環と加群 4000078054, 9784000078054

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環と加群
 4000078054, 9784000078054

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目次
まえがき
第1章 序説
§1.1 量と数
a) 量の加法と大小
b) 比としての実数
c) ベクトル量としての実数
d) 複素数
§1.2 2項関係
a) 数の間の関係
b) 集合の間の関係
c) 形式的な定義
d) 同値関係と分割
e) 順序集合
§1.3 写像
a) 写像の概念
b) 基本的な用語
c) 標準的写像
d) 写像の合成
e) 逆写像
§1.4 変換と関数の集合
a) 対称性と変換
b) 関数値による算法と順序
c) 関数のたたみ込み
d) 作用
第2章 算法
§2.1 算法をもつ集合
a) 形式的な定義
b) 算法に関して閉じた集合
c) 直積集合における算法
d) 写像の集合における算法
e) 同型
f) 2元集合の算法のすべて
g) 単位元
§2.2 準同型写像と合同関係
a) 準同型写像
b) 例
c) 像と逆像
d) 合同関係による商集合
§2.3 半群と群,算法概念の拡張
a) 結合法則
b) 一般結合法則
c) 生成と中心化
d) 単位的半群と群
e) 単位元・可逆元と準同型
f) 算法概念の拡張と準同型
g) 算法と準同型に関する基本事項
h) 群に関する基礎事項
i) 巡回群
第2章 問題
第3章 環
§3.1 環の概念
a) 定義,部分・商・直積環
b) 環の元の乗法的性質
c) 整除関係の形式論
d) Zと \bar{Z}_m
e) 同型と準同型
§3.2 環の構成
a) 分数半群と分数体
b) R加群 R^n と行列環 M_n(R)
c) K多元環K^n
d) 2次多元環
e) 4元数環
f) 半群環K〈G〉と表現
g) 整式環K[X]
h) 整式環 K[X_1, …, X_s]
i) 整級数環 K[[X]], K[[X_1, …,X_n]],など
§3.3 イデアルと素元分解
a) 合同関係とイデアル
b) 準同型定理
c) 分数環のイデアル
d) イデアルの生成
e) 可換体の単純拡大
f) 素元分解とその一意性
g) Gauss整域の構成
h) イデアルの和・積・交わり
i) 連立合同式
j) 直積分解と直和分解
第3章 問題
第4章 加群
§4.1 準備
a) 加法群
b) Map, Hom, End
c) 表現と反表現
§4.2 加群の概念
a) R加群
b) 環の上の加群
c) 部分加群とその生成
d) 線型関係
e) 体の上の加群
§4.3 準同型,商加群
a) 加群の準同型
b) 自由加群と行列
c) 線型独立系と生成系の個数
d) 商加群と準同型定理
§4.4 直和と分裂
a) 直和
b) 射影と直和因子
c) 完全系列の分裂
d) 移入的加群と射影的加群
§4.5 極大性と極小性
a) 帰納性
b) 極大・極小部分加群
c) Noether 加群と Artin 加群
§4.6 主イデアル整域上の加群
a) 自由加群の部分加群
b) 捩れがない加群
c) 零化域と捩れ加群
d) 直和分解と不変因子
e) 対角化定理
§4.7 線型環とその上の加群
a) K代数(多元環)
b) K線型環
c) 準同型
d) 線型環上の加群
第4章 問題
第5章 Hom と ⊗
§5.1 準同型加群
a) Hom_R,End_R
b) Hom_R(M, N) への作用
c) 完全系列との関係
d) 可除加群と移入的加群
e) 双対加群
§5.2 普遍性,テンソル積
a) 普遍性,圏と関手
b) 平衡写像とテンソル積
d) 係数変換
e) 諸性質
第5章 問題
第6章 可換環
§6.1 有限性と整元
a) 線型環の生成
b) 有限生成加群
c) 行列式
d) '整’ と ‘代数的’
e) 加群として有限生成の環
f) 整閉包と代数的閉包
g) 整閉整域 (正規環)
§6.2 イデアル,局所化
a) イデアルの包含関係
b) 有限生成環
c) 局所環,整域の局所化
d) Krull 次元
e) 条件付き極大・極小イデアル
§6.3 Dedekind 環
a) 主イデアル局所整域
b) 1次元整閉性,Dedekind 環
c) 分数体の部分加群,可逆イデアル
d) 分数イデアルの可逆性
e) 素イデアル分解
f) 一般性質と離散付値
g) Dedekind 環上の加群
§6.4 イデアルの根,Hilbert 環
a) イデアルの根
b) 準素イデアル
c) 根基
d) 幾何学的意味 (零点定理)
e) 分数体が有限生成の整域
f) Hilbert 環
§6.5 Noether 環
a) 素イデアルによる交わり表示
b) Artin 環と 0次元 Noether 環
c) 1次元 Noether 整域
d) イデアルの冪の交わり
e) 標高定理
f) 準素イデアル分解
g) 正規性の判定
h) Noether 性の判定
§6.6 環の拡大と素イデアル
a) 素イデアルの上げ下げ
b) 整拡大
c) 1次元 Noether 整域の拡大
d) 整閉包の有限性
e) 整式環
f) 体上の有限生成環
第6章 問題
第7章 非可換環と加群
§7.1 群の表現
a) 置換表現と線型表現
b) 表現の係数
c) 射影表現とよじれ群環
§7.2 単純・半単純加群
a) 単純加群の同型類
b) 線型空間と単純加群
c) 反対加群,再中心化性
d) 半単純加群
e) 等型成分
f) 有限条件,長さ
§7.3 半単純環
a) 半単純環
b) 単純成分
c) 例
d) 忠実加群
e) 稠密性
f) Artin-Wedderburn の定理
g) 代数的閉体上の線型環
§7.4 一般の加群
a) 一つの例
b) 大部分加群と小部分加群
c) 台座と根基
d) 組成列
e) 直既約分解
§7.5 環の根基,Artin環
a) 環の根基
b) Artin環
c) 根基と加群
d) 正則加群の直和分解
e) Artin環の冪等元とその応用
第7章 問題
第8章 分離性と単純環
§8.1 準備
a) 可換体上の双線型形式
b) Hom と ⊗ (続)
c) 線型環上の加群 (続)
d) 線型環のテンソル積と係数拡大
e) 線型環のコホモロジー
f) 群のコホモロジー
§8.2 Frobenius環と分離性
a) Frobenius環
b) (準)平均作用素
c) Frobenius環の準平均作用素
d) 可換体上の分離性
e) 分離性のホモロジー代数的意味
f) 分離的線型環のコホモロジー
§8.3 中心的単純環
a) テンソル積の中心とイデアル
b) Brauer群
c) 自己同型
d) 極大可換部分環 (体)
e) 分解体
f) 接合積
第8章 問題
参考書
解答・ヒント
問1.2
問2.46
問3.11
問3.7
第3章章末5
§4.3 1
§4.4 8
§4.6 5
第4章章末8
第4章章末22
§5.2 3
§6.3
§6.5
第6章章末20
§7.2 6
第7章章末9
第8章章末
欧文索引
和文索引
アイ
エカ

クケコ
サシ
スセ


チテト
ナニネハヒフ
ヘホマミヤユ
ヨリレワ

Citation preview

環と加群 山崎圭次郎著

岩波基礎数学選書

岩波書店

監修

小平邦彦 編集

岩堀長慶 河田敬義 藤 田 宏

小松彦三郎 田村一郎

服部晶夫 飯 高 茂

V

刊行にあたって —数学的現象の把握を一—-

現代の数学は形式主義の影響を強くうけていて,数学の本にも,定義,公理, 定理,証明を羅列した形式で書かれたものが多い.形式主義によれば,数学はそ れ自身は意味をもたない記号を与えられたルールに従って並べて行くゲームに過 ぎないということであるが,これは数学の最も本質的なものを見落しているので はなかろうか?

たとえば,公理的構成の規範となった H i l b e r tの幾何学基礎論

では,‘点'''直線.'等は意味のない無定義語,すなわち記号であって,‘猫'''雀・, 等で置き換えても一向差支えないことになっているが,これは事実に反する.実 際 , Hadamardが指摘したように,幾何学基礎論には殆んど毎頁に図が載ってい る.図を描かず,頭の中で図を想像することもせずに,論理だけによって H i l -

b e r tの幾何学基礎論を理解することは不可能であろう.このように意味を考え ない形式主義の立場に立つ限り,幾何学基礎論さえも理解できないのである. 私の見る所では,数学は実在する数学的現象を記述しているのであって,数学 を理解するということは,窮極において,その記述する数学的現象のイメージを 言わば感覚的に把握し,形式主義では捕捉できない数学の意味を理解することで ある. 岩波講座「基礎数学」は現代の数学の基礎部門の基本的な内容を上述の意味で 感覚的にわかり易く解説することを目標として編集された.._のたびのシリーズ はこの講座の中から学部程度の基礎教科に相当するものを選び「岩波基礎数学選 書」として編集しなおしたものである. この機会に章末問題に対して解答・ヒントを付し,学生の勉学に供するように した. 1 9 9 0年 6月

小平邦彦

v" u

目 次 刊行にあたって ま え が き .. ... . .. . . .. . . ... . ... . . .. . ... . ... . . .. . . .. . ... . . .. . . . .. 1

第 1章 序 説 §1.1 量 と 数 ................................................ 3 § 1 .2 2項 関 係 ・ ・・・・・・・~.-. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ , .・・・・・・ ・・・・・ ・・・10 § 1 .3 写 像 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 §1.4 変換と関数の集合・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32

第 2章 算 法 §2.1 算法をもつ集合・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 §2.2 準同型写像と合同関係・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59 §2.3 半群と群,算法概念の拡張・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・•.• ・・・74

第 3章 環 §3.1. 環 の

概念• ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 1 1

2 9 §3.2 環 の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 §3.3 イデアルと素元分解・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 0 6

第 4章 加 群 §4.1 準

備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 喜・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 0 5

§4.2 加群の概念・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・~;・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 1 0 §4.3 準同型, 商加群........................................・・・・・ 2 2 6 § 4 . 4 . 直和と分裂....;................・ .・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 4 1 §4.5 極大性と極小性.............................:・・・・・・・・・・・・・・ 2 5 7 §4.6 主イデアル整域上の加群・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 6 9 § 4 .7 線型環とその上の加群・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 9 1

第 5章

HomとR

§5.1 準同型加群........................・・ .・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 3 0 3





1 ・ 1 ・ 1 ・



§ 5 .2 普遍性,テンソル積..............・・・ . .・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・・・・ ・ ・・ 3 2 0

第 6章 可 換 環 §6.1 有限性と整元・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 3 4 7 § 6 .2 イデアル, 局所化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 3 6 0 § 6 .3 Dedekind環・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 3 7 3 i l b e r t環・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 3 9 9 § 6 .4 イデアルの根, H § 6 .5 Noether環・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 4 1 2 § 6 .6 環の拡大と素イデアル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 4 3 3

第 7章 非 可 換 環 と 加 群 §7.1 群 の 表現・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 4 5 3 § 7 .2 単純・半単純加群 4 6 8 :::: :::: ::: :: ::: 4 8 8 §7.3 半単純環・・・・・:::::::::::..::::::・:::::::: ・ ・ ・ ・ ・・ 5 0 7 §7.4 一般の加群.....................................'..・

§7.5 環の根基, Artin環・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 5 2 7

第 8章 分 離 性 と 単 純 環 §8.1 準

備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 5 5 3

§ 8 .2 Frobenius環と分離性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 5 7 0 § 8 .3 中心的単純環.................•'・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

参 考

書• ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

·590

・ 6 1 3

解答・ ヒ ン ト ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 6 1 5

索 引 陶



まえがき

代数学における基礎概念と手法は,数学のいろいろな分野に浸透し,それぞれ の場で栄養分を吸収して成熟する.

また,他の分野で注目された代数的構造ある

いは機構は,骨組だけがとり出されて代数学の対象となる. こういうわけで,‘体系’としての代数学は常に抽象的であり,その‘記述’は形 式的ならざるを得ない.代数学は,現代数学のこのような面を体現する使命を担 っている.代数学は,いわば数学の骨格であり神経組織なのである. ところで,代数学の‘理解’‘応用’‘研究’その忍のが,抽象的あるいは形式的に だけ進行するわけではない.そこには,血もあり肉忍ある実体に支えられた‘代 数的感覚’が働いている.ただ,この代数的感覚なるものは,幾何学的感覚の多 くに見られる本能的なものとは少々趣きを異にし,いわば‘運動神経’的なもので あって,訓練によって発達する場合が多い. 本書ではこのことに特に留意し,初等的な素材こそ代数的惑覚を養成するため の運動具,

という考え方で対処するつ忍りである.必要な知識は,大勢としては,

高校の数学の代数的部分程度でよい.線型代数の初歩に接した経験があればさら によい.必要なのは,“これは一体何なのさ?”と自らに問いかける精神の方であ る





反復的な基礎訓練を不要だと思う読者は,初めの方を適当に読みとばし,第 3 章あたりから腰を落ち着けて取り組むことを期待したい.本書の主題である‘環' は第 3章,‘加群’は第 4章でそれぞれ登場する.形式的にいえば,環とはスカラ ーの概念を,加群とはベクトルの概念を,それぞれの機能性を保ちつつ最大限に 一般化し,集団として把握したものである.この意味で,環と加群の理論は,線 型代数の‘一般化’であるが,同時に‘集約化’という面も現われるであろう.環に は独自の問題がある.可換環については,素因数分解にはじまる数論の方向への 基礎事項と,局所化を武器とする代数幾何学の方向への基礎的事項とが中心にな ろう.

また,非可換環については,半単純環の構造論を第一の頂点とし,群の表

現を加群その忍のとしてとらえる.

さらに,テンソル積を武器として,魅惑的な

2

まえがき

単純環の理論への入門を果したい.

最後に本書の構成について. 定理は,特に意識にとどめたい一般的事項を書き出したものであるが,これに 準ずる事項は

で示してある.

例は,本文の展開の論理的な筋からは省けるものが多い.

しかし,動機と背景

を納得し,感覚を豊かにし,応用の仕方を習得するためのものである.時には例 題の形式で与えてあるが,本質的な違いはない.その中の多くは,あとで一般論 の中に吸収される.実はそれこそが一般理論の進むべき道であろう. 第 2章以降の問は,原則的には本文と例を読めば自然に,あるいは機械的に確 かめられる内容に限られている.本文と例を消化し体得するためのものであるか ら,必ず自ら手を下してみることを期待したい.

3

第 1章 序 説

代数的構造とは,(いくつかの)集合に与えられた(いくつかの)算法や作用のことであ る . 第 1章では,算法や作用とよばれる忍のが,

どのように発生するかを眺めると共に,集

合と写像に関する最少限の説明をする.問を含めて論証的な部分は,あとで引用されるま で保留する読み方をして忍よい. この章を通じて,感覚的な素材の形式化に慣れることが望まれる.

§1.I 量 と 数 算法の基本的な例は,数の加法と乗法である. これらが量を計るという行為からどのようにして生まれるか, また加法と乗法のもつ法 則が量の把握という観点からどのような意味を忍っているかについて,眺めて行こう.そ の過程で,数が算法の対象であるばかりでなく,作用の主体ともなることが認められるだ ろう.

a ) 量の加法と大小 ばらばらなものの量――分離量ーーは,一つずつが単位となって計られる.計 量数としての自然数の概念はこうして生まれた. 有限集合

Aの元(要素)の個数を表わす自然数を J A iと書けば, I A I=I B I

は , A と B の元の間に 1対 1の対応がもれなくつくことを意味する.

B

A

空集合¢ の 元 の 個 数 0も自然数の仲間に入れよう. 集合

A,Bに対し,

図l ・l

4

第 1章 序 説

合併集合(結び)

AuB= { xl . xEA または XEB } ,

共通集合(交わり)

AnB={xixEAかつ xEB}

を考えるとき,自然数の和の定義は次式で与えられる.

AnB=¢

¥AUB¥= I A l + I B ¥ .

のとき

図l ・ 2

A

B

自然数についての和の算法――加法ーーは,上の定義から次の諸法則を満足す ることがわかる. ) ( 1 .1

( a + b )+c=a+( b + c )

(結合法則),

( 1 .2 )

a+O= O+a= a

(零の特性),

) ( 1 .3

a+b= b+a

(交換法則),

) ( 1 .4

a+c= b+c⇒ a=b

(簡約法則).

問I .I JAUB¥+JAnBl=IAl+IBIの意味を考えよ.一一 さて‘長さ','面積','重さ','時間’などの連続量について忍,同じ種類の量の 間では和が考えられる.そして分離量と同様に上の諸法則が成り立つ.ただし 0 は、零量’を表わす.

e s c a r t e sが指摘したよう 量という言葉は今日かなり広い意味で使われるが, D に,長さで表現できるものが基本的である.長さについていえば,和とは‘継ぎ

1~a-------1-----b三I a+b 図1 .3

足し’に他ならず,上の諸法則は図形的に明らかであろう. 量a , bに対し,量”が存在して

a+x=b であるとき, aは bより小さいか等しい(または bは aより大きいか等しい)と

5

§ 1 .1 量 と 数 いい, (または b~a)

a~b と書く. 次の諸法則も容易に認められよう.

( 1 .5 )

. a~a

( 1 .6 )

a~b,

b~c

==}

a~c

(推移法則),

a~b,

b~a

==}

a=b

(反対称法則),

( 1 .7 ) ( 1 .8 )

(反射法則),

. a~b· または b~a

(比較可能性).

問 I .2 ( 1 .1 ) 1 ,( 1 .2 )より論理的に ( 1 .5 ) ,( 1 .6 )を導けるかどうか考えてみよ.

b ) 比としての実数 一定の種類の量 a ,b ,…を考える.

aと書かれる: 量 aを n個くり返して加えたものは, aの n倍とよばれ, n na=a+…+a. l ご a-...._____、I~

図1 4

こうして,

自然数は量に作用し,量の倍率としての意味が与えられる.次の諸

法則は容易に認められよう.

( 1 .9 )

l a=a

( 1 .1 0 )

(m十 n ) a=ma+na

( 第 1分配法則),

( 1 .1 1 )

n(a+b)=na+nb

( 第 2分配法則).

. ( 1の特性),

問1 . 3 ( 1 . 1 )より ( 1 .1 0 ) , ( 1 .3 )より ( 1 .1 1 )を導くにはどうするか.ー一 特に分離量は自然数で表わされるから,自然数 m の n倍 nmが考えられる. こうして自然数の積の算法――乗法ーーが定まる.

( 1 .1 0 )を反復適用して次の法則が得られる. ( 1 .1 2 )

(mn)a=m(na)

注 意 有 限 集 合 A,Bの直積集合

(結合法則).



AxB={(x,y)lxeA,yeB} について次の等式が成り立つ.

6

第 1章 序 説

:~」ー

I

I

I

:

I

I

I :

I

~I I

I

:

:

I

I

・・・・•

図1 .5

A

J A x B J=J A J J B J . 自然数の乗法については,この観点から上の諸法則の意味を掴むことができる.次の法 則なども,

( 1 .1 1 )の反復適用と ( 1 .1 2 )との組合せから導けるのであるが,上の観点から

その意味は明瞭であろう:

( 1 .1 3 )





mn=nm

(交換法則).

さて連続量の計り方を考えてみよう.連続量には最小のものがないから,相対 的 に 扱 わ ざ る を 得 な い . 量 aが 量

bキ0の 何 倍 で あ る か を 調 べ る こ と , す な わ ち

方程式

a=n b を満足する‘倍率’としての nを 求 め る こ と が 問 題 と な る . n は 必 ず し も 自 然 数 と

1 .11)を 保 ち つ つ 実 数 の 概 念 へ して求まらない.こうして自然数の概念は法則 (

lご一b-------------1~ベ!~I~ 図

I O6

と 拡 張 さ れ る の で あ る . 上 記 の 実 数 nは a の

a:b あ る い は

bに対する比とよばれ, a.,

b

と書かれる. 注意

nbを乗法の結果とみれば, a,bから n を求めることは aの bによる‘除法’であ

る.これに対して, a,nから bを求めることも‘除法’とよぶことができる前者は包含除, 後者は等分除とよばれる.

これらは,自然数の範囲では交換法則に基づいて形式上区別さ

れないが,元来異質な操作を意味している.分数計算の意味づけに際してのまぎれの原因 はここにある. 比としての実数について,乗法の意味は自然に生まれる.

n=a/bは , bの み な

7

§1.1 量 と 数 らずあらゆる量に‘倍率’として作用し,同種類の量を対応させる.

自然数につい

1 .1 2 )が示すように,・ 一 般 の 実 数 m,nの 積 mnは , nの 作 用 に 続 い て m ては ( の作用を施すという合成の作用を与える実数として定義される.かくて任意の実

1 .1 2 )が成り立つ.このことから, 数 m,nについて (

a b a .= b C C が任意の量

a ,b ,C について成り立つことを知る.特に a b

a

ー ・ ー=ー =1 ba a に注意すれば,任意の実数 nキ0は逆数 nー1 をもち,

n n 1= n 1 n= 1

( 1 .1 4 ). が成り立つことになる. 注意

数の範囲が実数に拡がっても,乗法についての交換法則 ( 1 .1 3 )が保たれる.しか

しその根拠はやや深刻なので,ここでは説明を省略する. 実 数 の 和 m+nは,その作用が m と nの作用の結果を加えるものとして定義

1 .1 0 )は任意の実数について成り立つ。 される.そして (

1 .1 ) ( 1 .4 )も導かれる. 加法についての諸法則 (

これに基づいて,実数の

しかしながら,

ては,実数自身を量とみる観点に立つことによって,

この加法につい

より直観的に把握されるで

あろう.

c ) ベクトル量としての実数

1直 線 lの上で単位の長さを定めれば, l上の線分の長さは実数で表わされる. いま l上の線分に向きを考え,位置を無視して l上のベクトルを考えよう.す a

a ''""'"'''●

a

,>

図1 .7 なわち l上のベクトルとは‘向きをもつ長さ’のことである.これは l上の平行移 動と同一視することができる. 直 線 l上で単位の長さと共に基準となる向きを指定して,これを正(反対の向 きを負)とよべば,正または 0のベクトルが従来の実数概念とみなされる.かく て,負のベクトルに対応するものとして負の実数が自然に導入されることになる.

8

第 1章 序 説

こうして得られた一般の実数 a , bの和 a+bは,平行移動としての合成に他な a

b

C ・

a+b

d

>


-a

~

' 図 I .9

問1 . 4 ( 1 . l ) , ( 1 . 2 ) , ( 1 . 1 5 )から ( 1 .4) を導け.—―-

さて,上のように負の範囲にまで拡大された実数全体において,

a=b+c

となる正または 0 の実数 C の存在によって a~b が定義され,再び (1.

が成り立つ.

5 ) ( 1 .8 )

また,負の実数ー aのベクト Jレ量”への作用を



(-a)x=-ax

図1 1 0

1 .9 ) ( 1 .1 1 ) と定めることによって,すべての実数はベクトル量に作用し,再び ( が成り立つ. 一般の実数の積

nmは,実数 nがベクトル量としての実数 m に作用したもの



§1.1 量 と 数

と考えればよい.そして ( 1 .1 2 )が成り立つ.すなわち一般の実数についても, その作用について見る限り,乗法は作用の合成を意味するのである.そして一般 の実数

nキ0は逆数をもち ( 1 .1 4 )が成り立つ.

d )複 素 数 実数全部の集合 R に お い て は , 加 法 と 乗 法 が 定 め ら れ て い て , 法 則 ( 1 .1 ) '

( 1 .3 ) ,( 1 .1 0 ) ,( 1 .1 1 ) ,( 1 .1 2 )が成り立っている. ( 1 .2 ) ,( 1 .9 )を満足する.

しかも特別な実数 0 , 1は 法 則

また,各元 aeRに対して一 aと書かれる R の 元 が

対応して ( 1 .1 5 )が成り立ち, aキ0に対して a 1 と書かれる R の 元 が 対 応 し て

( 1 .1 4 )が成り立っている. このような集合は,一般に‘体’とよばれる . Rは交換法則 ( 1 .1 3 )を も 満 足 す る‘可換体’であるため,取り扱いが楽である.たとえば 2種 の 分 配 法 則 ( 1 .1 0 ) ,

( 1 .1 1 )は区別の必要がない. さて数の範囲は, この可換体という観点からは,

もう少し拡げておくのが好都

合である. 実数を直線上のベクトルとみなした観点を発展させ,平面上のベクトルを拡張

, fをとれば,任意 された数に見立てよう.平面上に互いに垂直な単位ベクトル e のベクトルは次の形に一意的に表わされる.

ae+bf・(a,beR ) . eの実数倍 a eを実数 a と同一視しよう.こうして平面上のベクトル全部の集 合

Cは R を含むことになる.特に eは 実 数 1と同一視される .fは通常 iと書

かれ, Cの一般の元 a+biは複素数とよばれる.

図I •I I

複素数の加法は,ベクトルとしての加法とする:

( a + b i )+( c + d i )=( a + c )+( b + d ) i . 実数はベクトルとしての複素数に作用しているが,

この作用を一般の複素数の

第 1章 序 説

10

作用にまで拡張しよう..それには,作用の法則 ( 1 .1 0 ) ,( 1 .1 2 )を 保 つ と い う 前 提 では,虚数単位 iの作用を定めさえすればよい.

しかも,法則 ( 1 .1 1 )を保つとい

,iへの作用だけを定めればよい.それらを う前提では, iの 1

i l= i ,・ii= -1 とする.

この結果,一般の複素数への作用は

i ( c + d i )=-d+ci でなければならず,これは直角回転である. さて作用の諸法則を前提として,一般の複素数の作用のあるべき結果を考えれ ば,複素数の乗法の天下り的な定義

( a + b i ) ( c + d i )=( a c b d )+(ad+bc)i に到達する.これを基にして,複素数全体 C が 可 換 体 と な る こ と を 確 か め る の は一本道である.

問1 .5 C が可換体であることを確かめる努力をしてみよ.ー―-

+biを 複素数 a rc o sO+irs i n0 という形に表わしたものを極形式といい,

(r~O)

rを絶対値, 0を 偏 角 と い う . こ の 複

( a + b i )z

-



” ‘

0

I

z

J

a

--— 一 一 ―

I





図1 .12

素数を乗ずる作用は, r倍の拡大と 0回転の合成である.こうして,複素数の概 念は平面上のベクトルの‘比’としても意味づけられるのである.

§I.2 2項 関 係 二つずつの忍のの間で考えられる一定種類の関係として,大小・整除・包含・対等など とよばれる忍のがある. これらを例として,一般に 2項関係といわれる概念を明確にする. 特に,}順序関係と総称されるもの,同値関係と総称されるものが, よく用いられる.

§ 1 .2 2 項 関 係

1 1

a ) 数の間の関係 実数 a , bに対して,

a~b

(b~a)

であるかどうかは原理的に定まっている. この大小関係は, すでにあげた反射・ 推移・反対称の法則を満足する.

, bに対して, 自然数 a aが bを割り切る

( bが aで割り切れる)

かどうかは原理的に定まっている. この整除関係を

alb と書くとき, 次の法則が成り立つ.

( 1 .1 6 )

a la ,

( 1 .1 7 )

aI b , b l c⇒

aI c ,

( 1 .1 8 )

a l b , bla ⇒

a=b .

問I .6 これらを示せ.ー一 1 .5 ) ,( 1 .6 ) ,( 1 .7 )において,記号ニを記号 これらの法則は,大小関係の法則 (

Iでおきかえたものに他ならない.そこで,やはり反射・推移・反対称法則とよ ばれる. ところでこの整除関係は,

( 1 .8 )に対応する比較可能性の法則を満足しない.

たとえば,自然数 2 , 3をとれば, 213でもなく, 312でもない. 次に整数 m~O を固定して,整数 a,b に対して

m が a-bを割り切る

j

という関係を考えよう. これを m を法とする合同関係 ( congruencemodulom) といい, a三 b (modm)

と書く.いま m を固定しているので, この関係を簡単に a三 b

と略記すれば, 次の法則が成り立つ.

( 1 .1 9 )

a三 a

( 1 .2 0 )

a三 b b三 c ⇒

( 1 .2 1 )

a三 b⇒ b三 a

a三 c (対称法則).

第 1章 序 説

1 2

問I .7 これらを示せ.—――

( 1 .1 9 ) ,( 1 .2 0 )は,前と同じ理由で,それぞれ反射・推移法則とよばれる.合 1 .2 1 )を満足する 同関係は反対称法則を満足せず,正反対の性格をもつ対称法則 ( のである. さらに特殊な関係の例をあげよう.

,yに対して 実数 x

が+炉 =1 という関係を考える.この関係を仮に x , . . . , yと書こう. この関係は反射法則を満足しない.

l x l > lで あ る よ う な

X に対しては

x , . . . , x

が成り立たないばかりか, x , . . . , y となる実数 yが一つもない.推移法則も駄目で ある.

しかし,式の特殊性から対称法則は成り立っている.

,yをとり出す範囲をそれぞれ なおこの関係では, x S= [1 ,l ], T= [ O ,十 o o [ に制限すれば,次の法則が成り立っている.

( 1 .2 2 ) 任意の xeSに対し, x , . . . , yとなる y e Tがただ一つ存在する.

b )集合の間の関係 集合 E を固定し,その部分集合 A,Bに対して 八が

Bに含まれる

( Bが A を含む)

という関係を考えよう.この包含関係を

A~B

(または B~A)

と書くとき,次の法則が成り立つ.

( 1 .2 3 )

A~A,

( 1 .2 4 )

A~B,

B~C •

A~C,

( 1 .2 5 )

A~B,

B~A •

A=B.

問I .8 これらを示せ.ー一 これらの法則は,実数の大小関係と同じく,それぞれ反射・推移・反対称法則 とよばれる. 次に,集合 E の部分集合 A,Bに対して

A の元と B の元とが 1対 1に対応する という関係を考えよう. これを対等関係といい,

1 3

§ 1 .2 2 項 関 係

A : : : : : : ' . B と書く.次の法則が成り立つ.

・ ・ A ' . : : : : ' . ' . A ,

6 ) ( 1 .2 ( 1 .2 7 1

A ' . : : : : ' . ' .B , B ' . : : : : ' . ' .C ⇒ A ' . : : : : ' . ' . C ,

( 1 .2 8 )

A ' . : : : : ' . ' .B ⇒ B ' . : : : : ' . ' . A .

問I .9 これらを示せ.ー一 これらの法則は,それぞれ反射・推移・対称法則とよばれる。

c ) 形式的な定義 集合 S ,Tがある. S=Tでもよい.

Sの元と T の元の間の関係が与えられるとは,関係のある元 xeSと yeT の対は, y )の全体が原理的に指示されることである.

この観点から,直積集合

SxT={ ( お , y)I XE s ,yE T}

SXT

図l ・13

s の部分集合 R を , S ,Tの元の間の関係とよぶことができる.これは 2元ずつの 間の関係なので,詳しくは 2項関係 ( b i n a r yr e l a t i o n )とよばれる. 与えられた 2項関係を R とするとき,

,

xRy

とも書くことにしよう.いま

(i) 任意の

は ,y )ERを

S=Tの場合に,法則

X E Sについて,ぉ R叫

( i i ) 任意の X ,Y ,zE Sについて, xRy, yRz ⇒ 訊 z , ,yeSについて, ( i i i ) 任意の x xRy⇒ yR叫 ( i v ) 任意の x,yeSについて,

14

第 1章 序 説 ぉRy,

yRx ⇒

X

=Y,

を,それぞれ順次に,反射・推移・対称・反対称法則とよぶ.そして,

( i ) ' ( i i ) ' ( i i i )を満足する関係 R を , Sにおける同値 ( e q u i v a l e n c e )関係, ( i ) ,( i i ) ,( i v )を満足する関係 R を , Sにおける順序関係 ( o r d e r ) と総称する. すでにあげた例についていえば, ‘整数全部の集合 Z における合同関係", “集合 E の部分集合全部の集合沿 ( E )における対等関係’’ は同値関係である.

また,

“実数全部の集合

R における大小関係",

“自然数全部の集合 N における整除関係",

咽 (E)における包含関係” は順序関係である.

i ) ' ( i i )だけが確認されている関係 なお,法則 (

R は,前順序関係 (preorder)

とよばれることがある.たとえば,

"Zにおける整除関係” 1ー 2 , -212で あ る け は,前順序関係であるが順序関係ではない.たとえば, 2 れども 2=!= — 2 であって,

( i v )が成り立たない.

v )を満足する順序関係は,全順序関係 ( t o t a lo r d e r )と また,次の比較可能性 ( よばれる.

( v ) 任意の X,yeSについて, xRyまたは y R訊 たとえば, R における大小関係は全順序関係である. しかし,すでに見たよう に N における整除関係は全順序関係でない.

また,沿 ( E)における包含関係忍,

E が 2元以上を含めば全順序関係でない. 問I .I 0 このことを示せ. 問I • II 集合 Sにおける前順序関係 R に 対 し , 新 し い 関 係 xR'yを‘な Ry かつ yRぷによって定義すれば, R'は Sにおける同値関係である.このことを 示せ.

d ) 同値関係と分割 集合 Sにおける同値関係を考える.、

§ 1 .2 2 項 関 係

1 5

Sの元の間の相等関係

x=y はもちろん S に お け る 同 値 関 係 で あ る . 一 般 の 同 値 関 係 を , こ の 相 等 関 係 に 帰 着させる原理を述べよう.それは,新しい概念を導入する際にしばしば用いられ る方法でもある.

Sにおける同値関係 R が与えられたとし,各元 aESに対して Sの部分集合 ii={ xES iaRx} を考える.このとき次が成り立つ.

( 1 .2 9 )

aea

( 1 .3 0 )

i i =b⇔ aRb.

[証明] ゆえに

反射法則

aRaは aEiiを意味する. i i = bならば, b6bより bEi ,

a R b . 逆に aRbならば,任意の xeSについて推移・対称法則より aRx⇔ bR訊

ゆえに

a = b .a

注意上の証明から分るように, S における 2項関係 R についての性質 ( 1 .2 9 ),( 1 .3 0 ) は , R が同値関係であることと同値である.

a(aeS)の形に表わされる Sの部分集合を,同値関係 R に関する同値類とい ぅ.同値類全部の集合を

Sと書こう.これは次の性質をもつ.

s

@ 図1 1 4

(i) 任意の AESは空でない. ( i i ) 任 意 の 咋 Sは或る AESに属する. (iii) 任意の A,BES に対し, A=B または AnB=~.

問I .12 これらを示せ.ー一 一般に,上の性質をもつような

Sの部分集合の集合 Sを , S の分割という.

1 6

第 1章 序 説

Sにおける同値関係 R によって上のように定められた S の分割 5は , R を明

/Rと書くこともある. 示して S

また,∼,三,'.:::::, などの同値関係の記号を使っ

て , S f-,Sf 三, Sf~ などと書くことも多い. SfRは Sの 部 分 集 合 全 部 の 集 合

沿( S )の部分集合である. この集合 SfRを , Sの R による商集合 ( q u o t i e n ts e t ) という. 代表例として, Z における m を法とする合同関係の場合をとりあげよう. の場合,商集合



Zは通常 Zmと書かれる.具体的には次の通り. Zm={ O ,I ,…,面二1 } ,

ただし

0= { ・ ・ ・ ,

-2m, -m,

1= { " ・ , 1-2m, 1-m, 元二1= { ・ ・ ・ , -m-1,

0 ,

m ,

肌,..,}, 2

1 , 1 十m , 1+2m, …},

・ ・ } . 1 , m-1, 2m-1, 3m-1, ・

さて,逆に集合 S の任意の分割 5から出発してみよう.各元

aを 含 む 咋 義しよう.

aeSに対して,

5が確定する.このとき, Sにおける関係 R を ( 1 .3 0 )に よ っ て 定

この関係 R は同値関係であることが直ちに認められよう.

.1 3 ・ このことを確かめよ.z。は何か.—~ 問I こうして,集合 Sにおける同値関係と Sの分割とは, 1対 1に 対 応 す る . つ まり同値関係を考えることと,分割を考えることは同値なのである.そして ( 1 .3 0 )は , S の元の間の同値関係 R が,商集合

S / Rの元の間の相等関係に帰着

することを示している.粗雑ないい方をするならば, aRbであるような Sの 2 元a , bを同一視することによって,商集合 S/Rの元が得られるのである. 上の考え方による概念構成の一例として, 自然数全体 N から整数全体 Z を構 成する筋道を述べてみよう. まず S=NxNにおいて, 2項 関 係 ∼ を

( a ,b ), . . ,( a ' ,b ' )⇔ a+b'=b+a' によって定める.この関係は同値関係である.

問I .1 4 このことを確かめよ.ー一

f-の元を整数とよぶことができる.実際,われわれはすでに そして商集合 S 整数概念をもっているので,このことは, Sf-の元

( a ; 7 J 了に整数 a-bを 対 応 さ

§ 1 .2 2 項 関 係

1 7

せることによって確認されよう.詳しくは例 2 . 4 2で扱う。

e ) 順序集合 順序関係が与えられた集合を順序集合という.見易いように,順序関係を三 で示そう. 順序関係三が与えられた順序集合 Sの部分集合 T に対し, Sにおける Tの 上界,

最大元,

極大元,

上限,

下界,

最小元,

極小元,

下限

とよばれる S の元を定義しよう.ただし,これらは存在しないこともある。 まず, aeSが T の上界であるとは, (i)

任意の xeT について,

x~a

が成り立つことである.同様に, aが Tの下界であるとは

(i)I 任意の XET について, a~x が成り立つことである.

T の上界 aが T に属するとき,すなわち ( i i ) aET

であり,任意の xeT について,

x~a

が成り立つとき, a を T の最大元という.同様に,

(ii)'aeT であり,任意の XET に?いて, a~x が成り立つとき, a を T の最小元という.

Tの最大(小)元は,存在するとき一つに限る. さて,上の条件を弱めて

( i i i ) aET であり, a と異なる任意の xeT について a~x ではない が成り立つとき, aを T の極大元 ( maximale l e m e n t )という.同様に,

( i i i ) ' aeT

であり,

a と異なる任意の印 ET について x~a ではない

が成り立つとき, aを T の極小元 ( minimale l e m e n t )という. たとえば, Sとしてすべての自然数の集合, T として Sから 0と 1を除いた

.1 5 ) , ものを考えよう.そのとき,整除関係叫 yに関して(図 1 上界は 0のみ,

最大元,極大元は存在しない,

下界は 1のみ,

最小元は存在しない,

極小元は素数である.

問I .1 5 最大(小)元は必ず極大(小)元であることを示せ. 問I .1 6 全順序集合においては,極大(小)元が最大(小)元であることを示

1 8

第 1章 序 説

8 1 2 1 8 2 02 73 04 5 5 0 7 51 2 5



6

4

1 0

1 5

2 5 5

3

2 ー

図 (.(5 せ.—

順序集合における極大(小)元の存在条件を与える次の定理は基本的である.

定理 I .I ( Z o r n ) 順 序 集 合 Sにおいて,次の条件が成り立つならば, S の極大(小)元が存在する.

" Sの任意の全順序部分集合は Sにおいて上(下)界をもつ.'’

この定理は,集合論の公理系をどのように選ぶかというレベルで問題となる事実

注意

である.

したがって‘証明’は述べない

次に,順序集合

Sの部分集合 Tに対し,その上界全部の集合の最小元,すな

わち (iv)

任意のの ET について x~a であり,任意の XET について x~b とな る元 beS に対し a~b

が成り立つような元 aeSを ,

( i v ) ' 任意の

T の上限という.同様に

X E T について a~x であり,任意の XET について b~x とな

る元 beS に対し b~a

が成り立つような元

aeSを , Tの下限という.

たとえば,すべての実数の集合

S=Rにおいて大小関係を考えるとき,上(下)

界をもつ部分集合に対して必ず上(下)限が存在する.

注意 これは,‘実数の連続性’を示す基本的な事実である. また,一つの集合

Eの 部 分 集 合 全 部 の 集 合 S=沿( E )において包含関係を考え

2項 関 係

§ 1 .2

1 9

るとき,任意の A,BeSに対して, S の部分集合 { A ,B}の上限と下限は

AUB,

AnB

で与えられる. AUB

B

A

図,.1 6

この例にならって,一般の順序集合

Sにおいて, 2元 か ら 成 る 部 分 集 合 T=

{ x ,y}の上限と下限は,それぞれ xuy,

xny

と書き表わされる.

問I .1 7 すべての自然数の集合

N において整除関係を考えるとき, m,nEN

に対して mun, mnnは何を意味するかをいえ.ー一 順序集合 S で,任意の 2元の上・下限が存在するとき,次の諸法則が成り立つ.

( 1 .3 1 )

の Ux= 叫

( 1 .3 2 )

のUy=yU叫

xnx=x



xny=ynx

(幕(ベキ)等法則), (交換法則).

これらは明らかであろう.

( 1 .3 3 )

(xUy)Uz= xu(yUz)

( 1 .3 3 ) '

(xny)nz= xn(ynz)

(結合法則).

[証明] x~ のu(yUz), y~yUz~xu (yUz) ゆえ, xuy~xu (yUz). また

z~yuz~xu (yUz). ゆえに (xUy)Uz~xu (yUz). 逆向きの不等号も同様で ( 1 .3 3 )が成り立つ. ( 1 .3 3 ) 'も同様である.' ( l ,3 4 )

xUの ( ny)= 叫

問I .1 8 これを証明せよ.

xn(xUy)=x

(吸収法則).

第 1章 序 説

20

§I.3 写 像 集合を動的にとらえる道具として,写像の概念は極めて重要である. この節では,その 形式的な定義と感覚的な理解を結びつけることから出発し,いくつかの基本的な用語と共 に標準的な写像の例をあげる. 写像は,それらの合成を考えることによって機能的に働く・ その様子を視覚化する忍の としての‘図式'は,慣れるにしたがって,代数的機構の直載的な理解を助ける忍のとなろ

. ぅ この節では,写像 f:S→ Tが‘ひき起す’同値関係 Rfとか,写像 fが 同 値 関 係 R と

fが写像 J:S/R→ T を‘ひき起す'とかいういいまわしに対す

‘両立する'とか,また写像

る感覚的慣れが特に望まれる.

a )写像の概念 写像の概念を集合論の立場で形式的に定義すれば,次のようになる. 集合

S ,T の 元 の 間 の

“任意の

2項 関 係 , す な わ ち SxTの 部 分 集 合 fが , 条 件

xeSに 対 し て , 辺fyとなる yeT がただ一つ存在する”

を満足するとき,

fを Sから Tへの写像といい, f:Sー→ T

あるいは

s _ _ ! _ _T

と書き表わす.

T •リ

図1 .1 7 笠f yであることは,

"xに yが対応する",

"xが yにうつる”

などといい表わし,

/ :x→y

f

あ る い は ば 一 →y

と書く. X ESに 対 し て 一 意 的 に 定 ま る

yeTを

f ( x ) , f x ,

1 x

などと書く.なお,この‘左記法’に対して,

( x ) f , . 吋,が

§ 1 .3 写 像

2 1

などの‘右記法’を用いることもある.ただし本講では原則として f(x)と い う 記 法を用いよう. さて,写像の定義は上の通りであるが,写像の具体例が登場する仕方, れをわれわれが直観的に把握する仕方は様々である.写像概念の本質は, 任意の元をとると,その元に対応して,

またそ

" Sの

Tの 元 が 一 つ だ け 確 定 す る こ と が 原 理 的

に分っている”ということにあり,対応のメカニズムは隠されていてもよい.



一戸 図l ・1 8 のことが確認される限り,写像の"取り扱いに際して,直積集合の部分集合という ような静的な記述をとる必要はない. いくつかの例をあげよう. い ま 平 面 の 上 を 運 動 す る 点 P があるとする .Pの 運 動 は , あ る と き は 速 く あ るときはおそい.時には自らの軌跡を逆行することもありうる.このような運動

p( t )

図I O1 9

を 完 全 に 記 述 す る に は , 各 時 刻 tにおける P の 位 置 P ( t )を示せばよい. し た が って,運動を観察する時間に対応して区間 Iを定め, Iか ら 点 集 合 と し て の 平 面

Tへの写像を考えることが, T上 の 点 の 運 動 を 考 え る こ と に 他 な ら な い . そ れ は ,

IxTの部分集合として記述することができる.

次に,多くの点の移動を考えよう.ただし,各点の動きは,出発点と到着点だ けに注目して途中の経過を無視する.たとえば平面

T上 の 図 形 Sの平行移動は,

第 1章

2 2





Sの各点が指定された向きと大きさの移動を一斉に行なうことであると考えられ る.かくして, 点集合 Sから点集合としての平面 Tへの写像を考えることにな -

-

-

□戸口二三

T ・

図l ・ 20 る.それは SxTの部分集合として記述することができる. 関数に目を向けよう.関数は,今日でこそ写像とほとんど同じ意味で用いられ るが,昔は変数を含む式で表わされたものに限られていた. たとえば

y =がーが という式があれば,変数 yは変数幻の変動に応じて変動する.上のように y=. . . という形の式であれば,”の値に対して yの値が確定するから, 印 の 変 域 か ら

( yが実変数ならば)実数の集合 R への写像が得られる. たとえ x,yの関係が 炉—吋y ーが =0 ヽ 、 IAIIX

/ [ / ⑳ / / / / /

/ / / /







図l ・ 2 1

のようであっても,この場合は X の実数値に対して yの実数値が一つだけ確定 するので, 写 像 R→ R が得られる.ただし上の場合は, y を X の簡単な式で表

i r i c h l e t わすことができない. 一般に,式を離れて関数概念をとりあげたのは D であった. 関数 y=f(x)を写像とみるとき, 写像の形式的定義から, 或 る 直 積 集 合 の 部

§ 1 .3 写



23

分集合を考えることになる. それは,はじめの関数のグラフとよばれるものに他 ならない. 有限集合

S={ a ,b ,c ,・ ・ } から集合

Tへ の 写 像 fによって, a ,b ,c ,… に そ れ ぞ れ





a ' ,b ' ,c ' ,・ ・ ・

が対応すれば, 写 像 fは次の写像表で表わされる. 表 l ・l

a a,

写像表は次の形に単純化され, それ自身が写像を示すものとして取り扱われる ことが多い:

t = ( a b c ・ ・ ・

a ' b ' c ' . . . ) .

卸字は任意である.たとえば 注意 写像表で S の元を並べる)l

( : ,: ,: , )=( : ,: ,: , ). b ) 基本的な用語

fを集合 Sから集合 Tへの写像とする.

そのとき S は fの定義域とよばれる.

Sの部分集合 A に対し, T の部分集合 { / ( x )IxeA} を , fによる A の像といい, f (A)と書く.特に Sの像 / ( S )を fの値域あるい

はfの像という. Im/と書くこともある.

fの値域が T と一致するとき,すなわち条件 ( i ) 任意の yeTに対し, f ( x )=yとなる xeSが存在する が成り立つとき,

fを Sから Tへの全写像あるいは Sから Tの上への写像とい

. ぅ 注意全写像 ( s u r j e c t i v emapping)は圏論的観点から全射 ( e p i m o r p h i s m )とよばれ ることもある.全写像を記号→>で示すことがある.



2 4

第 1章 序 説

問I .1 9 写 像 f:S→T が全写像であるかどうかを写像表の上で実際的に判定 する仕方をいえ.ー一

T の部分集合 B に対し, Sの部分集合 {XESげ( x )EB} を fによる B の逆像といい, fーi ( B )と書く.特に T の 逆 像 fーi(T)は fの 定 義 域 S と一致する.

T の元 yに対し, fー1( { y } )を fー1( y )と略記する.これは fの 値 域 に 属 す る

7

図1 . 2 2 元 y に対して空でなく, y上のファイバー、とよばれる.

ファイバー全体の集合

S={ / ー l( y )I YE/( S ) } は Sの分割である.これを

fのひき起す Sの 分 割 あ る い は fの余像という.

Coimfと書くことがある. ファイバーが常に一つの元から成るとき,すなわち条件

( i i ) 任意の yeTに対し,/(の) =yとなる xeSは高々一つである が成り立つとき,

fを Sから Tへ の 単 写 像 あ る い は Sから Tへ の 1対 1の写

像という. 注意単写像 ( i n j e c t i v emapping)は,圏論的観点から単射 (monomorphism)とよば れること忍ある.単写像を記号

H で示すことがある.

i i )は次のいずれとも同値である. 単写像の条件 (

( i i ) / 任意の”,ぷ ESについて,ばキぷ ==}f(x)圭f ( x ' ) . ( i i )II 任 意 の ” 心'ESについて,

fは) =f(x')=が炉=ぷ.

問1 . 2 0 写 像 f:S→ T が単写像であるかどうがを写像表の上で実際的に判定 する仕方をいえ.ー一 写 像 f:S →

Tが全写像かつ単写像であるとき, fを全単写像あるいは Sから

Tの上への 1対 1の写像という.

これを S~T と書くことがある.

: 令. .

25

§ 1 .3 写 像 注意

全単写像 ( b i j e c t i v emapping)は,全単射あるいは双射とよばれること忍ある.

問I .2 1 全単写像の写像表の特徴をいえ. c ) 標準的写像 集合の一般的取り扱いに際して,

自然な仕方で定義される写像のいくつかに注

目し,関連する用語と記号を述べる. 集 合 Sが 集 合 T の 部 分 集 合 で あ る と き , 任 意 の の ESに ” 自 身 を 対 応 さ せ て 自然な単写像

( 1 .3 5 )

s

— T

が得られる.これを包含写像といい, S½T と書くことがある.

特に S=Tと し て , 包 含 写 像 S→Sは Sの恒等写像とよばれ, i d sと書かれる. これは全単写像である.

問I .22 集 合 Sから Sの 部 分 集 合 全 体 の 集 合 沿 ( S )へ の 自 然 な 単 写 像 を 考 え ょ.—

集合 S 1 , S 2がある.任意の ( X 1 ,叩) ES 1XS2に対し,

P i(x1,叩 ) = 功 とおいて,

自然な全写像

P 1 :S 1XS2ー→ S 1

( 1 .3 6 ) が定められる.

これを第 1成分への射影という. ー

2 s x s

t

同 様 に , 第 2成 分 へ の 射 影 と よ ば れ る 全 写 像

: か S1XS2―→ S2 が定められる. 集合 S ,T 1 ,T2に つ い て , 写 像

x

ーー

P l 11

一 一

図 l・ 23

‘ ‘ , / 2

・l11



xー ︵

.

. 2 -

P-

︳︳

︳︱ 一 ︱

-︳

x2

︱︱ sz -V-

X1

第 1章 序 説

26

/i: s ー→ T 1 ,

八: S —→ T 2

があるとき,任意の xeSに対して

( / 1 ,/ 2 ) ( x )= ( / 1( x ) ,た _( x ) ) とおき,

自然な写像

) : S -→ T1XT2 ( / 1 ,八

( 1 .3 7 ) が定められる. 特に S=T1=T2のとき,

( i d s ,i d s )を Sの対角線写像という.その値域 Lis={ ( x ,x )IxES}

を SxSの対角線集合という.

問 , .23 Sから

Tへの二つの写像 f,gに対し,(!,g )による L I Tの 逆 像 は S

のどんな部分集合か.(これを f,gの差核という.)

一一



集合 S 1 ,S 2 ,T i ,T2について,写像

/ 1 :S 1

Tぃ 八 : S 2ー→ T2

が与えられたとき,任意の ( x 1 ,叩 ) ES 1Xふ に 対 し て

(/1X八 )( X 1 ,叩 ) =( / 1⑰),八(ふ)) によって,写像

/1X八 : S1XS2ー→ T1XT2

( 1 .3 8 ) が定められる.これを 集 合 Sの分割

/ 1 ,八の直積写像という.

5が与えられたとき,任意の

つの元 E Sを対応させ,

( 1 .3 9 )

xeSに対して, X を 含 む た だ 一

自然な全写像 冗:

S→5

が定められる.

図l ・ 2 ' 4

逆に任意の写像



J:S

T

§ 1 .3 写 像

27

fのひき起す Sの分割(=!の余像) S={/-1(y)I YE/( S ) }

が与えられたとしよう.これに対して,

に対応する同値関係を R1と書けば,

( 1 .4 0 )

X凡

ぷ⇔ f ( x )=f(ぷ )

が成り立つ.この同値関係 R1を fのひき起す ( i n d u c e )同 値 関 係 と い う . 上 記 の分割は商集合 S/R1 である.このとき,対応 1-l(y)~y が自然に定まり,単写 像

] :S=S/R1ー→ T

( 1 .4 1 ) が得られる.



T 図1 . 2 5

もう少し一般に,集合 Sにおける或る同値関係 R について, ( 1 .4 0 )より弱く, 条件



( 1 .4 2 )

( の ) xRぷ ⇒ /

=f(x')

が成り立つとしょう.このとき, R は fと両立する ( c o m p a t i b l e )という.そし

/Rの元に対して,それに属する Sの元” て R に関する任意の同値類すなわち S



( x )は同値類のみで定まる. こうして写像 の像 f ( 1 .4 3 ) が定められる.これを

/ :S/R

T

fがひき起す自然な写像という.

問 , .24 fと fの値域は一致することを示せ. 問 , .25 自然な全写像 f:Z→ Znを考える. nの倍数 m を法とする合同関係 R は f と両立し,全写像 /:Zm→ Znがひき起されることを確かめよ.ーー 以上の自然な写像はいずれも標準的写像 ( c a n o n i c a lmapping)として引用され よう.

第 1章 序 説

28

d ) 写像の合成



集合 S ,T ,U の間の写像

/:Sー→ T ,

g :T

U

に対し,対応

x← →g ( f ( x ) )

図1 . 2 6

によって定められる Sから Uへの写像を,!,gの合成写像といい, gヅ で 表 わ す :

g o f :Sー→ U. ri:i~1.26

t=(~i~), g=(!i~)

に対し gof の写像表を書け.ー一

写像 h:S → U について

h=g o f が成り立つことを,図式

入 /

h s~ u

が可換であるといい表わす.

また,図式 p

S —• V

l 1 q l T —• U g が可換であるとは,

gof=q o p

29

§ 1 .3 写 像

が成り立つことを意味する. 一般に,いくつかの集合の間に張りめぐらされた写像が矢印で示されていると き,これを図式とよぶ.一つの集合が異なる場所に重複して書かれていてもよい. この図式が可換であるとは,矢印をつないで一つの道をつくるとき,それが示す 写像を矢印の順序に合成した結果が,出発点と到着点のみに依存するということ である.

l

1 1 1

T 1← - T1XT 2ー→ T 2

T1 ←—-T1XT2- れ

一般の写像

/:Sー→ T,

↓ 1 2

恥 / 2

T

s~SIR

S1 ユ s心 S2 ユ~S2

~ 『(~

f ー /

すでに述べた標準的写像について,次の図式はいずれも可換である.

g : T —• U ,



h :U

V

に対し,次の結合法則が成り立つ.

h o( g o f )=( h o g )o f .

[証明]

両辺における写像の合成は確かに定義され,いずれも Sから Vへ の

写像となる.任意の xeSに対し,

( h o( g o / ) ) ( x )=h((go/)(x))~h((J(/(x))), ( ( h o g )o f ) ( の )

=(hog)(/( の ) ) =h(g(f( x ) ) ) .

したがって, h o ( g o f ) ,( h o g ) o fは一致する.' 上の法則は,図式

, D < f . s' T

において,三角形

g

}U

STU,TUVがそれぞれ可換であれば,全体として可換になる

ということを意味する. 恒等写像との合成については次が成り立つ.

第 1章 序 説

' 3 0

f0 i d s= f= i d r 0 / .

e )逆写像 集合 S ,Tの間の写像



/ :S-

T,

g : T― 心

があるとする.これらに関して条件

( i ) 任意の xeS,yeT について, f(x)=Y ⇔

X

=g(y)

□□

-~--y

図1 . 2 7 が成り立つとき, gはfの逆写像,

fは gの逆写像であるという.

上の条件は次の条件と同値である.

( i i ) gof= i d s , fog= i d r・

[証明] ( i )==}( i i ) 任意の xeSをとる.いま f(x)=y とおけば, g ( / ( x ) ) =g(y)であるが, ( i )より g ( y )=xゆえ, ( g o f ) ( x )=x. よって g0f=ids. 同 ・ 様に /0g=idr

( i i )⇒ ( i ) 任意の XEs , yE Tをとる.いま f(x)=y とすれば, g(/(x)) =g(y)であるが, ( i i )より g ( f ( x ) )=Xゆえ, x=g(y). 逆も同様である. I さて,一つの写像

/ :sー→ T が任意に与えられたとき,

fの逆写像は存在するとは限らない.逆写像の存在は,

全単写像であること,すなわち次の条件と同値である.

( i i i ) 任意の yETに対し, f(x)=y となる XESが一つだけ存在する.

[証明] f の逆写像 gが存在するとする.任意の yeTに対して, x=g(y)と おけば ( i )により f(x)=yである.またこのような xeSに 対 し て 再 び ( i )より

31

§1.3 写 像

x=g(y)ゆえ,

X は一つだけである.すなわち

( i i i )が成り立つ.

i i i )が成り立てば,各 yETに対して f(x)=y となる xESが確定する 逆に ( ので, y に X を対応させて写像 g :T→ Sが 定 ま る . こ の と き , 明 ら か に ( i )が 成り立つ. I 上の証明の後半は,与えられた全単写像の逆写像の作り方を示している.

また,

この考察から,写像 fの逆写像 gが f によって一意的に定まることもわかる .f の逆写像をふつぅ

1 1で表わす.

なお, fの逆写像の一意性は,条件 ( i i )に基づいて,合成の関係だけから導く

,り が f の逆写像であるとすれば, f o g ' = i d r , gof=ids こともできる.実際, g ゆえ,

g= g o i d T=go(/ o g ' )= ( g o / )og'=id8og'=g ' を得る.

問1 .2 7 f=(a b C …)が全単写像のとき , そ の 逆 写 像 は (a ' b ' c '…) で a b C・・・.

a ' b ' c ' ・・ ・

表わされることを示せ.ー一 逆写像に関連して,写像の構成に利用される 1原理をあげよう.

写 像 f:S →S ' と全写像 p:S→ S"について,次の 2条件は同値である.

(I) x ,yEsについて, p ( x )=P(y)=汀( x )=f ( y ) . (すなわち,

pのひき起す Sの 同 値 関 係 応 が fと両立する.)

( I I ) f=f'opであるような写像 f ' :S"→ S 'が存在する. なお,!'は一意的に定まる. f

S

i

l p ご ‘ テ S ' ; 9



S '



注意

S"が S の商集合で Pが標準的写像の場合, (I)は ( 1 .4 2 )に他ならず,ひき起

された写像 Jが ( I I )を満足する. [証明] (Il)==}(l)は簡単である.実際, p ( x )=p(y)= = }f ' ( p ( x ) )=f ' ( p ( y ) )

⇒ f(x)=f(y). また Pが全写像ゆえ, S"の任意の元は p(x)(xES)と表わさ 'によるその像は f ' ( p ( x ) )=f(x)となる.これは印のとり方によらないの れ , f

32

第 1章 序 説

で,!'は一意的である.

(I)⇒ ( I I )を 示 そ う . ま ず Pは 単 写 像 P :S/Rp→ S"をひき起し, P = P 0 r c ( 冗 :S →S / R pは標準的写像)であるが,

Pが全写像ゆえ

iは全単写像である.こ

S" ←こ s —仁 S'

~l:n:/f S / R p

こで条件 (I)により, て ,

fは写像/:S/Rp→ S 'をひき起し,!=}なである.

よっ

iの 逆 写 像 p 1を利用して!'=}。i1 と定めれば,!=}な = / ' o p . すなわち ー

I I )が成り立つ.' 条件( 上記の写像!'は,

fがひき起す写像といわれ,

fと書かれる. ●"

しばしば

, Pが全写像でなくても成り立つ. しかし, f ' 注意 上の原理における (l)#(II)は の一意性は一般には成り立たない.

§I.4 変換と関数の集合 数学的対象の考察に際して,内部からゆさぶりをかけたり,外部への作用や表現に注目 したりすることがある. 対象 E に対して何等かの構造の型を定め,それを保つような変換 E→ E の集合を考え るのは前者である.それは,対象 E の忍つ‘対称性’を把握することである. また, K を数の体系の一つとするとき,対象 E の構造を何等かの意味で反映するよう な関数 E→ K の集合を考えるのは後者である. これら変換の集合や関数の集合には,自然な仕方で算法が導入されるだろう. また,関 数の集合では)l 厠字を考えること忍ある.'さらに,これらの集合への作用についても自然な 導入法を示すだろう.

a )対称性と変換 芸術や自然の枇界におけるわれわれの美意識の中に,均斉とか対称とよばれる ものがある. Weylは,対象の構造を不変にする変換という形で,これを定式化 した.



たとえば正方形

ABCDは均斉のとれた図形であるが,その均斉のとれ方を精

細に描写するには,正方形を自分自身に重ねる合同変換を列挙するのがよい: Sぃ

S2:

対角線

ACに関する折り返し,

対 角 線 BDに関する折り返し,

S3: 辺

AB,CDの中点を結ぶ直線に関する折り返し,

§ 1 .4 変換と関数の集合

3 3

S z

図 I0 2 8

S4: 辺

BC,DAの中点を結ぶ直線に関する折り返し,

r o : 動かさない,

0゜回転, れ:中心 O のまわりの 9 乃:中心 O のまわりの 1 8 0 ° 回転,

7 0 ° 回転. 乃:中心 O のまわりの 2 これらのうち, S1,Sz,S3,S4は線対称移動,乃は点対称移動ともよばれる.れ, rs にはふつう‘対称’という用語が使われないが,これらによる図形の不変性も,広 。は便宜的にとりあげてある.こう い意味では対称性とよぶのがふさわしい. r いう自明なものを考えることの便利さは次第に明らかとなろう. ここで上の例における正方形を点集合と考え E と書こう.そうすれば,上に 列挙した合同変換は,全単写像

Eー→ E をひき起す.一般に,任意の集合 E について, E から Eへ の 写 像 を E の変換 という.

また, E の変換全体の集合を定 (E)と書く.

変換という用語で,全単写像であることを意味することがある.

しかし本講で

はこのことを仮定せず,特に全単写像であるような変換を置換とよぶことにする. 正方形 E の合同変換とは,集合 E の‘構造’として長さを考え,

この構造を不

変にするような E の変換に他ならない.それらが上にあげた 8個 で あ っ て , 正 方形の対称性を完全に記述していると考えられる. さて,一般に何等かの構造をもつ集合 E に対し,その構造を不変にする E の 変換全部の集合を S と書こう.そのとき次が成り立つ.

(i) IEs , gEs ⇒

fogE S .

この性質を, " Sは合成写像をつくる算法(演算)に関して閉じている”といい

34



1章 序 説

表わす.この算法が次の結合法則を満足することはすでに述べた ( § 1 .3 ,d ) ):

( i i )/ ,g ,hES = ⇒( / o g )o h=fo( g o h ) . また明らかに i d EESであって,次が成り立つ (e=idEとおく).

( i i i ) 或る元 eeSをとれば,任意の /ESについて

foe=f=e o f . 注意 上の諸性質をまとめて, " Sは合成の算法に関して単位的半群である”といい表

1忍構造を不変 わす.なお,多くの場合,任意の feSは全単写像であり,その逆写像 1

1ESとなる. この場合,次が成り立つことになり, " Sは合成の算法に関して群 にして J である”といい表わされる. ( i v ) 任意の feSに対し,或る f ' ESをとれば

fof'=e=f 包f . 単位的半群および群の一般的定義は第 2章でとりあげる.

問I .28 上にあげた正方形の合同変換について,

Y1o S 1 , S 1oれを求めよ.

b ) 関数値による算法と順序 何等かの構造をもつ集合

E に対して,その構造を反映するような E上 の 関 数

を扱うことがしばしばある. たとえば円周

E 上の連続関数全部の集合を Sと書こう.そのとき, Sは 加 法

および乗法に関して閉じている.すなわち,

feS, geS ==} J+geS, fgeS. ここで,一般に集合

のことであり,



E 上の実数値関数とは,写像

E R E上の関数 f,gに対して J+g,Jgは

( 1 .4 4 )

(/+g)(x)=/(x)+gは ) ( 戸 E ) ,

( 1 .4 5 )

( / g ) ( x )=fは )g (の )

(XEE)

によって定義される. この定義は,

E上の複素数値関数 E —• C

についても同様である.

E として簡単な集合 E ={ 1 ,2 ,. . ., n } をとれば,

E上の関数とは n次 元 数 ベ ク ト ル に 他 な ら な い . そ の と き 上 記 の 和

§ 1 .4 変換と関数の集合

3 5

( 1 .4 4 )は,ベクトルとしての和と一致する. また,直積集合 E ={ l ,・ ・ ・ ,m}X { 1 ,, … n} の上の関数は, ( m ,n )型の行列に他ならない.そして上記の和は,行列としての 和と一致する. 注意

関数としての積 ( 1 .4 5 )は,ベクトルや行列としての積とは一致しない.

なお関数としての和や積は,

( 1 .4 4 ) ,( 1 .4 5 )の定義から直ちに分るように,数

についての法則

( 1 . 1 ) , ( 1 . 3 ) , ( 1 . 1 0 ) , ( 1 . 1 1 ) ,( 1 . 1 2 ) , ( 1 . 1 3 ) をそのまま満足する. 書けば,

また,つねに値 0をとる関数を 0 , 値 1をとる関数を 1と

( 1 .2 ) ,( 1 .9 )が成り立つ. さらに,関数 fに対して関数―fを ( xeE)

(f ) ( x )= -f( x ) で定めれば, ( 1 .1 5 )も成り立つ.

キ0に対して, ただし,ここで注意すべきことは,関数 f

Jg=gf= 1 となるような関数 gが必ずしも存在しないことである.

問I .2 9 その理由を考えよ._ こうして,数の場合の ( 1 .1 4 )に相当する法則が成り立たず, E が 2元 以 上 を 含むとき,

E上の関数全部の集合は‘体'(§1.1,d )参照)ではないのである.

ここで再び E上の実数値関数に話を戻そう.実数の間では大小の順序関係ニ がある.そこで,関数

( 1 .4 6 )

: 1gが性質 f(x)~g(x)

(註 E)

をもつとき, f~g であると定めることがある.

このように定められた関係三は,反射・推移・反対称の法則を満足し,順序 関係である.

問 I .30 これを確かめよ.ー―ただし,実数の大小関係が全順序関係であったのに対し,関数の間ではもはや 全順序関係ではない.

,gに対し,それらの上限 fUg, しかし,任意の 2関数 f

下限 fngは存在する.具体的には次の通り.

( 1 .4 7 ) ( 1 . 4 8 )

.

(/Ug ) ( x )= Max(f(x),g ( x ) )

( xEE),

(/ng)(x)=Min(f(x),g(x))

(xeE).

3 6

第 1章 序 説

こうして実数値関数の集合では,+,X 以 外 に 丸 n という算法も導入される のである.

c ) 関数のたたみ込み 上で述べた関数の加法と乗法は,関数の定義域の構造を直接には反映していな いこれに対して,‘たたみ込み ' ( c o n v o l u t i o n )とよばれる次の算法がある.

(/*g ) ( x )=f2"1cx-t)g(t)dt. ただし,円周 E 上の点を ( c o s0 ,s i n0 )の形にパラメータ表示して, E 上の関

,gを R 上の周期 2 冗の関数とみなして右辺の積分を考える. 数f

(§-~ニ 図l ・ 2 9

こうして円周 E 上の連続関数の全体 Sには,第 3の算法が導入される:

feS, geS = = >f*g.eS. この算法*は,円周 E の位相的構造と同時に,加法で表わされた代数的構造 にも依存している. 一般に,加法をもつ集合 E の上で同様な算法を代数的に考えようとすれば, 積分の代りに有限和によって

(f*g )は)=苫f(x-t)g(t) とおくことになる.

しかし,右辺における x-tが E 内で意味をもつとは限らな

いので,次の形にすべきである.

( 1 .4 9 )

(/*g ) ( x )= Z :f( s )g ( t ) . ぉ= s+t

s , tEE

この形で考えれば, E自身は必ずしも有限集合でなくても,右辺が実質的に有 限和であればよい.たとえば, 自然数の集合

N ={ O ,1 ,2 ,・ } ・ をとれば,任意の n~·.N について

§1.4 変換と関数の集合

n=i十 j , となる ( i ,j )は有限組しかない.

3 7

iEN, jE N

したがって N 上の関数 f,gの た た み 込 み f*g

が( 1 .4 9 )によって定義される.分り易く書けば次の通りである. ~、n

(/*g ) ( n )=~f(i)g(n-i). i=O

この算法は,次のように整式――一般には整級数

の乗法を表わしているこ

とに注意しておこう.

因 (f(i)り ( 因 g(j)が ) = 孟 (f*g)(n)

炉 .

問I .3 1 この等式を確かめよ.ー一 関数のたたみ込みは,定義域 E における算法が乗法であっても同様に定義さ れる. たたみ込みの算法は, E の算法が結合法則を満足するとき,やはり結合法則を 満足する.また,関数の加法との間で分配法則を満足する.これらについては

§ 3 .2でとりあげよう. なお,たたみ込みの算法を考えるには, E の算法がいたるところ定義されてい る必要はないことに注意しておく.たとえば極端な場合として, a,beE に 対 し て a=bの場合のみ abeE が定義され,

aa=a であるとすれば, f*gは関数としての積 fgと一致する. もう一つの例として,直積集合

E ={ 1 ,. . ., n }x{ l ,. . ., n } をとり,算法 ( i ,j )・( p ,q )を j=pの場合のみ定義して,

( i ,j ) ( j ,k )=( i ,k ) であるとしよう.そのとき行列 A =( a i i ) , B=(加)を E 上の関数とみてのたた み込み A*Bは

(A*B ) ( i ,k )=~aijb拉 で与えられる.これは行列の積 ABの ( i ,k )成分の定義式に他ならない. って A*Bは行列としての積 ABと一致するのである.

したが

38



1章 序 説

d )作 用 一つの対象 aと集合 Sが与えられているとき, aに Sの 変 換

定( S )の元

—ーを対応させることを

a を S に作用させる

という.

また,

この状況を

aは Sに作用する ( a c t ,o p e r a t e ) ともいい表わす.

a自身が Sの変換であれば, aはすでに Sに 作 用 し て い る わ け で あ る が , 一 般には a自身が Sの変換である必要はない.そして aに対応させる Sの変換は いろいろと考えられる. たとえば, a を一つの実数とし, Sを乎面上のベクトル全体の集合とする.そ のとき, aは‘スカラー倍' ”←→ ax

(xES)

として Sに作用する. また,平面が向きづけられていれば, aは角 aの‘回転’

a倍 X

図1 3 0 としても Sに作用する. 一般に,対象 aの集合 Sへの作用が一つ定められたとき, aに 対 応 す る 変 換 による xeSの像を,スカラー倍の記法にならって axあるいは xaと書くこと が多い. 一例として,或る集合 E 上の関数の集合 Sを と ろ う . そ の と き JESの 定 数

倍 afは,ふつう ( 1 .5 0 )

( a f ) ( u )=a f ( u )

( uEE)

と定められる. もし任意の JESについて afeSで あ れ ば , 上 の 仕 方 で 定 数 a が S に作用することになる . この例を一般化して,集合

Eから Fへの写像の集合 Sを考え,対象 aは集合



39

§1.4 変換と関数の集合

F に作用しているとする.そのとき, /ESの ' a倍 'afが上と同じ等式 ( 1 .5 0 )で 定められる.

もし任意の feSについて afeSであれば,この仕方で aが Sに

作用することになる.たとえば, E,Fを線型空間とし, S として E から Fへの 線型写像全体の集合をとれば,上の仕方でスカラー aは S に 作 用 す る . こ の 作 用忍スカラー倍とよばれる. ところで,対象 aが写像の定義域 E に作用しているときにも,この作用と/:

E→ F を合成することによって写像 fa:E→ F を (/ a ) ( u )=f ( a u )

( 1 .5 1 )

で定めることができる.そして,

( uEE)

もし任意の /ESについて f aESであれば, a

が S に作用することになる.この作用は,前に述べた作用と一般には異なる.

1 .5 0 )の作用 簡単のため aeR=E=Fとして, /ESのグラフについていえば, ( は縦軸方向の拡大・縮小であり, ( 1 .5 1 )の作用は横軸方向の縮小・拡大を意味す る .

問1 . 3 2 E ,F を線型空間とし, S として線型写像全体の集合をとれば,スカ 1 .5 0 ) ,( 1 .5 1 )は一致することを示せ.ー一 ラー aの 2通りの作用 ( さて以上の考察において, S の構造には立ち入らなかった.

しかし実際には,

Sへの作用として, Sの構造と何等かの意味で両立するようなものを扱うのがふ つうである.

Sに作用する対象は,いくつかまとめて扱われることが多い.いま集合 A の各元が Sに作用するとしよう.このとき, A は S に作用するという. sの 他方,

構造と両立するような変換は合成しても再び構造と両立するのがふつうである. こうして,集合 A の元の間には算法が与えられて,その算法が対応する変換の 合成をひき起すという状況が自然である. ていれば,

また, S の構造が算法として与えられ

Aの元に対応する変換の間で算法が得られる.こうして,集合 A に

おいては第 2の算法が与えられて,その算法が対応する変換の算法をひき起すと いう状況が自然である.ベクト Jレの集合 Sに作用する実数全体 R に お い て , 乗 法と加法はこのような状況の典型的な例を与えるものである.

41

第 2章 算 法

第 2章では,すでに簡単な素材について眺めてきた 2項算法を,一般的な形式でとりあ げる. 代数的な概念や手法の本質は,灰雑物を排除した抽象的な形式でこそ,論理的に明確に なることが多い

しかし一方では,本質の感覚的理解が,特殊化あるいは具体化によって

実現する忍のである.このことを充分意識しつつ,多くの例や問を味わうことが望まし

・ ' "ただし,‘群論的’な例や考え方には深入りせず,それらは本講座の“群論”にゆずるこ とにしたい この章で扱われる体系的な内容は多くない.

§2.I 算 法 を も つ 集 合 体系的な観点からは,数の加法・乗法,変換の合成,集合の結び•交わり, という 3種 の算法が基本的である.

これらから自然な手続でいろいろな算法が組み立てられて行くの

である.ただし,読者の興味を考慮して,例としては

2次の行列を説明なしにとりあげて

ある.

a )形式的な定義 空 で な い 集 合 Sに 対 し , 写 像

μ:s xsー→ S Sにおける 2項 算 法 ま た は 2項 演 算 ( b i n a r yo p e r a t i o n )と い う . 略 し て 算 法

を ,

または演算ということもある.今後,算法を考える集合は断わらなくても空でな いとする. 注意

1項算法, 0項算法は § 2 .3 ,f )で現われる. 3 項以上の算法については,いまのと

ころ組織的な研究が少ない. 算法の具体例は, 式論理的に見れば, 例

それぞれに固有の必然性をもって登場するわけであるが,形

それ ら の 供 給 源 と し て 次 の 3例が基本的である. 9

2 .I C: す べ て の 複 素 数 a , b ,…の集合.

次 の 2種類の算法がよく用いられる.

第 2章 算 法

42

加法: ( a ,b )← → a+b, 乗法: ( a , b ) i → axb

( a bと略記する).

. 2 定( E ) : 集合 E のすべての変換 (Eから E への写像) f ,g ,. . .の集合. 例2 次の算法が用いられる. 合成:

( f ,g )←→介 g .

例2 . 3 沿( E ) : 集 合 E のすべての部分集合 A , B , ・ ・ ・ の集合. 次の 2種類の算法がよく用いられる. 結び: ( A ,B)←→ AUE,

交わり: ( A , B )←→ AnB. 一つの集合

Sにおいて,算法はいろいろと考えられる.そのうちの一つμ

注目して集合 S を取り扱うとき, Sは算法μ をもつ集合とよばれ,



c s , μ )という

記号で引用される.二つの算法 μ , J . iに注目するときは ( S ,μ ,J . i )という記号で引用 される.

( a ,b )は,上の例にならって, 算法μ による (a,b)eSxSの像 μ aμb という形に書き表わすことにしよう`ただし,特定の算法でなく,一般論として 算法を扱うときは,例 2 .1の乗法の場合と同様に,算法記号を略して単に a bと 書くことが多い.そしてこの元を a , bの‘積’とよぶのがふつうである.

また,例

2 .1の加法が具体例としてびったりするような算法や,実際に加法から派生した 算法などを一般的に扱うときには, a十 bという記法を用い, a , bの‘和’とよぶこ ともある. こういうわけで,‘加法''乗法’という用語は,数の算法としての意味を離れ, 単に記法を示す忍のとして自由に使われることになるのである.

b ) 算法に関して閉じた集合 算法をもつ集合 ( S , μ )において,空でない部分集合 T が条件

( 2 .1 ) を満足するとき,

aE T , beT

==}

aμbeT

Tは算法μ に関して閉じているという.

この条件は次の形にも表わされる.

( 2 .l ) '

μ(TxT)~T.

この条件が成り立つとき,μは写像



§ 2 .1 算法をもつ集合

TxT をひき起し,

43

T

Tの算法が得られる.これをひき起された算法とよぶ.この算法は

ふつうもとの算法と同じ記号で表わされる. 注意 S自身はもちろん算法に関して閉じている.そこで集合 S に算法μ が与えられ ていることを, "Sは算法μ に関して閉じている”といい表わすこと忍ある.

次の 3例は,それぞれ a )でとりあげた 3例の集合の部分集合である.

. 4 . 例2

R: すべての実数の集合, Q: すべての有理数の集合,

Z: すべての整数の集合, N: すべての自然数の集合 ( 0を含む),

C*: すべての 0でない複素数の集合, R*:すべての 0でない実数の集合, Q*: すべての 0でない有理数の集合, U: すべての絶対値 1の複素数の集合, W: すべての 1の累乗根の集合. これら Cの部分集合のうち,

R,Q,Z,Nは加法と乗法のいずれに関しても閉じている, C * ,R * ,Q * ,U ,W は乗法に関して閉じている. 問2 .I すべての正の実数の集合 R'は,加法と乗法のいずれに関しても閉じ ていることを確かめよ.

問2 . 2 複素数 aキ 0を固定する. aのすべての整数倍 na( nEZ)の 集 合 ― ―

Zaと書く一ーは,加法に関して閉じていることを示せ. また乗法に関して閉じ るための条件を求めよ.

問2 . 3 正の整数 Pを固定する. m / p n(mEZ ,nEN)の 形 に 表 わ さ れ る す べ ての有理数の集合は,加法と乗法のいずれに関しても閉じていることを示せ.

3 .2 ,a )でとりあげる.) (一般には §

K乗 根 の 集 合 wkは,乗法に 2.2 ,c )でとりあげる.) ——(一般には §

問2 . 4 正の整数 kを固定する.すべての 1の 関して閉じていることを示せ.

有限集合 S={ a ,b ,…}に与えられた算法μ は,次のような算法表で具体的に 示すことができる.

第 2章 算

44



表2 . 1

μ I IaTb I.I Y' 、



a "

b

..、•

X :

x μ y

たとえば,次の Cの部分集合は乗法に関して閉じており,それぞれ下記の算

=(-:1十←忍) / 2 . 法表をもつ.ただし w 表2 . 2

{ 1 ,-1l

1 1 , w

I o ,1I



、 '(J)

X

1

CV

wz

1

1 w

w2

CV

CV

w2 1 . '

, ; 2 1 w w2 c

例2 .5 @ l ( E ) : 集 合 E のすべての置換 (Eから E への全単写像)の集合. これは定 ( E)の部分集合であり,合成の算法に関して閉じている. たとえば, E ={ l ,2 }に対し, S=定( E )の元を

e = G~), . P=(~

a~G~):,

~),

;・表 2~3

e

p

a

b

, . e .

p

a

b

゜ e

b a

. P

e p :、~・ :

a

a

a , a a ,

b

b

b

'



b b

b= (~ ~)

4 5

§ 2 .1 算 法 を も つ 集 合

とするとき, ( S ,o )の算法表は表 2 . 3の通りである.そして T=e;(E)における

. 3の太線で囲まれた部分で与えられる. 算法表は,表 2

問 2~5 上の例で, { a ,b }が合成の算法に関して閉じてい/ることを示し,その 算法表をつくれ.

問2 .6 E : : : : :{ 1 ,2 ,3 } とする.定 ( E )の元

G~ り

a= から成る部分集合

1 ( 23 ) 122

b=

{ a ,b }は,合成の算法に関して閉じていることを示し,その算

法表を書け. 問2 .7 集合 E の全写像であるような変換全部の集合 s , 単写像であるような

E )において合成の算法に関して閉じているこ 変換全部の集合 Iは,それぞれ定 ( とを示せ.

例 2.6 集合 E の部分集合 E 'をとる.そのとき沿 ( E ' )は沿 ( E )の部分集合で あり,結び

U

と交わり n に関して閉じている.また,ひき起された算法は沿 ( E ' )

で定められる算法丸 n と一致する. たとえば,

E={ 1 ,2 }に対し,$=沿 ( E )の元は ¢ ,

A1= { 1 } ,

A , 2= { 2 } , , ・ E= , { l ,2 }

の 四 つ で あ る . 結 び 叫 交 わ り n の算法表は次の通りである。 表2 . 4、ヽ

u ¢ A1 A2 E

n ¢ A1 A 2E



¢ A 1 A2 E

¢ ¢ ¢ ¢ ¢

A1 A1 A1 E E

A1 ¢ A 1 ¢ A 1

A2 A2 E Az E

A2 ¢ ¢ A2 A2

.

E E E E E

E

¢ A 1 A2 E

集合 E'={ l }に対し,

沿(E')={ < / J ,A i } の算法表は,上の表の太線で囲まれた部分で与えられる. 問2 . 8 数直線 R におけるすべての開区間(空集合を許す)の集合は,沿 ( R )の

第 2章 算 法

46

部分集合であり,交わり n に関して閉じていることを示せ. 注意無限個の開区間の交わりは必ずし忍開区間でない.

問2 . 9 数平面 R 2において,一つの代数方程式で表わされる図形を代数曲線 ということにする.すべての代数曲線の集合は沿 (Rりの部分集合であり,結び U

に関して閉じていることを示せ.―― 次の事実はしばしば用いられる.

定理 2 .I 算法をもつ集合 Sにおいて,算法に関して閉じているいくつ かの部分集合 T i( iE/)があれば, それらの共通集合

T =i nri eI もやはり算法に関して閉じている.

証 明 算 法 μ について, μ (TixTi)~Ti ( 註I ) . ところで TxT~Tix T iゆ え , μ(TxT)~µ(Tix 冗) ~Ti ( iE/). ゆえに µ(TxT)~nTi=T. iEI

I

c ) 直積集合における算法 集合 A 1 ,ん に そ れ ぞ れ 算 法 μ 1準 2が与えられているとき,直積集合 A1Xふ ={ ( a 1 ,a 2 )I a 1EA 1 ,a 2EA2} に次の仕方で算法を定義する. ( a 1 ,a 2 ) μ ( b 1 ,b 2 )=( a 1 μ 1 b 1 ,a 2 μ 2 b 2 ) ,

( 2 .2 ) この算法μ は写像

(A1Xん ) X (A1X ん)—→ A1XA2 である.いま ( ( a 1 , a 2 ) ,( b 1 , b 2 ) )と ( ( a 1 ,b 1 ) ,( a 2 ,b 2 ) )を同一視して,次の 2集合を 同一視しよう. (A心ん) X (A1XAふ そのとき写像μ は , 写 像 μ 1準

2

(A 心 A1)X(A2Xふ ) .

の直積写像

μ1X肛: (A1XA1)X (A以ふ)ー→ A1XA2 に他ならない:

) x(A心 A2)_)!_ →A1XA2. (A1Xん I I (A1XA1)X(A凸ふ)

§ 2 .1 算 法 を も つ 集 合

47

この意味で,μ を μ1Xμ2と書くこともある.

1 ,ふ,…にそれぞれ算法 μ 1準 2 ,… が 与 え ら れ て い る 場 一般に,多くの集合 A 合でも同様で,直積集合

A1Xふ x… ={ ( a 1 ,a 2 ,… )I a 1EA 1 ,a 2EA 2 ,… } に次の仕方で算法ぃ Xμ2X…が定義される.

( ( a 1 ,a 2 ,・ ・ ・ ) ,( b 1 ,b 2 ,・ ・・))←—→ ( a 1 μ 1 b 1 ,a 2仰似・・・). 粗雑にいえば,直積集合における算法は成分ごとの算法によって定めるのであ る.そこで,これを成分による算法とよぶ.

1 ,ふ,…は同じ集合であってもよい.直積集合 上記で, A AxAx…x A

( n個 )

は,通常 Anと略記される.

例2 .7 線型代数で扱われる n次元の実数ベクトル空間 Rnの加法

( a 1 ,… , an)+( b 1 ,…,如)

=(a叶 b 1 ,… , a□b n )

は , R で加法を考えるとき,直積集合としての Rnにおける算法である.

例2 . 8 複素数の加法

( a + b i )+ ( c + d i )=(a+c)+ (b+d)i は , a+biと ( a ,b)ER2とを対応させれば,直積集合としての R2における算法 である.

例2 . 9 文字 X の整式の加法

Lan炉 +Lbn 炉 =L(a 叶—加)炉 は , Lan 炉と ( a 。 ,a 1 ,., )ER xRx…とを対応させれば,直積集合における算

3 .2 ,g )で与えられる.) 法である.(整式の基礎づけは § d ) 写像の集合における算法 集 合 A に算法μ が与えられているとき,一つの集合 E から A への写像全部 の集合

Map(E,A) において,次のように算法が定義される.

f ,gEMap(E,A)に対して, fμgEMap( E ,A )を ( 2 .3 )

で定め,対応

( / μ g ) ( x )=f(x)μg(x)

( xEE)

第 2章 算 法

48

( / ,g )← fμg によって算法を定義する.これを値による算法とよぼう. 例2 .1 0 集 合 E 上の実数値関数 f ,gの和 f+gと積 fgは , R の加法と乗法 が定める Map(E,R)の値による算法で(/,g )に対応するものである.

例2 .I I 線 型 空 間 Vの 線 型 変 換 < p ,¢ の 和 < p + ¢ は ,

Vの 加 法 が 定 め る

Map(V,V)の値による算法によって ( < p 冷)に対応するものである. 注意

Map(V,V)は V のすべての変換の集合定 (V)に他ならず,合成の算法忍定め

.2 ) . られる(例 2

E として自然数の集合 { 1 , 2 ,., , n } をとれば, Map(E,A)と直積集合 An=AX… x A とは次の対応で同一視される.

f←ー→ ( / ( 1 ) , / ( 2 ) ,., , f ( n ) ) . 一般に,任意の集合

Eをとり,各元 ieE に一つずつ算法 μiを も つ 集 合 Ai

が与えられているとしよう.そのとき,各註 E に一つの元 a ieAiを 対 応 さ せ

a i )i E Eを全部考え,その集合を て得られる系 (

.

ITAi ie必

で表わし,集合系 ( A i )i E Eの直積集合という.この集合においては,次の仕方で 算法が定められる.

( ( a i )i E E ,( b i )i E E )-(aiμibiJ炸 E・ ト

特 に す べ て の Ai( iEE)が 同 一 の 集 合 A で あ る と き , 上 記 の 直 積 集 合 は

Map(E,A)と同一視され,その算法もすでに定めたものと一致する.このよう

l ,… ,n } の 場 合 の 記 法 Anにならって, Map(E,A)を な同一視に基づき, E ={ AEと書くこともある.

例2.12 A={0,1}に お い て 二 つ の 算 法 見 nを下の表で定めよう.そのとき 表2 . 5

49

§2.1 算 法 を も つ 集 合

が に 定 め ら れ る 算 法 丸 nは ,

(/Ug ) ( X )=f ( の ) ug( x )

(xEE),

(/ng ) ( x ) = =f(x)ng(x)・(xEE) と表わされる.

ところで feAEは , E の部分集合

S( ! )={ xEEI /( x )=1 } の特性関数とよばれる.そして次が成り立つ.

S(/Ug)= S(f)U S ( g ) ,

S(fng)= S(f)n S ( g ) .

問2 .1 0 E 上 の 関 数 f,gが 0または 1の値のみをとるとき,次の等式を示せ.

.fng=fg,・fUg=f+g-fg.

・---,-

上の例を一般化しておくと便利なことがある.

例2 .13・Aを 2項関係三をもつ順序集合とし,任意の 2元に対して上限と下 限が存在して,算法丸 n が定められるとする ( § 1 .2 ,e ) ) . そのとき Map(E,A) = が に 定 め ら れ る 算 法 丸 n は,上の例と同じ式で与えられる. ところで, AE において次のように 2項関係を導入するのは自然であろう.

( 2 .4 )

f~g •

f(x)~g(x)

( xeE ) .

これが AEにおける順序関係であることは直ちに認められる.ここで注意すべき ことは,

この順序関係に関して任意の 2元の上限と下限が存在し,それらが上記

の 算 法 丸 nで与えられるということである.

問2 .1 1 上のことがらを確かめよ.一

A が全順序集合であっても AEは一般にはそうでない. しかし, A で 成 り 立 つ等式的な法則は,すべて AEでも成り立つ.たとえば全順序集合で明らかに次 の分配法則が成り立つので, AEでも同じ法則が成り立つことになる:

fn(gUh)= (fng)U(fnh),

/u( gnh )=(JUg )n(JUh ) . e )同 型

例2 .1 4

R: すべての実数の集合,

R乃すべての正の実数の集合 R ,+)と ( R ' ,X)とが‘同じ構造’をもつのを見よう. とするとき, ( 指数関数 y=expx によって,写像

e x p . : Rー→ R '

5 0

第 2章 算 法

R ︵乗法︶ e x p ( xけ X z )_ ,_ _ _ _ _ _ __

図2 1

X 1功 x 1 + x 2 R(加法) を作れば,これは全単写像であって,‘指数法則’

exp(X1十ふ)

=(expx1)(exp叩)

が成り立つ.すなわち, R の元と て,それぞれに定められた算法

R

( x 1 ,叩 ER)

の 元 と は 1対 1に 対 応 し , そ の 対 応 に 際 し

加法と乗法一ーが対応する.ー一

S ,μ),( T ,J . I )に 対 し て , 全 単 写 像 一般に,算法をもつ集合 (

/ :sー→ T が存在して,条件

f(xμy)=f ( x ) J . 1 / ( y )

( 2 .5 ) が成り立つとき,

( x ,yeS)

( T ,J . 1 )は ( S ,μ)に同型 (isomorphic)であるといい, ( S ,µ)~(T, 1 , . 1 ) ,

略して

S~T

と書き表わす.

isomorphism)という. な お 上 の よ う な 写 像 fを 同 型 写 像 ( 注意

上の例が示すように,算法μ,ツは同じ形式で書かれる忍のである必要はない.条

件( 2 .5 )は

f ( x十 y )=f( x )+f( y ) , のとき f(x十 y )=f(x)f( y ) , のとき ! ( のY )=f ( x )+f( y ) , のとき f ( x y )=f( x ) f( y ) と書き表わされる.一般論では,前にも述べたように, μ , J . 1を略して乗法的に書くことが μが加法,ンが加法 μが加法,ンが乗法 μが乗法,ツが加法 μが乗法,ンが乗法

のとき

多い. 同 型 写 像 fの 逆 写 像 が や は り 同 型 写 像 で あ る こ と は 直 ち に 認 め ら れ る . って S~T



T~S

したが

5 1

§ 2 .1 算 法 を も つ 集 合

は区別しないで用いてよい. さらに例を追加しよう. 例2 . 8は ( C ,+)~(R円+)を意味する. 例2 .15 ( C * ,x)~(R',

x)x(U,x ) . ただし

U は絶対値 1の 複 素 数 全 部 の

集合である.この対応は‘極形式'

z=r ( c o sO + isin0 ) を利用して与えられる:

z← → ( r ,c o se + isin0 ) .

1t o [ ] 1IR } ,X ) . 1t tーo [ ] 1 C2

例2 .I 6 (R,+)~ ({



この対応は

次の正方行列)

によって与えられる.

問2 .1 2 このことを確かめよ.

+ ,x)~({ [;-:J I x ,yER } ,+ ,x)

伊d2 .1 7

, ( C ,



対応

x + y iー [ ;ー ! ]=疇

~J+y[~ —~]

が加法と乗法のいずれについても同型写像を与える.

問2 .1 3 上のことがらを示せ.

( 沿( E ) , ,u)~(沿 (E), n).

例 2~18

[証明]

沿( E )の 元 す な わ ち E の 部 分 集 合 X に対し, E に お け る 補 集 合

xce沿(E)を対応させれば,全単写像

f :沿(E)一 沿 (E) を得る.

ところで ' d eMorganの法則’

(XUY )c=xcnye は ,

fが同型写像であるとい、う条件 /(XUY)=f(X)nf(Y)

を示している.'

問2 .1 4 例 2.12の対応 f→ S(f)は ( { O ,1} 囚,叫 n)~(沿 (E), u ,n)を与える

第 2章 算 法

5 2

ことを確かめよ.

問2 .1 5 数空間 Rnにおけるすべての開集合の集合 Oお よ び す べ て の 閉 集 合 の集合 6 は , そ れ ぞ れ 巴 n について閉じており,

~ce,

c o ,u)~ce ,n), ,c o ,n)

u)であることを示せ.

f ) 2元集合の算法のすべて 算法を忍つ集合 S ,T が有限のとき, S~T ならばもちろん S, T の元の個数は

S l = I T ! . 等しい: I そこで,はじめから I S l = I T I とする.

そのとき, S~T であるということは,

S ,T の元を適当な仕方で 1対 1に対応させ,対応する元を同じ文字で表わせば, 両者の算法表が全く一致するようにできるということに他ならない. 上のことがらを少し別の形でいいかえよう.S ,Tの元の間の 1対 1対応を任意 にとり,この対応によって T の算法ンが Sにひき起す算法を¢ とする.その とき,

( S ,µ)~(T, v )は , ( S ,µ)~(S, μ')と同じことである. し た が っ て , 同 型

の判定は一定の集合 S の上で行なえばよい.

I S l = lの場合は算法が 1通りしかない. IS1=2の場合について,すべての算法を列挙し,同型の判定をしておこう. 例2 .1 9 S={ a ,b }におけるすべての可能な算法は,算法表の空所に a , bを配 表2 .G

§ 2 .1 算 法 を も つ 集 合

5 3

置する仕方の数,すなわち 1 6通りあって,表 2 . 6のように分類される. これら互いに異なる算法をもつ集合 S の間で成り立つ同型関係は,次の 6通り だけである.

( S ,μ i )竺 ( S ,J . i i )

( i=1 ,2 ,3 ,5 ,7 ) ,

( S ,μ 1 ° )全 ( S , J . i 1 ° ) .

[証明]

全単写像 S→ Sは,恒等写像と a ,bの入れかえの 2通りだけである.

後者によって上の二つずつ 6組の算法表が入れかわり,他の四つ――炉準6,μぶ からは自分自身を得る. I



注意 μ 1 , 0 ,がの算法表は,それぞれ μ i , ツiの算法表で,行と列を入れかえた忍のである.

= l ,2 ,3 ,5については μ/=μi, 叩=ッ・i これらの一般的意味は i )の項で扱う. ただし, i

問2 .1 6 ( { 1 ,c l } ,X),( { 0 ,l } ,X)はそれぞれ上記のどれと同型であるか.

G~), (~ ~)}, 0 ) ,( {G~} (~ ~)}, ) 0

F i j2 .1 7

({



はそれぞれ上記のどれと同型であるか.

問2 .1 8 ( 沿 ({a}),U),(沿( { a } ) ,n)は上記のどれと同型であるか.

問2 .1 9

( 定( { 1 ,2 ,3 } ) ' 0 )の算法に関して閉じた 2元部分集合であって,

c s ,μ1),

( S ,μ 4 )に同型なものを探せ. g )単位元 算法をもつ集合

c s , μ )において,元 eESが条件 任意の XES について

eμx=x

を満足するとき, eを Sにおける(μ に関する)左単位元という.同様に条件 任意の

XES

について

xμe=の

を満足するとき, eを右単位元という. 左単位元であると同時に右単位元でもある忍の,すなわち条件 任意の

XES

について

eμx= 丸u e= x

を 満 足 す る 元 eは(両側)単位元( i d e n t i t ye l e m e n t )あ る い は 中 立 元 ( n e u t r a l

e l e m e n t )とよばれる. 複素数全体の集合 C( 例2 .1 )において,それぞれ

0は加法に関する単位元,'

1は乗法に関する単位元

第 2章 算 法

5 4 である・

一般に, eが Sの単位元であるとき,算法に関して閉じた部分集合 T が eを 含めば, eは T の単位元でもある. したがって,例 2 . 4ゃ問 2 .1 2 . 4でとりあげた集合達は,加法に関して閉じて いて 0を含む限り, 0が加法に関する単位元である.

また,乗法に関して閉じて

いて 1を含む限り, 1が乗法に関する単位元である. 集 合 E 上の変換全体の集合定 (E)( 例2 .2 )においては,恒等写像 i d Eが 合 成 の算法に関する単位元である. したがって,例 2 . 5や問 2 .7など,合成の算法に関して閉じていて idEを 含 む

d Eが合成の算法に関する単位元である. 限り, i 集 合 E の部分集合全体の集合沿 ( E )( 例2 . 3 )においては,それぞれ 空集合¢は結び

U

に関する単位元,

全体集合 Eは交わり n に関する単位元 である.

問2 . 2 0

沿(E)の結び

U

に関して閉じている部分集合 Sにおいて,単位元は

どんな集合か.交わり n に関してはどうか.ー一 算法をもつ集合 ( A i ,μ i )が単位元 e iを 忍 つ と き , 直 積 集 合 (A1XA以 … , μ1

§ 2 .1 ,C ) )は単位元 ( e 1 ,約,・・・)をもつ.一般の直積 ITAiについても同 Xμ2X.・ )( ieI

様である. 特に,単位元 e をもつ集合 A に対して,値 eをとる集合

E上 の 定 値 写 像 は

Map( E ,A)(§2.1 ,d ) )の単位元である. 2元集合 S={ a ,b }における各算法(例

2 .19)について(左・右)単位元をすべて

列挙しておく. 表2 . 1

μ 1I1 1l μ zI1 2I μ 31 3Iμ4Iμ4I μ 5Iレ5 'I μ 5I μ 6 1 μ 1I μ 1I1 1 1I1 ! / J

左単位元

a Ib Ia

右単位元

a Ib Ia Ib

単位元

a Ib Ia Ib

§2.1 算 法 を も つ 集 合

5 5

例2 . 2 0 2次の正方行列全体の集合 M2において,零行列 0 , 単位行列 Iは , それぞれ加法,乗法に関する単位元である.その他に(左・右)単位元はない.

伊u 2 . 2 1 [;

~]の形の行列全体は乗法に関して閉じており, [~i] の形の行

列はすべて左単位元である.しかし右単位元は存在しない.

問2 . 2 1 次の形の行列全体はそれぞれ乗法に関して閉じている.それぞれに おいて,左単位元,右単位元,単位元を探せ.

( i ) [; ~],

( i i ) [~ ~],

( i i i ) [~ ~].

上の諸例から分るように,左または右単位元は必ずし忍一つではない.また左 (右)単位元があっても右(左)単位元があるとは限らない.一般に次の定理が成 り立つ. 定理 2 ・ .2 算法をもつ集合 S において,左単位元と右単位元が存在すれ ば,それらは一致する.特に,単位元は存在する限りただ一つである.

証明

eを左単位元, e 'を右単位元とすれば, e ' = e e ' = e .I

上の定理により,単位元が存在すれば,それ以外には,左単位元も右単位元も 存在しないわけである. 単位元は一つしかないから,それを表わすのに特定の記号を用いてまぎれがな い.数の集合の場合にならって,乗法に際しては 1 , 加法に際しては 0を用いる

s ,Osと書くことも のがふつうである.集合 Sの単位元であることを強調して, l ある·~

同型写像によって単位元は対応する.これは当然であろう.

.I すべての正の幣数の集合 Sは加法と乗法に関して閉じているが, 例題 2

( s ,+)~(S, X )でないことを示せ. [ 解 ]

任意の eES について e + e = l = eゆえ,

し 1ESは ( S ,x)の単位元である.

( S ,+)は単位元をもたない. しか

よって ( S ,+)~(S, X)ではあり得ない. I

h )零 元 算法をもつ集合 ( S ,μ)において,元 neSが条件 任意の

xeS について nμx=n

第 2章 算 法

56

を満足するとき, nをS における(μ に関する)左零元という.同様に条件 任意の xeS について

xμn=n

を満足するとき, nを右零元という. 左零元であると同時に右零元で忍あるものを,零元という.

. 4など)が数 0を含む限り, 0は乗 乗法に関して閉じている複素数の集合(例 2 法に関する零元である.

問2 .2 2 ( Z ,+)は零元をもたないことを示せ. 注意

第 3 章で,加法と乗法が与えられ,或る法則の成り立つ集合—環—ーを扱う.

そこでは,加法に関する単位元 0は乗法に関して零元である. このことを背景として,一 般に加法に関する単位元を零元とよぶことがある.

問 2.23 沿( E )に お い て 算 法 丸 n に関する零元はそれぞれ何か.ー一

2元集合 S={ a ,b }における各算法(例 2 .1 9 )について(左・右)零元をすべて列



挙しておく•,

表2 . s

μ 1I 1 1I μ 2I 1 1 2I μ 3Iレ3I μ 4I μ 4I μ 5I I !5 I μ 6I μ gI μ 7I μりI1 7I 1 1 、

I

bbb

例2 . 2 2 2次の正方行列全体の集合 M2において,零行列は乗法に関する零元 である.その他に(左・右)零元はない.

問2.24

定( { 1 ,2 } )において右零元は存在しないことを示せ.

また左零元をす

べて求めよ.―― 単位元の場合と同様に,一般に次が成り立つ.

. 3 算法をもつ集合 Sにおいて,左零元と右零元が存在すれば, 定理 2 それらは一致する.特に,零元は存在する限りただ一つである.

証明

nを左零元, n 'を右零元とすれば, n=nn'=n'.I

§ 2 .1 算 法 を も つ 集 合

5 7

上の定理により,零元が存在すれば,それ以外には左零元も右零元忍存在しな い.また,同型写像によって零元は対応する.

i ) 可換性と反同型 算法をもつ集合 ( S ,μ)において

aμb=bμa であるような Sの元 a ,bは可換であるという.

Sの任意の 2元が可換であるとき,すなわち交換法則 ,yES に つ い て 丸uy=yμx 任意の x 'が成り立つとき,算法μ は可換であるという.このことを Sは可換であるとい うこともある.それは,次の図式が可換であることを意味する.

〗:口S ただし Cは次の対応とする:

c :( x , y ) 1 →( y ,x ) . 数の加法・乗法(例 2 . 1 ) , 集合の結び• 交わり(例 2 . 3 )は可換である. 可換な算法をもつ集合の算法に関して閉じた部分集合は,

もちろん可換である。

A i ,μ i )i E Iの直積集合 ITAiに定められる算法も可 また,可換な算法をもつ集合 ( ieI

換である.これは算法の定義が‘成分ごと’に行なわれるから明らかであろう. 集 合 E の変換全体の集合定 ( E )(例 2 .2 )は , Eが 2元以上を含むとき可換でな tヽ.

問2 .2 5 E = , { 1 ,2 ,… ,n}(n~2)

の変換

. 1 ・ 2. . .n 1. . .1 ) ,

a= ( 1

て = ( ; : : : : り

は可換でないことを示せ. 例2 . 2 3 集 合 E の n個の元から成る部分集合 X={ X i ,… ,x 』に対して,

a (叫 ) = Xk+1 (l~k ( E )は単写像である. 最後に,‘結合法則’によって



h ( z 1 z 2 ):w

( z 1 z 2 )w = z 1( z 2 w ) .

すなわち h ( z 1 z 2 )= h ( z 1 )0 h ( zりを得る.これは hが 準 同 型 写 像 で あ る こ と を 示 す.' 例2 .3 1 ,例2 . 3 2の写像を合成すれば,準同型写像

h o g :( R ,+)-—• ( @ > ( E ) ,o ) を得る.具体的には, ( h o g ) ( 0 )は原点のまわりの角 0だけの回転移動である、

第 2章 算 ; 法

64

例2 . 3 3 文字 X 1 ,…,.叩の整式全体の集合 R[x1,…,叩]は加法と乗法をもつ.

数列 a 1 ,… ,a nE Cを固定して, 任 意 の p ( x 1 ,・ ・ ・ , 叫 ) ER[ 初,・・・,叩]に p ( a 1 ,・ ・ , 心を対応させれば,加法と乗法の両方に関する準同型写像

(R[功,…,叩],+ ,x)ー→ (C,+ ,x) を得る.(整式の係数は Cからとってもよい.)

1個の文字

X

についての‘代入原理'

p(x)+q(x)= r ( x ) ⇒ p(a)+q(a)= r ( a ) , p(x)q(x)= s ( x ) ⇒ p(a)q(a)= s ( a ) は,対応 p (x)→p(a)が加法と乗法を保つことを意味する.変数の個数が多くて 忍同様である ( § 3 .2 ,g)-h)参照) .



問2 . 3 4 等式 ( xげ十 x力( xげ十 X/)= ( X 1叫 十 叫 X 4戸 + ( 叩 叩 一 叫 叫 戸 を 利 用 し

て , 2整数の平方の和として表わされる数全体が乗法に関して閉じていることを 示せ. 例2 . 3 4 文字 mの整式で 0でないもの全体を P* とする.p(x)EP*にその次

数 degp(x)E Z を対応させれば,準同型写像 ( P * ,X)→ ( Z ,+)を得る ( § 3 . 2 , g ) ) . さらに, 0でない有理式全体を R* とすれば, degは準同型写像四: ( R * ,x)→

( Z ,+)に一意的に延長される(問 3 .4 9 ) . 例2 .3 5 p(x)EP* をp(x)=炉 q ( x )(ただし q ( O )キ0 )と因数分解して, p(x)

に 店 Z を対応させれば,準同型写像 ( P * ,X)→ ( Z ,+)を得る.これは準同型 写像 J . i o :( R * ,X)→ (Z,+)に一意的に延長される.

. 3 5 有理式 /(x)に対し,等式 J . i o ( / ( 1 / x ) )=J . i o o ( / ( x ) )を示せ. 問2 例2 . 3 6 有限集合

Eのすべての置換の集合 @5(E)で合成の算法。を考えれば,

全準同型写像 sgn:( @ 5(E),o )ー→ ( { l ,ー 1 } ,X)

が存在する.(本選書の“群論”を参照.) , …,て”の合成として表わされる.いま上 任 意 の 置 換 a はいくつかの互換て b て2

記の sgnを利用すれば,‘‘個数 nの偶数奇数が aのみで定まる”ことが導かれる。 具体的にいえば,任意の互換てに対して sgnて=ー 1であり, sgna=( l ) n . [証明]

恒 等 置 換 [ に 対 し て は c=四ゆえ, sgnc=( s g nが=(土 1 戸= . 1 .置

換 pの逆置換 p―1に対しては c=pop ー1 ゆえ, 1=( s g np ) ( s g np―1 ) . さて,或る

§ 2 .2 準同型写像と合同関係

6 5

互換 ( ab )に対して sgn(ab)=-1で あ る が , 任 意 の 互 換 ( xy)に対し, p ( a )

=x, p ( b )=y となる置換 pをとれば, は y )=po( ab )o pー1ゆえ, sgn(xy )= ( s g np)sgn(ab ) ( s g npー1 )= sgn(ab )= 1 .

n個 の 互 換

よって

' r 1 ,

… ,Tnに対し,

Sgfi('f10•••0 て n)

= (sgnて1 )・ (sgnてn )= (-lr.

上の事実から,全準同型写像 sgnの一意性もわかる.

問2 . 3 6 上述の逆を示せ.すなわち " a = r 1 o…。て n ( ri は互換)と表わすとき,

nの偶奇は

6

のみで定まる”という事実から全準同型写像 @ > ( E )→{土 l }の 存 在

を導け.

例2 . 3 7 pを奇素数とする.整数 a に

C P Ia ) ,

( % )= (Legendre記号)

{~ ―1

(pオa ,が 三 a(modp)が整数解をもつ), ( p , ra ,x 2三 a(modp)が整数解をもたない)

を対応させれば,全準同型写像 ( Z ,X)→ ( { 0 ,1 ,-1},x)を得る.

例2 . 3 8 文字

X

の整係数の整式で 0でないもの全体を[*とする. f (x)E/ *

にその係数の最大公約数 c ont/(x)>0を対応させれば,準同型写像

c o n t :( / * ,x)一 → (N,X) を得る. ( § 3 .3 ,g )で一般に示す.)

問2 . 3 7 contを利用して,次の事実を考えよ. ( § 3 .3 ,g )で一般的に扱う.) “整係数の整式が有理数の範囲で低次因数の積に分解できれば,それはすで に整係数の範囲で低次因数の積に分解できる.”

例2 . 3 9 , 2次の実行列全体の集合 M2には加法と乗法が定められている. (i) 正則行列 A を固定するとき,対応 X 1-+AXA-1は , ( M 2 ,+ ,x)の 自 己 同型写像を与える.

( i i ) 対 応 Xf---+t rX (Xのトレース)は,全準同型写像 ( M 2 ,+)→ (R,+)を与 える.

( i i i ) 対 応 Xf---+d e tX(Xの行列式)は,全準同型写像 ( M 2 ,X)→ ( R ,x)を 与 える.

問2 . 3 8 これらを確かめよ.

第 2章 算 法

66

c )像と逆像 定理 2 . 4 準同型写像/:( S ,μ)→ ( S ' ,μ')がある.

'の Sの算法に関して閉じている部分集合 T に対し, その像 f(T)は S 算法に関して閉じている. 証明

f(T)の元は /(x)(xE T)と表わされる.任意の / ( a ) ,f ( b )( a ,bE T)

に対し, f ( a ) μ ' f ( b )= f(aμb)E/ ( T ) .I

T として S自身をとるとき,その像 /(S)を fの像と忍いい, Im/と 書 き 表 わす. 例2 . 2 9の準同型写像か: C*→ C* による N の 像 か (N)は乗法に関して閉じ ている.たとえば

k=2として,平方数全体は乗法に関して閉じている, k=3として,立方数全体は乗法に関して閉じている.

. 3 0の準同型写像 f a :C→ C による T の 像 fa(T)は aTと 書 か れ る . T 例2 が加法に関して閉じていれば, aTも加法に関して閉じている.

例2 . 3 1の準同型写像 g :( R ,+)→(C*,x)の像 Imgは 絶 対 値 1の 複 素 数 全 体の集合 U( 例2 .4 )であり,乗法に関して閉じている.

定理 2 .5

準同型写像/:( S ,μ)→ ( S ' ,μ')がある.

S 'の算法に関して閉じている部分集合 T'に対し,その逆像 1 1(T')は Sの算法に関して閉じている. 証 明 任 意 の a,befーi( T ' )に対し, f ( a ) , f ( b )ET'であるから, f(aμb)=

f(a)μ'fC b )eT ' . ゆえに aμbE1 1(T').I 特に S 'が単位元 e ' をもつ場合を考える. T'={ e ' }は S 'の算法に関して閉じ

1({e'})は Sの算法に関して閉じている.これを ているので,その逆像 1

fの核

といい, Ker/と書き表わす.

. 2 9の準同型写像か: C*→ C*の 核 Kerかは, 1の K乗根全体の集合 W 1 c 例2 であって,乗法に関して閉じている. 例2 . 3 1の準同型写像 g:R→ C*の核 Kergは 2 n : Zに等しい.

§ 2 .2 準同型写像と合同関係

問2 . 3 9 問2 . 3 3の 準 同 型 写 像 加 の 像 Imん は

6 7

w kと一致することを確かめ

. ょ 問2 . 4 0 例2 . 3 1の準同型写像 gによる 1の累乗根全体 W の 逆 像 gーi(W)は

2 心に等しいことを示せ.ー一 同型写像 /:S→ S 'は,算法をもとにして作られる概念や性質に関する限り, S とS 'との間で忠実な対応を与える.これは当然であろう.

:S→ S 'は,必ずしも忠実な対応を与えない.特 しかし,一般の準同型写像 / 別な場合について,概念や性質の関連の程度を調べることは,

しばしば興味をよ

ぶ問題である.ここでは一般的な関連の例をあげておこう.

f~S • S 'を全準同型写像とするとき, ( i )

sが可換ならば, S ' も可換である,

( i i ) eE S ,e ' E S ' , f( e )= e 'とするとき, eが Sの単位元ならば e 'は S 'の単 位元である.

'の任意の元は f( a )( aES)の形に表わされる.いま Sが 可 換 と す [証明] S 'の任意の 2元 f ( a ) , j ( b )に対し,(算法記号を略して) れば, S f( a ) f ( b )=f(ab)=f ( b a )=f ( b ) f ( a ) . これは, S 'が可換であることを意味する.次に eを Sの単位元とすれば, S 'の

( a )に対し, 任意の元 f f ( a ) j ( e )=f ( a e )=f ( a ) ,

f ( e ) f ( a )=f ( e a )=f ( a ) .

これは, f ( e )が S 'の単位元であることを意味する. I 問2 . 4 1 全準同型写像による零元の像は零元であることを証明せよ.ー一

/:S→ S 'が単準同型写像であるとき,

fは同型写像

Sー→ / ( S ) を与える.

したがって, Sと S 'の関係は, S 'の算法に関して閉じている部分集

(S)と S '全体との関係とみなされる.逆に, S 'の算法に関して閉じている 合f

'を任意にとるとき,標準的写像 部分集合 T T'qS' は単準同型写像である. 上の例題と双対的に次が成り立つ.

か S→ S 'が単準同型写像であるとき,

第 2章 算 法

68

( i ) S 'が可換ならば, S も可換である, ( i i ). eE S ,e ' E S ' , f( e )= e ' とするとき, e 'が S 'の単位元ならば eは Sの単 位元である. 問2 . 4 2 これらを証明せよ.

. 4 3 単準同型写像 f:S→ S 'による neSの 像 f ( n )が S 'の零元ならば, 問2

nは Sの零元であることを証明せよ. d) 合同関係による商集合 整数全体の集合 Z において,整数 m~O を法とする合同関係 X 三 y

(modm)

は次の性質をもつ.

x+y三ぷ十 y ' , xy三 ぷy ' .

Q

x三 x ' , Y三 y '⇒

[証明] x-ぷ , y-y'が m で割り切れれば

(x+y)-(ぷ十 y ' )= (x-ぶ)+ ( y y ' ) , xyーぷ y'=(x-x')y十ぷ (y-y') も m で割り切れる. I 一般に,算法μ をもつ集合 S において,同値関係 R が , x ,ぷ ,Y ,y'ESについ て

xRぷ , yRy'⇒

( 2 .9 )

( x μ , y )R( ぷμ y ' )

を満足するとき, R は算法μ と 両 立 す る と い う . こ の よ う な 同 値 関 係 は , 一 般

c o n g r u e n c e )とよばれる. にも合同関係 ( ”の属する同値類を元と書くならば,上のことがらは

え=沼,

( 2 .9 ) '

y=『 ⇒ 石y=ぷ μy'

と書き直せる. さて,同値関係 R が算法μ と両立するとしょう.このとき, S=S/Rにおける 算法

iを

( 2 .1 0 )

, ' .

μ ( 豆 ,y )=μ(x,y )

( x ,yES)

が成り立つように定めることができる.いいかえれば,

x ,yESについて,竺色包

の同値類は, x,yの同値類のみで定まる.このことを直接に確かめるのは容易で

1 . 3 , e )で述べた一般原理を適用してみよう. あろうが, § まず標準的写像冗: S→ S=S/Rを使えば,

( 2 .9 )は

ほX) 冗( x ,y )= 冗 ( X冗 ) ( ぷ ,y ' )= = ?(か μ ) ( x ,y)= (かμ)(ぷ, Y I )

69

§ 2 .2 準同型写像と合同関係

と書き直せる.すなわち,

( 2 .9 )は

, 写像冗 aμ: SxSー→ s

全写像冗 X冗 : SxS

—•

sxs

に関する §L3 ,e )の条件 (I)である.これは条件 ( I I ) , すなわち ( 2 .1 0 ) '



oμ=μo(冗 X司

を満足する写像 f i :sxs→ Sの存在と同値である. ( 2 .1 0 )は ( 2 .1 0 ) 'の両辺を入 れかえて具体的に示したものである.

SxS二 X

s

l _ 1~

冗 一冗

SxS二 → S μ

, , なお,

( 2 ,1 0 )I は上の図式の可換性を示す.そして,このような

定まる.こうして得られた S における算法

Fは一意的に

iを,μ がひき起す算法という.

例 2.40 Z において,整数 m~O を法とする合同関係は加法および乗法と両 立し,商集合

Zmに加法と乗法をひき起す.(下の表は m=5の場合である.) 表2 . 9



0

0



1

2

3 4

X

1

2 百

4

0

1

2

3 4 0

1

2

2

3 4 0 1

2

3

3 4

1 互

3

4

4

1



゜ 1

2 3

゜ ゜゜

3 4

0 互 4

1

1

2

0 0 0

0

1

2 召

4

3

3 1 4 2



4 0 4 百 百 丁

問2 .44 m=6の 場 合 に 算 法 表 を 作 れ . _ さて,

iを特徴づけた上の図式をもう一度眺めよう.この図式の可換性は,標

7と両立すること,すなわち冗が準同型写像 準的写像冗: S→ S=S/Rが算法μ,j であることを意味する.かくして,次のことがわかった. “算法をもつ集合 Sの同値関係 R が算法と両立する” ということは “標準的写像冗: S→ S/Rが準同型写像となるような S/Rの算法が存在する” ということと同値であり,

しかもこのような S/Rの算法は与えられた Sの 算 法

第 2章 算 法

70

に対して一意的である,これが S の算法がひき起す算法なのである. なお,標準的全準同型写像 S→ 5に c )の考察を適用すれば,

( i )

sが可換ならば, 5も可換である,

( i i ) eを Sの単位元とすれば gはSの単位元である. 例2 .41 aキOを実数とする . Rにおいて,差が aの整数倍になるという関係

は,加法に関する合同関係である.これによる商集合は Rmodaあるいは R/Za と書かれる. { ! ,キOが有理数ならば R の代りに Q をとっても同様である.

問2 . 4 5 上のことがらを示せ. 例2 . 4 2 集合 S=NxNにおいて,直積集合としての加法と,次の乗法を一

応天下り的に導入しよう.

( X 1 ,叩)+ ( Y 1 ,Y 2 )=( x 1+Yi,叩十 yふ (功,叫)・ ( Y i ,Y 2 )=( 功 Yげ 叫 Y 2心 収l 叶 叩 yふ このとき § 1 .2 ,d )で与えられた同値関係 如,叫)∼(可,虚)⇔ 叩+紺=叫十ふ’ は,合同関係であって,商集合

5に加法と乗法がひき起される.(乗法との両立

の確認はやや面倒である.)

→(x,0)によって準同型写像 N→ Sが定まる.これと冗: S→ Sを

いま対応 X

合成して,単準同型写像

j : N —•

5

が得られる.そして次が成り立つ.

j ( X 1 )=( X 1 ,叩)十j (叩 ) ( 功 , 叩 EN). 以上の推論は,整数全体 Z および Z における加法と乗法を未知として進めら

x 1 ,叫)→叫一叩によって写 れる.ここで, Z を既知として見直そう.いま対応 ( 像

f :s ー→ Z を定めれば,そのひき起す同値関係が∼に他ならない.そして 全単写像

fは全写像ゆえ,

--

f:Sー→ Z

fが準同型であるよう によって S に定義されている、これが天下り的定義の背景であった.そこで, f

が得られる ( § 1。3 ,c ) ) . さて, Sにおける加法と乗法は;

§ 2 .2 準同型写像と合同関係 と Z を同一視すれば, r c : S→ Sが準同型であるような

7 1

5の加法と乗法が存在し

ている.これが同値関係∼と算法の両立を意味するのであった.

. 4 3 文 字 ” の 実 係 数 の 整 式 全 体 の 集 合 R[ 叫において, 2次 式 が 十 1を 例2 法とする合同関係

f(x)三 g ( x ) (modが +1) を考える.これが R[x]に お け る 加 法 と 乗 法 の い ず れ と も 両 立 す る の は 例 2 . 4 0 と同様である.

したがって商集合 R[xJには加法と乗法がひき起される.いま包

含写像 R½R[叫と標準的写像 R[x] → R[x]の合成写像

j : Rー→ R[x] を考えれば, jは単準同型写像である.そして

炉 =j(-1) が成り立ち,

R伍]の元は次の形に一意的に表わされる. j(a)+j(b)元

( a ,beR).

この推論は § 3 . 3 , e )で一般の形でとりあげられる. 以上は複素数全体 C を未知としての推論であるが, C を 既 知 と し て 見 直 せ ば

の)→ p ( i )によって準同型写像 次のようになる.対応 p( /:R[x]一→ C が定まる(例 2 .3 3 ) . そのひき起す同値関係は合同関係三に他ならない.実際,

p(x)が実係数のとき, p ( i )=0⇒ p(x)が が +1で割り切れる. そして,

fは全単写像

J :R[x] —•

C

をひき起す.したがって冗: R[x]→ R[x]が準同型であるような R[x]の加法と 乗法が存在し,それは合同関係三が算法と両立することを意味する.

問2 . 4 6 有理係数の整式全体 Q[x]か ら , 合 同 関 係 p(x)三q ( x )(modがー 2 ) によって得られる商集合

0伍]の構造を調べよ.

e ) 準同型定理 1 .3 ,c )の後半と § 1 .3 ,e )の後半を復習されたい. この項を読むに先立って, まず §

一般に,写像

f :3 —• S '

第 2章 算 法

72

fの余像) S={ !l(y)I YE f(S)}

のひき起す Sの分割(すなわち



は , fのひき起す同値関係 R1による商集合 S / R 1に他ならない.そして, fは単 写像

/ :S= S/Rr—• S ' をひき起すのであった.この単写像 J は,下の図式を可換 ( § 1 .3 ,d ) )にするもの として特徴づけられる.ただし冗は標準的全写像である. f

S~S'

冗 ↓ /

、 リ

なお,

fの像と

fの像は一致するので, fが全写像のとき, fは全単写像であ

る .

, S 'がそれぞれ算法μ,μ'をもち, さて, S

fがこれらと両立すれば,次の準同

型定理が成り立つ.

.6 算法をもつ集合の間の準同型写像 定理 2 /: ( S ,μ)一 ( S ' ,μ ' ) がひき起す Sの同値関係 R1は,算法μ と両立する.そしてひき起された 写像

/ : (S/R互)—→ ( S ' ,μ ' ) は単準同型写像である.なお, fの像 f (S)はμ'に関して閉じた S 'の部 分集合であり,

Jは同型写像 } ' : (S/Rヵ ji) —→ (f( S ) ,μ ' )

と包含写像 f(S)4S'の合成に分解される.

証明

x ,ぷ ,y ,y'ESについて,

訊 元 yR1y' ⇒ f(x)=f(ぷ ) , f ( y )=f ( y ' ) ⇒ f(xμy)=f(x)μ'f(y)=!(ぷ)¢扉) =!(町渾) ⇒

(xμy)R心 げ ) .

なゆえ, すなわち R1はμ と両立する.そして t=f

J c岳 μii)=f(五μ y )=f(xμy)

7 3

§ 2 .2 準同型写像と合同関係

=/(の) μ ' f ( y )= ! ( 元 )μ ' f ( y ) , すなわち

fは準同型写像である.I

例2 . 4 4 例2 . 3 1の準同型写像

g :( R ,+)ー→ ( C * ,x)

(0~cos0+isin0)

のひき起す R の同値関係 R。は xR。ぷ⇔ X ーぷ€ 盆 Z

で与えられる.これは”三 x'(mod2 冗)と表わされる.また gの 像 Uは 絶 対 値

1の複素数全体の集合であり,同型写像 g : (Rf三mod2 冗,+)一→ ( U ,X) がひき起される.

. 4 5 問2 . 3 3の準同型写像 例2 ( Z ,+ ) : : -(C*,x)



2 n 冗 . 2 n冗 ( n~cosk廿 sink)

のひき起す Z の同値関係は, Kを法とする合同関係である.また加の像は 1の

k乗根全体の集合

w kであり,同型写像 広:(公十)一→ ( Wk,x)

がひき起される. 例2 . 4 2の解説の後半は, f:NxN→ Z について実質的に準同型定理の内容を 扱っている.そして同型写像

f:NxNー→ z

(加法と乗法)

が得られる.

. 4 3についても同様であって,同型写像 例2

J :亨—→ C S

(加法と乗法)

が得られる.ー一 準同型定理の状況は少し一般化しておくと都合のよい場合がある.いま算法を

S ,μ ) ,( S ' ,μ ' ) , , C S " , μ " )の間で もつ集合 ( 準同型写像

f :sー→ S ' ,

全準同型写像

p:'s―心”

が与えられ,条件 冠 ,

yES について P(x)=p(y)~f(x)

=f(y)"

が成り立つとする.そのとき,下の図式を可換にするような写像

第 2章 算 法

7 4

/ :S"一→ S ' が一意的に定まることはすでに述べた ( § 1 . 3 , e ) ) . I '

s : 二

tS'

P l , , ,、 _ , , ' ; S" このとき,

fは準同型写像である.

[証明] S"の 任 意 の 2元 は p(x)'p(y) ( お , yES)と 表 わ さ れ る . そ し て

=

f(p(x)μ"p ( y ) ) f(p(xμy))= f(xμy)= ! ( の ) μ'f(y) =f(pは ))μ'. 「 ( p ( y ) ) .

fがμ",μ'と両立することを示す. I



これは



例2 . 4 6 整数 n,m~O について,標準的全準同型写像

f:Z を考える.

もし

Z n , p :Zー→ Zm

nJmな ら ば , 上 の 条 件 “ ” が 成 り 立 ち , 下 の 図 式 を 可 換 に す る

写像J :Zm→ Z nが 一 意 的 に 定 ま り , 全 準 同 型 写 像 で あ る .

f

Z― ― → Z n

p l / t Zm 問2 . 4 7 条件を確認せよ.

§ 2 .3 半 群 と 群 , 算 法 概 念 の 拡 張 第 1章で眺めたように,自然発生する算法には結合法則を満足する忍のが多い.

この節

では,そのような算法を忍つ集合すなわち‘半群’について,基本事項をまとめる. これは, 環の加法および乗法構造の両面で利用されよう. ‘単位的半群’や‘群’の概念は,単位元やそれに伴う逆元が存在するという‘公理’で規定 されるのが通例である.

しかしこれらの元を,与えられた‘構造’と考えるとき,周辺の諸

概念との関係が見易くなる. このことを動機として,算法概念を拡張する一つの方法を示 す.その結果として,通常の‘算法’の他に‘作用’忍扱われていることになる.

こうして,

第 3章以降の環’‘加群’‘多元環などについての類似の基本事項は,‘同様に’示されるので はなく,‘同時に’示されていたことになろう.ーロにいえば,‘構造’と‘公理’を適切に分 離し,構造のみに注目することが,基礎理論の形式的な部分の繁雑さを解消するのである. ところで,個々の代数的構造に対する興味の多くは,それらの独自性にある.それは,

) ,g )は一応保留し, 構造に課される‘公理の方に由来する.その意味で,形式論を扱う項 f

§ 2 .3 半群と群,算法概念の拡張

7 5

‘群’‘環''加群’‘多元環’などに関して引用されたとき,それらに即して意味を確認するよう にして忍よい. 最後に,群に関して最低限の必要事項をまとめる.ただし,巡回群については,環の基 本例を扱う準備として,ややていねいな扱いをするであろう.群に関する詳しいことがら は本講座の“群論”にゆずりたい.

a ) 結合法則 算法をもつ集合 ( S ,μ)において,性質 任意の X,Y ,zES について

( の μy)μz=xμ(yμz)

が成り立つとき, S(の算法)は結合法則を満足する,あるいは Sは 半 群 ( s e m i -

group)であるという. 結合法則は次の図式の可換性に他ならない.

SxSxS~竺竺 SxS

」↓μ

μxids

SxS _ ! _ ら 半群

s

Sの空でない部分集合 Tが算法に関して閉じていれば, Tはひき起され

た算法に関してもちろん半群であり, S の部分半群といわれる.たとえば基本的 な例 2 . 1 ,例2 .2 ,例 2 . 3の算法はいずれも結合法則を満足するので, § 2 .1 ,b ) でとりあげた算法をもつ集合はすべて半群である. 半群



Sの同値関係 R が算法と両立するとき,商集合 S/Rはひき起された算法

に関してやはり半群であり, S の商半群といわれる. 上記の事実を,次の形で確認しておこう. 注意標準的準同型写像 T → s , s→ S/Rを考えよ.

S , S 'を算法をもつ集合, /:S→ S ' を準同型写像とする.

( i ) fが単写像のとき, S 'が半群 ==?Sが半群. ( i i ). fが全写像のとき, Sが半群 ==?S'が半群.

[証明]

, のY ,zESについて,

f ( ( x y ) z )= f(xy)f( z )= (f(x)f( y ) ) f ( z ) , y z )=f(x)(f( y ) f ( z ) ) . f( ;( y z ) )=f(x)f( さて,

S 'が半群ならば上の 2式の最右辺が等しO

¢ の具体的な値は次第に明らかになろう.

( 3 .9 )

素数 P に対し

まず,

< p ( P )=p-1.

pオaならば Pと aの共通の約数は,キPゆ え, . . . , 1でなければならな ぃ.すなわち aは Pと互いに素である. よって 0以 外 の 法 Pの 剰 余 類 p-l個 は Pと互いに素である.I [証明]

かくて次の事実が成り立つ.

.2 素 数 Pに対し, 定理 3

Zpは可換体である.

注意直接の別証明を与えよう.

a キ0の倍元 a 元 ( ゑ EZ p )の全体 aは ( Z p ,十)の部分

群であるから,その位数は Pの約数である.それは 1でないので Pと一致し,

a = Z p .よ

aは可逆元である. さて,可換体は整域であるから,任意の a ,Gez pについて 而 =0⇒ a=O または 6= 0 ,

って臨 =1となるえが存在し,

すなわち次が成り立つ.

a,bEZ について, これは

pJab~Pia または pJb.

Pが Z の素元であることを意味する. したがって

系 素数は整数環 Zにおける正の素元に他ならない. 次に商環

( 3 . 1 0 ) [証明]

Z p n(P

は素数 n~l) を考えよう.まず

. Oに対し, < p( m n )=m n l < p(m)を示そう.整数 a>Oに 対

し , m,aが互いに素 #mEZaが 可 逆 元 # m 咋 Zaが 可 逆 元 #mn,aが互

第 3章 環

124

いに素.したがって法町の剰余類の代表 O~alは 真 の 約 元 を も つ の で m=ab, 1
l).

問3 . 6 0 このことを確かめよ.ー一 例3 . 2 5 次の元 0を考えよう.

( neN ' ) .

o ( n )= 1

そ の 逆 元 炉 を μ と書き, M曲 i u s関数という.具体的には

Iμ(l)=1 , ( 3 .6 9 )

l μ ( P 1 ・ ・ ・加)=(ー 1戸 μ(n)= 0

[証明]

.

( p , ,…,かは異なる素数), ( nが 1でない平方因数をもつとき).

まず,互いに素な m,nに対して

( 3 .7 0 ) μ ( m n )=μ(m)μ(n) を示す(この性質を‘乗法的’という) .

m nの大きさ(あるいは素因数の個数)に

ついての帰納法による. mn>lのとき,帰納法の仮定を用いて

=芦ミ μ(cd) =µ(mn)-µ(m)µ(n)+~ 芦μ(c)μ(d)

0= (μ*o ) ( m n )= d~nµ(d)

+ ( ミ μ(c))(芦μ(d)).

=μ(mn)-μ(m)μ(n)

ここで m>l または n>lゆえ,第 3項の因数の一方は 0 ,

. : . μ(mn)-μ(m)μ(n)=0 さて, μ (l)=~ は明らかであり,素数 Pに対して

μ(p)+μ(l)= 0 ,

: . μ(p)= -1,

十 μ(p)+μ(1)= 0 , μ(pり

: . μ(pり=0 .

以下帰納法で μ(p り=0(k>l)がわかる.これとμが乗法的であるという性質を あわせればよい. I

問3 .6 1 '乗法的’な f,geK 《 N'》の積 f*gが‘乗法的’であることを示せ. 問3 .62 L < p ( d )=nC問 3 .1 9 )より < p ( n )= Lμ(d)(n/d)を導け. d i n d 厄

§3.2 問 題 l 整域 R の自己同型は, R の分数体 K の自己同型に一意的に延長されることを示せ.

第 3章 環

1 6 6

2 盤域 R の部分集合 S が条件 "SS~S, 体

5忍同じ条件を満たし,

o * s , leS"を満たすとき,

Sの元の約元全

Rs=Rsであることを示せ・

3 前問の記号で, S={XERIのは Rsの可逆元}を示せ. 4 加法群 M の自己準同型全体 End(M)は,値による加法と合成による乗法に関して 環になることを示せ.

5 環として End(Z,+戸 Z , End(Zn,+)~Zn であることを示せ.

6 環 R に対し, Mnm(R)~Mn(Mm(R)) を示せ. 7 実 2次行列 A に対して, R={のl+yAI X ,yER}は M2(R)の部分環であることを 示せ.

また A がスカラー行列でないとき,次の 4条件は互いに同値であることを示せ.

(i) R~C.

( i i ) R".{ O } に属する行列は可逆. ( i i i ) R " .{ O }は乗法に関して閉じている. ( i v )

A の固有方程式は実根を忍たない

8 Hamilton の 4 元数体 H において,企=— 1 となる元 X が無数にあることを示せ· 9 可換体 k 上 の 年 の 群 環 は , 標 数 キ 2 , 3のとき M2(K)xKxKに同型,標数 2の とき M2(K)x D (Dは ( 0 ,0 )型 2次多元環)に同型であることを示せ.

1 0 有限可換体の 0 でない元全部の積は— 1 に等しいことを示せ.特に Zp を考え, (P-1)! 三— 1 ( modP )( W i l s o n )を示せ. pは素数とする.

1 1 有限可換体 F上の関数環 Map(F,F)は,整式環 F[X]のある商環と同型であるこ とを示せ. また,このことを直積集合 Fn上の関数環の場合に拡張せよ。

§ 3 .3

イデアルと素元分解

素因数分解の理論の拡張が代数体の整数論で行き詰まったとき,既約元を割り切る対象 としての Kummerの理想数の概念を経て, Dedekindはイデアルの概念を導入した. 今日のイデアルの概念は,一般の環に対して,極めて自然で必然的な忍のとして登場す る .

この節ではイデアルに関する初等的な事項をまとめ,環の理論でそれらが果す役割の

一端を示す.



a . u s s整域とよばれる環の種類 一方,‘素因数分解’の方向で可能な限り突き進むとき, G に到達する.

この種類は,整数環は忍とより,多文字の整式環を忍含んでいるので,整数

論のみならず,代数幾何学の方面に対して忍基本的な役割を担う忍のである。

a )合同関係とイデアル 環 R における同値関係三を考えよう.

( R ,+)が可換群であるから, 0の 同 値 類 Oを

a={ ae RIa三 O } と書くとき,三が加法と両立するためには

1 6 7

§ 3 .3 イ デ ア ル と 素 元 分 解

( i ) aが R の部分加法群 ( 3 .7 1 )

X



y ⇔ x-ye a ,

であることが必要かつ十分である.またこれらが成り立つとき,

( 3 .7 2 )

元=幻十 a=a十x

(xeRの同値類).

さて,加法と両立する同値関係三が乗法とも両立するためには,

( i i ) xER, aEa= = = }x a ,axEa が必要かつ十分である.

[証明]

乗法と両立すれば, aea===}a三0 = = = }xa三xO=O= = = }xaE a . 同様に

axE a . 逆に ( i i )を仮定すれば,

X 三訊

y三y ' = = = }X —訊

y-y'Ea=⇒

x(y-yり ,

(x-x')y ' Ea = = = }xyー ばy'=x(y-y')+(x-xりy'Ea= = = } x y三 ばy ' .I かくして,環としての合同関係による 0の同値類 aは , ( i ) ' ( i i )で特徴づけら れる.この条件を満足する部分集合 aを環 R のイデアル ( i d e a l )という. 一般に,環 R の零元だけから成る部分集合 { 0 }は R の最小のイデアルである. これを零イデアルという.

また R 自身は R の最大のイデアルである.これを単

位イデアルという . Rのイデアル aは,可逆元(たとえば単位元)を含めば単位 イデアルである.

問3 . 6 3 これを示せ.ー一

例3 . 2 6 整数環 Zの加法に関する部分群はすべてイデアルであり,それらは 次の通り:

Zm [証明]

zのイデア

Jレは加法群

. (m=O,1 ,2 ,… ) . Z の部分群であるから,定理 2 .1 3により,そ

のすべてが上記のように与えられる.

i i )も満足し,イデ ところでこれらは条件 (

アルである.' 任意の可換環 R において,一つの元 aの倍元全体 Raは R のイデアルである。

p r i n c i p a l これは aを 含 む 最 小 の イ デ ア ル で あ り , a が 生 成 す る 主 イ デ ア ル ( i d e a l )あるいは単項イデアルとよばれる. § 3 .1 ,c )では,乗法のみに注目して a の定める主因子とよばれ, ( a )と書かれたものである。今後イデアルとしてもこ の記号を用いよう. さて,一般の環

R において任意のイデア)レ aが与えられたとする.そのとき,

( 3 .71)によって定められる同値関係三は環としての合同関係である.これを,

第 3章 環

1 6 8

aを法とする合同関係といい,印三 yを x三 y (moda ) と書き表わす.この関係で定められる商環尺を, R の aに関する商環あるいは 剰余類環といい,

R/a と書き表わす.これは aに関するすべての剰余類 x+a(=a+x)の集合であり, 加法と乗法は次の通りであった:

(x+a)+(y+a)= (x+y)+a, (x+a)(y+a)= xy+a. 環 R の零イデア Jレ { O } に関する商環 R / { 0 }は標準的に R と同型,単位イデア

R に関する商環 R/Rは零環である.

Jレ

定理 3 .1 5 環 R のイデアル aについて次の 2条件は同値である.

(i) aキR であり, x,yeRについて,四yea===}の Eaまたは yEa. O }でなRp=(p)が素イデアル. 整 数 環 Z のイデアル Z m(m~O) ( 例3 .26)のうち,素イデアルは m が 0また は素数の場合である.

b ) 準同型定理 環 R のイデアル a に対し,標準的全準同型 冗:

Rー → R/a

を考えれば, R /aの各元は,その元の上のファイバーすなわち冗による逆像と一 致している.特に R /aの零元上のファイバーは aである.



一般に,環の間の準同型

f:R

R ' について, R の零元上のファイバーすなわち, O R 'の逆像は,

fの 核 と よ ば れ

Ker/と書かれた.準同型定理(定理 2 .6 )は環について次の形に表わされる. .1 6 環の間の準同型 f:R→ R 'の核を aとすれば, 定理 3 (i) : aは

Rのイデアルである.

fのひき起す同値関係は, aを法とする合同関係である。 ( i i i ) fの ひ き 起 す 写 像 / :R / a :→ R 'は単準同型である. ( i v ) fが全写像ならば f は同型である. ( i i )

R f) R '

j/~ これをもとにして, R 'のイデアル

o 'の逆像を考えよう.

まず逆像 f l =1 1( o ' )は当然 aを含み, bは R の イ デ ア ル で あ る . 実 際 , 標 準 的全準同型冗I :R '→ R ' / b 'をとるとき, bは かfの核である。

R

f

>

R '

1Cl~lが

R/bーー→ R ' / b ' 次 に かfのひき起す写像を考え,単準同型

( 3 .7 3 )

勾: R/bー→ R'/b'(fl=f噸))

1 7 0

第 3章 環

を得る .fが全準同型のとき,これは同型である. 以下,全準同型について考えよう.まず全準同型 f:R →R 'に よ る アル

Rの イ デ

bの像 / C o )は R 'のイデアルである.

問3 . 6 4 これを示せ.ー一

fの核 aに対して,標準的全写像冗: R→R / aをとる. aを含む R のイデアル bは , aを法とするいくつかの剰余類の合併集合であっ て , aを法とする合同関係による商集合を o / aと 書 く と き , 明 ら か に 冗 ( o )= o / a さて,対応 o~/Co) は,次の全単写像を与える.

である.

{ aを含む R のイデアル全体}ニ::'...+{ R 'のイデアル全体}. なお逆写像は対応 o'~1-1(0') によって与えられる.

[証明]

fによる

R'の各元上のファイバーは a を法とする剰余類であるから,

aを含むイデアル bに対して fー1 ( / , ( o ) )= o . また, fが全写像ゆえ, R 'の 部 分 集合 o 'に対して 1 c 1 1 ( 0 ' ) )= o ' . よって対応 o~JCo), o '→fー1C o ' )の 定 め る 写 像は互いに他の逆写像である.I

R の任意のイデアル aに対して,標準的全準同型冗: R→ R / aに上記の 考察を適用すれば, aを含む R のイデアルと R / aの イ デ ア ル と の 対 応 b →o / a 特に,

が得られる.

例3 . 2 8 商 環 Zm=Z/(m)の加法に関する部分群はすべてイデアルであり,そ れらは次の通り:

(n)/(m)

(n は m の約数 ~0).

これらは互いに異なる. 冗 : Z→ Zmによる部分群

[証明] アルゆえ,

o 'の逆像 bが Z の部分群,

したがってイデ

o ' =冗( o )も Zmのイデアルである.上記の一般論より, (m)を含むす

べての部分群を決定すればよい.それらは明らかに, m の約数 n~O について ( n )と表わされるものである. I 注意

m=O の約数としてはすべての整数 n~O をとる.

さて,零環でなく,零および単位イデアル以外にイデアルをもたない環を,



ばらくは単純環とよぼう. 注意

これを準単純 ( q u a s i s i m p l e )とよび, 忍っと強い条件を満たすときに単純 ( s i m -

p l e )とよぶことがある.

1 7 1

§ 3 .3 イデアルと素元分解 例 3~29

体は単純環である.可換環については逆が成り立つ.

[証明]

体のイデアルが 0以外の元,すなわち可逆元を含めば,それは単位イ

デアルである.逆に可換な単純環 R の元 aキ 0に 対 し , そ の 生 成 す る イ デ ア Iレ

Raは 単 位 イ デ ア ル R と一致する. よって a x : : : : : C l となるの ERが存在し,

aは

可逆元である.'

例3 . 3 0 単 純 環 S上の完全行列環 Mn(S)は単純環である. [証明]

0 }で な い 環 と す る . い ま は じ め は S を任意の {

M以S )をS加 群

S〈{ 1 ,… ,n }X { 1 ,… ,n }〉とみての標準基底 ( E i j )に i , j ; ; , nをとる.すなわち E i jは , ( i ,j )成分が 1で他の成分が 0の行列(行列単位とよぶ)である.そのとき,

まず

f n ( S )の ( i ,j )成分を a i jとする. 次の等式に注目しよう.ただし A 豆i

( 3 .74)・. ・EpiAEjq=a⑮ pq~E尼ij• Mn(S)のイデア Iレ別に対し, Sの部分集合 的 ={ xES Ix は或る

を考えれば,

AE別の ( i ,j )成分}

( 3 .74) より,一般に aij~apq.

したがって a i iは Sの一定の部分集

合である.これを a と書けば, 別 ={AEMn( S )I A のすべての成分が Ea}

e

となる.ここでスカラー行列えI( え S )による左右の乗法を考えると,

aは Sの

イデアルであることがわかる. 以上より,特に Sが単純環ならば,

aとして零および単位イデアルしかなく,

)も単純環である. I 別も同じ性質をもつ.すなわち M以S 注意 上の証明から分るように,任意の環 S について, S のイデアルと M i , , ( S )のイデ アルが 1対 1に対応する.

定理 3 .1 7 環 R のイデア Jレaについて次の 2条件は同値である。

(i) a キ R であり, a~b~R となるイデア)レ b は存在しない. ( i i ) 商環R /aは単純環である.

R が可換のとき,これらは, さらに次と同値である. ( i i i ) 商環 R / c iは体である.

証明全単写像

第 3章 環

172

{ aを含む R のイデア Jレ}二4{R/aのイデア J} レ が定まるので,

( i ) ,( i i )は同値である.可換環 R に対して R/aも可換ゆえ, ( i i )

⇔ ( i i i )は例 3 . 2 9による.' maximali d e a l )という. 上の条件を満足するイデア Jレaを Rの極大イデアル ( 特に,可換環 R について,

R は 体 #{ O }は R の極大イデア J. レ 可換体は整域であるから次の系を得る.



可換環の極大イデアルは素イデアルである.

. 3 1 Z のイデアル Zm(m~O) のうち,極大イデアルは m が素数の場合 例3 である. ZO={ O }は素イデアルであるが,極大イデアルでない. 問3 . 6 5 整域

K 上の整式環 K[X,YJのイデア Jレ ( X )は素イデアルであるが

極大イデアルでないことを示せ.—

一般に,可換環の間の準同型

f:Rー→ R ' による

R の素イデア Iレp 'の逆像 f ー1( p ' )は R の素イデアルである.

[証明] fは単準同型 R/fーl ( p ' )→ R 'ぽ を ひ き 起 す ( ( 3 .7 3 ) )が , R ' / p 'が 整 域

ゅぇ R/fー1 ( p ' )も整域であり, fー1 ( p ' )は素イデアルである. I しかし,極大イデアルの逆像は,素イデアルではあるが,極大イデアルとは限

→Q による極大イデア Iレ { O }の 逆 像 { O }を らない.たとえば標準的準同型 f:Z .3 1 ) . 考えよ(例 3 c ) 分数環のイデアル ここで,整域 R に話を限り,その分数環 Rsとの間でイデア)レの対応を見て おこう ( § 3 .2 ,a )参照).

標準的準同型(包含写像)

f:Rー→ Rs={xs―lIXER,SES} による Rsのイデアル bの逆像 fー1(o)=Rnoは R の イ デ ア ル で あ る . こ の 翌

応 o~Rnf> は,包含関係を保つ次の単写像を与える. { R sのイデアル}ー→ {Rのイデアル}.

§ 3 .3 イ デ ア ル と 素 元 分 解 なおこの単写像の像からの逆写像は,対応 a~as=

173

{ a sー1 1aE a ,sES}で与えら

旱・ 注意 as は {a~I aE a ,どER s }と忍表わされるので, aR8と書くこと忍ある. [証明]

まず R の任意のイデアル aに対し, a sは aを含む Rsの最小のイデ

アルであることに注意しよう. b から出発すれば,上の注意より (Rn'6)s~b であるが,任意の XS― 1 E0に 対

Rno)8, よって (Rn0)8~0. ゆえに (Rnb)s=b.I して xERnbゆえ, XS―1E( さて,上の単写像の像に属する R のイデアル aは次の性質で特徴づけられる:

(I) xeR, sES, s の Ea = = } XEa. [証明] a=Rnbをとれば,

. 逆に, って XEa

(I)の仮定より, SXE0 . ゆえに, XE0 . したが

(I)を満足する R のイデアル a をとろう.任意の xERnas

に対し, x=asー1 ( aE a , sES)と書けば, sx=aE a , ゆえに XEa , よって Rnas

~Ct.

~ は明らかゆえ,

なお,

Rnas=a.I

(I)から次の ( I I )は直ちに導かれる.

( I I ) a = R または anS=! 1 1 . 実際, sEanSがあれば, s=slEaゆえ,

(I)より 1E a , ゆえに a=R.

注 意 一 般 に は (Il)=}(I)は成り立たないたとえば R=Z, S={ 2 nI nEN}, a= ( 6 )を考えよ.

ところで素イデアル aについては (Il)==}(l)が 成 り 立 つ . こ れ は 明 ら か で あろう.したがって,上述のイデアルの対応は,素イデアルについて簡明にな

る : 対応 q~Rnq は次の全単写像を与える:

{Rs の素イデアル}二~{S と交わらない R の素イデアル}. なお逆写像は,対応 P~Ps= { p s―lI pE, P , SES }が与える.

例3 . 3 2 整 域 R の素イデア)レ Pに対し, S=R"p ,( , pの補集合)とおけば,

ss~S, 0~s, 1ES . そこで R の Sに 関 す る 分 数 環 Rsが 作 ら れ る ( § 3 .2 ,a ) ) . Rs_を , R の Pによる分数環とよんで Rpと書くことがある. (この用語と記号は 誤解を招き易いが,慣用なので注意されたい.)

, さて Pは

( I I )を 満 足 し て キ R

であるような最大のイデアルであるが,素イデアルゆえ, (I)を満足する.

した

s : = ={ p s―lI PEP ,SER", p }は,キ Rpであるような最大のイデア がって対応する P

第 3章 環

174

ルである.ー一 一般に,全体と一致しないイデアルのうち最大のものがあるような可換環を局

l o c a lr i n g )という. 所環 ( の素イデアル

さらに整域ならば局所整域という.上の例は,整域 R

Pによる分数環 R pが局所整域であることを示している.

局所環 R の キ R であるような最大のイデア Iレ m は も ち ろ ん 一 つ し か な い 極 大イデアルであるが, それは非可逆元全体から成る.実際,

m は可逆元を含まな

a )は全体と一致しないので, m に いが,任意の非可逆元 aの生成するイデアル ( 含まれなければならない. 注意

, Em. よって a

局所環の定義を“唯一つの極大イデアルを忍つ可換環”とすることがある.この

場合は,その極大イデアルが全体と一致しない最大イデアルであることを示すのに, Zorn の定理 ( § 1 .2 ,e ) )を必要とする. このあたりの議論は,可換環のより詳しい理論を扱うと' きまで保留する.

問3 . 6 6 可換環 R の非可逆元全体

mが加法に関して閉じていれば, mは キ R

であるような最大のイデアルであることを示せ.一一 上の例についてもう少し調べよう.標準的単準同型

R / pー→ R心 凡 をひき起すが,これによって 整域

R→ Rpは,単準同型

(成=匝、p )

R / pを R心 凡 の 部 分 環 と み な せ ば , 体 R p / p R pは

R / pの分数体である.特に Pが極大イデアルのときは, R / pと R p / 叫心が同

一視される.

d) イデアルの生成 環 R のイデアルとは, R の元による左右の乗法 の一→⑬,

か 一 心: a

に関して閉じた部分加法群のことであった. 対して,共通集合

( aER)

したがって,イデアルの系

n缶も同じ性質をもち, R のイデアルである.

(ai)iEI t こ

i eI

いま R の部分集合 S に対し, S を 含 む す べ て の イ デ ア ル の 共 通 集 合 a は , S を含む最小のイデアルである.これを Sが生成するイデアルという.

)まで),可換環のみを扱う. 以下当分の間(項 g 可換環

Rの一つの元 aが生成するイデアルは ( a )と書かれ,主イデアルある

1 ,… , anが生成するイデアルを いは単項イデアルとよばれた{一般に R の元 a

( a 1 , . ・ " ,an)

1 7 5

§ 3 .3 イデアルと素元分解 で表わす.そのとき

( 3 .75)・(a1,… ,d n)= { 叫 a叶 … 十 ② 心 I X 1 ,…,叩 ER}. 功,…,叩のうちの一つを 1とし,残りを 0とすれば, X1a1+… +xn 仰

[ 証 明 ]

は各 a iを表わす.

よって右辺は a 1 ,…,a nを含むが,イデアルであることが容易

1 ,…,anを含むイデアルはもちろん初の十…十 X n l l n に認められよう. ところで, a の形の元を含まなくてはならない.

したがって右辺は a 1 ,… ,

a nの 生 成 す る イ デ

アルである.'

.2 6が示すように,整数環 Zのイデアルはすべて主イデアルである.一般 例3

p r i n に,すべてのイデアルが主イデアルであるような可換環を,主イデアル環 ( c i p a li d e a lr i n g )あるいは単項イデアル環という.それがさらに整域であれば, p r i n c i p a li d e a ldomain)という. 主イデアル整域 ( .33 例3

Z : 節は主イデアル環である.ー一

一般に,主イデアル環の商環は主イデアル環である.

[証明]

主 イ デ ア ル 環 Rから商環への標準的全準同型 r c :R→ R をとり

Rの

c i c o )の生成元 aをとれば, b=rc(Ra)= R r c ( a ) .I イデアル bの逆像 r

1 5の整域 Z1,Zcp)は 主 イ デ ア ル 整 域 で あ る . _

例3 . 3 4例3 .

—穀に,主イデアル整域 R の分数環 Rs は主イデアル整域である. [ 証 明 ] 標 準 的 単 準 同 型 R→ Rsをとり, Rsのイデアル bの 逆 像 Rnoの生 a x sー 1I xER,sES}=Rsa,I 成元 aをとれば, o=(Ra)s={ 主イデアル整域の基本性質をあげよう.

定理 3 .1 8 主イデアル整域 R において,

( i )a 1 ,… ,a nERの最大公約元 dが存在し, d =a 1功十…十 a n℃n . ( x i ,… , XnER) と表わされる.

( i i ) 既約元と素元は一致し,その生成するイデアルは極大イデアルで ある.

注意

したがって ( 0 )でない素イデアルは極大イデアルである.

R=Zに対しては, ( i )の存在性と ( i i )の前半をすでに示した. ここではその場合

を含めて一般に扱う.

第 3章 環

1 7 6

証明

( a 1 ,… ,a n )の生成元 dをとれば d=a1功+… +an囮 と 表 わ さ れ る . d

はすべての a iの約元であるが,逆にすべての a iの共通約元 示から,

Cは

dの約元である.

C

をとれば, d¥ の表

よって dは最大公約元である.

次に,素元はつねに既約元であった.いま R の 任 意 の 既 約 元 P に対し,

( p )

を含むイデアルの生成元を d としよう. d lPゆえ, pの既約性から d-pまたは

d-1. 前者の場合 (d)=(P), 後者の場合 ( d ) = ( l ) . したがって ( p )は 極 大 イ デ

Pは 素 元 で あ る ( 0 )でない素イデアルは素元で生成され,極大である. I

p )は素イデアルであり(定理 3 .1 7の系), アルである.ゆえに (

.2 7 ) . さらに, ( 例3

主イデアル整域の有用な判定条件をあげよう(定理 3 .1 9 ) . 整 域 R から N U{ -oo}への写像 0を適当に定めることにより,条件

"Rの任意の元 aキ 0 ,bに対し,或る q ,reR をとれば, b= aq+r, ・ o ( r )0となる Pは有限個}. , すなわち a~o には, N〈P 〉におけ こうして, PD(R)に お け る 整 除 関 係 叫 o る整除関係 f a l fり す な わ ち

( 3 .8 0 )

.. f~g •

f(p)~g(p)

で与えられる順序関係 fa~.戸が対応する:

( pEPPD(R))

§ 3 .3 イ デ ア ル と 素 元 分 解

a~o

( 3 .8 1 )



1 8 5

fa~f 凡

したがって PD(R)における上下限には, Npにおける下上限が対応する . N 〈 P〉

P〉に属し, N〈P〉 の 有 限 部 分 集 合 の 上 限 は の 部 分 集 合 の 下 限 は つ ね に N〈

N〈P〉に属する.かくして, PD(R)の部分集合はつねに上限をもち,有限部分 集合は下限をもつことになる.

a i )は 最 大 公 約 元 d したがって R の任意個の元 (

をもち,有限個の元 ( a山 ; ; ; i~n は最小公倍元 m をもつ.具体的には v l > ( d )= M _ i n叫 a i ) ,

( 3 .8 2 )

vμ(m)= Max叫 叫 1 ; ; , i ; a i ; n

さて,半群 R に関する条件 ( 0 ) ( i l l )の他に次の条件を考えよう。

( I V ) 0でも可逆元でもない元は素元の積に分解される.

(V) 0でない任意の 2元に対し,最大公約元が存在する. . 2 0 簡約条件 (0)を満足する可換な単位的半群 R において,次 定理 3 の条件 ( i ) ( i v )は互いに同値である.

(i) (I)かつ ( I I ) (約鎖条件と素元条件), ( i i ) ( I I I )

(一意分解条件),

( i i i ) (N)

(素元分解条件),

( i v ) (I)かつ (V) (約鎖条件と最大公約元条件). 証明

( i )二 ⇒( i i i ) 定理 3 .1による.

( i i i )⇒ ( i i ) まず (N)⇒ ( I I )を示そう.既約元 aを素元の積として a=P1 …Pn(n~l) と表わす.そのとき,かは a の約元で 1 と同伴でないから, P1-a.

P n -l .

ゆえにか…

したがって n =li すなわち aは素元である.次に ( I I I )にお

ける分解の一意性は,定理 3 . 3の証明がそのまま通用する.

( i i )⇒ ( i ) まず ( I I I )⇒ (I)を 示 そ う . い ま 列 仰 が 性 質 a n + lI an(nEN) をもつとする.或る anキ0ならば,それ以降はキ 0ゅぇ,すべての anキ0として よい. そのとき自然数列

L叫 an)

えn=

p eP

は減少する.

よって或る番号

(n~N) となる.次に (ill)

N をとれば,ぇ n=A



1(n~N). このとき a n l l n + 1

= ; ,( I I )を示そう.既約元 P に対し ( P )=pと書けば,

第 3章 環

1 8 6

P lab 二 1= ツp(p)~ ッv ( a b )=ッ p ( a )+ッ p ( b ) ⇒ 以a)~1 または Vp(b)~1 =? Piaまたは P l b . ( i i )==}( i v ) ( i l l )==}( I), ( i l l )==}(V)がすでに示されている. ( i v )==}( i ) (V)⇒ ( I I )を示せばよい(下記) .I 条件 ( i l l ) ,(N)の同値性から, G auss整域すなわち一意分解整域を,素元分解 整域とよぶこともある.

I I )の部分を示す過程で,最大公約元に関する 上の証明で残された (V)==}( 若干の補充をしよう.

V)を仮定する. R を可換な単位的半群とし,簡約条件 (0)と最大公約元条件 ( PD(R)は順序集合であるから, 2元の上限があれば,任意の有限個の元低…, a n の上限も存在し,それを [ a 1 ,… ,a 』と書くとき次が成り立つ.

( 3 .8 3 )

[ [ a 1 ,. ・ ・ ,a n 1 J ,a n ]= [ a 1 ,・ ・ ・ , a n , ] .

[証明] n=2のときは自明である. n>2とする..[ a 1 ,…,a n 1 ]=oの存在を仮

1 ,…,an-1~0 ゆえ, 定するとき, a

[o,

a』 は a 1 ,…,凸の上界である.いま, a 1 ,

・・・,%の任意の上界 a をとれば, b の定義より o~a, したがって [ o ,a』 は a 1 ,…,%の上限である. I

また a ふ泣ゆえ [ o ,a』 ~a.

乗法との関係として次が成り立つ.

( 3 .8 4 )

[ a 1 ,・ ・ ・ ,a』o= [ a 1 0 ,・ ・ ・ ,a n o J ,

ただし

a i= I =( 0 ) .

[証明] [ a 1 ,… ,a 』 =aとお2のときは帰納法によればよい.' さて (V)==}( I I )を示そう .pを既約元とし, pオa ,pオbとすれば, [ ( p ) ,( a ) ]

3 .8 5 )により [ ( p ) ,( a b ) J = ( l ) . ゆ え に Pオa b . = [ ( p ) ,( b ) J = ( l ) . したがって ( したがって

Pは素元である.

g ) Gauss整域の構成 Gauss整域の例を供給する源泉として, まず次をあげる.

1 8 7

§ 3 .3 イデアルと素元分解 定理 3 . 2 1 主イデアル整域は Gauss整域である.

注意以下( a ,b )は a,bが生成するイデアルを意味する.それに対し, [ ( a ) ,( b ) Jは

( a ) ,( b )を含む最小の主イデア Jレである. これらを混乱しないようにされたい.

証明

前項の条件 ( I ) ,( I I )を示せばよい.主イデア Jレ整域

R の 既 約 元 Pを

b ,p , ra とする.このとき at( p )だ か ら ( P ,a );2( p ) . いま ( P ,a)= とり, PIa ( c )と表わせば,

CI P ,CキPであるが,

Pが既約元ゆえ c-lとなる.これは ( p , a )

1 )を意味し,尤p+ya"=l となる x,yERが存在する.ゆえに xpb+yab=b. =( しかるに P labゆえ, Plbを得る.

したがって P は素元である.

n + 1I 年であるような無限列 ( a n )が あ っ た と し よ う . そ の と き ( a 1 )s ; ; ; 次に, a ( a 2 )s ; ; ;… で あ る が , 一 般 に イ デ ア Jレの増加列 U1 s ; ; ;U2 s ; ; ;・ ・ 00

の 合 併 集 合 a=Uanは再びイデアルである. n=l

問3 .73 これを示せ.ー一 00

そこで L J ( a n )= (d) と表わせば, d は或る (an) に属し, (d)~(an), よって ( a n ) n=l

=( l l n + 1 )=…となる.すなわち, l l n , . . . , l l n + l , . . . ,….特に OnJan+lではない. .2 0( i )= }( i i )より, R は Gauss整域である.' かくて,定理 3 なお,条件 ( I I )の代りに (V)を 示 し て も よ い が , そ れ は す で に 定 理 3 .1 8で述 べた.

, 可換体 上の定理により,主イデアル整域であることのすでに知られた Z

K ,

K[XJ, K[[XJJ は Gauss 整域である.また Z[~ 二], Z[w]も Gauss整 域 で ある.ただしこの型のものには駄目なものもある.

例 3.42 有 理 数 で な い 複 素 数 0が 方 程 式 が =a+節

( a ,3 fEZ)

を満足するとき,整域 Z [ O Jは , Z 上の ( a ,/ 3 )型 2次 多 元 環 と み ら れ る . こ の 意 味でのノ Jレム N:Z [OJ→ Z は乗法に関する準同型であり,次が成り立つ. え十μ咋

Z[OJが可逆元 # N (え十 μ 0 )=だ+祝μ-a 炉=土 1 .

このことから, Z [OJは 前 項 の 約 鎖 条 件 (I)を 満 た す こ と が 分 る . 実 際 , an 才a n + 1 ,

a n + 1I anとなる列があれば, I N ( a 1 ) I> ! N ( a 2 ) !> ・ ・ となり,無限には続

第 3章 環

188

き得ないからである.

したがって,定理 3 .1より, Z[OJの 0でない元は既約元

の積と同伴である.そして, Z[0] が Gauss 整域~ 既 約 元 が 素 元 , が 成 り 立 っ.—

たとえば,

Z [ . . / ニm ](m は正の奇数 ~3) は Gauss 整域でない.特に主イデア

Jレ整域でない.

[証明]

たとえば 2 は既約元である.実際, 2 の自明でない約元 J+µ~ ニ元

( キ1 ,+2)があれば, N (J+μに= i n ) =が十 m炉 は N(2)=4の 自 明 で な い 約 数 2 でなければならない.しかし, m~3 ゅぇだ十 mµ2=2 は整数解入µ をもたない.

m ,y=l —J二伍とおくとき,

ところで, 2 は素元でない.実際, x=l+~二

N(x)

=N(y)=xy=l+mであって, m が奇数ゆえ 21xyであるが, 2 , Yx ,2オyは明

m Jは Gauss整域

らかであろう.かくて,素元でない既約元があるから, Z[~ ニ でない.' たとえば, Z[~二5]において,

6=2・3= ( 1十←巧) ( 1→ 二 ) が成り立ち, 2 ,3 ,1 十←二5 ,1-~二5は既約元であるが,これらはどの二つも同 伴でない.

問3 . 7 4 これを示せ. [ヒント] N(入十µ~二)=が十 5 炉=2,3は整数解入μ を もたない.

問3 .7 5 整域 R の既約元 Pが素元でなく,或る a ,beRについて Pオa ,Pオb ,

Plabならば,イデアル ( P ,a )が主イデアルでないことを示せ. [ヒント]定理 3 . 2 1の証明の前半.ーー このように Z[0]の型の整域には G auss整域であるものとないものとがある

auss整域である.一般に次が成り立 が,これらを商環とする整式環 Z[XJは G

. っ 定理 3 .2 2 Gauss整 域 R 上の整式環 R [ X 1 ,. . ., X』 は Gauss整 域 で あ る .

系 可 換 体 K 上の整式環 K [X1,… ,

x 』は G auss整域である.

§ 3 .3 イ デ ア ル と 素 元 分 解

1 8 9

R [ X 1 ,… ,X n 1 J[ふJ~R[X1, … ,x 』

(定理 3 .1 4 )

であるから, 1文字の場合だけを考えればよい.証明に入る前に,関連する有用 な概念を導入する.

R を Gauss整域とし,その主因子半群を PD(R)と書く. a 1 ,… ,a nERに対し,

… ,(aれ)を含む最小の主因子,すなわち

主因子 ( a 1 ) ,

a 1 ,… ,a nの最大公約元 dの

定める主因子 [ ( a 1 ) ,…,( a n ) ]を [ a 1 ,…,a』と略記しよう.これは,イデアルと

1 ,… ,a nの生成するイデア Jレ ( a 1 ,…,a n )と必ずしも しては主イデアルであり, a 一致じない. さて整式環 R[XJの元

/=a 叶 a ぷ+…十 anxn に対し,係数から作られる主因子 [ a 。 ,…, a』を, fの容量といい, cont/で 表

1 )であるような整式 /eR[XJを原始整式という. わそう.特に cont/=( 補題 3 .I ( G a u s s ) c o n t :R[XJ→ PD(R)は乗法に関し準同型であり,

c o n t1=( 1 ) . 証明

まず f=O#cont/=(0)に注意する.また

2ER,

h= co+c1X+…+cnXn

に対して,

c o n t (えh )= [ 2 c , 。・ ・ ・ , えC n ]= ( え )[ c o ,. . ., c n J= ( . . < ) c o n th .



したがって,任意の f キ0は

!=・a 几

c o n t / o= ( 1 )

と表わされる.ここで c o n tf=( a )である.

さて,

さらに

g= b g , 。 contg。 =(1) とするとき, ( ab)=( a ) ( b )に注意して

c o n t ( / g )= c o n t ( a b f i 硝o )= ( a ) ( b ) c o n t ( / o g 。 ) . よって,原始整式 f o ,g。の積 f o g oが 原 始 整 式 で あ る こ と を 示 せ ば c o n t ( / g )

=( c o n t / ) ( c o n tg )となる.そこで任意の素元 Pをとり,イデアル ( p )による商 環への全準同型

冗: R —→ R /(p)=R

第 3章 環

190

を考えよう.冗は元 ( X ): = = Xであるような準同型

元 : R[XJ― → R[XJ に延長される(定理 3 .1 1 ) . 元( h )=hと書けば,

f o g o=f o g . 。

f 。の係数が全部 Pの倍元ということはないので了。キ 0 , 同様に

g。 キ0 . と

ころで応ょ整域であるゆえ ( a ) ) ; 尺[X] も整域であって ( § 3 .2 ,g ) ) ,

五 加= T o i 如

いま,

. キ0

したがって f o g 。の係数が全部

Pの倍元ということはなく, (p)オcont(/og. ) 。

Pは任意の素元であったから, cont(fog。 )=( 1 )となる.すなわち f o g。は原始整 式である.' さて上の補題を用いて R[X]が G auss整域であることを証明しよう.あとで の応用上, 2段階に分ける.

( 1 ) Gauss整 域R の 分 数 体 を K とする. O=!=/ER[XJが K[XJに お い て f=g1・"釦 と 分 解 さ れ れ ば , 或 る

CER

と原始整式 h 1 ,・・・,加が存在して,!=

c h 1 ・ ・ ・ 加,ただし h iは K[XJにおいて g iと同伴である. [証明] n=lのときは, c o n tf=( c )として, fの係数を一斉に

Cで割った整

1をとればよい. n>lとして, n-1個 の 因 数 を も つ 場 合 は 成 り 立 つ と 仮 定 式h nのすべての係数に或る 0でない R の元を乗ずれば R[XJの整式が得ら する. g れ,これに対して n=lのときの推論を適用すれば,結局 gn=ahn( aEK)となる 原始整式加が存在する.いま

g= ( a g 1加… g正 1EK[XJ を考えれば, f =ghn. ここで,或る 0でない bERを と れ ば b gER[XJ となる

b g )加に補題を適用して, ( b ) Ic o n t ( b g ) . これから直ちに gER[XJを が , bf=( 知る.

よって仮定から,

CER と原始整式似…, h 正 1 が存在して,

g=ch1• " h n 1 ,

ゆえに f =ch1"'如,ただし hもは K[X]において g iと同伴である. I さて, fER[XJが 0でも可逆元でもないとしょう. degf=Oのときは, [ER が R の素元の積に分解される. degf>Oのときは, K[XJにおける素元(=既

1 )を適用し, f = c h 1 " ・加 と 分 解 し よ う . 約整式)の積に分解される.これに ( が可逆元のときは c h 1を改めて h 1とする.

C が可逆元でなければ,これを

C

Rの

2 )の前半を示せば, R[XJは素元分解条 素元の積に分解する.かくして,次の ( 件を満足するので, G auss整域である.これで定理の証明が完結する.

§ 3 .3 イ デ ア ル と 素 元 分 解

1 9 1

( 2 }Gauss整域 R の素元, R[XJの原始整式で K[XJにおける素元(=既約 R[XJの素元である.また R[XJの 素 元 は こ れ

整式)である忍のは,いずれも らに限る.

[証明] f ,gER[XJをとる .Rの素元 P に対して, Plfgならば,補題より

( p )I( c o n t/ ) ( c o n tg ) . よって ( p )I cont/または ( p )I c o n tg . よって Pl!また は pjg. したがって

Pは R[XJの 素 元 で あ る . 次 に

K[XJの素元であるとする.

< pl f gならば,

< pER[XJを 原 始 整 式 で

'K[XJで考えて ' c pIfまたは c pI g .

たとえば f= c p h , hEK[XJ と表わされる.或る

0キ 咋 R を と っ て ahER[XJ

I

となるようにして, a f=cp(ah)に補題を適用すれば ( a ) cont( a h )を 得 る . こ れ

hER[XJ, よって R[XJにおいて c pI f . したがって¢ はR[XJの

から直ちに 素元である. 最後に, 解される.

R[XJの任意の素元¢ をとれば,¢ は前半にあげられた素元の積に分 したがって,¢ はそれらの一つと一致しなければならない. I

例3 .4 3 ( E i s e n s t e i n ) Gauss整 域 R の素元 P をとる . Rに係数をもつ次数 n ~1 の整式 f=anxn+ …十 a 。において,条件

Pオa n , が成り立てば,

P Ia i (O~iO)

と表わそう. P / t ,P / ' C iキj )は互いに素なので,

(p/t)+( p 刀 =(1) ( iキj ) ,

( P□ n; .n( P n V n )= ( m ) .

したがって次の同型を得る.

Rf(m)~Rf ( p / 1 )x…x R f ( P n V n ) . ところで,左辺の可逆元のつくる群 U (Rf( m ) )は,右辺の各直積因子の可逆元 のつくる群の直積と一致する ( ( 2 .2 4 ) ):

U(Rf(m))~U(Rf ( p / 1 ) )x…XU(Rf( P n v n ) ) . 特に, R=Zのとき, m>l, P 1 ,… , Pn>Oとすれば,

U(Zm)~U(Zp1v1) X…xU(Zp 詑 . . ). したがって,¢ を E u l e r関数 ( § 3 . 1 ,d ) )として, ( 3 ,1 0 )より

c p ( m )= c p ( P 1 v 1 )・ ・< p ( P n v " ) ( 3 .9 5 )

=m(l

—¾). . ・ ( 1 k ) ・

最後に U ( Z p v )の構造を述べておこう.

まず Zpは可換体ゆえ,例 3 . 2 4より,

§ 3 .3 イ デ ア ル と 素 元 分 解

1 9 9

U(Zp)は位数 p-1の巡回群である.これを利用して, Pキ 2の と き , 一 般 に U(Zpツ)も巡回群となる(第 3 章問題 4).p=2 のときは, U(Z2,)~Z2~Z狂2 (ッ ~2)

である(第 3章問題 5 ) .

j ) 直積分解と直和分解 環 R のイデア)レ恥…,如に対し,標準的同型 n 冗:

R~ITRI切

i = l

がひき起されるとき,恥…,恥は R の直積分解を与えるという。

環 R のイデアル a 1 ,…,凸に対し, R の任意の元が n

1 : a i i = l

( a 1Ea 1 ,… , anEC T n )

の形に一意的に表わされるとき, R は a 1 ,…,a nの直和に分解されるという.こ n

のとき R=Laiであるが,直和分解されるということを示すため

i = l

n

R =らa i i = l と書き表わすことがある. 上の二つのことがらの間の関係を明らかにしよう. まず前項でみたことから,次の 2条件は同値である.

(i) 恥…,如は R の直積分解を与える. ( i i )0 1I I…n恥 =( 0 ) , 切+匂=( 1 )( iキj ) . 次の 2条件も同値である.

( i i i ) Rは

C t 1 ,…,C t n の直和に分解される. n

( i v ) R = Lai, a in L a k= ( 0 ) (l~i~n) i = l k キi 注意

n=lのとき,

2缶 =(0)とみなす.

jキi

[証明] ( i i i )を仮定するとき, ( i v )の前半は明らか.後半左辺に属する任意の 元は a戸 Lak( a kE叫と表わされるが,表示の一意性から ai=Oを得る. 旺 t

( i v )を仮定するとき, R の 任 意 の 元 は , 因 山 ( a iE叫 の 形 に 書 け る . い ま n

f

Lai= 瓜 ( a /Ea i )であるとしよう.そのとき ai-a/=L (ak'-aり.左辺は i = l i = l k キi a i , 右辺は LCTkに属するから, ai-a/=0である. I kキ i

第 3章 環

200

さて,イデア Jレ恥・・:,如 が R の直積分解を与えるとき,

( a )

. O i=□匂

,

(l~i~n)

jキ i

とおけば, R は 0 1 ,. . .,O nの直和に分解される.そして

} : a i=切

( b )

(l~j~n)

に キj

が成り立つ. 注意

n=lのとき noi=Rとみなす. jキi

n

[証明]

直積環 R'=ITRI 切の部分集合 i=l



a/= { O }x・ ・ xR/oix X{ 0 }

(l~i~n)

はR 'のイデアルであって, R 'は紅,…, a n 'の直和に分解される.

R→R 'が同型であり, 冗ー

J :匂 =ai

i ( a / )= 日 1C戸 ( 0 )=

( 1芦

ところで

1 C:

n ) .

したがって R も a 1 ,…,凸の直和に分解される.

各 jに つ い て a ぷ切 ( iキj )ゆえ,

L Uぷ灼.

iキj

” い ま 切 の 任 意 の 元 x=Lak k=I

( a kE叫をとれば, a iea in灼=01n… n如 =( 0 ) . ゆえに XE~ 邸 し た が っ て LUi=Oj, I

iキj

次に, R がイデア)レ a 1 ,… ,a nの直和に分解されるとき,

( b )

LUi=切

iキj

(l~j~n)

とおけば,恥…?加は R の直積分解を与える.そして

印=口to j

( a )

jキ

(l~i~n)

が成り立つ.

[証明] 各 iについて a ぷ匂( j封)ゆえ, a ぷ口灼.いま臼切の任意の元 ” か =Lak( a kEaりをとれば, j= l = iに対して切に属することから, a j = O . ゆえ k=l

n的

に x=aiEa i , ゆえに ai=

jキi

01n…n如 =aino ぷa in L ak=( 0 ) , 切+切 ~aj 十 Lai= ( 1 )U キj ) , よって k a = i i キj 恥…,如は R の直積分解を与える. I 以上より, R の直積分解を与えるイデア Jレ恥…,如と R が直和に分解される イデア Jレa 1 ,…,C T nとが,関係 ( a ) ,( b )で 1対 1に対応する. 最後に,直和分解

§ 3 .3 イ デ ア ル と 素 元 分 解

201

n

R =④a i i = l に応じて n

( 3 .9 6 )

1= Lei i = l

( e iEa i ) n

と表わしてみよう. ei は寵積分解 R~ITRI切によって,直積環の元

i = l

0 ,… , e /= (

( 第 i成分が I ER/bi)

J ,. ., o )

に対応するから,直交幕等元である(例 3 .6 ) :

e/= e iキ 0 ,

( 3 .97) さらに e iは

e i e j= 0 ( iキj ) .

R のすべての元と可換である: e ゅ =x 約 ( の ER).

( 3 .9 8 )

R のすべての元と可換な元は中心的 ( c e n t r a l )であるという。 また前の記号で a/=R'e/=e/R'ゅ ぇ ,

( 3 .9 9 )

a i=Rei=e i R

(l~i~n)

が成り立つ. 逆に,和が単位元であるような中心的直交幕等元 e 1 ,…,e nが与えられれば, R はイデアル ( 3 . 9 9 )の直和に分解される.

問3.82

これを示せ.ー一

なお, I -ej(I~j~n) も中心的幕等元であり,イデアル

( 3 .1 0 0 )

切 =R(I-ej)= (1 — ej)R

(1 幻 ~n)

は,釦,…,凸に対応する R の直積分解を与える.

問3 . 8 3 これを示せ.ー一 環 R のイデアル見…,恥が与えられ,条件

切十 b j=R

( iキj )

が成り立つとき,商環 R=R/01n… n如 の イ デ ア ル

国=切/b1n···n 恥

(I~i~n)

は , R の直積分解を与える.

問3 . 8 4 条件 ( i i )によってこれを確かめよ.ー一 例3 . 4 7 K を可換体, G を位数 nの 巡 回 群 と す る と き , 群 環 K〈 G〉は商環

第 3章 環

2 0 2

K[XJ/(Xn-1)に 同 型 で あ る . 特 に K=Q(有理数体), n=P(素数)とすれば, ( i ) Q 〈G〉 ~QxQ[こ]

(こは 1の原始 P乗根).

[証明] X に G の 生 成 元 gを 対 応 さ せ て , 全 準 同 型 K[XJ→ K〈 G〉を得るが, その核は (Xn ー 1) に等しい.ゆえに K[XJ/( 知ー l)~K〈G〉. K=Q, n=Pの 場 合は, XP-1=(X-l)(xP-1+xP-2+…+1)が Q[XJ に お け る 同 伴 で な い 素 元 の 積への分解であるから(問

3 .7 7 ) ,例3 . 4 6に よ っ て

Q 〈G〉 ~Q[XJ/( 双ー 1)~Q[XJ/(X-1) xQ[XJ/(XP-1+…+1)

I

~QxQ[ こJ.

( i i ) G の 生 成 元 を gと す る と き , 直 積 分 解 ( i )に 対 応 す る 直 交 幕 等 元 は

1 e 1= ー( f ) p ( g ) ,

p

約 =1 -ei,

・ (叱は円分多項式.)

[証明] g←→ (X(mod(X-1)), X ( m o d ( ( J ) p ( X ) ) ) )= ( 1 ,. ) こ

一 一

( ( f ) p ( l ) ,( J )以 ' ) )= ( p ,0 ) .

(f)p(g)•

1 -(f}p(g)•

p

( 1 ,O )=e i ' .

1 p

e 1=—叱 (g). 問

3 . 8 5 G を 位 数 6の 巡 回 群 と す る と き , 群 環 Q〈 G〉の構造を調べよ.



§3・ 3 問 題 l 可換体 k上の 2次の完全行列環 M2(K)において, ( 1 ,2 )成分が 0の行列全体 Rー は 部分環であることを示し,そのすべてのイデアルを決定せよ.

2 環 R のイデアル a心について a~b のとき,標準的準同型 R → R / aは,全準同型 R厄→ R位をひき起し,その核が aルであることを示せ・

3 環 R の部分環 Sとイデアル aに対し, S十 aは R の部分環, Snaは Sのイデアル であることを示し, 自然な同型 S /Sna→ ( S十a ) / aが得られることを示せ.

4 単純環の中心は可換体であることを示せ.

5 可換環 R の極大イデア l レ m と正整数 nに対し,商環 R /mnの素イデアルは m/mn のみであることを示せ・ n

6 環R 1 ,… ,Rnの直積環

I I 凡のイデアルは,各凡のイデアル缶によって I I 缶と i = l i = l

表わされることを示せ・

”凡は主イデアル環であることを示也 7 主イデアル環 R 1 ,… , Rnの置積環 I I i = l



203



8 主イデアル整域 R の元 mキ0に対し,商環 R/Rmのすべての元は,可逆元または零 因子であることを示せ.

9 可 換 環 R のイデア Iレ Pが素イデアルのための条件は,“炉キ R であって,任意のイデ アル a ,oに対し, a恥砕==?a~\) または恥砕"と表わせることを示せ.

1 0 Z[~J の素元を決定せよ.





1 1 a ,峠 Z に対し, X仔 aX+bは次のおのおのの場合に Q[XJで 既 約 で あ る こ と を 示せ.

( i ) a ,bは奇数 ( i i ) a辛 0 , b三 2 (mod3 ) .

1 2 Gauss整 域 R の分数体を k とする.最高次係数 1の整式 /(X)ER[XJの K[XJ における約元 g (X)を最高次係数 1にとれば, g(X)ER[XJであることを示せ.特に,

/(X)~O の K における根は R に属することを示せ.

第 3章 問 題

I Z[ む]の可逆元は土 ( 1十む釘 n ( nEZ)で与えられることを示せ.[ヒント]ノル ム

1の元を考え,特にそのような元が 1 ,1十む:の間にないことに注意する. 2 正 整 数 n,mについて nlmのとき,自然な全準同型 Zm→ Znの ひ き 起 す 可 逆 元 の

群の間の準同型 U(Zm)→ U(Zn)は全写像であることを示せ.

3 一般には,可換環の間の全準同型 R→ R 'がひき起す準同型 U(R)→ U ( R ' )が全写像 とは限らない.例を示せ.

4 奇 素 数 Pに対し, U( みn )は巡回群であることを示せ.[ヒント] 1十Pの剰余類の位 n 1である. 数は p 5・U(Z2n) (n~3) は,位数 2 および 2n-2 の巡回群の直積に同型であることを示せ· [ヒント] 5の剰余類の位数は 2 n 2である.

6 G を単位的半群, K を可換環とし,写像 /:GxG→ K が与えられたとする . K〈G〉 e x )お eG に関して の k 多元環としての乗法を,標準基底 (

e 凸= f ( x ,y)exy と定める.いま任意の aEGに 対 し て , 対 応 か → f ( a , x ) , か→ f ( x ,a )が共に単位的半群

G〉は環であることを示せ・ としての準同型 G→ K を与えるとすれば, K〈

7 前問において, G が位数 2の巡回群〈Sか〈S心の直積に分解される群のとき,/( s 1 ,S1) =a(=土1 ) ,/ ( s 1 1 s 2 ) = 1 , /(s2,s1)= —1, / ( s 2 ,む ) =r(=土 1 ) とおいて定められる(前問 の性質を忍つ)関数 fによって k〈 G〉の乗法を導入するとき, K〈G〉は ( a ,r )型 4元 数 環 に k 同型であることを示せ・

8 可 換 環 R のイデアル aが素イデアル柘,・・・,伽の合併集合に含まれるならば, aは 或る一つの柘に含まれることを示せ.

9 可 換 環 R の素イデアル Pが整式環 R[XJで 生 成 す る イ デ ア ル は 素 イ デ ア ル で あ る

204

第 3章 環

ことを示せ・

1 0 Boole 環 R の素イデアル P は極大イデアルであって, R/p~Z2 であることを示せ. 1 1 Z[~二], Z[ ⑫ ] , Z[ ぽ]は主イデアル整域であることを示せ. 1 2 Z[~lOJ は Gauss 整域でないことを示せ. 1 3 可 換 体 k に 対 し , 商 環 K[Xi,X 2 ,X』/(X12-x ふ), K [Xi,X 2 ,X 3 ,ふ ]/(X ふ -X ふ)が Gauss整域でないことを示せ. ; ~ , ,数 P と , pで割り切れない整数 aに対し,整式 XP-X+aは Z[X]で既約であ こと、示せ. ¥ _ _ _ J / 1 5 環 R のイデア)レ恥灼,的と元叫,叩,叩について

X戸

巧 (mod(切+切))(年 j )の

i(mod切 ) (l~i~3) となる元 xeR が存在するならば, R は算術的, とき,つねに年三 x すなわち和と交わりに関して分配法則の成り立つことを示せ.[ヒント]分配法則は一方 を示せばよい

( 0 1十切) n(切+灼)の元を

X十y (XE虹 Y E灼 n恥の形に表わせ.

1 6 二つの算法を忍つ集合 ( R ,+,x)は , 次 の 条 件 を 満 足 す る と き nearring( F a s t r i n g e )とよばれる. (i) ( R ,十)は群である.その単位元を 0で表わす. ( i i ) ( R , , x )は単位的半群である.

( i i i ) 左分配法則が成り立つ: ax(x+y)=axx十axy. さらに, R * = R ' . .{ O }が 乗 法 に 関 し て 群 で あ る と き ,

( R ,十 , X)を n earf i e l d( F a s t -

i e l dR に対し, ( R ,十)は幕数が素数の可換群であること k o r p e r )という.有限な nearf を示せ.

1 7 前問において,位数がが (Pは素数)の nearf i e l dを決定せよ.

205

第 4章 加 群

‘基底の固定された加群’は § 3 .2ですでにとりあげた. によって,加群の概念は生きてくる. いのである.

しかし,基底を固定しないこと

しか忍,一般の環の上では基底は必ずしも存在しな



環の上の加群’は‘(体の上の)線型空間’の概念の拡張である.後者についての知識があ れば,形式的に同様なことがらを考えるとき,安心感があろう.

しかし反面,体の上では

見のがされていたことがらが芽を吹き,次第に大きな意味を忍つようになるであろう.線 型空間を知っている人ほど,初心にかえって,加群の本質を見直すことが望ましい.本章 では,線型代数の知識を仮定しない

§ 4 .1 で簡単な準備をし, § 4 .2-§4.5で加群の一般事項を扱う. § 4 .6では,基礎環を 主イデアル整域に制限する.

これは,体の場合についで,構造論がうまく進行する場合で

あり,一般論の一つの原型となる.

§ 4 .7は,別に章を立てて述べるべきこ とがらと忍いえるが, とりあえず必要最低限の 概念だけを扱う.線型環 =algebraは,その名の示す通り,代数学 =algebraの中心的な 概念である.

§4.I 準 備 狭い意味の‘線型代数’では,スカラーを一定の体からとって,ベクトルの集合を扱う。 その場合で忍,スカラー倍の算法に立ち入らない考察に留まる部分がある.

,3章でふれなかったことがらを補充し,あわせて加群 この節では,加法群について第 2 の概念への準備をする.

a )加法群 加法群とは,可換な加法に関する群のことであるが,単位元と逆元を与えられ たものとみて,三つの算法

(i) 0項 算 法

*

( i i ) 1項算法

X, →

( i i i ) 2項 算 法

( x ,y )一→ば十 y

→0 ,

f---

-x,

を意識するのが好都合である.

この考え方はすでに述べた

( § 2 .3 ,f )g ) ) .

これらの算法に関して閉じた部分集合が部分加法群である.

第 4章 加 群

206

加法群の間の写像は,.加法 ( i i i ) と両立すれば自動的に ( i ) ' ( i i )とも両立し,準 同型(写像)とよばれる. 問4 .I 加法群の場合に即して § 2 .3 ,g)-h) を復習せよ.一~

さて,加法群 M の部分加法群 N 1 ,… , Nnに対し,それらの合併集合が生成す る部分加法群は

N叶 ・・・+Nn= { x叶 … + 叫 I XiENi( l ; ; ; ; ;均)} と表わされる ( § 3 .3 ,h ) ) . ところで上の表示に現われた M の 元 の 和 ” 叶 … + 叫 は , 元 の 並 べ 方 に よ ら ない.そこで一般に, M の元の系(叩)狂I が順序を無視して与えられた場合でも, それらの和を表わす

工 叩 i e l という記法が意味をもつ.ヘ ここで添数集合 lは無限集合で忍よいとしょう.ただし,条件 叩 キ 0 となる i EJ は有限個 を仮定する.

この条件を,ほとんどすべての註 Iについて Xi=Oといい表わす.

この条件の忍とで上記の和は‘実質的有限和’であって,その意味は確定する.

N i )i E Iに対し,その合併集合が生成する部分加 加法群 M の部分加法群の系 ( 法群は l;Ni と表わされ, iE1

( N i )i E Iの (Mにおける)和とよばれる.

したがって,

訂 {

苫 Ni=

i iほとんどすべての iについて叩 =0}.

ここで元の和表示が一意的であるとき,すなわち条件

( 4 .1 )

苫叩=苫妬(叩, yiEN i , iEJ )= ⇒ 叩 =Yi ( iEJ )

が成り立つとき, ( N i )i E lは加法的に独立であるという. この条件 ( 4 .1 )は,つぎの 2条件のいずれとも同値である. ( 4 .2 )

}:X i= 0 ( 叩 EN ゎ i EI)~Xi = 0 ( iE/ ) , i e l

( 4 .3 )

Njn~Ni = 0

注意

jキiEI

(炸[).

第 4章からは, 0だけからなる加法群 { O } を単に 0で表わす.

[証明 J( 4 .2 )= ?( 4 .1 )

L叩 =L狛 =?LC 叩 一Y i )=0= 乞 巧 ー 釦 =0( iEI),

§ 4 .1 準 備

( 4 .1 )⇒ ( 4 .3 )



ENjを

207

ぷ1Xi と表わせば,表示の一意性より各項 = 0.

( 4 .3 )⇒ ( 4 .2 ) ~ 叩 =0の と き ― ” 戸 ぷ I N i , ゆ え に 叩 =0.I 問4 .2 ( 4 .1 )=?( 4 .2 )を直接に示せ. 例題 4 .I 加法群 M の部分加法群 N i ,…,ふの加法的独立性は, ( 4 .3 )を弱め た形のつぎの条件と同値であることを証明せよ.

— 1

L

j

( 4 .3 ) ' N j n

Ni=0 i = J

( } = 2 ,3 ,… ,n ) .

j— 1 [解] I={ 1 ,…,n } とおく . L N ぷ L Niゆえ,

( 4 .3 )⇒ ( 4 .3 )I は明らか. i = 1 j キi e / いま ( 4 .3 ) を仮定する .L叩 =0( 叩 EN i )であるとして,”戸 0となる jがあ i = l n

I

れば,そのような最大の j は ~2 であり,

j 1

ー巧

しかし一 XjENjだから, る .

=L 叩 . i = l

( 4 ,3 )I よ り 一 叩 =0, ゆ え に 叩 =0, これは矛盾であ

i = l ,…,n ) , すなわち ( 4 .2 )が成り立つ.' よって叩 =0(

N i )i E Iの和であるとき, M は さて,加法群 M が加法的に独立な部分加法群 ( ( N i )i E Iの直和に分解されるという.そして, ( N i )i E Iを M の直和分解という. また, M は ( N i )i E Iの内部直和であるということがある. xeM の表示 x= 苫叩(叩€叩の一意性から, X と i によって確定する元叩

ENiを , ( N i )i E Iに関する Xの第 i成分という. ( N i )i E lの和 N がM と一致しない場合でも,各 Niは N の部分加法群である N i )i E Iの内部直和であるといえる. から,これらが加法的に独立のとき, N は (

b ) Map, Hom, End 任意の集合 X から群 ( N ,+)への写像 u ,v ,…全体の集合

Map(X,N) は,値による加法‘

(u+v)(x)= u( x )+v(x)

( xEX)

に関して群である ( § 2 .3 ,e ) ) . その単位元は,零写像

x→ 0,(Nの単位元) であり 0で表わされる.

また,

uEMap(X,N)の 逆 元 一 U は

(-u)(x)= -u( x )

(xEX)

第 4章 加 群

208

で与えられる . Nの加法が可換,すなわち N が加法群ならば, M ap(X,N)も加 法群である. いま,加法群

Mから加法群 N への準同型全体の集合 Hom(M,N)

を考えれば, Hom(M,N)は加法群 Map(M,N)の部分加法群である.

[証明] u ,戸 Hom(M,N)に対し, (u+v)(x+y)=u(x+y)+v(x+y)=u( x ) 十u (y)+v(x)+v(y)=u(x)+v(x)+u(y)+v(y)= (u+v)(x)+ (u+v)(初 , ゆ え

に u+veHom( M ,N). Map( M ,N)の単位元である零写像は,準同型である から Hom(M,N)に属する. ueHom(M,N)に 対 し (-u)(x+y)=-u(x+y)

= 一 (u(x)+u(y))= (-u(x))+ (-u(y))= (-u)(x)+ (-u)(砂 ゆ え に , ー U E Hom(M,N). したがって Hom(M,N)は Map(M,N)の部分加法群である. I さて,集合 L,M, 加法群 N および写像 U,V,V' V

M==tN

L二

v '

が与えられたとき,加法と合成の算法との間で次の‘分配法則’が成り立つ:

( v十v ' )0u= v0u+v'0u.

( 4 .4 )

[証明] (v+v')0 u : x~(v 十 v')(u(x)) =v(u(x))+v'(u(x))= (v0u)(x)+ ( v ' o u ) ( x )= ( v 0 u + v ' 0 u ) ( x ) . よって ( 4 .4)が成り立つ.' また,集合

L , 加法群 M,Nおよび写像 u ,u ' , 準同型 V u



L= M二 N u '

が与えられたとき,次の‘分配法則’が成り立つ:

( 4 . 5 )

v0(u十 u ' )= v0u+v0u'.

[証明] v0(u+u'):XH>V((u+u')(x))=v(u(x)+u'(x))=v(u(x))+v(u'(x)) =( v o u ) ( x )+ ( v o u ' ) ( x )= ( v 0 u + v 0 u ' ) ( 砂よって ( 4 .5 )が成り立つ.' 特に,一つの加法群

M の自己準同型全体の集合 End(M)=HomC M ,M)

は,加法群であるばかりでな a Xまたは邸を, aMと記すことがある.この 1 項算法 ( § 2 .3 ,f ) )を a によるスカラー乗法とよぶことにする.

R の M への作用は, R を添数集合とする M の 1項 算 法 ( X Mの系 ( a M )aER で あって,写像

が準同型または反準同型であるものに他ならない.

( X I ' >lXM

この観

点から, R加群を,‘算法をもつ集合’として取り扱うことができる.このとき,

R 加群 M の算法は,加群としての算法 ( § 4 .1 ,a ) )と,たくさんの 1項 算 法 ( X M ( aER)である. 簡単な R加群からより複雑な R加群を構成する基本的な手続きの一つをあげ よう.

R を単位的半群, M を R加群とするとき,集合 Iから M への写像全体 Map(],M) は , M の算法がひき起す‘値による算法'

(/+g)(x)=/(x)+g( x ) , ( a / ) ( x )= 吋 ( x ) (左作用),

( / a ) (の ) =/(x)a (右作用)

について,左 R加群にもなるし,右 R加群にもなる.

M i )狂 I があるとき,直積集合 一般的にいえば, R 加群の系 ( IlMi

iE. l

は,‘成分による算法'

E I +( Y i )i e z= (xi+Yi)i E I , ( 叩 )i ( 叩 )i e z= (axi) 因~ a・ について,

(左作用),

( 叩 )i e I "a= ( X i a )i e I (右作用)

R加群となる.

問 4.4 このことを確かめよ.ー―—ッ 上記の R 加群 ITMiを ( M i ) i e zの直積加群という.特に Mi=M( 註 I )のと iEI

きの直積加群 ITMiが , M ap(/,M)に他ならない. iEI

§4.2 加 群 の 概 念

213

b ) 環の上の加群

R を環とする.

Rは 乗 法 に つ い て 単 位 的 半 群 で あ る か ら , そ の 意 味 で の R加群が考えられる. しかし, Rが環であることを意識するときには, R の 左 ま た は 右 作 用 は , そ れ ぞ れ環としての表現あるいは反表現であると仮定する.

したがって,記法

axまた

i ) ' ( i i ) ' ( i i i )ま た は ( i ) ' ,( i i ) ' ,( i i i ) /に , 次 の ( i v ) は邸に関しては,それぞれ ( または ( i v ) 'が追加される:

( i v ) (a+/ 3 )x=⑫+釦

( a ,3 fER, xEM),

(iv)'x(a+/ 3 )=邸+咋・ こ れ ら の 条 件 が 追 加 さ れ た こ と を 明 示 す る た め に , 環 R に対する

R 加群を,

環 R の上の加群 ( moduleoverR)ということもあるが, R に 環 構 造 を 与 え て い ることが明確であれば,単に R 加 群 と よ ん で お く こ と に す る . Rは,その

R加

groundr i n g )あ る い は 係 数 環 ( c o e f f i c i e n tr i n g )とよばれる. 群の基礎環 ( G〉の表現 注 意 単 位 的 半 群 G の表現 a:G→ End(M) は,半群環 Z〈 End(M)に一意的に延長される.逆に環 Z〈G〉の表現を G に制限すれば,

a :z〈G〉→

Gの表現を得

る.したがって,一般論としては環の上の加群を扱っておけばよいことになる ( § 4 .7 ,d )参 照).しかし, G の表現に対応するぷのは,抽象的な環の表現ではなOとし,生成元の個数が n より小さいときは成り立つものとする.いまふ, , X正 ・・・,叫を生成系とし, Xi,…

1 が生成する部分加群を

M'とする.

個 数 n+Iの系 y。 ,…,Ynを と り , 線 型 従 属 性 を 示 そ う . 各 yjは X i ,… ,X n 1 の線型結合すなわち M'の 元 町 と 叩 の ス カ ラ ー 倍 の 和 で あ る :

約=幻+の叫

(y/EM',

帰納法の仮定より y。 ' ,…,Yn1は線型従属である.

ED).

ltj

もしすべての aj=Oな ら ば y j

=四 (O~j~n) が線型従属である.そこで或る係数,たとえば a。 =I= 〇とする.そ



のとき,叫 =a ごYo-a1 Y o 1であるから,



yj-a担 o 1 Y o= y/-aja1 Y o 1

(l~j~n).

右辺は M'に属する n個の元であるから,再び帰納法の仮定より線型従属である. よって自明でない次のような線型関係がある.

芦 足j(y三 郎 ―1Yo)= 0. 芦1 闊+(斉—紐jct'ご)) Yo=0. これは

Y o ,… , yれに関する自明でない線型関係である. I





D 上の加群 M が有限基底をもつとき,すべての基底は有限であ

り,その個数は M によって定まる. 証 明 個 数 nの基底があれば,定理によって,任意の基底は有限であり,そ の個数 m は ~n.

二つの基底を入れかえて再び定理を適用すれば n~m.

よって

n=m. I

問4 .1 9 定理 4 . 1 ,4 .2より次を導け.“有限集合 G で 生 成 さ れ た D 加 群 M の線型独立な部分集合 L に対し, L と同個数の G の部分集合 L 'を 適 当 に と れ ば ,

( G ' . L ' )uL が M を生成する"('入れ替え定理').-

225

§4.2 加 群 の 概 念

D加 群 M

さて,

が有限基底をもつこと,すなわち有限生成であること(定理

4 . 1の注意参照)を,有限次元ともいう.そして基底の元の個数(一定)を M の 次 元 と い い dimMと 書 く . 有 限 次 元 で な い と き に は , 便 宜 上 dimM=oo とおく.

定理

4 .3 体 D 上 の 有 限 次 元 の 加 群 M の 元

(i)

ふ,…,叫が生成系ならば, n~dimM であり,等号が成り立てば,

X1,…,叫について,

これらは基底である. (ii)

ふ,…,叫が線型独立ならば,

ば ,

n~dimM であり,等号が成り立て

これらは基底である.

問4 . 2 0 定理4 .1と定理 4 . 2から上の定理を導け. 系

体 D 上の有限次元の加群 M の部分加群 N に対し, dimM~dimN であ

り , 等 号 が 成 り 立 て ば M=N. N の線型独立系の元の個数は ~dimM なので,極大なものがあり,そ

証明

れは基底である.

その個数 dimN は ~dimM

後半は定理 4.

3( i i ) .I

§4.2 問 題 l 加法群 M を Q加群とするような Q の作用は高々 1通りしかないことを示せ.

2 環 Rキ0の上の加群炉において,二つずつは線型独立であるような 3元で,線型従 属な忍のを探せ.

3 整域 R の分数体 k を R 加群とみるとき,その任意の 2元は線型従属であることを 示せ.

また, KキR のとき, K は R 上の自由加群でないことを示せ.

4 環

Z a(=Z/6Z)に成分を忍つ 2x3型行列

[~ ~ 汀 において, 2行は線型独立であるが,任意の 2列は線型従属であることを示せ.

5 集合 X = ! = ¢ から体 D への写像全体の D 加群 Map(X,D)を考える.その任意の n 次元部分加群 M に対して,適当な基底 / 1 ,… ,I nをとれば,

fパ巧) =oii

(l~i,j~n)

となる元巧,…, XnEX が存在することを証明せよ.

6 環 R の上の有限生成自由加群 F とその元 n

X

がある . Fの基底釘,・・・, enによって

L a i 匂(幻E R)

幻=

i=1

第 4章 加 群

2 2 6 n

LaiRは基底のとり方によらないことを示せ.

と表わすとき,右イデア Jレ

また,この右

i=l

イデア Jレを知と書くとき,んが或る基底の一員になり得るならば,知 = Rであることを 示せ.

( な お , § 4 .6の問題 8を参照)

§ 4 .3 準 同 型 , 商 加 群 加群は,加法・スカラー乗法とよばれる算法を忍つ集合である. この観点で定義される 準同型写像 ( § 2 .2 )は,線型空間の場合には‘線型写像’に他ならない. 線型写像が‘線型代数’で果す役割の重要性は,加群の理論に一般化されて, ますます増 大する. 基底が存在する場合ーー自由加群-の線型写像は,線型空間の場合と形式的に同様で あって,行列との対応がつく.

しかし,一般の環の上では事情が不透明である. この節で

は,加群の生成系と線型独立系の考察が, 自由加群からの全準同型と単準同型の考察に他 ならないことを見るにとどめたい..

( § 2 .2 )を , 最後に,すでに一般に考えられた‘合同関係による商集合’と‘準同型定理' 加群について具体的にとりあげるであろう.

a ) 加群の準同型

R を単位的半群とする. R加群を‘算法をもつ集合’とみて,‘算法と両立する写像’を考えよう . R加 群 は加法群であるから, § 4 .1 ,a) で述べたように,加法との両立から算法 *~o, x~-x との両立は自動的に導かれる.

したがって,

f :M ー N

R加 群 の 間 の 写 像

について,条件

( 4 .1 5 ) .

/C叶 y )=f(x)+J(y)

( x ,yEM),

( 4 .1 6 )

/(a班@))=知 ( / ( x ) )

( aER, の EM)

だけを仮定すればよい.このような写像が, を明示して R 準同型とよぶことも多い.

R加群の間の‘準同型’である . R

また, R が環の場合には, ( R )線 型 写 像

ともよばれる.

( 4 .1 6 )は次のように表わすこと忍できる: ( 4 .1 6 ) '

I

項 亙 = 知

o f

( aER).

また, a M(x)に対する記法 axまたは xaに よ れ ば

( 4 .1 6 ) "

/(ax)= a/(x) または f(xa)= f ( x )a

と表わされる . R準 同 型 は ? 左 R加 群 の み の 間 か , 右

R加 群 の み の 間 で 考 え る

2 2 7

§ 4 .3 準同型,商加群

ものとする.

例4 .1 4 加法群の間の準同型 f:M →Nは ,

f(nX)=nf(X) を満足する ( ( 2 .3 5 ) ' ) . すなわち は ,

(nEZ , xeM) 、

fは Z 準同型である.こうして,可換群の理論

(算法を加法に書き直して) Z加群の理論とみなせる.

例4 .1 5 R加群の間の零写像は R準同型であり,零準同型とよばれる. 0で 表わすこと忍ある.ー―一般的な用語,全準同型,単準同型,同型,

自己準同型,

自己同型は, R加 群

の間でも自由に用いる . Rを明示して R…といい表わすことも多い.

また, R

が環のときは,‘線型’を付けてよぶこと忍ある. 一般の‘算法を忍つ集合’とその間の‘算法と両立する写像’についての考察 ( § 2 .3 ,f ) -g))は ,

' R加群’とその間の 'R準同型’についてい通用するわけであるが,それらを具体

2 .3 ,f )g )の推論部分を読みとばした読者は,以下の問*を確かめな 的に眺めて行こう. §

ければならない

R準同型の合成は R準同型である. .2 1 これを確かめよ.ー一 問*4 R 加群の恒等写像は R 同型である.

R 同型の逆写像は R 同型である.

.22 これらを確かめよ.ー一 問*4 R 加 群 M の部分加群 N , R 加群払(註/)の直積加群 IIMiについて,標準 iEI

的 写 像 N→ M, IIMi→ 払 ( 註 I )は R準同型である. iel .

問4 . 2 3 これを確かめよ.ー一

R 加群の間の R 準同型 J:M → M があるとき, M の 部 分 加 群 N の 像 /(N) は M'の部分加群であり, M の部分加群 N の逆像 /-1(Nりは M の 部 分 加 群 である.

.2 4 これを確かめよ.一一 問*4 ここで, R準同型の間の加法を考えておこう.

R加 群 M,Nに対し, M から N への写像全体の集合 Map(M,N) は,値による加法によって加法群である.そのうち,加法群としての準同型全体

第 4章 加 群

228

の集合

Hom(M,N) は部分群であった ( § 4 . 1 ,b ) ) . さらに, R 準同型全体の集合を

HomR(M,N) と表わす. これは Hom(M,N)の部分群となる.すなわち

! fomR(M,N)は加法

群である. ,

'

[証明] f ,geHomR( M ,N), aER に対し, (f+g)。互=! 喰 m卜 g o心 =aNof

+知og=aN°(f+g) ( § . 4 .1 ,b )の分配法則). ところで f+gEHom( M ,N)だ か ら , f+gEHomR(M,N). Hom(M,N)の単位元である零準同型は R準 同 型 ゆ え EHomR(M,N ). hEHomR(M,N), aERに対し,(一 h )匹 = 一 ( h心 ) =

-( a N ° h )=aN°(-h). ところで一 heHom(M,N)ゆえ,ー hEHomR(M,N ) .I 特に, HomR(M,M)を EndR(M)と書く. EndR(M)は環 End(M)の部分環 である. 問4 .2 5 End(M)における部分集合 RM={ aM laER}の 中 心 化 環 ( § 3 . 1 , a ) )

が EndR(M)に他ならないことを示せ. 問4 .2 6 ueEndR(M)について,次を示せ. U は R 加群 M の自己同型 ~u は環 EndR(M) の可逆元.

以下, R を零環でない環とする. 加法群に対して Z が果した役割は, R 加群に対して R が果すことになる.た とえば,

M を左(右) R 加群とし, R を左(右) R 加 群 と み な す . そ の と き , 任 意 の 元 戸

M に対し, p ( l )=Xであるような R 準同型 p:R→ M がただ一つ存在する.

これを pおと書けば,

,P x ( a )= ax・(xa).

( 4 ;1 7 ) [証明] R準 同 型

pに つ い て p(l)=Xならば,

p ( a )=p(al)=ap(l)=ax

x ( a )=axとおいて Px:R ( aER). よって pは一意的である. ところで改めて P → M を定めれば, § 4 .2 ,a )( i )と § 4 .2 ,b )( i v )により, P xは R 準同型である.

そして pェ( 1 )=lx=x.I 上の事実は,対応 p i ? p ( l )の定める写像

HomR(R,M)一→ M

2 2 9

§ 4 .3 準同型,商加群

が全単写像であることを示している.そしてこれは加法群の間の同型である.

[証明] u ,臼 Hom 瓜R,M)の和は値によって定められているから, ( u + v ) ( l )

= u ( l )+ v ( l ) . よって p→ p ( l )は準同型である.' 注意

Hom凪R,M)は自然な仕方で左(右) R 加群となり,その意味で上の写像は R 同

.1 ) . 型になる(定理 5

問4 .2 7 pが単準同型 #p(l)が自由元,を示せ.ー一 可 換 環 Kキ0の上の加群を考えよう. 咋

k の K 加 群 M への作用

(XM

は M の自己準同型である:

aMEEndK(M). したがって,対応 af---+aM は環準同型

( 4 .1 8 )

K ー→ EndK(M)

.

を定め, EndK(M)は 両 側 k 加 群 と な る ( 例 4 .7 ) . ところで, K の 像 KMは

EndK(M)の中心に含まれるので,

Kの左右の作用は一致する:

吋 =lXM゜ f=f0aM=/a・( 咋 K , fE EndK( M ) ) . いま k 加 群

Mの任意の自己準同型 uE EndK(M)をとれば,

まれることから,

KMが 中 心 に 含

( 4 ,1 8 )は X1---7uであるような環準同型

K[XJ一→ EndK(M) に一意的に延長され(定理 3 . 1 1 ) , M は K[XJ加群となる.整式環 K[XJの 作 ,用を具体的に示せば次の通り:

f(X)= ご 。 え ぶ に 対 し f(X圧 =f ( u )= 翌 記

(ただし u 0=idM).

この K[XJ 加群 M を Mu と書くことにする.その部分加群とは, u(N)~N

であるような K 加 群 M の部分加群 N に 他 な ら な い . こ の よ う な N を U 認容

( s t a b l e )とか,

U

不変 ( i n v a r i a n t )という.

b ) 自由加群と行列 この項では,簡単な構造をぶつ加群として, 自由加群をとりあげ,それらの間の準同型 の特徴を明らかにする.ただし,係数環の性質には立ち入らない. また,記法上の便利さ から,右加群を優先させる (234ページの注意を参照)が,左加群について忍,はじめのう ちは全く同様である.左加群の場合を並行して書き下してみるとよいであろう. なお, まず

§ 3 .2 ,b ) R加群 Rnと行列環 Mn(R)

第 4章 加 群

230

を復習されたい

R を零環でない任意の環とする. 右 R 加 群 E が有限基底 X1,…,叫をもつとき,任意の右 R 加 群 E 'への

R準

同型 u : Eー → E ' は,基底の行先 u( x 1 ) ,…,u(叫)によって定まる.

しかも,基底の行先は任意に

指定できる.

[証明] R準同型 u:E→ E'に対し, u(xi)=叩'(l~i~n) n

意の元

LX必(え

i=l

iER)の行先は

唸m〉 必

( 4 .1 9 )

=±i x /).i'v =l

1

となる.

とおけば, E の任

よって, Uは 基 底 の 行 先 x/(l~i~n) で定まる.

ところで, x/EE '

(l~i~n) を任意にとるとき,上式で u:E → E 'を定めれば, U が

ることは容易に認められよう.そして

U

R 準同型にな

の定め方から u ( x i )=叩I (l~i~n) で

ある.'

かくして, uEHomR( E ,E ' )と(四,…,叫')EEmは,関係 u ( x i )=x/ によって 1対 1に対応する.

(l~i~n)

しかも次が成り立つ.

i ' ,…,叫'が線型独立. ( 1 ) . uが 単 準 同 型 #x ( 2 ) . uが全準同型#叩',…,叫'が

E 'を生成.

したがって

( 3 ) uが同型

#ふ',…,叫'が

E'の基底.

問4 . 2 8 これらを示せ.ー一

e i )をとり, E 'を M と 書 き 改 め れ ば , 右 特に, R加 群 Rnとその標準基底 ( ( 左 ) R加 群 M の元孔...,叫に対し,対応 e戸叩 (l~i~n) は, R 準同型

( 4 .2 0 ) ・ f :Rnー→ M

ー苔 X必 ( 茫) i n

凶…,ぇn ) を定める.そして

fが 単 準 同 型 #X1,・・・,叩が線型独立,

§ 4 .3 準同型,商加群

2 3 1

fが 全 準 同 型 #X1, …,叫が M を生成, fが同型 # 功 , … , 叫 が M の基底. したがって,有限基底叩,…,叫をもつ R 加 群 M は , R加 群 Rnに R 同 型 である. 注意

x i )の定める R 同型ということにする. この R 同型写像を,基底 ( R が体のとき, nは M の次元数であって, M により定まった.その他いろいろ

§ 4 .3 ,c )および定理 4 .2 2 ) . し な環 Rキ0の上で基底の個数 n の不変性が知られている ( ) . か し , このことは一般の環では必ずしも成り立たない(第 4章問題 1

上に述べたことがらは,一般の自由加群についても全く同様である.すなわち 定理 4 .4 右(左) R 加群 E が基底(叩)炸Iをもつとき,右(左) R加群

E 'の任意の元叩'(註

J )に対し,

u(叩 )

=X/

( iEJ )

であるような R 準同型 u:E→ E'がただ一つ存在し,

(i) uが 単 準 同 型 #( x / ) i e Iが線型独立, ( i i ). uが 全 準 同 型 # (x/)iaが E'を生成, ( i i i ) uが同型

⇔ (X/)iEI が E'の基底.

問4 .• 2 9 これを確認せよ.一一 特に, R加群 R〈 I〉とその標準基底 ( e i )炸I をとり, E 'を M と書き改めれば 系右(左) R加群 M の元の系(叩) iEI に対して,対応 eil-----'>Xi ( i e l )は ,

R準同型 ( 4 .2 1 )

/ : RくI〉—→



M

苫崎 ( i ) ( 苫 虹 ) xi)

を定める.そして

(i)

Iが単準同型#(ふ) iEI が線型独立,

tが全準同型#(叩)註I が M を生成, ( i i i )t が同型 # ( x i ) Iが M の基底. ( i i )



さて,有限基底をもつ一般の場合に戻って,準同型を具体的に記述しよう.

第 4章 加 群

232

右 R 加 群 E が基底 X 1 ,… , 叫 を も つ と き , そ れ が 定 め る R 同 型 /:Rn→ E によって, xEEに対応する Rnの元を考えることを,基底 ( x i )に 関 す る 尤 の

n ,1 ) 成分表示という.成分表示を行うときは, Rnの 元 を 縦 ベ ク ト ル す な わ ち ( 型の行列で示すことにしよう. 右

R加 群 E 'は基底可,…, Xm' をもつとする.そのとき, R準同型 u : E —• E'

による基底の行先を m

u (心 = L可 aij

( 4 .2 2 )

(l~j~n)

i=l

と表わすことにより, R の元を成分とする ( m ,n )型 行 列 ︳︳ nn

n m

2

が定まる.これを,基底 ( xか ( x / )に関する

U

の行列表示という.そして対応



ui-+M(u)は全単写像

M: HomR( E ,E ' ) を与える.

2 a1 a a



22im

~~~~

1121ml

2 a1 a a

a aa ︳︳ =



M



Mm,n(R)

これは加法群としての同型である.

問4 . 3 0 このことを示せ.ー一

m ,n )型行列 A を ( n ,1 )型 行 列 aERnの左から乗じて得られる さて,一般に (

R準同型を,記号 A 自身で示すことにする: A: Rn一→ Rm

a← → Aa. そのとき,基底の定める同型に関して,次の図式は可換である。

Rn竺 R



↓ !

E二

n

m

j=l

i=l

1

! E '

[証明] X=LXj 勾に対し, u(x)=LX/ 祝とおけば, ( 4 .2 2 )より n

u ( x )=芦

m

u(x凸 =~x/(斉心),

§ 4 .3 準同型,商加群

2 3 3

[ l

=

: . M(u{J

特に基底( xか ( xり に 関 ず る U の 行 列 表 示 M(u)に お い て , そ の 第 j列

M1(u)は , u (心 の 基 底 (xりに関する成分表示を与える. し た が っ て , た と え ば次の例を得る. 例4 .1 6 右 R 加群 E,E'が基底(叩) 1;,;1;,;n, ( x / )1 ; , ; i印m をもつとき, R 準 同 型

u:E→ E の行列表示 M(u)について, (i) uが 単 準 同 型 #M(u)の列ベクトルが線型独立, ( i i ) uが 全 準 同 型 #M(u)の列ベクトルが Rmを生成, ( i i i ).uが同型 注意

# M(u)の列ベクトルが Rmの基底.

R を可換環とすれば,これらの性質の判定に‘行列式’が効果的に利用できる.す

なわち, まず n次正方行列 A について次の 3条件は同値である. ( 1 ) A の列ベクトルがだを生成する. ( 2 ) A の列ベクトルが炉の基底である.

( 3 ) A の行列式が R の可逆元である.

また,次の 2条件は同値である. ( 4 ) A の列ベクトルが線型独立である.

( 5 ) A の行列式が零因子でない

一般には次の定理が成り立つ.証明は難しくないが, ここでは略す. 定理

可換環 Rキ0に対し, A EMm.n(R)の列ベクトルが線型独立

⇔ 次に,右

m~n,

{ aER伍 (Aの n次小行列式) =0}= 0 .

R加群 E"が基底ふ",…,功”を忍つとして, R準 同 型 U:

E ー→ E ' ,

v : E'-E"

の合成

v o u :Eー→ E" を考えれば,次が成り立つ.

( 4 .2 3 )

M(v0u)=M(v)M(u)

(行列の積).

[証明 ] ・(3.2 9 ) 'の計算と全く同じである. I 特に E=E'=E''のとき,対応 U f + M ( u )は環同型

EndR(E)二 を与える,

Mn(R)

第 4章 加 群

2 3 4 左 R 加群の間の

注意

E準同型 u:E→ E

の行列表示 M(u)=( a i j )を

n

u( 巧 )

=Lai1幻

( 1 ; ; : ;溢 n )

i=l

で定めるならば,次が成り立つ. ( 4 .2 4 ) t M( v o u )=tM ( u )tM ( v ) .

c ) 線型独立系と生成系の個数

R を零環でない任意の環とする.

R加 群 M の元の有限系 (Xi)i E Iに 対 し , 添 数 註 Iの個数を,簡単に系 ( x i )狂 I の個数ということにする.有限な線型独立系と生成系の個数の間の関係を調べよ う.なお,線型独立系であると同時に生成系であるものが基底に他ならない. まず,前項の考察から, R加群 M に関する条件

( L ) n M は個数 nの線型独立系をもつ,

(G)n M は個数 nの生成系をもつ,

( B ) n M は個数 n の基底をもつ は,それぞれ次と同値である.

( L )n ' 単準同型 Rn→ M がある,

(G戸 全 準 同 型 炉 → M がある, ( B )n' 同型 Rエ→ M がある. R が体のとき,次の諸命題が常に成り立つ. (0) ( L )m, ( G )n ⇒ m~n.

(I) ( L )m, ( B )n ⇒ m~n. ( I I ) ( B ) m ,(G)n⇒

m~n.

( i l l ) ( B )m, ( B )n ⇒ m=n. 問4 .3 1 これらを確認せよ.ー一

特に ( i l l )は,‘有限基底の個数の不変性’を示している. 一般の環 Rキ 0については,上の命題が成り立つために,若千の制限が必要で ある.

まず,任意の環 Rキ0について,上の諸命題の関係を見ておこう.

0 )= }( I ) ,( I I ) . 基底は線型独立系でも生成系でもあるから,直ちに ( 問4 . 3 2 これを確かめよ.ー一—

(I)= }( 0 ) したがって ( 0 )# ( I ) .

[ 証 明 ]

任意の M について ( I)を仮定する、いま R加群 M について ( L )加 9

§ 4 .3 準同型,商加群

235

(G)nが 成 り 立 て ば , 単 準 同 型 f:R叫 → M と全準同型 g:Rn→ M が あ る . い ま R加 の 標 準 基 底 e 1 ,… , emをとり, g( ふ ) =f(ei)と な る ふ E Rn(l~i~m) をとっ て,対応 e i f + X iにより準同型 h:Rm→ Rnを定める.そのとき ( g 0 h ) ( e i )=f( e i ) ゅえ, goh=f, f が単準同型だから h も単準同型である. ついて (I) の仮定が成り立ち, m~n を得る.

注意

よって R 加 群 Rnに

I

‘任意の口について’を ' V□'と略記することにすれば, VM((O)= = ? ,( I))が成り

立ち, VM(I)= = ?VM(O)が成り立った.

しかし上の証明は VM((I)= = ?( 0 ) )を示して

はいない

(I)⇒ ( I I ) . [証明]

す で に 認 め た (I)=}( 0 ) ,( 0 )=}( I I )を結べばよい. I

VmVn(Il) ⇒ VmVn(ill): [証明]

どんな m;nについても ( I I )が成り立つとする.いま

R加 群 M に つ

いて ( B )m ,(B)nが成り立てば,特に ( B ) , m , (G)n が成り立っているから m~n. また ( B )n , (G)m が成り立っているから, m,n を入れかえて n~m.

あわせて m

=nを得る.' m ¥ : / n( ( I I )= = ?( i l l ) )を示してはいない実際,或る Rキ0について 注意上の証明は V R1~ だとなる(第 4章問題 1 )ので, m=lのとき ( I I )は成り立つが ( i l l )が成り立たない. この例は Vm( V n( I I )= = ?Vn( i l l ) )が成り立たないことを忍示している.

しかし次は成り

立つ.

Vn(VmVM(II) ⇒ 臼M ( i l l ) ) . [証明]

どんな切について忍 ( I I )が成り立つとする.いま R 加群 M について ( B )加

( B ) nが成り立てば,特に ( B )m ,( G )nが成り立っている力屯) m ; ; ; ; ; n . ここで仮に mlとし, 成分への射影

f :Rn —• R を Rnの 部 分 加 群

M

に制限すれば,次の完全系列を得る:

ーM ーf(M)ー 一 0.

O—• MnKerf

f(M)は R の 部 分 加 群 だ か ら 自 由 で あ り , 上 の 系 列 は 分 裂 す る : M~(Mn Kerf )釘 ( M ) . ところで よって

Kerf~R 正1,

M

ゆえにその部分加群

MnKerfは 仮 定 に よ っ て 自 由 ,

も自由である.

F が無限基底を忍つ場合 或る集合 I について F~Rく I〉だから, R 加群 RくI〉の部分 加群 M の自由性を示せばよい Iを R〈 I〉に埋め込んで基底とみなそう.

Iの部分集合

Jと M の線型独立な部分集合 L の対 ( J ,L )で,条件 "MnR〈 J〉 =RL"

(RLは L が生成する部分加群)

を満たす忍の全体を外とし,外において順序を

( J ,L)~(]', L ' )⇔

]~]', L~L'

と定める.そのとき外は明らかに順序集合となるが, さらに上に帰納的である.実際,

3に対し, 全順序部分集合 J l o=

l : : J] ,

(J,LJE. 1 J

Lo=

L JL

(J,LJE. 1 J

とおけば,容易に ( J i ,L 。 o )E外が確かめられ, J 3の上界となる.かくして, Zornの補題に より外の極大元(],L)が存在する. あとは, ]=lを示せば M=MnRくI〉が基底 L をぶつことになり自由である.そこで

eEI'-]があるとして矛盾を導けばよい f'=]U{ e } とおき,分裂系列

f ° 一 → R〈J〉4 R〈Jう一→ Re —•

O

を考えよう .fは第 e成分への射影である.これを MnR〈 Jうに制限して,完全系列

0ー

MnR〈 J〉 ー MnR〈Jう一ヅ (MnR〈Jう)一→ O

§ 4 .6 主イデアル整域上の加群

2 7 1

を得る.ここで MnR〈 J〉=RLは自由であり, f(MnR〈Jう)は Reの部分加群として自 由 . よって,分裂して MnR〈]')は自由加群の直和であり,それ自身が自由となる. よ っ 、/て線型独立な集合 L 'があって, MnR〈 ] ' 〉 =RL'. しかし(],L )$ ( ] ' ,じ)となり,(],L ) の極大性と矛盾する.' ここで,射影的加群が自由加群の直和因子であったことを想い起そう.特に自 由加群の部分加群であるから,次が成り立つ.



主イデアル整域上の射影的加群は自由加群である.

すなわち,主イデアル整域上では,自由加群と射影的加群の区別がないわけで ある.特に,可換体 k を係数域とする整式環

K[XJ上で,射影的加群は自由加

群である. 注意 これを多変数の場合に拡張する問題は S e r r eの問題とよばれ,その波及すると 9 7 6年 Q u i l l e nによって肯定的に解決された. ころが大きかったが, 1

主イデアル整域 R 上の自由加群 F が個数 nの基底をもつとき,その部分加群 M の基底の個数 m は ~n である.これは,一般の整域上で示した事実

線型独立系の個数ニ基底の個数 からわかる(定理 4 .5 ) . そして

rankM~rank F . ここで等号が成り立っても M=Fとは限らない.

しかし, M が Fの直和因子

のときは, r a n kM =r a n kF ならば M=Fである. 問4 .5 7 このことを示せ.

b ) 捩れがない加群

R を整域とする. R加 群 M の元尤が捩れ元とは,自由元でないこと,すなわち 或る aeR について

aキ 0 , aの =0

が成り立つことであった. 0は捩れ元である.

0以外に捩れ元をもたない加群は,捩れがない ( t o r s i o n f r e e )といわれる.整 域上の自由加群では, 0以外の元が自由元であるから(問 4 .1 7 ) , 自由加群の任意の部分加群は捩れがない. それでは逆に



第 4章 加 群

272

“捩れがない加群は自由加群の部分加群に同型か?’’ これは,一般には成り立たない(例 4 .5 3 ) . しかし,有限生成という仮定があれ ばよい:

.2 5 整域 R上 の 加 群 M が有限生成で捩れがなければ, M は或 定理 4 る自由加群 Rnの部分加群に同型である. なお nは M の生成元の個数以下にとれる.

M の生成系の中から線型独立な元

証明

X1,…,叫をえらび,残りの幼n + l ,…,

X n + k(k~O) のどれをつけ加えても線型従属になるようにする. Mキ 0 としてよいから,

n~l.

.

また, k=Oのときは M 自身が n個の基底をも

つから, k>Oとしてよい. 各

i ; ; ; ;k )について,

1 ・( 1 ; ; ; ;

自明でない線型関係

a凸

=芦加巧

( a i= I = ) 〇

がある.いま, a=a1.・ a k とおけば, R が整域なので aキ0であり, n 、

a

a X n + i=Lー恥砂 j=Ia i n

aM~LR叩· j=l

そこで, f ( x )=axとおいて, R準同型

f :M

ーLRXj n

j=J

を定めよう. aキ0であって M には 0以外に捩れ元がないから, n

ある.

また, X 1 ,…,叫は線型独立だから LRXj~Rn. j=l

fは単準同型で

したがって, M は Rnの

部分加群と同型である.' 定理の‘有限生成’の仮定が省けない例をあげておく.

. 5 3 体でない整域 R の分数体 K は , R加群とみて捩れがない. 例4

K は,決して自由 R加群の部分加群に同型でない. [証明]

I〉への R単準同型 仮に或る自由加群 R〈

f :Kー→ R〈I〉

しかし

§ 4 .6 主イデアル整域上の加群

273

があるとすれば, f(K)キ0だから, f と或る成分への射影 Pi:R 〈 I〉→ R との合 成 f t i o f = gが キ . o そこで, _ _ _ _ _ _ _ _ , ,

0でない R準同型

_ g :K —• R があるとして矛盾を導こう. まず, R の任意の元 aキ0をとる.そのとき

( 4 ,4 6 )

g(K)= ag(K)

が成り立つ.実際, K=aKより g (K)=g(aK)=ag(K). いま g(K)キ0だから,或る b キ0が g (K)に属し,これについて g(K)=bg(K) である・

よって或る CEg (K)について b=bcと表わされるが, bキ0だから

c = l .

ゆえに 1Eg (K). ところで g(K)は R加 群 R の部分加群,すなわち R の イ デ ア)レであったから, 1を含めば R と一致する.

よって ( 4 .46)より R=aR.

これから, l=ax となる XERの存在がわかり, aは R の可逆元となる. a = I =

0は任意であったから, これは R が体であることを示し,仮定に反する.'

問4 .5 8 "任意の R 準同型 g:K→ R に対し, Kg(l)~R" を示すことにより, 例4 . 5 3の別証明を与えよ. ッ注意

一般の分数環 Rs=!=Rを R 加群とみるとき,例題 4.3と同様に有限生成でない.

, R が Noetherでなければ必ずし忍成り立たない(第 4章問題 1 7 ) . しかし例 4.53は 定理 4 . 2 4と定理 4 . 2 5をあわせれば,直ちに次を得る.

定理 4 . 2 6 主イデアル整域 R 上の有限生成で捩れがない加群は自由加 群である.

c ) 零化域と捩れ加群 はじめは Rキ0を任意の環とし,その上の左加群を考える.右加群も同様であ る .

R加 群 M の部分集合 Sに対し, aS=Oとなる aERは Sを零化するという. その全体を Sの零化域 ( a n n i h i l a t o r )といい次の記号で表わす:

AnnS= { aERIaS=O}. Ann{x}は Annんと略記される.定義から直ちに ”が捩れ元 ~Annx キ 0.

第 4章 加 群

274

Anns=

( 4 .4 7 )

n AnnX . e s



Annxは R準同型 R→ M 1 8の証明と注意).

(a~ax) の核として R の左イデアルである(例 4.

よって,一般にそれらの交わり AnnSは R の 左 イ デ ア ル で

色 部分加群 N の零化域 AnnNは R の両側イデアルである.

問4 . 5 9 これを示せ. 例4 .5 4 可 換 群 G の算法を加法で表わして Z 加群とみなせば, xEGの位数 (無限位数は 0とする)は,

Z のイデアル Annxの生成元である. したがって G

の幕数 ( § 3 .1 ,d ) )は,イデアル AnnGの 生 成 元 で あ る . _

R加 群 M の部分加群 Ni(註/)に対し

nAnnNi

AnnLNi=

( 4 .4 8 )

iEI

ieI



問4 . 6 0 これを示せ.

. 5 5 Rキ0を可換環とする. 例4

( i ) 巡回 R加 群 C の生成元を m とすれば AnnC=Annx. (ii)

巡回 R 加群 C に対し,

AnnC は R のイデアルで C~R/Ann

C .

( i i i ) R のイデア Jレ aに対し, R / aは巡回 R加群で a=Ann(R/a). 注意 R 同型な R加群を同一視するならば, ( i i ) ' ( i i i )により対応 c f → AnnC , a —• R/a が,巡回 R 加群と R のイデアルの間の 1対 1対応を与える. [証明] ( i ) C3x ならば AnnC~Annx であるが, C=Rx のとき,

aEAnnx⇒ aC=R ⑰ =0= } 咋 AnnC. Annx~Ann C .

. ・ . AnnC= Ann瓜

( i i ) 例4 .18 により, C=Rx のとき C~R/Ann x=R/AnnC . ( i i i ) a( R f a )=0 ゅぇ心 Ann(R/a)~ ぁ る が , 咋 Ann(R/a)⇒ aR~a • aE a .

ゆえに Ann(R/a)~a.

したがって a =Ann(R/a).I

可 換 環 Rキ0上の加群において,一般に(叩)註I の生成する部分加群 N に 対 し

( 4 .4 9 )

AnnN=□AnnX i . ieI

問4 . 6 1 これを示せ.— すべての元が捩れ元であるような加群を捩れ加群 ( t o r s i o nm o d u l e )という.

2 7 5

§ 4 .6 主イデアル整域上の加群

例4 . 5 6 整域 R の分数体を K とする . R加群 K/Rは捩れ加群であるが, K キR のとき Ann(K/R)= 0. また K/Rは有限生成でない(例題 4 . 3参 照 ) . 一

一般に,整域 R上の有限生成加群 M については

M が 捩 れ 加 群 ⇔ AnnM = I =〇 . [証明] M の生成元 X i ,…,叫をとれば, AnnM=nAnn叩ゆえ, M が 捩 i=l

れ加群ならば O = l = a iEAnn叩をとるとき, O = l = a 1.・ a nEAnnM キ0 . 逆は,任意の XEM について Ann ぷ~AnnM による.

ゆえに AnnM

I

例4 . 5 7 各元の位数が有限な可換群 G は , Z 加群とみて捩れ加群である. 例4 . 5 8 可換体 K 上の有限次元線型空間 V の線型変換 とき,文字 X の作用を

U

によって定めて,

U

を固定する.その

V は K[XJ加 群 と み な さ れ い と

§ 4 .3 ,a ) ) . 凡は有限生成の捩れ加群である. 書かれた ( [証明] dimV=nならば,任意の XEVに対して

x= u 0 ( x ) , u ( x ) , . . ., u n 1 ( x ) , u n ( x ) の間に自明でない線型関係

LAiが(x)=0

i=O

がある.そこで J(X)=LA ぷiとおけば, J(X)x=Oであり, Ann叶 0 . した i=O

が っ て 凡 は 捩 れ 加 群 で あ る . ま た V は K 加群として n個の生成元をもつから,

K[XJ加群として忍 n個以下の元で生成される. I K[XJが主イデアル整域なので, AnnV uキ0は一つの整式で生成される.そ,

m i n i m a lp o l y n o の最高次係数を 1として定まる整式 μu(X)を U の最小多項式 ( m i a l )という.次の定理によれば, μu(X)は或る xeVの 零 化 域 の 生 成 元 で あ るから,上の証明より, n次元空間の線型変換の最小多項式の次数は n以下であ る _ _:. 注意

AnnVuに属する標準的な n次整式として,‘特性多項式’とよばれる間のがある

( § 6 .I ,c ) ) . 次の定理は可換群の幕数のもつ性質(定理 3 .4 )の拡張である.証明もほぼ同様 でよいが,位数の大小関係の代りに,イデア Jレの包含関係を用いなければならな

.6 2 ) . 少し形を変えた証明を与えよう(定理 3 . 4の別証明となる). い(問 4

第 4章 加 群

2 7 6

定理 4 .2 7 主イデアル整域 R 上の加群 M について AnnM = I =〇ならば,

Annx=AnnMと な る 元 戸 M が存在する. 証明

AnnM=!=〇 の 生 成 元 叶 0を素元分解して a-p戸 "Pnen

とする.

( e i > O )

ここで P 1 ,…,かは互いに同伴でない素元とする.

μ i= a / p ぃ 巧 =a/P/'(l~i~n) とおくとき, μiM キ0だから,或る叩 E Mをとれば μ i叩キ 釦 =l , . i i X i

. oそこで,

(1 争・ ~n)

とおけば

P / ' Y i= a叩 =0,

p万 加 =μi叩 キ 0 ,

AnnYi=( P / ' ) . かくて,肛…,如の零化域はどの二つも互いに素で,積が AnnMと 一 致 す る.そこで次を示せばよい. 一般に, AnnY 1 ,… , Annynのどの二つも互いに素ならば, Ann(y叶 … +Yn)

=AnnY 1 ・ . .Annyか n=lのときは明白. n=2のとき, AnnY1+AnnY2=Rだから,或る a 1 ,a 2E R について a 1釦 = 知 鉛 =0, a叶 a2=l. ゆえに a 1(糾十釦 = a必 =(l-a2)妬 = 露 a2(Y1+釦 = a晶 =(l-a1)釦 =Y 1 . この形から, a(y1+Y り=0=知 I釦 = 知a(Y1+Y2)=0,ay2=a1a( Y 1十Y 2 )=0. よ って Ann(y け Y2)~Ann Y 1nAnnY 2を得る.逆の包含関係は明らかで,

Ann(y凸 Y 2 )= Ag.nY 1nAnnY 2 となる.

ここで AnnY 1 ,AnnY 2が互いに素だから,右辺は積 AnnY 1AnnY 2と

一致する. n=k~2 で成り立つとき, Ann Y 1 ,…,AnnYk+1の ど の 二 つ も 互 い に 素 な ら

k )=AnnY 1 ・ . .AnnYk と AnnY k + 1が互いに素であるから, ば , Ann(y凸 … 十 Y Ann(y叶 … 十 y叶 Y k + 1 )=AnnY1"・AnnYkAnnY k + 1を得る. I 問4 . 6 2 定理 3 . 4の 証 明 に な ら っ て , 上 の 定 理 を 証 明 迂 よ す な わ ち , ま ず

2 7 7

§ 4 .6 主 イ デ ア ル 整 域 上 の 加 群

x,yEMに 対 し て a ,f iERを 見 つ け て Ann(ax+fiy)=Annか Annyとなる _ _ /c ようにする.次に R/AnnMの A r t i n性から, Annxが極小の元

X

をとり,任

意の yEM に対する Anny と比較して, Annx~Anny を導く.これから Annx

=AnnMを得る.ー― さて,主イデアル整域上の捩れ加群の構造定理を証明しよう.それには次の補 題が本質的な役割を果す. 補題 4 .3 主イデアル整域 R 上の加群 M o 咋祁分加群 N が あ る . 巡 回 加 群 C が

0キ AnnC冨 AnnM を満足すれば,任意の準同型 f:N → Cは準同型 J:M → Cに延長できる.

ーN ) M

0

↓, , , , , , 7 /

f

~

C 証明まず,



M=N+Rx

とする. 0キAnnC~Ann M~Ann ( M/N)だから,或る 0キa ,炉 R をとれば

AnnC= ( a f t ) ,

Ann(M/N)= ( f i ) .

このとき f i x。eNである.そして

( 4 .5 0 )

/ ( f i x。 )=fiz・(zEC)

と表わされることを示そう.左辺を a 倍すれば,

吋(釦o )=/ (a 知0 )=/ ( 0 )= 0

( " :a f tEAnnM).

よって C の生成元 z 。によって f ( f i叩 ) =rz 。C reR )と表わせば a r z。= 0 . ゆえに

a f tI a r . ゆえに f tI r . したがって r=府 C r ' E R )と表わされ, z = r ' z。とおけば よい. さて,準同型

g : N⑤ R一

M,

h : N腿 一 C

を次のように定める:

g ( y ,l )= y-lx , 。

h( y ,l )=f(y) —えz.

そのとき,

( 4 .5 1 )

, h(Kerg )=0

( Jは全準同型.

第 4章 加 群

278

実際,

g ( y ,) え =0 のとき, y= えx。だから,ぇ品 =y=O であって ~I え. よって

ER)と表わされる.このことから, 入=昨(え /

( 4 .5 0 )を用いて

h( y ,J )=/ ( A X o )一入z=えI(J(~x。) -~z) =0 . gが全準同型であることは明白.

( 4 .5 1 )により,図式 狐R ー~M 一シ〇

↓ " ' / / ぐ ( /

h

C を可換にする準同型 fが存在する

( § 2 .2 ,e )参照) . yeNは g ( y ,0 )と表わされ,

f( y )=h(y,0 )=/ ( y )であるから, fは fの延長である. 次に,

M=N+R ふ 十 … 十 R叫であるとき, M。 =N,

とおけば,

Mk=N+Rx1+ … +R叫

(l~k~n)

Mk=Mk-1+R 叫, 0 キ AnnC s ; ; ; ; A n nMk. し た が っ て f:N=M 。→ C

を/ 1:M1→ C ,! z :M2→ C , …と延長して,

f=Jn:Mn→ Cに到達する.

M/Nが有限生成でない場合は, M の 部 分 加 群 M へ の fの 延 長 f':M'→ C の全体に Z ornの補題を適用すればよい.'

問4 . 6 3 上の図式を可換にする]の存在を検証せよ. 定理

4 .2 8 主イデア)レ整域 R上 の 加 群 M がある.

( i ) M の 巡 回 部 分 加 群 Cについて, 0キAnnC=AnnMならば, Cは

M の直和因子である. ( i i ) M キ Oが有限生成捩れ加群ならば, M は 次 の 性 質 を も つ 有 限 個 の 巡回部分加群

C 1 ,…,Cnキ0の直和に分解される. AnnC1~Ann C2~

証明

…'"'~Ann Cn,

( i ) 恒等同型 i d a :C→ Cは , 補 題 4 . 3に よ っ て 準 同 型 r:M → Cに 延

長される.このとき包含写像 の直和因子である

q:C→ M に 対 し て か q=idoであるから, Cは M

( § 4 .4 ,c ) ) .

( i i ) まず AnnM = ! =〇に注意する.定理 4 . 2 7により, Annx1=AnnMとなる 元功

E Mがある. C1=R 初とおけば, ( i )によって

2 7 9

§ 4 .6 主 イ デ ア ル 整 域 上 の 加 群

M=C 叶 M1 と直和分解され, AnnC 1=AnnM~Ann M1.

M庁 0ならば同様にして M1= C2+M2 と直和分解され, AnnC2=AnnM1~Ann M2. 以下同様にして,補部分加群 Mnが 0となるまで

C 1冨 C叶 C 2~ C叶 C叶 C s~ ・ ・ という M の部分加群の増加列が得られる . Mは N oether環 R 上有限生成で,

Noether加群だから(定理 4 .2 1 ) , 増加列は有限回で止まる.このとき直和分解 M=C 叶 C2+…+Cn が得られ,作り方から AnnCぷ AnnCぷ… ~Ann

注意

C i ,… ,

C n ,I

M が有限生成でないときの ( i i )の拡張は第 4章問題 22を参照

G は一意的でないが, AnnC i ,. . ., AnnCnは一意的であるこ、とを次項

で示す.この増加列を

M の不変因子 ( i n v a r i a n tf a c t o r s )という.

また,各 C辻 0は , 0でも可逆元でもない元 aERを 用 い て R/(a)に 同 型 で

. 4 6により次を得る. あるから,例 3



主イデアル整域 R 上の有限生成の捩れ加群は,

R/(pり

(Pは R の素元,砂>〇)

という形の R 加群に同型な有限個の部分加群の直和に分解される.

系の直和分解において現われるイデア

Jレ

( P " )を , M の単因子 ( e l e m e n t a r y

d i v i s o r s )という.これらは‘重複度’を含めて M に よ り 定 ま る こ と を 次 項 で 示 す.なお,少し手順を変えた扱い方について § 4 .6問題 9を参照 注意

本講の不変因子・単因子を,それぞれ単因子・単純単因子とよぶ人忍いる.

R=Zのとき,定理 4 .2 8( i i )および系を,(一意性も含めて)‘有限 A bel群の基 本定理’という.

また,

R=K[XJの場合を考えれば,‘行列の標準形と単因子論'

に導かれる. 例4 .5 9 K をその上で既約整式が 1 次となる可換体ー一代数的閉体—とす

る. K上の有限次元線型空間 V の線型変換

U

をとれば,

Kの 元 a 1 ,…,のおよ

第 4章 加 群

280

び V の基底 X i j(l~i~l, l~j~ni) が存在して

u (叫 ={a心+叩, ;+1 この基底に関する

[証明]

U

l~jと書かれる. R t >は R の分数体 K の部分環として実現された局

所整域であった

( § 3 .3 ,c ) ) : R I > ={ x s 1I xER, sER,μ}、

第 6章 可 換 環

366

その極大イデアルは

pで生成され R i , . ! Jと書かれる: R i , p={ p s―lI pEP , SER" -p },

R の一般のイデアル aに 対 し て , そ の 生 成 す る 凡 の イ デ ア ル R i , aは , a i ,と も書かれる:

a i ,= R r , a= { a s―1I aEa , sER" -p } . 特 に 柘= R i , pである.そして次の定理が成り立つ.

. 2 0 整 域 R の素イデアル Pについて, Rr,pnR=p. 特に Pを極大イデ 定理 6 アルとすれば, Ri,P叫1R= 炉 (n~l).

注意素イデアル Pに対し, R i ,炉 nRを砂i) と書き, Pの記号的 n乗 ( s y m b o l i cn t h power)ということがある.一般には炉冨 P ⑫)である.

証明

(左辺)~(右辺)は当然である.左辺の任意の元

x=a s―lE R ,

ただし、 aE炉 ,

sER"-P

をとる. a=xsE 炉, s~p だから, n=l のときは XE pとなり XE(右辺). 一般の n~l に対しては,

P を極大とする.いま仮に炉十 Rs キ R とすれば,

炉十 Rsを含む極大イデアル m が存在するが,炉 s ; ; ; ; mであって

mは 素 イ デ ア ル

だから p s ; ; ; ; m (理由は ( 6 .1 7 )で一般に述べる) . pは 極 大 と 仮 定 し た の で p=m. ゆえに SEm=p. これは矛盾である. したがって炉十 Rs=Rとなり,

q+ys=l ,

ただし

qE炉 ,

XER

という表示を得る. よってんを乗じて

xq+xys= x . ここで第 1項は qE炉 よ り 炉 に 属 し , 第 2項は XSE炉 よ り 炉 に 属 す . か く し て XE炉=(右辺)である. I 証明中で用いた性質“炉 s ; ; ; ; m = } p s ; ; ; ; m "は,次の一般性質の特別な場合である. 可換環

R の素イデアル Pとイデアル邸…,%について,

( 6 .1 7 ) [証明]

U 1…a n s ; ; ; ;p⇒

或る ai~p.

もし a iE缶 " Pがあれば, l l 1 ・ " a nEU 1 ・ "伍 " P ・ I

問6 .1 6 整 域 R の素イデアル Pとイデアル aについて,次を示せ.

a編 P⇒ R国 = R r , . 局所化を利用して大局的性質を調べる際に,次の事実が基本的な役割を果す.

§ 6 .2

イ デ ア Jレ,局所化

367

定理 6 . 2 1 整 域 R について,

R =り 凡 = ( ) 凡 . ただし,

Pは R のすべての素イデアルを動き, m は す べ て の 極 大 イ デ ア

Jレを動く.

証明

常に R~R.., であり,極大イデア Jレは素イデア Jレであるから, R~ 「) R p p

~nRm. そこで「1Rm~R を示せばよい. m

m

任 意 の 印 e n凡をとり, x =as-1( a ,sER,sキ0 )と表わして,イデア Jレ m

a= { bERI a bER s } を考え, a=Rを示そう. 仮に aキR とすれば, aを含む極大イデア Jレm が 存 在 す る . そ し て XERmで ―1 ( bE R ,tER,m)と表わされる.ゆえに a s 1 = b t―. 1 したがっ あるから, x=bt

てa t=bsだから tE a . ゆえに tEi l l , これは矛盾である.

よって a =R.

したがって 1 E a , ゆえに aE R s . したがって XER, ゆ え に □ R m s ; ; ; ; R ,I m

定理 6 . 2 2 整 域 R について次の 3条件は同値である.

(i) R は整閉である. ( i i ) R のすべての素イデア JレPについて R i ,は整閉である. ( i i i ) R のすべての極大イデアル m について Rmは整閉である. 証明

( i )= = ?( i i )は定理 6 .14による. ( i i )= = ?( i i i )は 当 然 で あ る . ( i i i )= = ?

( i )は , 定 理 6 .1 5と上の定理 6 . 2 1に帰着する. I

d ) Krull次元

p e c ( R )と書いた. Spec(R)における列 可換環 R の素イデアル全体を S

p ,=Po~

柘三…三加

を , Pからはじまる素イデアルの降鎖といい, nを そ の 長 さ と い う . そ し て , 固 定 さ れ た pに対して, nの上限 ( o oを許す)を

Pの高さといい, htp ,で表わす.

ankp ,と書くこともある. 階数といい r また, S pec( R )における列

, p=Po~ 柘 三 … 后 加

第 6章 可 換 環

368

を , pからはじまる素イーデア Jレの昇鎖といい, n をその長さという. そ し て , 固 定された Pに対して, nの上限 ( 0 0 を許す)を Pの深さといい d epthpで表わす.

l i m pで表わしたり,双対階数といって c o r a n kpと書いたりするこ 次元といい < ともある. すべての pES p e c ( R )に関する h t + 'の上限は, d e p t hp=dimpの 上 限 と も 一

rull次元といい,線型空間の次元 ( § 4 .2 ,e ) )とのまぎれ 致する.これを R の K がなければ,記号 dimRで表わされる.定義から当然

( 6 .1 8 )

depthp= dimR/p

であるので,今後は素イデア Jレの高さと環の K r u l l次元を中心に扱う.

問6 .1 7 整 域 R について, dimR=O{=}Rが体, を示せ. 例6 .1 2 Artin環 Rキ0について, dimR=Oである.

[証明] R の素イデア JレPについて, R / ' pは A r t i n整域なので,例 4 . 5 1に よ り体である.ゆえに Pは極大である.' 例6 .1 3 主イデアル整域 R について, dimR~l である(定理 3. 1 8 ) . 特に,

dimZ=dimk[XJ=l( kは体). 例6 .1 4 Z[XJの素イデアルは次の通り,特に dimZ[XJ=2. (0) ・・・・・•高さ 0,

( p ) , ただし Pは素数……高さ 1 , ( / ) , ただし

fは Q 上既約な原始整式……高さ

1 ,

) , ただし P は素数 g は modp で既約な整式……高さ 2~ ( p ,g 注意 Z の代りに任意の主イデアル整域をとって忍同様である.

[証明] 素イデアルを Pとい場合を分ける. ( i ) p=O. ( i i )叶 0 , pnZ=Oのとき, Q[XJのイデア Jレ Q[X]p=Qpの 生 成 元 fは P からとれる. § 3 .3 ,g )の考察と Pが素イデアルであることから, 既約整式である. cont/が極小になるように

fは Q 係 数 の

fを定めれば, fは原始整式であり

炉=(/)が容易にわかる.

( i i i ) pnZキ0のとき,これは Z の素イデアルキ 0だから,素数 Pで生成され る.そして標準的単準同型

Z/Zp —• ・z[XJ/p

369

§ 6 .2 イデアル,局所化 これは体 Z/Zpの拡大整域と考えられ, X の Pを法とする剰余類

を得る.

Xで

生成される. f(X)EZ[X]について

/(X)E t ,⇔

f 戊 ) =0

(ただし, fは f に係数の簡約 Z→ Z/Zpを行ったもの)であるから,

X が超越的のとき, /(X)Ep⇔ f=O⇔ /EZ[X]p,

: . > t= ( p ) ,

Xが代数的のとき,尺の最小多項式 ( j( gEZ[XJ)をとれば, /(X)E t , ⇔ glf⇔ 戸 Z[X]p+Z[X]g,

: . > t= ( p ,g ) .

なお, 4種類の素イデア Jレのうち,同種類の間では真の包含関係はない.

この

ことから高さがわかる. I 例6 .1 5 可換体 Kに対し, dimk [ X 1 ,… ,

x』 =n. 一般に,

K上 の 有 限 生 成

r u l l次元は, K上の超越次数(代数的に独立な元の個数の最大値) 整域 Rの K t .d e g kR に等しい.証明はあとで行う.ー一 可換環 R の素イデア)レ

Pについて, ( 6 .8 )により次が成り立つ.

( 6 .1 9 ) ' , h t> t十 dimR/p~dim R . 例6 .1 6 代 数 的 数 0について dimZ[ 0 ]=1 . [証明]

全準同型 Z[XJ→ Z[ 0 ](Xf-+0 )が存在し,核 Pは素イデア)レで,

pキ0 , Z[XJ/戸 Z[ 0 ] . ( 6 .1 9 )より h t μ 十 dimZ[0]~dim Z[X]. 叶 0と例 6 .1 3により, dimZ[0]~1.

ところで Z [0]は 体 で な い ( § 6 .1の 問

題5 )ので dimZ[0J=l. I 注意 0が代数的整数のとき, Z[OJが体でないことは例 6 . 4で示したなお,有限次

o e t h e r環であることを § 6 .5で示す. 代数体の任意の部分環 R が 1次元以下の N .1 7 素 数 Pについて, R=Z(p)[XJ, P=(pX-1)とおけば 例6

htμ=l,

dimR/μ=0,

dimR=2.

すなわち ( 6 .1 9 )で等号の成り立たないことがある. 問6 .1 8 上の例を確認せよ.ー一 整 域 R の素イデア JレPについては,

( 6 .2 0 )

( 6 .1 2 )により次が成り立つ.

h t> t= dimRか

Noether 局所環 R の極大イデア)レ m の生成系の個数は ~dimR であること

第 6章 可 換 環

370

をあとで示すであろう.これを認めれば,定理 6 . 1 8により

dimR/mm/m2~dim R.

( 6 .2 1 )

ここで等号が成り立つとき, R を正則局所環 ( r e g u l a rl o c a lr i n g )という.

e ) 条件付き極大・極小イデアル 可換環 R の中で,或る制約条件のもとで極大なイデアルや極小なイデアルを 求めたいことがある. まず,乗法系の外で極大なイデアルを考えよう.

定理 6 . 2 3 可 換 環 R の 乗 法 系 Sについて, a。E/8(R)であるとき,

ls(R,a。)には極大元 Pが存在し, Pは素イデアルである.

l ]



l s ( R ,a。)の極大元 Pの存在は, Sが乗法系でなくてもよかった(定理 4 .

証明

) . ここで Sが乗法系のとき,イデア Jレ Pが素イデアルとなることを示 1 7の系 1 そう.すなわち, a ,beR'-Pに対して abりPを示そう.

叶 Raは Pを真に含むので (p+R a)nS = ! = ¢ . 同様に (p+Rb)n S = 1 = ¢ . よって, 或る

P ,qEP ,x ,yER により P+ax, q+byeS .

これらの積を考えると,

ss~s であるから

pq+p(by)+ (ax)q+abxyE S . はじめの 3項は Epであるが, pnS=¢ であるから左辺全体はい p , よって第 4 項は

p , ゆえに abE fp .I

E f

上の定理の使い方の例をあげる. 例6 .1 8 整域 R について,次の

2条件は同値である.

( i ) R は Gauss整域 (UFD)である.

( i i ) R の任意の素イデアルキ 0は素元を含む. [証明] ( i )= }( i i ) 素イデアル

P キ0は , 0でも可逆元でもない元 aを含む.

a=Pl'"Pn(n>O)と素元分解すれば, P 1 ・ " P nEPより,或るか Epを知る. ( i i )⇒ ( i ) まず一般に,盤域 R の素元の積(および可逆元)全体 Sは 飽 和 乗

,beS= }abeSは当然として, abES のとき, ab-P1~..pn 法系である.実際, a (かは素元)と表わされ, n>Oな ら ば , た と え ば か l b となって b=b' 加と表わ

§ 6 .2 イデアル,局所化

され, a b ' , . . . ,P 1.・ P n 1と表わされる.

3 7 1

よって n に関する帰納法で, a ,bESを知る.

いま ( i i )を仮定して, R,{ O }=Sを示せばよい ( § 3 .3 ,c ) ) . 仮 に 或 る 元 aキ0 が Sに属さないとすれば, Sの飽和性から RaE1 8 ( R ) . したがって定理 6 . 2 3に より, Raを含んで S と交わらない素イデアル Pがある. pキ0だから Pは 素 元 P を含むが, p~S となるので S の作り方に反する.かくして R,

{ O }=S. I

素イテアルの補集合は飽和乗法系であったぃそして飽和乗法系がいくつかあれ ば,それらの共通集合はやはり飽和乗法系である.

したがって,いくつかの素イ

デアルの合併は,その補集合が飽和乗法系である.この逆も成り立つ:

. 2 4 可換環 R の部分集合 aについて,次の 2条件は同値である. 定理 6 ( i ) aはいくつかの素イデアルの合併である. ( i i )

証明

R , aは飽和乗法系である. ( i )==}( i i )はすでに述べた.

( i i )⇒ ( i ) S=R'-aが飽和乗法系のとき,任意の aEaに 対 し て RanS=¢ であるから,定理 6 . 2 3により, R a s ; ; ;p ,pnS= ¢ となる素イデアル Pが存在する。 このとき aEp s ; ; ; a . したがって aは,いくつかの素イデアルの合併である. I 例6 .1 9 可換環 R 上の加群 M に対し

Z(M)= { aERIM の或る元

Xキ0について

ax=O}

は R のいくつかの素イデアルの合併である.特に, R の零因子全体 Z(R)は ,

R のいくつかの素イデアルの合併である. 問6 .1 9 R,z(M)が飽和乗法系であることを確かめよ. 問6 . 2 0 主イデアル整域 R の同伴でない素元 p,qに 対 し , 商 環 R/Rpqの 零 因子全体を素イデアルの合併として表わせ.ー一 一般の可換環の素イデアルの包含関係について,次の事実がある. 定理 6 . 2 5 可換環 R の素イデアルから成る全順序集合 B について,

U . J : J ,n . J : J

はふたたび素イデアルである.

証明

§ 4 .5 ,a )の用語によれば, Spec(R)が上下に R 帰 納 的 と い う こ と で あ

る.まず R のイデアル全体 l ( R )が上下に R 帰納的である(例 4 .4 0 ) . 次に R の 乗法系全体必 ( R )も上下に R 帰納的であり(例 4 .3 7 ) , したがって乗法系の補集

( R )も上下に R帰納的である(定理 4 .1 5の ( i ) ) . ところで, Spec(R) 合 全 体 必' ( R )であるから,これも上下に R 帰納的である(定理 4 .1 5の( i i ) ) .I =l(R)n必'

第 6章 可 換 環

372

上の定理を用いて,一般の可換環での条件付き極小素イデアルの存在を示そう.

. 2 6 可 換 環 R の イ デ ア ル a。 キ Rに対し, S pec( R ,a。)には極小 定理 6 元が存在する.なお,

a 。を含む素イデアル P oが与えられたときは, a。三

栢 砕oで あ る よ う な 素 イ デ ア ル

証明

P全体の中に極小なものが存在する.

Spec( R ,a。)は定理 6 . 2 5によって下に帰納的であるから, Zornの 補 題

によって極小元をもつ.付帯条件 p~ 恥 が あ っ て も 同 様 で あ る . I 注意条件 a。三郎砕o の忍とでの極小素イデアル P は,条件 a。 ~p のもとでの極小素イ デアルに忍• なっている.

しかし逆はいえない.

a 。 キ R を含む素イデア)レのうち極小なものを, a 。に関する極小素イデアル, あるいは簡単に

a。の極小素イデア)レという.‘準素イデアル分解' ( § 6 .5 )の 観 点

。の極小素因子ともいう. N oether環 に お い て は 有 限 個 で あ る こ と を あ と から a で示すであろう.

. 2 0 可 換 環 R上 の 加 群 M = ! = Oについて, AnnMに 関 す る 極 小 素 イ デ ア 例 6 Jレ

Pは Z(M)に含まれる.特に, Spec(R)の極小元は零因子から成る.

[証明] a ¢ 冗 (M), b¢pをとれば, b¢AnnMなので bM キ0 , ゆ え に abM キ0 , すなわち ab¢AnnMとなる.

したがって

S={ a bI aE l :Z( M), bE l :t J } は AnnMと 交 わ ら な い ま た Sは明らかに R の乗法系である.そこで, AnnM を含み S と交わらない素イデア Jレqがある(定理 6 .2 3 ) . そのとき, AnnM~q

~R'..S~ 冗 (M)n μ . μの極小性より t J = qを 得 る . ゆ え に 加 立 ( M).I 問6 .2 1 K r u l l次 元 0の可換環 R では,非可逆元が零因子であることを示せ. [ヒント]非可逆元を含む極大イデアル Pが S pec(R)の 極 小 元 で あ り , 例 6 . 2 0 による.

§ 6 2問題 環はすべて可換環とする. l 有理数体上の文字 X,Yの整式環において,次のイデアルは素イデアルかどうかを

判定せよ.複素数体上ではどうか.

3 7 3

§ 6 .3 Dedekind環 ( i ) (X彗 Y, り

( i i ) ex+Y,x彗 Y, り

( i i i ) (X+Y —l,XY-Y—1).

2 Gauss整域のイデアル Pが素イデアルであるためには,条件 "aep==}或 る 素 元 P Epが aの約元”が必要かつ十分であることを示せ. 3 体 で な い 環 R は素イデアルでないイデアルキ R をもつことを示せ. [l : : ント]イデ アル ( 0 ) ,( a ) ,( aり ( aキ0 )を考える.

'

4 環 R の元 a と素イデアル P について, p~Ra=⇒ p=apを証明せよ. 5 整 域 R の分数体を k とする.炉→ pnR[XJにより,整式環 K[XJの素イデアル P と,的 R=Oであるような R[XJ の素イデアル qとが, 1対 1に対応することを示せ・

6 局所環の幕等元 eは , 0または 1であることを示せ.[ヒント] e 十 (1 — e)=l.

7 局所整域 B の分数体 L の任意の部分体 k に対し, A~BnK 忍局所整域であるこ とを証明せよ. 8 環 R が性質“任意の xeRに対し,或る n>lを と れ ば 妍 = か を 忍 て ば , dimR

=0であることを示せ.[ヒント]素イデアル Pに対し, 0キ元 ER/pの逆元を求める. 9 環 R の素イデアル P ,q が共通の素イデアルを含まないとすれば,或る元 a~1:)"'.q, bEq"pについて ab=Oとなることを示せ. 00

1 0 Noether整 域 R の非可逆元 aに つ い て 口 Ran=Oを証明せよ.[ヒント]左辺の n=l

元を X=Yn. 呼 ( n=l,2 ,…)と表わすとき,或る n について Yn+1=~bk釦 (bk ER)と表わ 因加 され,関係 x=(

a k i ) aのを得る.

lc=l

1 1 Noether整 域 R の単項素イデアルキ 0の高さは 1であることを証明せよ. [l : :ン ,1 0 . ト]問題 4

1 2 GaussNoether整 域 R の非可逆元 aキ0に対し, Raの 極 小 素 イ デ ア ル は 単 項 で あり,その高さは 1であることを証明せよ.[ヒント]前半は問題 2 , 後半は問題 1 1 .

§ 6 .3 Dedekind環 Dedekind環 の 概 念 は , 代 数 体 に お け る 盤 除 性 の 統 制 を 目 標 と し て 生 ま れ た そ の 意 味 で ,

忍っと忍特徴的な性質は,‘‘任意の 0でないイデアルが素イデアルの積として一意的

に表わされる”ということである.そしてこの性質は,連立合同式に関連して,イデアル の和と交わりに関する分配性に反映する.

1次元’的な環は,代数曲線の座標環としても現わ ところで,代数体の部分環のような ' れる.そして,‘‘各点で,接線が引ける”という性質がちょうど上の性質に対応するので ある. この節は,両者を統一する一般概念としての Dedekind環について,いくつかの特徴の 阿直性を示すという形で議論を進めたい さらに,主イデアル整域の場合に‘自由性’という形で片鱗を見せた加群としてのイデア ルの‘射影性’が, Dedekind環の特徴であることを示すであろう.

第 6章 可 換 環

374

a ) 主イデアル局所整域 主イデアル整域,すなわちすべてのイデアルが単項であるような整域について は§ 3 .3 ,§ 4 .6で扱った.ここでは, まずとくに体でない局所環になっているも のの構造を,互いに同値な条件の形で述べよう.

定理 6 .2 7 整 域 R に関する次の 6条件は互いに同値である.

(i) R は局所環であるような主イデアル整域であり,体ではない.∼ ( i i ) Rは N oether局所環であって,極大イデアル m は一つの元 1Cキ0 で生成される.

( i i i ) R は局所環であって,極大イデアル m は一つの元 n = I =〇で生成さ

n町 =0. 00

れ ,

n=O

( i v ) 或る可換体 K と全準同型 v :( K ,x)→ (ZU{ o o } ,十)が存在して, R ={ aEK iv(a)~0} ( o oは零元).

(v) R の或る元

1 C をとれば

R= R n ° ~ Rn1~ R1e2·~ ・ ・ これらが 0でないすべてのイデアルを与える.

( v i ) R は 0でないただ一つの素イデアルをもつ主イデアル整域である.

注意

‘整域’という前提を‘可換環’に弱めるときは,条件 ( i i ) ,( i i i ) ,( v )における元冗

i i )= = = ?( i i i )の部分の証明は少し長くなる. に非幕零性をつけ加えればよいただし (

証明

( i )= = ; >( i i ) 主イデアル整域は N oether環であり ( § 4 .5 ,c ) ) ,体でない

局所環の極大イデア)レ m は キ0である.

( i i )⇒ ( i i i ) m=R 冗と表わし, XE百 町 を と る . x =叫が(叫 ER)と表わ n=O

さ れ 叫= X n + 1 7 7 : . ところでイデア)レの増加列 R叫 は 途 中 で 止 る か ら , 或 る nに 叫 ( aER), ゆ え に 叫 = a x n n : . ここで m = R 冗キ R に注意し, ついて Xn+1=a

1= I =

a冗,ゆえに叫 =0, したがって x=O. i v ) m=R 冗と表わす. U=R,mは R の可逆元全体であり, ( i i i )⇒ (

Rの

nEZ)で代表される. 分 数 体 K の乗法群 K*の部分群 U に 関 す る 剰 余 類 は が ( 実際,冗キ 0は非可逆元であるから,冗の剰余類は商群 K*/Uに お い て 無 限 位 数をもち,各剰余類は高々一つの n に つ い て が で 代 表 さ れ る . ま た mn=R が

§ 6 .3 D edekind環

375

は減少列であり,冗の非可逆性より

Rが ,R 冗n +l=U が であって, R*=R が,[}町 =0 より R*=UU がとなる.さらに, K*/Uは n=O

R*/Uで生成されるから,各剰余類は或るが ( nEZ)で代表される. こうして,同型 K*/U~{ 冗n

I nEZ}~(Z, +)と標準的全準同型 K*→ K*/U

を合成して全準同型 V :( K * ;X)→ ( Z ,+)をつくり,零元を添加した K→ z u

{ o o }に延長すればよい. ( i v )==} ( v ) まず

V の次の

2性質がすぐ認められよう.

( 6 .2 2 )

aER について

a=O# v(a)=oo,

( 6 .2 3 )

0キ a ,bER について

aI b# v(a)~v(b).

問6 . 2 2 これらを確かめよ.ー一 vほ ) =l となる元冗 ERをとれば,上の 2性質から

Rが ={aeRlv(a)~n} であり,特に Rが ~R冗n+l がわかる.

上での

V の最小値を

また任意のイデア Jレ a キ0に対して,その

n とすれば,やはり上の 2性質から, a=R がとなる.

( v )==}( v i ) すべてのイデアルは単項であるが, n~2 について冗,冗n-1 .~Rが, 冗•冗n-1 ERがであるから, Rが (n~2) は素イデアルでない .R冗は極大なので素

イデアルである.

( v i )==}( i ) ただ一つの素イデアルは当然ただ一つの極大イデアルであり,そ れ が キ 0なので Rは体でない.'

i v )に現われた可換体 K は R の分数体であり,全準同型 v:K→ さて,条件 (

zu{oo}は一意的である. 問6 .2 3 ( i v )==}( v )の推論からこのことを示せ.ー一 また,

Vは

( 6 .2 3 )により,次の性質をもつ.

( 6 .2 4 )

v(a+b)~il\f ( v ( a ) ,v ( b ) ) .

問 6.24 これを確かめよ.ーー 一般に,可換体 K において,全準同型 V : ( K ,X)一→ (Zu{ o o } ,+) ・ ( o oは零元)

が性質 ( 6 .2 4 )をもつとき,

VをK

の正規離散付値 ( n o r m a l i z e dd i s c r e t ev a l u a -

t i o n )という.単に離散付値とよばれる忍のは,値域を

zu{oo}に調整して‘正

第 6章

376

可換環

規化’される. そして,任意の可換体 K の正規離散付値

V

に対して

R ={aeKlv(a)~O} は K の部分環となる.

問6 .2 5 これを確かめよ. [ヒント] v ( b )=v(-b)に注意.ー一 こうして得られる整域 R を離散付値環というのであるが,それは上の定、理の 条件を満たす整域というのと同じことである. 次の性質は,付値の計算だけから導くこともできる.

v ( a )= I =v ( b ) ⇒ v(a+b)= i n f( v ( a ) ,v ( b ) ) .

( 6 .2 5 )

問6 . 2 6 これを示せ.[ヒント] v ( a )O)

であるとし,柘,…,%の中で極小の忍のを,たとえば胆とする.和ぷ~ql"'qn だから, たとえば転 ~qn.

ところで判••和ぷ%ゆえ,或る i について +li~云 qn-

ゆえに柘 ~qn 冨

+ 1 m ・ こ こ で 転 の 極 小 性 か ら 柘 =qn=+J加.そこで ( 6 .3 3 )の両辺に + l ml=qn―1を乗じて ー

+ J m 1= q 1 ・・ ・ q n 1となる. これをくり返せば,積表示の一意性を得る. 柘 ・ •・ ( 2 ) 条件 (V)の忍とで,可逆素イデアルは極大であることを示す.

R の可逆素イデアル Pが仮に極大でないとし, XE l :+ 1 , +i+R 叩云 R となる元”をとる. このとき +i+Rが忍 ~R.

( 6 .3 4 )

+i+Rx=柘… P切 '+i+R 叶 = 屯 …q n

と素イデアルの積に分解する.

( m ,n>O)

このとき +1~ 柘,的だから標準的全準同型

Rー → R / + 1=尺 による柘, q jの像屈切は,整域月の素イデアルであり, 応=討・如,

た炉=面・ 妬

という積表示を得る.これらは 0でない単項イデアルなので可逆であり(例 6 .2 5 ) , その 約元和,句忍可逆である.

(R ) 元 2=R炉に注意して (1) を用いれば, ~1, 屈...,

したがって,

加 い 和mは(並べかえで)虹…,位と一致する. したがって柘,柘,…, p ' + l mと q i ,. ., ・q n忍 節

6 .3 4 ) より 並べかえで一致する.ゆえに ( (p+Rx)2= +i+R 訊

: .

炉十 Rx~+J.

この包含関係によって,任意の pEJ +は q十ax( qE炉 , aER)の形に表わされるが, qEJ + よ り ⑬ E+ 1 , しかし XE l :J +であるから aE+J となる.かくして炉十加X~+J. ゆえに

+ 1 2十 血 =+ J . イデアルの和と積は分配法則を満たすから, ' + 1の可逆性より +i+Rx=Rを得る.

これは矛

盾である.かくして,可逆素イデアルは極大である.

( 3 ) 最後に整域 R について (V)==}( i l l ) 'を示そう. 任意の 0でないイデアルは素イデアルの積であるから,素イデアル炉キ 0の可逆性を示

第 6章 可 換 環

388

せばよい. 0でない元

X

E_P をとり, Rx= 柘••和と素イデア Jレの積に分解する. X は非可

>O. また XキOなので Rxは可逆である. 逆元なので n アルである.

よってすべての柘は可逆素イデ

2 )を用いて,すべての初は極大イデアルである. したがって (

イデアル P が積柘 ···Pn を含むので,或る i について柘 ~p.

しかし,素

ゆえに柘 = p . かくして

P忍

可逆である.'

系 Dedekind環 の 0で な い 分 数 イ デ ア Jレ aは

( 6 .3 5 )

a =I I炉

( r : pEZ は 有 限 個 の

Pを 除 い て 0 )

V

の形に一意的に表わされる. 注意

炉= Rとする. ( 6 .3 5 )において因数 R はない忍のとして積を考える.これを‘実

質的有限積’とよぼう. 証明

或る 0 でない元 XEK をとれば邸l~R であるが,”の‘分母’を払って,

印 ERで あ る よ う に と れ る . Rの イ デ ア ル Rx と印a=(R の ) aの素イデア)レ分解 から, aの 表 示

( 6 .3 5 )を得る.

一意性は,二つの表示

I I P m p = I I炉Pに お い て , 負 幕 の 因 数 を 両 辺 に 乗 じ て ,

正幕の場合の一意性から導かれる.I さて,

Dedekind環 R の 0で な い 分 数 イ デ ア ル , す な わ ち 可 逆 イ デ ア ル の 全

体をダ( R)と 書 い た . Rの 0で な い 素 イ デ ア ル , , , す な わ ち 極 大 イ デ ア ル の 全 体 を P(R)と 書 く . 整 数 の 系 ( n p )p e P ( R )について,

{ pEP(R) n p = I =〇}が有限集合 J

ということを, ‘ほとんどすべての n p=O' といい表わす.このような系 ( n砂p e P ( R )の全体は, Z〈 P(R)〉 と 書 か れ , 成 分 ご との加法によって自由

Z加群であった.

aeダ ( R )の 一 意 的 な 素 イ デ ア ) レ 分 解 を 用 い て , 全 単 写 像 ( 6 .3 6 )

ダ (R) 二~z 〈P(R) 〉

→ -切 (a))

a

j)EP( 丑 )

が,次の関係で定まる:

a=

II

炉 (a)•

PEP¥R)

しかも上の対応は明らかに同型写像である.すなわち

( 6 .3 7 )

L l p ( a o )= L l p ( a )+vp(O)

( t ,eP(R)).

§ 6 .3 D edekind環

389

また, c )の ( 5 )により,次が成り立つ.

( 6 .3 8 )

a s ; ; ; ;o⇔ 叫a)~ 碍)

( pEP(R)).

しだがって, Z〈 P(R)〉 に お け る 順 序 関 係 < 乞 成 分 ご と に

(m砂 ,=p 戸• 和

en

(ei~O)

とする.ただし ( i )の場合は,すべての素イデアルを含め,

( i i )の場合は aを割

る素イデアルを全部含めて,指数 ei=Oを許しておく.分解の一意性から n

Ilp/J+l~

j=l

伽か l

柘-1

j=l

(1~ 迄 n )

第 6章 可 換 環

390

b iが あ る . 右 辺 は 当 然 bに 含 ま れ る

であるので,右辺に属し左辺に属さない元 ので

b iEO . い ま 各 jについて, b iEp/1•1

b 1 t P / 1 ・ 1

( iキj ) ,

であるから,

b=b叶…+如 E0 ' . + ' J 匂1 ・

( l ; ; ; ; ; j ; ; ; ; ; n ) .

J . i p ,( R b )=e 1=ッ切 ( f > )

( l ; ; ; ; ; j ; ; ; ; ; n ) .

さて ( i )の場合は柘,…,如が素イデアルのすべてなので, (ii) の場合は,

a:~f> とすれば Rb~a+Rb 編 b なので (6.

1 . 1 p , ( f > )= J.ip1(Rb)~J.ip1(a+Rb)~

O=J.ip(a:)~J.ip(a+Rb)~ ッp(o)~o.

: . ッp (a+Rb)= 叫f > )

よって

ッjJJ( f > ) .

( l ; ; ; ; ; j ; ; ; ; ;か .

: . J . i p 1 ( a + R b )=ッ切( f > ) 伽…,加以外の素イデアル P については,

R b = f >を得る.

3 8 )から

( l ) = I =柘,…,枷).

a+Rb=f>を得る; I

系 I Dedekind環 R の 任 意 の イ デ ア ル は 2元で生成される. 証明

イデアル

より,或る元 注意

> f=I= 〇に対し,その元 a キ 0 をとれば 0 キ Ra~f>.

bEOがあって, Ra+Rb=f>.I

イデアルを生成する 2元のうち一方 aキOは任意にとれるわけである.

系 2 Dedekind環 R の イ デ ア ル a : ,> fキ0に 対 し , 或 る イ デ ア ル Q : C は主イデアルで,

証明

定理の ( i i )に

C をとれば,

b十c=R.

a : f >に 属 す る 元 aキ0を 用 い て a=Ra+Rb と表わし, c = a :―l bとおく.

そのとき,

b E a :な の で

~Ra+Rb=a.

ゆえに

C は整イデアルであり,

ac=Rb.

また,

: a( f >十c )=af>+Rb

b十c=R.I

一z.

以下, D edekind環 R で す で に 定 義 し た 写 像

( 咋 P(R))

叩 ダ( R )

と ,

R の 分 数 環 Rpの正規離散付値 V pと の 関 係 を 明 ら か に し よ う . そ の た め ,

例6 . 2 7の考察と記法を引用する. Q :E ダ( R )の 局 所 化

U vEダ ( R p )に対し, V p ( U p )EZ は , 次 の 性 質 で 定 め ら れ た : av={ xEK iVv(x)~vp 糾)}.

叫叫を簡単にV p ( a : )で 表 わ す こ と に し , 写 像 叫:ダ ( R )一→

Z

( t : JEP(R))

391

§ 6 .3 Dedekind環

を定めよう.あとで,これがらと一致することがわかる.

問6 .3 9 局所化の性質 ( 6 .2 9 ) ,( 6 .3 0 ) ;( 6 .3 1 )と例 6 . 2 7の 性 質 ( i ) ' ( i i ) ' ( i i i ) を用いて,次の 3等式を導け.

( 6 .4 2 )

V v ( a f > )= V v ( a )+ v v ( f > ) ,

( 6 .4 3 )

v l l ( a + b )= i n f( v p ( a ) ,v l l ( f > ) ) ,

( 6 .44)

vp(anb)= sup( v p ( a ) ,v p ( f > ) ) .

注 意 以 下 こ の 3等式を使わずに V p = J . . l pに到達するであろう. したがって,これら 3 等式はすでに確認したツpの 3等式と同じ忍のとなる. 次の 2性質が基本的である.

( 1 ) ae .K*について, v p ( R a )= v p ( a )( pEP (R)).

( 2 )a ,0Eダ (R)について,次の 3条件は同値である. (i) as ; ;6 , ( i i )a i ,s ; ;虹 ( pEP (R)), ( i i i ) vp(a)~vp(b)

( l : JeP(R)).

[証明] ( 1 ) ( R a )p=Rpa={戸 K Ivp(x)~vp(a)} による.

( 2 ) ( i )⇔ ( i i ) a炉 s ; ; ; ; R⇔ a i , b戸s ; ; ; ; R p( pEP(R))に帰着するが,局所化が 乗法を保ち a p b p 1 =( a o 1 )1> なので,

a s ; ; ; ;R ⇔ aぷ 凡

( l : JEP(R))

に帰着する. ==}は明白であるが,逆は a s ; ; ; ;□a p s ; ; ; ;□Rp=R(定理 6 .21)による.

( i i )⇔ ( i i i )は ダ ( R p )の全順序性から明白であろう. I さて,次はッ p =Vp⑪ EP(R))を示している.

( 3 ) aEダ ( R )に対し,ほとんどすべての V p ( a )=0であり, a=

I I炉 ! >

( a )

(実質的有限積).

j)EPぼ )

[証明 J a = I I炉P と表わす.局所化が乗法を保ち, p

( q " } ,= ( q砂"=( R , q ) "= { 応 =R ,

{ xEK ivv(x)~n}

であるから,

Up=I T(qn叫 ={xEKIVp(x)~ 叫 . q

したがって, V i , ( a )の定義から, v i , ( a )= n i , .I

( t : ,キ q ) , ( J : ) = q )

第 6章 可 換 環

392

こうして記号%とりP は 同 じ 意 味 を も つ こ と に な っ た か ら , 原 則 と し て は V v を用いることにしよう.そして,ダ (R)における乗法と包含関係のみに基づく考

P(R)〉における考察に帰着する. 察は,すべて, Z〈 例6 .2 9 Dedekind環は算術的 ( § 3 .3 ,h ) )である.すなわち,任意のイデア Jレ —一分数イデア Jレで忍よい—a,

f > ,C について

( i ) an( 6十 c )= (anf>)+(anc),

( i i ) a+(one)=( a + f > )n( a + c ) . 問6 . 4 0 例3 . 4 5にならって確認せよ. 注意実は, N o e t h e r整域について逆が成り立ち(第 6章の問題), D e d e k i n d環の第 6 の特徴づけを得る.すなわち,整域 R が D e d e k i n d環であることは,次と同値である. ( V I ) R は算術的

N o e t h e r環である.

次の補題は, D edekind環については, Vp=Vvの性質から直ちに認められるが, 一般の可換環で直接の証明をしておこう. 補題 6 .I 環 R の異なる極大イデア Jレ柘,…,担,整数n 1 ,…, nk~o について

( i ) p げ升 p / 1= R ( iキj ) ,

( i i )P in 1. . ' . P kn k= P 1n 1n. . .nP kn k . 証明

p,q を異なる極大イデアル,

m,.n>O とする.仮に炉十 qn~R とすれば,

左辺を含む極大イデアル m があり炉, qn~m.

ゆえに P ,q~m. P ,qの 極 大 性 か

ら p=m,q=m. これは p = l = qに 反 す る の で 炉 十 qn=R. ( i i )は ( i )と ( 3 .90)によ る.' 次の‘近似定理’は孫子の定理(定理 3 .2 4 )から容易に導かれる.

.3 6 Dedekind環 R の異なる極大イデア Jレ柘,…,和, R の 分 数 定理 6 体 K の元 X 1 ,…,叫,整数 n 1 ,…,n kに対し,次の条件を満たす元 xeK

が存在する.

証明

Vp1(X — Xi)~ni

(l~i~k),

Vq(X)~0

( qキ柘,…,和).

n iを大きくすれば条件は強くなる.

よって ni~o と仮定してよい.尤b

…,叩 eRのときは, R の算術性と補題 6 .1の ( i )を用い,定理 3 . 2 4によって

§ 6 .3 D edekind環

X-XiEp戸

3 9 3

(l~i~k)

となる元 XERが存在する.このとき与えられた条件が成り立つ. C

一般の場合は,叩=釦s 1( Y i ,sER, s = I =〇)と表わすとき,尤 =ys-1( yER)に関

する与えられた条件は, yについて次のように表わされる.

V μ t(y-yi)~n叶 VµJS)

(l~i~k),

Vq(y)~Vq(S)

( q = ! =柘,…, P k ) ,

ここで,ほとんどすべての qについて V q ( S )=0であるから, yERに 関 す る 上の条件は,すでに扱った型の忍のであって yが存在する. I 例6 .3 0 Dedekind環 R の異なる素イデア Jレ柘,・・・,恥に対し,次の条件を満 た す 元 孔 … , 叩 ERが存在する.

V p t( 叩 )

=oiJ

(l~i, j~k).

[証明] V i , ,( か =1となる元冗臼 k をとり,条件

V μ ,(功ーか

を満たす元叩

~2,

V μ 1(X1 ー 1)~1

(2~j~k),

Vq(叩) ~0

( qキ柘,…,知)

EKをとると, ( 6 .4 3 )により

Vμ1(X1)=l,

Vμ1(X1)=0 (2~j~k),

Vq(X1)~0

( qキ柘,・・・,知)

と な る . 特 に 叩 ER. 叩,…,叩について忍同様である. I 上の例を利用して定理 6 .3 5の ( i )を再び証明してみよう.

Dedekind環 R の 0以外の素イデアルが柘,…,恥だけであるとする.任意の

.3 0で 存 在 し た 元 イデア Jレはこれらの積であるから,柘が単項ならばよい.例 6 μ ,(R 叩)=妬なので R叩=朽・ 叫,…,叩について, V g) Dedekind環上の加群

§ 4 .6)は,その多くの部分が‘自由’を‘射影 主イデアル整域上の加群の理論 ( 的’あるいは‘イデア Jレの直和’とおきかえた形で, Dedekind環 の 場 合 に 拡 張 さ れる.準備として,まず一般の整域で次を示そう.

. 3 7 整 域 R の分数体 K の部分 R加 群 aについて,次の 2条 件 は 同 値 定理 6 である.

( i ) aは可逆イデアルである. ( i i ) aは射影的加群であって, aキ0 .

第 6章 可 換 環

394

注意

証明

なお

( i )=?有限生成,はすでに示した ( c )の ( 6 ) ) .

( i )==}( i i ) 可逆イデア)レ a に対する c )の ( 6 )の 考 察 を 利 用 す る . す

なわち 1の和表示 n

La/ 幻 =1 i = l

( a /Ea 1 ,a iEa)

n

が存在して, a=~Rai であった。そこで, R 準同型 f:Rn → a ,g :a→Rnを次

i = l

のように定める.

”a山 ! C t 1 ,… ,f n )= L , i = l

g ( q , )= ( a i ' a ,・ ・ ,a n ' a ) .

そのとき, 1の和表示から f 0g=ida, すなわち, fは gの左逆準同型であって,'

gは左分裂する ( § 4 .4 ,c ) ) . そして単準同型 gによる aの像が自由加群 Rnの直 和因子であり, aは射影的である ( § 4 .4 ,d ) ) . そしてもちろん aキ0 .

( i i )⇒ ( i ) K の部分加群 aキOが射影的とする.或る自由加群 Fか ら の 全 準同型 f:F→ aがとれるが,射影性から fは右分裂し,右逆準同型 g:a→ Fが

! .いま

§ 4 .4 ,c ) ,d ) 存在する (

F の基底を ( e i )i e Iとして,

g ( a )= 苫 釦 ( a )幻

(実質的有限和)

と表わし,各 aeaごとに‘ほとんどすべてが O 'の R の元の系 ( g i( a ) )炸 Iを定め る .

)の ( 1 )の証明中のアンダーライ このとき釦: a→ R は R準同型であるから, c ンの部分から,一定の元叩 EK* が存在して

gi ( a )= axi

J O

と表わされる.ここで aの元

( aEa )

a キ 0 を考えれば,ほとんどすべての iに つ い て

叩 =0 であることがわかる.そして a叩 =gi(a)~R だから叩 Ea ―1.

さて, f 0g=idaであるから, aの元 aキ0について

a = : ; ; 『( g ( a ) )= Lgi(a)f(ei)= a L呪 f ( e i ) . i e I i E I

: . 1= L 叫 f ( e i ) E I

i

(有限和).

したがって lea―i a . ゆえに a―1a=R. すなわち aは可逆である.I さて,上の定理と D edekind環の特徴づけ ( I I I ) ' (定理 6 .3 2 )を組み合せれば,

. 2 3の系と対照的に,次を得る. 定理 4

§ 6 .3 D e d e k i n d環

395

定理 6 . 3 8 整 域 R が Dedekind環であることは次と同値である.

( V l l ) R の任意のイデアルが R 加群として射影的である. 注 意 可 換 環 Rキ0について,

Rが D e d e k i n d環 s,R のすべてのイデアルキ Oが忠実で射影的. 次に,定理 4 .2 4に対応して,ほぽ同じ形式で次が証明される.(簡単のため有

. 2 4の証明後半の改良により,‘有限生成’を除くこ 限生成の場合に限るが,定理 4 とができる.)

.3 9 D edekind環 R 上の有限生成射影的加群 P の 部 分 加 群 M 定理 6 は有限生成射影的である. 証明 分加群

P は或る Rnの部分加群(実は直和因子)に同型であるから, "Rnの 部

M が有限生成射影的である”ことを,

nに関する帰納法で示そう.

n=lのとき, M は R のイデアルだから, R の Noether性と定理 6 .3 8によっ て ,

M は有限生成射影的である.

n>lとして, R n 1の部分加群は有限生成射影的とする.第 n成 分 へ の 射 影 /:Rn→R を M に制限すれば,完全系列 0ー→ MnKerf-M —• f(M)

—~o

を得る.ここで f(M)は R のイデアルだから,有限生成射影的であり,上の完 全系列は分裂し,

M~(Mn Kerf)釘 (M) となる. ところで Kerf~Rn-t, ゆえにその部分加群 M nKerfは 仮 定 に よ り 有 限 生 成射影的,

よって,そのような加群の直和に同型なものとして

M も有限生成射

鱈である.' 上の証明中,有限生成射影的と記した部分は “有限個のイデアルの直和に R 同型" でおきかえても,証明はそのまま通用する (n=lのときは一つのイデアル)こと に注意しよう.このことと,定理 4 . 2 5を合せて ,直ちに次の定理を得る.

第 6章 可 換 環

396

定理 6 .4 0 Dedekind環上の加群について次の 3条件は互いに同値であ る .

(i) 有限生成で捩れがない. ( i i ) 有限生成で射影的である.

( i i i ) 有限個のイデアルの直和に同型である. 問6 .4 1 この定理を確認せよ.ー一

Dedekind環 R 上の有限生成加群の構造を, § 4 .6 ,d)のはじめに述べた一般方 針( 1 ) ,( 2 ) ,( 3 )に従って考えよう. ( 1 )の部分,すなわち捩れがない加群 M/t(M)の 構 造 は , 上 の 定 理 の ( i i i )の 形で,一応解決している.

もう少し詳しくはあとで述べるとして,

( 3 )の部分は,

i i )によって,次の形で解決される. 定理の (

系 Dedekind環 上 の 有 限 生 成 加 群 M の 捩 れ 部 分 加 群 を t(M)とすれば, t(M)は有限生成の捩れ加群, M/t(M)は有限生成の捩れがない加群であり, M 二 t(M)④ M/t(M). く

問6 . 4 2 これを確かめよ.ー―さて,捩れがない揚合に戻って,イデア Jレの直和としての表示 M~a 心…④ a n.

は,順序を無視しても一意的でない.

( a iE/ ( R ) )

しかし,次が成り立つ.

.4 1 Dedekind環 R のイデア Jレa 1 ,… , a加恥…,如キ 0について, 定理 6 次の 2条件は同値である.

( i ) m=n, a 1 ・ . .a 切竺灯••恥,

( i i ) a1 ④…〶 am~01 ①…①如. 証明

( i )==}( i i ) 次を示せばよい.

( 6 .4 5 )

a 心••も am ~

a 1・ a m E B R m i .

しかも,これは m=2の場合に帰着する .Rの分数体を K とする. いま,或る xeK* をとって a 2 1 x s ; ; ; ; ; Rとなるようにし, R / a 1 a 2i xが 主 イ デ アル環であること(定理 6 .3 5 )に注意すれば,或る元 tERが存在して,

9

§ 6 .3 D edekind環

397

0 2 -切 =a 1 a 2ーi x十 Rt となる.両辺に a 邸ー 1 を乗じて

R = a叶 a2X―l t . ここで,

a2ぷ-lt~ 缶 , a 1 a 2 x 1 t竺 a西に注意すれば,次に帰着する.

a叶 缶 = R のとき

m 〶 a2~a1a2 ① R .

これを示すには, t 1十t2=l となる t iEa iをとり,

I( a 1 ,a 2 )= ( t如 一 t 1 a 2 ,a叶む) とおいて R 準同型 /:a心 伍 → a 1 a心 R を定め,これが同型であることを確かめ ればよい.

問6 . 4 3 確かめよ.[ヒント] g ( x ,y)= ( x + t 1 Y ,-x+f2Y)が逆写像.ー一 ( i i )=?( i ) a 心…〶%は R 加群 Km の部分加群とみなされ, ai = I =〇より R 上線型独立な m 個の元をもつ.

しかし,一般に

K 上の線型関係は,係数の分母

を払って R上の線型関係となるから, R上線型独立な元の個数は高々 mである.

m のこの特徴づけにより m=nがわかる. 次に, a心 … ① a n , b心…〶加を Kn の部分加群とみて, R 同型 /:a1 ①…① 叫→b 心 … ④ 如 を Knの K 自己同型に延長しよう.これは可能である. 問 6.44

確かめよ.—~

Knの標準基底を e 1 ,. . ., e n として, f( e j )=±eixij と表わせば, a iE印 に つ i = l \ヽて n

f ( e j a j )= Le ゆi j a jE0 心…①恥. i = l よって任意の置換

X i j ajE切 .

< JE@ J n に対し

”い 1 ) ・ " X n q ( n ) a q ( l ) ・・・a q ( n )E恥..恥 .

: . d e t( X i j )a1"·an~ 灼..恥 .

fー1 についても同様にして d e t(Xij) ー 1 恥• 如 ~a1"·an ・ d e t( X i j )a 1 " ・ a n: ; :恥 . .恥 .



ところで ( d e t( X i j ) )ー1=det( X i j ) 1であるから,

: . a1"'an~ 恥• •恥. Dedekind環 R 上の有限生成の捩れ加群 M については,主イデアル整域の場

第 6章 可 換 環

398

合の定理4 . 2 9がそのまま拡張される,

ということを注意するにとどめよう.す

なわち,次の性質をもつ巡回部分加群

C 1 ,・ ・ ・ , Cnキ0の直和に分解される:

( 6 .4 6 )

AnnC1~ … ~AnnCか

考え方は, AnnM 口Pと な る 有 限 個 の 素 イ デ ア ル 分数環

Pの 合 併 の 補 集 合 Sに よ る

Rsが 主 イ デ ア ル 整 域 に な り ( 定 理 6 .3 5の ( i ) ) ,M



Rs加 群 と み な さ れ

ることを利用すればよい. なお,零化域の増加列

( 6 .4 6 )の 一 意 性 は 任 意 の Noether可 換 環 R の上で成り

立ことが知られている.

§ 6 .3 問 題 ヘ

l 離散付値環 R は,その分数体の真の部分環として極大であることを示せ.

2 整域 R が付値環 #K'-R( Kは分数体)は乗法的に閉じている, を示せ. 3 整域 R の可逆元の群を U , Rの分数体を k とするとき,次を示せ. ( i ) R が 付 値 環 # 半 群 R"{ O }/Uにおける整除性が全I J 厠字関係.

( i i ) R が離散付値環 #K*/Uは R の元の剰余類で生成された無限巡回群. 4 付値環 R の分数体を k とし, Rキk とする . Rを含む

kの部分環は付値環である.

その全体を V とすれば,対応炉→ R i ,が次の全単写像を定めることを示せ.

Spec(R)― → v . これは包含関係を逆転させる特に, dimR=l# V ={ R ,K}, であることを示せ.

5 付値環 B の分数体 L の任意の部分体 K に対し, A=BnK忍付値環であり, K が A の分数体であることを示せ. また, B が離散付値環ならば A 糾離散付値環であること を示せ.[ヒント]問題 3 ,§ 6 .2問題 7 . 6 Noether整域 R の分数体を K とする . Kの部分 R加 群 に つ い て , 有 限 生 成 # 分数イデア Jレ,を示せ.

7

整域 R のイデアル a について, a-1~a* (双対加群)を証明せよ.

8 整 域 R に関する次の条件は, Dedekind環を特徴づけることを示せ. a 心 E/(R) について, a~b =}或る CE/ ( R )をとれば a = b c . 9 Dedekind環 R上の加群について,可除#移入的,であることを証明せよ.[ヒ .5( i i i )の証明. ント]定理 5

1 0 環 R=Z[../=I4Jのイデア Jレ a=Z3+Z(l十に= 1 4 ) , b=Z2+Z 汀, c=Z3+Z(l —に訂) a s竿 c , a4~R であることを示せ.

に対し, R 加群として a2~0,

(未了)

§ 6 .4 イデアルの根, H i l b e r t環

399

§ 6 .4 イ デ ア ル の 根 H i l b e r t環 古典的な代数的多様体を定義する方程式系は,それらの累乗でおきかえることができる. 逆にいえば,(必要なら同値な忍のでおきかえて)累乗根をとれるだけとり,標準化するこ とが考えられる. イデアルに対してこの手続きを行った忍のが,イデアルの根である. この節の基調は,古典的多様体とイデアルとの対応を基礎づける H i l b e r tの‘零点定理' にある.その証明には, N o e t h e rの‘正規化定理’を用いて忍よい

しかし後者は,整拡

大の思想圏にあるから,あとまわしとして ( § 6 .6 ,f ) ) , ここでは別の方法をとる. この方向では,必ずし忍体を含まない一般の可換環を扱うとき,ことがらの代数的本質 がはっきりする.基本的な概念は H i l b e r t環 ( = J a c o b s o n環)である.

a) イデアルの根 可 換 環 R のイデアル aに対し, R の部分集合

が( R ,a )={xe凡 或 る 正 整 数 nに つ い て 炉 Ea} は aを含む R のイデアルである. これを aの根 ( r o o t )といい,ぷiと 略 記 す る ことが多い.

[証明] 戸 a=?; がEa⇒ X E藷 . ゆ え に a s ; ; ; ; , / a . また X,yE石l=?或る m+n ( / 正 整 数 m,nに つ い て X門 y臼 : a=?(x-y)m+n= ( ー1 )k m+n¥ m+n-ky, k=O は ,

L

(k)x I

各 項 が 式 ま た は 炉 の 倍 元 な の で ea==}x-ye石l . さらにの€石l,



Z ER

或 る 正 整 数 nに つ い て 炉 e a , zeR⇒ ( x z戸 = 炉 牙 ea⇒ xze , c f a .I

特 に , イ デ ア ル 0の 根 が( R ,0)を が ( R )と書く.

これは R の幕零元全体であ

n i l r a d i c a l )あ る い は 素 根 基 ( p r i m er a d i c a l )とい っ.後者 り R の罵零元根基 ( の 名 称 の 由 来 は 定 理6 . 4 5の系で明らかとなろう. 任 意 の イ デ ア ル aについて,次は直ちに認められる.

( 6 .4 7 )

が( R / a )= が ( R ,c t )/a.'

そこで,イデアルの根の概念は,素根基によって定義すること忍できる.

R が 可 換 環 R'の部分環のとき, R のイデアル a 'について,次が成り立つ.

( 6 .48)

が( R ,a ' nR)= が ( R ' ,a ' )nR .

R のイデアル a , oについて次の諸性質は容易に認められよう. ( 6 .4 9 ) ( 6 .5 0 ) ( 6 .5 1 )

a s ; ; ; ;o⇒ 紅 戸 万 , 贔 碍 =. / a n⑮ , 霊 = r c i , 如 =r a (nは正整数).



第 6章 可 換 環

400

fa=aであるようなィデアル aを,根イデアルとよぶことにする.そのとき, 任意のイデアル

aに対して,石;は aを含む最小の根イデアルである.特に,

が (R)は最小の根イデアルである.

問6 . 4 5 このことを示せ. 例6 .3 1 R の素イデアル(特に極大イデアル)は根イデアルである.

したがっ

て が (R)を含む.

問6 . 4 6 整式環 Z[XJにおいて次に答えよ.

a EZ とする.

( i ) ( a ,X)が根イデアルであるための条件を求めよ.

( i i ) ( a ,x 2 +1) が根イデアルとなる a を O~a~30 の範囲で求めよ. b ) 準素イデアル この項は,前項の自然な延長であるが, § 6 .5 , _e )まで用いない. 可換環 R のイデアル q(キR)について,次の 2条件は同値である(対偶).

( 1 ) a ,beR について, a bEq , aEl= q⇒ be石.

( 2 )

a ,beR について, abEq , b(/q= 汀 Eq .

これらの条件を満たすイデア)レ q(キR)を R の準素イデアル ( primaryi d e a l ) という.上の条件はさらに次とも同値である.

( 3 )R / qは キ 0で,零因子はすべて幕零である. 問6 . 4 7 同値性を示せ.ー一 条件 ( 1 )または ( 3 )により,素イデアル==}準素イデアルである.

定 理 6.42 証明

準素イデアル qの根ふいま, qを含む最小の素イデアルである.

1E l :qだから 1E l :ふl , ゆえにふ「キ R . また, abE石「, aEl= ふ「のとき,

rq, an qよ り が

或る n>Oについて ( a b

E

E l =

たがって占「は素イ・デアルである.

E石「(・: ( 1 ) ) ;

ゆえに be石l ,し

さらに, q を含む任意の素イデアル

Pを9とれ

ば,ふl~"l正=t:> t さから最小性も成り立つ.'

l=Pのとき,

準素イデアル qに対して,ふ

qを P準素イデアルという.

問6 . 4 8 整数環 Z の準素イデアルキ 0は,素数の幕で生成されることを示せ. 問6 . 4 9 素数 Pに対し,整式環 Z[XJ のイデアル ( p 2 ,X)は ( p ,X)準素イデ

.1 4参照). アルであることを示せ(例 6 定理 6 . 4 3 可 換 環 R のイデアル qに対してふ「が極大イデアルならば, qは 準素イデアルである.特に,極大イデアル

m の幕は m 準素イデアルである.

§ 6 .4 イデア)レの根, H i l b e r t環

証明

401

ふ「キ R よ り 尺 =R/qキ0 . ま た がC R )=~q / qは 月 の 極 大 イ デ ア Jレであ

R )を含むので,面=が (R.). そ こ で 月 の 零 るが,任意の極大イデア)レ面はが C R . )に属し, 因子を考えると,それは非可逆なので或る極大イデア)レに含まれ,が (

3 )より qは準素イデア)レである.後半は例 6 .3 1 .I 幕零である.ゆえに ( 一般の素イデア)レの幕は必ずし忍準素イデアルでない.



6 . 3 2

素 数 Pに対し,

Z[XJの部分環

R ={ a叶 aぷ十 aぷ 彗 … I a 1三 0(modp)} のイデア)レ p={ / ( x )ER¥/(0)=0}は素であるが,討は準素でない.

[証明 l P ,PX玉 R について,

p ( p X 2 )E吋 , pり=ふ, p x2E l :μ 2 .I

また,一般の準素イデア)レは必ずしも素イデア Jレの幕ではない.



. 3 3 可換体 K上で, R=k[X,YJのイデア)レ q (X叫Y)は 準 素 で あ り 例6



=p=( X ,Y ) . しかし qは素イデア)レの幕でない. (R/q~k[XJ/(Xりに注意.)

問6 .5 0 問6 . 4 9の準素イデアルは素イデア)レの幕でないことを示せ.ー一 素イデア Jレの罵を変形して準素イデア)レを作ろう.その前に,一般に拡大環の 準素イデア)レとの関係を見ておく.

'の素イデア Jレp 'と p '準素イデア Jレ q 'に対し, p'nRは 可 換 環 R の拡大環 R

Rの素イデア)レで, q'nRは p'nR準素である. [証明] p 'nR=p ,q ' nR=qとおく. R4R'は 単 準 同 型 R / p→R ' / p ' ,R / q→

R ' / q 'をひき起す. R ' / p 'が整域なので R / p も整域で, ・ pは R の 素 イ デ ア Jレであ る .

' / q ' = I =〇より R / qキ0 . ゆえに qキ R . さらに R / qの零因子の像が R ' / q ' また, R

の零因子であり,それは幕零なので R / qにおいても幕零である.

よって qは 準

6 .4 8 )より 素イデアルである.そして (

ふ = 面 霞 = 石fnR= p'nR= p . 定理 6 . 4 4 整 域 R の素イデア)レ Pに対して, R の イ デ ア Jレ p < n )=Rv 炉 nR

( pの記号的 n乗)は 証明 'ところで

P準素イデアルである.

RvlJ は凡の極大イデアルなので, (Rv~)n=Rv炉は RvP 準素(定理 6. 4 3 ) . RvpnR=p(定理 6 : 2 0の前半)な五ぞ,上述より P位)は P準素である.'

c )根 基

Rを可換環とする. まず R の根イデア Jレの系 (ai)ieI に対して,交わり

n印は根イデアルである.

ieI

第 6章 可 換 環

402

問6 .5 1 これを示せ..ーー

R の任意のイデア Jレ aに対し,ふ石は aを含む最小の根イデアルであった. ょ って aを含む素イデアル

Pは(根イデアルなので)ふ;を含む.

そこで,このよ

pec( R ,a )の交わりはむ石=が ( R , a )を含む.実は次が成り立つ. うな P全体 S 定理 6 . 4 5 可 換 環 R のイデア Jレ aに対し,



が( R ,a)=□Spec( R ,a ) . 証明

石[に属さない元 XERに対し, S={ 炉 I nEN}は R の乗法系であり,

anS=¢. よって l s ( R ,a )の極大元 Pが存在し, Pは素イデアル(定理 6 .2 3 ) .こ

: tE .Spec( R ,a ) ,, : tnS=¢: 特に X~l). のとき, ,

よってむ石云「1 S p e cU J ,a )とな

り,等式が成り立つ.'

が( R )=□ Spec( R ) .

系 注意

このことが,が ( R ) を素根基とよぶ理由である必ずし忍可換でない環 R に対

しても素イデアルを定義し,すべての素イデアルの交わりを Rの素根基という.これに ついては第 7章問題 9参 照 極大イデアルだけをとって,

( 6 .5 2 )

J ( R ,a )=

nSpecm(R,a)

と定義しよう.特に J ( R ,0 )を J(R)と 書 く . そ の と き , 一 般 に は が ( R ,a)~

] ( R ,a )で あ る が , 任 意 の イ デ ア ル aに つ い て が ( R ,a)=J ( R ,a )となる R を H i l b e r t環または Jacobson環という.詳しくは f )でとりあげる. J(R)を R の Jacobson根基あるいは簡単に根基という: ](R)=□ Specm( R ) .

( 6 .5 3 )

次の関係は直ちに認められよう.

( 6 .5 4 )

.

J ( R / a )=] ( R ,a )/ a .

J a c o b s o n根基は,必ずしも可換でない環に対しても定義される.次の定理は . 4 7の特別な場合である. 定理 7 . 4 6 可換環 Rの J a c o b s o n根 基 J(R)は , 次 の 性 質 を 忍 つ イ デ ア ル 定理 6 のうち最大のものである.

a

403

§ 6 .4 イデアルの根, H i l b e r t環

( 6 .5 5 )

X Ea = } 1 一のは

R の可逆元.

1-xが可逆元でなければ,イデアル R(l一の)キ R を含む極大イデアル

証明

m が存在する(定理 4 .1 8 ) . このとき 1-xem, l¢mで あ る か ら x¢m. ゆ え にX ¢J(R). よって J(R)は性質 ( 6 .5 5 )をもつ.

6 .55) をもつ任意のイデアル a をとり, a~J(R) を示そう.それに 次に性質 ( は,任意の極大イデアル m について a~m,

( 6 .5 6 )

すなわち

XEa= ⇒>XEill

を示せばよい.いま x ! l = mとすれば, m の極大性より Rx+m=Rとなる. てa の十 y=lとなる aeR,yemがある.

よっ

よって y=l-axEmは可逆でない.

I !a . ゆえに X ! I =a . かくして ( 6 .5 6 )の対偶が示された.' ゆえに ax= 例6 . 3 4 局 所 環 R ではただ一つの極大イデアルが J(R)で あ る . 特 に , 可 換 体 K上 の 整 級 数 環 R=k[[ ふ,…,

x』]に対し,

] ( R )=( X 1 ,… , Xふ が ( R )= 0 .

例6 .3 5 整 域 K 上 の 整 式 環 R=K[X1,… ,x』 (n~l) に対し, ](R)= が (R)

= 0 . [証明] IE J(R)が 0であることを示そう.定理 6 . 4 6により, 1-f ふは可逆 よって 1-/ ふ eK ( § 3 .2 ,g ) . , h )参照).

元 .

ゆえに / =0.I

例6 . 3 6 可換体 K に値をとる集合 E 上 の 関 数 環 Map( E ,K)は K 線 型 環 で ある.

その任意の部分線型環 R に対して J(R)= が (R)~O.

[証明]



X E Eに対し,対応

伍は極大イデアルである.そして

f→ f ( x )は環全準同型 R→ K を定め,その核

n伍 =0; J(R)はこれに含まれ,



EE

= 0 .I

問6 .5 2 主イデアル整域 R について, ](R)=Oであるためには, R が 体 で あ るか,

または無限個の素イデアルをもつことが必要かつ十分である.

これを示せ.

d ) 幾何学的意味(零点定理) この項は,可換体上の有限生成環の場合に,あとに続く 2項 e ) ,f )の考察が, どんな幾 何学的意味を忍つかをあらかじめ説明するために設けた (I)"=?(JI)"の証明以外は とばしてよい. kを可換体とし,その拡大であるような代数的閉体 9 をとる.

・ ・ , ふ ) Ek [ X i ,… , 整式 /(X1,・

x』は,

X i , ・ ・ ・ ,Xnへの叫,・・・, XnEQ の代入 ( § 6 .1 ,a ) )

により, ' n次元アフィン空間 '[Jn上の関数を定める.いま整式の集合

F~ k[Xi,・ , ふ] に対し, F に属する整式の共通の零点全体

第 6章 可 換 環

404

V(F)= { ( 叩 ,・ ・ ・ ,X n)E QnI / ( 叩 , ・ ・ , Xn)=O(八 F)} を , F の定める k上の代数的集合という.

F が生成するイデアルを ( F )と書くとき,次は直ちに認められる. V(F)=V ( ( F ) ) .

( 6 .5 7 )

次の事実を,弱い形の H i l b e r tの零点定理という.

1E f( F ) =;:::} V(F)キ¢.

(I)

この命題 (I)は,次の ( I ) ' ,( I ) / /いずれと忍同値である.

(I)/ k上の有限生成環 R の極大イデア Jレ m に対し, Kerncを示せば, a = t 1 1n

… n四 n q 1n… nqnと表わされて矛盾となる. a~f>nc は当然であるから,

f>nc~a を示せばよい.任意の XE

Oneに対して,

或る整数 k ,l>Oを と れ ば 企 ea+(b), が Ea+( c )であるから, b eEaに 注 意 し

t

+ iEa+( b e )= a . したがって允 E石 = a . ゆえに onc~a. て,允 k

I

414

第 6章 可 換 環

Noether環 R の 素 イ デ ア ル 全 体 の 中 で , 極 小 な も の は 有 限 個 で あ り , そ



れ ら の 交 わ り は 素 根 基 が (R)に等しい. 極 小 素 イ デ ア ル は , イ デ ア Jレ0に関する極小素イデアルである. I

証明

問6 . 5 4 任 意 の 可 換 環 R において,有限個の素イデア)レ柘,…,加の交わり P が素ィデアルならば,

Pは或る柘と一致することを示せ.

問6 .5 5 Z[XJのイデアル ( 6,X吐 1 )に 関 す る 極 小 素 イ デ ア ル を 求 め よ 例

6 .4 3 Noether整 域 Rの高さ 1の 素 イ デ ア ル が 無 限 個 あ れ ば , そ れ ら の 交

わりは 0である.

[ 証 明 ] 忍し

高さ

1の 素 イ デ ア ル 全 体 の 交 わ り を a とする. 0が素イデア)レだから,

aキ 0ならば,高さ 1の素イデア Jレは aに関する極小素イデアルである. し

.5 2 ) . ゆえに かし,それらは有限個のはずである(定理 6

a = O .I

b ) Artin環と O次 元 Noether環 可換環の

A r t i n性はかなり強い性質である. まず, A r t i n環 Rキ0の K r u l l次

, すなわち“素イデア Jレは極大である”ことを思い起そう(例 6 .1 2 ) . 特に, 元が 0

A r t i n整 域 は 0を極大イデアルとするので,可換体である. A r t i n環はさらに次の性質をもつ. 定理 6 .5 3

A r t i n環 Rキ0の 極 大 イ デ ア ル は 有 限 個 で あ り , そ れ ら の 交 わ り は

根 基 J(R)(=が ( R ) )である. この定理は(=が ( R ) )の部分を除いて,非可換の場合で忍そのまま成り立つ(第

注意

7章問題 1 0 ) .

証明

素イデアルによる交わり表示をもつイデアル全体外は,

A r t i n性 か ら

極 小 元 a をもつ.いま

a=1 : J 1 n… n加 ( 柘 ESpec(R)=Specm(R)) と表わす.任意の

i tES p e c(R)に対して anpeA-であるから, aの 極 小 性 よ り

a~i:,. ゆえに 判 "'+'n~

よって

柘 n. . .n+'n~+J.

Pは 或 る 柘 を 含 み , 極 大 性 か ら P=匹 ゆ え に Specm(R)=Spec(R)=

似 … , 叫 . そ し て , ](R)の 定 義 と 定 理 6 . 4 5の系より, J(R)=が (R)= P i n . : .

n加. I 極大イデアルが有限個の可換環は半局所環

( s e m i l o c a lr i n g )とよばれる.

§ 6 .5 N o e t h e r環

415

次の定理は,この項の考察の鍵となる.なおイデアルがが幕零とは或る整数

n>Oに つ い て が n=Oとなることである. 定理 6 .5 4 A r t i n環または Noether環の素根基は椰零である.

注意

あとで A r t i n= }N o e t h e rを示すが,ここでは別々に扱う. A r t i n環について

は素根基=根基であり,この意味で,非可換環の場合に拡張される(定理 7 .5 3 ) . 証明

Artin環または Noether環の幕零元だけを含む任意のイデアルがが罵

零であればよい.

Artin環の場合 が n(n=l,2 ,・・・)は減少列だから,或る n>Oに つ い て が n= が □ 仮 に がn = l = Oとして矛盾を導こう.イデア Jレの集合 芯 ={ LI; 戸 Lキ 0 }

を考える.どは空でない(たとえばがを含む)から, A r t i n性より極小元 L を含 む.そして或る xeLに つ い て が 冠 キ 0 . イ デ ア ル が 冠 に 対 し て がn cが冠)=が冠キ 0だ か ら がnXE芯 ま た が 冠 三

L だから,どにおける L の 極 小 性 よ り が 冠 =Lである. よって或る aeが n を と れ ば 血 =x. ゆえに幻=⑬ =a 冠 =a3x=…. aは幕零なので x=O. これは矛 盾である.(以上の推論は,左 A rtin環の左イデアルについてそのまま通用する.

. 5 3の証明を参照.) なお定理 7 Noether環 の 場 合 が は 有 限 個 の 元 X 1 ,…,叩で生成され(定理 4 . 1 9 ) , ガ nは ( 6 .6 _ 1 ) で生成される.

. X戸 "Xt'

( n叶 … 十 凡 =n, ni>O)

ところで,或る mi>Oをとれば叩切i=Oなので,

n> (m1-l)+… +(mt-1) \

とすれば,或る i について ni~mi となり, Xげ '=0.

よって ( 6 .6 1 )はすべて 0で

= o .I あり,がn Artin性と Noether性を結びつけるのに,次の補題を利用しょう. 補題 6 .3 可換環 Rの有限個の極大イデアル皿,.., ・mn(重複を許す)の積が 0 のとき, A rtin# N o e t h e r . 証明商加群R / m 1 ,皿 / m 1叫,…, m1.・ f f i n i / 0は,それぞれ体 R / m 1 ,R / m 2 ,…,

R/mn上の加群とみなされ,各加群について Artin# Noether( 例4 .5 2 ) . よっ

第 6章 可 換 環

416

て定理 4 . 2 0をくり返し適用すればよい. I さて, A r t i n環は次のように特徴づけられる.

定理 6 .5 5 可換環 Rキ 0について,次の 2条件は同値である.‘

( i ) R は Artin環である. ( i i ) R は Noether環であり,かつ K r u l l次元 0である. r t i n=?N o e t h e r(秋月).これは非可換環で忍成り立つ(定理 7 .5 4 ) . 注意 特に, A 証明

Artin環の K r u l l次元が 0であることはすでに見た.

したがって,

( i )

を仮定すれば定理 6 .5 3 ,( i i )を仮定すれば定理 6 . 5 2の 系 に よ り , 素 根 基 が は 有 限個の極大イデアル皿,…,

mnの交わりである.そして定理 6 .54よ り , が は 幕

零なので,或る正整数 Kについて

m/ …mnk~0.

( 6 .6 2 ) したがって,補題 6 . 3より,

( i )# ( i i )が成り立つ.、'

K r u l l次元が 0でない Noether環はもちろんある.また,逆に Noether環 で ない K r u l l次元 0の可換環もある(第 6章問題 1 1 ) .

Artin環の構造は,局所環の場合に帰着する: 定理 6 .5 6 Artin環 Rキ0は有限個の Artin局所環の直積に同型である. 注意 直積因子は同型を無視して一意的である ( § 6 .5問題 3 ) .

証 明 Rのすべての極大イデアルを m 1 ,…,mnとするとき,或る k>Oについ

6 .6 2 )が成り立つから,補題 6 .1( 3 9 2ページ)および孫子の定理(定理 3 . 2 4 ) て( により,標準的同型

” R二 iI T R / m i k =l を得る.ここで

R/mlは , mdm?を極大イデア Jレとする局所環であり, Rの 商

環なので A rtin環である. I

R / ( m )について上の定理を確認せよ.

( i ) Rは幕零元が 0のみの Artin環である. ( i i ) R は有限個の可換体の直積に同型である.

\し

問6 . 5 6 例3 . 4 6の環

例6 . 4 4 可換環 Rキ0について次の 2条件は同値である.

§ 6 .5 N o e t h e r環

417

c ) 1次元 Noether整域 この項は前項の自然な延長であるが, § 6 .6 ,c )まで用いない.

0次元整域は可換体に他ならない.

1次元 Noether整域の一般性質を調べよう.なお, Dedekind環は 1次元以下 のN oether整域であったことを思い出しておく. まず, 0次元 N oether環の特徴づけ(定理 6 .5 5 )を , 1次元 N oether整域の特 徴づけの形に変形する. 定理 6 . 5 7 可換環 R について次の 2条件は同値である.

( i ) R は体でない整域であり, O,R以外の任意のイデア Jレaに つ い て R / aは A r t i n環である. ( i i ) R は 1次元 Noether整域である. 証明

( i )=?( i i ) 任意の aについて R / aが A r t i n , したがって Noetherで

あるから,全単写像 l ( R ,a)~J(R/a) により, R も Noether である. より,

また,仮定

0 は素イデア Jレであり,極大イデアルがキ 0 なので dimR~l であるが,

任意の素イデア Jレp キ0に対して dimR / t : i = Oより, Pは極大で, dimR=lを 得 る .

(ii)=?( i ) R は整域であるが, dimR=lなので体ではない. 0が 素 イ デ ア Jレなので,

O,R以外のイデア Jレaに対して dimR/a~dim Rー 1 = 0 . よって R/a

は 0次元 N oether環であり, A r t i n環である. I 上の定理から, 1次元 N oether整 域 が 分 数 体 内 で 拡 大 し て も 同 じ 性 質 を も つ ことが証明できる: 定理 6 . 5 8 1次元 Noether整 域 A の分数体 K に含まれる A の拡大環

BキK は,再び 1次元 Noether整域である. 証明

i )を示せばよいことを示す. まず次の命題 (

( i ) A の任意の元 aキ0に対し, A 加群 B/Baは有限生成.

B の O,B以外のイデアル bを任意にとり, a=onAとお が R/q の零因子

⇒ Pが 罵 零 (§6.4,b))⇒ pE~q、ゆえに芦石.逆に, qe~q~ 或る K >Oについて q 1 cEq~p ( " : qx=O)=知7Ep . ゆえに石い砕. n~2 のとき,標準的単準同型 R/a →

( 2 )より

したがって p=ふ1 .

II~加 に 注 目 し よ う . Assをとって,

i=l

§ 6 .5 N o e t h e r環

4 2 7

n

Ass(Ria)~Ass (ITR/qi)~U Ass( J ? 加 ) = 臼 伍l =N 面,・・・,面}. i=l

i=l

逆に,任意の i について ~E Ass( R / a )を示せばよい.

① 口 とおけば 6/aキ0. ゆえに Ass(o/a)=l=!i>. 標 準

表示に余分がないから, o=

的単準同型 o / a→ R / q iに注目して, Ass(o/a)~Ass C R , 加)={面}.

よって ~~E

Ass( o / a ) . ところで Ass(o/a)~Ass (R/a) だから, ~~e Ass( R / a ) .I 定理 6 .6 4 N o e t h , e r環

Rの任意のイデア)レ aは,簡約された準素イデ

ア)レ分解

a=q 1n・・・nqn また,面;,…,面面は異なり, aによって定まる.

をもつ.

さらに,これら

iは,やはり aによって定まる. 素イデア Jレのうち極小なものに対応する q

注意

証明

すべての出が aで定まるわけではない(例 6 .4 7 ) .

aの準素イデアル分解から余分のものを除けば,簡約された分解が得ら

oether性 れる.そこで,準素イデア Jレ分解をもたないイデアルがあるとして, N から極大なもの aをとり,矛盾を導こう.

aは キ Rであり,準素でないから, R/aの 零 因 子 で 幕 零 で な い 元 i i( aER)が 存在する . Rのイデアルの増加列 知

を考えれば,

={ xERIxanEa }

(n=l,2 ,・ ・ ・ )

Noether 性から,或る n>O について an=a紐•

これから次を示そ

う :

( 6 .6 9 ) [証明]

a nn(Ran+a)= a .

e

左 辺 の 元 xan+a( x R ,aEa)をとると,

( xが十 a)a バ :a . ゆえに

X a 2 nEaであり, XEC T 2 n = C T n , すなわち xanE a . ゆ え に xan+aE d . したがっ て(左辺)~(右辺).逆の包含関係は明らかなので (6.

6 9 )が成り立つ. I

ところで i iが零因子なので,或る X E ! :aをとれば xaea . ゆ え に xa只 :a ,す

なわち XE 叫.ゆえに an~a. また, iが幕零でないから a nE l :a . よって Ran+a ~a. つ .

したがって, aの極大性から, a nと Ran+aは共に準素イデア Jレ分解をも

6 . 6 9 )より, aも準素イデア Jレ分解をもつことになる. このことと (

これは矛

第 6章 可 換 環

428

盾である.

i )による.これらが aで定ま 次に,品,…パ示が異なることは簡約性の条件 ( ることは前定理による. 最後に,品=柘が{苅;,…パ面}の極小元のとき,

( 6 . 7 0 )

qi={xeRI或る sER ' .柘について SXEa}

を示そう.そうすれば q iは aによって定まることになる.

R ' .柘 が 乗 法 系 で あ る か ら

まず極小性から ( R " -柘 ) nJ l i= I = ¢ ( j= I =i )であるが,

( R " -柘 ) nq 戸 ¢(jキi ) . この集合の元 q j( jキi )を と っ て 積 s=J Iq iER'-.柘 を n

jキ i

作ろう.そのとき,任意の XEq iに対して, SXEnqj=aす な わ ち x は ( 6 .7 0 ) j=l

の右辺に属する. 逆に, ( 6 .7 0 )の右辺の元”に対し,或る sE R ' .柘 を と れ ば SXEa~qi.

この

とき s$q iだから, q iの準素性より XEq i . よって ( 6 .7 0 )が成り立つ. I I ここで用語を定めよう. Noether環 R のイデアル a に対し,その簡約された 準素イデアル分解 a=q1n… nq nに現われる q iの根れ面を, aの素因子といい, それらのうち極小のものを極小素因子という.これらは

aによって定まる.

なお, aの極小素因子は, aに関する極小素イデアルと同じものである.実際, 簡約された表示 a=q1n. . .nq nから,ふ石の素イデアルによる交わり表示

藷 = 贔 n… n品 を得るが,極小素因子をたとえば藷面,… .~(m~n) とすれば, §6. 5 ,a )の ( i )

⇔ ( i i )より ~a =~q1 n., n~q加

は素イデアルによるむ石の余分がない交わり表示であり,ぷふ…,~~ は a に関 する極小素イデアル全体である(定理 6 .5 2 ) . また, aの素因子で極小でないものを埋没素因子という.

例6 .4 6 Dedekind環 Rの準素イデアルは素イデアルの霜に他ならず,イデ

. .3 ) アル aキ 0の素イデアル分解 (§6

( 6 .7 1 )

a =記 … P ne , . . (柘,…,加は異なる素イデアル, ei>O)

に対して,次の簡約された準素イデアル分解を得る.

( 6 .7 2 )

a=t , / 1n.・ nP n e " .

また,すべての柘,…,如は aの極小素因子である.

§ 6 .5 N o e t h e r環

429

[証明] Dedekind環 R は 1次元以下の整域なので(定理 6 .3 0 ) , 素 イ デ ア Jレ



叶 0は 極 大 で あ り , そ の 幕 は P準 素 で あ る ( 定 理 6 .4 3 ) .P 1孔 " P n e " = P / 1n n 加e , .は補題 6 .1で 示 し た . 素 イ デ ア Jレ分解 ( 6 .7 1 )の 一 意 性 か ら , 表 示 ( 6 .7 2 )に 余 分 は な く , こ れ は 簡 約 さ れ た 表 示 で あ る . 埋 没 素 因 子 が な い こ と は dimR~l から当然である.

そして,任意の

p準 素 イ デ ア ル は , そ の 素 イ デ ア Jレ分解を用い

て( 6 .7 2 )の形に表示して,一意性から n=l, P=柘を得る. I 例6 .47 可 換 体 K上 の 整 式 環 R=k[X,YJ において,

柘 =( X ) ,

柘 =( X ,Y)

は 素 イ デ ア ル で あ り , イ デ ア Jレa=(X 因XY)は

a=P 1 n P 2 2

(記は柘準素イデアル)

と簡約された表示をもつ.ここで柘三柘であるから,柘は極小素因子,柘は埋

円Y)忍 柘 準 素 イ デ ア ル で あ り ( 例 6 .3 3 ) , 没 素 因 子 で あ る . な お q=(X a=P 1nq も簡約された表示である.

問6 .5 9 任 意 の え Ekに対し, qA=(X 口X+Y)が 和 準 素 イ デ ア ル で , 簡 約 された表示 a=P1nq えを得ることを示せ.

g) 正 規 性 の 判 定

o e t h e r正規環(=整閉整域)の特徴づけをしようなおこの項は, 素因子を利用して, N 本講としては終点である.

まず Noether整 域 R に関する次の 2条件を比較する.

( i ) R の 非 可 逆 元 aキ 0に対し, ( a )の 素 因 子 の 高 さ は 1 . (i)'R=n{R1>IPESpec(R), htp~l}. ( i )= = = }( i ) ' .

[証明] が

(左辺) s ; ;(右辺)は当然である.右辺に属する元 a s―1( a ,sER,sキ0 )

R に属することを示そう. sは非可逆としてよい. ( s )の 簡 約 さ れ た 準 素 イ デ

ア Jレ分解

( s )= .c r 1( )" ' ( ' ¥C f n をとれば,仮定 ( i )より面;=柘の高さは 1(l~i~n).

ゆえに a s 1ER P tであり,

a s ―1 =ais 戸( a i ,s iER ,s iER,柘)と表わされる (l~i~n). ここで SEq iに注意 si=aisEq i , しかし S iE E柘なので, aEq i(l~i~n). すれば a

したがって aE( s ) .

第 6章 可 換 環

430

ゆえに a s 1ER.I 注 意 (i)'=>( i ) 忍成り立つ ( § 6 .5問題 1 1 ) .

定理 6 .6 5(Krull-Serre—永田)

Noether整 域 R が整閉であるためには,

次の 2条件が必要十分である.

( i ) R の非可逆元 aキ 0に対し, ( a )の素因子の高さは 1 .

( i i ) R の高さ 1の素イデア Jレ Pに対し, Rpは付値環.

注意

証明

N o e t h e r付値環=離散付値環 ( § 6 .3 ,b ) ) . ( i ) ,( i i )=?整閉付値環凡 (ht~= 1 )が整閉である ( § 6 .3 ,b ) )から,



i )=?( i ) 'とあわせて, R = R p も整閉である. 上記 ( ( i ) 非可逆元 aキ0に対し, ( a )の 素 因 子 Pを と れ ば , 定 理 6 . 6 3に 整 閉 = ?, より,或る

bER/(a)について, ~= Annb= { xERIxbE( a ) } .

ht~~l なので ht~~1 を示せばよいが,それには m=Rj)~ に対して htm~l を 示せばよい. ~b~(a) だから mb~Rpa, ゆえに ba ―1 Em-1( § 6 .3 ,c )参照).ここ で場合を分けよう. mm― 1= 凡のとき, m~m2=1=¢ である.その元

C

をとれば, cm ―i =Rp. 実際,

cm― i~Rj) であるが,三ならば cm― i~m となり, CE m2となってしまう.

よって

Rpc=m. ゆえに htm~l (単項ィデアル定理). mm― i~Rj) から矛盾を導こう.このとき mm― i~m だから m― 1 の元は RP 上整

であり ( § 6 .1 ,e )の例題 6 . 1 ) , RP の整閉性から m― i~Rp,

よって m―i = R j ) , であ

, り b a―lER p , ゆえに ba-1=ds―l ( d ,S ER , S~ ~)と表わされ, sb=daE . ( a ) .ゅ えに sEAnnb=~.

これは矛盾である.

i i ) ht~= 1のとき, Rpiま局所環であるような Noether1次 元 正 規 整 閉 = ?( 環であり,

.2 9 ) . 1 したがって付値環である(定理 6

h ) Noether性の判定 この項は § 6 .2 ,b )に接続する.本講の他の部分では用いない.

Noether性の判定に際して,次の定理は有用である. 定理 6 .6 6(Cohen) 可換環 R のすべての素イデアルが有限生成ならばi Rは

§ 6 .5

N o e t h e r環

431

Noether環である. 証明

oether 可換環 R の有限生成でないイデア Jレ 全 体 を 外 と す る . Rの N

性は A=¢ と同値であるから(定理 4 .1 9 ) , 次を示せばよい.

( i . ) Aキ ¢ ならば外は極大元をもつ. ( i i ) 外の極大元は ( i )の証明

Rの素イデアルである.

外の全順序部分集合 J 3キ ¢ に対し, a.=UJ3はイデアルである(例

4 . 4 0 ) . aが仮に有限個の元で生成されるとすれば,これらを含む 0EJ 3があり, a~f>. ゆえに a = f > . これは恥 J 3が有限生成でないことに反する。 よって aE外 . したがって外は上に R帰納的であり,極大元をもつ.

( i i )の証明

Pを 外 の 極 大 元 と し , 或 る 元 a ,bER " . . t Jについて a bE l )と仮定

して矛盾を導けばよい.

J:) より真に大きいイデア Jレ ~+Ra は有限生成なので,

Pけ 叩a (l~i~t),

ただし P iEP ,



ER

の形の生成元をもつ.イデア Jレ

q={ qER IqaEt J }

Pと bを含むので Pより真に大きく,やはり有限生成である.そこで

は ,

( 6 .7 3 ).

~=~か 十 … 十 Rp 叶

q a

を示せば, Pも有限生成となって ) lEAと矛盾する.

Pが ( 6 .73)の右辺を含むのは当然だから,逆に Pの任意の元 Pが 右 辺 に 属 す

pは l:JfRaの元だから, ることを示せばよい . P=Y1(P1+・X1a)+…+Yt(P叶 叩a )

( Y iER)

か 十 … 十 y必 十 ( Y 1叩 + … 十 y心 t ) a =Y i

と表わされる. がって

よって ( Y1X1+… +YtXt)aE l ) . ゆ え に y心 1+… +Yt功 Eq . した

Pは ( 6 .7 3 )の右辺に属する..1

応用例として, § 6 .2 ,b )で予告した次の事実を示そう.

.4 8 No e t h e r環 A 上の整級数環 A [ [ X 1 ,…, x 』]は N oether環である. 例6 [証明]

標準的に ( A [ [ X 1 ,. , ., X』 J)[[Xn+1J]~A[[ふ…, Xn+iJJ なので, n=

1の場合に帰着する.•

.

、 會

.

.

R=A[[~JJ の素イデアル P が有限生成であることを示そう.定数項忍とり出 す全準同型 R→ A による Pの像に対し,生成元 P 1 ,… ,P tをとる 性 ) .

( Aの Noether

第 6章 可 換 環

432

XEt,のとき t > =C P 1 ,…,P t ,X). これは当然であろう. ●

か を 定 数 項 と す る 八 Ef : } をとり次を示せばよい.

XE!:~ のとき t > =( / 1 ,… ,f か 任 意 の gEJ lに 対 し , そ の 定 数 項 を L a必 (a戸 A)と表わせば, g-Lai八= i = l i = l gぶ ( g 1ER)と 書 け る . 左 辺 が EJ lだから g 1EJ lである. g lに 対 し て も 同 様 で あ

,a iを 改 め て g, 。a i o と書き, g lに 対 し て は る. g

点叫 = gぷ

( a i leA, g 2eR)

g

と書く.以下帰納的に a i jEA, g jERが 構 成 さ れ t

釦 一 Lai 』

i = l

=gn+1X

(n=O,1 ,2 ,… ) .

そこで h iER(l~i~t) を次のように定める. 00

hi=LainX内 n=O

t

。i=l

そのとき,容易に, g=g=Lhifiが確認されよう. I

§ 6 .5 問 題

kを可換体, R を可換環キ Oとする. I Artin局所環 R の極大イデアルを m とする.次の 3条件の同値を証明せよ. ( i ) R は主イデアル環 ( i i ) m は単項, ( i i i ),dimR;mm/m2; ;1 . [ヒント]定理 6 .1 8 ,6 .5 4 .

2 k上の有限生成環について, Artins, k上有限次元,が成り立つことを証明せよ. .1 8 ,6 .48の系, 6 .5 6 . [ヒント]定理 6 3 Artin局所環 R i ,…,応の直積環 R か ら 凡 へ の 標 準 的 全 準 同 型 の 核 を 缶 と す る

「 1 a iは 0の正規準素イデアル分解であり,面元は 0の極小素因子の全体である i = l

とき, 0=

ことを示せ.

4 1次元 Noether整 域 A の分数体に含まれる A の 拡 大 環 B をとる. pE Spec( A ) に対し, qnA=pとなる qE Spec( B )は有限個であることを示せ.[ヒント]定理 6 .5 2 ,

・ 6 .5 8 . 5 Noether環の非零因子のに対し, @)の極小素因子の高さは 1であることを示せ. .2 0 ,定理 6 .6 0 . [ヒント]例 6 6 整式環 k[X,YJの部分環

R={ / ( X . ,Y)I /(X,0 )Ek}の素イデアル+>=(Y)に対し,

§ 6 .6 環の拡大と素イデアル

433

htp~2 を示せ.

7 Noether環 lレ P について,

Rのイデア)レ a( キ R)が t個の元で生成されるとき, aを含む素イデア

htp~ht 加十 t を証明せよ.

( h tp / aは環 R位における高さ.)

, 8 Noether環 R の高さ nの素イデアル Pは,或る n個の元で生成されるイデアルに 関する極小素イデアルであることを証明せよ(標高定理の逆).

9 Noether環 R の素イデアル Pとイデア Jレaについて, aが P準素 #Ass( R / a )= { p } , が成り立つことを証明せよ.

1 0 整式環 k[X,Y ,Z]のイデアル (X円XY,YZ,ZX)の正規準素イデアル分解を求め

. ょ 1 1 § 6 .5 ,g )の記号で, ( i )/= = ?( i )を証明せよ. 1 2 環 R のすべての素イデアルが単項ならば,任意のイデアルが単項であることを証 明せよ.[ヒント]定理 6 . 6 6の証明にならう.

§ 6 .6 環 の 拡 大 と 素 イ デ ア ル この節の目標は,大きく分けると二つある. 第一は, Dedekind環の拡大がどんな挙動を示すかを見ることで, これは代数的数論の 中心的な問題につながる.本書はその一般的な状況を見るにとどめる.

1次元 ところで,この考察の或る部分は, Dedekind環の特徴から‘整閉性’を除き, ' Noether性’だけに基づいて展開することができる基礎となるのは前節で述べた " A r t i n

⇔ 0次元 Noether"に基づく分数体内の拡大 ( § 6 .5 ,c ) )と,整拡大における次元の保存 である. 第二は,高次元を問題とするが,その代りに主として‘体の上’で考え,素イデアル列の 性質を調べる.

これは代数的多様体の構造を考える上で欠かせないものである.

この考察は,‘正規化定理’によって,整式環の場合と整拡大の場合に帰着させて行う. なお,高次元であるから,素イデアルの持ちあげに際し,高さが減らないことを保証する 条件である‘整閉性’に注目する必要が生ずるであろう.

a) 素 イ デ ア ル の 上 げ 下 げ 可 換 環 A の 拡 大 環 B を と る . 任 意 の qES pec(B)に対し, qnA ESpec( A ) . [証明]

標 準 的 単 準 同 型 A/(qnA)→B / qに 注 目 す る こ と に よ り , B / qが 整 域

/(qnA)い整域である. のとき A t;,=qnAであることを,

I

しばしば次のようにいい表わす:

、 Pは qの下にある', 拡大

' qは

Pの上にある'.

A4Bに つ い て , 次 の 3条件をとりあげる.

(INC) 任 意 の , : tESpec( A )に 対 し , そ の 上 に あ る 異 な る q ,q ' ESpec(B)の

第 6章 可 換 環

434

間に包含関係がない.

(GU)・pESpec( A )の上に qESpec( B )があるとき, Pを 含 む p ' ESpec( A ) に対して

p 'の上に

qを含む q ' ESpec(B)が存在する.

(GD) pESpec( A )の上に qESpec(B)があるとき, Pに 含 ま れ る よ う な

p ' ESpec(A)に対して p 'の上に qに含まれる q ' ESpec(B)が存在する. 注意

INC,GU,GDはそれぞれ i n c o m p a r a b l e ,goingu p ,goingdownの略である.

6 .2 ,e )の考えを適用しよう.すなわち, pESpec(A)に 上の諸条件の判定に § 対し,

A" Pを Bの乗法系とみなして IA,p(B)= { 6 1B のイデアル, on(A"-p)=¢}

o J Bのイデアル, ={

o nA s ; ; ; ; p }

を考える. ( I N C ) ,(GU)とそれぞれ同値な条件を与えよう. 補題 6 .5 環の拡大 Aこ B について (INC)は次の条件と同値である。

pESpec( A ) , qESpec( B )について qは Pの上にある==} qは J A , p ( B )の極大元. 証明

qが Pの上にあるとき, q s ; ; ; ; q ' ESpec(B)について q' が P の上にある ~q'E

I Aヽi , ( B )

であることに注意する. (INC) を仮定すれば,

q が P の上にあるとき,上記の注意(~)より, q は極

大である. 逆に上の条件を仮定すれば, P の上にある q~q' について,極大性より q=q'.

したがって,上記の注意(==})より, ( INC)が成り立つ. I 補題 6 .6 環の拡大 Aこ B について (GU)は次の条件と同値である.

pESpec( A ) , qESpec( B )について q は P の上にある ~q は lA,i,(B) の極大元.

証明

(GU)を仮定し, qを IA,p(B)の極大元とする. q r 1A s ; ; ; ; pであるから,

q~q'E Spec(B)を適当にとって q'nA=pとなる.このとき q ' E/A,p(B)である = q ' . ゆえに qは Pの上にある. から, qの極大性より q 逆に上の条件を仮定して, pESpec( A )の 上 に qESpec(B)があり,応砕' E

Spec( A )とする. qEJ A , p ' ( B )であるから

I A ヽf (B,q )の 極 大 元 q 'が あ り , そ れ

.2 3 ) . このとき, は B の素イデアルである(定理 6

q 'は p 'の上にある.すなわち

435

§ 6 .6 環の拡大と素イデア lレ

(GU)が成り立つ. I ここで次の条件 ( LO)を追加しよう.

(LO) A の任意の素イデアルの上に B の素イデアルがある. LOは l y i n goverの略である.

注意

定理 6 . 6 7 環の拡大 A 4 Bについて,

(GU)==}( L O ) .

証 明 任 意 の pES pec(A) に対し, IA,~(B) の極大元 q をとれば q

ES pec( B )

であり(定理 6 .2 3 ) , 補題 6 .6より, qは Pの上にある.I まず特殊な例をあげよう. 例6 . 4 9 環の拡大

A4Bにおいて, A の( 0に関する)極小素イデアル Pの上

LO) に B の素イデアルが存在する.特に, dimA=Oのとき, A 4 Bは つ ね に ( を満たす. [証明] IA ヽ ~(B) の極大元 q は B の素イデアルであり, qnA は P に含まれる 素イデアルだから,極小性より qnA=p.I

b )整 拡 大 環の拡大 A 4 Bによる素イデアルの対応において,高さと深さ ( § 6 .2 ,d ) )が

INC),(GU),(GD)などの条件のもとで考えよう. どんな影響を受けるかを, ( 以下

P ,柘 ESpec(A), q ,q iESpec( B )とする.いま, Pの上に qがある(すな

わち p=qnA)とすれば,次が成り立つ.

( 1 ) (INC)のもとで, depthp~depth q , htp~ht q . [証明] qからはじまる りは

Bの素イデア Jレの昇鎖または降鎖に対し, A との交わ

Pからはじまる昇鎖または降鎖である.'

( 2 ) (GU)のもとで, depthp~depth q . [証明]

昇鎖 p=J)o 三柘云…に対し,初の上に Qi があるような昇鎖 q=q。 ~ql

冨…がとれる.'

( 3 ) (GD)のもとで, h tp~ht q . [証明] ( 2 )と(包含関係を逆にして)同様である. I さらに次が成り立つ.

( 4 ) ( I N C ) ,(GU)のもとで dimA=dimB. '[証明] (GU)==}( LO)(定理 6 ,6 7 )に注意すれば, ( 1 ) ,( 2 )により dimA=

qI qESpec(B)};=dimB .I sup{ d e p t hpI pESpec(A)}=sup{depth.

第 6章 可 換 環

436

( 5 ) (GU)のもとで,, htt J -→ i 必 + ・ ・ ・ 十i 凸 + i n + lEZ が I上 で 単 写 像 に な る こ と を 以 下 で 示 す . そ う す れ ば , G( ふ',・ ・ ・ , 叫 ' ,X)は

k[ 叩',・・・,叫']を係数域とする 元となる.

X の整式であり,その最高次係数は Kの 0でない

n + lを代入して, ( 6 .8 2 )より しかも X に X G(幻,…,叫',X n + 1 )= F ( x 1 ,…,叫,印n + 1 )= 0 ,

すなわち X n + lは k [ x i ' ,…,叫']上整となり, ( 6 .8 1 )が成り立って証明が終る. いま n+l項ベクト

Jレ C i 1 ,… ,

i n + 1 )Efの差として表わされるすべてのベクト

J レ

の有限集合を]としよう.そのとき文字 T 1 ,… , Tnの整係数の整式

H(T1,… , T n )= I T U1冗+…十九 T叶 j n + 1 ) ( j 1 ,•••, j n + l )EJ を考えれば,各因子がキ 0だから積がキ 0であり,正整数全体が無限にあるから, 或る e 1 > 0 ,. . ., en>Oを代入して

H ( e 1 ,…,む)キ 0

(定理 3 .1 4の系).

6 .8 3 )は I上で単写像となる. I このとき,対応 ( 正規化定理を応用して,

まず定理 6 . 7 4の系の拡張(例 6 .1 5 )を示そう.

定理 6 .7 6 可換体 K上の有限生成整域 R について

dimR= t .d e g 1 cR . 注意特に, R が体ならば dimR=Oなので R は K上代数的である.これは

§ 6 .4で

基本的な役割を果した事実(定理 6.48の系)に他ならない. 証明

1 ,… , y戸 R を適当にとれば, 正規化定理により, K上代数的に独立な元 Y

整域 R は k [ Y 1 ,… , y』の整拡大である.ゆえに

dimR= dimk [ Y 1 ,… , y』

(定理 6 . 6 8の ( i v ) )

=t .d e g kR

(定理 6 .7 4の系) .

I

上の定理と定理 6 .7 4をあわせれば,整式環 R=k[X1,… , x』 に つ い て 次 の 定 理の等式が導かれる.

§ 6 .6 環の拡大と素イデア)レ

[証明]

449

Rの素イデア JレPに対し h tJ 1十 t .d e g kR / 1 : >=n

(定理 6 .7 4 ) ,

: . h tJ l十 dimR / J : )= dimR 定理 6 .7 7 可換体

(定理 6 .7 6 ) .

K上 の 有 限 生 成 整 域 R の素イデア)レ Pに対し, ht~ 十 dimR / p= dimR .

(すなわち ht~ 十 d e p t hp= dimR . )

証明

正規化定理(定理 6 .7 5 )に よ り , 整 域 R は 整 式 環 に 同 型 な 整 域 A の 整

.5)であり, R は A 上有限生成である. 拡 大 で あ る . そ し て A は整閉(例 6

した

がって,定理 6 . 6 8お よ び 定 理 6 .6 9により,

d e p t h( + JnA)= d e p t hJ + すなわち

dim( A /( + JnA ) )=dimR / + J ,

dimA = dimR , h t( + J n A )= h t+ J . そして,整式環に同型な A の素イデア Jレ+ JnAについて上で示したように

ht( + JnA)+dim( A /( + JnA ) )= dimA . よって,上の諸等式をあわせて次を得る.

I

h t+J+dimR / + J= dimR .

この定理により,素イデアル鎖の長さについて,次のような強い性質がわかる.

系 可 換 体 上 の 有 限 生 成 整 域 R の素イデアル列

+J~ 柘 己 … 己 朽 =0 が細分できないとすれば, n=htp( pで定まる).

さらに延長もできない

とすれば, n=dimR(二定).

証明 有 限 生 成 盤 域 R J柘 の 素 イ デ ア ル

P i : _ _ i f柘に定理を適用し(ただし p=po),

h t( P i i i 柘 ) +dimR / pぃ =dimR/柘 ここで,

Pi-1~ 柘が細分できないから,

(l~i~n).

h t( P i i i柘 )= 1 . したがって,

dimR= n+dimR / p . ところで, t i i mR=htp十 dimR / p . ゆえに n=htp. ま た 延 長 で き な け れ ば が極大なので d imR/p=O. ゆえに n=dimR .I

P

第 6章 可 換 環

450

§6°6 問 題

環はすべて 0でない可換環とする.

l 環の拡大 A 4 Bが条件 (GU)を満たすとき, B の極大イデアルの下にある A の 素 イデアルは極大であることを示せ.

2 整拡大 A 4 Bに対し,代数的閉体 9への準同型 A→ 9は B→ 9 に 延 長 で き る こ とを示せ. 3 環 A の自己同型の有限群 G に 対 し , そ の 固 定 環 A0={aEAJ a ( a )=a( aEG)}を

とる.

( i ) A04Aは整拡大であることを示せ. ( i i ) AGの素イデア Jレ Pの上にある A の素イデアルの集合 P に対し, Gは 可 遷 的 に 作用することを示せ.

4 環の拡大 A 4 Bにおいて, B が A 加群として平坦ならば,条件 (GD)が 成 り 立 つ ことを証明せよ.

5 dimA~_l のとき,整式環への拡大 A4A[X] は条件 (GU) を満たさないことを示 せ.[ヒント] A は整域としてよい.その素イデアルの元 Pキ 0に対し, A[X]の 素 イ デ アル ( 1十 PX)を考える.

6 環 A の素イデアル Pをとる.拡大 A 4 Bに関して次の 2条件の同値を証明せよ.

( i ) Bpに関する極小素イデア Jレ qは Pの上にある.

( i i ) pを含む柘 ESpec( A )の上に屯 ESpec(B)をとれば, Pの 上 に 屯 に 含 ま れ る qe Spec(B)が存在する.

7 Noether-Hilbert環 R の極大イデアルがすべて一定の高さ

hを 忍 つ と き , 整 式 環

R[Xi,・・・,ふ]の極大イデアルは高さ h十 n(一定)をぶつことを証明せよ.

8 環 A のイデア Jレ aが整式環 A[XJで生成するイデアルを a *と書く.次を証明せよ. ( i ) A の P準素イデア Jレ qに対し, q *はか準素である. ( i i ) a=q1n… nqnが正規準素イデアル分解ならば, a *=qi*n ・ . .nq n*となり,これ は正規準素イデアル分解である.

( i i i ) pが aの極小素因子ならば, p *は a *の極小素因子である. 9 体 K上の整式環 k [ X 1 ,. . .,XnJの素イデアル朽 =(X1,・ ・ ・ , ふ ) (l~i~n) の幕は,す べて朽準素であることを示せ.[ヒント]前問.

第 6章 問 題 環はすべて

0でない可換環とする.

l 環 R の有限生成素イデアル Pを R 加 群 と み て Annp=Oのとき, Annp/ 炉=Pを

.3 . 示せ.[ヒント]定理 6



451



2 線型環準同型 f:A→ B が整とする.任意の線型環 C に対し f⑧ ida:A⑭ C→B⑧ C 忍整であることを示せ.

3 A 線型環 B の可逆元

X

に対し, A[ 幻 nA[x-1]は A 上整であることを証明せよ. n

[ヒント]各元 y に対し,或る n>O について M=LAがとおけば, yM~M. i=O

4 局所環 R 上 の 有 限 生 成 加 群 M キ 0 , Nキ0に対し, M⑧忍Vキ 0を示せ.[ヒント] 剰余体へ係数変換し NAKの補題(定理 6 .1 )を使う.

5 整 域 A 上 の 整 式 環 A[XJの 素 イ デ ア ル qについて, qnA=Oの と き , 分 数 環

A[X]qは離散付値環であることを証明せよ. 6 整 域 R の分数体 K が R の素元 Pによって K=R[P-1] と表わされるとき, R は離 散付値環であることを証明せよ.

7 Dedekind環 R の分数体の部分環 V が R を 含 み , か つ 付 値 環 で あ る と き , 或 る

iESpec( R )によって V=凡と表わされることを証明せよ. 8 体 k上の有理式体 k(X)の真の部分環 V が kを含み,かつ付値環であるとき,次

を示せ.

( i ) XEVのとき,或る既約整式 pEk[X]について V=k[X]p・ ( i i ) X~V でありかつ k(X) が V の分数体のとき, V=k[X-1](G) が定める K 上の線型表 現( p ,K〈G〉)は, G の K 上の正則表現である.—

X が有限集合のときは,その元に番号 1 ,…, n を付し,匂 X) が €>n と同一視

§ 7 .1 群 の 表 現

455

され, K〈 X〉 は 応 と 同 一 視 さ れ る . こ の と き , 置 換 表 現 ( < p ,X)の 定 め る 線 型 表現は n次の行列表現とみなされる. 注意置換表現 < p ,< p 'が定める線型表現を p ,p'

とするとき ')) が線型写像 r:A®B → C を 定める.図式の可換性は,生成元 aRbの行先を調べて直ちにわかる.

また生成

元 に つ い て r( ( a R b ) ( a ' R b ) り= r(aa'Rbり ) =a( a a ' )f i ; ( l } , が ) =a ( a ) a ( a ' ) f i ( b ) f i ( bり

=a( a )f i( b ) a( a ' )f i( b ' )=r(aRb)r( a ' R b ' )であるから, rは線型環準同型である.

rの一意性は,図式の可換性が生成元の行先を指定するからよい. I 問8 .9 (ARB,f ,g )はどんな関手の普遍要素と考えられるか.――

A,Bが可換ならば ARBも可換である. 例8 .4 単位的半群 G,Hに対し,次の線型環同型が定まる. K〈G〉 ®K〈H〉二~K〈GxH〉

(g® か—→ ( g ,h ) ) .

特に,文字兄,…, X m,Y 1 ,…,凡の整式環を考えると,

K[X1,…,ふ]⑧ K[Y1,… , Y』 二 K [X1,… , X加兄,…, Y n l

ー X喜 "XmimY夜 ・・Y/".

X占 ・ X m i喝 Y夜 ・ ・ Y / "

例8 .5 有限基底をもつ K 加 群 M,Nに対し, K加群としての同型(定理 8 .3 )

( 8 .2 0 ) Endx(M)⑳ Endx(N)二 Endx(MRN)

( u⑧ V一→ u忌v )

は線型環同型である. [証明] uu'Rv が =(uRv)(u 唸似)を示せばよい.

これは容易である. I

M,Nの基底の個数を m,nとすれば, M R Nの基底の個数が mnとなるから,

第 8章

562

分離性と単純 環

k 線型環として Mm(K)®Mn_(K_)~Mmn ( K ) .

( 8 .2 1 )

問8 .1 0 行列単位の対応を具体的に示せ.

. 6 K 加 群 M が有限基底をもつとき, K 線型環 Aに 対 し て M⑳ A を右 例8 A/K加群とみて(左記法で)線型環 EndA(M ⑧ A)を考える.そのとき,匝雙l



A/K加群としての同型(定理 8 . 4の ( i i ) ) ( 8 .2 2 )

EndK(M)RA二 EndA(M ⑧ A)

(uRa

u◎左心

は , K 線型環同型である. 特に A が可換のとき, A の左右の作用は一致し, A 線型環同型である. , , , ' , ,,'

注意

Endの乗法を右記法で考えるときは M⑧ A を左 A/K加群とみて Enむ の 構 造



を定めればよいそのとき,対応は U⑭a u◎右a とする.

[証明] (u@a)(v@b)=uv@ab~uv忌左 ab だから, uv@ 左 ab= ( u◎左砂 ( v◎左 b ) を示せばよい.

これは x@c( xEM,cEA)の行先で直ちに確かめられる.'

M の基底 X1,…,叫に対し,右 A/K加 群 M @ Aは基底 x心 1 ,… , X虞 1をも 之(定理 5 .2 0 ) . これらの基底を用いて,次の環同型を得る ( § 4 .3 ,b ) ) :

( 8 .2 3 )

Endx(M)二 Mn( K ) ,

EndA(M@A)二

Mn(A).

ところで標準的環単準同型 ( § 3 .2 ,b ) ) :

( 8 .2 4 ) ・ ・ . K

ー → Mn(K),

A —• Mn(A)

によって Mn(K)は K 加群, Mn(A)は両側 A/K加群となる.この構造に関し

8 .2 4 )はそれぞれ K 同型, A/K同型である. て , (

したがって, ( 8 .2 3 )は次の匝



側 A/K環同型(=両側 A/K加群かつ環としての同型)を定める.

( 8 .2 5 )

Mn(K)⑧ A 二 Mn(A) . (U@a

Ua=aU).

問8 .1 1 対応を確認せよ.ー一

K 上の可換線型環 L が与えられたとき, K 線 型 環 A の K 加群としての‘係 数拡大 'AL=A⑳ L は K 線型環であり, L加群構造は標準的環準同型 L→ A@L から得られるものと一致する.こうして ALを L線 型 環 と み た 忍 の を , 線 型 環

A の係数拡大という.そして c )で述べたことから, "K → Lが単準同型で A が k 自由”という条件のもとで,標準的環準同型 A→ ALは単準同型である . えば, K が可換体ならばよい.そして A は A Lの部分線型環とみなせる. テンソル積の係数拡大については次が成り立つ.

g

§ 8 .1 準 備

563

定理 8 .8 可 換 環 K 上 の 可 換 線 型 環 L をとる . K線 型 環 A,Bに 対 し , 次 の

L線型環同型が定まる. (A釦 B)L二 → が 釦 が



(aRb@le- (aRl)R(bRl)).

証 明 指 示 さ れ た 対 応 を 示 す L加 群 と し て の 同 型 が 定 ま る ( 定 理 8 .5 ) . とこ ろで生成元に関して,

(aRbRl)(a'Rb'Rl)=aa'®bb'@I~(aa'®l)®(bb'01) =

( a R l ) ( a ' R l )0 ( b R l ) ( b ' R l )=((aRl)R(bRl))((a'Rl)R(b'Rl))だから, L線 型環同型である.' 最後に,テンソ Jレ積上の加群を見よう.

k 線 型 環 A,Bに 対 し , 左 ARB加 群 M は , 標 準 的 準 同 型 J:A→ ARB, A ,B)JK加 群 と み な さ れ る . 逆 に , 左 ( A ,B)/K加 g:B→ ARBによって,左 ( 群

M があれば,標準的準同型

a :A —•

Endx(M),

/ 3 :B一→ Endx(M)

の像が元ごとに可換だから,準同型

A®B —• Endx(M) がひき起され(定理 8 .7 ) , M は左 (A,B)加群となる. なお,両側 ( A ,B)JK加群は左 ( A ,B0)/K加群とみなされる ( § 4 .2 ,b ) )から,

ARB0加群とみなすことができる.特に,両側 AJK加群は ARA0加 群 と み な される.この線型環 A0A0を A の包括線型環といいがで表わす.

e ) 線型環のコホモロジ一 可 換 環 K 上 の 線 型 環 Aキ0を固定する. 両 側 A/K加 群 N に対し, K次 コ ホ モ ロ ジ 一 群 と よ ば れ る K 加 群 H 1 c ( A ,N) を具体的に構成しよう ( H o c h s c h i l d ) . 注意 A が K 加群として射影的のとき,今日のホモロジ一代数の意味では, Hk(A,N)

= E x t A . 1 c( A ,N)である(本講座の“ホモロジ一代数 I, ,を参照). ここでは特に k=2の場 合,構成途中で(内部)徴分との関係を明らかにする. 整数 k~O に対し,

K 重線型写像 A1c→ N 全体のつくる K 加群を c1c(A,

する.ただし C0(A,N)=Nとみなす. 次に, K 準 同 型

が:び (A,N)一→ c 1 c + 1 ( A ,N) を次のように定める.

N)と

第 8章

564

分離性と単純環

り + 因 (一

(町) ( a , 。 ., , . a k )= a。 / ( a 1 ,. . ., a

1 )げ ( . ., ・a←1 佑 ,・ ・ ・ )

+(-l)'fc+1/(a , 。・ ・ ・ ,a ' f c 1 ) a k・ 本講では炉,訊がのみを用いる.すなわち

( 8 .2 6 ) f= nEN

(町) (a)=a n-na,

に対し

c s .27)

fec1C A ,N) に対し

( 8 .2 8 )

tec 2CA,N)

+

( が/ ) ( a ,b )= af(b)-f(ab) f ( a ) b ,

に対し

( 屈f ) ( a ,b ,c )= a f ( b ,c ) f ( a b ,c )+ f ( a ,b c ) f ( a ,b ) c . 一般に次が成り立つ.

が+1。炉=0 .

( 8 .2 9 )

k=O,1の場合は直接計算で直ちにわかる. 問8 .1 2 確認せよ._ さて,,次の K 加群を考えよう.

Zk(A,N)= Kerが , が ( A ,N)= Im戸, これらを Z¥Bkと略記する.そのとき,

( 8 .29)

B0(A,N)= 0 .

より Bk~Zk であり,商加群

が ( A ,N)= か ( A ,N)/Bk(A,N) が定まる.これが A の N における K次コホモロジー群である.かの元を K次 コサイクル,がの元を k次コバウンダリという.特に



Z( A ,N)= { neNIan=na( aeA ) } . この N の K 部分加群は NAとも書かれる. Z 1 ( A ,N)の元,すなわち 1次 コ サ

ィク)レは,性質

/ ( a b )= a f ( b )+ f ( a ) b をもつ K線型写像 J:A→ N である.

( a ,beA)

これを, A の N における微分 ( d e r i v a t i o n )

という.その意味で Z 1 ( A ,N)を Derx(A,N)とも書く.特に, 1次コバウンダ リは,或る neNによって得られる微分

がn :a→ an-na である.これを内部微分という. 上の定義より,次の完全系列を得る.



ーNA4N―゜° 心erx(A,N)ーH1(A,N)

( 8 .3 0 ) 0

0 .

§ 8 .1 準 備

565

ザ ( A ,N)の意味を明らかにしよう. 線型環 A に対し,或る線型環からの全準同型 : 冗 R→ A を , A の拡大という.そしてイデアル N=Ker冗をその核という. さて,線型環準同型

' f r : A' →R で,条件冗 0 y r = i d Aを満たすもの,すなわち冗の右逆準同型であるような線型環 準同型が存在することを,拡大冗は分裂するという.

R =A'+N

これは,

(直和)

となる R の部分線型環 A 'の存在を意味する. 一般には,上のような少が存在するとは限らないが, K加 群 と し て は 冗 の 右 逆 準 同 型 少 が 存 在 す る 場 合 , 拡 大 冗 は 'K分裂’するとよんでおこう.たとえば

K が可換体のとき,常に K 分裂する. 次に,拡大冗: R→ A の核 N が条件 N2=0を満たすとき,複零核をもつとい う.このとき, Rの元の N への左右の乗法は, N を法とする剰余類のみに依存 するから,

Nは両側 A/K加群とみなされる.

いま,あらかじめ両側 A/K加 群 N が与えられたとする.そのとき, 'Nを複 零核とする A の拡大’冗としては,そのひき起す N の両側 A/K加群構造が与え られたものと一致して K 分裂するものだけを考える.

このような拡大冗: R→ A

に対して, H 2(A,N)の元 c ほ)を定義しよう. 冗の K 加群としての右逆準同型 ' f r: A→ R を任意にとり,

f ( a ,b )= y(a)y( b )一y r( a b ) とおく.

これは

Nに属するから, tec2(A,N).

( a ,bEA) さらに

/Eか (A,N¥ [証明]

y r( ( a b ) c )= ' f r( a b ) ' f r(c)-f ( a b ,c ) = (y(a)y(b)-f(a,b))y(c)-f(ab,c) = ' f r( a ) ' f r(b)y(c)f ( a ,b)c-f ( a b ,c ) .

また,

' f r( a( b e ) )= ' f r( a ) ' f r( b e )-/( a ,b e )

f r( a ) ( ' f r( b ) ' f r( e )-f ( b ,e ) )-f ( a ,b e ) =,

第 8章

566

分離性と単純環

=" f r( a ) " f r( b ) " f r( c ) a f ( b ,c )-f ( a ,b e ) . こ れ ら を 比 較 し て 訂= 0 .I ところで,少を他の炉でおきかえたとき,

炉= ' I f '一g , と表わされるから,炉から定められる

gEC1(A,N)

/ ' Eか (A,N)は ,

f'(a,b)=炉 ( a )炉 ( b )一 炉 ( a b ) =( ' I f ' ( a )-g( a ) ) ( ' I f ' ( b )-g( b ) )-( ' I f ' ( a b )-g( a b ) ) = ' l f ' ( a ) ' l f ' ( b )一' I f ' ( a b )' I f ' ( a )g( b )+g( a b )-g( a ) ' I f ' ( b ) =f ( a ,b)-( o g ) ( a ,b ) より,が (A,N)を法として かくして,

fの属する

fと同じ剰余類に属する.

Cは ) EH2(A,N)が確定する.そして次が成り立つ.

定理 8 . 9 A をK 線 型 環 N を両側 AJK加群とする.そのとき, N を複零核とする A の拡大冗: R→ A について,

cほ ) =0⇔ 冗 が 分 裂 証明

(=り

上の記号で少から定められた

J=og(gec 1C A ,N))であれば,

祝=沙一 gの定める 2次コサイクルは上の計算から 0 . したがって

0= y ' ( a ) y ' ( b ) y ' ( a b )

( a ,bEA).

ゆえに炉は線型環としての冗の右逆準同型であり,冗は分裂する. (←)

線型環としての冗の右逆準同型少をとれば,その定める 2次コサイ

クルは 0である.'

f ) 群のコホモロジ一 (乗法)群 G を固定する. ( 左 ) G加 群

Aに対し, K次コホモロジ一群とよばれる可換群 Hk(G,A )を具体

的に構成する ( Eilenberg-MacLane). 注意今日のホモロジ一代数の意味では, Extz 〈 G〉k ( Z ,M)に他ならない(本講座の“ホ モロジ一代数 I , ,を参照). ここでは特に k=2の場合に, よじれ群環を含む‘一般接合積’ との関係を明らかにする. 本講での応用の便宜上, G 加 群 A の加法を乗法に書きかえよう.

したがって,

与えられるものは,可換乗法群 A とその自己同型群 AutAへの準同型

5 6 7

§8.1 準 備

a : G一→ AutA である.

(J

( a ( s ) : え一→ S A )

が与えられることを, G は A に作用するといい表わす.

Kera=Gのとき,作用は自明であるという . Gと Aが独立に与えられたとき 7 .1 ,c )の は,この自明な作用があるとみなされる.以下の考察は,その意味で § 拡張である.

Kera={ l a }のとき,作用は忠実であるという . Gがはじめから A の自己同型 8 .3 ,f )で 用 い ら の群であるとき,そのまま G は忠実に作用する.この場合が § れるだろう. 整数 k~O に対し,写像 Gk→ A 全体のつくる可換乗法群をい (G, A )とする.

ただし C 0 ( G ,A}=Aとみなす. 次に,準同型

: ; が Ck(G,A) —• Ck+1(G,A) を次のように定める.

J ・ f ( / , ・ ・

(町) ( s , 。・ ・ ・ ,s 心= 8 0 / ( s 1 ,・ ・ , ・s k ) 本講では

s i 1 s i ,・ ・ ・ ) ( 一l ) i j ( s 。 ,・ ・, ・S k 1 ) 2とし, R=R/]2とお0 について

Mm(K)@A竺 Mm,(K)@A'.,

595

§8.3 中心的単純環

この命題は D,D'を表に出さないなお, ( 8 .71) より, Mm(A)~M町 (A') と表

注意

わして忍よい.

[証明] ( 8 .7 3 )と ( 8 .2 1 )により, Mm(K)0A声 Mmn(K)0D, Mm1(K)0A'

=Mm1n1(K)0D'. ゆえに, D=D'⇒ m=n',m'=nとおいて Mm(K)0 A=Mm1(K)⑳ A ' . 逆に, Mm(K)RA=Mm'ぽ慮 A 'ならば定理 7 . 2 7の系 1より D=D'.I 上の条件 ( s,D=D')を満たす A,A'は相似 (similar)であるといい, A-A' と書き表わそう.

この関係は同値関係の 3法則 ( § 1 .2 ,c ) )を満たす.

問8 . 2 9 反射・推移・対称の 3法則を確認せよ.ー一 特に, K 上有限次元の中心的単純環の間で上の相似の関係を考え,同値類全体

A ]で表わし, A の Brauer類 の集合を B(K)で表わす . Aの属する同値類を [ とよぶ. 注意

な い .

'K上有限次元の中心的単純環の全体’などというものを‘集合’とよぶことはでき n = l ,2 ,・・・)の部分線型環 しかし,たとえば正則表現によって完全行列環 Mn(K) (

に同型な忍のばかりだから,その範囲で同値類別すればよい.

以下 B(K)に可換群の構造を入れよう.

. 3 2の系の ( i i )により,中心的単純環のテンソ Jレ 積 は 再 び 中 心 的 単 まず定理 8 純環であった.そして次元の有限性も保たれる.

( 8 .74)・.

A-B, A'-B' ⇒

さらに

A0A'-B ⑳B ' .

[証明 J Mm(K)0A=Mn(K)0B, Mm1(K)0A'=Mn1(K)0B'

⇒ Mmm1(K)⑧ A⑧ A'=M ,(K)0B ⑧B ' . 血

したがって B(K)の元 ( B r a u e r類)の積が,代表元のテンソ Jレ積で定められる.

( 8 .7 5 )

[ A ][ B J= [A0B].

この乗法は,Rの法則の反映として,結合・交換法則を満たす.

また, Mn(K)

,…)の属する類 [KJは単位元であり,定理 8 . 3 3の系により [AJ[A0]= ( n = l ,2

旦豆

したがって B(K)は可換群となる.これを K の B rauer群という.

B(K)の定義により,その各元は K 上 有 限 次 元 の 中 心 的 体 を 含 む . そ こ で B(K)の構造を調べることは,このような体がどのくらいあり,それらのテンソ Jレ積がどんな構造をもつかを調べることに帰着するのである.

例8 . 2 0 代 数 的 閉 体 K に対し, B(K)={ [ K J }(単位群).

第 8章

596

[証明]

分離性と単純環

補題 7 . 3による.'

例8 . 2 1 実 数 体 R に対し, B(R)={ [ R J ,[HJ}(位数 2 ) . 位 数 2の 元 [HJ をもつことは例 8 .1 9で示した.そこで“体であるような R 上の有限次元線型環 は R,C,Hのどれかに R 同型"( F r o b e n i u s )を示せばよい.証明は d )で行う. 例8 . 2 2 有限体 F に対し, B(F)={ [ F ] } . F上有限次元の線型環は有限でぁ

Wedderburn)を 示 せ ば よ い . 証 明 は d )で 行 るから,“有限体は可換である"( ぅ.—

本講としては程度をこえるが,以下の例を掲げておこう.

. 2 3 代数的閉体上超越次数 1の拡大体 K に対し, B(K)={ [ K J } . 例8 例8 . 2 4 離散付値環 R の剰余体が有限であって, Rの分数体 K が付値の定め る位相に関して‘完備’のとき, B(K)~Q/Z (加法群).

. 2 5 有限次代数体 K の‘付値の完全系 ' ( v i )をとり, 例8

m による K の‘完備

化’を Kiとすれば,次の完全系列が定まる.

1 — B(K) ―信) B(Ki)二 Q/Z』 ここで,有限個の i について Ki~C または R であり,それぞれ JB(Ki)J=l l 例

8 .2 0 )または 2(例 8 .2 1 ) . その他の Ki について B(Ki)~Q/Z ( 例8 .2 4 ) . そこで,

(Ki)→ Q/Zにより,冗 ( ( X i ) ) =LXiと定める. 自然な埋め込み B . 2 6 1の幕根をすべて含む(無限次)代数体 K に対し, B(K)={ [ K J } . 例8 c ) 自己同型

kolem-Noetherの定理は有用である. 次の一般化された S 定理 8 .3 4 A を可換体 K 上の A r t i n中 心 的 単 純 環 B を そ の 有 限 次 元単純部分線型環とする.そのとき,任意の線型環(単)準同型 a:B→ A は A の内部自己同型に延長できる. B の単純性より環準同型 B→ A は常に単準同型である .Aの環としての内部自 已同型(可逆元 U による対応 a→ uau-1)は常に線型環としての自己同型である. 注意

証明

或る K 上中心的な体 D の上の有限次元線型空間 Vをとり,

A =EndD(V) と仮定してもよい(定理 7 .2 7 ) .

5 9 7

§ 8 .3 中心的単純環

BRDは A r t i n単純環である.実際, B が有限次元なので体 D上 有 限 次 元 と なって A r t i n環である.単純性は定理 8 .32の系の ( i )による.

B 4 Aによって A 加 群 V をB加群とみれば, B と D の作用は可換だから,

Vは B⑧ D 加群とみなされる: (bRd泣 =b (心) = d (加)

( b . EB ,む D , XEV ) .

ところで, a:B→ A によって V を B加群とみたものを v ( !と記す ( aによる

A 加群 Vの係数制限).そのとき v ( !も BRD加群とみなされる: (bRd)x= a ( b ) ( 心) = d ( a ( b )砂 A r t i n単純環 BRD上の加群

v ,v ( !の長さを

l ,l ( !とすれば, BRD上 の 単 純

加群(同型を無視して一意的)の D 上 の 次 元 を rとするとき, lr=dimD( V)=

dim瓜 V u )= l u r . ゆえに l = l u , したがって B®D 加群として v~v(! ・ ゆえに,加法群 Vの自己同型

U

があって

u( b( d x ) )= a( b ) ( d u( x ) )

( bEB , dED , xEV).

特に b=lとして, u (dx)=du(x)だから uEEnd瓜 V)=A. また, d=lとし

( b ( x ) )= a ( b ) ( u ( x ) ). .Vは忠実 A 加群だから, ub=a(b)u( bEB)を得る. て , u ゆえに a (b)=ubu―1(bEB).I



可換体上の有限次元中心的単純環の自己同型は,すべて内部自己同

型である.

証明

定理において A=Bとする. I

注意微分に関して系と対照的な事実はすでに示した(例 8 . 1 5 ) . それは,上の 定理の 9

応用として導くこと忍できる ( § 8 .3問題 4 ) . 例8 .2 7( D i c k s o n ) 体 D の中心を K とする. a,beDが K 上 代 数 的 で 同 じ

= d a d : 1 ; 最小多項式をもてば,或る dEDがあって b [証明]

仮定より,対応 a~b によって, K 線型環として K[a]~K[b].

. 3 4によって, れは定理 8

Dの内部自己同型に延長される.I

d ) 極大可換部分環(体) はじめは一般的な考察をする.

.3 5 R を環, Sをその可換部分環とする.そのとき 定理 8



第 8章 分 離 性 と 単 純 環

598

( i )

sを含む R の極大可換部分環が存在し,それは中心 C(R)を含む.なお,

Rが体ならば,極大可換部分環は極大可換部分体である. ( i i ) 証明

sが可換部分体ならば, Sを含む R の極大可換部分体が存在する. ( i ) sを含む可換部分環全体外の全順序部分集合 , J Jキ ¢ をとり, T=

UJJとおけば, TEA ( 例4 . 3 9参照). よって外は極大元 L を含む ( Z o r nの 補 題 ) . LUC(R) の生成する部分環は可換なので C(R)~L.

Rが体のとき,任意の 0キaELに対し, ax=xa. ゆえに xa-1=a-1x(xEL). よって, L [ a 1 ]は可換で,極大性から a―1EL[a-1]~L. ゆえに L は体である.

( i i )

sを含む可換部分体全体を外として,上と同様である.I

特に,可換環

K 上の線型環に対し,その極大可換部分環は部分線型環である

ことに注意する. 極大可換性は中心化環で判定される.

. 3 6 環 R の部分環 L について次の 2条件は同値である. 定理 8 ( i ) L は R の極大可換部分環である. ( i i ) CR(L)= L . 証明

( i )=?( i i ) 可換性からら (L)~L. 逆に, aeC 瓜L)に 対 し て L[aJ

が可換だから,極大性より aEL[a]~L. ゆえに CR(L)~L.

( i i )⇒ ( i ) 可換性は当然である .L を含む可換部分環 L' をとれば, L'~

ら( L )=L.I さて,次は基本的である.

定理 8 . 3 7 可換体 K 上の中心的単純環 A の部分線型環 L が可換体で,

A が左 L加群として有限次元とする.そのとき A は K 加 群 と し て も 有 限次元であり,次の 3条件は互いに同値である.

(i) Lは A の極大可換部分環である. ( i i ) CA(L)=L. ( i i i ) [A:L]=[ L :KJ, すなわち [A: KJ=[L: KJ戻 oo. また,これらが成り立つとき, AL~Mn(L).

ただし [A:KJ=n2.

注 意 はじめから [A:KJdeg 八>••• であるから,或る

e>Oについて (JP・EKとなる.そして f(X)

=XP•-op•= (Xー (})P•. K 同型 < J :E→ 9 のひき起す k 準 同 型 E[X]→ Q[XJによって, /(X)EK[XJは不 変だから,

(X ー < J( 0 ) )p• = (X— 0) 匹ゅえに

え四 =0==>ぇ i=O(":Rが整域). よって, a心ぃ・・・,anXnEF'は線型独立. 4 Qn の有限生成部分加群M は,捩れがなXー1 ER 」に注意.(=的 a,beK,Rのとき, a 1 ERゅぇ, abeRならば bERとなるから abeK,R. (~)xeK\R,x ― 1¢R ならば, 1= ぷ

tーlEK,Rとなり矛盾.

3 ( i )は定義のいいかえ. ( i i ) ( = = = ' ? ) V () 冗 =1となる冗 ERの剰

余 類 戸 K*/Uが生成元. (~)同型 (K*/U, x)~(Z, 十)を,• ある冗 ERに つ い て 元 → 1 となるようにえらび,写像 v:K*→ Z を 自 然 に 定 め て 正 規 離 散 付 値 Vを と れ ば R={a

eKjv(a)~O}. 4 付値環 V の極大イデアルを m(V)と書く. VeVに m(V)ESpecR を対応させるとき, j : > = m( R p )( pESpecR),V=Rm(V)(VEV)が成り立つ. 6

( = 衿c )の

( 6 ) . (~)分数イデアルは R のイデアルと R 同型であり,それは R の Noether 性より 有限生成:

?XE炉 に 対 し , ん (a)=axとおいてん Ea*が定まる.血→妬は R準同型・

hx=O7 ' . ) ょらば X=如 ( 1 ) = 0 . hEa*に対し, x=h(l)とおけばら( a )=ax=ah(l)=み ( a ) . 8 条件を満たす整域 R のイデアル aキ0が可逆ならばよい ( d )の ( I I I ) ) . aの元 aキ0をと れば,

(a)~a より,あるイデアル C について (a)

= a c . :.R=a(a古) . :.aー1c~aー i. :.R

~aa-1. : . R = a a 1 . 9 (~)定理 5. 5( i i ) .( = = = ' ? ) 定 理5 .4より, R の イ デ ア ル aか ら 可 除 R加 群 Qへの R準同型 g 'を R準 同 型 g:R→Qに 延 長 で き れ ば よ い . aa-1=Rより

Laibi=l( a iE a ,b iEa 1 ) .可除性より g ' ( a i )=a 凸 ( 叩 eQ). g(a)=aL(a 必)四と R 準同 型 gを定めれば, aeaのとき g ( a )=L ( a b i )g ' (釘 )= g'(Laaibi)=g'(a). 1 0 a2= ((2 —←二) / 2 ) ' 6 ,a3=( ( 5十2に二耳) / 3 ) c ,が =( 5 + 2 . / 二 )R . (注意) a ,O ,C半R .

§ 6 .4 I

R/p~k[YJ が整域なので P は素.尺¢炉, Y¢p, 尺 Y=Z2E炉なので炉は準素でない.

2 pは Z[X]の素元であり,伍 C f i )叫叉 ¢ C f i )= . ; び戸, i 尺=如 ( p ) n . 3 S=_k[X,YJの 素イデアル SYにより, p=SYnRと表され, Pは素.炉 =(X2戸 , XY3,Y 4 ,Yりであり,

x2¢P,y2げ な の で 炉 は 準 素 で な い . Y=XY/XeRv ゆぇ S~Rv であり, Rv=Ssy. ょ って p < 2 > =Y2S8ynR=Y2SnR=(Y叫y a ) .5 が( R )=nSpec( R )(定理 6 . 4 5の系)を利

用. 6 ここでは e )の推論を用いない ( I )を仮定して ( I ) "を示そう. L=k[Xi,・ ・ ,X n]が

[ X i ,. . .,Xn]の部分集合 F={f(X1,…,Xn)I f ( x 1 ,・ ・ ・ , 叩 ) =0}をとれば, 体とし,整式環 k ( F )= F : l l1ゅぇ, ある Yv・ ・ ・ , 釦 Ekがあって任意の fE( F )に 対 し て f ( y i ,・ ・ ・ ,Y n )=0. よって K線型環としての全準同型 L=k[ 叩,…,Xn]→ k [ 狐...,Yn]~k ( x 仕→初)が定まる.

L が体なので,これは同型であり, L は K上代数的. d)で ( I I ) = = = ' ?( I ) ,( I ) " = = = ' ?( I I ) / /を 示したので,上と合わせて (II)= 只I ) " ,( I I ) " . 7 まず定理 6 . 4と類似に,「整域 A の拡 大整域 B が A 上競のとき, A が強整域 ~B が強整域」が成り立つ.ここでは~ を示

[b-1]( bEB)と表され, bが A上 整 な の で 籾 +a1bnー1+. . .十an= そう . Bの分数体 Lが B

627

解答・ヒント

0( a iEA,a n = I =〇)と表され, b 1は K=A[aご]上整である .Bも K 上整であるから, L がK上整である . Lが体なので K も体であり(定理 6 . 4 ) , A は強整域.さて, H i l b e r t 環 R の整拡大 Sの任意の強素イデア lレqが極大であることを示せばよい(定理 6 .5 0 ) .強 整 域 B=S/qは A=R/(qnR)の整拡大であるから,上記より A も 強 整 域 す な わ ち qnR が強素イデアル.

よって qnRは極大(定理 6 . 5 0 )で , A が体.ゆえに B が体(定理 6 . 4 )で ,

qは極大. 8 A,Bは H i l b e r t環(例 6 . 4 1 )であるから,定理 6 . 5 0の系 2による. § 6 .5 6 p~RXY が素イデアル. 8 n>Oとして帰納法による.極小イデアル全体を虹・・・, %とする(定理 6 . 5 2の系) .p牢q iなので加仁 q lU ...U qm( 補題 6 .4 ) . ある a 1E+ Jをとって

a 1E tq i .R=R/( a 1 )の素イデアル 1 5 = p /(a1) は高さ ~n ー 1. 実際, R の 素 イ デ ア ル の 降 鎖 柘砕~-··~ 加 3佑があれば,これは延長できて ( ・ : p n = l = q i )Pの高さ

よって帰納法の仮定より,

>nとなってしまう.

Eはあるみ,・・・,む ERの生成するイデアルに関する極小素イデ

a i ,… ,a n )に関する極小素イデアル. 9 (=筍定理 6 .63(n=l). ({=)a よって Pは (

アル.

正規準素イデアル分解)とすれば,定理 6 . 6 3より A s s ( R / a )={./面,…,面面} =q1n. . .nqn(

0 ( X ,Y)n( X ,Z)n( X ,Y ,Z ) 2 . だから n=l. 1 § 6 .6

2 準同型 f:A→ 9の核 pESpecA をとり,単準同型 }:A/p→ 9を引き起す. p=qn .6 8 ) , B/qが体 A/pの代数的拡大体とみなせるので, A となる qESpecBをとれば(定理 6

Jは単準同型

B/q→ 9に延長され, fの延長 B → 9を得る.3 ( i ) aEAに対し,単整

T I(X-a(a))EA町X]をとれば f(a)=0. (ii) 任 意 の 伽 柘 ePをとる .ae柘 見 °

式 f(X)=

aeG

に対し I la(a)E 柘 nAG=p~ 柘なので,ある aeGに つ い て a ( a )E 辟よって柘~! aEG

(柘).補題 6 . 4より,ある aeGについて P ぷa (柘 ) .a(p2)nA=pなので柘 =a( 柘)(定理

6 .6 8 ( i ) ) .6 ( i )⇒ ( i i ){ qESpecBIBp~q 砂}の極小元 q は Bq に関する極小素イデア ルであり, Pの上にある. (ii)= 只i )Bpに関する極小素イデア)レ qに対し, qnA=柘と すれば,

P~P1·

ある q'~q をとって q'nA=p.

このとき Bp~q'~q.

: . q ' = q .

章末

5 A[X]qは , 0でない A の元が可逆であることを用いて主イデアル整域であ , り また 00

§ 6 .3 ,a ) ) . 6 Rpが R のただ一つの極大イデアルであり, n R 炉 =0 体でない局所環 ( n=O

( § 6 . 3 , a )参照) .7 V の極大イデア;レ m をとり, p=mnRとお