2 ) ,. . ., f ( b z ) ,. . ., f ( b n ) } }であるが,その基底 のうち, f ( b z + I )=f ( b z + 2 )= ・・ ・=f ( b n )=0であるから, f(V り ={ { f ( b 1 ) ,f ( bガ , . . ., f ( b z ) } }であ る.それゆえ, f ( b心 f ( b 2 ) ,. . ., f ( b z )が 1次独立であることを示せば定理は証明される. さ て , l
I:cd(bk)=0 k=l
( 3 6 1 )
1 1 4
第 3章行列(一般論)
とすると,
戸f(b,)~1(言叫 ~o であり, LCkbkは Ker(!)に属する要素であるから, k = I l
n
Lckbk=— Lckbk k = I k = l + I
と表すことができる.すなわち,次のようになる.
。 =
n
( 3 6 2 )
I:ckbk k = l
一方 ( b 1 ,b互 . . ' b z ,. . ., b n )はベクトル空間初の基底であるから, 1次独立である. したがっ て,それらが式 ( 3 6 2 )を満たすならば, C k=0 ( k=1 ,. . ., n )である. したがって,式 ( 3 6 1 )を 仮定すると, C k=0(k~1, . ., ' ,l )が帰結されたので, f ( b 1 ) ,f ( b 2 ) ,. . ., f ( b z )は 1次独立である よって,定理は証明された.
3行 5列行列
( n=5 )
A =[1 〗]。2~I) のd im(f(V り)は, A の 1次独立な列ベクトルの最大数に等しい ( 3 7節)ので 3である. 次に, ー
均巧凶
16
[0 0= 0
X I ー
ー
↓o
3
001
olo
[1 0 0
X s
とおくと,その解は
X3
=
-X5
X4
X4
X5
X5
-1
2
2X4-X5
X2
1
-3
-3X4+ X5
Xl
= X4
゜゜ ゜ + X5
, : : 1
1
1
であるから, d i m ( K e r( ! ) )= 2 である.ゆえに次式を得る. =2+3=5=n
冒
d i m ( K e r( ! ) )+ d im(f(V り )
3 7 線形写像(行列)の階数
115
3 7 線形写像(行列)の階数 n次元ベクトルから m 次元ベクトルヘの線形写像 fの像の次元 dim(f(V り)を,写像 f(あるいはそれを表現する行列 A)の 階 数 ( r a n k )と呼び, r a n k ( ! )(あるいは r a n k ( A ) )と かく.この定義により,まず, 几
す
と
. ,
an , . .
ー
2 a , a
を レ ︸
卜
功
・:xn
x
素
,
vn
ク ベ リ 万 ま のi 像, A る U ダ ょ 子 ノィこ ’' 列 f n 像 一 丁 ノー写 m の
る、ノ す x l
現︵\
表=
f
mを
でる
要 V ︱像 の め写 意 ︵ n k こ,任 の
V I
a│ r 次
0. る あと
L
f ( x )=Ax=
研 k
k=l
であるから,写像 fの像の次元である r a n k ( A )は 行 列 Aの列ベクトル a 1 ,a 2 ,. . ., l l nのう
ち 1次独立であるものの最大の個数である. したがって, n次正方行列 A の r a n k ( A )=n
*
であることと d etA 0は同値である.また, r a n k ( A )=0であるならば, A=O(零 行 列)である. ―ベクトルの最大数でもある.
証明) m行 n列行列 Aの階数を r a n k ( A )=kとする このとき,すべての列ベクトルは K個の列ベクトルの 1次結合で表される k
=I:氾
aj
i
( j=1 ,2 ,. . ., n )
1=1
これを成分で表すと, k
alj=I:紐
I i
( j=1 ,2 ,. . ., n )
( l=1 ,2 ,..• , m)
1=1
となる.ゆえに, jについてまとめると次式が成り立つ. k
( a 1 1a 1 2 ・・ ・azn)=Lau( S i ls i 2 ・・ ・Sin)
( l=1 ,2 ,. . ., m)
! = l
すなわち,すべての行ベクトルは K個の行ベクトル ( S i lS i 2 ・・ ・ S i n )の 1次結合で表される これは, 1次独立な行ベクトルの個数は 1次独立な列ベクトルの最大数以下であることを示す. まったく同様に, 1次独立な列ベクトルの個数は 1次独立な行ベクトルの最大数以下であること
行列(一般論) を示すことができるので, 1次独立な列ベクトルの最大数として定義された階数は, 1次独立な 行ベクトルの最大数でもある
したがって,転置行列の階数はもとの行列の階数に等しい. rank(Aり =rank(A)
冒[階数のその他の性質] m 行 n列行列 A と n行 l 列行列 B,Cについて,下記が成立する.
① rank(AAり =rank(A1A)=rank(A) 証明)
AAtx = 0 とすると, xtAAtx = I A t x l 2 = 0 となるので Ker(AAり c Ker(Aりであ
る.逆に, A1x= 0 とすると, AAtx= 0 なので Ker(Aり c Ker(AAりである.したがって, Ker(AA り=Ker(Aりとなり'. AA1は m 次正方行列 A tは n行 m 列行列であるから,定理 3 2
により rank(AAり=rank(Aり.さらに定理 3 3により r a n k ( Aり=r a n k ( A )である. r a n k ( A t A )も
同様
② rank(AB)~rank(A),
rank(AB)幻 ank(B)
証明) ABの各列ベクトルは,いずれも A の列ベクトルの 1次結合. ABの各行ベクトルは,いずれも B の行ベクトルの 1次結合 ((ABY=BtAり
② 'Pが正則な m 次正方行列, Qが正則な n次正方行列であれば rank(PA)=rank(AQ)=rank(A)
証明) P が正則であるから,逆行列が存在するので,②より r a n k ( A )=r a n k ( P 1 ( P A ) )srank(PA)
および, rank(PA)sr a n k ( A )である. rank(AQ)=r a n k ( A ) も同様.
③ rank(A)+rank(B)-n 幻ank(AB)~rnin(rank(A), rank(B)) 証明)右の不等式は②による.左の不等式の証明は以下の通りである. l次元ベクトル空間 りとかくと, 3 6節冒頭で示した通り, B(V りは の行列 B による像を B(V ある r a n k ( A B )=dim(AB(V ) り =dim(A[B(V り ] )
=dim(B(Vり)ー dim(Ker(A)nB(V) り ところで, dim( K e r( A )nB(V ) り
sdim(Ker(A))=n-dim(A[V門 )
であるから次式を得る. r a n k ( A B )=dim(B(V り ) ー dim(Ker( A )nB(V ) り
v nの部分空間で
3 8 連立 l : ? :dim(B(V り ) ー n+dim(A[Vn])
=r a n k ( B )-n+r a n k ( A )
とくに, n次正方行列 A と n行 m 列行列 B,Cについては下記が成立する.
④ rank(A)=n ,AB=AC r a n k ( A )=n ,AB=0
⇒ ⇒
B=C B=O
証明) r a n k ( A )=nは Aが正則であることを意味する.そこで,両辺に Aー1 をかける.
さらに, m行 n列行列 A,Bについて,下記が成立する.
⑤ rank(A+B ) : : : ;r a n k ( A )+r a n k ( B ) 証明)
1次独立な列ベクトルの数を考える.
⑥ 基本変形を施しても階数は変化しない ( 3 8 3項 ) .
I[階数の行列式による表現] 3 4 1項でその例が現れたが,一般に,行列 A の中から任意の K個の行および列を
取り出してつくられる K次の行列(式)を A の K次の小行列(式)と呼ぶ . m行 n列行列 A の階数が r a n k ( A )= kであるための必要十分条件は,行列 A の K次の小行列式の中
に少なくとも一つ 0でないものが存在するが, k+I次以上の小行列式はすべて 0であ ることである. 証明) r a n k ( A )=kは A の K個の列ベクトルが 1次独立であること意味するので,それらを含む
k次小行列式は 0でない. また任意の k+l個の列ベクトルは 1次従属であるから,任意の k+l
次小行列式は 0である.
3 8 連立 1次方程式 行列のもっとも直接的で初歩的な応用例は,連立 1次方程式の解法である.中学時 代にいったん片づけた内容であるため,これだけでは線形代数を苦労して学ぶ動機づ けとして十分でないことはもちろんだが,改めて見てみよう.
)ときの逆行列を用いた解法・ク 未知数(変数)の数 nと方程式の数 mが等しい (m=n ラメルの公式については,すでに 3-4-2項で述べた.本節では, n個の変数 xぃX公...,Xn に関する m 個の連立 1次方程式
第 3章行列(一般論)
a11x1 + a12x2+・ • ・+a1nふ =C1 a21X1 + a22均+・''+a2nふ =C2
( 3 8 1 )
am1ふ +am2ゃ+・..+amnふ =Cm
の一般論を展開し,連立方程式 ( 3 8 1 )が解をもつ条件と解が一意的である条件を明ら かにする. 式( 3 8 1 )は , m行 n列の係数行列 ー
a l n 知:.
1222:・
amn c
レ ︶ 卜 ク
ベ 列 の 子 ノ イ
m び
,よ
x
泣ル a 卜
m
ベ 列 の 子 ノ イ
~~...~お
aa
ーーーク
=
12 a a a...
ー
A
n と
x = [ : lc = [ I l を用いて,
A x =c と表現できる.さらに, m 行 n列の係数行列 A に列ベクトル cを加えた m 行 n+l列 の拡大係数行列
A=
au
a12
a1n C1
a21
a22
a2n C2
aml am2
amn Cm
( 3 8 2 )
を定義する.
鵬 3 ふ 1 行列の基本変形•基本行列 次項のガウスの消去法の中で行う諸操作が行列の基本変形である.具体的には,行 列の基本変形は次の三つの操作からなる.すなわち,係数行列の ① 二つの行(方程式)を交換する t
t 基本変形の途中で対角項が 0になったときに用いる.
3 8 連立 1
② 一つの行を定数倍する ③ 一つの行の定数倍を他の行に加える ことである.行列のこれら三つの基本変形を行うことは,それぞれに対応する正則な 基本行列(下記)を左からかけることに等しい. 平( i ,j )
i行と j行を交換する.
< P ( i ,k )
i行を K倍する.
0 ( i ,j ,k )
j行の K倍を i行に加える.
平( i ,j )は,単位行列の対角項の
i i ,j j成分を 0とし, i j ,j i成分を 1としたものである.
)は,単位行列の対角項の i成分を Kとしたものである. < P ( i ,k 0 ( i ,j ,k )は,単位行列の i j成分を Kとしたものである.
i
j
1 0 0 1
。i
・11
1 0
0 0
゜ e
I i
平( i , j )=
0
0 1
0 0
0 1
00
゜
10
olo
゜
[ I
< P ( i ,k )=
』
1 2 0
第 3章行列(一般論) .J
00
゜
lo.
010
e ( i . j , k )=
゜
ーロー .........
0 1
なお,基本行列を右からかけると,次のように対応する列の変形をもたらす. ① 二つの列を交換する.
② 一つの列を定数倍する. ③ 一つの列の定数倍を他の列に加える. 3 8 2 ガウスの消去法
G a u s s )の消去法は,中学校で学んだ連立方 連立方程式の基本的な解法であるガウス ( 程式の解法の一つ「加減法」を行列形式で記述したものである.まず,具体例を見 てゆこう.
3元連立 1次方程式 -xi+2 ゃ +3 巧 =1 2 x 1 +2 x 2-3 巧 =1 0 4 x 1
-
X3
=-2
[ 1 !; 口~~) [ : )
=[~~)
行列の基本変形③を用いて,係数行列 A を対角項より左下の成分 aij( i>j )がすべ て 0である上三角行列に変形する.この操作を前進消去 ( f o r w a r de l i m i n a t i o n )と呼ぶ. まず,第 2行 1列の
a21
=2を消去するために,第 1行を 2倍して第 2行に加える.
この操作を行うとき,第 1行 1列の au=-1あるいは auを含む第 1行を枢軸 ( p i v o t )
と呼ぶ ー
XI+2 め +3 巧 =1 6功 +3巧 =1 2
4ふ
一 巧 = ー2
[~I~iJ[::J
=[~~)
3 8 連立 1
次に,第 3行 l列の
a31
=4を消去するために,枢軸の第 1行を 4倍して第 3行に
n : : (
加える.
-xi+2疫 + 3 巧= 1
(~1 : J(~J
ゎ+3 x 3=1 2 6
=
ゃ +l l x 3= 2 8
こうして,係数行列の第 1列は第 1行を除いて 0となった.第 2行の係数はすべて
3の倍数なので,計算の便宜のために第 2行を 1 / 3倍する. 一打
[~! ; n[::J~m
+2 功+ 3 x 3=1 2 x 2+ 巧 =4 ゃ +l l x 3=2 8
さらに,第 3行 2列の
a32 =8を消去するために,枢軸の第
2行を 4倍して第 3行
から弓 I < .
[~I~ ~)) [ :U J
-xi+2 x 2+3 巧= 1 2 x 2+ 巧 = 4
=
7巧 = ー 1 4
( 3 8 3 )
こうして,係数行列を上三角行列に移すことができた.これから,次のようにして 解を得ることができる.以下の操作を後退代入 ( b a c k w a r ds u b s t i t u t i o n )と呼ぶ.まず,
式( 3 8 3 )の第 3行より 1 4
=-=-2 7
X3
である.これを第 2行に代入すると,
4-x3
4-(-2) 2 =3
X z=一了―=
を得る.さらに,これらの結果を第 1行に代入すると, X1 =
1-2 x 2-3 x 3 -1
=
1-2x3-3x( 2 ) =-1 -1
冒
(~J である.
を得る.ゆえに,解は(::)=
I[前進消去により出来上がった上三角行列による解の分類] ガウスの消去法において,基本変形の繰り返しにより最終的に次の形の上三角行列 を得る.
行列(一般論)
a11x1
au . . .
+a1虹 2・ +・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ +a1n凸 =Ct a22ゎ +・ • • • • • • • • ・ •・ +Gznふ =Cz
0
1X1 a1n 1
a22
akk
akk楳+・・. +aknふ =Ck
゜
0 =Ck+l
0 =Cm
C1
a2n
akn
゜ Q JIXn
ck Ck+l
Cm
(k~m~k 幻 n)
これにより,解の存在と一意性を次のように分類できる. ① 一意的な解
k=n=m(例 3 3 )であるか, k=n" ' >
I A I=
証明)
An A12
知
t 叩
己
* ( I A 2 2 I* O )
1. . .n , . .
n-n 1
I A 1 1 II A 2 2-A21Aけ A叫
A22 ln-n,={I A 2 2 II A 1 1-A12A A叫
( I A 1 1 I O )
( 3 9 2 )
( I A n li = -O の場合)定理 3 5( 式( 3 9 1 ) )より,
n 1. n-n 1 1. 1 . . , . . . , . .n , . . n-n n-::l(~
> 1.0.,
l
ぇ 『
(/~A22 A l
( I n iは m 次単位行列)
. ,
/ A 1 2 )= (~::
l
知AけA1~:1~〗↑;21Aj/A12 =A
( 3 9 3 )
3 9 行列の区分けによ
An 0 をn 1+1列(対角項のみ 1で他は 0)で展 A 2 1 l n n 1 開し,続いて n 1+2列で展開する.この操作を n-n1回繰り返すと, ゆえに,式 ( 3 9 3 )の左辺第 1の行列式
An 0 =I A 1 1 I A 2 1 l n n 1 となる 一 方 左 辺 第 2の行列式 る.この操作を
Aけ A 1 2 m I を第 1列で展開し,続いて第 2列で展開す 1 2 0 A 2 2-A21A叶A
I
m 回繰り返すと,
l n 1 A 1 fA 1 2 =I A 2 2A 2 1 A 1 fA叫 0 A 2 2A 2 1 A 1 fA 1 2 . となり, 3 4 2項⑦により,行列の積の行列式は行列式の積に等しいので,式 ( 3 9 2 )を得る.
区分した行列の非対角項の片方が零行列のとき,式 ( 3 9 2 )は飛躍的に単純化される. 系 A 1 2= 0または A 2 1=0であれば,
I A I=I A 1 1 I I A 叫
3 9 3 逆行列の計算 定理 3-7 n次正方行列を区分けした結果以下に現れる逆行列がすべて存在すると
r い
き , A 1は次のように計算できる. ー
( 宕 戸 A 2 1 A 2 2
A―I=
叩 (
=
! nn 1 n 1
n n 1
― ' ) ぃ
+A けA!2(Azz-A21吋 A12戸A21A)/ -A[/知 (A22-A21A叶A!2) ( A 2 2-A 2 1吋 A 1 2 ) ―1 ー( A 2 2-A 2 1 A 1 f , 知)― 1 A 2 1 A 1 f
仔 ―n 1
( 3 9 4 ) および A-I=( ( A n-A12位 A 2 1戸 ー(An-A12A 且A21f1A12Azi) 旦A21(A11-A12位 A21戸 A旦+A砂A21(A11-A12A砂い)ー 1知 A旦 -A
( 3 9 5 )
証明)
知 ( 知
A i " f知 ( A 2 2A 2 1吋 A 1 2 ) 1 A 1 2 ) ・ (甜 + A j f , い( A 2 2A 2 1 A J / A n ) 1知 A J / ( A 2 2-A21Aけ A12)-1) A 2 2 ( A 2 2-A 2 1 Aけ A 1 2戸 A 2 1 A 1 f
=I 区分した行列の非対角項の両方が零行列であれば,式 ( 3 9 4 )は飛躍的に単純化され
3 9 5 )も同様. る.式 (
2 1= 0であれば, 系 A12=0かつ A
A=(『 A~J ―I
3 1 0 行列の一覧 本書にはさまざまな行列が登場する.本節は行列の一覧表(一部,行列式を含む)で あり,本文を閲覧中に特定の行列の定義があやふやになったときなどに参照するとよ い.行列の定義の仕方には大きく分けて,形状による定義,機能による定義,基準と なる別の行列に対しての定義がある;中にはこのうち二つ以上を兼ねるものもあるが, どれか一つに分類した. ① 形状による定義 零行列 ( z e r om a t r i x )( 2 2節 )
l l
すべての成分が 0
任意の A について AO=OA=0
O=[l : : :
単位行列 ( u n i tm a t r i x )
1 0 ...... 0 0 1 0 . . . 0 aij=< 5 i j
l=
゜
0 0・ ・ ・0 1 対角行列 ( d i a g o n a lm a t r i x )
任意の A について AI=IA=A
3 1 0
00
゜ ゜ ゜ ゜
゜ ゜
au
a22
A=
a i j=a u O i j
ふ =au(第 4章で詳述)
゜
ann
ブロック対角行列 ( b l o c kd i a g o n a lm a t r i x )( 5 5 4項 )
区〉。
. . .0
。 玉 ] ・ . . :••• 日.. :
・ .
A iは正方行列
・ . . 0
0・ ・ ・・ ・ ・0
区
au
a22
または
•••
o
正方行列 ( s q u a r em a t r i x ) (第 2,4 章, 5-1~5 節)
゜
ann
0
Gnn
0:・・:・:・:0
au
゜ ゜
゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜゜
長方対角行列 ( r e c t a n g u l a rd i a g o n a lm a t r i x )( 5 6節 )
行と列の数が等しい
上三角行列 ( u p p e rt r i a n g u l a rm a t r i x )( 3 8節 ,5 1 2項 ) 対角項より左下の各項が 0
a i j=0
( i>j )
下三角行列 ( l o w e rt r i a n g u l a rm a t r i x ) Gjj
=0
対角項より右上の各項が 0
( i= a i j )を満たす行列 A
② 機能による定義 直交行列 ( o r t h o g o n a lm a t r i x )( 4 3 3項 ) 実数成分の行列で
A t=A―1を満たす行列 A
ユニタリー行列 ( u n i t a r ym a t r i x )( 4 3 3項 ) 正則行列 ( n o n s i n g u l a rm a t r i x ) 特異行列 ( s i n g u l a rm a t r i x ) 正規行列 ( n o r m a lm a t r i x )
A * t=A-1を満たす行列 A
逆行列をもつ行列 A, I A I= t -O
逆行列をもたない行列 A ,I A I=0
AA* f=A* f A を満たす行列
例)エルミート行列,歪エルミート行列,ユニタリー行列,実対称行列
n i l p o t e n tm a t r i x )( 5 5 1項 ) ベキ零行列 ( ある自然数 iについて Ni=0 となる行列 N を i次ベキ零行列という.
i d e m p o t e n tm a t r i x )( 5 5 2項 ) ベキ等行列 ( A2=Aを満たす行列 A 基本行列 ( 3 8 1項 ) 平( i ,j )
i行(列)と j行(列)を交換する.
c / > ( i ,k )
i行(列)を K倍する.
0 ( i ,j ,k )
j 1 子(列)の K倍を i行(列)に加える.
謝t景~{子万I」 (3-3 負行)
1
凡=— aa*t を a への射影行列という.
l a l 2
ヤコビ行列(関数行列) ( 2 2 5項 , 2 3 5項 )
伽 o y 1 . . O X 1 O X 2 如 o y 2
—ー..
o y 1 O X n o y 2
・—
I 示忘・・・瓦
J=o ( yいY 2 ,・ ・ ・ , Y m )= O ( X 1 , X 公...,凸)
OYm OYm'OYm """— O X 1 O X 2 O X n ヤコビ行列式(関数行列式, J a c o b i a n )(ヤコビ行列で m=nのときの行列式)
( 2 2 5項 , 2 3 5項 , 6 1 1項 )
3-10
8 y 1
OXn 8 y 2
axn 8 ( y 1 , Y 2 ,. . ., Y n ) o(xぃX 2 ,. . ., 凸 )
= II江 応
I l =I
-
Y n Y I 2
y~ Y 2 1 1
y n ' '
1,1 Y Y
Y 2
W=Wfy心 ) ,Y 2 ( x ) ,. . ., y n ( x ) ]=I Y1"
o y n
OXn
•.•—·
O Y n O Y n — O X 1 OX2
U 万U
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A i 項 3 2 と ︵2
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5
義項き
行ふと る
で
正
、 力
V e u
e
確
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こ分行と列行
11
零 x 節式ぃ成節 A 育心 m5:・ 加 tX 3 等 犬の一 不 り ︶ 式 ( ‘5 、i て て負 1121 . l . . n (ttt 伽 等因鵡劉 \いべ項︷対 Y l節 3 芥 t r 形︱︱ぉす 5 ヵ a m1oi ︵式 次 6 こ砂 ︶ ︵ pt. e t2TTU る),— . n x 形 i 亥ん n )=寺負— at次 e fのi ぁ IJ H l X そ . md で 汀 定 2-trooヽ Oノ ,) ,aAAA •Iの t. eIDl はル て + + f i n そ s eヽnm )iI ・:+‘ノト幻て⑫ し OCtCtCts ︺ い ︺ C tク t r P l 加 PnPl 加 p n ベ ma ︵\率
、 >) ヘ
••
••.
•••
︶ ぃT n ト翫
Y n ( n 1 ) Y 2 ( n 1 )
g
•1
8 y 1 8 y 1
O X 1 OX2 8 y 2 8y2
-
ロンスキー行列式 ( W r o n s k i a n )( 6 1 1節 )
3章行列(一般論)
第 3章の演習問題
醒 3 1 次の行列の積を求めよ
3 } r n
( I )( I2
3 }. ( 3 )(I23}[~!] ( 4 )[ !;! ) [ ! ]
( 2 ) [ } ,2
3 2 次の行列 A のベキがを求めよ
I I 1 1 1 1 ( l )
1 1 1 1 1 1
( Z )
3 3転置行列は以下の性質をもつことを証明せよ ( 2 ) ,( 3 )は正方行列に限る). ( l ) (Aり t=A
戸=(Aサ
( 2 )J A t l=I A I
( 3 )( A t
( 4 ) (AB/=B t A t
隅 3 4
行による展開式 ( 3 4 5 )と列による展開式 ( 3 4 7 )が等しいことを示せ. 3 5行列式の性質④∼⑥を証明せよ 3 6 ファン・デル・モンド (Vand e rMonde)の行列式
功
X 2 ・ ・・ X n
叶 社 ・ ・ ·x~I
=(-l)n(n,--1)/2日(xi-xj) i < j
... ~― l
叶― I½-I
を証明せよ.
3 7以下の式を証明せよ. (1) t r ( A り=t r ( A )
( 2 ) t r ( A A り=tr(NA)
(3) x t Ax=t r ( A x x り
匡 ~t
3 8 - A =Iを証明せよ. I A I
戸 3 9 係数行列の基本変形により逆行列を求めることにより,次の連立 1次方程式を解け. ー
ー
=
功巧店
63486
ー
ー
X I
ー`
12011
10221
03310 ︱︱
31102
ー
10321
X S
章
第
固有値と座標系の変換
l
正方行列の固有値と固有ベクトルを決定する問題を一般に固有値問題 ( e i g e n v a l u e
p r o b l e m )と呼ぶ.本章では固有値と座標系(基底)変換の基礎理論を展開し,第 5章でそ
の熟成を図る.これは第 6章でさまざまな固有値問題を取り扱うための準備ともなる. 4 1節で詳しく説明するが,固有値を求める式 d e t ( A-, l / )=0は,連立斉次 1次 方
程式 Ax=心が,無数の解をもつ条件式である.つまり,中学・高校にわたりひたす ら連立方程式が唯一の解をもつケースを取り扱ってきた学生にとり,固有値は,連立 斉次 1次方程式の解が一つに定まらない特殊例・例外として本格的に取り扱ってこな かったケースにあたる.それゆえ,線形代数を学び始める諸君が,固有値を求めるこ とに積極的な意義を見出しにくいのも無理はない. ところが,第 6章で明らかになるように,数学の他部門,物理学および物理系のエ 学,さらには経済学・ 統計学などさまざまな分野における諸問題において,個々の問 題に特有の正方行列の固有値と固有ベクトルを決定することがその問題を解決するこ とに直結する.それゆえ,道具としての線形代数を習得する多くの理工系・経済学ま た統計学を利用する幅広い分野の学生・研究者にとり,固有値問題こそが第一番目の 到達目標とすべきテーマであり,同時に線形代数から収穫するもっとも大きな果~で
ある.固有値問題を学習する動機づけのためには, 4 2節のあと, 6 2 ,3節に進み,
こ
れらをじっくり味わうのもよい方法である.その後 4 3節以下に進むときには,「固有 値問題は本当に役立つのだろうか?」と疑心暗鬼に駆られることもなくなっているこ とだろう. 線形代数のわずらわしさは,行列が 2次元配列であり,その行と列の数が大きくな るにつれ成分の数が加速度的に増大することにある. しかし,次章で座標系の変換:に より「正方行列の対角化・標準化」を行うと,固有値はわれわれの前にその姿を自然
と座標系の変換
に現してくれる.つまり,座標系の変換によっても保存される個々の n次正方行列の 本質は,その固有値(重複を含めて n個)の 1次元配列に集約されている.この単純化 は行列に対する見通しをすこぶるよいものにする. ところで,固有値を求める固有値方程式(特性方程式)は一般に高次方程式であり,
6節および次章の 5 4節では,そのよ 厳密解が得られない場合が多い.本章最後の 4 うな場合に固有値の高精度近似解を得る手法を説明する:;計算機の能力が飛躍的に向 上した結果,高次方程式の数値解を求めることが容易になったしかしブラックボッ クスのソフトウェアを使用して得た解には落とし穴がある.やはり固有値の意味する ところを活用した高精度近似解には単なる数値解にはない価値がある.
4 1 固有値と固有ベクトル n次正方行列は n次元ベクトル間の 1次変換を表現するものである.本章では, n次 正方行列 A au
釘2
. . .a 1 n
a 2 1 a 2 2 . .・a2n
/ :: [ A
( 4 1 1 )
式( 4 1 1 )は x の斉次方程式であるから,解 x = Oをもち,、これを自明な解 ( t r i v i a l 4 1 1 )が自明な解に加えて, s o l u t i o n )と呼ぶが,われわれの興味ある対象ではない.式 ( : f : : .0をもつためには,以下に示すように,スカラー Aがある特定 それ以外の有意の解 X
i=ふ ( i= 1 ,2 ,: . ., n ) の値をとらなければならない.このようなスカラー Aの特定の値 ;
(まもなく,それが重複を含めて n個存在することが明らかになる)を行列 A の固有 値( e i g e n v a l u e ,または c h a r a c t e r i s t i cv a l u e )と 呼 ぶ ス カ ラ ー Aが固有値ふであるとき, 4 1 1 )は有意な解 Xi: ; t : O 式(
Aふ=ふXi
をもつ.
このようなベクトル
Xi: f : .0を,それぞれ行列
A の固有値ふに対応する固有
ベクトル ( e i g e n v e c t o r )と 呼 ぶ さ ら に , 行 列 A の固有値の集合{ふ
I i= I ,2 ,. . ., n }を
s p e c t r u m )と,また固有値ふの絶対値の最大値をスペクトル半 行列 A のスペクトル ( 径( s p e c t r a lr a d i u s )という.
4 1 固有値と固有ベクトル ベクトル
Xiが固有値ふに対応する固有ベクトルであれば c を任意定数とすると,
CXi も明らかに固有値ふに対応する固有ベクトルである.すなわち,固有値ふに対し
て,係数 cを除いて固有ベクトル Xi (ときに複数個)が定まる. さて,式 ( 4 1 1 )を (A-A l ) x=0
( 4 1 2 )
と書き換えると,これはベクトル xの n個の成分についての n元連立斉次方程式;であ る.それゆえ,繰り返しになるが式 ( 4 1 2 )は自明な解 x=Oをもつ.行列 A -Alが 正則で逆行列をもてば式 ( 4 1 2 )は自明な解 x=Oを唯一の解とする. X =(A-, 1 / )ー1 ( A-Jl)x=(A-, 1 / ) 1 0=0
したがって,式 ( 4 1 2 )が自明な解 x=Oに加えて有意の解 x*Oをもつためには,行 列 A-JIが特異行列すなわち,その行列式が 0
au-, i a21
I A-J I I=
a 1 2
a1n
i・ ・・ a 2 n a22- ;
. anl
. an2
.• •
=o
( 4 ' 1 3 )
ann- A
でなければならない.つまり,式 ( 4 1 2 )が有意な解をもつためには,スカラーえは n 次方程式である固有値方程式 ( 4 1 3 )の(一般に複素数の)重根を含めて n個の解のいず れかでなければならない. 固有値 ; i=ふ ( i=1 ,2 ,. . ., n )を決める式 ( 4 1 3 )の係委女は, 当然ながら行列 A の成分である. いったん,固有値が定まると,それぞれの固有値を式 ( 4 1 2 )に代入することによ り,各固有値に対応する固有ベクトルを得る.なお,一つの固有値に対応する固有べ クトル全体に零ベクトルを加えた集合が部分空間を形成する(演習問題 4 2 ) . これを A の固有値ふに対応する固有空間 ( e i g e n s p a c e )と呼ぶ
また,次の例で見るように,固有値 Aが固有値方程式 ( 4 1 3 )の単根であるならば, 固有ベクトル xが(係数 cを除いて)一つ定まるが, m 重根であるときには,独立;な固 有ベクトルは最小で 1個,最大で m 個定まる.第 5章で述べるように,ある固有^値 A に対応する独立な固有ベクトルの個数はその固有空間の次元である.行列 Aが対^角化 可能であれば, m 重根である固有値 Aに対応する固有空間の次元は m である.対^角化 可能でないときは,行列 A に相似なジョルダン標準形の構造により定まる.
4章
固有値と座標系の変換
鵬4 1 1 固有値と固有ベクトルの基本性質 n次正方行列 A の固有値ふ (i=1 , 2 ,. . ., n )は Aに関する n次方程式の解であるから, 解と係数の関係より n
n
i = l n
i = l
① こ ふ =I : a i i=t rA , ②
Hふ =IAI,
式( 4 1 3 )の ;in-I の係数 X (-It 式( 4 1 3 )の定数項
i = l
を得る.また, ③ I A I= 0は固有値の一つが 0であることを意味する.
したがって, 0が固有値でな
いことと, A―lが存在することは同値である.
3( 1 ) ) . ④ 対角行列の固有値は, n個の対角成分そのものである(演習問題 4 ふ =au
(i~1,、2,
. . ., n )
⑤ 上(下)三角行列の固有値は, n個の対角成分そのものである(演習問題 4 3( 2 ) ) . 、
ふ =au (注意)
( i=1 ,2 ,. . ., n )
Ax=xはただちに A =Iを意味しない. Aが固有値 1をもち, xがその固有ベクトルで
ある場合にも Ax=xが成立するからである . Aが 2次正方行列ならば,二つの互いに平行でな
1次独立な)ベクトル xぃゎに対して い(
A 功 =X 1,A ゎ=ゎが成立して初めて,
A =Iと結論づけ
られる.なぜならば,このとき A(X1 X2)=(X1 む)であり,ベクトル xぃゎは平行でないゆえ
*
l x 1x 2 I 0であり, ( x 1 む)― lが存在する.
これを A(x1 ゎ) =( x 1 ゎ)の両辺に右からかける
と A =Iを得るからである . Aが n次正方行列ならば, n個の 1次独立なベクトル xぃX公..., X n に対して Ax1=x1,A ゎ =X 公..., A 凸=凸が成立する必要があることは明らかだろう 同様に, Ax=Oはただちに A = Oを意味しない.
表4 1の行列は,そこに示すように,その固有値のタイプが限定される. 表4 1 行列の型による固有値のタイプ 行列 実対称行列 エルミ ト行列 正定値実対称行列 正定値エルミ ト行列 直交行列 ユタリ行列 実交代行列 歪エルミ ト行列
固有値
参照箇所
実数
4 ,4 6 定理 4
正の実数
5 3節
絶対値が 1
証明は演習問題 4 5( 1 )
5( 2 ) 純虚数または 0 証明は演習問題 4
4 1 固有値と固有ベクトル
定理 4 1 異なる固有値ふ ( i= 1 ,2 ,. . ., n ) に対応する固有ベクトル X i( i n )は 1次独立である. 1 ,2 ,. . .,
証明)背理法による.固有ベクトルふ (i=l,2,. . ., n )が 1次従属である,すなわち,ある固有
jが j-1個の 1次独立な固有ベクトル X i( i=1 ,2 ,. . ., j-1: ;n-1 )の 1次結合七し ベクトル X て表される,すなわち, j ーl
( 4 1 4 )
X j = Lば i 1=1
と仮定する. X jは固有ベクトルであるから,少なくとも一つの係数 Ci(i=1 , 2 ,. . .,j-1S n-1) は 0でない. 式( 4 1 4 )の両辺に左から行列 A をかけると, J 1
I :叫 iXi
( 4 1 5 )
A江 j=
! = l
を得る.一方,式 ( 4 1 4 )の両辺に A jをかけると, j 1
ふXj=L 凸
( 4 1 6 )
X i
! = l
を得る.式 ( 4 1 5 ,6 )を辺々引くと, 1-I
I :叫 i一ふ)Xi
( 4 1 7 )
o=
z = l
となる.ここで,固有値はすべて異なり, ふ一心 である.
* o
また仮定により,少なくとも一つの係数 C i( i=1 ,2 ,. . ., j-1Sn-1 )は 0でないので,式
( 4 1 7 )の右辺係数 c l ふ一ふ)のうち少なくとも 1つは 0でない. これは「X i ( i= 1 , 2 ,. . ., j 1 : : ;n 1 ) が 1次独立な固有ベクトルである」ことに矛盾する.
したがって,定理は証明された.
圃 4-1-2 固有値と固有ベクトルの求め方 固有値と固有ベクトルを具体的に求めながら,それらの性質を確認する. 固有値がすべて単根である場合
, 2次正方行列
A =(~I~) の固有値方程式は
と座標系の変換
3 , , l 2 ー1
-A
=( , , ! -1 ) ( 1-2 )=0
であり,その解は A =1 , 2である .Aは異なる二つの固有値をもつ.次に,それぞれ の固有値に対応する固有ベクトルを求める.
i ) A=1の固有ベクトル 式( 4 1 1 )に 1=1を代入した連立方程式
(}I~) ( : )I ( : ) =
を解くと,
3 x 1+2均 =l x 1
すなわち, X 2= ーX I
x i+O ゃ =I x 2 '
を得る.なお,固有値が単根であれば,二つの式は必ず同値な式となるか,ある いは片方が自明な式となる(演習問題 4 1参照).
( : ; J= (~i),
X=(::)=
X !
これから固有ベクトル
X 1:1 壬意のスカラー
を得る.もちろん,これを
( n ,
X=[::)=(-~z) =X z
X z ' .イ壬意のスカラー
l
1 のスカラー倍であり,連立 -1
とかくこともできる.つまり,固有ベクトルは(
方程式の解が無数に存在する場合に対応する.そこで通常,「固有ベクトルを一つ 求めよ」という設問になる.
i i ). i l = 2の固有ベクトル 式( 4 1 1 )に , l=2を代入した連立方程式
[ }I~) [ : : )=2 [ : : ) を解くと,
3 功 +2 x 2=2 x i -xi+0ゃ =2 x 2
すなわち, X 1=-2X2
を得る.これから固有ベクトル
4 1 固有値と固有ベクトル
( n ,
X=[::)=(-:2)=X 2
X 2:1 壬意のスカラー
を得る.
朧
固有値が 2重根であり,対応する独立な固有ベクトルが 2つ存在する場合 2次正方行列
A=(~ ~) の固有値を決定する固有値方程式は
4-J. 0 0
4-J
=(J-4 沢=0
であり,その解は A=4(重根)である.この例では A の固有値は一つのみである.次 に,固有値 A=4に対応する固有ベクトルを求める.
(~ ~) (::)=4(::) を解くと,
4 x 1+O x 2=4 x 1 x 2 O x 1+4ゃ =4
すなわち, XぃX 2 :任意のスカラー
を得る.これから固有ベクトル X =[::]= X!じ]十
[ 『 ] ,
x ,
x ,心 2 :任意のスカラー
を得る.すなわち,独立な二つの固有ベクトル「]『]を得る
0
1
璽
固有値が 2重根であり,対応する独立な固有ベクトルが 1つしか存在しない 場合 2次正方行列
A =[~ ~I) の固有値を決定する固有値方程式は 2-A -1
1
4-A
=(A-3ド=0
1 4 2
第 4章
固有値と座標系の変換
であり,その解は J=3(重根)である.例 4 2と同じく A の固有値は一つのみである. 次に,固有値 J=3に対応する固有ベクトルを求める.
(~ ~1) ( : )=3 ( : ) を解くと,
2 x 1-x 2=3 x 1 功 +4 x 2=3 x 2
すなわち,
= ーXI
Xz
を得る. これから固有ベクトル
( : ; J (~J
X =( ::)=
=XJ
XJ :j 壬意のスカラー
を得る.例 4 2と同様に固有値が 2重根であったが, この場合は固有ベクトルが一つ しか存在しない.これは 5 5節で取り扱う,対角化できない場合にあたる.、
冒
固有値が複素数である場合
—-· 本節冒頭の式 ( 4 1 1 )は,ベクトル xの行列 A が表現する写像(変換)による像が, ベクトル xと同じ方向である特別な(固有の)場合であると解釈できる.だがもしそう であるならば, 2次元ベクトルを 0だけ回転する回転行列
。 )
(cosO -sine s i n e c o s
( 2 2 4項)は,ベクトルの方向を 0だけ変える 1次変換を表現するものであるから,「ベ クトルの方向を変えない」という性質を示すようなスカラー Aとベクトル xをもちえ ないのではなかろうか?とにかく,実際に固有値 Aと固有ベクトル xを求めてみよう. 2次正方行列
。 )
(cos0 -sine s i n e c o s の固有値方程式は
c o s0-; i
-s i n0
s i n0
i c o s0-;
=;i2- ( 2c o s0 ) , l+1
=[ ; t-( c o s0+i s i n 0 ) ] [ ; t-( c o s0-i s i n0 ) ]= 0 であり,その解は ; i= c o s 0士 i s i n 0(二つの共役複素数根)である.次に,固有ベクト ルを求める.
4 1 固有値と固有ベクトル
i ) A=c o s0+i s i n0に対応する式
(:~:。:
)( ゜: : )
=( c o s 0+ i s i n 0 )( : : )
~::n~
を解くと,
x 1c o s0-x 2s i n0=x 1( c o s0+i s i n0 ) 2c o s0=x 2( c o s0+i s i n0 ) x1s i n0+x
すなわち, X 2=ー i x 1
を得る.これから固有ベクトル
X~(::)~(_::!)~XJ
(~J
XI :任意のスカラー
を得る.一方,
i i )i l=c o se -isineに対応する式 1
( : : : 。 :~::n~)( ゜: : )=(cos0-isin0)(::) を解くと,
x 1c o s0-x 2s i n0=x 1( c o s0-i s i n0 ) 2c o s0=x 2( c o s0-i s i n0 ) x 1s i n0+x
x 1 すなわち,ゃ=i
を得る.これから固有ベクトル
( ; J
X = (::)=
=XI(:),
XI
j 壬意:のスカラー
を得る.二つの固有値は複素数であり,それぞれに対応する二つの固有ベクトル 冒
のいずれも複素ベクトルである.
例4 4の示すように,回転行列もやはり式 ( 4 1 1 )を満足する固有値 Aと固有ベクト
ル xをもつ.ただそれらは,行列の成分は実数であるにもかかわらず複素数である. 実際, もし固有値が実数であれば,ベクトルを回転させる回転行列が固有ベクトルを 回転させないという矛盾を生じたのである.ここで,複素数をかけることが複素数を 複素平面上で回転させることを思い起こした読者も多いだろう.つまり,この場合, 実ベクトルの実行列 A による方向を変化させない写像(変換)という式 ( 4 1 1 )に対す る解釈はあてはまらない.このように,実数係数の行列からも複素数固有値・固有べ クトルが生まれるという事情もあるので,本章ではとくに断らない限り,ベクトルお よび行列の成分を複素数とする.
144
第 4章
固有値と座標系の変換
4 2 固有値問題の紹介 式 (4-1-1)の有意の解を求めるのが固有値問題であるが,前節でその定義と基礎理論 を学んだだけでは,よほど想像力の豊かな読者でない限り,その有用性を理解するの は難しいだろうそこで,さまざまな分野において,興味深い問題が固有値問題に帰 着するのを第 6章で紹介するのに先立ち,それらのうちから比較的平易な例を取り出 し,固有値問題がどのように役立つのかを概観してゆこう先にも述べたように,こ こで 6 2 ,3節をじっくり読破することもお勧めする. 対角化により Anを平易に求める方法 行列の積の計算は煩雑であり,その n乗がの一般式を導くのは通常困難である.と ころが,行列 A と相似な (~-3 節および第 5 章)対角行列 D
ふ 0 . . . .•.
0
O あ
0
0
. . .
p-1.AP=D・・D=
゜
0 0 ...... 心
を発見することができれば対角行列 D の n乗 vnは次式のように容易に算出でき る(第 3章 ) .
秤 0 . . . . . . 0
o , ; i ; o. . . o Dn=
0 0・・・
゜
・・・J!
よって,がを次式のように容易に計算できる.
l r=pvnp-1
An=(PDP ー
なお,行列 A からそれと相似な対角行列 D を得るのに必要な変換行列 P は,行列 A の n個の固有ベクトルを列ベクトルとする(第 5章).すなわち,行列 A に n個の 1
次独立な固有ベクトルが存在すれば, A と相似な対角行列 D を得ることができる..
6 2節 ) ー … . . . ,2次曲線の固有値による分類 ( 2次曲線(円錐曲線)には楕円,双曲線,放物線の 3種がある.その標準形,すなわ ち対称軸がデカルト座標軸に一致するものの方程式は,
4 3 座標系の変換・行列の相似
11
== 炉 一
2炉 2 一y b b
十一
(楕円) (双曲線)
2
x
=
2X万32x-2a 仰
である.
145
(放物線)
ところで, 2次曲線はその方程式が x , yの 2次式
a x 2+2bxy+c y 2+l x+my+n=0
( 4 2 1 )
であるものの総称である.このとき,係数 a , b , c , l , m , nに具体的に数値を代入した個々 の方程式 ( 4 2 1 )が楕円(特別な場合として点を含む),放物線,双曲線(特別な場合と して交わる 2直線を含む)のいずれであるかをただちに判別することは,例外を除いて 難しい.
4 2 1 )と等価な行列・ベクトル表示 そこで,式 ( ( 4 2 2 )
(x y)(: :)(;)+(/ m)(;)+n=O を用いると,(実)対称行列
A = ( :) ! の二つの固有値の符号の組合せに注目するのみで,表 4 2のように 2次曲線 ( 4 2 1 )が 楕円,放物線,双曲線のいずれであるかを判別しうる. 表4 2
2次曲線の判別法
固有値 二つの固有値が同符号
2次曲線
楕円 双曲線
一つの固有値が 0
放物線
冒
異符号
固有値問題のその他多数の例を第 6章で取り扱う.
4 3 座標系の変換・行列の相似 本節では,まず 1 3節で定義した抽象的 n次元ベクトル空間が,基底を導入するこ とにより n次元数ベクトル空間と等価になることを指摘する.続いて,座標系(基底) を変換するとその座標系におけるベクトルおよび行列の成分がどのように変換される かを調べる.
固有値と座標系の変換
なお,第 5章で詳しく説明するが,座標系(基底)を変換することにより,固有値を 「あぶりだす」ことができる.
4 3 1 抽象的ベクトル空間への基底の導入 (抽象的な) n次元ベクトル空間 vnの一つの基底,すなわち n個の 1次独立なベクト ルの組を e 1 , e公 . . . ' e nとする.このとき, vnに属する任意のベクトル xは , 一意的に
( 4 3 1 )
印 =x1e1+x 西+・・・十 X n e n X=L X k = l
と表現することができる.すなわち,任意の n次元ベクトル空間 vnは,一つの基底 ,・ ・ ・ , e n )を定めることにより,それと等価な(要素が一対一対応する) n次元数ベ ( e心 2 クトル空間をもつ. さらに以下に示すように基底 ( e 1 , e 2 ,. . ., e n )を定めると n次元ベクトル空間 ynの任 意の 1次変換 fはスカラーを成分とする n次正方行列で表現できる.基底 ( eぃe公.., , e n ) の 1次変換 fによる像を n
J ( e k )=I:呪 j = l
( 4 3 2 )
j
とかくと(添字の順序に注意),任意のベクトル X ( 式( 4 3 1 ) )の像 n
( 4 3 3 )
Y=LYjej j = l は ,
fが 1次変換であるゆえ, n
Y=f ( x )=f ( x 1 e 1+x西+・・・十 Xふ) = L 叫 ( e k ) k = l n n n n
こ叫 エ 虹 ・ ) 約
=L k = l j = l
j
(La j = l k = l
( 4 3 4 )
となる.式 ( 4 3 3 )と式 ( 4 3 4 )を比較すると, n
Y j=I:ajkXk k = l を得る.すなわち, 1次変換 fはスカラーを成分とする n次正方行列 A =( a j k )
で表現されている. 同様に, n次元ベクトル空間 vnから m次元ベクトル空間 vmへの 線形写像は, スカラーを成分とする m行 n列行列で表現される.
4 3 座標系の変換・行列の相似 本項の結果をまとめると,(抽象的な) n次元ベクトル空間 vnに一つ基底 ( eぃe 2 ,. . . ' e n ) を導入すると,その要素である n次元ベクトルはスカラーを成分とする数ベクトルに
n内の 1次変換はスカラーを よ っ て 表 現 す る こ と が で き か つ n次元ベクトル空間 v 成分とする行列で表現することができる.したがって,(抽象的な) n次 元 ベ ク ト ル 空 , n次元数ベクトル空間とまったく同一の構造をもつ. 間 vnは
4ふ 2 座標系(基底)の変換 e 1 ,e 公..., e n )から ( e i , e ; ,. . .,e~) (抽象的な) n次元ベクトル空間炉に導入する基底を ( に変更すると, n次元ベクトルを表現する数ベクトルおよび 1次変換を表現する行列 はいかなる規則に従って変換されるであろうか. 新しい基底である各ベクトルは,もとの基底の 1次結合 n
e 1=LPkjek
( j=1 , 2 ,. . ., n )
( 4 3 5 )
k=l
で表される.このとき,行列
よ ,"`
‘.'ノ 5 3
式
a
と る
‘
P
換 変
へ
標
卜
座
レ
デ
ヵ
e xe y )P , ( e re 0 )=(
P = (二 。 :~:~『 )
( 図2 9参照)
.
ら
極
ぃ~の e 用
e l
( 4 3 5 ' )
.
e
.J
1
2
を・ .標
ヽnノnれ .座 n2 n こ P l 加:. p
n
換,
の ︵e る
.ぶ ︵. か― ~~.□[ ― 乎 ヽ`'ノ 2 22 と , en 列 . . 12 p p p...
=変,
p
111一丁 12 p p p... n 1
(¥e
をと
底け 基か
t"u~
さて,あるベクトル n
L
氾 K
X=
( 4 3 1再掲)
k=l
が新しい基底 ( e i , e ; ,. . .,e~) の 1 次結合として n
X=L X J 外 j=l
( 4 3 6 )
4章
固有値と座標系の変換
と表されるとすると,
心j=l心 P k i e k= 泣( L j x ; ) k = l k = l j = l n
n
n
n
肛
( 4 3 7 )
虹
となるので,式 ( 4 3 1 )と式 ( 4 3 7 )を比べると, n
X k=LPkjXJ j = l
あるいは, ー
ー
,
pnn
n
ー IX2...,xn 9X
p l n 匝:.
ー
. . ..
加四:・恥
111
ー
12 p p p...
= ・:xn
X I 功
ー
ー
~~..?
まとめて,~= P x'
( 4 3 8 )
を得る.
1 ( j= 1 ,2 , ' ・・ ・ ,n )は 基 底 す な わ ち n個の 1次独立なベクトルであ 式( 4 3 5 )の左辺 e るから, Pの n個の列ベクトルは 1次独立であり, P は正則である.ゆえに,式 ( 4 3 8 ) より, p-lx=p―1Px'=x '
すなわち, x'=p―ix
( 4 3 9 )
を得る. j( j=I ,2 ,. . ., n )から新しい基底 e 1( j=I ,2 ,. . ., n )に変換する変換行列が つまり, e
Pであるとき,あるベクトルをもとの基底 e jで表したときの成分ベクトル(数ベクト
ル表現) xから新しい基底 e jで表したときの成分ベクトル x 'への変換は p 1で表さ れる.
これは第 V
2章のいくつかの例で経験している.
=Vxも +Vyey=Vrer+v0e。
= Pー1
(二゜~;) 二
冒
) じ ) じ
p— 1 =
デカルト座標系から叫 6回転したデカルト座標系への変換(図 4 1 )
釘 = じ ] ,•2 =( 『 ] ,e;=[二〗,吐=[二;)(n =2)とすると,デカルト座標 系の変換行列 P は
4 3 座標系の変換・行列の相似
149
y -l
‘ 、
‘ ヽ
/
ー [¥¥1 e ヽ
/
ヽ
ヽ ヽ
ヽ ヽ
/
ー ー ム ・ ︳ ︳ ︳ ー ー ︳ ︳ ︳ ー ー ︳ ︳ ︳ ︳ ー
2l e -
ー
︱ ︱
/
v i / ¥
92/ e
1 1←
゜
/ 6回転した二つのデカルト座標系
分 成 る
ナJ
9,`
こ
ぉ . .
系
e
‘.'ノ ,2
, Il e ︵
か
ヽー︱︱︱︱︱︱︱︱︱-=︱ーニー一;ら
1-2占 一2
X l 功
ー
X
=
ぉ こ `
系
占 一21-2(
1
6
冗︱
‘‘,ノ2 e , ー し‘
の ル
卜 ク ベ
_ ノ分 、︳ 冗︱6 成 冗l 6 n る .1 os s ナ ︱ ーc
6
e o s . s m
冗︱
6 sm ,
る あ
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あ で
『 x ;l
x '
[
冗
/ 、 , ' ’ ’ ’ ’ ’ ’ ’ ¥ =
ー
竺 3竺 3 eos.sm
••
冗一
= p
6 eos
冗︱
[
図4 1
X
ー
2 ー万
ー
=
p である.
一2 1-2占
竺
[
への変換行列は,
たとえば x=[二~)とすると
[> ! ] ( 二! l = [ f] = [ 二l i
x ' =P 1 x=
冒
である.
次に,基底の変換 ( 4 3 5 )に伴い,ベクトルの 1次変換を表現する行列がどのように 変換されるかを見てゆこう.基底 ( e 1 ,e 2 ,. . ., e n )により行列 a j k ) A三 (
で表現される 1次変換 fが,基底 ( e i , e ; ,. . .,e~) により行列
A'=( a ) 仇 で表現されるとすると,式 ( 4 3 2 ,5 )を用いて
章
固有値と座標系の変換
い = !位凡••;)心叩/(e;) = シ ふ
y=f(e
j = l
j = l
= 言 ( 『 例P i k ) e ,
j = l
i = l
a , ; e ,
( 1 : : : ; ;k : : : ; ;n:任意)
( 4 3 1 0 )
となる. 一方, yは n
n
n
n
n
=J(eい=苔 a冗=苫 aJ,~>必=~(苔Pijaj,)•,
y
( 4 3 1 1 )
と表される.式 ( 4 3 1 0 )と式 ( 4 3 1 1 )を比べると, n
n
Laij叩 =LPija 仇 j = l j = l
( I: ;i ,k: ;n:任意)
すなわち,基底の変換によ る 行列の変換公式 9
AP=PA'
あるいは, A'=p-1AP
または
A =PA'P ー1
( 4 3 1 2 )
を得る.一般に,正則行列 P により式 ( 4 3 1 2 )の関係にある二つの行列 A,A'は , 互 いに相似である ( t obes i m i l a r )という.. 定理 4 2 固有値方程式は基底の変換によっても不変である.すなわち,互いに 相似な行列の固有値はすべて一致する .Aの固有ベクトルを xとすると, p-1AP の固有ベクトルは p-Ixである. 証明)
I P 1AP-1 1 1=I P 1AP-, , 1 p 1P l=IP-¥A-J I ) P I ―1 I I A-J I I I P I=I Pー 1I P II A-All=I I IIA-All=I A-A l l =IP
すなわち, p-1APの固有値方程式は A の固有値方程式に等しい. また,
p-1AP(P-1x)=p-1Ax=p I心 =} l ( P I x ) であるから, p-1APの固有値 Aに対応する固有ベクトルは Pー I xである
4 3 3 直交変換• 直交行列 座標変換の中でもっとも基本的でかつ重要なのが直交変換 ( o r t h o g o n a lt r a n s f o r m a t i o n ) であり,直交変換の基底の変換行列が直交行列 ( o r t h o g o n a lm a t r i x )である. n次実正方行列 A の n個の列ベクトル a1,a互 . .,llnが正規直交系をなすとする.
4 3 座標系の変換・行列の相似
1 5 1
n
a丸 =Laki叩 =O i j k=l
このように, n個の列ベクトルが単位ベクトルであり,互いに直交するとき,行列 A を直交行列と呼ぶ.なお以下で示すように,直交行列 A の転置行列がも直交行列で あり, A tの列ベクトルである A の n個の行ベクトルも正規直交系をなす. 直交行列は下記の重要な性質をもつ.
① 転置行列が逆行列である. At=A 1 ,A t A =AAt=I
②
;:; : l : ; [ /
: / /l = I
( A x ) 1 A y=x t がAy=x t y ③ とくに,ベクトルの大きさ(ノルム)を保存する.
1 A x l 2=( A x ) 1 Ax=x t がAx=ぷx
④ 行列式は士 1のいずれかである. I A t A l=I A t lI A I=I I I=1 また, I A t l=I A Iであるから, I A l 2=1である. ⑤ 直交行列同士の積は直交行列である.
(AB)1AB=B t がAB=Bt/B=I
⑥ 行列式が 1の 2次直交行列は,すべて回転行列(二。:
~:~『)と表すことが可
4 ) 能である.(演習問題 4 ⑦ 直交行列の固有値の絶対値は 1である.(演習問題 4 5 ) ⑧ n次実対称行列 A,Bが交換するとき,同一の固有ベクトルをもち,同一の直交行
1③,演習問題 5 4 ) . 列により対角化できる(例 5 定理 4-3 正規直交基底 ( e 1 , e 2 ,. . .,en) から別の基底 (e~,e;, . . .,e~) への基底の変
抄舒子万l LP =( P k j )
固有値と座標系の変換
第 4章
152
n
e 1=LPkjek
( j= 1 ,2 ,. . ., n )
k=l
が直交行列であれば,新しい基底 ( e i , e ; ,. . .,e~) も正規直交基底である.
e / e 1=( 翫 叶 ( 土l=lPz伯 [ 饂 pp z 心 =f_pupzj=8iJ k=l k=ll = l l = l
証明)
幻
つまり,正規直交基底から正規直交基底に変換する, もっとも重要な 1次変換が直 交変換である.
I[ 3次元 2階テンソルの変換との関係] 6 ,7 ] . すなわち,二 テンソル解析のテキストでは,通常次のような記述をしている [ x , y , z ) , および ( x ' , y ' , z ' ) t による 2点 1 ,2間の座標の差、 つのデカルト座標系 ( 1 1 . x三 X2-Xぃ
2-Y 1 , △y三 Y
l , . z三
△x '三 x ;-x i ,
1 1 y ' =Y ;-Y i ,
l , . z '三社一 z i
Z2z1
の間の変換は
△x ' = ' Y x 1 x b . X+ ' Y x ' y / J . . y+ ' Y x ' z / J . . z △y ' = ' Y y ' xふX+ ' } ' y ' y△Y+o / y ' z / J . . z
( 4 3 1 3 )
/ J . . z ' = ' Y z 1 x b . X+ ' Y z ' y / J . . y+ ' Y z ' z△z
、、つ
Y x ' xは x '軸と x軸のなす角の余弦である. ' ' し , たとえば '
であり,
ー
[Vx>yvz
アx ' x=c o s ( x ' ,x )
、、’ノ ’ z , ’ y
, ︵ び
, x
お
よ
の
分 成
、、’ノ z
で'
系
~な ふす ︵
そ
の肌
’
を レ ︶じ ト同 クと ベ ち
ゎ
ち
目 ハ
ヽ~
ゎ
換 変
3 l 3
の
zvz
%乃
工 Z v z
+++
x >、
x >y>z
vYVYVY なけ す式四万乃 レ ヽヽ+++ ︶カ ソ¥│ _ _lvXVXVx ン x >x>y>z x 乃乃 テ (¥y 階分===
て
ー,成 >
そ系
しで
t
( x , y , z )座標系を 3次元空間内で原点を中心に回転した座標系.
4 3 座標系の変換・行列の相似
[ヽ ノはい
s
ー
ヵヽ
る
p
ナ J ・
こ
ぉ
,
’
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"'"'"'
四乃乃式
YYY
xy ' y yyガ り ま
xxx 四万乃.
ヽ >
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) ‘ , /,-
[‘
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カ↓ヽ
9.J
ま
, v ︶ 一
>x>y>z ら
` `
r,',
に従うものと定義する.これは
1 5 3
r ' = ( : : : : ) : である.なおデカルト座標間の変換行列 P は直交行列である. また,テンソル解析においては 3次元 2階テンソルすなわち 3次正方行列を変換則
り=L LYikYjlTkt=L LYikTkt丸
T
k = x , y , zl = x , y , z
k = x , y , zl = x , y , z
に従うものと定義する.これは式 ( 4 3 1 2 )の一例である
T'=p irp ー
,
こ
々
y y
xyz 乃乃乃
ー
xy 乃万
ー
tヽ~
=
p ︵
p.
xyz 乃四四
[
こ
5
.
↓ ヽ— し
な
な
ら︱︱
にで
か\\る ほあ
I[ユニタリー行列] n次複素正方行列 A の n個の列ベクトル a1,a2,. . ., anがユニタリー系をなすとは, n
a丸
=I :心 kj=Dij k=l
すなわち n個の列ベクトルが単位ベクトルであり,互いに複素ベクトルとして直交す ることである.
このとき行列 A をユニタリー行列 ( u n i t a r ym a t r i x )と呼ぶ.なお, n個
の行ベクトルもユニタリー系をなす(演習問題 4 6 ) . ユニタリー行列は直交行列を複 素行列に拡張したものである. ユニタリー行列は下記の性質をもつ.
① 複素共役転置行列が逆行列である.
A * t=A―, 1 すなわち A*tA=AA*t=I
と座標系の変換 ー
olnOzn:•Onn =
し な し
ー
t , ! ? l ! t ' . t
:内 ; : 系 丁 責 万 ; ; 呆 一 存 [ す
てある ]{¥'. ' . ' .
( A x ) * t A y=x * t A * t A y=x * t y
③ とくに,ベクトルの大きさ(ノルム)を保存する. 1 A x 1 2=( A x ) * t A x=x * t A * t A x=x * t x=l x l 2
④ 行列式は絶対値 lの複素数である. I A * t A I=I A―1I A I=I I I= 1 , 一方
I A* t iI A I=I A『I A I=I A l 2
ゆえに, I A l 2= , 1である.
⑤ ユニタリー行列同士の積はユニタリー行列である. (AB)*tAB=B吹 *tAB=B * f I B=I
⑥ ユニタリー行列の逆行列はユニタリー行列である. ⑦ ユニタリー行列の固有値の絶対値は 1である(演習問題 4 5 ) .
44 実対称行列の固有値と固有ベクトル 実対称行列 At=A ( x t A y=(AxYy)は,応用面においてもっとも出現頻度の高い行列 である.そこで,本節では実対称行列に特有の固有値と固有ベクトルの性質を調べる.
定理 4 4 実対称行列 Aの固有値 Aは実数である.それゆえ,それぞれの固有値 に対応する固有ベクトルも,実数を成分とするものを選ぶことができる.
証明)
固有値 Aに対応する固有ベクトルを xとする.いずれも複素数,複素ベクトルとする.
x * t A x=x * t心 = 心* t x 一方,
x * t A x=( x t A x * ) *=( ( A x iぶ)*=((心)t ぶ )* =,1 な* t x であり, x * t x* 0であるから, , , l *=J . すなわち, Aは実数である.その結果,実数係数の連立 1次方程式の解は実数であるから,固有ベクトルの成分を実数とすることができる
4-4 実対称行列の固有値と固有ベクトル
中吋称行列の異なる固有値に対応する固有ベクトルは直交する t l.
異なる固有値ふ ( i=1 ,2 ,. . ., n )に対応する固有ベクトル(実数成分とすることができる)
証明)
i=1 ,2 ,. . ., n ) とする. をふ ( x;Axj=x切X j=AぷXj
一方, x;Axj= 斗Atゎ=(Axi}1xi= ふx;xi
であり,ふ#心 ( i* j) であるから, X~Xj
=0( i= f :j )となる.
I[エ)レミート 1 子 万I J ] =A を満たす行列 A をエルミート行列 (Hermitianmatrix)と呼ぶ.エルミート行
A*t
列(複素対称行列ではない)は実対称行列を複素行列に一般化したものであり,多くの 性質を実対称行列と共有する. 6 エルミート行列 A の固有値 Aは実数である.
証明)
固有値 Aに対応する固有ベクトルを xとする. x*tAx= x * t心 = 心* t x
一方,
=
=
=
=
x*tAx (xtAな*)* ( x t A t x * ) * ( ( A x ) 1ぶ)*=((心)t ぶ )* ; t * x * t x
であり, x*tx: f : .0であるから, ; t *=Aとなる.
定理 4-7 エルミート行列の異なる固有値に対応する規格化 t 2 された(絶対値が
1の)固有ベクトルは,ユニタリー系をなす t l. なお複素対称行列の固有ベクト ルはユニタリー系をなさない.
証明)
異なる固有値ふ ( i=1 ,2 ,. . ., n )に対応する固有ベクトルをふ ( i=1 ,2 ,. . ., n ) とする x;1Axj=x ; 1心X j= 心x;1xj
t 1 後に定理 5-2により,固有値に重根がある場合にも, n個の直交する固有ベクトルが得られるこ とがわかる.
t 2 「正規化」ともいう
と座標系の変換
一方,
x ; 1 A x j= x ; 1 A * 1 x j= ( Aな;凡=心 x ; 1 x j=ふ x応 であり,ふ i f : .A j( ii f : .j )であるから, X内 ぅ =O(i-:f:.j) となる.なお Xi は 規 格 化 さ れ て い る の で
x応
=1である ( i=1 ,2 ,・ ・ ・ ,n )
45 ハミルトン—ケイリーの定理 n次正方行列 A の固有値方程式は,固有値 Aの n次方程式 n
I : c 江
凡( J )=Ill-Al=
( 4 5 1 )
=0
k = O
である t. 行列 ll-Aの余因子行列を A とかくと,式 ( 3 5 4 )より,
I l l . , . . .All=( l lA ) / J , . t=/ J , . t ( l l- A ) ・ ( 4 - 5 - 2 ) となる.そのすべての成分が Aのたかだか n-I次式であるから,余因子行列の転置
=
! J , . fは,係数行列 Ck( k 0 ,I ,2 ,. . ., n-1 )を係数とする Aのたかだか
n . : _ _I次多項式で
ある. n-1
1 1 t=I:ck1k k = O
式( 4 5 2 )に よ れ ば 行 列 Aは 1 i tのすべての係数行列 ck(k=0 ,1 ,2 ,. . ., n-1 )と交換 する.
豆 =
豆
K サ C k-AkACk)
k = O
( 1 k + 1 c k-1kckA) k = O
したがって,式 ( 4 5 1 )の A に行列 A を代入することができる(例 3 1参照)ので式
( 4 1 3 ) ,( 4 5 1 )より, 凡 (A)=L a 因
=An-( t rA)An1・ +・ ・ +(-ltlAI/=O ー
k = O
を得る.すなわち,固有値方程式に行列 A を代入した行列の等式が成立する.これが n 次正方行列 A に関するハミルトン—ケイリーの定理であり,その n =2 , 3の場合が,
それぞれ式 ( 2 2 2 4 )および式 ( 2 3 2 2 )である.
t 本節での記述の便宜上,使用する である
FA(A)の定義式 ( 4 5 1 )はこれまでの FA(A)の定義の (-lt倍
4 6 固有値の摂動展開
3次正方行列 A
滋
行列式 I A-i l / 1の i , j( i , j= 1 , 2 )成分の余因子を△ij, また行列 A-illの余因子行列 を A とかき,その転置行列を行列
c k(k=o ,1 ,2 )を係数とする
Aの 3次多項式に展開
すると,
~t
=[~:: ~:: ~::) [知— A)(a,, -A)-a,如 3 2
叫
2 ( a 3 3-A)+a 1招 3 2
の2 a 2 3-a 1 3 ( a 2 2-A )
3-a , 1( a , ,-A ) ( a , ,-A)(an-A )-a 1如 3 3 -a23(an-A)+a 1 3 a 2 1 a呼 2
=
a 3 1( a 2 2-i l )+a 2 1 a 3 2
J
a I 2 a 3 1-a 3 2 ( a u-i l ) (au-i l ) ( a 2 2-A )-a 2 1 a 1 2
=I : c k ; i k k=O
C2=[~
~n
釘1-a1~~aJ
[>:
CI=[-a,::a 3 3-a3::
Co=
~ ~:)
となる.ここに,記述の簡潔を図るため行列式凶の i ,j( i ,j=I ,2 )成分の余因子△;j
c k(k=o ,1,2)それぞれと行列 A は交換することが確かめら
を導入した.その結果, れる.
ー
,2 2
A
A 1
z : 3 2 , 1 1
ー
,1
A
,l 2,3 2
A 1,3 A 3 A
23 1,1
2AA
,3 3
A
,2
,
o clc
==
AA
AA
clCo
AI
、 ‘
│l │A ==
C外 = Aら =A
,—
4 6 固有値の摂動展開(固有値の近似解法 I) 本節および 5-4節では, n次実対称(エルミート)行列の固有値が解析的に求められ ない場合に援用する固有値の高精度近似解法を紹介する.以下,エルミート行列とし て記述する. まず本節では,固有値・固有ベクトルが既知である二つの n次エルミート行列 A,B の和の固有値・固有ベクトルを求めるのに際して,二つの行列 A,Bの成分の相対的大
1 5 8
第 4章
固有値と座標系の変換
き さ が 異 な る 場 合 す な わ ち A +sB(s≪1)と表現できるケースを考える. i=1 ,2 ,. . ., n ) , それぞれの固有値ふに対応する規格化された 行列 Aの固有値をふ (
固有ベクトルを X i , また,行列 Bの固有値を μ i( i= 1 ,2 ,. . ., n ) , それぞれの固有値 μ i に対応する規格化された固有ベクトルを Y iであるとする.簡単のために固有値に重根 はないとする. まず,行列 A,Bが交換する場合には,両者の固有ベクトル X i( i =1 ,2 ,. . ., n )と Y i( i =1 , 2 ,. . ., n )は全体として一致するので ( 4 3 3項⑧),適当に順序を変更して
ふ =Y i とすることができる.それゆえ, A+sBの 固 有 値 は ふ +s μ i( i= 1 ,2 ,, ・ . ., n )で あり,固有ベクトルは Xi(=yi)(i=1 , 2 ,. . ., n )である. そこで以下では,行列 A,Bが交換しない場合を考える .B(の絶対値)が 1に比べて 十分小さい (s≪1)とき,行列 A+sBの固有値および固有ベクトルは,それぞれ行列 A の固有値ふおよび固有ベクトル X iで近似されるであろう.そこで, A+sBの固有値 V iおよび固有ベクトル Z iの e によるベキ級数展開(摂動展開[参考文献 1 1 ] )による解 ( 1 )
( 2 )2
( 4 6 1 )
( 1 )
( 2 )2
( 4 6 2 )
V j=ふ+v . s+v . s+ ・ ・ ・ l l Z i=ふ +x. s+x. s+ ・ ・ ・ l l
を求めることにする.式 ( 4 6 1 ,2 )を固有値方程式 (A+sB)祐 =V i Z i
に代入し,
(A+sB)(ふ +x砂 +x~2)妥+・・・)=(ふ+ v?)s+v ? ) s 2+・・・)(ふ +x叫 +x~2) 妥+・・・) を得る.これを微小パラメータ
8 のベキの等しい項ごとに整理すると,
Axi―ふふ +(A 妙 +Bxiーふx?)-v1)ふ )8 仇
+(Ax戸 +Bx~l) ―ふx戸ー V凡l)X~l) -V戸x面+・・・=0
( 4 6 3 )
となる.式 ( 4 6 3 )は sの恒等式であるから, sのすべての次数のベキの係数は等しく なければならない.
したがって,
Aふ=ふXz ( 1 )
( 1 )
( 1 )
Ax. +V.l X i +B ふ=ふx . l l ( 2 )
( 1 )
( 2 )
( 1 ) ( 1 )
( 2 )
( 4 6 4 )
Ax. +Bx. =ふX . +V . X . +V . X i l l l l l l
と続く漸化式を得る.これから,展開係数 v~l)'v~2), . . .,x?¥x戸,...を順次求めること
4 6 固有値の摂動展開(固有値の近似解法 I)
1 5 9
ができる.まず,式 ( 4 6 4 )の第 1式は満たされている. さて,第 2式には未知数が v?),X戸の二つ同時に現れており,第 3式にはさらに v戸 , x戸の二つの未知数が新たに現れている.
これは一見すると,未知数を決定する方
程式の数が不足しているかのようである.このみかけの難点は,固有値問題特有の以 下の事情により解決できる.式 ( 4 6 4 )の第 2式を書き直すと
(A-ふl ) x 門=ー (B-vり! ) x i
( 4 6 5 )
となり,左辺の行列 (A-ふ/)は特異行列である.したがって,式 ( 4 6 5 )が解をもつ
4 6 5 )の右辺ベクトル S i三ー (B-v?)J)xiはある条件を満たさなければ ためには,式 ( ならないはずである ( 3 8 2項).以下,その条件を調べる. さて,ベクトル xり お よ び S iを,行列 A の固有値ふ ( i=1 ,2 ,. . ., n )に対応する規格 i= 1 ,2 ,. . ., n )の 1次結合 化された固有ベクトルふ ( n
n
x~I) = L 叩 X k , k = I
Si=L 肛 X k , k = I
趾 =x;'C-B+vり / ) x i
( vい は 後 に 式 ( 4 6 7 )で定まる)
として表し↑,式 ( 4 6 5 )に代入すると, n
n
心=区涙註k
(A-ふ/)L a i k = l
k = l
すなわち, n
n
I : ! 3
こ 叫 心 ー A心 =
註 k
k = l
k = l
となり,両辺の Xk(k=l , 2 ,. . ., n )の係数を比較して C Y i k ( A kー ふ) = f 3 i k
(k=l,2,. . ., n )
を得る.これから,
枇 =0
( a i i:任意),
C Y i k=
/ 3 i k
心ーふ
( k* i )
を得る.この結果のうち / 3 u=0は,ベクトルふ=ー (B-v り/ ) x i訊 行 列 A の固有値ふ に対応する規格化された固有ベクトル X i と直交しなければならないことを意味する. そのとき, x門は,解 n
I :凸 功 心ーふ
xり=auふ +
k = l " ' F i
t 重根のない場合を考えているので対角化可能である.
( 4 6 6 )
160
第 4章
固有値と座標系の変換
如:任意であり, 0とおいても一般性を失わない) をもつ.
さらに,
Xi と S i の内積をとると,
厄 = ーx;t(B-vり / ) ふ = ーx;tBふ+v門=0
x
すなわち,固有値の摂動項 v~l)
吟l) =x;tBxi
( 4 6 7 )
を得る.
第 2項以下も同様に求められる(演習問題 4 8 ) . 将来量子力学を学ぶ読者は,比較 的初期にこの近似解法に出会うはずである.
第 4章の演習問題
24 03
02 20
ー
009 058
小
[1 4 7
ー ︵
ー
002 020
[2 0 0
7 ー ‘ ' , ︵
ー
001 120 2 0 0
( 2 0 )
︶ 、 ` ' _ ︵︵
5 1 ︵︵
)0
、~[‘
2 0 0 4 l310
ー
~;]
009 050
loo
ー ︵
~l
︵︵
︵
[ ,
( 1 3 ) [~
l
‘,'/‘,'/ 49
00 13 !︳︳│︳, ︱ 13
! : l ー ︵
( 1 8 ) [: ;
1~2
‘_•I.j
[ ゜
1~2 『:
( 1 5 )[
、’ノ︶ ︵︵
( 1 2 ) [;
38
G~l
2420 1 0 0 3
( l l )
︵︵
( 6 )
(~!) (~!)
,'9) ‘ 27
( I )
04
ll
4 1 次の行列の固有値と固有ベクトルを求めよ.
︶
ll
︵︵
直
I
1 1ー:ー = l
4 2 ある行列の一つの固有値に対応する固有ベクトル全体に零ベクトルを加えた集合が部分空
間を形成することを証明せよ. 4-3 次を証明せよ.
( 1 ) 対角行列の固有値は, n個の対角項そのものである. ふ =au
( i=1 ,2 ,. . ., n )
第 4章の演習問題 ( 2 ) 上(下)三角行列の固有値は, n個の対角項そのものである.
ふ =au
( i=1 ,2 ,. . ., n )
~ c o s0 -s i n 0
4 4 行列式が 1の 2次直交行列は,すべて回転行列( s i n 0 c o s。)と表すことが可能であるこ とを証明せよ.行列式が— 1 のときはどうか.
4 5 次を証明せよ.
(1) 直交行列・ユニタリー行列の固有値の絶対値は 1である.
( 2 ) 実交代行列・歪エルミート行列の固有値は純虚数または 0である 4 6 ユニタリー行列の n個の行ベクトルもユニタリー系をなすことを証明せよ
圧直
*
4 7 複素対称行列の固有ベクトルは一般に直交しないこと (x・ y= x * t y 0 )を確認せよ
直 4 84 6節の方法にならい,固有値の摂動項の第 2項 v 戸を求めよ
章
第
正方行列の対角化および標準化と 非正方行列の特異値分解 加法・スカラー倍を除き行列の演算は一般に煩雑であるが,対角行列 ( d i a g o n a lm a t r i x ) の演算はスカラーの演算並みに簡明である
0
0
゜
0 ann
o An
0
゜
゜
D=
00
a22
O A2
0
1O A
00
au 0
゜ ゜
の固有値そのものである(演習問題 4 3 ) .
まず,対角行列 D の各対角項はその行列
0 0
また,対角行列 D の n乗 ( n : 自然数)は対角項を単に n乗したものであり,逆行列は 対角項の逆数をとったものである. , , i n 1
0
0
, ; i n 2
゜ ゜ ゜ ゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ l 。 ゜゜ ゜゜ ゜ ゜゜ ; i 1I
. . .
12 1
げ =I:
,
.
D-1 =
柑
. . .
, 1 n 1
さて, 4 3 2項で定義したように, n次正方行列 A と B について, p-1AP=B
を満たす正則行列 Pが存在するとき, A と B は相似であるという.また,互いに相似 である n次正方行列 A と Bは,すべての固有値が一致する(定理 4 2 ) . そして,正方 行列 Aが対角行列 D に相似であるとき,すなわち
5 1 実対称行列と正規行列の対角化
1 6 3
p-1AP=D であるとき, A は対角化 ( r e d u c t i o nt od i a g o n a lf o r m )可能であるという.
したがって,
一般の対角行列でない行列 A が対角化可能であれば,隠れていた固有値が対角化によ りあぶりだされてくる .Aと相似な対角行列 D の各対角項,すなわち n個の固有値が 行列 A の固有値に一致するからである.
さらに,対角化を行う行列 Pの列ベクトルは
n個の固有ベクトルである. このように行列の対角化は固有値・固有ベクトルと深く 関連している. 本章では,特別であるがやや簡単な場合から順に議論を進めてゆくことになるが, 5-2節の最後に証明するもっとも一般的な「対角化可能であるための必要十分条件」を
あらかじめ提示しておこう.
1 n次正方行列 Aが対角化可能であるための必要十分条件は, n個の 1次 定理 5 独立な固有ベクトルが存在することである. このとき,行列 A を対角化する行列 P は , A の固有ベクトル Xi(i=l , 2 ,. . ., n )を列
00
.. . . . .
D=
.o . .
P= ( ふ X2・ ・・Xn),
OAlo
p IAP=D,
Alo
ベクトルとする正則行列である.
゜
0 0 . . . 0 ふ
5 1 実対称行列と正規行列の対角化 5 1 1 実対称行列の対角化 5 3節で学ぶ 2次形式をはじめ,実対称行列を扱う機会は多い. また量子力学にお ける観測量はすべて,実対称行列を複素行列に一般化したエルミート行列である.そ して,実対称行列,エルミート行列の固有値はすぺて実数である(定理 4 4 ,4 6 ) . 実対称行列には演算を簡潔にするいくつかの性質がある.その第 1が次の定理で ある. 定理 5-2 n次正方行列 Anが実対称行列であれば, n個の規格化された固有ベク
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解
ト ル を 列 ベ ク ト ル と す る 直 交 行 列 凡 に よ り 対 角 化 す る こ と が で き る t.
00
.. . .
.o . .
0 わ
ふo
••
O
p~ー1 A n凡 = 尻An凡=
゜
0 0・ ・ ・ 0 An
証明)
数学的帰納法により証明する
A 2は次のように表すことができる. A2~(::: ::)~(a1 約) = ( : D , a 1 2 = a 2 1 行列 A 2が異なる二つの固有値をもつときには各々一つずつ,合計二つの固有ベクトルが存在
n=2の場合,実対称行列
し,固有値が重根の場合にも少なくとも一つの固有ベクトルが存在するので,その固有値と規格 化された固有ベクトルをそれぞれふ, X1 とする.
X1 と直交する規格化された基底ゎが存在する
(シュミットの直交化法)ので,これらにより, 2次直交行列 朽=(ふ
Xガ
=( : : : ::)
•
をつくる.朽とその逆行列(直交行列の逆行列は転置行列である: 4 3 3項①)
X l
ゎ
︶/
、
んん t2t2 x x
Alo
( ︶=
X l わ t22
t2t2 x x
AA
='直理
/—し
Al0
ゎゎな
。5 ぁ 2•
x 丘で致る
る角 あ対 での
列て
子 ノ イべ
称 •す 対 のた
実ぃ列 、用一丁 ヵノイ を 角 2 A と対 でこ 号る訊
等あよ のでお 目底︶ 2 番基 4 4 交
い
X lす
ぉが定
1
2 22 ' │ . : x AA 、 こ t1t2 ∼ x xx る と る
い い
/l
と
4
I A釦凸仕
X l t X 2ん 朽 番 の ー 261 AAltX2
︵
F2こ
l Aと
号一ぃ 0 万 =ふ 丁 、‘,'‘2 ノ イ 等が用 x_ ︳ 角の値を ん叶二旬馴卯
ー
tXl1tX2AlOF2最
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/ーー\/—し’び
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2
A
朽ゎお
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,ぢ.
にをこ項
りる’ら固 よ得とさは
l
J :
(~l
P 2 1= = ( : : :
9
P21A必~(~!),
=x;A立 2
A2
t 定理 4-5の 注 に か い た よ う に 定 理 5-2により,実対称行列の(重根を含む)すべての固有値に対 応する固有ベクトル n個を直交するように選ぶことができる.
5 1 実対称行列と
する.
ー +
k
=
ー +
tk a
ー
K サ
++
ーー+
ー
ー
k
tlt2+ tk x x x
ゎ
II
l
+
ヽ、~ノ
.
IIIIII
ー
ー
1_1-
i.. 二
-
X I k- . ,2+x-XKAA 11 ・:A-AxAl t+ k+ tサ k〇— + 1xxtk竺 ・X-tXkt -XI
1-
~~..~二
ー
=
いいサ t xxtk
ふ
o
-x-
ー
... o A l o
o
﹄
... o
x
・:A tXK サ ー tXKAltXK+
丘 5・:5 心 5
l l=
A l o ... o (¥Alo
し
+l . 1X I わ k ・ : x - x Kl-2 + AA A o :A : . X t2t2 xxt2t2Ax-Xt2-
•
x xkXk:.A AA ー
2
tk x
+
ー
A x
.... . . . .. ... ゎゎ AA
tlt2 x x
... o
=
Alo ー
+
ー
ヽ~
k x
A
k x A . . .
tXktXい
•••
•••
A 列
子 ノ イ
ー
1+
ー ー
... 狂
aa
l k
++
taー ta2 ...
1 },
る す
明 正,,,,n2 を と こ 3
2 x
X l
A
ー A ︵
屯:. tXl1t
II ==
x~Axk+l
k a
ー
tk+ tk x x
ー
A
x~Ax2
、_︳︳︳︳ーノス
.... サ
2 k a ー
k a
= p p
ふX和
す
~~..~
1222:・
aa
ll1 12.+ aa ー
= +
ー
砂 Xk+l
X
a i j=aji k
A
砂 X1 Xげ X2
•••
k+l個の規格化 X1 とする. X1 を含む
の固有値の一つを小,その規格化された固有ベクトルを
••••
X
00:•Ak
し
で
.命
~題
立 ~ ~...~成 .. 0 カ
OAz
次に, n=kのときに命題が成立する,すなわち, o ... o /A l1 ]
=+ kk pk=
An ー -K' P
・定 仮 と
—
・ ・ ・ Xk Xい )
p=(X1 X2
この証明は,重根の場合を含むことに注意 を得る.すなわち, n=2のとき命題は成立する.
された直交基底により,直交行列
をつくる.その逆行列(転置行列)
X
p 1=
x~
により,
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解
第 5章
l-
0-_1
I-l
II
.-
︱︱
-t
-i
ー
o
k
111_111
[IIIIIIIIl
=
[-A-
〇
A l o
ー
•••
( 5 1 1 )
ー
x2 +
A
ー
+1
tk+ x
ー
ー
tk x
k x
:A
k
A
=
2+ k x x A :・ A t2 t2 x x
[
を得る.んは K次実対称行列
であり,その固有値は行列 Aぃ の ふ を 除 く す べ て の 固 有 値 i l 2 ,ふ,..・ ,i l k + l に一致する らば,行列 A k + lの固有値方程式は,式 ( 5 1 1 ) と定理 3 6の系により, ( i l-ふ) I ふー i l / 1=O
となるからである. ー
︱︱
・︱︱
〇 ﹃ ︱1︱9 9 1 9 9 9 9 1 1
P︱︱
.-︱
.-K-
l-
..︱︱
︱︱
・︱︱
.-︱
0,'IIIIIIII
ー ー +
=
Q k
lo.o
仮定により存在する,心を対角化する K次直交行列凡を用いて, k+l次直交行列
をつくると,定理 3 5により,
ふ
ふ
I
'
=Qf+1
I I I I
゜ 2
A k ' Qぃ=
ー
炉
A
I I I I I I I I I I ____________ . ! I
0
, I
'
I I I
00
゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜
゜o ゜
(PQ い)1A(PQ い) =Qi+1P-1APQk+I
すなわち,対角行列を得る.ゆえに定理は証明された.
したがって, PQk+lが行列 Ak+l を対角化する直交行列であり,基底の変換
y=(PQい)tx を行うと,
Lふl k + l
=
=
xtAk+ix yf(PQk+1iAk+1CPQk+1)Y
i = l
を得る.
なぜな
5 1 実対称行列と正規行列の対角化
167
逆に,実正方行列 Anが直交行列により対角化可能であれば Anは実対称行列であ る.なぜならば,尻An凡 = Dとおくと,
An=PnDP~ A~= PnDt尻 =An を得るからである.
5 1 2 正規行列の対角化 自分自身の複素共役転置行列と交換する正方行列,すなわち,
A n A : t= A : t An を満たす Anを正規行列 ( n o r m a lm a t r i x )と呼ぶ.実対称行列,ユニタリー行列,エル ミート行列,歪エルミート行列は正規行列である.定理 5 2を複素行列に一般化した, 次の定理が成立する. 定理 5 3 正規行列 Anはあるユニタリー行列 Pにより対角化可能である.
p-lAnP=p*tAnP=D その逆も真である.
したがって,正規行列の固有ベクトルは直交する.
この定理を証明するためにまず定理 5 4を証明する.この定理はそれ自身が有用で ある. 定理 5 4 シュール ( S c h u r )の定理
任意の n次正方行列 Anは,ユニタリー行列
凡を介して上三角行列に相似である.
ふ C 1 2 . . .. . .. . . C 1 n 0 A 2 C 2 3 ・・ ・・ ・ ・C2n
p~ 1 A n凡 =p~tAn凡=
。•
ー
゜ 0 0 . . . . . . 0
証明) 数学的帰納法による. n=2の場合
C n 1n
心
よび標準化と非正方行列の特異値分解
A2=(:~~
) 二
行列 A2が異なる二つの固有値をもつときには,各々一つずつ合計二つの固有ベクトルが存在 し,固有値が重根の場合にも少なくとも一つの固有ベクトルが存在するので,その固有値と
x i t功 =1 と規格化された固有ベクトルをそれぞれふぶ lとする. X 1 と直交する規格化された基底ゎが存 在するので,これらにより 2次ユニタリー行列
: : : )
P2~(r1 r2)~(::: を得また,その逆行列
( : n
P z l=
=( ; , :
t )
により,
:f~:::)
P:,:1A2朽~[:;:)(ふx1,A2む) =(;
さらに, A2と P 2 1A2P2の固有値が一致すること(定理 4 2 )および,上三対角行列のす
を得る.
べての対角項は固有値であること ( 4 1 1項⑤)を用いると,
戸必={ふ C 1 2 ) ,
,A =X, 2 江2
P
, ! 2
0 心
を得る.上の証明は重根の場合を含むことに注意する 次に, n=kのときに命題が成立する,すなわち,
ふ C 1 2 . . .. . . C 1 n 0 A 2 C 2 3 . . . C z n
P;1An凡=
I
C n l n 0 0・ ・ ・ ・ ・ ・'1n
11 ++ kk
...
+
ー
k む 含 を
.
xー
る
xー
す と
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ベ列
有行 固一 たリ れタ さ二
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ダ の ニ ・. ユ
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A k規 <
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alazak の よ
a z z : ・
k { •
~~.~底)ノイ
.....心基ぃ転 x 役 2 を一
叩
=固
サの A
ー 1 21 1 ・・・ +南 aaak1 ︵\有れ
と仮定し, n=k+lで命題が成立することを証明する.
ttt+
*1*2 . x x x ..
p 1=
*kt
ー
*K x
1 1+ ++
ー
l l+ ++ ..
ー
k
K
xkXklX ー
t+
*K x
ー
o-
IIII
︱︱ ︱︱ ︱︱ ・︱︱
.-︱
p-
1911191i
.-K-
ー
~一
oi
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Q k
︱ ︱ー
ー
ー
+
k
+
ー
k-
•一
•一
ー
︱
IIIIIIIII-
Q k
cー-
.-
.. -A
'-
2 ー
C-
ー
A
ー
p
ヽ~
Qk p ︵
ー +
ヽ~
*
A t
k
+
︵ー
p
Q
k
+
ー
︱ ︱
*K
t+
Q
ー
k
+
pー
Q
k
+
ー
-l
ぃ t Q
ー A 0. .・0
をつくると,定理 3 5により,
KA AKA 材 ー材 2 X x
ー ヽ~
= +
ー
ー
k x +
k
A +
ー
k x k
A
.
ー
x2 +
k
A
xー Aー ︵
( 5 1 2 )
=x:'Ak+1も elk
. .o Alo .
材
x~~1Ak+1X2
ー対:・吋 x K # x k T l X
│
= k
+
ー
p
ー
A
p
ユニタリー行列
」 c kは K次正方行列であり,その固有値は行列 Aぃ の ふ を 除 く す べ て の 固 有 を得る.ここに,
••
c ; ;
{ふ 1_~'!_:~: ロ ] ,
呼Ak+1X2 埒Ak+1X2
169 5 1 実対称行列と正規行列の対角化
により,
0 :
5 1 2 )と定理 3 6 値心ふ,・ ・.,Ak+I に一致する.なぜならば,行列 Aぃ の 固 有 値 方 程 式 は , 式 ( の系により,
( , l -小)I C k-JII=O
となるからである
仮定により存在する, Q を上三角行列に帰着させる K次 ユ ニ タ リ ー 行 列 凡 を 用 い て k+l次
ー k-
j
l i +
IIIIIIII1
PI-
j 1C-
pK-
▽臼一︱
k
・-K .︳ .︳
.-A. .-
ー
j1I
+-
j p ー
C1-
▽戸ー︳
k
ー
•ー
t炉
ー
1999199
A0:.o I I
Q
=
第 5章
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解 炉炉
11
•C.
,1,2 c c
=
︱
︱
_ _ IIIIII-
o
. ,3 2
..
I C 1 2心
ふ〇:・
ー
l _ +
K-
j
-l
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cー
や芦︱-
k
. -- P
k.-Pk.A
•l-k-
ー
+-
j
j p 1-
0
IIIIIIII
lc -l
ー
=
0
▽戸—
k
A 、 1
│
170
,
Ckk +l
0
0・ ・・ 0
Ak+l
となる.すなわち,対角項に固有値が並ぶ上三角行列を得る.ゆえに,定理 5 4は証明された. 4により,任意の n次正方行列 定理 5-3の証明)定理 5
An は ユ ニ タ リ ー 行 列 凡 を 介 し て 上
三角行列に相似である
ふ
C1n
C12
゜ ゜ ゜゜ ゜ あ
C2n
C23
が A.凡 = 柑A,凡 = I,
Cn-In
ふ1
したがって,
ふ
C12
ふ
C1n
CJn
C12
゜ ゜ ゜ J ゜ ゜゜ ゜ ゜゜ ゜ ゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜゜ ゜ ゜ ゜ A2
C23
あ
C2n
C23
C2n
P;1 = Pn
A n =Pnl :
IP:t
Cn-ln
. . .
を得る.
C;~n
An
これの共役転置をとると, , l * 1
C* 1 2
A~t = PnI :
. r l * 1
P;1 = Pn
C2 *3
C* l n
となる
C* 1 2
; t 2 *
, l 2 *
C2 *3
C* I n
c n *-ln , l n *
: IP~t
c n *-ln , l n *
ゆえに,
゜゜ ゜ ゜ ゜ : I ゜ 年ふ~n J l ゜ ゜゜ ゜
ふ
C12
あ
An 柑
C23
=叫:
C1n
; t * 1
C2n
1 2 C*
p~tpn
. . .
, l 2 *
杓
C2 *3
cin
c n *-In , , l n *
5 1 実対称行列と
p*t n
。•
1
o
ー
n
を
1
=
る
あ
V I
n )n ー
, こ ,1 様
項
j .I
は
ベ
て
゜
成な
n 1 "リ ︳ダと *n2 r C1
ー
n辺
n
.o
o
た
さ
1明
’ 'VI
=. l1e .j
..
2
12c
. . ヽ し +ー
o
1 1
P . = ( x ,x 2 ・ ・ ・ x . ) , [x,=[:~]!ま卦〗柑各イヒさ:/1.tこ固有ベクトル]
︳ An c
心~
n c 1 *n
る~ ぶl*C23:·
ー
行列
、 ln5:・ ccn .
. o
..~で
..
~~..o
~23
. . .C
gわ O :
o
Alo:・・:O ('す ー 00 . . .
... . .....
0
c角 ~0..~’対 .と非
*
り C12:・・: cln す 較
=
/ . , ' ’ ’ ’ ’ ’ ’ ’ ' │ 、 ノ 上同
1 、
... . .
•O
12:··:
n ー
* C ー 両+~#れ
し
gdc ぶ3*C23:の ·~
In5:・ cc
Il ______________
ヽ︶.=
塁
0
..
lO -TIA . . .. ..ノイー― ••
A な 正 ︵正 C2, n ︱ ︱ . . . cら il l こま . . な +え . . 理 ば 12 ゅ=定 ~23·~ .C..1j ・れ .I A C, け る .......... に gゎ ななえ とゆ
•••
Cn-ln
゜゜ である. Anが正規行列である,すなわち,
oo . . . o心 分 る
••••
ふo:・・:O で
であるから,
A n 0 I n
C2n C23
五心° . A~tAn =叫: cら
, l * )l0 n ... • .. C* 1 1 l n c*
C1n
0 A i
0 C
c n *-1n ; t n *
n
゜ ゜ H となる.一方,
: lp~t
゜
l J五 c:~n
0 0
ふ C12 0 あ
゜ ゜ ゜ ゜ C2 *3
=Pn
心 C* 1 2 C2n C23
0 あ
1A i 0 C1n C12
ふ
An
尼 =A~tAn
圃5 1 3 実対称行列と正規行列のスペクトル分解
本節でこれまで見てきたように,実対称行列は直交行列,また正規行列はユニタリー
n
1
kn
x P .k A n を A k
n
苔麟 =の,
1 -︳ ︳ ︳ ︳ ︳ ︳ ︳ ︳ ︳ = = = = ︳ _ ︳ ︳ ︳ ︳ ︳ ︱ ︱ ︱ ︱ ︱ ︱ n ︳ ・ ・ ・ ︱ ︶
; ; ; ぇこ
、k k k k と n ︶ KnL 負た 3 .....3
xxx l k 吐 xxx ....
k るす ;あ k
一丁.
で略 u ダ
然 自 の
A n a4
i
. る こ ー `
簡
ー
A
k
mk
px
=
▽ 曰 n
kkk
*n*n x x l k 注 x x x.
kkk
n
*n x k
*
A
mk
*1*1*1 x x x lkzknk x x x. ー
n
▽ 曰
*K x
t
=
xk
曰釦
mk.
A
=5
n 区
ヽ 、 ー /
召 "
.ー
4
伊
︵ る あ で
XnkX2k
kk
kkk
-n p m
p n
= l
w
Fn D n P n
m
c A
*
*2*2 x x x... k k 12n x xx
ヽ
*1*1*1 て x x ... x tノイ l k 凶 n k 影ぶめ 寸 xxx 身乎 わ ー l の l AK と き へ︶ を xkon 算 n
こ 曰
=ょ出演ー
レ
に P eい こ ク こ角牛 文
cs
is の t * K t O x *kp k m A nx D k x x k o AC = e iま d 舟 犀 ▽]曰 xk l a 分 吋n D P
Pe_-ptr AK C
n
こ 曰
pn R
る︶の印
きト nベ でク A 現ぺ列の
pn
P n
との数
m
A n
X2kX 2k
•••
ー︱ ・分.レスま= 身
=ょ
e k 自□ k)
t * e k
n
AAnD こ曰 に
ゅ
*
•••(
=え︱︱表ス行
X1kX 2k
. . . 0 .
( k行 k列のみ 1 )
. . .o k
=LA.kl -
=D=I :
IO•••
An1
.
P
*0 なので,直交行列によるスペクトル分解はできない.
X~Xj
t 実非対称行列では,一般に
k
k=l
゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜゜ ゜ 12
An の場合とする.
により,次のように対角化される.以下,正規行列
゜ I (0
ふ 0
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解 第 5章
172
p~ 1An凡 = 杓AnPn ー
線形演算子のスペクトル分解[量子力学など]
量子力学にはハイゼンベルクの行列力学とシュレデインガーの波動力学による等価
な二つの定式化がある.ハイゼンベルクの定式化においてはすべての物理量はエルミー
ト行列 H であり,系の状態は状態ベクトルで表される.一方,シュレデインガーの定
1 7 3
5 1 実対称行列と正規行列の対角化
式化においてはすべての物理量はエルミート(線形)演算子
Hであり,系の状態は関数
で表される.関数を抽象的ベクトル ( 1 3節)とすれば線形演算子は行列で表現される ので,両者は等価である.量子力学の二つの記述方法の対応表を表 5 1に掲げる.た だし,関数と等価なベクトルは一般に
oo次元であるため,有限次元のベクトルの場合
に加えてさらに詳細な取扱いが必要となるが,本書ではそこまで立ち入らない. 表
5 1 量子力学の二つの等価な記述方法の対応表
創始者
ハイゼンベルグ
シュレディンガー
記述形式
行列力学
微分方程式
物理量
エ)レミート行列
演算子
観測値
行列の固有値
微分方程式の固有値
物理現象の状態
複素ベクトル(状態ベクトル)
波動関数(状態関数)
固有状態
固有ベクトル
固有関数
ある観測値をとる 確率
状態ベクトルとその観測値に 対応する固有ベクトルとの内 積の絶対値の 2乗
波動関数と固有関数の内積 ( 1 3節)の絶対値の 2乗
そこで,以下,行列形式を用いる.エルミート行列 H は正規行列であるから,次の ようにスペクトル分解することができる. n
H=PnD だ
n
=LilkXぶ k = l
= L間 k = l
Xk
ここに, nは 00 (可付番無限)である場合が一般的であり,
( 5 1 3 )
さらには固有値が連続な
値をとり(連続スペクトル),式 ( 5 1 3 )の Kに関する和を積分で置き換える必要が生 じることもある.固有値の集合{心}は物理量 H のとりうる観測値の集合であり,物 理量 H のスペクトルと呼ばれる ( 4 1節).対応する規格化された固有ベクトルの集合 x応=妬)は,系のとりうる状態の集合であり,それぞれの固有ベクトルは固有状 {叫 (
態ベクトルと呼ばれる. なお,エルミート行列の固有値{心}は実数である(定理 4 6 ) . エルミート演算子の固有状態ベクトルによるスペクトル分解を用いると,次のよう にさまざまな演算が簡略化され,かつ固有値に関係する事柄の見通しがよくなる.
① 系の量子的状態 yは,一般に物理量 H の固有状態 X k(k=-1,2,. . ., n )の重ね合 わせである. n
y=L a 江k
( a k:スカラー)
k = l ただし, yは規格化されている.
( 5 1 4 )
174
第 5章
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解
La 匹 = L崎 k = I k = I
=1
このとき,物理量 H の測定値が A kである確率 P t ( H ; , i k )は , P r ( H ;A k )=l a 記
である. 式( 5 1 4 ) )にある系の集合に対して物理量 H の測定を多数回行 ② 同一の状態 y( う場合,物理量 H の測定値の平均 Av(H;y)は , n
n
Av(H;y)=L 心 P r ( H ;A k )=L Aka 匹 k = l k = l n
n
回 t外akむ =I.:ca因)t心(a心) =y*tHy
=I: k = l
•
( 5 1 5 )
k = l
である. また,物理量 H の測定値の 2次モーメントは n
n
M2(H;y)=Av(H 臼y)=区心 Pr(H;Ak)=L 心a;1ak k = l k = l n
n
=I:心 x苫 a心 =I:ca 因)渇 (akXk)=y * fがy k = l k = l
( 5 1 6 )
であるから,物理量 H の測定値の揺らぎの 2乗平均である分散 Var(H;y)は , 式( 5 1 5 ,6 )を用いると, n
n
Var(H;y)=L ( 心ー Av(H;y))2Pr(H;A k )=L凶—炉Hy)河ak k = l k = l n n n =I:社x 苫 a江 k-2L , i k y * fHyaza 戸 L(y*tHy) 河 ak k = l k = l k = l =y*tH2y-( y * t H y ) 2=M2(H;y)-( A v ( H ; y ) ) 2
である. ③ 一般に,異なる演算子(行列) H,Kは交換しない. HK-:J:.KH
しかし, H,Kの固有ベクトルが一致するならば, n
K=PnD 庁
=LμjXjXY J = l
となり,式 ( 5 1 3 ,7 )より,
( 5 1 7 )
5 2 一般の正方行列の対角化
1 7 5
H K =(PnDP;1)(P心p~ー1 )=PnDDP~ー1 n
n
こ 団=
=Llkxkxt~
μjX j = l
k=l
n n
n
対=L
L L 心μjXkbjk k=l j=l
如 心xt
k=l
n
=L如 kPxk k=l
K H=(PnDP~ー 1)(PnDP~ー1 )=PnDDP~ー1 n
n
n n
n
k=l
k=l j=l
k=l
乃こ心xぶ =L L μ j A江 jふぶ=I :如 心x;t
=LμjXjX 1 = l n
=I :心μkP
功
k=l
となる.よって,両者は一致し, H,Kは交換する.逆に,行列 H,Kが交換す
4 ) . るならば,両者の固有ベクトルは一致する(演習問題 5
•
5 2 一般の正方行列の対角化 正規行列(実対称行列を含む)でない正方行列は対角化できないことがある.次の定 理が,対角化可能であるための十分条件を与える. 有値がすべて異なると
証明) n個の固有値がすべて異なるとき,すなわち単根であるとき,それぞれの固有値に属する 一つずつの固有ベクトルが存在し ( 4 1節),それらは 1次独立である(定理 4 1 ) . したがって, {ふ口は行列 A の固有値},
{ x i囚 は 行 列 A のふに対応する規格化された固有ベクトル} とするとき,正方行列
P =( ふ X 2 ・・ ・ふ) 1が存在する.このとき, は正則行列であり,逆行列 p
AP=A(x1ゎ・・・む)=(ふ X 1 あX 2. . .A nふ)
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解
゜ ゜ " ) I, ゜ ゜ ゜ ~J ゜゜ ゜
0 あ
0 J 2
=PD,
=(X1 X 2・ エ
゜゜ ゜ ゜ ゜ l~ ゜ ゜゜ ふ
ふ
D三
. .
ふ
が成立する(この証明において,固有ベクトルが 1次独立であることのみを仮定しており,固有
00
.. . . . .
•
OAn
.
. ,
.O
゜ ゜
p-1AP=D =
. . .o OAzo
Alo
値が重複していてもよい).ゆえに,
を得る.
行列 A の固有値方程式(式 ( 4 1 3 ) )の根,すなわち固有値の中に重根が存在する場 合,行列 A は必ずしも対角化できない.
また,固有値が m重根であるとき,その固有
値に対応する 1次独立な固有ベクトルの最大数は, 1以上 m 以下である ( 4 1節 ) .
冒[対角化可能であるための必要十分条件(定理 5 1の証明)]
1 いよいよ本節冒頭に提示した,対角化可能であるための必要十分条件である定理 5
「 n次正方行列が対角化可能であるための必要十分条件は,
n個の 1次独立な固有ベク
トルが存在することである.」を証明する. 十分条件であることの証明は,定理 5 5の証明(固有値が単根であることを仮定せ ず)と同じであるので,以下,必要条件であることの証明をする まず,次式のように p-1が存在し A を対角化できるゆえ, P は正則行列である.
00
.. . . . .
. . .o
OAlo
Alo p— 1AP =
( 5 2 1 )
゜
0 0・ ・ ・0 A n
すなわち, P =( x 1ゎ・・・ふ)
5 3 2次形式
1 7 7
と表したとき, X 1ぶ 2,... ,X nは 1次独立である.さて,式 ( 5 2 1 )より
゜
ふ 0 . . . . . . 0 0 A 2 0・ ・ ・0 AP=P
゜
0 0・ ・ ・0 A n すなわち,
ふ 0 . . . . . . 0 0 A 2 0・ ・ ・0
゜
A(x1ゎ・・ ・Xn)=( x 1 ゎ "・Xn)
゜
0 0 . . . 0 ふl が成立するので,これを分解すると,
Aふ=ふX i
( i = l , 2 ,. . ., n )
を得る.すなわち, X iは固有値ふ ( i=1 ,2 ,. . ., n )に対応する固有ベクトルである.な i= 1 ,2 ,. . ., n )は正則行列 P の 1次独立な列ベクトルである.(証明終) お,ふ ( n次正方行列が対角化可能であるための必要十分条件は
v nが固有空間の直和に分解
されることである, と述べることもできる ( 5 5 3項 ) .
5 3 2次形式 実変数 X i(i=l , 2 ,. . ., n )の斉次 2次式 n
Laii叶+2LaijふX j i = I i < j
( 5 3 1 )
を 2次形式 ( q u a d r a t i cf o r m )と呼ぶ.そのもっとも単純かつ重要な例が, n=2のケース
a x 2+2bxy+C炉 ~(x,y)(: : ) ( ; ) ,
Xx , , 三
y三
X z
である. この例からもわかるように, 2次形式は実対称行列 A ( a i j )を用いて n
n
ぷAx=( A x ) 1 x=LLaijX 江j , i = lj = l
aj i=a i j
( i>j )
( 5 3 2 )
第 5章
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解
と表すことができる t. 実対称行列 A を 2次形式 ( 5 3 1 )の係数行列という.実対称行列は直交行列 Pを用 いて対角化可能であるから, D = P1AP=PtAP ー
となり, 2次形式 ( 5 3 2 )は ー
ー
x p t
=
y
=
n
区 心yf,
ぷAx=ぷPDPtx=(PtxiD(Ptx)=/Dy=
ylyl:•Yn
( 5 3 3 )
k=l
A k } ( k=1 , 2 ,. . ., n )は実対称行列 A の固有値である. と表現できるここに, {
I[正定値行列など] 零ベクトルでない任意の n次元実ベクトルについて,その 2次形式が不等式
ぷAx>0 を満たす n次正方行列 Aを正定値行列 ( p o s i t i v ed e f i n i t em a t r i x )と呼ぶ.式 ( 5 3 3 )の右 辺から明らかなように,正定値行列の固有値はすべて正である. 0が固有値でないの で,正定値行列には逆行列が存在し,逆行列も正定値である. また,零ベクトルでない任意の n次元ベクトルについて,その
2次形式が不等式
ぷA x ; : : :0 を満たす n次正方行列 Aを非負定値行列 ( p o s i t i v es e m i d e f i n i t em a t r i x )と呼ぶ.式 ( 5 3 3 ) の右辺から明らかなように,非負定値行列の固有値はすべて 0以上である. さらに,零ベクトルでない任意の n次元ベクトルについて,その 2次形式が不等式
ぷAx"'>
P=(Pr 朽)忙
となり,式 ( 5 6 1 )は
J ' i ' l ( p ; t
.
r
>
A''A(P1 朽 )=(印A"AP1 四A*tAP1
.
m-r
>
f( Dt
坪A"AP2
rm r ー
. >. >
=
四A*tAP2 !m-r
O O O !m-r
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解
5 ) . したがって, となる(定理 3 P?A*tAP1=D p;tA*tAP2=0
( 5 6 2 )
町A*tAP2=p;tA*tAP1=0 である. とくに式 ( 5 6 2 )の第 2式は AP2= 0を意味する. さて, n行 r列行列 U1=AP1Dー 1 / 2
を定義すると, P が m 次ユニタリー行列であるから, P1四=I m :m 次単位行列
となるので,
「 =AP1Jj-I/2DI/2町 = A
U1DI/2p
( 5 6 3 )
をまた式 ( 5 6 2 )の第 1式より,
u~rr..ハ =D-I/2四A*fAP1D1/2=Ir :r次単位行列 ー
を得る.ここに, DI/2,Dー 1/2 は, D の対角項をそれぞれ 1/2 乗および— 1/2 乗したものである. この U1 を用いて, n次正方行列
u
r n-r >
C
C
>
U =(U1 伍 )
! n
がユニタリー行列となるように,すなわち U1 と U2の列ベクトルがユニタリー系をなすように n行 ( n-r )列行列いを選ぶことができる.そして,最後に長方対角行列 r m-r
( ( 『 。 瓢 ; + ,(>
,(>
( 5 6 4 )
L=
を定義する.式 ( 5 6 4 )では, U の列数 nと同じになるように零(行)ベクトルを m 行の下につ け加える(または取り去る). このとき,式 ( 5 6 3 )を用いて r m―r
=虚翫
ULP"
[ ( 口 )j : _ , l后元
門
n
r m
m , ( >
(
r t =い DI/2p*t=A
=( U 1 U2) D1/2p;t) 0
を得る.
! n r
1
5 6 非正方行列の特異値分解
2 0 1
この証明は, m 次非負定値エルミート行列 A*tAの代わりに, n次非負定値エルミー ト行列 AA*tから始めてもまったく同じ結論に達する. したがって, A*tAとAA*tの正 の固有値は一致する. この対角項のそれぞれを行列 A の特異値 ( s i n g u l a rv a l u e ) , U の n個の列ベクトルを 行列 A の左特異ベクトル, P の m個の列ベクトルを行列 A の右特異ベクトルと呼ぶ. なお,行列 A の特異値は A*tAの正の固有値の平方根であるから,行列 A が正方行列 である場合にも A の固有値とは必ずしも一致しない.一致するのは A がエルミート行 列(または正定値実対称行列)のときである. 行列 A の左特異ベクトルは行列 AAt(AA*t)の固有ベクトルであり,行列 A の右特異 ベクトルは行列 AtA(A*tA)の固有ベクトルであり,行列 A の(非負実数である)特異値 は行列 AAt(AA*t)および AtA(A*tA)の 0でない固有値である. A=(2 1 !)を特異値分解する.
-1 2 1
A''=[:
~!)であるから, A''A
=[~
~ ~)となる.ゆえに,固有値方程式は
( 5-, l ) ¥ 2-, l )-9 ( 5-, l )-( 5-, l )=, l ( , l-5 ) ( , l-7 )=0 であり,その解は
ふ =7 ,
ゎ =5 ,
ふ =0
n[~!), J i
である.対応する固有ベクトルは
X1 =[
X2=
X3= [
( 5 6 5 )
であり,
D=(~ ~) である.なおふ =0であるから②の型の分解はできない.式 ( 5 6 5 )より,
1 /恒 P=[3 /恒 2 /¥ 1 1 4 となり,
3 /渾 1 /渾 0
叶
1 /忍
3 / 5 /忍
( 5 6 6 )
202
第 5章
正方行列の対角化および標準化と非正方行列の特異値分解
/ 1 面 P炉 AP=[3 /呵 1 /忍
叶
1/ 1 面 而 / 1 忍 1 /洞 。 ) o [s3)(3/vM -1/憚 3/ 忍 忍 面 忍 3 /面
2 /頭
50
3 /
5 /
132 . 2 /
3 /
0
5 /
=ff11~] を得る.ゆえに,
, U (~l~ ~J[i;]~:1:5)(l/~而 1/~』 ~+zU~1) =AP,D―1/2=
となる.すでに 2次正方行列を得ているので, U2を加える必要がない.こうして, A の①の型の特異値分解
1 1
Y 70
= 嘉1 (ー 1 ) (
A=m; 炉 = 犀P"
V S
。 り
1 /v 1 43 /頭
o)(~ 塁塁―;~/ごー5/ov:E)
0
2 /頭
昌
が得られる.
の
臭 題 適'を す 交 ,て万 問 ↓ " " s をい行ヵ 習列\_—ー /つ逆 B 012 演行 にの A 称 121 列列列 対 1. 0 行行行 章 実 [ 称 称2称
せこ
移 こ .i
列
な
子 角 イ ノ 対
’
似 且 木 とよ日 れせい こ明
りを.有
に定への
ょ里ょ
をン般ば
11
正 = n を と
5 7 ベキ等行列の固有値は 0または 1であることを証明せよ.
る
5 6 P2凡 =P1凡 = 0を示せ.
致
匡
す
5 55 4節(クーランーフィッシャーの定理後半の式 ( 5 4 6 ) ) を証明せよ
て
全 ま
ク ベ
し と 体
王`固
ハ求す
ミめる
述 との B こ一を' 去 A るリ 、 1 方列 す ー 1 一 丁 0 ィ 択 ケ な0 ノイ ︱的’ 選 010 001 ら
底︵\ト一
当
基︶ルるな B な ︵
配乳二[[冠 豆
第5 i kの重複度 n ( k )であることを証明せよ 5-8 飢 の 次 元 は 固 有 値 ;
5-9 式 ( 5 5 7 )の 1次独立なベクトル { vぃV 公...,v m t 1 ) }について, N k v i , N k vふ..., N k v m g ーI ) は w t I )
に含まれるが, それらの張る部分空間は w~zー2) と共通部分をもたない.
{ { N k v 1 ,N, 心..., N k v m f ―1 ) } }nw t 2 )=< f J
(空集合)
このことを示せ.
5 1 0 次の行列を,適当な基底を選択することによりブロック対角行列に移せ. ー
0 0 0 03 00032 00323
02011
A~[(
I~I I : i I
5 1 1例5 7において,
)
Xj
=
=
1 ]
および
X2=[ ~ }
x ,=[ ~ ] { ]
としたときにも,同じジョルダン標準形を得ることを確認せよ ー
3 / 3 /0 ー 8
1 -ー2
ー
0
゜
33 0/ 4I 4
ヽ ` ' ノ
~1 のベキ乗を求めよ
; i
2m2130
ー
c ︵
5 1 4 次の行列を特異値分解せよ
1A0
J
[A 0= 0
胞
細 ン
三
ー
B
︵
‘.~
211 110
ー
934
l-
ヨ
ダ
レ ︶
の
ジ
3
次
5 1 3
H 732
( A )
loo [
5 1 2 次の行列のジョルダン標準形を求めよ.
ー
0 3 0 0 0 0
0 0 0 0
=
A
4 0 0 0 00 2 0 01
ー
章
第
固有値問題
正方行列の固有値と固有ベクトルを決定する問題を固有値問題と呼ぶ.数学の他部 門,物理学および物理系の工学,さらには経済学・ 統計学などさまざまな分野におけ る諸問題において,個々の問題に特有の正方行列の固有値と固有ベクトルを決定する ことが,その問題を解決することに直結する.それゆえ,道具としての線形代数を習 得する多くの理系・経済統計系の学生・研究者にとり,固有値問題は第一番目の到達 目標とすべきテーマである. 本章では,各分野における固有値問題の応用例を紹介する.その中には高校数学に おいてすでに現れたものがいくつか含まれ,高校数学の範囲で解こうとすると特殊な テクニック・解釈を必要とした問題が固有値問題として定式化されると,統一的かつ 素直な方法で解きうることを発見するだろう. そして,初学者に固有値問題の有用性を納得させるために最適な例題の一つが, 6 2 節「 2次曲線の分類」である. 2変数 x , yの 2次式を 2次形式の固有値問題と定式化す ると,その固有値により,楕円• 双曲線・放物線を明確に区別することができる.ま
た , 6 3節「数列の連立漸化式から一般項を求める方法」では,ともすれば解法を公式 として丸暗記しようとする誘惑に駆られやすい数列の解法が素直な固有値問題である ことを再発見するだろう. まず, 6 1節で,他の諸問題の基礎である,条件付き極値問題とその 2次形式への 適用を取り扱う.その過程でラグランジュの未定乗数法の未定乗数 Aが固有値である ことがわかる. 6-4節では統計学における重要なテーマである「主成分分析」が固有値 問題そのものであることを示し, 6 5節では固有値問題の歴史の幕開けを担った,力学 における「複合振動系」の問題を取り扱う. 6 6節では弾性体力学に現れる歪みテン ソルと応カテンソルを固有値問題との関連で論じる. 6 7節では統計物理学で発達し,
6 1 条件付き極値問題
205
経済学・統計学などに応用されている確率過程から固有値問題を採り上げ, 6 8節では 数理経済学のレオンチェフ・モデルが固有値問題であることを示す. 6-9~11 節では固有値問題の微分方程式論への応用を紹介する.
6 9節では「微分方
程式の解法」として 1階連立微分方程式から始め,その位相平面解析を通じて非線形 微分方程式の解の大域的性質を得る方法まで論じる. 6 1 0節では微分方程式の固有値 問題と行列の固有値問題が等価であることを論じ,最後に 6 1 1節で固有値問題が微分 方程式の係数特異点の分類にも役立つことを示す.
6 1 条件付き極値問題 )条件付き極値問題は,高校数学以来取り扱ってきた大きなテーマの一つである.多 くの場合,グラフを活用しさまざまな技巧を用いたが,多変数の微積分・偏微分の知 識を得た後には, これにラグランジュの未定乗数法 ( L a g r a n g em u l t i p l i e r )という,純粋 に代数的な解法を適用することができる.さらに,その典型的問題が固有値問題とな るのを見てゆこう.
6 1 1 ラグランジュの未定乗数法 n変数 X 1心 2 , ,・ , ,X nの連続微分可能な関数 f ( x )=f(xぃX公..., X n )
が , p個の拘束条件 ( i= 1 ,2 ,. . ., p ,p0 ) とする.これは例外を除いてほとんどの場合に成り立つ.
mmm
ー
... .
[ 口 : 口 /
△X =
55.5
この結果を ( n行 m列)標本偏差行列△X
234
第 6章 固 有 値 問 題
00
.. . . . .
.o . .
―
1 1 1 , . x t 1 1 , . x p= D= n-l
pt_
0120
Alo
を用いて書き表すと,
( 6 4 7 )
゜
0 0 . . . 0 心 、
となる. 以下は 5-6節の例と異なり,定理 5-12の②の型の特異値分解を得る.さて, U
△X Pi P2 .Pm 三(――... 一 こ ¥ f T iv T i 江 )
, y X i , o . . .. . .
゜
。vk
こ三こ
0
0
( 6 4 8 )
0
O .・ 0
゜
. . . 0 匹
を定義すると, UL=! 1 X ( p 1P2 . . . Pm)=!iXP
となるので, !iX=U匹p t
( 6 4 9 )
を得る.式 ( 6 4 7 , 8 )より,
びU
( _ ! ! J _ 旦 . . . 互 )t~xt~x ( 且
=
江高
~n-I
J ! ] _ . . ._ . . ! ! ! ! ! _ )=I
屈面心
を得るので, U は列ベクトルが正規直交系をなす n行 m 列行列である. また, P は直交行列であり,こは対角項が正数である m 次対角行列であるから,式 ( 6 4 9 )は n行 m列標本偏差行列△X の特異値分解(定理 5-12②)である.
6 5 複合振動系【力学】 バネで接続された質点の集まりを複合振動系と呼ぶ.この系を支配する複数の質点 の連立微分方程式を解く問題が,史上最初に解かれた固有値問題である.
6-5 複合振動系【力学】
235
図6 8のように,二つの球(質量 m1,m2)とバネ(バネ定数 k 1 ,k 2 )を直列に接続した系 の運動(つりあいの位置からの変位 X I( t ) ,X 2 ( t ) )を考える.バネの質量および床と球の 間の摩擦を無視できるとき,二つの球の重心(質点)の運動方程式は
贔 ( t )
m1
d t 2
=-k1功 ( t )+k 2 ( X 2 ( t ) ' -X 1( t ) ) ( 6 5 1 )
d 2 x 2 ( t ) =-k2伍 ( t )-X 1( t ) ) d t 2
m2
X X2( t )
図6 8 直列接続された球とバネ
となるので,連立微分方程式 ( 6 5 1 )を行列形式 d2 y=AY, d t 2
.
y: 三
( : : : : n ,
A三 ( ( k ,心) /m, k2/m1) k2/m2 -k2/m2
( 6 5 2 )
で表現することができる.そこで,
)『
Y =[::
=[: : : )e x p ( i w t )
とおくと,微分方程式 ( 6 5 2 )は
AX= —屈X,
) に
X=
すなわち,固有値 ; i=—屈とその固有ベクトル X を求める固有値問題となる.なお, 固有値 Aは負の実数であることがわかる(演習問題 6 6 ) . ,~. . 心 . . . .
~
複合振動系(図 6 8 )において,質量 3m1 =2m2, バネ定数 3 k 1 =4 k 2 , ……
w 5 ki/m1=2k2/m2=4[1/s2]の場合に固有(角)振動数および一般解を求める. 三
係数行列
A =[ー(\:1!~/m1 : ; 二 ) = { ー7 ;} 2 ) の固有値方程式は ; i 2+9 , : i+8=0
である.その固有値は
第 6章 固 有 値 問 題
236
A= —瓜=ー 1, — 8 であり対応する固有ベクトルは,
ー [: / 3 ) :,h=8 -
[~)ふ=ーI,
である.ゆえに, この複合振動系の固有振動数 Q は ,
匹=士{ご万=土2 Y 2[1/s]
切=士{二可=士 1[1/s], であり,一般解は
c12e―;,)+(~1)(c21e2'うU +C22e2,う " )
Y=[: : : : ; )=[~) (ene ; ,+
―
( 6 5 3 )
である.解 ( 6 5 3 )が実数であるためには, 叩 =c i 1 ,
心 =c ; 1
でなければならない.この結果により実数の基底を用いて表すと,解 ( 6 5 3 )は
、
Y=( : : : : : )=(!)(duc o s t+d 1 2s i nt )+(}1)( d 2 1c o s2' 2 t+d 2 2s i n2ヽ 厄t )
となる. ここに,
du=cu+c 1 2=2 R e ( c 1 1 ) , d 1 2=2 I m ( c 1 1 ) , d 2 1=c 2 1+c 2 2=2 R e ( c 2 1 ) , d 1 2=-2Im(c21) 冒
である.
6 6 歪みと応力【弾性体力学】 固体および流体 t に関して,その分子レベルの構造を問題にせず,巨視的な(熱)カ 学的現象を取り扱うとき,それらの温度,圧力,密度などの物理量を,時間および連 続的な空間座標に依存する関数とみなすことができる.このとき固体および流体を総 称して連続体と呼ぶ 連続体力学のうち,固体の弾性変形を取り扱う分野が弾性体力学であり,流体を取 り扱う分野が流体力学である.弾性体においては変位の歪みにより,また流体におい ては速度の歪みにより,連続体内部の各部分同士の相互作用,すなわち応力が発生し,
t 気体と液体の総称.電磁流体であるプラズマを含める場合もある
、 r,
6 6 歪みと応力
237
歪みテンソルおよび応カテンソル ( 3次正方行列)の固有値問題が発生する本節では, 弾性体力学における固有値問題の応用例を紹介する.
6 6 1 歪みテンソル 固体(弾性体)に外力が加わり,あるいは(かつ)熱の出入りがあると,固体内部の各 部分はもとの位置から微小ではあるが移動する.一般に,その変位は一様でないので, 固体内部に変形すなわち歪みが生じる t.
[
X I め巧
ー
A-AA
X I 功巧
巧
+++
=
+
r
A 1
r
=
, ‘ ‘ , ' ’ ’ ’ _ , ' ’ ’ ’ ’ /
しかしごく近接した 2点 P,Qの 位 置 ベ ク ト ル を そ れ ぞ れ
r
[XIXl
弾性体内の任意の,
とする.その 2点 P ( r ) ,Q(r+b . . r )が,外力などによりそれぞれ点 P ' ,Q 'まで変位する とき,その変位は位置の関数として表すことができる.すなわち, 2点 P,Qの変位ベ クトルは,それぞれ u ( r ) ,u ( r+b . . r )とかける.その結果, 2点 P ' ,Q 'の位置ベクトル は,それぞれ P ' ( r+u ( r ) ) ,Q ' ( r+ △r+u(r+b . . r ) )となる.
したがって,点 Q の点 Pに
対する相対的位置ベクトルは,当初 P Q=△rであったが,変位した後の点 Q'の点 P' に対する相対的位置ベクトルは,
可 彗r+u(r+~r) -u(r) となる(図 6 9 ) . Q'
゜
図6 9 2点の変位と相対的位置ベクトルの変化
変位前後での 2点 P,Q間の距離の 2乗を比較すると,
P ' Q ' 2-PQ2=I △r+u ( r+△r )-u ( r ) l 2-l ! J . . r l 2
t 一様であれば.それは変形ではな
u k X j J 0 0
+
j x
X i A
A
t
\.~
oo ︵
3
▽[
2 =
舟 oo ︵
P ' Q ' 2-PQ2=I △r+u ( r+△ r)~u(r)l2 -I / J , . r l 2
= ( i / u ,+i / u i 3 位 A x ——+戸竺竺) J X j i , j = lO
O X j
X jO X j k = lO
を得る.右辺カッコ内の物理量
=こここ竺竺 O X j O X j k = lO X iO X j
( 6 6 1 )
U i j
をその i j成分とする 2階テンソル ( 3次正方行列)を,弾性体力学において歪みテンソ
[u u=u 力 、‘‘,ノ 6
ル( s t r a i nt e n s o r )U と呼ぶ 132333
uuu
U32
ー
112131
u
U12
U 2 2
らを
ヽ~
ー
e
ー
ふ
ヽ
ょ
伯式 式'
明らかに歪みテンソル U は実対称行列である.微小歪みの場合に
O U i O U ・ + ― U i j= ― O X j O X i と線形化することが可能である.対角項 非対角項
O U i
O U j
、
U i i
OU1 =2 ―—は i 方向の伸びまたは縮みを表し,
O X i
( i* j )は,すれ(剪断)変形を表す. • O —+— X j O X i
U 1 1=
せん
歪みテンソル U の固有値問題 Ux=心
の解である固有値ふ, Aふふを,歪みテンソル U の主値(主歪み)と呼ぶ. また,対応す
6-6 歪みと応力【弾性体力学】
239
る固有ベクトル X 1ぶ 2,ゎの方向を主軸と呼ぶ実対称行列である歪みテンソルは,定
理5 2により対角化可能であり,固有ベクトルである主軸は互いに直交する.次式の ように対角化を実施して三つの主軸を座標系(正規直交基底)に選ぶと,歪みテンソル は対角行列となり,三つの対角項は歪みテンソルの三つの固有値(主値)である.
( x 1わ x ,加(ふ X 2む )
=[~
~2~i 0 0 ふ
この主軸系において,
「 -l/j.rl2=2L竺位 / j . x i a x i
P ' Q ' 2-PQ2=1 / j . r+u ( r+△r )-u ( r ) .
i = l
となり,線分 PQの変形は,三つの主軸方向の独立な伸び(縮み)の和と表現される.
6ふ 2 応カテンソル 固体(弾性体)内部に歪みが生じているとき,固体内部の隣り合う各部分間は互いに 力を及ぼしあっている.ここでは,分子レベルの構造を問題にせず,連続体としての 巨視的な力学的現象を取り扱うので,各部分間相互に働く力は境界面を介して働く接 触力である↑.この連続体内部で,境界面を通して隣り合う部分間に単位面積あたり に働く力を応力 ( s t r e s s )と呼ぶ. ある点を含む一つの断面を通して働く応力 c は,それが働く点の位置 rだけでなく, その点を通る断面に依存する.それゆえ,断面を指定するためにその法線ベクトル n を用いると,応力 c は u=u ( r , n )とかける.このとき,境界面の微小面積△S を通し て働く力は m△S である. ここで図 6 1 0のような,面積がそれぞれ ! ! : : , . Sぃ△S公△S3 ,/ J . Snである, XぃX 2心 3軸 公U3 を,それぞれ および nに垂直な側面を有する 4面体に働く力を考える. U1,U
/ J . S1 , / J . S2 ,/ J . S3を通して 4面体内側(座標軸の正方向)に向かって働く応力, nを 4面 J . S nを通して 4面体外側 ( nの方向)に向かって 体から外を向く法線ベクトル, Unを I 働 く 応 力 と 定 義 す れ ば 弾 性 体 の 4面体に隣接する「外部」が 4面体に及ぼす力は,
X Iぷ 2 心 3軸および nに垂直な側面を通して,それぞれ c心ふ, C 企S公U 3△S3 ,u n / J . Sn である.それゆえ, 4面体の重心の運動方程式は
d 2 r ! J . mー =u 1 / J . ふ +u2△ ふ +U3△ふー U n ! J . Sn+/ J . m g d t 2
t 接触力でない力を遠隔力といい,万有引力,
クーロンカ,分子間力などがこれに属する.
240
第 6章 固 有 値 問 題
X 3
X 2
< T 3
X 1
図6 1 0 X ぃX 2心 3軸および nに垂直な側面を有する 4面体に働く力と側面積
となる.ここに,
/ } . _ mは 4面体の(微小な)質量,
gは重力加速度である.ここで, 4面
体を 1点 rに収束させると, j j , _ S 1 ,△S2,/ j , _ S3 ,/ j , _ Sn,/ } . _ mはいずれも 0に近づくが,長さの 2乗の次元をもつ j j , _ Sぃ△S2,j j , _ S3 ,j , _ ふに対して,長さの 3乗の次元をもつ
/ } . _ mは高次
の微小量である [ 1 1 , 1 3 ] .
! J . m=o ( ! J . Si ) ,
△ふ→ O+
( i= 1 ,2 ,3 )
したがって,その極限において,
U n b . . Sn=U 1 b . . S1+U吟 ふ +U 3 b . . S 3 となり,さらに,
Aふ=△ふ c o s ( e i ,n )=n i b . . Sn
( e iは X i軸正方向単位ベクトル, i=1 ,2 ,3 )
であるから,
< F n=n 1< r 1+n 2 < r 2+n紅 3=(uぃ< r 2 ,< r 3 ) n すなわち,
Un=[:::)=(uぃU z , < 乃 ) n=[ ::: :: :::)[::) , 2 , 3成分) ,( c r n心 ・ i 2 ,< F i 3は < F iの 1 , 2 , 3成分, i=1 ,2 ,3 ) ( e r n l ,< r n 2 ,< F n 3は Unの 1
を得る.面の法線ベクトルを,その面を通して働く応カベクトルに変換するこの 2階 テンソル ( 3次正方行列)
6 6 歪みと応力
ロ
を応カテンソぴ:ここ•ぴ:]に垂直な境界面をはさんで弾性体の両側の部分は,単位面 ; }=( : : :: : :
積あたり i軸方向にびi i , j軸方向にびi j , k軸方向にびi k の力を及ぼしあう.応カテン
ソルこの対角項ぴi は境界面に垂直な力,たとえば圧力であり,非対角項ぴi j は境界面 に平行なカ・せん断力である. 応カテンソルこは実対称テンソルである. びi j= びj i
これを証明するためには,弾性体の微小体積に働く応力によるモーメントを考察し,ガ ヴスの発散定理などベクトル解析の知見を援用する必要がある.本書では紙面の都合上 ベクトル解析に立ち入ることができないので,証明は他の文献を参照されたい [ 2 , 1 6 ] . 応カテンソルこの固有値問題
Ln=An の解である固有値ふ 2A 22ふを応カテンソルこの主応力(それぞれ順に最大主応力, 中間主応力,最小主応力)と呼ぶ.
また,対応する固有ベクトル nぃn 2 ,n 3を主軸(主方
向)と呼ぶ
2により対角化可能であり,固有ベクト 実対称行列である応カテンソルは,定理 5 ルである三つの主軸は互いに直交する.次式のように対角化を実施して三つの主軸を 座標系(正規直交系)に選ぶと,応カテンソルは対角行列となり,三つの対角項は応力 テンソルの三つの固有値(主応力)である.
( n , ,n 2 ,n心 ( n⑭ 2 ,n , )=[ };
J
この座標系において,座標軸(主軸)に垂直な断面を通して働く力は面に垂直な成分の みである.
固有値問題
6 7 遷移確率行列・マルコフ過程【確率論・統計物理学・数理経済学】 6 7 1 決定論的過程と確率過程 10-IOm以下のミクロの世界を記述する量子力学には本質的な不確定性が現れるが,
われわれが日常遭遇する通常のスケールを支配する古典力学における諸現象はすべて 決定論的過程 ( d e t e r n 血i st i cp r o c e s s )である.すなわち,その現象(変数)を支配する微 分方程式に必要な初期条件を与えると,その時刻以降の変数の値は完全に決定される. それは放物運動をする物体など特殊なものに限らず,たとえばサイコロを振ったとき に何の目が出るか,コイン・トスをしたときに表裏どちらが出るか,明日の天気がど うなるかなどを含むすべての現象に「原理的には」あてはまる. ところが,実際にはサイコロを振ることやコイン・トスは典型的な確率過程 ( s t o c h a s t i c
p r o c e s s )とされている.なぜならば,サイコロを振るときの初期条件,すなわちサイコ ロが手から離れる瞬間の位置と回転を含む初速度,および六つの数字の描かれている 面がどこを向いているかが各回でまちまちであり,あらかじめ指定できないからであ るt I. つまり,これらの現象を支配する力学過程自体が確率過程なのではなく,初期 条件の現れ方その他(上記 tI) が確率的にしか記述できないのである.また,日食•
月
食の時刻は紀元前 5世紀の古代ギリシャ時代にすでに予測可能であったにもかかわら ず,現在でも天気予報が当たらないのも,天候という現象に関与する空気粒子の数が 実質上無限大であり,すべての初期条件を知ることが不可能だからである. 初期条件を指定できるのが決定論的過程であり,完全には指定できないのが確率過 程であるから,所要の初期条件の数が膨大になると,その事象は必然的に確率過程と なる.基礎物理学の一つである統計物理学は,われわれの日常経験する(マクロの)世 界の現象・物理量を, 10ーI Om のミクロの世界の無数の構成粒子(原子・分子)の挙動か ら説明する, といういわば量子力学と古典力学・電磁気学の橋渡しをする学問である ゆえ,そこでは確率過程の研究が本質的に重要となる t 2. 確率過程の諸理論のうち,本節では,統計物理学で誕生し経済学など他分野でも応 用されている基礎理論であるマルコフ過程理論,とくにその固有値問題の応用を解説 する.
t 1
初期条件を完全に指定できないことに加えて,たとえばサイコロが転がる畳の凹凸を完全に把握 できないことなども不確定性の原因になる. t 2 気体の圧力は無数の気体分子の衝突による力の時間平均であるから,本質的には確率変数である. ところが,たとえば理想気体の状態方程式では,圧力が決定論的変数として扱われている.それは, 気体分子数が非常に大きくなると,確率変数である圧力の分布関数が非常に鋭いパルス形になり,そ の幅が N → oo とともに 0に漸近するからである(極限はデルタ関数).つまり,確率過程は,それ 1 1 , 第 3章 ] . に関与する粒子数 N → ooのとき,決定論的過程となるのである [
6 7 遷移確率行列・マルコフ過程【確率論・ 統計物理学・数理経済学】
243
麗 6-7-2 確率変数 x 1ぷ 2 ,・ ・ ,,Xm} をとる場合には数値 Xi( i= 確率過程において,変数 X が離散的数値 {
1 , 2 ,. . .,m)をとる確率 P i ( i= 1 ,2 ,. . ., m)が与えられているとき, Pr(X= xJ= P i
( i=1 ,2 ,. . ., m ) ,
m
~Pi
=I ,
P i2 : ' .0
! = l
あるいは,定義域 [ a , b ]内の連続的な数値 xをとる場合には区間 [x,x+dx]内の数値を とる確率 p ( x ) d xが与えられているとき,
P r ( x: ;X : ;x+d x )= p ( x ) d x ,
f
=1 ,
bp ( x ) d x
p ( x )2 :0
変数 X を確率変数 ( s t o c h a s t i cv a r i a b l e s ときに randomv a r i a b l e s )という.確率変数
x
がある数値をとる確率をその数値の関数として表したもの { pdまたは p ( x )を確率分 布( p r o b a b i l i t yd i s t r i b u t i o n )という.一般に確率分布は時間 t(離散的時間ステップ n )の 関数である.
{ p i ( n ) } ,p ( x ;n )
または
{ p i ( t ) } ,p ( x ;t )
経済学では各月あるいは四半期ごとに集計される経済指標を解析の対象とする場合 が多いので離散時系列が現れる.また一般に確率過程では変数の連続的数値を詳細に 取り扱ったり,連続的な時間変化を追う必要がないことが多い.そこで,本節では確 率変数 Xが離散的数値をとる離散的時系列を考察する
6 7 3 マルコフ過程と一様マルコフ過程
ある現象(物理現象・経済現象など)を記述する確率変数(の組)の時間変化の過程
( t+b . t )がその前の時刻の確率変数の値(と時 を考察する.ある時刻の確率変数の値 X 刻 ) f ( X ( t ) ,t )のみにより(確率的・統計的に)決定できる\場合,その過程をマルコフ過 程( Markovp r o c e s s ,Markovianp r o c e s s )と呼ぶ
I[一様マルコフ過程] マルコフ過程のうち,ある時刻の確率変数の値 X ( t+t : : , . t )が陽にその時刻 tによらず, その前の時刻の確率変数の値 X ( t )のみにより決定できる場合,すなわち, X を通して のみ tに依存する場合を,一様(定常, h omogeneous, s t a t i o n a r y )マルコフ過程と呼ぶ. とくに, t+/ ) , . tにおける確率分布 p ( t+~t) と p(t) の関係が線形であるとき,
固有値問題
so ー/ー\
..
•••
゜
•Sl
ヽ ` ノ x
f
. n a t m n U n a t r
ヽ
〇列 P r n 行 Plpl 率 ー ー m 確 mm tltl ・:tm 移 遷
..
ヽ >
こ
t m l お
t m l 程
ヽ
.J
フ' こ
••
~ ~ ..~て
︵\過
m5 m5
ヽ~
t
=
︵コー p レこ =マこ T)
m -︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱-.)辛求 、 = ︳-
ヽ
現柘
ハハワハワ 才 ヽ .
m
一し な ++・:+' 〇、き し
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と│ こ 寺
+る苅
〇 刻 = A -
ヵ す︸
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t ︵
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表︱︱
~t)
••• •••
= [ : ' . ' . ]
は,時刻 tにおいて状態
tである確率 P i ( t )( i= 1 , 2 ,. . .,m)を成分とする確率ベクト
ル(probabilityvector)であり,次の性質をもつ. ① 確率ベクトルは,すべての成分が非負である非負値ベクトル ( n o n n e g a t i v ev e c t o r ) である.
pi(t)~O
(i=l,2,. . ., m )
② 確率ベクトルの成分の和は 1である.これは任意の時間 tにおいて,系が i= l , 2 ,. . .,mのいずれかの状態にあることを意味する. m
LP/t)= 1 i = l
. , . . . . . . . . . . . . . = J 大気汚染物質の濃度
大気汚染物質の濃度の時間変化を考える.日本では昭和 40年代に S 0 2 , NO, N02 などの大気汚染物質が社会問題になったが, 2 1世紀に入り中国で超微粒子 ( P M 2 . 5 .粒 径 2.5μm以下の粒子)の大気中の濃度の上昇が顕在化し,その日本への影響が心配さ れる事態となった.
' M地方の一つの観測地点における,大気中 まず影響を受けることが懸念される北九 1 M2.5)濃度の時間(日)変化のマルコフ過程モデルの構 の一日平均汚染物質(この場合 P 2 0 1 3年 9月 築を試みる.環境省による PM2.5の安全基準は一日平均 35μg/m3である (
j=1 ) , 18μg/ 面 以 上 35μg/m3 現在)ことを考慮して,一日平均濃度を 35μg/m3以上 ( 未満 ( j=2 ) , 18μg/m3未 満 ( j=3 )の 3段階に分類してみよう.そして,第 n日の一
j ( n )( j= 1 ,2 ,3)とし,濃度の日変化が次のマルコ 日平均濃度が段階 jにある確率を p フ過程で記述できるものとする.
6 7 遷移確率行列・マルコフ過程【確率論・統計物理学・
三 [ : : : : :: }
p(n+I )
Tp(n)=[: : : : : :
: J[ : : : : )
ここに, p(n) 三[~:;:;)は第 n 日の一日平均濃度の確率ベクトルであり,
の:1こ上遷:す確る率二こよる:~~ら~ ~~
T=( t i j )三[『:: :: : は,その i j成分 ( t , )が段階 jから iへの遷移確率を表す遷
: 三 □uf:~£~
立はニイカ衣、『の;号染;;:
飛来が多い季節には大きな数値となるが,そうでないときは小さい値であろう.一方, t i j(i~j)
は翌日の濃度が下降する確率であるから,これは中国からの汚染物質の飛来
が少なく,北九州では風が強くあるいは雨の多い時期には大きな数値となる.そして, とくに,遷移確率行列 Tが時間 nに依存しないとき,この過程は一様マルコフ過程と なる. 汚染物質濃度の日変化を記述する,このマルコフ過程モデルが有効であるか否かは, 遷移確率行列 T を適当に定めることにより,実測資料とよく一致する結果を得ること ができるか否かにより判断することができる.今後,日本でも P M2.5による大気汚染 冒
が深刻化すると,このようなモデルが次々と開発されるだろう. 6 7 4 遷移確率行列と固有値問題
遷移確率行列は次の性質をもつ.
① 遷移確率行列はすべての成分が正または 0である非負値行列 ( n o n n e g a t i v em a t r i x ) である↑.また本項では,とくに遷移確率行列がそのすべての成分が正である正 値行列であるとき,すなわち
tij>O
( i , j = l , 2 ,. . ., m )
のときの性質をいくつか導く(定理 6-3~6).
② 遷移確率行列の各列の成分の和は 1である. m
こ旬=1
( j=1 ,2 ,. . ., m)
i = l
t 5-3節に現れた非負定値行列と異なることに注意する
固有値問題
この式は,ある時刻に状態 jにあったものが次の時刻に i=1 ,2 ,. . ., m のいずれ かの状態にあることを示す. ③ 定理 6 2とする. もつ.
証明) detJT-/1=0を示せばよい.遷移確率行列の性質②により,行列 S三 T-1= ( s i j )の各 列の成分の和は 0である.
L m
m
( j= 1 , 2 ,. . .,m)
S i j= Ltij-1=0 i = l i = l
ゆえに,行列 S の各列ベクトル s j( j= 1 ,2 ,.•. , m)は,基底 ( e 1 ,e 公・・ , e m )を用いて Sj=研
ふ
t t
(土 ''i)•, +
S ; j e i; i = 2
l
S i j e i= s ; j ( e ;-e , ) i = 2 i = 2
1 = 2
すなわち, m-1個のベクトル (i=2,3,. . .,m)
{e/-ei}
の 1次結合とかける.
したがって, m 個の列ベクトル S jは 1次従属であり,行列 Sの行列式は
0である.
その固有値 1に対応する固有ベクトルが特別な意味をもつ. ( n / ) . t )はそ 定理 6-3 遷移確率行列が正値行列であるとき,確率ベクトル p(t)= p
の初期値 p(O)に依存しないあるベクトル(定常状態)に収束する.そのベクトルが 遷移確率行列の固有値 1に対応する固有ベクトルである.
証 明 ) 戸 旬 =1を利用すべ0 (xは Amaxの(正値)固有ベクトル) ( n )は n→ ooで Amaxの(正値)固有ベクトルに比例し, を得る.すなわち,ベクトル p ( O )に依存しない指数関数 (Amaxtの漸近的振る舞いを見せる. 初期値 p
t A-l(A)lはベキ零行列である (5-5-4項)
6 8 レオンチェフ・モデル
6 8 レオンチェフ・モデル【数理経済学】 レオンチェフ ( L e o n t i e f )・モデルは,経済学において産業の各部門間の財(物・サー ヴィス)のやりとりの関係を,線形代数により定式化したモデルである.産業の各部門 とは,第 1次産業(農林水産業),第 2次産業(製造業),第 3次産業(サーヴィス業)と いう分類でもよいし,
さらに細分化してもよい.また,ある国の各地方間の財のやり
とりの関係にあてはめることもできる. m 個の部門をもつ経済システムたとえば国を考える.各部門 i( i=1 ,2 ,. . ., m) は~
間 Xi単位(たとえば兆円)の財を生産するとし,部門 jが 1単位の財を生産するため には部門 iの財を
aij単位消費する必要があるとする.
また,部門間の財のやりとりに
i単位の財を供給すると仮定すると, 加えて,部門 iは消費者に年間 d m
ふ
=L 功 心
=
( i 1 ,2 ,. . ., m)
佑j
j=l
d l 屯 ・:dm
-1
=
︵\生
d
( 6 8 1 )
大
り
肖
よ 賓
、 >1 ︵
S
出 支
総
、
産
︱-;"
, ' "
こ
, よ 9 U
め
り
こ , ‘ `
的
済
7 音
,
各
お
な . る
成
す 立
, た ー mm mm つ a l の ... a 立
...
~~~成
.. .. . ... .
=F
A
x=Ax+d,
カ ‘ ‘
m l 惰 an 知:. a I-9_│,\ 力 ロ
すなわち,
きくなければならない.すなわち, m
、 ど 佑j0 )
i = l
とかく. 年間需要 4が与えられると,各部門 iが年間に生産すべき財 X
I
= I :
は,行列 I-A
Xm
が正則であれば .、/
X
=(/-A)-1d
と一意的に定まる.
6章 固 有 値 問 題
I-Aが正則であることの証明) I-Aが正則であることと, (l-A)1=I-Atが正則であることは同値である ( 3 3節 ) .
そこで, (/-Aり ー 1が存在することを示す.
( 6 8 1 ' )
x=Atx+d
の解を逐次近似 x < n )=A t x < n I )+d
で求めると,その形式解は nー1
X ( n )=( A りn I砂 +L(Aり k I d k = I
( 6 8 4 )
となる.式 ( 6 8 3 ) より,任意の成分 iについて, m
m
I :
( A砂)i= 仰 x ? )s( 1-s )L 吟 l )s( 1-s)m max x C . 1 ) , …m J J = l , 2 , j = l J = l
であるから, ( ( A りn lx ( l ) ts( 1-s r i 1i nmaxx ( . l )→ 0 j = l ,.,m J n-l
n-l
L((AりK— ld)i S区( 1-s l 1m max d戸 k = ; = l , 2 ,.,m k = l
( n→ o o ) .max d . 1-( 1-s r 1 ; = 1 , 2 ,.,m J m max ・ d →m l-( 1-s ) J = l , 2 , , …m . S
( n→ o o )
となり,単調増加級数が有界なので式 ( 6 8 4 )の右辺は収束する [ 1 3 ] . つまり,式 ( 6 8 1 ' )の解 が一意的に定まるので, (J-A1戸が,ひいては (/-A戸が存在することが示された.なお, d が正値ベクトルであれば,解 xも正値ベクトルである(演習問題 6 9 ) . 次に,消費者への供給が存在しない場合 (di=0( i= 1 ,2 ,. . ., n ) ) , すなわち各部門間 の財のやりとりだけがあり,各部門 i( i= 1 ,2 ,. . ., n )は年間 X i単位の財を生産すると
6 8 1 )は 同時に同額の消費をする経済システムを考える.このとき,式 ( Ax=x
.
( 6 8 5 )
すなわち,固有値 lをもつ固有ベクトルを求める問題に帰着する.また,条件 ( 6 8 2 )は m
こ 佑
j
=I
z = l
となる.
したがって,列ベクトルの成分の和は 1であるから,行列 A は固有値 1をも
2 ) ,式( 6 8 5 )は固有値 1に対応する固有ベクトルの解 X ち(定理 6
l
= I :
をもつ(演
Xm
習問題 6 1 0 ) .
6 9 微分方程式 I 微分方程式の解曲線群の大域的性質
2 5 5
6 9 微分方程式 I 微分方程式の解曲線群の大域的性質 すでに 6 5節でその実例を示したように, 1階連立線形微分方程式の解を求めるこ とがすなわち固有値問題を解くこととなる.また,すぐに述べるように,高階微分方 程式と 1階連立線形微分方程式は等価であるから, ( 1元)高階線形微分方程式の解を求 めることが固有値問題を解くこととなる.さらに,厳密解を得ることのできない,非 線形微分方程式の解曲線群の定性的特徴を見出すことのできる位相空間解析において, 非線形微分方程式を臨界点の近傍で線形化する近似が成立する t ので,微分方程式の 固有値問題は,非線形微分方程式の解の大域的特徴を求めるためにも有効である.
6 ふ1 1階連立微分方程式 一般の(陽形式の) n階微分方程式 y < n ¥ t )=f( y ( t ) ,y ' ( t ) ,y"( t ) ,. . ., y < n l ¥ t );t )
は,新しい n個の変数 y j ( t )= y U ) ( t )
Y o ( t )三 y ( t ) ,
( j=1 ,. . ., n-1 )
を導入することにより, n元 l階連立微分方程式
d
記
( t )= Yj+I( t )
( j= 0 ,. . ., n-2 )
d
盈Yn-1(t)=f(yo(t),Y1(t),y2(t),・・・,YnI( t );t ) ) ー
に変換することができる. すなわち, n元 l階連立微分方程式は, ( 1元 ) n階微分方程式と等価である.
I[線形斉次 1階連立微分方程式] 線形斉次 l階連立微分方程式のもっとも一般的な形は, =A ( t ) Y ( t ) In5
aaa
aaa
=
︵
A
、 ` ' / t
,
0 0 ... 1222
ー
aaa
0 0 ... 1 21 n1
ー
ー
~~...~
である.
t 本質的に線形化が不可能な微分方程式も存在する [12]
•••
nn
泣
‘.'ノ t ︵
‘.'ノ t ︵
ylyzyn ー =
加
SS:・O
d t
I oos
d Y ( t )
6章 固 有 値 問 題
6ぶ 2 定数係数線形斉次 1階連立微分方程式 n元 ) 1階連立微 定数係数線形斉次 n階微分方程式と等価である定数係数線形斉次 ( 分方程式のもっとも一般的な形は,
allanl
y n
alnaln:.ann
ー
叩
111
ー
=
A
,
12.n a aa
ー
=
ylg
ー
加
o s ...o
d Y ( t ) A Y ( t ) —·—·d t =
(定数行列)
である.
I[対角化可能な場合] 定理 5 1により,
n次正方行列 A に n個の 1次独立な固有ベクトル X1ぷ 2,・ ' .・,Xnが
存在するとき,行列 A は 正 則 行 列 凡 =( x 1ゎ・・・ふ)により対角化可能である.
00
.. . . . .
. . .o
OAzo
ふo p~ 1 A n凡 =Dn= ー
0 0 . . .
゜
0 心
それゆえ,新しい変数ベクトル Z ( t )を
l
Z(t)~[ : : : : :: 三? , ; 1Y ( t )
と定義すれば, Z ( t )は微分方程式
d Z ( t ) d Y ( t ) ― =P;1― =p~ 1AY(t)=P~ー 1APnP~ 1Y(t)=DnZ(t) d t d t ー
を満たす.すなわち,連立方程式の各変数は
ー
6 9 微分方程式 I 微分方程式の解曲線群の大域的性質
ss Zlg r ‘ ` │ 00
叫t ) )
゜ ゜
d-dt
z 2 ( t )
O A2
ふo
ZI( t )
257
l O O ・ ・ ・ 0 ~n) し叫t)
のように各行に分離されるので,容易にその解
Z i ( t )= Z i ( O )e x p ( ふt ) を得る.これから,
( i=1 ,2 ,. . ., n )
もとの微分方程式の解
( 6 9 1 )
Y ( t )=P n Z ( t )
を得る. 冒[対角化可能でない場合]
n次正方行列 A が対角化可能でないときには,行列 A の固有値方程式の n個の解, すなわち固有値中に重根が含まれる.このとき,適当な基底を選ぶことにより,行列
A をジョルダン標準形 J(l)
0・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・0
゜
0 1 < 2 ) 0・ ・ ・・ ・ ・0 0 0 J
loooo ー
p
t A A
t *
p
U1~AP心―1/Z~II
1 ; v s
戸~[!
A~UI;
い = [ : u~(U.
西占
00 0 I I 12 00010
p
4 行4 列のユニタリー(直交)行列 U を得るために, U , = mを加える. ここで,
I1 0I0 0 0 '=
り
で
ぁ
これから
である
309 演習問題の解答
1第 6章
( p .2 8 4 )
玉 6 1f ( x )=f ( x 1ぶ 2 ,. x 3 )=f ( x , y , z )=x y zの ,
1個の拘束条件 g 1( x )=g 1( x 1心 2 心3 )=g 1( x ,y ,z )=xy+y z+z x-k=0 のもとにおける極値問題そのラグランジュ関数は,
F ( x ,y ,z ;, l )三 x y z+J ( x y+y z+zx-k ) ゆえに,連立方程式
o F ( x ,y ,z ;, l ) :yz+, = l ( y+z )=0 OX o F ( x ,y ,z ;, l ) =zx+, l ( z+x )=0
a y
( 1 )
( 2 )
o F ( x , y , z湛 ) =xy十、, l ( x+y )=0 o z
( 3 )
o F ( x ,y ,z ;J ) =xy+yz+zx-k=0 f ) , l
( 4 )
を解けばよい.
f '
( 1 )+( 2 )+( 3 )-( 4 ):2 , l ( x+y+z )+k=0
( 5 )
ゆえに, k>Oより A : : f : .0 . また, x,y,z のいずれか一つが 0 であれば, (1)~(3) より, x,y,z すべてが 0となり, ( 5 )と矛盾するので, x , y , zはいずれも 0でない.
( l ) x-( 2 ) y :2 , l ( x-y ) z=0 ( 2 ) y-( 3 ) z :2 A ( y-z ) x=0 ( 3 ) z-( l ) x :2 , l ( z-x ) y=0
ふx,y,zはいずれも 0でないので, ( 4 )を用いて, x=y=z=畠 のとき, x y zは極(大)値
( v i < 万)3をとる
なお,本問のような変数の対称性の高い問題の場合は, 高校数学の範囲で簡単に解くこ とができる.
k=xy+y z+zx~3 ふ ただし,上の絶対不等式を用いるのに先だち, x , y , zがいずれも正のときに最大になること を論証する必要がある.
6 2f ( x )=f(xぃX 2心 3 )=f ( x ,y ,z )=x y zの , 2個の拘束条件 8 1 ( X )=8 1 ( X 1 , X 2心 3 )=8 1( x ,y ,z )=x+y+z-k=0 8 2 ( X )=8 2 ( Xぃx 2 , x 3 )=g 2 ( x , y , z )=mx-y=0 のもとにおける極値問題.そのラグランジュ関数は,
演習問題の解答
311
F ( x , y , z ;ふ山)三 xyz+ふ (x+y+z-k)+あ (mx-y) ゆえに,連立方程式
8 F ( x , y , z ;ふ,あ) =yz+ふ + m あ =0 ぬ 8 F ( x , y , z ;ふ,わ) =zx+ふー A 2=0
( 1 ) ( 2 )
a y
8 F ( x , y , z ;ふ,あ)
o z
8 F ( x , y , z ;ふ , A分 机 1
=xy+ふ =0
( 3 )
=x+y+z-k=O
( 4 )
,A 2 ) 8 F ( x , y , z ;ふ =mx-y=O
( 5 )
肌2
を解けばよい. (1)~(3) からふ,ぁを消去すると, ー
( 1+m)xy+mxz+y z=0
( 5 )を代入すると,
mx(-( 1+m)x+2 z )=0 ゆえに, x=0 , または x=2 z / ( 1+m) ① x=Oのとき, y=0 ,z=k ,x y z=0
② x=2 z / ( 1+m)のとき, ( 4 ) ,( 5 )より x=2 k / 3 ( 1+m ) ,y=2mk/3(1+m ) ,z=k / 3 ,x y z=4mk り27(1+m)2 (最大値)
可 ー
占
1 0
も
1 6
⑤は
+
ー
︵方
16[16
[16
⑤
+
ー ︵
瑾
+
6
A
詞
Il =
6 3 式①の 2次形式の係数行列
程
式
値 有
固 の
6 + 2 . . / S -,1 1 6
o+V S ). /10-2v s 1 6
(1+. . / S ) , . / 1 0 2 . . / S 1 6
v s
1 0-2 1 6
=,1(,1-1)=0
-,1
その解は ; i= 0 ,1である.固有値 0をもつので 2次曲線①は放物線である.
1~0 の固有ベクトル:
[:>
~~4
また,それぞ
l(x 軸の正方向と—3冗/10 の角度をなす)
れの固有値に対応する規格化された固有ベクトル(主軸方向)は
心
1~1 の固有ベクトル:{面戸/4] 1 ) / 4
(x軸の正方向と万/ 5の角度をなす)
であり,前者が放物線の対称軸の方向を表す. 標準形
l
摩朽~(~ 『 を得る回転行列は
朽=!(言冨 4
⑮
-1
V S+I J~(cos(-3冗/10)
冨謬
l
-s i n ( 3冗 / 1 0 ) s i n ( 3冗 / 1 0 ) c o s ( 3冗 / 1 0 )
ニl じ ) = : (
であり,この主軸を座標軸とするベクトル
z= じ)=Pzx=t(~
こ こ 悶 。 。 ;
ーニ~:/4『lじl
による,この 2次曲線の方程式は,
z+ (w- 1 ) 2+1=0 (解図 1 )となる.
w
X
z 解図 1
困直
6-4 行列 A~(}I ~)の固有値 A は 4 (重根)であり,対応する固有ベクトルは (~i) の一つの みである.ゆえに,対角化できないのでジョルダン標準形を求める
ふ =1 ,n ( l )=2 . 行列 A はすでにブロック対角行列になっている.
= Aーふ I = (~I ~i).
N1
= 0
N/
N心 = 0の解が x=xi( ')のみであるから,副=dim砂 =I .•?'= n ( l )=dimW戸= 2 . -1 ゆえに, m i l )=n i 2 )-n i l )=1
そこで, w~z> の基底を一つ(自由に)選ぶことができるので,それを V1 =「)とすると,
゜
-(~I~ll じ)=い l
N 1 v 1 基底が n ( l )=2個求められたので,
(>;. J p-1=(~
; 1 )
P=( N 1v 1v i )=
ー
を用いてジョルダン標準形を得る.
P 1 A P=( :: l これから,
じ
A•-1 = ( P ( : !)r1r=P :rp-1 J=(~
~l のとき, J"= 訂 +.c1,1•-11(~
~l =(:
•~:-i l
てある ( 5 5節)から,
(~I~)(4:ー(n~:!t'l(~ ~I l =4•ー'(_~/_\) -~n-_~) l
A•-1 =
I
ゆえに.
x .=( : :l=A "1 ふ =A•-t: l =4•-2 l-~+-31) -~n_ 1 5 )l ( :l=4•-2(:;.+ / 1 ) ー
匹 7 2 0
6 5
この資料の標本共分散行列 V は[~『~ こ 『 310
I
2 5 75 . 悶:]である.ここでは,固有値方程式
7 2 0 -J
310 2 5 7 . 5 2 6 5-J 1 3 2 . 5 =0を数値的に解いた(そのため.固有ベクトルは厳密に直交 2 5 7 . 5 1 3 2 . 5 1 7 5-J 310
しない).その結果は
ふ =9 9 6 ,p 1=[~:~;];
A 2=1 3 9 ,~=
[~O:l ふ= 22,
H : f i ]
P3=
この結果から,第 1主成分は成績のよさ,第 2主成分は文系ー理系の別(正が文系),第 3主 成分は,国語指向または英語指向の別(国語が正)を表していると解釈できる.
匝 6 6 Aの 2次方程式 I Al=Iー ( k ,+k 2 ) / m ,-A
k2/m2
ー
k 2 / m, =0の判別式は, k2/m2-A
D =[ ( k 1+k 2 ) / m 1+k2/m ザー 4k必 /(m四) ={ [ ( k 1-k 2 ) m 2+k 如 i ] 2+4k必 m礼} / ( m四)2>0 また,
ふA2=detA= ―l0 ふ +A 2=t rA =( k 1+k 分/ m 1-k 2 / m 2