線形代数汎論 4254117787, 9784254117783

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線形代数汎論
 4254117787, 9784254117783

Table of contents :
まえがき
目次
1. 線形代数の周辺
1.1 行列,行列式,線形代数小史
1.2 用語について
1.3 人名について
1.4 記号について
2. 行列と行列式
2.1 行列
2.2 行列算
2.2.1 和と差
2.2.2 積
2.2.3 スカラー倍
2.2.4 行列算の諸公式
2.3 対称行列,Hermite 行列,置換行列,基本行列
2.3.1 行列の転置と Hermite 共役
2.3.2 置換行列と基本行列
2.4 部分行列,ブロック行列,Kronecker積
2.4.1 部分行列と行列の分割
2.4.2 Kronecker 積
2.5 交代化演算
2.5.1 交代化の定義
2.5.2 交代化演算の諸性質
2.6 行列式
2.6.1 行列式の定義と基本性質
2.6.2 行列式の既約性
2.6.3 特殊な形の行列の行列式
2.7 小行列式,余因子,余因子行列
2.7.1 小行列式
2.7.2 トレース
2.7.3 余因子,余因子行列
2.8 行列式の展開
2.8.1 Laplace 展開
2.8.2 一般化 Laplace 展開
2.8.3 Binet-Cauchy 展開
2.9 Pfaffian
2.10 逆行列
2.10.1 正則行列と逆行列
2.10.2 逆行列,余因子行列に関する諸公式
2.10.3 Jacobi 型の公式
2.10.4 Sylvester 型の公式
2.10.5 行列式のもう一つの特徴づけ
2.10.6 Kronecker 積の行列式
2.11 同次の小行列式の間の関係
2.11.1 Grassmann-Plücker の恒等式
2.11.2 Kronecker-Runge の恒等式
2.12 極限と微積分
2.12.1 行列級数
2.12.2 微分
2.13 階数,項別階数
2.13.1 階数
2.13.2 項別階数
2.14 直交行列,ユニタリ行列,正規行列
2.14.1 直交行列
2.14.2 ユニタリ行列
2.14.3 正規行列
2.15 基本的な変形
2.15.1 基本変形
2.15.2 枢軸変換
2.15.3 LU 分解
2.15.4 Cholesky 分解
a. 対称行列
b. Hermite 行列
c. 反対称行列
2.15.5 QR 分解
2.15.6 単因子
GCD算法
2.16 特殊な行列と行列式
2.16.1 Vandermonde 行列
2.16.2 Gram 行列式
2.16.3 Hilbert 行列
2.16.4 Cauchy 行列
2.16.5 Hadamard 行列
2.16.6 Hankel 行列と Toeplitz 行列
2.16.7 巡回行列
2.17 パーマネント
2.17.1 パーマネントの定義と基本的性質
2.17.2 van der Waerden の予想
演習問題
3. ベクトル空間
3.1 ベクトル空間
3.1.1 ベクトル空間の定義
3.1.2 ベクトルの独立性,従属性
3.1.3 べクトル空間の次元と基底
3.1.4 行列の列の独立性と行列の階数
3.1.5 ベクトルのノルム
3.2 部分空間,補空間
3.2.1 部分空間
3.2.2 部分空間の共通部分と和
3.2.3 補空間,商空間
3.3 線形写像
3.3.1 線形写像と行列表現
3.3.2 線形写像のノルム
3.3.3 零空間と像空間
3.3.4 不変部分空間
3.4 双対ベクトル空間
3.4.1 線形形式,双対空間,スカラー積
3.4.2 双対基底
3.4.3 反傾変換,双対変換,対称変換
3.5 双線形形式と二次形式
3.5.1 双線形形式
3.5.2 複素共役線形形式,複素双線形形式
3.5.3 二次形式,Hermite 形式
3.5.4 定符号形式,内積,計量
3.5.5 交代形式
3.6 正規直交系
Hadamardの不等式 (Hadamard's inequality)
3.7射影
3.7.1 射影
3.7.2 正射影
演習問題
4. 線形方程式系
4.1 線形方程式系
4.2 有理解法
4.3 解の存在と一意性
4.3.1 解の存在条件
4.3.2 解の一意性条件
4.3.3 解空間の基底表現
4.4 反復解法
4.4.1 線形反復解法とその収束性
4.4.2 Jacobi 反復
4.4.3 Gauss-Seidel 反復
4.4.4 その他の反復
4.5 特殊な形の線形方程式系
4.5.1 巡回行列を係数行列とする方程式系
4.5.2 Toeplitz 行列を係数行列とする方程式系
4.5.3 Sylvester の方程式
4.6 最小二乗法
演習問題
5. 固有値
5.1 固有値と固有ベクトル
5.2 Schur 形と応用
5.2.1 Schur 形
5.2.2 ユニタリ相似(ユニタリ合同)変換による行列の対角化
5.2.3 Gershgorin の定理と一般化
5.2.4 Hermite 行列の固有値に関する最大・最小定理,Rayleigh 商
Hermite 行列の固有値に関する最大・最小定理
5.2.5 固有値の摂動
5.3 Cayley-Hamilton の定理
5.4 最小消去多項式,最小多項式
5.4.1 Krylov 列と巡回部分空間
5.4.2 消去多項式
5.4.3 最小多項式
5.4.4 A-xI の単因子
5.5 Kronecker 積の固有値
5.6 値域
演習問題
6. 行列の標準形と応用
6.1 既約形
6.1.1 既約形
6.1.2 周期標準形
6.2 Dulmage-Mendelsohn 形
6.3 組合せ正準形
6.3.1 組合せ正準形
6.3.2 ブロック階数
6.4 階数標準形
6.5 Sylvester 形
6.6 整数行列の Hermite 標準形,Smith 標準形
6.6.1 Hermite 標準形
6.6.2 Smith 標準形
6.6.3 整数 Farkas 定理
6.7 有理標準形
6.8 Jordan 標準形
6.8.1 Jordan標準形
6.8.2 有理標準形との関係
6.8.3 固有空間と一般化固有ベクトルの構造
6.8.4 線形反復
6.8.5 行列多項式,行列関数
6.8.6 微分方程式,差分方程式
6.8.7 レゾルベントと摂動
6.9 特異値標準形
7. 一般逆行列
7.1 一般逆変換と一般逆行列
7.2 最小ノルム形一般逆行列
7.3 最小誤差形一般逆行列
7.4 反射形一般逆行列
7.5 Moore-Penrose 形一般逆行列
8. 非負行列
8.1 非負行列,M行列
8.1.1 非負行列,M行列
8.1.2 Perron-Frobenius の定理
8.2 確率行列と Birkhoff の定理
8.2.1 確率行列
8.2.2 二重確率行列と Birkhoff の定理
整数性定理
9. 行列束
9.1 行列束
9.2 一般化固有値問題と正則な行列束
9.3 一般の行列束の標準形
A. 行列式と Pfaffian に対する組合せ論的接近法
A.1 有向グラフ
A.2 無向グラフ
A.3 置換,順列とその符号
A.4 除算を使わない行列式の計算法
A.5 Pfaftian に対する組合せ論的接近法と除算を使わない Pfaflian の計算法
索引
A-I
J-V

う・え・お・か・き・く
け・こ・さ・し
す・せ・そ・た
ち・て・と・な・に・ね・の・は
ひ・ふ・へ・ほ・ま・み・む・も・ゆ
よ・ら・り・る・れ・わ

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*基礎数理講座會

- -—



線形代数汎論 * 伊理正夫 [著]

朝倉書店

まえがき

現在我が国では(海外でも)「行列」,「行列式」,「線形代数」,等の言葉を本の 表題あるいは一部の章の表題に含む本は数え切れないほどある.そこに新たに一 つを付け加えることにどれだけの意味があるか,疑問に思われる方も少なくない かもしれない.しかし,私には,現存のそれらの本はどれも大同小異にみえる. やや暴言をお許し頂ければ,怠惰な学生と広範囲の応用の経験に乏しいのに応用 おもね

系の学生を教えなければならない教師とに阿るかのごとくに書かれた“分かりや すくて通り一遍の”教科書か,著者が“自分がどこまで抽象的にしかも厳密に理 解しているかをひけらかす”ような数学者のための数学専門書かのどちらかで, 数学の利用者,消費者をほとんど無視したものばかりのようである.私は,長年 多くの応用分野で線形代数に関連した方法を利用し,また不足しているところは 必要に応じて自前で補ったりしながら数理工学的な研究を続けてきた者である が,現在遍在している上記のような本の著者達とは思い切って立場を変えて,利 用者の観点からおよそ何かの役に立ちそうなものを体系的に整理して一冊の本に 纏めてみるのも無駄ではなかろうと常々考えていた. そのようなとき,岩波書店から岩波講座「応用数学」の刊行の企画があり,私 がその中の 2分冊「線形代数 I, I I」を担当することになった.それは 1 9 9 3年 ,

1 9 9 4年に刊行され,その後局所的な改訂を経て 1 9 9 7年に第 2次刊行が,そして それら 2分冊を 1冊に纏めた単行本「一般線形代数」が同書店から 2 0 0 3年に刊 行されたが,技術的な制約から,内容の選択の改善や誤謬の訂正など,根本的な 改訂は出来なかった.多くの読者から従来の数学書とは異なる応用志向の書物で あるとの御好評を頂いたが,あまりにも“遊び”や“ゆとり”がなくて多くの箇 所で“行間を読む”ことを読者に求めているとのお小言も頂戴した.これには私 もまったく同感であって,いつかは岩波版「一般線形代数」を土台にして,ペー ジ数の制約にあまり囚われずに あるが

そしてこれは読者の方には申し訳ないことで

価格にも囚われずに,少々の“遊び”と“ゆとり”も許してもらった

・ 1 ・ 1

まえがき

大増補改訂版”を作製してみたいものだと夢見ていた. ちょうどその頃,朝倉書店編集部の方にお会いする機会があり,私の夢をお話 ノたところ関心を示して下さったので,岩波書店で上記の出版のお世話になって 沐た吉田宇一様とも御相談した上で,この増補改訂版を「線形代数汎論」という 炉や古風な表題をつけて朝倉書店から刊行していただくことにした.岩波版「一 蜂線形代数」を読み直して気の付く所に赤字を入れて行ったら瞬く間に真っ赤に Iったのは言うまでもない.第一章として線形代数の周辺の話題(その誕生に貢

伏した人達のことも私の専門ではないが出来るだけ調べて含めた)を追加した ./'幾つかの節,項の追加,組み直しもした.補章も追加して,そこでは,組合 士論,グラフ理論に関連した話題を積極的に論じた.その目的は,行列式の関連 でこのような観点が本当は大切なのに線形代数の教科書などでは何となく補助的 ぽもののように扱われていた順列や置換の格上げをすること,そして最近再び注 ゴされるようになった“行列式や P f a f f i a nの除算を用いない計算法”の紹介も その一環として行うことにある. これに関連して想起されるのは,その原稿が書かれてからもう六十数年が経つ といわれる < l > e J I H K CP y B I 1 M O B I 1 l . JraHTMaxep ( F e l i k sRuvimovichGantmakher,

l 9 0 8 1 9 6 4 ) の大著 Teop 血 M a T p 1 1 uのことである.この本は,およそ行列の理 倫に関連する研究をする者にとっては必読の定本であるとされ,欧米各国語にも 翻訳され(英訳 F .R .Gantmacher,TheTheoryo fM a t r i c e s ,I ,I I( C h e l s e a

L 9 5 9 ) ; 独訳 M a t r i z e n t h e o r i e; 等々),ロシアでは版を重ねて 2 0 0 4年には第 5 坂が < P I 1 3 M a T J I I 1 Tから刊行されている.応用分野も,力学,微分方程式,制御理 論,数値計算,など,広くカバーしている.本書を著すに当たって,当然私の頭 にはこの本のことがこびりついて離れなかったということを告白しなければなら ない.しかし,半世紀以上経つと,科学技術の進歩もあり,行列の理論自身の発 展もさることながら,その応用の形態はすっかり様変わりしている.伝統の良さ は保ちながら「a H T M a x e pの心を現代に移したらどうなるかと自問しながら,仕 事をしていた.最後の章の行列束のところがやや尻切れトンボになってしまった のは,私の力不足のためである.システムの安定論に深く関係する R outh-Hur-

w i t zの理論(その延長線上の X a p H T O H O Bの定理なども)を省いたのは,私の前著 「数値計算一方程式の解法」(朝倉書店, 1 9 8 1 ) に詳しいからである. P f a f f i a n

/ 1

・ 1 ・ 1

まえがき

•1

については,線形代数の通り一遍の本にはあまり書かれていないが,最近また関 心が高まっている主題でもあり,なるべく伝統的古典的な行列・行列式の理論と 馴染むような形で扱うべく工夫した積りである. raHTMaXepには含まれていな い話題もかなり多く取り入れざるをえなかったのは時代の趨勢と感じた. いろいろな事実を述べるに当たって理論的な証明と構成的な方法とがある場 合,なるべく両方とも書くように努めたが,どちらか一方にせざるを得ないとき には後者を優先した.特に,あまり一般の読者には馴染みがないかもしれない “交代化演算”をふんだんに利用(乱用?)したのもそのような意図からである. 反変,共変のような“テンソル”的な概念は,線形代数においても本当は大切な もので,双対の概念の表記などもすっきりするのであるが,そうすることによっ て生じる読者側からの拒絶反応をいささか恐れてあまり表に出さなかった.もち ろん,関連した事項はテンソル的な視点から見ても正しく書かれていると思う. “演習問題”には,普通の演習問題もあるが,単なる演習問題を超えて内容的に は本文の一部に含めたほうがよいようなものも少なくない.そのような意味で, 本書の演習問題は多様である. この“まえがき”の冒頭にも記したように,数学の利用者のための現代的な線 形代数の,私から見るとまだやや控え目な,本書が,数理的な仕事に携わる多く の人々のお役に立てれば幸いである. あまりにも多数になるので,逐ーお名前を挙げるのは差し控えるが,私の研究 者生活を通して,ご指導を賜った先生方,諸先輩,共同研究を楽しむことができ た同僚,後輩の方々,また私の研究や著作にいろいろ率直な御意見,御批判を賜 った多くの方々に,この場を借りて御礼申し上げます.ただ,岩波講座の校正刷 り全部に眼を通して貴重な多くの注意をしてくださった今井敏行君(現和歌山大 学准教授)および朝倉版の校正刷りを綿密に点検して多くの重要な御助言を賜っ た東京大学の室田一雄教授とその研究室の方々にはお名前を挙げて感謝の意を表 しなければならない.これも言うまでもないことかもしれないが,朝倉書店編集 部には校正の過程で形式的な整合性,それを通じて内容にまでわたる改善の御示 唆を数多く頂いた.記して御礼を申し上げたい. 顧みれば,岩波講座「応用数学」に関わっていたのは私の本務がもっとも忙し いときであった.二つの大学(東京大学工学部計数工学科,中央大学理工学部情

i v

まえがき

じ工学科)を定年で退職した後はやや時間的には余裕ができた(はずである?) )で,本書の準備作業は主として自宅で行ったが,一部は非常勤で勤めていた 材)日本測量調査技術協会の会長室も使わせていただいた.後者の本務はこの :うな原稿書きではなかったが,大目に見逃してくださった同協会には感謝の他 tし : ,. 2 0 0 9年 7月吉日

伊理正夫

目 次

1 . 線形代数の周辺 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 . 1 行列, 行列式, 線形代数小史

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1

1 . 2 用語につし)て

. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 4

1 . 3 人名につし)て

. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .7

1 . 4 記号につし)て

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8

2 . 行列と行列式

T 2 . 1 1

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 0

万U ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 2 2 . 2 行列算 ・ 5 2 . 3 対称行列, Hermite行列,置換行列,基本行列………………………… 1 2 . 4 部分行列, ブロック行列,

Kronecker 積・・・・・・・・・・・・・・・・・• … . . . . .…• ・・・・・・・・・ 1 8

2 . 5 交代化演算 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 5 2 . 6 行列式 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 0 2 . 7 小行列式,余因子,余因子行列 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 2 2 . 8 行列式の展開 ・ 2 .9 Pf a f f i a n ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 6 行 列 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3 9 2 . 1 0 逆

2 . 1 1 同次の小行列式の間の関係

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 6

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5 0 2 . 1 2 極限と微積分 ・ 2 . 1 3 階数,項別級数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .5 4 2 . 1 4 直交行列,ュニタリ行列,正規行列

·······························~··········56

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 4 2 . 1 5 基本的な変形 ・ 2 . 1 6 特殊な行列と行列式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .9 5 2 . 1 7 ノゞーマネン ト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 0 8 演習問題..................................................................................・・ 1 1 4



v i



. ベク トル空間 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 1 8

3 . 1 ベク トル空間

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 1 8

3 . 2 部分空間, 補空間 3 . 3 線形写像

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 2 6

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 3 0

3 . 4 双対ベク トル空間

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 3 8

3 . 5 双線形形式と二次形式 3 . 6 正規直交系 3 . 7 射

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 4 1

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 5 0

影 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・1 5 4

演習 問題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 5 8 . 線 形 方 程 式 系 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・1 6 3 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 6 3

4 . 1 線形方程式系

理 解 法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・1 6 4 4 . 2 有

4 . 3 解の存在と一意性 4 . 4 反復解法

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 6 7

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 7 3

4 . 5 特殊な形の線形方程式系 4 . 6 最小二乗法

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 7 9

. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・1 8 5

演習問題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 8 7 , . 固



値 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 8 9

5 . 1 固有値と固有ベクトル 5 . 2 Schur形と応用

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 8 9

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 9 2

5 .3 Cayley-Hamiltonの定理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 1 2 5 . 4 最小消去多項式,最小多項式

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1 5

の 固 有 値 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・2 2 3 5. 5 Kronecker積

5 . 6 値



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 2 4

演習問題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 2 8

. ;

行列の標準形と応用 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 3 6

6 . 1 既





・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 3 6







.

Vll

6 .2 Dulmage-Mendelsohn形 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 4 0 ノ

6 . 3 組合せ標準形 6 . 4 階数標準形

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 4 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 43

6 .5 S y l v e s t e r形 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 4 5 4 5 6 . 6 整数行列の Hermite標準形, Smith標準形…………………………… 2 6 . 7 有理標準形

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 4 8

6 . 8 Jordan標準形 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 4 9 6 . 9 特異値標準形

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 6 2

. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 6 5 7 . 一般逆行列 .

7 . 1 一般逆変換と一般逆行列

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 6 5

7 . 2 最小ノルム形一般逆行列

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 6 7

7 . 3 最小誤差形一般逆行列 7 . 4 反射形一般逆行列

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 6 9

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 7 0

7 .5 Moore-Penrose形一般逆行列 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 7 1

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 7 4 8 . 非負行列 ・ 8 . 1 非負行列, M 行列 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 7 4 8 . 2 確率行列と B i r k h o f fの定理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 8 1

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 8 7 9 . 行列束 ・ 9 . 1 行 列 束 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・2 87 9 . 2 一般化固有値問題と正則な行列束 9 . 3 一般の行列束の標準形

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 8 9

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 9 1

f a f f i a nに対する組合せ論的接近法 …………………………… 2 9 4 A. 行列式と P ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 94 A.I 有向グラフ ・

A.2 無向グラフ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 3 0 1 A.3 置換, 順列とその符号 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 3 0 3 A.4

除算を使わない行列式の計算法 ···············································-~09



. .

vm



A.5 Pfa f f i a nに対する組合せ論的接近と除算を使わない P f a f f i a nの計算法

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 1 8 尽 弓I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ , ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 2 5

1 線形代数の周辺 現在“線形代数(学)”と呼ばれている分野に関連した非技術的なことがらを, 次章以降の技術的な話に入る前にいくつか述べておこう.この種のことは,“あ とがき”や“囲み記事”の形にした方がよいのかもしれないが,本書では予備知 識として知っていて損のない事項を,あえて冒頭におくことにした.したがっ て,本章は読みとばしていただいて差し支えない.

1 . 1

行列,行列式,線形代数小史

現在日本の大学で“線形代数”という名で教えられていることの内容は,半世 紀ほど前には“代数学と幾何学”という科目名になっていたし,もう少し前には “行列(と行列式)の理論”と呼ばれていたこともあった.しかし,呼び名はとも かく,本質的にはそれほど変化はないようである.もちろん,大学における講義 も,教科書も,参考書も,それぞれの担当者や著者の創意工夫が凝らされてい て,外見はずいぶん異なっていることもあるが.これは諸外国においてもほぼ同 じような状況である.



行列,行列式,線形代数などの概念やそれを扱う数学的技術は,数学の他の分 野にも必須なものであるばかりでなく,統計学,物理学,経済学,工学などの諸 分野において重要な役割を果たすことが,ここ百数十年の間に次第に明らかにな ってきた.その歴史を詳述するのが本書の目的ではないので,ごく大ざっぱに流 れを辿ってみよう. 最初に現れたのは“行列式”の概念であった.これは自然にみえる.いまの言 葉で言えば,連立一次方程式あるいは連立代数方程式の中から変数を次々と消去 して行くと,最後に残る 1変数の式の係数は,もとの方程式の係数の多項式ある

2

1 線形代数の周辺

斗ま有理式になる.それが行列式あるいは終結式と呼ばれるものである.(本書 ~4 章の注意 4.2.1, 例 4.3.1 を見よ.)日本では関孝和(セキ・タカカズ, 1642~

7 0 8 )が 1 6 8 3年 頃 に 終 結 式 の 考 え 方 に , ヨ ー ロ ッ パ で は G o t t f r i e d Wilhelm v o n )L e i b n i z(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ, 1646~1716) が [ぼ同時の 1 6 8 2年頃に行列式の概念に到達したといわれている. “行列”あるいは行列代数と呼ばれる概念を表面に出して論じ始めたのは,

. r t h u rCayley(アーサー・ケイリー, 1821~1895) と James J o s e p hS y l v e s t e r ジェームズ・ジョーゼフ・シルヴェスター,

1814~1897)

l )

の両人であるとされ

:いる.両人はほとんど同年代人であっただけでなく,ケンブリッジ大学の優等 5 業試験 ( T r i p o s )に高成績で合格し ( S y l v e s t e rは 1 8 3 7年に

2位で2 > ,C a y l e yは

3 4 2年に 1位で),若い頃は数学者としての職はなく,生計を立てるために法廷 碍護士や記録係などとして働いていた.この間に両人は数学のあらゆる分野につ 汀て語り合う機会をもったが,その中に行列の代数,群論,不変式論,幾何学な 匁)諸問題が含まれていた. C ayleyは 1 8 6 3年にケンブリッジ大学の純粋数学の

t 授に任命された.給料は法律家のときより激減したが,数学を本職とできるこ :に満足していた.彼はその後の人生をほとんどケンブリッジ大学で過ごし,

3 8 3年に英国の科学振興協会の会長にもなった. 1 8 8 2年の 1月から 5月までア tリカのジョンズ・ホプキンズ大学に滞在して講義をしたが,そこでは

~r が数学の教授をしていた.

S y l v e s -

S y l v e s t e rは , C ayleyとは正反対の,幼い頃から

いしい気性の人間でそのためにいろいろな問題を起こしたが, 1 8 5 4年にウリッ ”の英国陸軍士官学校の数学の教授になり,そこを 1 8 6 9年に 5 5歳で定年退職し :.そこでの教育の負担が大きいので数学者としての才能が磨耗されると不満を )ち,学校には馴染めなかったらしい. 1 8 6 6年には DeMorgan(ド・モルガン) )後を継いでロンドン数学会の第 2代会長になった. 1 8 7 7年にはアメリカのジ 1 ンズ・ホプキンズ大学の教授を引き受け,

1 8 7 8年にアメリカで初の数学誌

L m e r i c a nJ o u r n a lo fM a t h e m a t i c sを立ち上げた.この職は数学の大学教授とし :典型的な環境を与えてくれたが彼には満足でなかったらしい. 1 8 8 3年 , 1 ) S y l v e s t e rの両親の代までの家族の姓は J o s e p hだったという.アメリカでの居住権を得るに当た て,ユダヤ人臭くない名前にするために兄が J o s e p hをミドルネームにして姓を S y l v e s t e rとしたのに ・らって,彼も若いうちに J o s e p hをミドルネームにして S y l v e s t e rと名乗ることにしたといわれてい I

2 ) しかしユダヤ教信者であったため,大学を“卒業”することはできなかった.

3

1 . 1 行列,行列式,線形代数小史

S y l v e s t e r既 し こ 68歳のとき,彼はオックスフォード大学の幾何学の教授に任命 0年ほどでロンドンに戻ってしまった. S y l v e s t e rは数学の研究以外 されたが, 1 に詩の研究にも力を注ぎ,“詩の諸法則”という著作も自慢にしていたそうであ る .

C a y l e yや S y l v e s t e rとはほとんど独立になされた, HermannG u n t e rG r a s s mann(ヘルマン・ギュンター・グラスマン, 1 8 0 9 r . . . , 1 8 7 7 )の貢献も無視してはな らない. Grassmannは現代の言葉でいう“線形ベクトル空間”やベクトルの外 積のような考え方に到達し,“外積代数”の創始者ともいわれている.後に E l i e

8 6 9 " ' 1 9 5 1 )の“外微分形式”が有名になるより半 C a r t a n (エリー・カルタン, 1 i eL i n e a r eA u s d e h n u n g s l e h r e( 1 8 4 4 )を完成し,それを力学, 世紀以上も前に D 電磁気学,幾何学などに応用した.彼の業績が正当に評価されるまでには約百年 の月日が必要だった. G rassmannはシュテッティン(当時はプロシャ, ドイツの

町S t e t t i n:現在はポーランド領の S z c z e c i n , シュチェツィン)のギムナジウム (中学・高校レベルの高等教育機関)に主として関係していて,ベルリン大学にも 何回か出入りしたらしいが,それもギムナジウムの教師としての資格を得る,高 めるためであった.数学以外に,彼は印欧語の古形の研究もしていたという.

Grassmannの外積代数は,線形代数の中でも重要な役割を果たすが,外微分 形式を通じて微分幾何学や物理学の諸分野にも有用な道具となる.本書では,そ のことを陽には取り上げないで,実質的には等価な役割を果たす“交代化演算”

anA r n o l d u sS c h o u t e n(ヤン・アル の形をふんだんに使うことにする.これは J ノルデュス・スホウテン(スカウテン), 1 8 8 3 " ' 1 9 7 1 )や D i r kJanS t r u i k(ディル ク・ヤン・ストロイク, 1 8 9 4 , . . . . , 2 0 0 0 )のオランダ学派の流儀に従ったものである.

( S t r u i kは結局アメリカ滞在が長かった.) 行列や行列式に関する研究成果が急速に累積してくると,それらをまとめた図 書も著されるようになった.その走りは,行列式に関する Thomas M u i r ,T h e -

o r yo fD e t e r m i n a n t si nt h eH i s t o r i c a lOrdero fD e v e l o p m e n t( 1 8 8 3 )であった. それまでに知られていたすべての結果をまとめたと言っており,当時はそれが可 能だったということでもある. W i l l i a m H. M e t z l e rによるその増補・改訂版 A

9 3 3年に Longmans,GreenandC o . T r e a t i s eont h eT h e o r yo fD e t e r m i n a n t sが 1 から出版されたときには, 7 6 6ページの大著になっていた ( D o v e r版あり) . 1 9 3 3 年に S p r i n g e rから出版された C .C .M a c D u f f e e ,TheT h e o r yo fM a t r i c e sにはも

4

1 線形代数の周辺

うかなり今風の行列代数の理論が展開されている ( C h e l s e a版あり). 現在では,行列や線形代数の既知の事実をすべて含んだ出版物など可能だとは 艮えない.ある立場から体系的に整理した参考書

本書もそれを目指したもの

であるが一―-, あるいは,初等的な入門書,教科書の類は多数あるが.線形代数 やその応用に関する研究は,科学・技術の諸分野で広く展開されていて,研究や 兒果の動向が一望できるものではないが,‘‘線形代数”に限った国際学術誌

i n e a rA l g e b r aandI t sA p p l i c a t i o n sは 1 9 6 8年の創刊以来隆盛を極めている.



n t e r n a t i o n a lL i n e a rA l g e b r aS o c i e t y " という国際学会 ( 1 9 8 9年創 ま た , "TheI 斐 : 1 9 8 7年に前身となる I n t e r n a t i o n a lMatrixGroupが作られた)も活躍して

) る . なお,本節に登場した人物の履歴などについては(後章に登場する多くの人物

t t p : // w w w . g a p s y s t e m . o r g / h i s t o r y / M a t h e も含めて),かなり信頼性の高い h a y l e yとS y l v e s t e rについては最近次 n a t i c i a n s /に拠るところが多い.また, C R I L L Y ,ARTHURCAYLEY:M a t h e m a t i c i a n り大著が出版されている. TonyC し a u r e a t eo ft h eV i c t o r i a nA g e ,J o h n sHopkinsU n i v e r s i t yP r e s s ,B a l t i m o r e ,

: 0 0 6 ,7 8 4p p . Karen Hunger PARSHALL, JAMESJOSEPH SYLVESTER: r e w i s hM a t h e m a t i c i a ni naV i c t o r i a nW o r l d ,J o h n sHopkinsU n i v e r s i t yP r e s s , 3 a l t i m o r e ,2 0 0 6 ,5 4 4p p .

1.2 用 語 に つ い て 行列に関係した各種の用語について概観してみよう. まず,“行列”という日本語は,‘‘一列に並んでいるもの”のことを意味するの

q u e u e ) " があるし,待ち行列理論 祁普通である.科学技術用語にも“待ち行列 ( : q u e u( e )i n gt h e o r y )はオペレーションズ・リサーチや通信理論の中で重要な一 m a t r i x ) "は , 祁門をなしている.線形代数や行列式に関連して使われる“行列 ( 勿を四角に(縦横に)並べたもので,縦の並びを“列 ( c o l u m n ) " , 横の並びを“行

( r o w ) " と呼ぶところから,その“行”と“列”を併わせて“行列”と呼ぶこと i こしたものと思われる.因みに,英語などのヨーロッパ語では,

m a t r i xは“中

i こ何かを入れる所(子宮など)”という意味であるから,物を四角に並べる枠のよ

うなものと考えておいてよいのであろう.

5

1 . 2 用語について

行列,行,列などが,英,独,仏,露などの各国語で何と呼ばれているかを一 覧しておく. 日 : 英: 独: ム イ: 露:

行列





matrix ( p lm a t r i c e s ) Matrix ( f ;p lM a t r i z e n ) m a t r i c e( f ) M命p t t u : a( / )

row Z e i l e( / ;p l-n) l i g n e( f ) CTpOK~a ( / )

column S p a l t e( / ;p l-n) c o l o n n e( f ) C T O J I 6 如 (m;-6砥,…)

お隣りの中国の数学用語は,同じ漢字圏ということで日本の用語と相互に影響 しあっているが,行列関係では,一般の行列を“矩陣"'特に正方行列で“正方” を強調したいときには“方陣”というのはわかりやすい.単位行列が“単位方 陣”だというので安心していると,逆行列は“反方陣”,直交行列は“正交矩陣” (これは“正交方陣”でもよさそうであるが)となる.固有値などは“特徴値”な

h a r a c t e r i s t i cv a l u eという英語の訳だと思え どとなっている.もっともこれは c ば,日本語にその用例があっても不自然でないが.ところで,彼地には仮名がな いので,ベクトルのことは“向量”と呼んでいるらしい.(テンソルのことは “張量".)したがって,固有ベクトルは“特徴向量”となっている.中国本土と台 湾での用語の差は,用いている漢字の書体の差だけであるようである.(厳密に いうと,日本語の漢字の書体は中国の繁体字とも簡体字ともいまや異なってしま っているが.) 線形代数,線形独立・従属というとき,‘‘線形”と書くか“線型”と書くかに ついては,日本の中での意見の統ーはまだ得られていないようである.本書では “線形”に統一してある.“形"は“かたち”で“型”は“かた”なので,微妙に 意味が異なるから使い分けるべきであると拘る人も少なくない.中国では,これ を“餞性" (餞は線の異体字)と呼んでいるので,‘‘形”か“型”かの問題はすっ きりしている. 現在では,行列の形にモデル化される物理や工学・経済の大型の問題が多い.

l i n e a r computaそれらの問題を“数値的に”解くために,いまや“線形計算 ( t i o n ) " という分野が確立している.簡単に言えば,線形計算は“線形代数に関 係した数値計算法”である.ところが,日本語で“線形計算”というと,正に, “(曲)線の形の計算法”という意味の,実用性の高い,そして歴史も長く需要も

. 2 . 1において,直線の道路を自動車で A まで 多い分野がある.たとえば,図 1

6

1 線形代数の周辺

来て,そこから徐々にハンドルを切って点 B まで進み,そこでハンドルの角度 を一定に保ち C まで進み,そこから徐々にハンドルを戻し, D でハンドルを戻 し切って,そこからはまた直線に沿って進む, というようなとき,どのように道 路の線の形を設計すればよいか.一定のハンドル角では自動車は一定の曲率の円 弧を描いて走る.ハンドルを切らずに進むときには,曲率 0の曲線,すなわち直 線で進む.その間を“滑らかに”繋ぐにはどうしたらよいか,というのが線形計 算の問題である.“なるべく急ハンドルを切らないように”ということを“ハン ドルの角度を変えるときは角度の変化が進行距離に比例するように”と定式化す

x ,Y)' ある点から曲線に沿って測った長さを s , る.曲線上の点の x-y座標を ( 点( x, y )における曲線の接線の x軸との角度を 0とすれば(図 1 .2 .2 ),dxIds=

c o s0 , dy/ds=sin0 , d0/ds=曲率 =l/R=c・[ハンドルの角度] (R=曲 率 半 /ds=O( 0 = c o n s t . ) , 円弧 径)であるから,曲線が直線である部分においては d0

CB

I

I `



-/R I 、 , '‘ ‘ /

Iー ` ー

IIー





図1 . 2 . 1 クロソイド曲線の例

. 2 . 2 図1

っヽ︱

A

-





>

7

1 . 3 人名について

である部分においては d0 I d s= c o n s t . , 直線と円弧を繋ぐ部分においては,繋ぎ

/ a 刊がは適当に選んだ定数), 目のところから sを測ることにして, d0/ds=冗s すなわち 0=(冗 / 2が )s zとなる.そこで,この最後の部分の形は



x=lscos

d s ,



y=l¥in

d s

( 1 .2. 1 )

となる.これはクロソイド曲線 ( c l o t h o i dc u r v e )とか緩和曲線とか呼ばれる曲線 であり,光の回折理論などに現れるコルニュの螺線 ( C o r n us p i r a l )と同じもので

( 1 .2. 1 )の二つの積分はフレネル積分 ( F r e s n e li n t e g r a l )と呼ばれている ある. ( ものである.)道路の線形の設計の分野では sを L と記し a /ふ;を A と記して, クロソイドの形を

LR=A2

( 1 . 2 . 2 )

と表すことが多い. (Aは長さの(物理)次元をもつ定数.)道路幅が広く多車線 の道路の場合には上記の話はどうなるかとか,曲がりのために生じる遠心力を打 ち消すのに道路幅方向につける傾斜 ( c a n t )をどう決めたらよいかとかいうよう な,‘‘実際的な”問題はいろいろあるが,もちろんここではこれ以上立ち入らな し).

行列代数の始祖の一人である A .C a y l e y (→ 1 . 1節)が,歿する直前に小冊子

TheP r i n c i p l eo fB o o k k e e p i n gb yD o u b l eE n t r y(複式簿記の原理)を著している ことにも注目したい.彼は,「複式簿記はユークリッドの“比の理論”と同じよ

. 2 . 2とも うに完全なものである」と述べているというが,このことは本書注意 2 関係するが,詳しくは論じない.いわゆる“行列簿記”の“行列”が線形代数で 扱う行列と関係があるのかないのかについても.

1 . 3 人名について どんな分野についても同じことであるが,本書でも多くの学者・研究者の名前 が出てくる.ある人名のついた特殊な形の行列とか,定理とか,方法とかが,そ の人とどのような関りをもっているのかについては,いろいろと議論がある場合 が少なくない. たとえば 2 . 1 6 . 1項の Va ndermonde行列(式)は実は他の人が既に用いていた とか, 4.4節に現れる G a u s s ,J a c o b i ,S e i d e lなどの名は正当に使われているかと

8

1 線形代数の周辺

か,その他議論をし出せばきりがない.これは線形代数関連のことに限らない. よく知られた例では,ベクトル解析などによく現れる Gaussの定理: >

f f fdivudV =f fu•dS

( 1 . 3 . 1 )

a v

がある. ( uはベクトル場, V は 3次元空間のある領域, dVは体積要素, d i vu は U の発散,

a vは Vの境界面,

dSはその面積要素(ベクトル)である.詳し

Gaussの定理” くはベクトル解析などの書物を参照のこと.)我国では,これを " と呼んでいる(そう呼ばないと通じない)が,ロシア(ソヴィエト連邦)では "Ostrogradskii の定理”と呼び,英米• 独で G aussとしか呼ばないことを非難

さえしている

s t r o g r a d s k i iの名も入れることがあると言い 仏ではときどき O

ながら. ( M 1 1 x a ぃB a c 1 1 J I 恥 B 1 1 qOcTporpa 八CKI1H: ミハイル・ヴァシリエーヴィッ チ・オストログラツキー, 1 8 0 1 , . . . . . _ _ ,1 8 6 2(暦法により 1 8 6 1とされることもある).)

C a y l e y -Hamiltonの定理”も,人によって "Hamilton本書にもよく現れる " Cayleyの定理”と呼ぶこともある. このようなことに凝ると際限がないから,本書ではよほどのことがない限り, たとえそれが誤用であっても,我国で習慣的に行われている呼び名を用いること にする. 人名についてもう一つ注意しておかなければならないのは,日本語(片仮名表 記)での表し方である.本書では,原則として原綴(英字が原綴でないものについ ては英字に転写)を用い,初出の所に片仮名で近似的な読み方を示すことにする. “読み”については,なるべく“原地主義”に従い“英語読み"は避けるように 努める.しかし,昔も今も数学者の活躍は国際的で,ある人の名前の生誕地での 読みと,主として活躍していた場所での読みが異なる場合が少なくない.また, 人名の綴り自体も,同一人が異なる言語で書いた論文に異なる綴りを用いる例が あるので話が複雑で,簡単に割り切れない.

1 . 4 記号について 本書で用いる記号については,その場その場で定義や説明をするが,転置行列 と複素共役 1 > ( H e r m i t e共役)行列,逆行列の表記についてだけあらかじめ述べて

. 3 . 1項 ) . おく(→ 2



1 . 4 記号について

行列 A の転置行列は,多くの書物,論文などでその表記はまちまちで, A ' ,

t A ,t A ,A t , Atとか書かれるが,本書ではがと記すことにする. 同じく A の転置複素共役は, A*=A'などと書かれる場合もあるが,本書で は AHと書くことにする. 逆行列 A -1をがと記すこともあるが,本書では A-1を採る.

1 ) [キョウヤク]と読む.古い形が共範であった.[キョウエキ]とは読まないように.

2 行列と行列式 本章ではごく古典的な接近法で,行列と行列式に関する基本事項を述べる.も ちろん,次章のベクトル空間の概念を知ってから再び本章を見直すと,新しい視 野が開けるのではあるが,いわゆる組合せ論的手法を用いる本章のようなやり方

u c l i d環など)以外のものを対象とする場合にも通用 は,本格的な代数系(体や E する(かどうかが容易にわかる)ので,そのつもりで読んでいただきたい.

2 . 1 行 列 たとえば,実数体 R の上の 2X3型 の 行 列 A とは, 6個 の 実 数 au,a 1 2 ,a 1 3 , a 2 1, a 2 2 ,a 2 sを次のように長方形に配列したものをいう:

A~[ニニニ].

( 2. 1 . 1 )

一般に,ある代数系 K の上の mXn型の ("m行 n列の" ともいう: m,nは 自然数)行列 ( m a t r i x )

A=[a』

( i = l , ・ ・ ・ , m ;j = l , ・ ・ ・ , n )

l

も同様にして定義される:

A~l口:::□

│a1a,



auEK.

( 2. 1 .2 )

l i

l_

行列 A の横の並び [ a i 1 a i n ]を行(第 i 行,あるいは行 i )(row), 縦の並び ⋮

•••••••



-

. m J

. .

2 . 1 行

11



を列(第 j列,あるいは列 j )( c o l u m n )と呼ぶ.行列 A を構成する要素 a i jのこ とを, A の ( i , j )要素 ( e l e m e n t ,e n t r y , 成分, componentともいう)と呼ぶ.

nXn型の行列を,次数 ( o r d e r )nの正方行列 ( s q u a r em a t r i x )という. 以降, K は有理数体 Q, 実数体 R , 複 素 数 体 C, 整 数 環

z , あるいはそれら

を係数とする 1変数多項式環 K[x](さらにはその商体である有理式体 K(x))で あるとして話を進める.それ以外の場合,たとえば K が分配束である場合など にも一部の話は適用できる.(代数系の諸概念については,たとえば,伊理•藤

重:「応用代数」,コロナ社, 1 9 9 6 ,1 9 8 8など参照.) すべての要素が 0 である mXn 型行列を Om,n と記し ~m と n が前後関係から

明らかなときは単に 0 と記す),零行列 ( n u l lm a t r i x )と呼ぶ.

. 1 . 1 より一般的,形式的には,行列 A は,二つの有限集合 I , J (空集合 注意 2 でもよい)と代数系 K に関して, A:Ix/ → K なる関数のことであると定義する こともできる. ( Iが行集合,]が列集合, A:( i, j )戸 aいである.)実際,行や列の 順序は応用上無意味で,単に便宜的に任意に定めたものにすぎないことが多い.さ らに, Iと]との間に対応関係があるとは限らない. たとえば, Iが原材料の種類の集合,]が製品の種類の集合, a i jが製品 jを単 位量作るのに要する材料 iの量であるというモデルのことを考えてみられたい.

Iと]が同数の元からなるとき,すなわち I I l = I J Iのとき A は正方行列である. さらに, Iと]の間に一対一対応があるとき,簡単にいえば I=Jであるとき,行 列 A の( i ' i )要素のことを A の対角要素 ( d i a g o n a le l e m e n t ) , その他の要素を非 o f f d i a g o n a le l e m e n t )という ( i = l ,… , m(=n)). I=Jの例としては, 対角要素 ( I=Jが n個の都市の集合, a i jが都市 iから jへの距離(道路に沿っての距離,時 間距離など)であるいわゆる「距離行列」がある.

Iおよび]に(完全な)順序が定められている(本質的な意味のある順序のこと もあるし,仮に定めたものであることもある)場合, { a i jIi~j} を A の下三角部 分C l o w e rt r i a n g u l a rp a r t ) ,{ a i jI i~j} を上三角部分 (upper t r i a n g u l a rp a r t ), 下三角部分以外の要素がみな 0である行列を下三角行列,上三角部分以外の要素 がみな 0である行列を上三角行列という.

i j = Oである行列を上 Hessenberg(ヘッセンベルク)行 また, i>j+lのとき a 列 , j>i+lのとき a i j = Oであるものを下 Hessenberg行列と呼んでいる.

d i a g o n a lm a t r i x )といい, 非対角要素がみな 0である(正方)行列を対角行列 (

12

2 行列と行列式

A=diag[au,… ,a n n Jの よ う に 記 す . d i a g [ l ,…,1 ]を n次 の 単 位 行 列 ( u n i t nと記す(明らかなときは nを略す). m a t r i x ,i d e n t i t ym a t r i x )と呼び, I I i -j l>b(~1) のとき aij=O であるような行列 A=[a 』は,帯幅 (width)2b+l の帯行列 ( b a n dm a t r i x )と呼ばれる.特に, b=lのとき三重対角 ( t r i d i a g o n a l ) 行列という.三重対角行列は,上 H essenberg行列であり,かつ下 Hessenberg 行列である. 注意 2 . 1 . 2 特に, mXl型の行列のことを (m次元)縦ベクトル(列ペクトル),

lXn型の行列のことを ( n次元)横ベクトル(行ペクトル)と呼ぶ.また, lXl型の s c a l a r )と呼び,それを K の要素 auと区別しないこともあるが, 行列をスカラー ( 本来は異なる概念である.





2 . 2 行 2 . 2 . 1 和と差

同じ型 (mXn型)の二つの行列 A,Bに対しては,それらの和 S=A+B, 差

D=A-Bが,対応する要素ごとの和,差として定義される.すなわち, A = ,S=[ s』,D=[d 』とすれば, [ a』,B=[加 J S i j = a i j +b i j , となる.

d i j = a i j -b i j

( i = l ,・ ・ ・ ,m:j=l,・ ・ ・ ,n ) ( 2 .2 . 1 )

sも D も A,Bと同じ型である.

2 . 2 . 2 積 !Xm型 の 行 列 A=[a』と mXn型 の 行 列 B=[如]に対して,積 P=[P』 = AB(A・Bとも記す)は !Xn型行列で m

加 =~aik ・如 k=l

( i = I , ・ ・ ・ ,l ;j = l , ・ ・ ・ , n )

( 2 . 2 . 2 )

により定義される. (Aの列の本数と B の行の本数が等しいことが大切!) t

2 . 2 . 3 スカラー倍 mxn型 の 行 列 A=[a』と K の 元 I t (スカラーと呼ぶこともある:注意 2 . 1 . 2も見よ)に対して, A の入倍 B=[b』 =t1Aは mXn型の行列で b i j = l t a i j

( i = l , ・ ・ ・ , m ;j = l , ・ ・ ・ , n )

( 2 . 2 . 3 )

13

2 . 2 行 列 算

により定義される.

2 . 2 . 1 ) ,( 2 . 2 . 3 )を 同 じ 型 の 行 列 A,Bとふ μ(EK)に対して, 11A+μBが ( 何回か用いて定義できる.

2.2.4 行列算の諸公式 上記の演算が以下の性質を満たすことは容易に確かめられる. (Kにおける加 減算,乗算がもつ性質によっているので, K を体や環でない代数系に取るとき

. 1 ,2 . 2参照) にはその点に注意する必要がある:演習問題 2 ( i ) A,B,C が同じ型の行列, 0が そ れ ら と 同 じ 型 の 零 行 列 , 1 1 ,μ,1 , OEKとして, IA=A, OA=O, A-A=O, A-B=A+(-l)B,

( 2 . 2 . 4 )

(11μ)A=11(μA)=μ(ttA),

( 2 . 2 . 5 )

(A+B)+C=A+(B+C)

) ( 2 .2 .6

A+B=B+A

( 2 .2 .7 )

(11+μ)A=11A+μA,

( 2 . 2 . 8 )

入(A+B)=ttA+ ttB.

( 2 . 2 . 9 )

,0(零行列), I (単位行列)はそれぞれ下式の中の諸演算が定 ( i i ) A,B,C 義されるような型の行列(型を右下付添字で明示する)であるとして,

O l , m 心, n=O l , n , Al,mOm,n=O l , n ,

( 2 . 2 . 1 0 )

入( A l , m B m , n )= ( i ! A l , m )l , m 恥 = A l , m( i l B m , n )m , n ,

( 2 .2. 1 1 )

A k , l( B l , m C m , n )= (ふ恥) C m , n ,

( 2 . 2 . 1 2 )

A l , m( B m , n+C m , n )=A l , m B m , n+A l , m C m , n ,

( 2 . 2 . 1 3 )

(Al,m+B l , m )Cm,n=Al,mい

( 2 . 2 . 1 4 )

+Bl,mCm,n,

I 叫 m,n=Am,ふ =Am,n.

( 2 .2. 1 5 )

注意 2 . 2 . 1 要するに,行列の間の演算は一~ え い れ ば ― ほ ぼ 普通の数の間の演算から類推される性質を有している(たとえば,いくつもの行列 の和を取るときの括弧は必要ないし,積についても同様である;和は可換でもあ

i a g [ふふ…, 1 1 ]= 1 1 1を(左あるいは右 る)ということである.行列 A に対角行列 d から)掛けることは, ( 2 .2. 1 5 ), ( 2 .2. 1 1 )により, A を入倍することと等価であ る.なお,ここで特に注意しなければならないのは, A Bと BAの両方が定義さ

2 行列と行列式

14

れるときでも一般には AB=BAとはならない(積は可換でない)ことである.たと えば, A が mXn型 , B が nXm型なら, ABは mxm型 , BAは nXn型であ るし, A と B が共に n次正方行列であっても,

A=[~

~].

B=[~ ~].

AB=[~

~].

BA=[~

>

である.また Aキ O,Bキ 0でも AB=Oとなることがある.たとえば,

A=[~

~].

B=[_~-~].

AB=[~

~].

ー : ー ! ]

BA=[

である. 注意 2 . 2 . 2 mXn型の行列 A の要素が物理量を表していて, A と他の行列と の積が作られるような場合(意味のあるモデルでは必ずそうである)には, A の要 素の物理次元は

[ a i jの物理次元]=[行 iに対応する物理次元]/[列 jに対応する物理次元] ( 2 . 2 . 1 6 ) という形に表されなければならない.実際,積 A Bの ( i , 1 )要素は, n

( 2 .2. 1 7 )

~aijbj1

j=l

であるが, ( 2 .2. 1 7 )の和が物理的に無意味でないためには,各項 a i j如 が 同 じ 物 理 2 .2. 1 6 )が導かれる.(より詳し 次元を有していなければならない.このことから (

くは読者が自ら考察されたい.“次元解析”と呼ばれる技法との関係も深い.)

. 2 . 3 正方行列 A に対しては,積 A,A•A, A・A・A,…が常に定義され 注意 2 る.これらから和やスカラー倍により作られる行列が積に関して可換であることも 明らかである.そこで, 1変数多項式 f( x )=ao+a心+…十 a叫内に対して, A の

m a t r i xp o l y n o m i a l ) 行列多項式 (

f(A)=I+a1A+a因 + … 十 a』”

( 2 .2. 1 8 )

を定義することができる.ここで,

AO=J, が =AP-l・A=A・AP-l とする.このとき,

( p = l , 2 ,… )

( 2 .2. 1 9 )

f( x )=g(x)h ( x )ならば, f( A )=g(A)h(A)となることも明

らかであろう.(逆は一般には成り立たない.)

. 2 . 4 n 次正方行列の全体を』fn と記す• o#nの元の間には,(可換な)和 注意 2 と(非可換な)積が定義されていて, ( 2 .2. 1 3 ) ,( 2 .2. 1 4 )の形の分配則が成立する. nは一つの環(行列環,多元環)をなすことになる. そこで,』f

2 . 3 対称行列, Hermite行列,置換行列,基本行列

15

2 . 3 対称行列, Hermite行 列 , 置 換 行 列 , 基 本 行 列 2 . 3 . 1 行列の転置と Hermite共役 mXn型の行列 A=[a』の転置 ( t r a n s p o s e )B =[ b』=がとは, b ; j = a j ;

( i = l , ・ ・ ・ , n ;j = l , ・ ・ ・ , m )

( 2 . 3 . 1 )

で定められる nXm型の行列のことである.

K=C(複素数体)のとき, mXn型の行列 A の共役 ( c o n j u g a t e )C=[ c i j ]=A とは,

C i j =心

( 2 . 3 . 2 )

で定められる mXn型行列のことである ( i iは aの共役複素数).共役転置行列

( _ A ) T ( =(A りであることにも注意!)を AHと記し, A の H ermite(エ ル ミ ー ト)共役とも呼ぶ. これらの定義から,以下の諸性質が成り立つことは明らかであろう.(入 EK とする.共役転置に関するものは K=Cのとき.)

( i ) ( A A )T =;1AT'(AA)H=詞.

( 2 . 3 . 3 )

( i i ) (A+B)T =AT+BT'(A+B)H=A叶 B圧

( 2 .3 .4 )

( i i i ) (AB)T=BTAT, (AB)H=BHA几

( 2 . 3 . 5 )

( i v ) (AT)T=A, (如) H=A.

( 2 .3 .6 )

正方行列 A は ,

AT=Aのとき,対称 ( s y m m e t r i c )行列, AT=-Aのとき,反対称 ( a n t i s y m m e t r i c )行列,交代 ( a l t e r n a t i n g )行列あ るいは歪対称 ( s k e w s y m m e t r i c )行列, 犀 = Aのとき, H ermite行列,

AH=-Aのとき,歪 Hermite( s k e w H e r m i t e )行列 という.(形容詞として用いる H ermiteは H e r m i t i a n ,h e r m i t i a nと書くことも ある.) 注意 2 . 3 . 1 上記の定義は,行集合 Iと列集合]との間に一対一の対応関係があ る( I=Jとみなせる)場合しか意味をもたない(→注意 2 . 1 . 1を参照).一方, I=J 1 であるような任意の(正方)行列 A に対して, B=-(A+A りは対称行列,また, 2

16

2 行列と行列式

C=上 (A-A りは反対称行列である(式 ( 2 .2 .7 ) ,( 2 .3 .3 ) ,( 2 .3 .4 ) ,( 2 .3 .6 )によ 2 る).そこで, A はその対称部分と反対称部分に分解される: 1 1 A=-(A+A り+ー (A-A り ( 2 .3 .7 ) 2 2 この分解が一意的であることは明らかであろう. ほとんど同様にして (K=Cのとき), 1 1 A=-(A+A り+― (A-A り 2

( 2 . 3 . 8 )

2

という, H e r m i t e部分と歪 H e r m i t e部分への分解もできる.

,H e r m i t e行列の対角 定義から直ちにわかるように,反対称行列の対角要素は 0 e r m i t e行列の対角要素は純虚数である . Kの標数が 2のときに 要素は実数,歪 H は,反対称行列は対角要素が 0の対称行列であるということにしておく. 注意 2 . 3 . 2 Aが H e r m i t e行列なら iAは歪 Hermite行列, A が歪 H e r m i t e行 列なら iAは H e r m i t e行列である.

. 3 . 2 置換行列と基本行列 正方行列 P の要素がどれも 0あるいは 1に等しく,しかもどの行にも 1がち :うど 1個,どの列にも 1がちょうど 1個あるときに, P は置換 ( p e r m u t a t i o n )

f 列と呼ばれる . m次の置換行列 P=[ 加]の行 iにおける 1が列 j にあるとす

s (加 =1( i=l,… , m)'加 =O(jキ沿).このとき,

l c

mXn型 の 行 列 A に対して,

l'=[ a ら]=PAの行集合の順序は A の行集合の順序に置換 1)

h . .

j m )

1 2・・・m

t 施すことによって得られる.また, nXm型 の 行 列 B に対して, BPは Bの •り集合の順序を置換したものになっている.特に,ある io,

j o( i り キj o )について,

1 i i = l( iキ幻, j o ) ,P i o j o = P j o i o = l ,P i o i o = P j o j o = O ,そ の 他 の i , jに 対 し て 加 =Oで うるような置換行列

1 ) 置換,偶置換,奇置換などについては補章 A.3節も参照のこと.

17

2 . 3 対称行列, Hermite行列,置換行列,基本行列 J o

i o

P ( i o ,j り ) 三

(カゲをつけた部分は 0 )

1」

( 2 . 3 . 9 )

は互換 ( t r a n s p o s i t i o n )行列で, P( i o , j o )を行列 A の左(右)から掛けると, A の 行応と行j o(列わと列 j o )の入れ換えをひき起こす. ・ 1・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・Z o・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・m

叩次対角行列 T(i 。 :t )=diag[l,…,1 ,t ,1 ,…,1 ]

( tEK) :

i o

(カゲをつけた部分は o )

T ( i o ;t )三 幼 1」

( 2 .3. 1 0 )

。 :t)Aは , A の行応(のすべての を mXn型 の 行 列 A に左から掛けたもの T(i 要素)を t倍した行列に等しい.また, B T( i o ;t )は , B の 列 応 を t倍 し た も の になる.

E ( i o , } り ) を , e i o j o = lで , そ れ 以 外 の 要 素 は す べ て 0の m 次正方行列とし, W( i o ,j o ;t )=I 叶 tE( i o , j o )( tEK,i 迂 j o )とおく: i o

J o

W ( i o , j o ;t )=

(カゲをつけた部分は 0 ) .

1」

( 2 .3. 1 1 )

W C i o , j o ;t)Aは , A の行J りを t倍 し て 行 z りに加えたものに等しい.また, B W( i o , j o ;t )は , B の列応を t倍して列 j 。に加えたものに等しい. P(, 応j o )( i oキj o ) , T( i 。 :t )( tキ0 ) , W(io,j 。 ;t )(応キ j o )の 形 の 行 列 の こ と を 基 e l e m e n t a r y )行列と呼ぶことがある(→ 2 . 1 5節を参照).直接容易に確認でき 本( るように,次のような関係がある(応キ j 。とする).

2 行列と行列式

18

P( i o ,j o )P( i o, j o )=I,

: 。t )T ( i o : l / t )=I, T(i

( 2 .3. 1 2 )

W( i o, j o ;t )W ( i ぶj o ; t )=I. P( i o, j o )T( k; t )=T( h ;t )P( i o, j o )

( 1 : : ・ ; とのきときh:j~k k~j。のとき

.

( 2 . 3 . 1 3 )

h=io )

P( i o, j o )W ( k, h ;t )=W ( k ' ,h ' ;t )P( i o, j o ) k,hキi o ,, j 。のとき

k'=k,h'=h

k = i o ,hキj 。のとき

k'=j o ,h'=h

k = j o ,hキz りのとき

k ' = i o ,h'=h

= j , 。のとき kキ応, h

k'=k,h ' = i o

o ,h=i りのとき kキj

k'=k,h ' = j , 。

k=i o ,h=, j 。( k = j o ,h=幻)のとき

( 2 . 3 . 1 4 )

k'=h,h'=k

W( i o , j o ;t )T( k ;s )=T( k ;s )W ( i o , j o ;t ' )

(ロニ。とのきときt'~·=t k=z ・。のとき

.

( 2 . 3 . 1 5 )

t'=t/J

: 。-1)W ( i o , j , ; 。1 )W ( j o ,i り : ー1 )W ( i o , j o ; l ) . P( i o , j o )=T( j ,

( 2 . 3 . 1 6 )

2 . 4 部分行列,プロック行列, Kronecker積 . 4 . 1 部分行列と行列の分割 mXn 型の行列 A=[a 』の r(~m) 本の行 I'= { i 1 ,…,む}( i 1く…<む)と

(~n) 本の列 J'=U1, … ぶ } ( j 1 nなら. F l i 1 ・ ・ ・ i r l=Oである.

23

2 . 5 交代化演算

2 . 5 . 2 交代化演算の諸性質 交代化の演算は以下の性質を有する. ( i ) a}~1· ・ ・ a ; ; 1= a ( j 1 ・・ ・ a 5 ; 1= a似・ ・ ・ a ; ; J . n n n n n n ..~ ~恥 ・ ・ i r ]か ・ ・ i r =~ ・ ・・~ Fか ・ i r [ i 1 ・・・i r ]= ~ ・ ・ ・~ F [ i 1 ・ ・ ・ i r ] [ i 1 ・ ・ ・ i r ]. ( i i ) ~ . i 1 = l i r = l i 1 = l i r = l i 1 = l i r = l ( i i i )

・ i r i r + 1 ・ ・ ・ i s =F [ i 1 ・ ・ ・ i r ] i r + 1 ・ ・ ・ i sのとき Gか ・

G [ i 1 ・ ・ ・ i s ]= F [ i 1 ・ ・ ・ i s ] .

Gれ・ ・ ・ i s = F i 国 ・ ・ i s ]のとき G国··ir]irw··is=Gi1···is• n n n n ・ i n ][ れ・ ・ ・ i n ] =Z : :・ ・ ・ Z : :F [ i 1 ・ ・ ・ i n ] i 1 ・ ・ ・ i n ( v ) Z : :. . . ~国 ・ i 1 = l i n = I れ= l i n = l ( i v )

z : =z : .Zn=:I:F ・・inli1・・・inl= n!Ft1---n1tl・・・nJ i 1 = l i n

n

・ ・



( 2 . 5 . 5 ) ( 2. 5. 6 ) ( 2 .5 .7 )

( 2 . 5 . 8 )

( 2 . 5 . 9 )



略証以下の略証はあくまでも“略証”である. r=3くらいに対して具体的 に式を書き下してみれば素直に納得できよう. ( i )

r!倍して眺めると,最左辺は ( i 1 ・・ ・ i r )のすべての置換に符号をつけて加

え合わせたものであるが,その和の各項ごとに

a Jの積の順序を並べ換えて

i 1. .なが元のままの順になるようにすると, j 1 ・ ・ ・ 方の方が置換を受けたのと同じ

ことになる.このとき置換の偶奇は等しいから,中辺の表式を得る.最左辺の式 1 ,…ふ(中辺の式が添字几…ふ)に関して交代的であることも明らかで が添字 j

あるから,最右辺が他の表式に等しいことがわかる. ( i i ) やはり

r !倍して眺める. i kは 1 ,… , nの範囲を動いて和を取る添字で

あるから,他の添字と区別がつけられる限り,別の記号を用いてもよい.最左辺 1 ,…,んの置換をしたら,その後で F の前半の添字が見掛け上元のま で前半の i

まになるように記号の書き換えをすると,後半の添字が見掛け上置換を受けたよ うになる-~ を取る順序も変更する(してよい!)と,中辺の表式を得る. ( i i i ) r! Fi 国 ・ ・ i r ]i r + 1 ・ ・ ・ i s を定義通りに書き下してから r! G [ i 1 ・ ・ ・ i s lを作ると,書き

下した式の各項から, F国 ・ ・ i s lに(符号も含めて)等しい式が出る.書き下した項の

!であるから,結局 Fい・・・isi=G国 ・ ・ i s ]となる. 数は r ( i v )

G正 ・ i sは几…,公に関して交代的であるから,もちろん,几…,んに関

しても交代的である. ( v ) 最右辺以外は, ( i i )の関係式の特別な場合である.この関係式の特徴は, 交代化に係る添字の数が添字が動く範囲と等しいという点である-~ を取ると

き,なの中に同じ値が現れるような組合せは [ i 1 ・ ・ な]を和に展開したときに互い

2 行列と行列式

24

に消し合うから,和に最終的に残る項は最右辺を展開したときの形のもの ( F k 1 ・ ・ ・ k n h 1 ・ ・ ・ h n , ( k 1 ・・ ん)も ( h 1.•加)も ( 1… n)のある置換)しかない.各項の符号が

,… , nを几…, i n 吐:::幻吐::況に等しいこともわかる.さらに,同じ形の項は 1 に割り当てる割り当て方の数だけ重複して現れるから,最左辺,中辺の和の中に はF [ 1…n ] [ l ・ ・ ・ n ]が n!回重複して現れる. 注意 2 . 5 . 1 上記の (iii)'(iy)は,交代化を続けておこなうときに,その範囲の 一方が他方を含んでいれば,交代化をおこなう順序を入れ換えても,結果が変わら ないことを意味している.すなわち, 2度目におこなう交代化を[…]で表すと, […[…]…]=[…[…]…]である.もちろん,範囲が交わらなければ,[…]…[…] =[…]…[…]である.しかし,そのどちらでもないときには,一般に[…[…]…] キ[…[…]…]である. 交代化については公式 r

( v i ) rF[i1···ir]=~(-l)k-IF店 [it 松··ik-1 妬1···ir] k=l

r

=F れ[松 ・ ・ i r J-~Fik[ 松··ik-1i1 妬 1···ir] k=2

( 2 . 5 . 1 0 )

がしばしば有用である.(これを証明するには, r! F [ i 1 ・ ・ ・ i r l を定義通りに書き下 して, r!個の項を F の先頭の添字に関して r個の類に分類し,符号を調べる ことによって,各類が ( 2 .5. 1 0 )の中辺の各項を (r-1)!倍したものになっている ことを示せばよい.) さらに, r個のもののあらゆる順列 (r!通りある)を作るには,‘‘まず r個か ら s個を取り出し(じ)通りある),取り出された s個のあらゆる順列 ( s!通りあ る)と残された r-s個のあらゆる順列 ((r-s)!通りある)を作る”というやり 方があることに注意すると,ある固定した s( LI正'·"]~IAI~二l:~= ( d e tA)I A l l : : : :点 二 多 i l n , n 1 i l n , n

( 2. 1 0. 2 4 )

という形になる.

2. 1 0 .4 S y l v e s t e r型の公式 ( 2 . 1 0 . 9 )(関係している行列の次数,型に注意)からは ←n → ← m→

( x v ) ( d e tA)mー'·det[主互ーJi~det ( ( d e tA)D -CAB) C:D T

( 2. 1 0 .2 5 )

が出る. dがスカラー ( 1Xl型行列), bが叩次元縦ベクトル (mXl型行列),

6が叩次元横ベクトル (lXm型行列)のとき, ( 2 . 1 0. 2 5 )の特別な場合 (m=l) として,縁どり行列 ( b o r d e r e dm a t r i x )の行列式の表現

( x v i ) de{.4j_b_·]~( rの左から T(k;1 /a屈)を掛け(すなわち, A < k > rの行 kを a 似= aは で 割 っ て ( k ' k )要 素 を 1に 等 し く し ) , さ ら に 左 か ら W(i,k;

-a~炉)を i:=1,2,… , k-1,k+l,… ,mに対して次々と掛け(すなわち, 行 K 以外のすべての行から行 k を a~炉倍したものを引き),このように

< k + i >とし, k+lをあらためて Kとおいて, [ 2 ]へ して得られる行列を A 戻る.

A(k)

=

k

< k >は 上の手続きに従えば, A

( 2 . 1 5 . 2 )

k

:いう形をしており, [ 3 ]において,列 Kは,行 Kの要素が 1でそれ以外の行の

,…,k-1は [ 3 ]で変化しない). 彗素が 0であるような列に変形される(列 1 この基本変形をまとめて行列の間の関係式として書き表せば, S をある m 次 :則行列, P を n次置換行列として,

( 2 . 1 5 . 3 )

SAP=A

:なる.(実際には, 5 < l l = f m , pに , A < k >の列の互換と同じ互換を p < k )の列に,それぞれ施して

: < k + I ) , P位 + l )を作っていけば, S=S(r+l)'P=P(r+l)が得られる.) 注意 2 . 1 5 . 1 以上の話は行列の行と列の役割を入れ換えても成立することは明

らかであろう. 注意 2 . 1 5 . 2 A が正則な正方行列のときに, A=Inであるから, ( 2 . 1 5 . 3 )より,

A=s-1p-1 あるいは

A-1=PS

( 2 . 1 5 . 4 )

である.そこで, A に対して基本変形を繰り返し施すとき,それと同じ行演算を

I nに対して施していけば, A から A=Inが得られたとき, I nからは Sが得られ ることになる . Aの列に対して適用したのに対応する置換を Sの行に対して適用 すれば A 1が得られる. (Aの列に対して適用した互換を,逆順に S の行に対し ー

て適用すればよい.)

2 . 1 5 基本的な変形

67

注意 2 . 1 5 . 3 基本行列,基本行(列)演算,基本変形などは,ブロック行列(→

2 . 4 . 1項)の場合にも,各ブロックの型に注意しさえすれば,自然に拡張すること ができる.このとき,対角要素に対しては正方ブロックが,非零要素に対しては正 則ブロックが,それぞれ対応する.

. 1 5 . 4 ( 2 . 1 5 . 1 )の A に対して,さらに基本列演算を施して, 注意 2





( 2. 1 5 .5 )

SAT~A~Ii:~

という形にすることも可能である(→ 6 . 4節).ここで, T は次の n次正則行列で

□ □

ある.

( 2. 1 5 .6 )

T=P

注意 2 . 1 5 . 5 詳細は数値計算の専門書で「線形計算」を扱っているものに譲るべ きことであるが,上記の手続き [ 1 ] , . . . . . . . , [ 3 ]を実行するのに要する演算(加減算,乗除 算,大小比較• 符号判定,入れ換え)の回数に,ちょっと注目してみよう

. A位)か

2. 1 ]においてたかだか (n-k+1 )・ (m-k+l)回の符号判 ら A位+l) を作るには, [ 定と m +(n-k+l)回の入れ換えを, [ 3 ]においてたかだか 1回の除算と m(n-k) 回の乗算と (m-1)・ (n-k)回の減算とを,それぞれおこなえばよい.そこで, A から

A を得るまでには, [ 2. 1 ]が k=l,… , r+lに対して, [ 3 ]が k=l,…,rに対

して,それぞれ,実行されるから,必要とされる演算の総数は,たかだか r+l

苫(n-k+I)(m-k+I)=(r+l)(nm-n 〗 mr 十½r(r+½))

( 2. 1 5 .7 )

回の符号判定と

I :(m+(n-k+l))=(r+l)(n+m-r -

r+l

2 )

k=l

( 2. 1 5 .8 )

回の入れ換えと r

( 2 . 1 5 . 9 )

~l=r

k=l

回の除算と r r+l ~m(n-k) =rm(n-

k=l

回の乗算と,それに,

2 )

( 2 . 1 5 . 1 0 )

68

2 行列と行列式

苫(m-1)(n-k)=r(m-1)(n-r『 )

( 2. 1 5. 1 1 )

回の減算とである. n,m,rが同程度の大きさならば,これらの演算の中で大勢を

3回程度の符号判定とが/ 2回程度の乗算および(加)減算とで 占めるのは,ほぼが/ 2回程度の乗算および加減算が ある. sも計算しようとすると,さらに,ほぼが/ 必要となる(詳細は省く). 注意 2 . 1 5 . 6 上記の手続きの中で, [3] に登場する a~炉=a幻。は,通常,軸要素 ( p i v o t )と呼ばれる.

( 2. 1 5. 1 ) ,( 2. 1 5 .3 )をさらに詳しく眺めてみよう. ( 2 . 1 5 . 3 )の S は基本行列 )積であるが, ( 2 .3. 1 1 ) , ( 2 .3. 1 2 )からもわかるように,置換行列の部分を右に

f せてしまうことができる.換言すれば, A から A を作る手続きの中でおこな )た“行の入れ換え”をあらかじめ A に施しておくことができる. ここでは, A は既にそのような行の入れ換えをおこなってあるものとしよう. リについても同様とする.すると,上記の手続きの中で実質的に残る計算は,

3 ]だけになる. [ 3 ]において,軸要素は最初の r行から選ばれているので,行 +1,…,mは,他の行の何倍かを加減されるだけで,それらの行を何倍かして

g の行に加減するということはなされない.そこで, ( 2 . 1 5 . 3 )の形をより具体的 こ書き表すと, ー⋮

1・・ ・ rr + l ・ ・ ・ m

1 ・ ・ ・ r r + l ・ ・ ・ n A 1 2

A 2 1

A 2 2



r+ r

Au





= rI o1I r +

- I c 2. 1 5. 1 2 )

m

m

こいう形になる. ブロックごとの関係を書くと,

S 1 1 A 1 1 = I r , Sn加 =B, S 2 1・ [An,A 1 2 ]+[ A 2 1 ,A 2 2 ]=Om-r,n

( 2 . 1 5 . 1 3 )

: : な る . これから次のことがわかる.(なお, ( 2 . 1 0 . 9 )も参照のこと.)

( i ) Anは A の階数 rに等しい次数の(すなわち最大次数の)正則部分行列で あり, Sn=An-1である.

( i i ) B = Aご A 1 2 .

1 ( i i i ) S 2 1=-A21An―.

2 . 1 5 基本的な変形

69

( i v ) A22=A21Au-1A12;すなわち, A の 階 数 が r であると, A11,A12,A21か ら A22の部分が定まってしまう. 注意 2 . 1 5 . 7 2 . 1 5 . 1項の行に関する基本変形 ( i ) ' ( i i ) ' ( i i i )を mXn型の行列

A に施すとき, A の r次の小行列式から作られる (m)xに)型の行列 A( → r

r

2 . 7 . 1項)も,行に関する基本変形をいくつか施されたものに変形される.実際, A に( i )の形の基本変形を施す,すなわち A の行応と J りを交換すると, Aのい くつかの行の符号が変わったり順序が入れ換わったりする. ( I A屈堺の{几…,む} 。が共に含まれると,その符号が変わる.応と j 。の一方,たとえば砧 の中に応と j だけが含まれるようなものは,応のところだけを j oにおきかえ i 1く庇<…くんとい う約束に従って順序を入れ換えたものと入れ換わる(符号が変わることもある). i o , j 。のどちらも含まれないときは変化しない.)A に ( i i )の型の変形を施すと,す

A I J : : :塩で{i 1 ,…,む}の中に応が含ま なわち A の行応を t倍すると, Aの要素 I れるようなものが一斉に t倍される,すなわち Aのいくつかの行が t倍され

i i i )の形の変形を施すと,すなわち行 j 。を t倍して行応に加えると, る. Aに ( Aのいくつかの行が t倍されて他のいくつかの行に加えられる. ( {i 1 ,…ふ}の 中に応と j 。が共に含まれるような Aの行は変化しない(行列式の基本的性質: 注意 2 . 6 . 2 (ハ ). )j 。のみが含まれているような Aの行は変化しない. i りのみが

含まれているような Aの行には,その{れ,…ふ}の中の応のところを j 。でおき かえ(て必要なら順序を入れ換え符号を変え)たものを t倍したものが加えられる. 基本列変形についても同様. 基本変形で行列の階数は変化しない. r ankA=sであるとき ( 2. 1 5 .5 )の形の A を作ると, rank.A=sである.このとき r ankA< r >=rankA< r >である.ところ で , r>sの Aの(そして _ A < r >の ) す べ て の 要 素 は 0で あ る . r=sなら

IA< r > l f : :字=1で他の要素はみな 0であるから, rankA< r >=rankA< r >=1である. r := L < k 1 )の列 kを上に定めたしでおきかえたもの, n < k > :=n < k 1 >の第 K対角要素を d k kでおきかえたもの により L < k > , n < k >を定める. k=nならば終了; k] A伍 + により A伍 + 2 )を定め, k :=k+2として [ 2 ]へ戻る.

. 1 5 . 1 5 A が対称なら,上記の手続きにより作られる A位)も対称である 注意 2 ことは明らかである.したがって,実際の計算は A < k )の対角要素と左下三角部分

6回程度の乗算と の要素だけを計算しておけばよい.したがって,総計算量はが/ 加減算(除算は n回)である.

. 1 5 . 1 6 上の手続きにおいて, [ 2 . 1 ] ,[ 3 . 1 ]の部分は, a鉗を枢軸要素と 注意 2

2 . 2 ] ,[ 3 . 2 ]の部分は,行 k,k+lと列 k,k+lの 2X2対角ブロックを枢軸 して, [ 要素として,それぞれ, LU分解の手続きに相当することをおこなっているにすぎ ないことに注意されたい. 上記の手続きが [ 2. 1 ]あるいは [ 2. 2 ]で終了したときには, rankA=nで,分



PAPT=LDLT

( 2 . 1 5 . 5 5 )

)ゞ達成される. ここで, L はl i i = I( i = I ,… ,n )を満たす下三角行列, D は lXl 恩および(対称な) 2X2型対角ブロックからなるブロック対角行列 ( 2X2対角ブロ

ソク [dk~l,k d丁]に対応する L の対角部分は[~

『]である), P は [ 2 ]にお

2 ]では,行 )ておこなった行の置換,列の置換を表す置換行列である.(なお, [ り入れ換えと同じ列の入れ換えをおこなっているので,入れ換えを表す互換行列

をP 1 , P 2 ,…とすると (P?=Piである!),行の置換は… P2P1Aの形で,列の置 奥は A P 渇 … の 形 で 表 さ れ る . こ こ で , P=…P 2 P 1と 書 け ば PT=PlPl… = 内凡…となることにも注意.) さらに,

[~iJ=[~-~J[d62-~12J[~-~J

( 2 . 1 5 . 5 6 )

81

2 . 1 5 基本的な変形

であるから,分解 ( 2 . 1 5 . 5 5 )において, D を対角行列としておいて, L を( 1X1 型および 2X2型の対角ブロックをもつ)ブロック下三角行列とすることもでき る.このとき, L の 2X2対角ブロックは [ 1

1 ]という形で,それに対応す 1 -1 る D の二つの対角要素は絶対値が等しく符号が反対である.また, Lが行 k,k

+1, 列 k,k+lに対角ブロックをもつとき,それらの列の要素は上記の手続き 2 .2 ]で定められた l i k ' l i , k + lを用いれば,それぞれ, の[ 仏十 l ; , k + l ,

( 2 . 1 5 . 5 7 )

仏― l i , k + l

と表される.

2 . 3 ]で終了したときには, r=rankA=k-lであって,「D:= 手続きが[ ,… , nを 加 =1(i=k,…,n ) ,t i j : = o(j=k,…,n;i n < k 1 ) , L:= L < k 1 )の 列 k キj , i=l,… ,n )でおきかえたもの」とすれば,r… ( 2. 1 5 .5 5 )のような分解が成り立 十 n ー

っ• 以上を図式的に描けば,

PAPT=LDLT, ー

.,'

l-l

・ n ・・・・・・r r+l・・

rr + l ・ ・ ・ n

口。

L-:

d i

0 I, ー

ー .0

ー ” ”

n

••

D==

あるいは ー

1日

L-=

rr+l…n

l i j n

である.

b . Hermite行列

゜ ゜ ゜゜ rr + l ・ ・ ・ n

口 ―



□ ]゜ ,(2.15.58)

IoI , D=: j1 . .

I

0.1

r r+l



n

( 2. 1 5 .5 9 )



K=Cで A が Hermite行列 (AH=A;対角要素 aれは

すべて実数,非対角要素は a j i = r i : ;(i>j )を満たす)のときにも, A が対称のと

82

2 行列と行列式

とほとんど同じ Cholesky風の分解 A=LDLHができることは明らかであろ .(途中で現れる A < k >が Hermite行列になること,実質的計算を対角要素と :下三角部分についてだけおこなえばよいことも同様.)Cholesky分解の手続き 中で, [ 2. 2 ]と[ 3 . 2 ]のところが次のように変更される.

[ 2 . 2 ] ' すべての i(=k,… ,n )に対して, a炉=Oであるが,属戸=a 炉キ 0 ( iキ j;i,j=k,… ,n ) なる非対角要素があるときには,行 i , jと行 k,k +1とを入れ換え,同時に列 i , jと列 k,k+Iとを入れ換えたのち ( iと jのどちらを K番目にするかはどうでもよい: a梵1 + 1=a~閣 , Kキ 0ならば 入れ換え不要),

d k k := d k + 1 , k + 1 :=O, d k + I , k :=a位 ?l,k'dk,k+l:=d k + l , k ' 仏 : =O( i=l,・・・,k-1), :=l(i=k), :=O(i=k+l),

: =a沿+ 1 !a梵k + I(i=k+2,… ,n ) , hk+1:=oC i = l , ・ ・ ・ , k ) , :=1Ci=k+I), り ぃ (i=k+2,・ ・ ・ ,n ) , : =a似/a侶

L < k + l ) := L < k 1 >の列 Kおよび k+Iを上に定めた [ . kおよび [ . k + Iで , それぞれ,おきかえたもの,

n < k + 1 > := D < k 1 )の行 k ,k+I, 列 k,k+Iの 2X2対角ブロックを上記 のd k , k ,d k , k + I ,d k + l , k ,d k + l , k + lでおきかえたもの により, L ( k + I ), D ( k + l )を定める. k+I=nならば終了: k+I: =O(i=l,… , k+Iあるいは j=l,… , k+l)' : =a炉ー a~・ が a位加 la位? I , k-a沿+ 1 ・ a炉/a梵い (i,j=k+2,… , n),

A< k + 2 > :=[a~J+2>] により A < k + 2 >を定め, k :=k+2として, [ 2 ]へ戻る.

さらに, d=d k + l , k(d=d k , k + l )が d=peie(d=pe―i & )で あ る と き (p>O, 0は

83

2 . 1 5 基本的な変形

実数),

[~

~]=[e~。~~゜J[p~2 ー ~;2] [e~。~~]゜

( 2. 1 5 .6 0 )

であるから,分解 A=LDLHにおいて, D の方を対角行列として, L をブロッ ク下三角行列とすることもできる.このときには,

Lの 2 X 2対 角 ブ ロ ッ ク は

[e~。 eーー~゜]という形で,それに対応する D の二つの対角要素は絶対値の等しい 正の数と負の数である.また, Lが行 k ,k+1 , 列 k,k+lに対角ブロックをも

2 .2 ] 'で定められた つとき,それらの列の要素は上記の [

lik,li,k+l を用いれば,

それぞれ, 伍十 eiOli,k+l,

( 2. 1 5 .6 1 )

e-iOl i k- li,k+1

と表される(ここで 0=arga~kJ1,k). 分解手続きの途中に現れる行列 A < k >が Hermite行列であることも明らかであ ろう. 注意 2 . 1 5 . 1 7 対称行列あるいは H ermite行列 A の階数が rであるときには,

A I『名の中に 0でないものが存在する.(階数の定義から, その r次の主小行列式 I r+l次以上のものは 0である.また, r-1次以下の小行列式の中に 0でないもの が存在するが,それが主小行列式であるかどうかはわからない.たとえば, A =

『[

~]の階数は 2 で detA=IAll多=ー 1 キ 0 であるが, 1 次の主小行列式は IAll=

0 ,I A I多=Oである.)このことも分解 ( 2. 1 5 .5 8 ) ,( 2. 1 5 .5 9 )あるいはその H ermite 版から示すことができる.すなわち,置換 P により 1 ,… ,rとなる行,列の番号を i 1 ,…ふとし, I A I } ; : : :名に B i n e t C a u c h yの公式 ( 2 .8 . 1 7 )を適用すると, D の r次 の小行列式の中で 0にならないものが I D l l : :字だけであることに注意すれば, IAlt芯= I L l l : : : ;I D l l : : : ;I L T I I : : : ; ( 2 . 1 5 . 6 2 ) であり, I L l l : :手= I L T I I : : : ;キ0も明らかであるから, I A l f ; : : :名 キ 0である. (Aが H e r -

m i t e行列のときにはじの代りに U を用いる.)

c . 反対称行列

n次反対称行列 A に対しても,対称行列に対する分解と

ほとんど同様の分解が可能であることは容易に想像されよう.反対称行列の対角

2. 1 ] ,[ 3. 1 ] 要素はすべて 0であるから,本項 aにおける分解手続きのうち, [ に相当する場合は生じない.そこで次の通りの手続きが得られる.

2 行列と行列式

84

[ 1 ] A < 1 > :=A, L < 0 > :=O n , n ,n < 0 > :=O n , n ,k :=1とおき, [ 2 ]へ進む. [ 2 ] A=oならば終了. dj>=-a) がキ 0( iキj;i,j=k,… ,n )があるとき , jと行 k,k+lを入れ換え,同時に列 i , jと列 k,k+lを入れ には,行 i iと jのどちらを K番目にするかはどうでもよい; a梵K ョ= 換えたのち (

-a凰 , Kキ0なら入れ換え不要), d k k := d k + 1 , k + 1 :=O, d k + 1 ,ぶ =a位K, 占k'dk,k+l:=-d k + l , k ' 伍 : =O( i=l,・・・,k-1), :=1(i=k), :=O(i=k+l),

: =a沿+ i ia梵Kョ (i=k+2,…,n), :=oC i = l , ・ ・ ・ , k ) , :=1Ci=k+l), l i , k + l・ : =a沿/a似k iぃ (i=k+2,…,n)' L < k + z > := L位ー ) 1の列 Kおよび k+lを 上 に 定 め た し お よ び l k + lで,そ れぞれ,おきかえたもの,

D⑭ + l } := D < k 1 >の第 k,k+l行 と 第 k,k+l列 の 2X2対 角 ブ ロ ッ ク を 上 記 の 心 (i,j=k,k+l)でおきかえたもの により L < k + 1 > ,n < k + 1 >を定める. k+l=nならば終了; k+l :=O(i=l,… , k+lあるいは j=l,…,k+l)' : =a}が一 (a炉 •a位加ー a}~/4+1·a砂) /a 位い (i,j=k+2,…,n)' A < k + z > :=[ d j + z > J により A < k + z >を定め, k :=k+2として, [ 2 ]へ戻る.

さらに,

[~

―~d]=[i 『J [~

~1J[i~]

( 2 . 1 5 . 6 3 )

であるから, [ 2 ]において,

d k + l , k :=1 , d k , k + l :=-1, d k , k :=d k + l , k + l :=0 とおき,伍を a~りぃ倍したものをあらためて仏とすることもできる ( l i , k + lはそ J )ま ま).

図式的に描けば (Pは置換行列),

85

2 . 1 5 基本的な変形

2

n

I

1 2

D =i

L = 1I

r

l i 1

o ・ ・ 1

。 。 。 。 。

1

12

。 。

PAPT=LDLT,

rr+l・・・n

r+l

・ ・ ・ ・ ・ ・

rr+l ・ ・・ n

n

( 2 . 1 5 . 6 4 )

・ ・ ・ ・ ・ ・

。 。

12

1 2

rr+l…n

rr+l・・・n

L=

D =i

ー ‘ ”

r r+l

n

~···1

。 。 。 。 。

あるいは

n

( 2. 1 5 .6 5 ) である.

. 1 5 . 1 8 対称行列の C h o l e s k y分解(本項 a )と Hermite行列の分解(本項 注意 2 b )との関係に類似のことは,反対称行列と歪 Hermite行列との間については成り 立たない . Aが歪 H ermiteなら iAが Hermiteであるから, iAの変形を考えれ 2 . 1 5 . 6 4 )あるいは ( 2 . 1 5 . 6 5 )の分解を遂行するために要する計算量 ばよい.ただ, ( がほぼ n 3 / 6程度であることは注意 2 . 1 5 . 1 5に述べたのと同様である. . 1 5 . 1 9 以上の具体的な分解手続きに基づくと, 2 . 9節で述べた反対称行 注意 2 列の階数や P f a f f i a nについての話が見通しよく理解できる. すなわち,行列の要素が属する体 K の標数がたとえ 2であっても,反対称行列 の階数 r a n kA は , Lが正則であるから, rankD=rに等し /CtkI v ? > 1 / 2

( 2. 1 5 .7 7 )

により u < k >を定め, H ( u C k > )A < k ) (H( u < k > )=Im-k+1z u < k > u < k ) T )の最上行 と 最 左 列 を 除 い た (m-k)x(n-k) 型の行列を A=[a~r1>] (i=k

+1,… , m:j=k+l,… ,n )とする. k:=k+lとし, [ 2 ]へ戻る.

[ 4 ] h :=1,… ,k-lに対し, 1・・・h-1 h・・・・・・・・・m

1 Q(h)

= : h-1 h

゜ ゜ ゜ ゜ 1

( 2 . 1 5 . 7 8 )

H ( u < h l )

m

により Q ( h ) (明らかに直交行列)を定め,

Q=Q(l)…Q ( k 1 )

( 2. 1 5 .7 9 )

(これも直交行列)とおく.また, h:=1,… , k-1に対しては

rhj:=o

(j=l,・・・,h-1),

[ r h h ,… ,r h n ]: =H ( u < h > )A< h >の最上行,

( 2 . 1 5 . 8 0 )

h:=kに対しては rkj:=o

(j=l,・・・,k-1),

,r k n ] :=Aの最上行, [ r k k ,…

( 2. 1 5 .8 1 )

h:=k+l,… , m に対しては rhj:=o

( j = l , ・ ・ ・ , n )

( 2 . 1 5 . 8 2 )

により R=[r 』を定める.

上の手続きにより, [ 2. 1 ]でおこなった列の入れ換えを表す n次置換行列を P とすれば,

AP=QR

( 2 . 1 5 . 8 3 )

という分解が得られたことになる.(実際には, A に Q叫 Q ( 2 ) '…,Q ( k 1 )をこの

2 . 1 5 基本的な変形

89

順に左から掛けた Q < k 1 >. . .QAが R になるわけであるが, ( Q ( h ) )T= Q ( h )であ Q ( k 1 )… Q(ll)T=Q となる.) るから (

. 1 5 . 2 0 上の手続きから明らかなように, 注意 2 rankA=rankR

( 2. 1 5 .8 4 )

である.また, A の各列の“長さ”と R の対応する列の長さは等しい.さらに, rhh=土 ( j ( h ) (h=l,… ,k ) . ( 2 . 1 5 . 8 5 ) 上の手続きに必要とされる演算の回数は, m,kが共に nに等しいとき,約 2nツ 3回の加減算と同数の乗算,それに約 n回の除算と開平とである. A の列の置換 P を固定したとき, rankA=mならば, QR分解はほとんど一意 的である.すなわち, QR=Q'R', rankR=rankR'=mならば, R とR'の左部 の m 次正方上三角部分行列を R,R'とすると, QR=Q'R', QnQ=R'R一1となる が,この R'尺 一 1は上三角行列,したがって QtTQは上三角直交行列である.例

2 . 1 4 . 1の中で注意したように,そのような QtTQは( 2 . 1 4 . 1 2 )の形の行列 (Q 。とす る)である.ゆえに Q=Q'Q 。,すなわち, Q と Q'は各列の符号を除いて一致す る. RとR'も各行の符号を除いて一致する. 実際の計算には,分解の情報は u < O ,…,u < m )で表し行列の形で表すのではないと 2 . 1 5 .8 0 )などの計算も u < h >を用いておこなうとかいうような,各種の注意が か , ( 必要になるが,ここでは省く.

2 . 1 5 . 6 単因子 線形代数では体 K の上の行列を主として取り扱うのであるが, K の代りにあ

E u c l i d (ユークリッド:ギリシア名は E u k l e i d e sエウクレイデ る可換環,特に " ース)環" ( E u c l i d互除法が成り立つような環)の元を要素とする行列についての 知識も応用上大切なことがある.以下では,そのような行列の性質を見やすくす るための標準的な変形について述べる.行列の要素は整数 (EZ)であるとして論

[x])であっても じるが,それが体 K の上の 1変数多項式 (EK 整数

←→ 多項式

土 l(Zの単元)

←→ 零でない K の元 ( K[x]の単元)

絶対値

←→ 多項式の次数

という対応関係のもとで,すべての議論は, 1変数多項式環 K[x]に対しても成 り立つことに注意してほしい. 特に,最も基本的な " E u c l i d互除法 ( E u c l i d e a na l g o r i t h m ) " の一段は, Z に

90

2 行列と行列式

ぢいては, 「任意の整数 a ,b(キ0 )に対して,

a=qb+r, l r l < l b l , r~O

( 2 . 1 5 . 8 6 )

を満たす整数 q (商 ( q u o t i e n t ) )と r(剰余 ( r e m a i n d e r ) )が存在する」 であり, K[x]においては, 「任意の多項式 a(x),b(x)(キ0 )に対して,

a(x)=q( x )b( x )+r( x ) , ここで, "r( x )の 次 数 O ,Uii>Oよ り 如 =1. ゆえに,砂 =uii(i=I,… ,n ) . 次に U J 1 , j =bi-1,j — 1 約— 1,j +b j 1 , j l l j j であるが, b j 1 , j 1=1 , u炉=u 必しこより, U J 1 , j -Uた 1 , j =b j 1 , j叩 =b た 1 , j砂となる.

u ;ー 1,j-uた 1,j) を意味する.一方, 0~Uj-1,j j



(2.16.2~

を因子としてもつ.ところで,冗 ( x 1 ,…,X n )は,既に X 1 ,…,Xnに 関 し て n(i

96

2 行列と行列式

1 )/ 2次であるから, < l e tV=c 冗( x 1 ,…,X n )( cは定数)でなければならない. ,…,X nの多項式の一つの項 X 2 X 各・ ・ x n正 1の係数を比較すると, < l e tV の方で

1 , 冗( x 1 ,… ,X n )の方でも +1であるから, < l e tV = I T ( x戸 X j ) i , j = l , ・ ・ ・ , n i > j

( 2 . 1 6 .3 )

ある. V の逆行列 U=V— 1 も求めてみよう.そのために,まず X1, … ,X nから

X iを

i j ( i = l ,…,n;j=O,… , n-1)と記 いた n-1個の変数の j次の基本対称式を S ( s i O = lと約束する),変数 tの n-1次の多項式冗i( t )を n

冗i(t)=II(t —ぁ)

j = l

I ( t x ; )= ( t x 1 )…(t-X ; 1 )(t-X ; + 1 )…(t-X n ) ( 2. 1 6 . 4 )

定義する.定義から明らかなように,

= 孟 ( 一 1)n-kSi,n-ktk-l,

; ( t )



冗i ( X )=O

( jキ iのとき)

( 2. 1 6 .5 )

( 2. 1 6 .6 )

ある.そこで,

U=[u』, Uij=(-1)n j S i , n jば ( x i )

( i , j = l , ・ ・ ・ , n )

( 2 . 1 6 . 7 )

より n次正方行列 U を定義すれば, ( 2. 1 6 .5 ) ,( 2. 1 6 .6 ) ,( 2. 1 6 .7 )は

UV=!

( 2 . 1 6 . 8 )

いうことを表しているにすぎない ( ( 2. 1 6 .5 )において t=xiとおいてみよ).す :わち U=V— 1 である.

. 1 6 . 2 Gram行列式 (一般に複素数を要素とする) nXm 型行列 A(n~m) の第 j 列ベクトルを llj ( j

= 1 ,…,m)と記すと, m 次正方行列 G=A聞 の ( i, j )要素は g i j =l l iHl l j

( 2 . 1 6 . 9 )

?ある. < l e tG を,ベクトル a 1 ,…,l l mの Gram(グラム)行列式 (Gramian)とい

) • Binet-Cauchy展開(→ 2 . 8 . 3項 , ( 2 .8. 1 4 ) )により < l e tG=~IIAlt::~12~0

( 2 . 1 6 . 1 0 )

和は{i 1 ,…,t五 }~{l, …,n } '五O"であるような部分空間 U}, に =max{dimU I"Vx(キ0 )EU:h ( x )Oで あ る よ う な Hermite形 式 h: V n→ 任 意 の x(キ 0 R(あるいはその係数行列 A(=A*))は正定値(正の定符号: p o s i t i v e d e f i n i t e )で あるという.また, h(x)~o のとき非負定値("非"は“負定値”にではなく

“負”だけにかかる; n o n n e g a t i v e d e f i n i t e )あ る い は 半 正 定 値 ( p o s i t i v e -

e g a t i v e d e f i n i t e ) ,非 s e m i d e f i n i t e )という.同様にして,負定値(負の定符号: n n o n p o s i t i v e d e f i n i t e ) , 半負定値 ( n e g a t i v e s e m i d e f i n i t e )が定義される. 正定値 ( (半)負定値形式についての話は(半)正定値形式の符号を変えるだけのことであ るから,以下では(半)正定値形式についてだけ述べる. 注意 3.5.11 正定値形式は符号指数が ( r + , 0 , 0 )であるもの,非負定値形式は符 r + , O ,r o )であるものと定義することができる. 号指数が (

. 5 . 1 2 V nの上の正定値形式は, V nの任意の部分空間の上の正定値形式 注意 3 であることも,定義から直ちにわかる.

. 5 . 1 3 n次 H e r m i t e行列 A(=AH)が正定値であるための必要十分条件 注意 3 . 7 . 1項)が正であること」: の一つに,「そのすべての首座小行列式(→ 2

I A l l : :沿>O

( k = l , 2 ,…,n )

( 3 . 5 . 2 5 )

がある.[この事実は“理論的には"応用上も重要であるが,特定の行列の正定値

h o l e s k y分解(→ 2 . 1 5 . 4項)を用いるのがよい.] 性を計算で判定するには, C

148

3 ベクトル空間

A の K次の首座小行列 At: 羹も正定値であるから適当な合同変換により単 位行列に変換できる ( Sは K次正則)(→ 3 . 5 . 3項): I k = s H A t : : : z s . ( 3 . 5 . 2 6 ) 証明

ゆえに, l =ldetSド ・ I A l l : :冷,すなわち I A l l : :冷>O. 逆は nに関する帰納法による. n=l のときは自明.ある n(~2) に対して,

(3. 5 .2 5 )が成り立っているのに

Aが

正定値ではなかったとする(帰納法の仮定により A r ; : : : ; 滉_ー}は正定値である).ある n 次正則行列 Sを用いた合同変換により A を対角行列 D = = = d i a g [ d 1 ,… , d』=SHAS に変換したとき, I A l l :堺=detA>Oより d e tD>Oであるので, A が,したがって

D が,正定値でなければ少なくとも 2個の d ; , たとえば心とんが負でなければ ならない.第 i 1(あるいはい成分が 1で他の成分がみな 0の縦ベクトルを e i1(ある ・

いは e辺とし, x=a e i 1+/ 3 e ; 2( a ,/ 3E C ;a=/3=0ではない)とおくと,炉 Dx=

l a l如 + l / 3 1叫 =( S x )HA(Sx)く o . ところで, y=Sx=a(Se心 +/ 3( S e ; z )の第 n要 素が 0になるように a ,/ 3 (a=/3=0ではない)を選べば ( Y n=a S n i 1+/ 3 S n i 2であるか らそのようなことはできる!),がAyを X に代入したときの方程式系の左右両辺の喰い違いすな

bち残差 ( r e s i d u a l ) r=b-A正

( 4 . 4 . 3 )

を計算し,この残差にある線形変換 B(これが“反復公式”を特徴づける)を施 したもの

a=Brじ)

( 4 . 4 . 4 )

を修正量 ( c o r r e c t i o n )として,次の近似(第ッ十 1近似)

ぷ l ) = x < v > + a < v ) I)十

( 4 . 4 . 5 )

を計算する. 注意 4 .4.1 上記の反復の一段階は

ぷv + l ) =ぷ 叫 B(b-A己) =Bb+(I-BA)砂

( 4 . 4 . 6 )

という式にまとめることもできるが,実際の計算には ( 4 . 4 . 6 )(の最右辺)を用いる のではなく, ( 4 . 4 . 3 ) , . . . , _ _ , ( 4 . 4 . 5 )を用いる.このようにすると, r いゃ a < v )の“大 きさ”を観察することによって,近似度の改良され方が見えるし,残差の計算 ( 4 . 4 . 3 )だけを十分精密におこなえば全体として高精度の計算ができるからであ

る . いま,第))近似 x M と真の解元との差を €(JI)= 元一 x(v)

( 4 . 4 .7 )

A臼 = r < v )

( 4 . 4 . 8 )

と記せば,明らかに, である.そして, ( 4 . 4 . 3 ) , . . . . . . . , ( 4 . 4 . 5 )(あるいは ( 4 . 4 . 6 ) )により

175

4 . 4 反復解法

e伍 1 l=( I-BA)e < v )

( 4 . 4 . 9 )

を得る.このことは, I-BAが“小さい”ほど,すなわち B が A-1に“近い” ほど,近似誤差 e < v >の減り方が速いことを示している.理論的には, 6 . 8節で述 べるように, I-BAの“固有値”の絶対値の最大値 (I-BAのスペクトル半径

p(I-BA))が収束性,収束速度を支配するのであるが,大雑把に“ノルム” ( →3 . 1 . 5項 , 3 . 3 . 2項)で表現すれば, ( 4 . 4 . 9 )から

l l e < v + l ) I I賃 1 B A l l ・ l l e < v > i l

( 4 . 4 . 1 0 )

を得るので,適当な(自然)ノルムに関して

( 4 . 4 . 1 1 )

111-BAll= (b←芦仰x t > )

( i = l ,… ,n )

( 4 . 4 . 1 3 )

とするのが J a c o b i反復 ( J a c o b ii t e r a t i o n )と呼ばれるものである. 注意 4 . 4 . 3 方程式系 Ax=bの一つの方程式 ( i番目の方程式)

~aijxj=b,

j=l

( 4 . 4 . 1 4 )

176

4 線形方程式系

にだけ着目して他の方程式による束縛を“緩和 ( r e l a x ) " して,次の近似値を計算 するというやり方を,すべての変数について“同時に”おこなうというので,

J a c o b i反復のことを同時緩和法 ( s i m u l t a n e o u sr e l a x a t i o n )と呼ぶこともある. 方程式系の係数行列 A=[a』を,その対角部分 D=diag[an,… ,a n n ] , 下三

i 部 分 L=[l 』( l i j = a i j , ji)の和に表す: A=L+D+U.

( 4 . 4 . 1 5 )

ここでの D,L,Uは , 2 . 1 5節で論じた A の LU分解,あるいは LDU分解の

) ,L,Uとは異なることに注意!) すると, J a c o b i反復は

x = B r < v > ,

B=D-1

( 4 .4 . 1 7 )

こおいたものに相当することは明らかであろう. ( 4 .4 .7 )の近似誤差 e < v )は

e < v十 1>=-D-1(L+U)e

( 4 . 4 . 1 8 )

叶満たす.

J a c o b i反復が収束するための十分条件として,係数行列 A が対角優位 ( d i a g o a l l ydominant)であることという条件が知られている.これは以下のように容 方に示せる.

n次正方行列 A=[a』は laiil>~la 』 jキ i

(i=l,2, … ,n )

( 4 . 4 . 1 9 )

(j=l,2, …,n )

( 4 . 4 . 2 0 )

?あるとき“行に関して”対角優位, la』 >~la 』 i キj

?あるとき“列に関して”対角優位であるという. 係数行列 A が行に関して対角優位であるときには

µ=m~x~la;jl/la;;I z

jキ i

( 4 .4 .2 1 )

こおく. もちろん 0~µ く 1であるが, このとき

I I I-BAlloo=m~x z

1 区 la 』=µ l a i i lj 号

( 4 . 4 . 2 2 )

177

4 . 4 反復解法

I Ie ,… , x 侶 / l 十) 1を次々と てx 計算し,計算し終わったものを直ちに x炉とおきかえて次の x~v+1> の計算に用い

るというやり方をするので, G a u s s S e i d e l反復のことを逐次緩和法 ( s u c c e s s i v e r e l a x a t i o n )と呼ぶこともある.また,計算に必要な作業領域の観点からすると, J a c o b i反復では x < v + l )の全成分がすべて計算されるまで x < v )を記憶しておく必要

a u s s S e i d e l反復では xの成分を 1組だけ記憶しておいて,その中味 があるが, G J a c o b i反復に比べて Gaussを次々と更新して行けばよいという違いもある ( S e i d e l反復の方が作業領域が約半分で済む).

. 4 . 4 その他の反復 緩和法においては,一般に,解への収束 x < v > →元は " 1次収束”で,‘‘加速’’

a c c e l e r a t i o nf a c t o r )OJ ゞ有効である場合も少なくない.すなわち,加速係数 ( l ), w < 2 > ,…を順 に計算できる. 注意 4 . 5 . 2 上のようにして ( 4 . 5 . 6 )の解 x炉を構成して行くのと並行して,右

辺を一般のベクトルとした方程式

183

4 . 5 特殊な形の線形方程式系

II か

V ( O ) V ( l ) . . .. . .V ( n) 1 y f n ) V ( l ) V ( O ) ・ . . V ( n 2 ) y 炉 ー

b 2 ( 4 . 5 . 1 7 )

V ( l ) i z n )II b n v < n l )v < n Z )" " .v < I ) v < O ) 1Y の解を構成して行くことができる.実際,上と同様にして, ( 4 .5. 1 7 )に左から

I ' -

[ 4 □ ][;]~[:;~,: ]

[[ -vに対しておこなうと, n l_'︳_︳

-1次のユニタリ行列 Q'で Q ' HA( 1 )Q'~[

( 5 . 2 . 3 )

を満たすものが得られる.

Q'"~[-½t--t-]

( 5 . 2 . 4 )

とすれば

= [ ・ 1 -

Q ( 2 ) H Q ( l ) H A Q ( l ) Q ( 2 ) =( Q ( l ) Q ( 2 )汗A( Q < 1 >Q < 2 > )

~]

( 5 . 2 . 5 )

を得る. ; ¥ zは A < 1 )の固有値であるが A の固有値でもあることは ( 5 . 2 . 5 )の形か らわかる: ( f ) A( i ¥ )=(ふ— i\) ( j ) A r n( i ¥ )

=( i ¥ 1-i ¥ )( i ¥ 2 -i ¥ )( j ) A( i ¥ ).

( 5 . 2 . 6 )

194

5 固 有 値

同様なことをさらに続ければ, Q=Q(l)Q(2)… Q ( n 1 )として,

( 5 .2. 1 )が 得 ら れ

.

)

注意 5 . 2 . 1 A(l)y=ttzYを満たす入2 ,y(キ0 )は A < 1 )の固有値,固有ベクトルであ

り,入2 は A の固有値でもあるが, yが A の固有値入2 に対応する固有ベクトルに 直接結びつけられるわけではない.実際, i}=[ z ,yT「とおいて ( 5 .2 .2 )に右から掛 けると (a'=阿塁戸]として)

犀 [

Q ( l ) HAQ(l)fj=

+a'y

入2 Y

( 5 . 2 . 7 )

]

となるので,

ふz+a'y=llzz

( 5 .2 .8 )

ならば f jが A の(固有値入2に対応する)固有ベクトルとなる.ふキ入2なら z=a'y/ 凶―ふ)により ( 5 . 2 . 8 )を満たすように zを定めることができるが,ふ = ' 1 2のとき にはそうは行かない.この辺の事情を以下で逐次解明して行く.

( 5 . 2 . 1 )の S c h u r形を構成する際に, A に重複固有値があるときにはそれらを 危けて処理することにすると, ( f ) Aは)=(ふー A )n 1…(ふー A )n s

苫 (ni=n)

( 5 . 2 . 9 )

?あるときには >


A



R=

n

Anv

"

R戸

( 5 . 2 . 1 0 )

5

v

u ^

を得る. いま, R を

R~[¥] ::分割し,正則行列

しだ

( 5 . 2 . 1 1 )

T とその逆行列 y-1を n1x(n-n1)型 の 未 知 行 列 X を 含

﹁│

5 . 2 S c h u r形と応用

195

( 5 . 2 . 1 2 )

という形に仮定して,

Y-'RT~[ 『T ]=R,揺

( 5 . 2 . 1 3 )

( →( 3 . 3 . 3 8 ) )を満たすように X を定めることを試みよう. ( 5 . 2 . 1 3 )は

凡 X-XR=C

( 5 . 2 . 1 4 )

であれば成り立つ. ( 5 .2. 1 4 )は S y l v e s t e rの方程式 ( 4 . 5 . 3項)で,凡の固有値は 凡 の 対 角 要 素 ん に 等 し く , 月 の 固 有 値 は 月 の 対 角 要 素 入2'…,んに等しく,ふ

5 . 2 . 1 3 )を満たす と ん … , ん と は 異 な る か ら , 一 意 解 X をもつ.したがって, ( ように

X, すなわち T を定めることができる. QT=T 'とおけば T'-1AT'=R戸 R

( 5 . 2 . 1 5 )

で あ る . 同 様 の こ と を 月 に 対 し て 繰 り 返 せ ば , 結 局 , あ る 正 則 行 列 S による相 .. s-1AS=Rげ … + 凡 ( R ;は ( 5 . 2 . 1 0 )の形)に変換することができる.

似変換で

. 2 . 2 注意 5 .1 .6によれば¢パ x)=四 ( x )である.また, Rkは対角要素 注意 5 に記,•••,ふk をもつから,四パ x)

=(J)Ak(x)により,

Ak

の固有値がん k'…,ふK で

あることがわかる.さらに,多項式 f(x)に対して,行列多項式 f(A)の固有値が /(ふ),…,/(ふ)であることもわかる. .. 注意 5 . 2 . 3 A を凡+…+凡の形に相似変換する Sはもはや,一般には,ュニ タリ行列ではない. 表現行列が凡+…十 Rsの形となるように応の基底を選べば,恥が各ブロッ ク凡に対応する(すなわち,値の異なる固有値に対応する)部分空間の直和恥= U(ふ)倒・心 U(心に分解されることは明らかである.

.. 注意 5 . 2 . 4 上の注意 5 . 2 . 3の直和分解は, R叶 …十 Rsの作り方にはよらず A の .. みによって定まるものである.いま, s-1(A-入J )S=(R叶…+凡)―入 Jを作ると, 対角ブロック Rバ ム は 狭 義 上 三 角 ( s t r i c t l yu p p e rt r i a n g u l a r ) , すなわち 第i

三凡ー入J~~[0~]

N,

という形になるから,明らかに Nin;=O n ; , n ;となる.そこで, —入 J)

( s . 2 . 1 6 ) X E U( 入;)なら

(A

n;x=Oである.他方,んキんに対しては (A-んnn なキ 0であることも容易

に示される.このことは U(い を 「 (A― 入 J)庄r=Oを満たすベクトルんの集ま

196

5 固 有 値

り」として定義できることを示している.

U似)のことを, A の固有値んに対応する固有空間 ( e i g e n s p a c e )と呼ぶことが ある. 注意 5 . 2 . 5 何乗かして零行列となるような正方行列 A はぺき零 ( n i l p o t e n t )で あるといわれる.べき零行列の S chur形が狭義上三角であることは明らかであろ う . 注意 5 . 2 . 6 ( 5 . 2 . 1 6 )の Niは(ユニタリとは限らない)相似変換でさらに簡単な 形にできる.記号の倹約のため N;を単に N と書き, N(mXm型とする)を相似 変換によって 'm;



s—'NS~K占…+K,, ~[゜ ~1-:::゜~]t 。1 K ;

m1~m2~ … ~mt,

( 5 . 2 . 1 7 )

mげ 加 + … 十 mt=m

という形にできることを示そう (mj=lのときは Kj=[ O Jであるとする).

m 次以下の N についてはこのような形に相似変換できたとして, m+l次の

. .・

[ ] ロ

ロニ〗

N~I_ 「~1



Nlf`

(52.18)

について考える. N < l )の部分を ( 5 . 2 . 1 7 )の形 N < z >に変換する m 次の正則行列を

引①あ Jg

5︵ 5 ︵

~ I

│ mーー│←>︱︱

→ー

:_::,

ヽ`~

m J

で 上 以 2

I

...数 次

lo

l..

•O

2g

O

角 対

l D各

ー→ー一

(K

00

T ( l )とすれば,

( 5 . 2 . 2 1 )

5 . 2 Schur形と応用
-

( 5 .2 .2 8 )

+l]=

となるが, ← m , → ←m Z m 1→ [ O ,…,0 , b [ m叶 1 1 ]=b [ 1 1 .(K 叫m i

( 5 . 2 . 2 9 )

であるから ( 5 . 2 . 2 1 )により b [ m 1 + 1 1 = oで,やはり所望の形 ( 5 . 2 . 1 7 )を得る.

( 5 . 2 . 3 0 )

m,+,



となるが, ( 5 . 2 . 3 0 )の影をつけた部分は m 次以下の上三角行列(対角要素は 0 )で

5 .2. 1 7 )の形に相似変換できる.その結果生 あるから,帰納法の仮定により,再び ( じる対角ブロックの中に次数が m1を超えるものがあれば,ブロックの順序を入れ 換えることによって, N [ 1 1全体を所望の形 ( 5 . 2 . 1 7 )にすることができる.

. 2 . 7 注意 5 . 2 . 6により,任意の n次正方行列 A は次の形の行列]に相 注意 5

巧 ( 応 i==n l)とする.

pA ( 1 1 )=I I(A;-, 1 ) 似変換できることがわかる.ここで, r .. ]=]け…+] s ( ] ;は n ;次正方),

i = l

( 5 .2. 3 1 a )

]i=]il+… +] i s ; (んは n i j次正方;図 n;j=ni;n疇 ni2~ … ~nis;), ( 5 . 2 . 3 1 b )

5 . 2 S c h u r形と応用

199

( 5 . 2 . 3 1 c )

J i . i =

ここで, ( 5 . 2 . 3 1 a )の各対角ブロックに対応する基底ベクトルの張る部分空間 U(いが一意に定まることは注意 5 . 2 . 3で述べた通りであるが, ( 5 . 2 . 3 1 b )の場合 にはこのような一意性はない(→演習問題 5 .3 ) . しかし 6 . 8 . 1 ,6 . 8 . 2項で示すよ うに, A に 対 し て s ,A i ,n i , U似) (i=l,… ,s ) ,S i , nu (j=l,… ,S i ;i= 1 ,…,s )は一意に定まる. 注意 5 . 2 . 8 上の注意 5 . 2 . 7で述べた事実は, n次正方行列 A の固有値ん・ に対 応する固有空間 Ui=U⑭)に属する固有ベクトルなどの構造に関する詳しい情報 も与えてくれる ( i = l ,…,s ) . すなわち,相異なる固有値ふ,…, A s (多重度はそれぞ れn 1 ,…,n s )の各々に対応する固有空間に(-意に定まる; ( 5 .2 .3 1 a )の ] iに対 応する)の中で,各ん ( j = l ,… ,S i )に対応する部分空間 u i j (これは注意 5 . 2 . 7で 述べたように一意には定まらないが)において ( 5 . 2 . 3 1 b ) ,( 5 . 2 . 3 1 c )の形の A の表

i , j ) '… ,e 給?と記すと, ( 5 .2 .3 1 )は 現を実現する基底の基底ベクトルを d A d i , j )=A i d i , j )

( 5 .2 .3 2 )

を表しているので, e臼は固有値んに対応する“一つの”固有ベクトルであるが, 他の基底ベクトルは

A e S i , j ) =んe 炉 +e 賢

( j = 2 ,…,n u )

( 5 . 2 . 3 3 )

を満たしている.このように, n i重の固有値入 iに対応して, S i個の固有ベクトル d i , j )( j = l ,… ,S i )が存在し,それ以外に,各 d i , j )と関係 ( 5 .2 .3 3 )で結ばれるベクト ルe 豹叫…, e 位ヅ(これらを一般化固有ベクトル ( g e n e r a l i z e de i g e n v e c t o r s )と呼ぶ) が存在する.固有値入 iに対応する独立な固有ベクトルの数 si=dimKer(A-JJ) を固有値 A iの幾何学的多重度 ( g e o m e t r i c m u l t i p l i c i t y )と呼び,代数的多重度

( a l g e b r a i cm u l t i p l i c i t y )n iと区別する流儀がある.また,各 d i , j )に属する一般化 i jの高さ ( h e i g h t ),m~x n i lを固有値入 i ( あ 固有ベクトルの個数 nuを,部分空間 u るいは固有空間に)の高さ,などと呼ぶこともある.

5.2.2 ユニタリ相似(ユニタリ合同)変換による行列の対角化 Q が ユ ニ タ リ 行 列 な ら ば QH=Q-1で あ る か ら , ュ ニ タ リ 相 似 変 換 Q-1AQと 2 . 1 4 .3項)であ ユ ニ タ リ 合 同 変 換 QHAQとは一致する.また, A が 正 規 行 列 ( れば,それにユニタリ相似な行列 QHAQも正規行列である.実際,

200

5 固 有 値

(Q闊 Q)(QHAQ)H=Q闊 QQH心 Q=QHAAHQ =QHAHAQ=(QHAQ)H(QHAQ). したがって, A が正規なら,その S c h u r形 R も正規である.

ところが,上三 -9- ︱



~ZJn

︶ 5 3 2. . 5 ‘ 、 ー \



rr . . . 2 r2 o

ー ー



j n

....

-rnn

. 和 ' r j i



r il

-91.-9•:iJ

ー ー

2

. _ r2 ' r j i

, . L

︳ _

_ r 一 r│ = │ ︳ . . .. ' . . -rnn





. .'

r z z o

rijrnn



r _ ,

rー

. . .

-. .│ │' '. .一

角行列 R =[ r i j ]が正規であるとすると,

( 5 . 2 . 3 4 )

の( i ' i )要素を比較することにより, n i 1 ~I rijl2=~I r k i l 2

J=i+l

k=l

( 5 . 2 . 3 6 )

であるから, i=l,2,3,…の順に ~lrij 『 =O でなければならないこと,したが j=i+l

って rij=O(j=i+l,… ,n )であることがわかる.すなわち, R は対角行列でな ければならない. このようにして, 「正規行列 A はユニタリ相似変換(=ユニタリ合同変換)によって,固有 値を対角要素としてもつ対角行列にすることができる」

QHAQ=diag[ふ ,A 2 ,…ふ]

( 5 . 2 . 3 7 )

という重要な定理が得られる(対角行列は正規行列であるから,この逆「ユニタ

5 . 2 . 3 7 )は リ相似変換で対角化される行列は正規行列である」は明らか), ( AQ=Q•diag [ A 1ふ…, A』

( 5 . 2 . 3 8 )

と書き直せば,

iに対応する固有ベクトルである」 「Q の列 jが固有値 A ことを示しているので, 「正規行列 A は n本の直交系をなす固有ベクトル(もちろん独立)をも

っ 」 こともわかる.さらに, l l d i a g [ふ,…,ふJll2=max囚 で あ り , ュ ニ タ リ 変 換 で ベ クトルの 2乗ノルムは変化しないから「正規行列 A のスペクトル半径 p(A)は

A の 2乗ノルム I I A l l 2に等しい」ことになる. 例5 . 2 . 1 (正規行列の例)

( i ) A が Hermite行列のとき, AH=A. そこで,

201

5 . 2 Schur形と応用

( 5 . 2 . 3 7 )の両辺の Hermite共 役 を と れ ば び AHQ=QHAQであるから,え=ん, すなわち Hermite行列の固有値は実数である.左固有ベクトルと右固有ベクト ルが一致することも A=AHだから明らか. 正規化された固有ベクトルを基底に取れば, A を係数行列とする Hermite形 式は 砂 Ax=んI x 『+…+勾 Xn『

( 5 . 2 . 3 9 )

と書かれるから, A の S y l v e s t e rの符号指数は,(正の固有値の個数,負の固有 値の個数,零固有値の個数)とも表せることになる(→注意 3 . 5 . 9 ) .

( i i ) A が歪 Hermite行列のとき, AH=-A. iAが Hermite行列であるか ら,歪 Hermite行列の固有値は純虚数である.

( i i i ) A がユニタリ行列のとき, AH=A-1. (QHAQ)只QHAQ)=QHAHAQ =QHQ=In. 一方, diag[ ふ…,ふ]• d i a g [ふ,…,んJ = d i a g [ Iふ1 2 '… ,1 1 ¥ n『 ] . した がって

1『=1, I , l 礼= 1 . すなわち,ュニタリ行列の固有値の絶対値は 1である D

⑭ =e 叫 C J i:実数, という形に表せる) .

5 .2 .3 Gershgorinの定理と一般化 n次正方行列 A の固有値の存在範囲をきわめて簡単な形で表す方法の一つに, 次の有名な定理がある.

Gershgorin(ゲルシュゴリン)の定理(弱い形)

n次正方行列 A=[a』 (i,j=

1 ,…,n )の任意の固有値入は,

Ci={zECIlz-aiil~ri},

ri=~la 』 jキ i

(5. 2 .4 0 )

で定義される,複素平面上の n個の円 Ci(i=l,… , n)(それぞれ,中心 a i i半径 n

Y i )の合併集合 uciの中にある. i=l

証明

A の一つの固有値入とそれに対応する一つの固有ベクトルを x = [ : x ; 』

とする:

Ax=11x;

n

~aijぁ =/\Xi

j=l

(i=l,… ,n ) .

( 5 .2 .4 1 )

xキ 0であるから, l x i o l= m ' = 1 . x l x j lキ 0とおくと, ( 5 .2 .4 1 )の i=i りに対する式より ( A-a i o i o )X i o=~aioiぁ, jキ

したがって

o i

( 5 . 2 . 4 2 )



5

202





l1 ヽ 3 4 2. . 5 ‘ , ' \

I x 」

! 1-aioiol~ j ~I i o j lI ~I a ; o j l=Y i o キi oa X i oI~ j 豆o n

を得る. これは入 ECio~LJ C iを意味する. i = l 特性多項式

( j )A ( A )の零点は,その多項式の係数の,したがって

A の要素 a , J

の“連続関数”であることに着目すると,上の弱い形からより強い次の定理が導 き出せる.

Gershgorinの定理(強い形)

A=[a』の n個の固有値ふ,…,ふ(多重固有値

は多重度だけ繰り返して数える)は, ( 5 .2 .4 0 )で定義される n個の円 C 1 ,…,Cn の合併集合

u c iの各連結成分の中に,それを構成する円の個数に等しい個数ず

i = l

つ含まれる. 略証

A=D+B ( D = d i a g [ a 1 1 ,…,a n n ];B =[ b i J ] ,如 =O,如 =a ; j( iキ j ) )と

し , tをパラメタとする行列の族 A ( t )=D+t B( tE [0, 1 ] )を考える. A(O)=

D,A(l)= Aである.この強い形の定理が A(O)に対して成立することは明らか



t )に対応する円 C;(t)は , tと共に連続的に変化し,入 i も tの連続 である. A ( 関数であるから,弱い形の定理が成り立てば強い形の定理も成り立つ. 注意

5 . 2 . 9 ( 5 . 2 . 4 0 )の円 C(i=l,…,n )を G e r s h g o r i nの円 ( G e r s h g o r i nc i r -

d e s )という.上の定理は「 UCの各連結成分の中にその連結成分を構成する円の i = l 個数に等しい数の固有値が含まれている」と述べているのであって,「各円 C;の .4 ) . 中に固有値が 1個ずつある」といっているわけではない(→演習問題 5

n次正方行列 A=[a』の n個の固有値の中から m 個心,…,入 i m伍<厄<…< 砧)を選んでその平均値を

lm

μ ( i 1 ,•••, i五)=一—こ心 mk=l

( 5 .2 .4 4 )

とする.行列 A の行 j l ,… , J 玉と列 j 1 ,… , J 五U1< n-m-



A の Schur形を,心,…,心が左上から順に並ぶように作り,

証明


< n-m→

Q~[I]j

m"A

R=Q叫Q =

m

m

︱ ← n

( 5 . 2 . 4 7 ) とする. sの m 次の小行列式の中で絶対値が最大のものを I S l { 1 : :寄U 1

, Xのたかだか n-l次の多項式であり,その砂の係数を集めて作った n次 -l)kCkである.特に C。 =adjA.) ピ方行列が ( ( 5 . 3 . 3 ) ,( 5 . 3 . 4 )を ( 5 . 3 . 2 )に代入して炉の係数を比較すると,

AC 。

=c ふ , ヽ

-AC1-C 。

=-c1In, ( 5 . 3 . 5 )

(-1)n1ACn-1-(-1)n 2 c n 2 =(-1)n l C n d n , ー

-(-1)n l c n1=(-1げI n ー

t 得る. ( 5 . 3 . 5 )の各式の両辺に In,A,A2,…,Anを掛けて加えれば,左辺の和 まO n , nとなり,右辺の和は ( f ) A( A )となる. 注意 5 . 3 . 1 上の定理から直ちに, c o = d e tAキ 0ならば A-1=(c山— CzA+ …

5 . 3 C a y l e y H a m i l t o nの 定 理

213

+ (-1)n-2Cn-1An-2+(-1)n-IAn 1 )/C oであることが示せる.

注意 5 . 3 . 2 一般に,任意の m 次多項式 f(x)に対して

( 5 . 3 . 6 )

f(z)-f(y)=(y-z)g(y,z)

(g(y'z)は 2変 数 Y,Zの m-l次多項式)が成り立つから, Y,Zにそれぞれ A,xln

を代入すれば,

( 5 . 3 .7 )

f( x l )-f(A)=f( x )I-f(A)=(A-xl)G(x).

ここで, G(x)=g(A,xl)は各要素が m-l次以下の

X

の多項式であるような n次

正方行列である.したがって, Cayley-Hamiltonの定理の証明と同じ手続きによ って,「ある多項式 f(x)に対して f(A)=On,nとなるための必要十分条件は,

( 5 . 3 . 8 )

f(x)I=(A-xl)G(x)

を満たす(多項式を要素とする)行列 G(x)が存在することである」ということもわ かる. 注意 5 . 3 . 3 ( 5 . 3 . 5 )をもっと詳しく分析してみる.最下式から K個の式に下か ら順に Ak,Ak-1,…,Aを掛けて加えると, ACn-k=(-1)k l(Ak_Cn-1Ak-l+Cn-2Ak-Z_…+(-1)k l C n k + l A )

( 5 . 3 . 9 )

(k=l,2,・・・,n-1)

が得られる.四( x )= (-1戸 (x-心 … (x-ふ)なら —ば)であるから(→注意 5.2.2),

戸 (x-ふり… (x

rpAP( X )= (-1

( 5 . 1 . 1 7 )より

型 ) .



t r(ACn-k)= (-1)k l ( A/-cnー it1A戸+…+(一 1 )k l C n k + l

( 5 . 3 . 1 0 ) ところで,基本対称式とべき対称式の間に成り立つ有名な Newton(ニュート ン)の公式 1)



kcn-k= (-1)k l (翌 パ 翌 戸 + … + ( 一 l ) k 1 C n k + l

( 5 . 3 . 1 1 )

(k=l,2,・ ・ ・ ,n )

を想起すると, ( 5 . 3 . 1 0 )は

( 5 . 3 . 1 2 )

tr(ACn-k)=kcn-k

と書き直せる. ( 5 .3 .5 )と( 5 . 3 . 1 2 )を用いると,

1 ) この公式は多項式 < j J ( t )=几 (1-t ん)=孟 ( 1 )が C n k( c n = l )を 考 え , 似 ( t )=孟(一 1 )k k t k 1 n

o o

n

C n k , ゆ' C t )I ゆ( t ) = ( d / d t ) l o gゆ( t )=一 ~il;/(1-t入;) =-~t 勺2 入 /+l i = l k = Oi = l l o gゆ( t )の両辺の t k i (k=I,…,n )の係数を比較すれば得られる.

に注意して ( x ) ,

1 < 2 >( x )の積に表されるとき,すなわち

f( x )= J < 1 >( x ) ・ J < 2 >( x )

( 5 . 4 . 7 )

217

5 . 4 最小消去多項式,最小多項式

であるとき, jU>(x)を最小消去多項式にもつベクトル X ;( キ0 )E Lパ X o )が存在し て,直和分解 ( 5 . 4 . 8 )

Lパ Xo)=Lパ X1) 〶 Lパふ)

が成り立つ. 証明

j < l l , J < 2 )は互いに素であるから,それらの最大公約多項式は 1に等しく,

よく知られた代数学の定理により, j ( l >( x )g < 1 >( x )+ j < 2 >( x )g < 2 >( x )=1

( 5 .4 .9 )

を満たす多項式 g < l )( x ), g < 2 >( x )が 存 在 す る ( iキjなら J ( i >( x )と g U l( x )は 互 い に 素 ).( 5 . 4 . 9 )は J ( l > ( A )砂 (A)+ j < 2 >(A)g < 2 >(A)=I

( 5 . 4 . 1 0 )

も意味する. A= / < 2 >(A)g < 2 >(A),

A= J < 1 >(A)g < l )(A)

( 5 . 4 . 1 1 )

とおくと

A十 化 =I.

( 5 . 4 . 1 2 )

任意の xELパ X o )に対して, f(A)x=Oであるから AP: 心 =AP 心 =0.

( 5 . 4 . 1 3 )

( 5 .4. 1 2 )と( 5 . 4 . 1 3 )とより P心 = P 心

( 5 . 4 . 1 4 )

が 得 ら れ る . こ の こ と は , れ が Lパ X o )に お け る 射 影 で あ っ て Lパ Xo)=L直 Lz (Li=Pi•Lパ Xo)) と直和分解されることを意味している(→注意 3. 7 . 3 ) . 特に, ふ

=P 心o ,

x2=P2xo

( 5 .4. 1 5 )

とおけば, jOl(A)ふ =J : 実数; k=l,2;i=I,… , n) ・

( 5 . 6 . 1 0 ) ヒおいて,

X( t )を

X i( t )=r i( t )e i 0 ; < t > ,

=二~,

r , ( t )

仇( t )=( l-t)0 i ' ' +t 0 i ' ' }

( 5 . 6 . 1 1 )

こより定義する.明らかに x ( O )=x叫 X( 1 )= x < 2 >である.また, ( 5 . 6 . 8 )とこ

( E [ 0 , 1 ] )に対して, り定義とから,任意の t

ぷt )H ふ X( t )= x ( l ) Hふ x < 1 > = x < 2 > H ふ砂,

x ( t )な (t)=l ( 5 . 6 . 1 2 )

であることが確かめられる.したがって,{z( t )=x( t )H Ax( t )I O~t~I} は ~(1) と z を含む虚軸に平行な直線分であることがわかる.(以上の議論だけで

, ま "F(A)がそのような直線分を含む”ということしかいえないが, F(A)の

D

五性の証明のためには,それでも十分である.)

例5 . 6 . 3 2X2型の行列 A の値域 F(A)は , A の二つの固有値を焦点とする

育円である.実際, Vn の正規直交基底を適当に選んで A を Schur 形 [~1

J :

ふ十入2

Iの値域 F(A')は F(A)を(ふ+沿 / 2だ け 平 行 2 多動したものであるから, t rA'=Oなる F(A')を考えれば十分である.さらに, こ表しておんを考慮すると, 入全ふこん(ふこん•あるいはふ三ん)がすべての k( キ i , j )に対して成り立たなければなら

ない.それには, ;1;=ふ,ん=ふ似と入j はμ を挟む隣り合う入 z )でなければならない. そしてこのとき, ( J 2 =( ; 1 ;一μ)( μ ーん).ゆえに,

(*5 ) 6 max=J(ふーμ)( μ ーふ), (*6 ) 6 m1n=J( ; 1 ;―μ)(μ-A ; + 1 )

(;1 五~µ~ 入i + l )

である.

5 . 1 0 n次正方行列 A=[aJ], 単位行列 In=[針]に対して, (*1) (n+l) ~ a d / a悶… a盆 勒 ( i , j = l ,… ,n ) i t ,… ,in=l,・ ,n

は,値 1 ,… , nを取る n+l個の添字几…, i n , jに関する交代化演算を含んでいるから, 恒等的に 0である.この式を適当に変形すると, C a y l e y -Hamiltonの定理が得られる

. 5 . 2項を利用せよ. ~ 砂 a}~a 悶… a}い狐は Ak の (i , j )要素 ことを示せ.[ヒント: 2 れ , ・ ・・ , i k

であり, [略解]

~a畠 a各 ··a幻 =cn-k であることにも注意.]

Zl,・・,Zk

式(*1 )の下側の交代化演算において ( n+l)個の i 1 ,i 2 ,…,i n, jを (n+l)個の

点①,…,⑥,⑥にそれぞれ対応させる. (n+l)! [ i 1 ,訟…ぷ, j ]の各順列を,これらの点 を結ぶサイクルで表現する(→補章 A.3 節なども参照).辺®→(J) の重みは a~:, ⑥→⑥

の重みは a如 ⑥ → ⑥ の 重 み は a J kであるとする.⑲D の重みは針とする.サイクルの

232

5 固 有 値

重みはそれを構成する辺の重みの積とする.すると,

< a〉⑥を含む長さが r+Iのサイクルは,全部で n P r個あるが,それぞれの重みは a幻沿… a 『で, £ 1 '…,む ( =1,…,n )についての和をとると (A内に等しい. < b〉残りの部分のRを含まないサイクルは 2 が認… a糾という形に対応するが, 悶 ; . ? , 悶 これは注意 2 . 7 . 1にも指摘してあるように A の (n-r)次の主小行列式の和,すな わち A の特性方程式¢パ x)のがの係数に等しい.

< c〉結果として同一の値の重みをもつサイクルの個数は,く a〉で nPr=(n-r)!個あ るが < b〉 の[ z " r + l ,…ぷ]は (n-r)!倍してはじめて (n-r)個の記号のすべての順列 となるので,結局どの r に対しても n個 の 記 号 几 … ぶ の す べ て の 順 列 を 与 え る ことになる.式(*1 )は (n+l)個の記号のすべての順列を作ることを目標にしてい るので (n+1 )!を掛けた式になるはずであるが,その中の n !はこのようにして自 然に重複して数えられているので, n+Iだけが係数として残るわけである.(もっ とも, =Oであるから,係数はどうでもよいが.) このようにして純粋に組合せ論的な式(*1 )が C a y l e y -Hamiltonの定理に他ならない ことが判明する.

5 . 1 1 単因子,最小多項式を用いて, ( i ) べき等な n次正方行列 A (A2=Aを満たす行列), ( i i ) べき零な n次正方行列 A (ある自然数 Pに対して AP=Q,AP-1キ 0 を満たす 行列) の構造を調べよ. [略解J ( i ) が— A=O であるから A の最小多項式は f ( x )=x2-xの因子である. ぬ( x )=xなら A=O, 如 ( x )=x-1なら A=I. ぬ (x)=x(x-1)なら A のすべての

.

n ,

、•、,

n 2 , '

単因子は x(x-1), x , x-1, 1のいずれかである(並ぶ順序は, ( 1 ,… ,1 ,X ,…,X ,

n s n 1 n 2 n s . ' 、 , ' , , 一 x(x-1),… , x(x-1)), あ る い は ( 1 ,… ,1 , x-1,…,x-l, x(x-1),… , x(x-1)) で , n戸 加 で あ る ( n叶 n叶 n戸 n,n 叶 2n 戸 nでなければならないから): n2=0であ J

'

,

5 .4. 3 5 ) ,( 5 .4 . 3 6 )において C;=[ O J ,[ 1 ] ,[~ 『]の形の ってもよい).したがって, A は ( 10

10

対角ブロックからなるブロック対角行列に相似である. s=[-1 i J , s —1=[1 1 Jに対 して s 1 [ 0o]s=[oo ]であるから,要するに, A は d i a g [ O ,… ,0 , 1 ,… ,1 ]に相似であ

11

01

る. A2=Aは射影の条件(→ 3 . 7 . 1項 , ( 3 .7 .3 ) )でもあることに注意. ( i i ) A の最小 多項式はぬ ( x )=吋である.したがって,単因子は x圧 x圧…, x P n (P1~P2~ … ~Pn-1 ニ加 =P, ~Pi=n) である.最小多項式(=特性多項式) X P ;をもつコンパニオン行列は

I .!

演習問題

233

0 . . . . . . . . . 0 1 : : : : : -



:

. ・:

であるから, A はこのような対角ブロックからなるブロック

: [ ;

5 . 1 3 n次 ユ ニ タ リ 行 列 Q,Q 1 ,Q zに対して, I I Q伽=ふ" i ,I I Q l l 2 = l ,I I Q 1 A Q 山= I I A I I F ,I I Q 1 A Q 2 l l 2 =I I A l l 2であることを示せ. [略解] ¥ /xEVnに 対 し て I I Q x l l 2 = l l x l l 2だ か ら I I Q伽= 1 .演 習 問 題 5 . 1 2により IIQAIIF~IIQ 鼠 AIIF= I I A I I F , IIA 伽=鳳 QAIIF~IIQA 伽で,結局, IIAIIF=IIQA に同様にし てI I A I忙= I I A Q I I F ,ゆえに I I Q 1 A Q 叶I F = I I A伽:石;= I I I I I F = I Iい Q I I F = I I Q伽 : IIQ1AQ山= IIA 伽は,ノルムの性質 IIABII~IIAII. 国 と I I Q伽=lより同様にして示せる. 5 . 1 4 n次正方行列 A に対して IIAHA-AA叶I 芦= 2(IIAA叶侶― I I A 2駅)であることを

示せ(この量は, A が正規行列のときには 0となるので,“正規性からのずれ”を表す 一つの尺度である).

I B駅 = t r( E HB ) ,t r(BC)= t r(CB)という関係 ( ( 2 .7 .3 ) ,( 2 .7 .4 )など)を用 [略解J I 叶I げを変形せよ. いて IIAHA-AA 5 . 1 5 任意の体 K の上で, ( i ) コンパニオン行列 Cは,ある対称行列 T によって,その転置 C Tに相似変換で きること: CT=T1cr (TT=T)を示せ. ( i i ) 任意の n次正方行列 A は,ある対称行列 Sによって,その転置 ATに相似変 換できること: A三 s — 1AS ( ST=S)を示せ. i .S 2 (少なくとも一方は正則)の積に表 ( i i i ) 任意の n次正方行列 A は対称行列 S S凸=ふ)を示せ. せること: A=S1•S2 ( ( i v ) 特に K=Cのときには,任意の正方行列 A は相似変換によって対称行列 B= ー

x-1AX (今度は X は対称とは限らない正則行列)に変換できることを示せ.

5 固

234

[略証]

l o

IO 1・..

゜ ゜

( i ) C=





に対して,

0f n 2 1f n 1

n l -1 / 1 / 2 …… f



! 2 T=

( / 1 ,… ,f n 1 ,-1,0 ,0 ,…が斜めに並ぶ Hankel行列)

f n l -1 とおけば,



f o O O・・・ ・・・0 0 0 f z / 3 …… f n 1 -1 0 / 3 CT= 0 f n 1 0 -1 となる . Tも CTも対称であり, d e tT=士1であるから, CT=(CT)T=T C T , すな わち CT=r-1cr.

..

( i i ) A を相似変換により x-1AX=C=C げ … +C s( C iはコンパニオン行列)とい う形に変換し,各

C を C?に変換する対称行列れの直和を T=T1+… +Tsとすれ

-1cr. S=XTXTとおくと, Sー 1AS=(X い r-1x-1AXTXT=ex予 CT ば , CT=r ザ =AT, ST=XTTXT=S. XT=(XCX ( i i i ) (ii) において A 三 s — 1AS を SAT=AS

と書いてみると,

(SAT) T =(AS)戸

Sがであるから, S1=Sがは対称.そこで S2=S — 1 (これも対称で,かつ正則)とおけ

ば , A=SATs-1=s ふ .

( i v ) ( i )に よ り AT=s-1Asを 満 た す S(=Sりを求め, Sを ( 2 . 1 5 . 5 9 )の 形 に C h o l e s k y分解(→ 2 . 1 5 . 4項 a )したものを S=YDYTとすると(ここまでは有理演算で

iを

=diag[d1,… , d 』, d序 0で あ る : 各 め の 平 方 根 ん 可能), Sが正則であるから D

用いて(ここで K=Cであることが効いてくる: dEKに対して /c[EKであるよう な 体 K な ら 特 に K=Cでなくてもよい) X =Yd iag[Hi,…,ん五]とおけば, S=

演習問題

235

XXT (Xは正則) .B=X— 1AX とおけば, B 三 XT が cx-l)T = X で ー 1Asc x 1 )T .s =X 文 だ か ら S(X ザ =S(X い =X, XTS — 1=x-1 で, BT=x-1AX=B, すなわ ち B は対称.

5 . 1 6 n次正方行列 A が A=An飢知と直和に分解されるとき, A の値域 F(A)は Anの値域 F(An)と 品 の 値 域 F ( A 2 2 ) を両方とも含む最小の凸集合 (F(Au) と F ( A 2 2 )の凸包)であることを示せ. [略解J x=x 叶 X 2( X ;は不変部分空間のベクトル)と表しておくと,砂 Ax=x1H 2 , xHx=x 心 +x 心 よ り , xHAx/砂 x=(バ Anxi/x 戸X 1 )( x 心/ A心 +x2H心 X 炉 x)+(x 『A 2 2 x 2 / x 心) ( x 心 I xHx ) , x心 / 炉 x+x 心 / 砂 x=l. 5 . 1 7

n 次正方行列 A の固有値がふ,•;んであるとき A

SAT~fl ロEB,

( 6 . 4 . 1 )

r=r a n kA

という形に変形できることは,すでに 2 . 1 5 . 1項 に お い て 述 べ た ( → 注 意 2. 1 5 .4 ) . この形を A の階数標準形 ( r a n knormalf o r m )と呼んでおく(一意に定

まることはいうまでもない). この形と,正則行列を(左および右から)掛けることによって行列の階数が変化 しないという事実を利用して,やや面倒な関係式を,視覚的にわかりやすく証明

. 1 3 . 1項 の し,理解することができる場合が少なくない.一例として, 2

r a n k(AB)+rank(BC)~rank (ABC)+rankB , B:!Xm型 , c:mxn型 ) (A:kXl型 の証明をしてみよう.

( 6 . 4 . 2 )



9 ’



c

T Z

re

T A

rA=rankA=rankA',

c sz

i





T i A S l

“=

S 1 ,T 1 ,S 2 ,T 2は正則). まず, A,Cを階数標準形に表す ( ~=





( 2 . 1 3 . 6 )に掲げた不等式

rc=rankC=rankC ' .

( 6 . 4 . 3 )

244

6 行列の標準形と応用



い に

B'=T i 戸 BS21

( 6 . 4 . 4 )



こおけば, A'B'=ふABS ご , B'C'=T 戸 BCT2, A'B'C'=ふABC冗だから,

6 . 4 . 2 )に現れる行列積の階数はプライム'をつけても変化しない.

2 . 4 . 1項の部

}行列の記法を用いると



n





c r c T



1・・・rere+l ・ ・ n







T A

A ' B℃'=



.K TAl.

c

1





A

B ,

•••

( 6 . 4 . 5 ) であるから, ( 6 . 4 . 2 )を証明するには

r a n kB ' l : :な +rankB ' l : :ふ ~rankB'l:: 勾十 r a n kB'

( 6 . 4 . 6 )

を示せばよい.

r 1 = r a n k B ' l : :唸 ,

r 戸 r a n kBt:な ,

r3=rankB ' l : :も

( 6 . 4 .7 )

とおく.

B'の列 1 ,… ,r eに対する基本列演算,行 1 ,… , m に対する基本行演算によっ て B'は

B"=

( 6 . 4 . 8 ) TA TA+l

という形に変形できる.この変形によって, ( 6 . 4 . 6 )に現れる B'の部分行列 ( B ' 自身も含めて)の階数とそれらに対応する B"の部分行列の階数とは等しい.さ らに続けて, B"の列 1 ,…,れを何倍かして列 r c+l,… ,mに加え,行 1 ,… ,r 1 を何倍かして行 Y A+l,… , lに加えることによって ( 6 . 4 . 8 )の 1 11の部分を 0 に することができる.この変形によっても問題となる部分行列の階数は変化しな し ) .

同様にして,列 r 1 + l ,… ,r eと行 YA+l,… , lに 対 す る 基 本 演 算 , 行 r 戸 1 ,

6 . 6 整数行列の Hermite標準形, Smith標 準 形

245

…,r Aと列 rc+l,… , m に対する基本演算によって "

c

T3

r e

← n→

>

>

r2-r1

"

>

( 6 . 4 . 9 )




の形を得る.上と同様にして ( 6 . 4 . 9 )の 1 1 1 lの部分を 0 にすることができる. その結果得られる行列の阿~0) ff~½'0)~,~ ~Yi。とすると,

r a n kB'=乃+(乃一乃)+(乃一乃)

+ri。 ~r:叶 乃 一 乃

( 6 . 4 . 1 0 )

である. ( 6 . 4 . 1 0 )は ( 6 . 4 . 6 )そのものである.

6 .5 S y l v e s t e r形 K=Cとする. n次 Hermite行列 A を n次正則行列 S による合同変換によ って

( 6 . 5 . 1 )

という形に変形できること,この際,符号指数 Cn+,n —,

n o )は S の選び方によら

ないこと ( S y l v e s t e rの慣性則)などは,既に 3 . 5節(特に注意 3 . 5 .7 )で述べた通 りである. ( 6 . 5 . 1 )の形も一種の標準形とみなせる.

6 . 6 整数行列の Hermite標準形, Smith標準形 K=Z(整数環;体ではない)とする.

246

6 行列の標準形と応用

6 . 6 . 1 Hermite標準形 2 . 1 5 . 6項で述べたように,整数要素の mXn型行列 A は,適当な m 次単模 行列(整数要素の行列で,その逆行列も整数要素からなるようなもの:行列式の 値が土 1であるといっても同じ) S と n次置換行列 P を用いて

U=SAP=[u』, Uij~O

( i = l ,.・,m;j=l,.・ , n ) ,

Uij=O

(i>jあるいは i>r),

叩 (A,y )= (-1)kR(A,y)・F・R(A,y)・F・R(A,y ) ・ …•F•R (A,y) k組

( 6 . 8 . 5 1 ) と表せる.各心 ( c )のみを含む反時計回りの閉曲線を I ' ; j ( c )とし,ふ ( c ) ,… , 入iP;( c )とんとだけを含む反時計回りの閉曲線を

E とする.

( cが十分小さけれ

ば,几 ( c )も E も 9 の中に選ぶことができる .nは eに関係しないように選ぶ

6 . 8 . 4 2 ) , ( 6 . 8 . 4 8 )により ことができる.)すると, (

芦 (f ( c : ) R ( A ( c ),y)dy)

P ; 1 恥)=月凡( c )= ― 玩i



f

c ), y )dy. =- l R(A( 2冗 iI';

( 6 . 8 . 5 2 )

( 図6 . 8 . 1を見よ:心 ( c )キ入 iなら R(A(c),y )は y=入iにおいて正則であること に注意.)これに ( 6 . 8 . 5 1 )を代入すると 00

P i ( c )=Pi 十 pfk>=- 1 2冠

~ckpfk>,

k=l

f

( 6 . 8 . 5 3 )

R(A,y)dy

I ' ;

という, P;(c)の摂動を eのべき級数で表す式が得られる (P?lは eに無関係で あることに注意).このことは,

c→ 0のとき, A(c)の固有値は A の固有値に収束し, A(c)の固有空 間のうち A の同一の固有値に収束する固有値に対応するものの直和は

262

6 行列の標準形と応用

A の対応する固有空間に収束する ということを意味している("部分空間の収束”を定義していないので,この言明 は不正確であるが,ここでは,部分空間への射影の表現行列の収束という意味に 理解してほしい).

6 . 9 特異値標準形 K=< n-r-

□ □

心=[知

Q

mー r

という形をとる.そこで

O

,

detAu'cO



A•=Q1~

Q炉

( 7 ・ 5 ・ 6 )

( 7 . 5 . 7 )

とおけばよい (Auを対角化するのに特異値分解の“非有理性”があるだけであ る ) . 注意 7 . 5 . 3 いままで述べてきたすべての形の一般逆行列についていえることで あるが,それらの“定義”もまた“構成方法”も,実際のデータや数値計算の過程 に少しでも雑音(誤差)が入ると,致命的な影響を受けることが多い.このような意 味で,一般逆行列の話はまった< "構造不安定”である.

8 非負行列 本章では, K=Rとおき,すべての要素が非負であるような行列を扱う.この ような行列は,計量経済学における投入・産出分析において,また,確率過程論 における Markov連鎖の推移確率行列として現れる.さらに,電気回路などの ネットワーク理論や数値計算などにおいても,原因に対して結果が(あるいはそ の逆が)ある種の“単調性”を有している場合によく現れる.

K=Rの上の行列 A(ベクトルも特別な場合である)の要素がすべて非負のと き , A を非負行列 ( n o n n e g a t i v ematrix)という.すべての要素が正のときには

p o s i t i v em a t r i x )という.行列 A,Bが同じ型で, A-Bが非負行列のと 正行列 ( き A~B,

A-Bが正行列のとき A>Bと記す(この記法は本章だけで通用する

ものである).特別な場合として,非負ベクトル,正ベクトルなどについても同 様である.

K=Rの上の行列を扱うわけではあるが,議論の途中で必要に応じて複素数体

Cにまで K を拡大することもある.

8 . 1 非負行列, M 行列 8 . 1 . 1 非負行列, M 行列

n次正方非負行列 A と正数μに対して,次の 7条 件 ( i ) , , . . . . . . ,( v i i )が互いに等価 であるということが知られている.

( i ) 任意の n次元非負ベクトル bに対して, (μIn-A)x=bを満たす非負ベ クトル

X

が存在する.

( i i ) ( μ I n-A)X >Oを満たす正ベクトル ( i i i ) p→

00

のとき ( μ l A ) P→ O n , n .

X

が存在する.

275

8 . 1 非負行列, M 行列

( i v ) p(A) ( v i )

( i v )-~―ープ~- ( i i i )

の順でおこなう.

( i )⇒ ( i i ) :b=[ 1 ,1 ,…, 1『に対して (µIn-A) 元 =b を満たすえ ~o が存在する. e

=[1,… ,1 『に対して y=(μIn-A)eとおく. y~O のときには c=l, そうでないと 1 きには c= m p.x(-yi ・ ) ] とおく.すると x=え +c e>O, ( μ I n-A)x=b+cy>O

万 [

である. i i i ) :(μIn-A)x>Oを満たす正ベクトル元を選び, i J=Un-μ-1A)元(> ( i i )⇒ ( 0 )とおく. i J+( μ I A )i J十 ( μ 1 A ) 2 i J十…+(μ lA)PiJ=x ( μ l A ) P + lX戸 で あ る ー



が,この式の左辺は Pに関して単調非減少であるから,(μ l A ) P j j→ 0 ( p→ o o )で ー

なければならない.ところで, i J>Oであるから,(μ lA)P →O n , n( p→ 0 0 ) . ー

( i i i ) ¢ = ⇒ ( i v ) :6 . 8 . 4項で示したように, ( μ l A ) P→ O n , n ( P→ o o )の必要十分条件 はp (μ-1A)Oを 満 た す x=[ x 1 ,…,X n ] T>Oに 対 し て K次 元 ベ ク ト ル y= [ x 1 ,… ,X k『>Oとおくと, (μlk-Ak)y>O (Aが非負で X k + l ,… , Xn>Oであること

276

8 非負行列

に注意) . ( i i )⇒ ( i v )により, p ( A k ) O , 入i が複素数ならそれと複素共役対をなす入j=えが存在し, ( μ 1 1 ; ) ( μ -え)= l μ 1 1 ; 1 2

n-Ail : : : z= >Oであることがわかる.したがって, μIn-Aの首座小行列式はにI ←ふ) =IT( μ 1 1 ; )> O . d e t ( μ J i = l ( v )⇒ ( v i i ):B=μln-Aの LU分 解 B=LUにおいて, Ukk=IB甘 : :Z / I B l l ; : : : ;い で あるから, ( v )により Ukk>O ( l k k = lは LU分解の定義) .L ,U の非対角要素の符号 . 1 5 . 3項の LU分解の算法 (Aの代りに B とする)において B位)の非対角要素 は , 2 < k > の符号と一致する. B=Bの非対角要素は, A が非負だから,非正である. B の非対角要素が非正なら, Lの列 Kの行 k+l,… , nの要素および U の行 Kの列 K

+1,… , nの要素は非正(算法の [ 2 ] , 上記の Ukk=b紺 >Oにも注意) . B伍 + l )の非対角 3 ]の M f + l > :=b 炉― [;kUkJ において, b 炉 ~o, tik~o, uk}~o より, 要素は,算法の [ 紛 +1>~0 ( iキj ) . ( v i i )⇒ ( v i ):μln-A=LUにおいて, Ukk>Oだから d e t( μ I n-A)=I TU k k>o , k = l μIn-Aは正則. L,U の要素の符号から L-1~0, U —1~0. ゆえに, (μIn-A)-1= u-1Lー 1~0.

注意 8 . 1 . 1 上記の条件を満たす非負行列 A と正数μ に対して, A(そしてμ] -A)を既約標準形(→ 6 . 1 . 1項)に表しておくと, (μI-A戸の既約対角ブロック μ I-A)-1>0 . は(非負であるだけでなく)正行列となる.とくに, A が既約なら ( このことは ( μ I-A)-1=μ-1(I+μ-1A+(釘A)汀 ( μ 1 A )吐…)と 6 . 1 . 1項で述べ たことから明らかであろう.

上記の諸条件を満たす μJ-A (A~O,µ>O) という形に表すことのできる行 列 を M 行 列 CM-matrix)と呼ぶ. B=μl-Aが M 行列であれば, bij=-a心

0( iキ j )で , ( v )により b u ,… ,b n n>O (行・列の番号の振り方は本質的でないこ とに注意), d e tB >O. そして (vi) により B ー 1~0 である.逆に, B が正則で, 如 >O ( i=l,… , n), b 心 0( iキ j ) , B ー 1~0

( 8 . 1 . 1 )

を満たすとき,

μ=max b i i , , …n i = l ,

A=μJ-B

( 8 . 1 . 2 )

とおけば,明らかに µ>O,A~O であって条件 (vi) を満たすから, B は M 行列

である.したがって, ( 8 . 1 . 1 )を M 行列の定義とすることもできる.

例8 . 1 . 1 最も典型的な M 行列は, m+l個の節点の間を正の線形抵抗のみで

277

8 . 1 非負行列, M 行列

結んだ電気回路(グラフとしては連結グラフであるとする)の節点コンダクタンス

n o d econductancem a t r i x )であろう.回路の 1点を接地点とし,それを基 行列 ( aと記し,各節点から回路 準にして測った残りの各節点 (a=l,…,m)の電位を V aと記す(接地点から流出する電流はか卜…十砧とな に外から流入する電流を i る).節点コンダクタンス行列は,電位 V 1 ,… ,V mと電流 i 1 ,… ,1 玉を関係づける式 m

ia=~Ya/3叩

/ 3 = 1

( 8 . 1 . 3 )

(a=l, …,m)

の 係 数 行 列 Y= [ y a p ](この場合は対称行列!)である. Ohm(オーム)の法則

(Ohm'sl a w )と Kirchhoffの電流法則 ( K i r c h h o f f ' sc u r r e n tl a w )とにより 節 点 a と Bを直接結ぶ抵抗のコンダク タンス(抵抗の逆数)の総和に負の符号

Y a 戸

iをつけたもの

(aキ Bのとき),

節 点 aに 接 続 さ れ て い る 抵 抗 の コ ン ダ

( a = / 3のとき)

クタンスの総和

( 8 . 1 . 4 ) と表されることは容易にわかる.このような電気回路はエネルギーを消費するだ けであるから,どのような電圧のかけ方に対しても

m

mm

a = l

a = l / 3 = 1

~ia叩=~ ~YaP如叩 >O

( vキ 0 )

( 8 . 1 . 5 )

でなければならない.このことは Yが正定値であること,したがって上の条件 ( v )を満たすことを示している(→注意 3 . 5 . 1 4 ) . このようにして,

Yが M 行列

であることが示される.そうすると, Y は他の 6条件をすべて満たす(μ=

maxY a a , A=μJ-Y とおいて).たとえば, y-1~0 は,電圧・電流関係の “単調性” 「どこかの節点に外部から電流を注入すれば,すべての節点の電位が上

を表している.

D

がる(下がることはない)」

8 . 1 . 2 Perron-Frobeniusの定理 既約な(→ 6 . 1 . 1項 ) n次正方非負行列 A に対して次の ( 1 ) ,( 2 ) ,( 3 )が成り立 っ.これは Perron-Frobenius(ペロンーフロベニウス)の定理と呼ばれている.

278

8 非負行列

( 1 ) p(A)>Oで , A は正の固有値 p(A)とそれに対応する“正の”固有ベク トルをもつ.

( 2 ) A 以 B(~ 〇n,n) なる任意の n 次正方(非負)行列 B に対して, p(A)~ p(B)が成り立つ. p(A)=p(B)が成り立つのは A = Bのときに限る.

( 3 ) p(A)は A の単純な固有値である. 証明

( 1 ) 8. 1 . 1項の条件 ( i i ) ,( i v )が等価であることにより,任意の a>Oに対

して ((p(A)+a)I-A)x>Oを満たす正ベクトル x>Oが存在する.一般性を失わず

I ぶl2=lと仮定しておく. C l ! k→ 0 ( k→ o o )なる正数列 C / ! 1, C / ! 2 ,…に対する にI

X の列

ふ,必,…は,収束する部分列をもつ (n-1次元球面 S={x I l l x l ¥ z = l }はコンパクト であるから).この部分列自身をふ,必,…と書き,ふ→

k→ p(A), 廷 0 , 元キ と , p(A)+a

x (k→ oo)とする.する

oCII 元伽 =l) であるから,

(p(A)I-A) 元 ~o.

g

ii=(I+A)n 1元とおくと, 6 . 1 . 1項により (I+A)n-1の全要素が正であるから,

>O. 一方, (I+A)n 1(p(A)I-A)元 =(p(A)I-A)(I+A)n-ix =(p(A)I-A)i i . ー

ここで,もし (p(A)I-A)え=0でなければ,再び 6 . 1 . 1項により (p(A)I-A)i i>O となるので, 8 . 1 . 1項の条件 ( i i )が ( i iに関して)成立するのに, μ=p(A)であって

( i v )に反する.したがって, (p(A)I-A)元=Oでなければならない.これは元が A の固有値 p(A)に対応する固有ベクトルであることを示している.さらに, ( 1+P( A))n 1元 =( I+A)n-1元>〇よりえ>〇となる. ( 2 ) ATも非負で既約であり A と同じ固有値をもつから,上の ( 1 )により,固有値

p(A)に対応する正の固有ベクトル i>Oをもつ . Bの 任 意 の 固 有 値 を ふ そ れ に 対 y 1 ,…,Y n「とする.また, ii=[ I Y 叶 , … ,I Y n ¥ J Tとする. AY 応する固有ベクトルを y=[ =By の両辺の各要素ごとの絶対値を取ることにより, l11lii~Bii. ゆえに, 1 1I かg ~iTBfj~iTAfj=p(A) え T f j , すなわち,

1 1I 印p (A), p(B)印 p(A). いま [ 1 1 l = p ( B )

=p(A)であるとすると, l 1 1 l z Tfj=が Bii=かAiJ=p(A)zTi iでなければならない が,

i>O であるから l11lii~Bii~Aii も等号で成り立たなければならない: l 1 1 l i J =

廂 =Aii. これから, ( 1十 l 入l )n-lfj=(I+A)n-lfj>O ( →6 . 1 . 1項).ゆえに ii>O.

i>Oより B = Aを得る. Bii=Aii, B~A, i ( 3 ) B;=Aむ : j = t : f 訃 : : : : 点 (Aから列 iと行 iを除いた n-1次正方行列)とおく (i= 1 ,… ,n ) . A の特性多項式を叫 x )=( f ) A( x ) , B;の特性多項式を < : p ;( x )=( f ) s i( x )とす p ' ( x )=d( < l e t(A-x l ) )/dx=- ~ 戸 x)( →2 . 1 2 . 2項 , ( 2. 1 2. 1 8 ) ) .A の列 i ると c i = l と行 i の要素をすべて 0 でおきかえた行列を C とすると,

O~C;~A.C序 A

( C ;

は既約でない!). ( 2 )により p ( C ; )Oであるから,

(-l)n-1O. ゆえに(一 l)ncp'(p(A))=~(-l)n-l(f);(p(A)) >O. i = l 叫 p(A))=O, c p ' ( p(A))キ0であるから, p(A)は A の単純な固有値である. I

279

8 . 1 非負行列, M 行列

注意 8 . 1 . 2 既約でない n次正方非負行列 A に対しては, ( 1 ) , ( 2 )の代りに ( 1 ' ) p ( A ) ; ; : : ; ; oで , A は固有値 p(A)とそれに対応する“非負”の固有ベクトル

をもっ,

( 2 ' ) A 以B ; ; : : ; ;如 な る 任 意 の n次正方(非負)行列 B に対して p ( A ) ; ; : : ; ; p ( B ) が成り立つ.このことを示すには,

Ak→ A (k→

C X ) ) ' すなわち A に収束する

“既約”な非負行列 A kの列(存在する!)を考えればよい. 注意 8 . 1 . 3 非負正方行列 A は,非負ベクトル x を非負ベクトル y=Axに移 す.すなわち A:V n→ V nは 恥 の “ 第 1象限" {xI x 1 ,… ,X n ; ; : : ; ; 0 , Xキ O }を第 1象 限に写像する.この写像をベクトルの方向 x / l l x l l 2の写像とみなせば,球面 S=

{xI l l x l l 2 = l }の第 1象限からそれ自身への“連続”写像である.

sの第 1象限はコ

ンパクトであるから, B rouwer(ブロウエル)の不動点定理により少なくとも 1個 の不動点が存在する.その方向をもつベクトルを x とすれば Ax=11x, すなわち

A は非負ベクトル X を固有ベクトルとしてもっ,という議論もできる. 注意 8 . 1 . 4 (既約とは限らない) n次正方非負行列 A=[a;Jのスペクトル半径 p(A)は,任意の正ベクトル x=[x1,… , x 』Tに対して ~aiiXi

minj=l z = l , ・ ・ , n X i

区 aijぶ

mini=l i j = l ,…,n X

区 a;jあ

i = I , i = l , , …n X ;

紅 (A)~max

~aijぶ

i = l i = l , , …n X i

臼 (A)~max

( 8 . l . 6 a )

( 8. 1 . 6 b )

を満たす.実際,注意 8 . 1 . 2により, p(A)に 対 応 す る 非 負 固 有 ベ ク ト ル y=

y ;を y ; / ( y 叶…十Y n )でお [ y 1 '…,叫 Tを yけ … 十 Yn=lを満たすように規格化し ( きかえればよい), ~a 碑j=p(A)y; を i =l,… , nについて加え合わせれば,

j = l

試 立ij)yj=p(A)if yi=p(A) = l

j = li = l

( 8 . 1 . 7 )

n

j=l,… ,n )の“平均”が p(A)であることを表しているの を得る. これは ~aij ( i = l



( 8 . 1 . 8 ) m~~ ~a;j 印 p(A)~max 区 a;j. i = l ,, ni = l i = l , , …nz = l n ]と お く と p(XAX-1)=p(A)であり, XAX-1に 対 す る X=diag[x1,…,X ( 8 . 1 . 8 )は ( 8. 1 .6 b )に一致する . Aの代りにがを考えれば, p(Aり=p(A)である から, ( 8. 1 .6 a )が得られる. さらに, A が既約のときには, x として p(A)に対応する正ベクトルの固有ベク トルを選べば, ( 8 . 1 . 6 a )がすべて等号で成立する. (Aが既約なら ATも既約であ るから, ATについて同様にすると, ( 8 . 1 .6 b )がある正ベクトル X によって等号で

8 非負行列

280

成立する.) 注意 8 . 1 . 5 p(A)が A のスペクトル半径であるから, A の他の固有値の絶対値

i iがすべて はすべて p(A)以下であるが, A が既約な非負正方行列で“対角要素 a 正”のときには, p(A)以外の A の固有値の絶対値はすべて p(A)より“小さい” ことが示せる.実際, A の任意の固有値を入, A の固有値 p(A)に対応する正の固 有 ベ ク ト ル を x=[ x 1 ,… , Xn『 と し , 注 意 8 . 1 . 4に お け る と 同 様 X=diag

n ] , B = X賛 X とおけば,入は B の固有値でもあり, [ x 1 ,…,X p(A)=~aijx凸=~ 如 j=l

(i=l,…,n )

j=l

( 8 . 1 . 9 )

と表せる.ここで, G ershgorinの定理 ( 5 . 2 . 3項,“弱い形”で十分)によれば, A は n個の G e r s h g o r i nの円

C={zEC I lz-b』臼},

心九~t,如ー如~p(A)-bu }

のどれかに含まれる

( S . 1 . l O )

.cは[一 (p(A)-2如), p(A)]を直径とする円である. a;;>

0 (i=l,… ,n )な ら 如 >O (i=l,…,n )であり, C は原点を中心とする半径 p(A) の円 C。とは z=p(A)において接するだけで, c 。の内部に含まれてしまう. ( b i o z o =min如 と お け ば C;。は他のすべての C を包含する.)したがって, A=p(A)( こ れは A が既約だから単純)であるか I Al

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