ガロア理論12講 概念と直観でとらえる現代数学入門 Galois Theory 4044006822, 9784044006822

深くて美しくて難しい……ガロア理論の本質を今度こそつかむ (目次) 第0章 序 ガロア理論とは何か 1 解の公式 2 公式の意味 3 解の入替え・置換 4 不可能の証明 5 ガロア理論 第1章 複素数と方程式 1 複素数 2 代数方程式

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ガロア理論12講 概念と直観でとらえる現代数学入門 Galois Theory
 4044006822, 9784044006822

Table of contents :
表紙
はじめに
目次
序章 ガロア理論とは何か?
1 解の公式
2 公式の意味
3 解の入れ換え・置換
4 不可能の証明
5 ガロア理論
第1章 複素数と方程式
1 複素数
1.1 数の体
1.2 部分体
1.3 複素数
1.4 複素数平面
2 代数方程式
2.1 多項式
2.2 代入
2.3 代数方程式
2.4 代数学の基本定理
2.5 付録・代数学の基本定理の証明
第2章 体の代数拡大
1 既約多項式
1.1 多項式の割り算
1.2 既約多項式
2 代数拡大
2.1 代数的要素
2.2 単拡大
2.3 代数拡大
2.4 付録・ガウスの補題の証明
2.5 付録・アイゼンシュタイン既約判定法の証明
第3章 方程式のガロア群
1 方程式のガロア群とは何か?
1.1 4次方程式の例
1.2 ガロア群のインフォーマルな定義
1.3 ガロア群の計算
2 方程式のガロア群
2.1 最小分解体
2.2 写像の概念
2.3 体の自己同型
2.4 ガロア群のフォーマルな定義
第4章 群論(1)
1 群
1.1 群の定義
1.2 さまざまな群
2 対称群(1)
2.1 n個の文字の置換
2.2 置換の合成
2.3 恒等置換と逆置換
2.4 巡回置換と互換
3 部分群とコセット分解
3.1 部分群
3.2 コセット分解
3.3 位数とラグランジュの定理
第5章 群論(2)
1 準同型と正規部分群
1.1 群準同型
1.2 像と核
1.3 内部自己同型
1.4 正規部分群
2 対象群(2)
2.1 置換の符号
2.2 偶置換と奇置換
2.3 置換の型
2.4 対称群の正規部分群
3 正規部分群と剰余群
3.1 剰余群
3.2 標準的射影と準同型定理
3.3 例:S4/K
第6章 ガロア拡大とガロア群
1 体の自己同型
1.1 体の準同型
1.2 代数閉体と代数閉包
1.3 自己同型と共役
1.4 自己同型の計算例
2 ガロア拡大
2.1 ガロア拡大とガロア群
2.2 ガロア拡大の構造
第7章 ガロア対応(1)
1 ガロア理論の基本定理
1.1 【復習】ガロア拡大
1.2 ガロア拡大の例
1.3 ガロア群とガロア拡大
2 ガロア対応
2.1 ガロア理論の基本定理
2.2 ガロア対応の計算例
2.3 ガロア群の部分群
2.4 E/Qの中間体
2.5 E/Qにおけるガロア対応
第8章 ガロア対応(2)
1 ガロア対応と2次方程式
1.1 2次方程式の解法
2 ガロア対応と3次方程式
2.1 3次対称群
2.2 3次方程式
第9章 べき根拡大
1 べき根型の方程式
1.1 1のべき根
1.2 円分多項式と円分拡大
1.3 べき根型の方程式
2 クンマー拡大の理論
2.1 巡回拡大
2.2 べき根拡大と巡回拡大
2.3 3次方程式の解法再訪
第10章 方程式の可解性(1)
1 4次方程式の解法
1.1 4次方程式
2 代数的可解性
2.1 代数的解法
2.2 代数的解法の例
2.3 代数的可解性の条件
第11章 方程式の可解性(2)
1 代数的可解性
1.1 代数的可解性の条件・補足1
1.2 代数的可解性の条件・補足2
2 アーベル・ルフィニの定理
2.1 アーベル・ルフィニの定理
2.2 交換子群
2.3 非可解性の証明
第12章 作図問題
1 作図
1.1 作図可能な点
1.2 作図可能な点の特徴付け
2 作図問題
2.1 角の3等分問題
2.2 立方体の倍積問題
2.3 正多角形の作図可能性
演習問題略解
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
第9章
第10・11章
第12章
文献案内
索引
奥付

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加 藤 文







概念と直観でとら 現代数学入門 〇 汉 1〇

1 8

卩11 1X1111

I II :



ア 若 論

^001^^

1

12

「群」や「体」などの抽象的な代数学

^

概念を用いて展開されるガロア理論。

理解することは容易ではないが、

会得した人は、 その深さと美しさに感動し、 大きな達成感を味わうことができるだろう。

本書は、 理論の本質をできるだけ簡潔に素描し、 現代数学のパワーにも触れることがテーマ。

直観的にその世界を体得できるよう紹介する,

ガロア理論 12 講 概念と直観でとらえる現代数学入門

〇 1〇 1 8

^

卩11111111 & !' II

〇 V

^

310

^

加 藤 文 兀

《 1 八001ひ獻

ガロア理論 12 講 概念と直観でとらえる現代数学入門

はじめに

この本の内容は 2020 年 4 月から 2021 年 3 月まで「1 予備校ガロア理論特

^

別講義」で筆者が行った講義の内容と,そこで用いたレジュメがもとになって いる。ガロア理論とは 19 世紀前半のエヴァレスト

一般に よるもので, 2 次方程式や 3 次方程式,

.ガロア(1811~ 1832) に

次方程式などの 代数方程式」

「 ” がいつ代数的に解けるかという問題に解答を与える理論である。ガロア理論は

現代数学の基底をなす重要理論であり, しかもその中でも花形でもあり, 初学

者から数学愛好家にいたるまで多くのファンを魅了してきた0 同時にそれは, 現代の主要な抽象代数学にも通底する深い内容をもち,それだけに初等的な代

ハイレベルの数学理論としても有名だ。 数学とは一線を画した,

「 5 次以上の一般代数方程式は代数的な解の公式をもたない」というアーべ

ル, ルフイニの定理にも典型的に見られるように,初めてこの理論に触れる人

は, その意外性に心を打たれる。そしてその意外性は,なにしろ理論の対象が

ある程度数学に 代数方程式という比較的に初等的なものであることもあって, 意欲的な人であれば誰でも感じることができる。しかし, それは理論自体が初

等的であるということを意味しない。むしろガロア理論は群や体などの抽象的 これを理解することはな な代数学の概念が活躍する高水準の数学理論であり,

かなか難しい。それだけにガロア理論を体得できた人は,その美しさと深さに 感動し,大きな達成感を味わうことができるだろう。そういう意味でも, 代数 誰でもチャレンジ 方程式のガロア理論は大変チャレンジングな理論であるし,

するだけの価値が十分にある理論だとも言えるだろう。 そのためガロア理論への入門的な書籍は多く, そのうちのいくつかは本書で 3

も参考図書として巻末に挙げている。その中にあって筆者による「X 予備校 ガロア理論特別講義」の(したがって本書の)立場は,

參理論の本質をできるだけ簡潔に素描すること 同時に現代数学のフレーバーも味わえること

を目指すというものである。 できるだけ本質をそのまま 最初の点が意味するところは,少々荒削りでも,

の形でお見せしたいということだ。特に本書の読者の中には数学に意欲的な中 高生や, 専門課程での数学を学んだことのない数学愛好家も多いだろう。そこ 技術的に困難な点は(それが重要定理の証明であっても)思い切って省略 で,

し,ガロア理論という理論の骨格をできるだけ直観的に体得できるようなもの を目指している。他方,2 番目の「現代数学のフレーバー」という観点はこれ そ できるだけ現代数学の概念や議論の精密さ, とは少々矛盾する立場であり,

してそのパワーにも触れてほしいというものである。 そのため, 特 本書ではガロア理論の各ステップをできるだけ網羅的に論じ, にそこで用いられる群や置換,正規部分群, 体拡大などの現代的な概念は省略

せず,例題や演習問題をふんだんに用いて丁寧に説明することを目指した。そ

の反面(例えばガロア拡大の特徴付けの証明など)技術的に困難な議論は省略 理論の本質的な「姿」の素描を重視したいという立場をとっている。 してでも,

以上のような筆者の目論見が果たして有意義なものか, そして筆者が望んだ ように本書がガロア理論の素描的本質を示しながら現代数学のフレーバーをも

伝えることに成功しているかどうかは読者の判断にお任せするしかないが,本

書のような試みを通じて(そして他の優れた本によっても)ガロア理論のよう な高級な数学の理論に, より多くの人々が親しめるようになれば素晴らしいこ とであるし, たとえ筆者の試みが不成功に終わったとしても筆者の喜びとする

ところである。 2022 年 6 月加藤文元

目次

はじめに

3

序章ガロア理論とは何か ?

11

1 解の公式

11

2 公式の意味

13

置換 3 解の入れ換え ,

14

4 不可能の証明

15

5 ガロア理論

15

第 1章複素数と方程式 1 複素数

17 17

数の体

17

1.2 部分体 1.3 複素数

19

1.1

1.4

複素数平面

21

24

2 代数方程式

25

2.1 多項式

25

2.2 代入 2.3 代数方程式 2.4 代数学の基本定理 代数学の基本定理の証明 2.5 付録 ,

28

29 31

31

第 2 章体の代数拡大

35

1 既約多項式

35

1.1 多項式の割り算

35

1.2 既約多項式

38

2 代数拡大

42 •

2.1 代数的要素 2.2 単拡大

42 46

2.3 代数拡大 ガウスの補題の証明 2.4 付録 ,

50 51



2.5 付録 アイゼンシュタイン既約判定法の証明

第 3 章方程式のガロア群

54

57

1 方程式のガロア群とは何か ?

57

1.14 次方程式の例

57

1.2 ガロア群のインフォーマルな定義 1.3 ガロア群の計算

58

2 方程式のガロア群

59 ■

61

2.1 最小分解体

61

2.2 写像の概念 2.3 体の自己同型

68

64

2.4 ガロア群のフォーマルな定義

第 4 章群論 1 群



75 75

1.1 群の定義

75

1.2 さまざまな群

80

(1) 2 対称群

84

打個の文字の置換 置換の合成 2.2 2.3 恒等置換と逆置換

84

87

2.4 巡回置換と互換

89

3 部分群とコセット分解

90

2.1

3.1

部分群

90

3.2 コセツト分解 3.3 位数とラグランジュの定理

第 5 章群論

85



92 95

99

1 準同型と正規部分群

100

群準同型 1.2 像と核 1.3 内部自己同型 1.4 正規部分群

100

1.1

104 106 108

(2 ) 2 対象群

110

2.1 置換の符号

110

偶置換と奇置換

114

2.3 置換の型 2.4 対称群の正規部分群

117

3 正規部分群と剰余群

122

3.1 剰余群 3.2 標準的射影と準同型定理

122

2.2

120

124

3.3 例 : 54/

^

第 6 章ガロア拡大とガロア群

126

129

1 体の自己同型

129

1.1 体の準同型

129

1.2 代数閉体と代数閉包 1.3 自己同型と共役 1.4 自己同型の計算例

132

2 ガロア拡大

139

2.1 ガロア拡大とガロア群

139

2.2 ガロア拡大の構造

141

第 7 章ガロア対応 (1)

133

135

145

1 ガロア理論の基本定理

145

1.1 【復習】 ガロア拡大

145

1.2 ガロア拡大の例 1.3 ガロア群とガロア拡大

145 148

2 ガロア対応

152

2.1 ガロア理論の基本定理

152

2.2 ガロア対応の計算例

156

2.3 ガロア群の部分群 2.4 石/ 〇の中間体

156 157

2.5 五/ 〇におけるガロア対応

159

第 8 章ガロア対応 (2)

161

1 ガロア対応と 2 次方程式

161

1.12 次方程式の解法

162

2 ガロア対応と 3 次方程式

165

2.13 次対称群 2.2 3 次方程式

165

第 9 章べき根拡大

167

173

1 べき根型の方程式

174

1.11 のべき根

174

1.2 円分多項式と円分拡大 1.3 べき根型の方程式

176

2 クンマー拡大の理論

180

2.1 巡回拡大 2.2 べき根拡大と巡回拡大

180

2.3 3 次方程式の解法再訪

182

第 1〇章方程式の可解性(1)

178

180

185

14 次方程式の解法

185

1.14 次方程式

185

2 代数的可解性

190

2.1 代数的解法

190

2.2 代数的解法の例

191

2.3 代数的可解性の条件

193

第 11章方程式の可解性(2)

197

1 代数的可解性

197

補足 1 1.1 代数的可解性の条件 , 1.2

代数的可解性の条件

, 補足

198

2

199

.

2 アーベル ルフイニの定理

200

-

2.1 アーベル ルフイニの定理 2.2 交換子群

202

2.3 非可解性の証明

204

200

第 12 章作図問題

207

1 作図

207

1.1 作図可能な点

207

1.2

作図可能な点の特徴付け

210

2 作図問題

213

角の 3 等分問題 2.2 立方体の倍積問題 2.3 正多角形の作図可能性

213

2.1

213

214

演習問題略解 217

文献案内 235

索引

237

序 章 ガ ロ ア 理 論 と は 何 か?

1 解の公式 中学校で学ぶ。 2 次方程式の解の公式は, 广2

次方程式の解の公式

2 次方程式 x2

+ 0X +

^

)=

0 の解はズニ

— 〇; 士パ 一 4 2

"

もちろん, 解の公式は 2 次方程式の場合に限らない。例えば,3 次方程式の

解の公式というものもある。

3 次方程式の解の公式(カルダーノの公式)

^

3 次方程式 3



を考える0

2 十 6ズ 十似 :

+ ¢= 0

として, =V — ッについての式に変形すると , |

X

ゲ十 /

^

2



+ マ ニ 〇 I /> = 6 — -

9

となる(ッの 2 次の項が消えていることに注意)。X を求めるにはッ を求めればよい。まず,2 についての 2 次方程式

22 十 2792 — 27力3 二 0 を解いて,その 2 つの解の 3 乗根 /1, # を / ぶ。このとき求める解は

^

= — 3/) となるように選

11

ス十 //

3

X

すなわち

+ 11 — 〇, 3

このように, 3 次方程式の解の公式は 3

という形でいっぺんに書けるものだが, 3 乗根であるグぴゃ奸は注意して選 その部分は言葉で説明しなければならない。だから, ばなければならないので,

式を用いた 3 次方程式の解の公式は「式」でいっぺんに書こうとはしないで,

「手順」と思った方がよい。そういう「手順」まで含めて,ここでは「公式」 と呼んでいる。 これについても, 一応 3 次方程式の次は 4 次方程式を考えるべきであるが,

「解の公式」がある。



/

4 次方程式の解の公式(フェラーリの公式) 4 次方程式 4



を考える。1=

^



十似3 十

1

2

十以十ゴ = 0

として, ッについての式に変形すると,



-

ッ4 十妙2 十 + ¢ 1ズ 十 …

の 解 と い う こ と に な る が,そ の 次 数

1

^

!

^



は /: ! 上 一 次 独 立 で あ る。 実 際,

0 と す る と, は 尺 上 の 多 項 式

+ ¢«-)

9

'

“ -

1ゲ

01



の 最 小 多 項 式 バ ズ)の 次 数 ゴ よ り も 小 な の で,( ) = 0 (多 項 式

“し て 0 と い う 意 味。第 1章 注 意 2 . 1.3 を 参 照)で な け^れ ば な ら な い。 と

¢0 = ¢! す な わ ち,

0(1~ 1

^

0 で あ る。こ れ は 1, 仏

〆— …,

1

は尺

上 一 次 独 立 で あ る こ と を 示 し て い る。

广一例 2.2.3 (1) /2 の 〇 上 の 最 小 多 項 式 は ズ2 — 2 で あ る。 よ っ て, [ 2 ] =[(1+ 1)/2 \ 〇,6 6 0}で あ る。

^^

^

(2) 虚 数 単 位 / の 〇 上 の 最 小 多 項 式 は ゼ + 1 で あ る。 よ っ て, ( )で あ る。 6已 | 0卜'] 二[〇 + 51161, 3 (3) 2 の 〇 上 の 最 小 多 項 式 は; I — 2 で あ る(演 習 問 題 2-5)。よ っ て, :

^^ ^ ^^ ^^ ^

գ[

] =[

+

)

2

+

2 ^ \(1,5,¢£ 0}で あ る。

第 1章 演 習 問 題 1-2 で は,1¢ [ゾ

¢2}が 体 で あ る こ と, ] (〇 十 ゐ#|〇,6 £ す な わ ち 0(! / ) に 等 し い こ と を 確 か め た。ま た,第 1章 演 習 問 題 1-4 で は, が 体 で あ る こ と,す な わ ち 似 〇 に 等 し い こ と を 確 レ ] 二 〇 + 以 卜, か め た。実 は,次 の 定 理 が 示 す よ う に,一 般 に が 尺 上 代 数 的 な ら ば 二

"



欠 の 要 素 と の 四 則 演 算 で 作 ら れ る 数 は,実 尺 卜] 二 尺(び )で あ る。つ ま り,



は /: ! の要素とぴのたし算 , ひき算 ^ かけ算だけでも作ることができるという こ と だ。

48

第2 章体の代数拡大

.

定理 2.2 4

^

:

,尺レ]

/ 上代数的ならば 〇 が!



/!( :



である。

ひき算 , かけ算で閉じており, 以〇)は四則演算で閉 11 尺レ] はたし算 ,

^

題意の等式を示すには,尺レ] の 0 でない任意の要素が じている。よって,

尺レ] の中で逆数をもつことを示せばよい。0

[〇] (

^

^^

数列

, 1 於,, … 0,

# 0)

とする。等比

/ 上の を考える。このとき, を十分に大きくとれば 1, …, ダの間に: が, だ,



関係式

¢ 2ダ十 0十 ¢ 1/? 十 ¢

(〇0,01,

。 の中の少なくともひとつは

… 十 ¢”/5”



# 0)

0

このような が存在する。実際,

ことができないならば 1, 谷3,…は尺[び] の中で無限次元の部分空間を張 汉铲,

ることになるが, これは不合理である。 尺レ] の次元は有限なので, そこで のような関係式で, が最小になるものをとる。このとき, (ホ) じ〇 # 0



である。実際, の両辺を /8 で割って,次数が (氺) 0 = 0 なら, これは >2 の最小性に矛盾する。 係式ができることになるが,

より小さい関



を変形すると, このとき, (氺)

だ-1

〇〇

1 (〇1十〇; 2 8十∼ 十 0 广 )



/ となるが, これはガの逆数ガー1 が ! 卜] の要素であることを示している。 :



以上をまとめると,次の定理になる。 定理 2,2,5

-

:上代数的とし, の尺上の最小多項式力(ズ)の次数をゴとす

01 を /!



49

: “ の形に一意的に書ける。とくに, 体であり,その元は 47 ページの (卞) 。このとき,尺レ] は /! の拡大 の尺上の次数と呼ばれる)

る(ゴは

/ 尺レ] は ! :上のべクトル空間としてゴ次元である。

尺 ⑷ の形の尺の拡大を単拡大という。

2.3

代数拡大

.

定義 2.3 1 (代数拡大)

^

/ 上代数的であると (1) 体の拡大五/六:において,任意の 已五が:



き, 五/尺は代数拡大であるという。

五が尺上のベクトル空間として有限 (2) 体の拡大丑/尺において,

次元であるとき, 拡大であるといい,その次元を 5/尺は有限(次) ! ] とか (忍//〇とか書き, 五/尺の拡大次数という。 [五:/:

.

次の定理は定理 2.2 5 の言い換えである。

, . 一定理 2.3 2

を尺上代数的とし,その尺上の最小多項式を々( ズ )とする。この

“とき尺(



! 上の有限次拡大で, )二尺レ] は /:



( 0 : 欠] = ¢168/» ) [尺《 が成り立つ。

次の定理が示すように,一般に,有限次拡大は代数拡大である。

广定理 2.3.3 尺上代 五/尺が有限次拡大なら, 五/尺は代数拡大である。とくに, ! 上の代数拡大である。 数的な元びによる単拡大尺レ)二尺[び] は /:

50

第 2 章体の代数拡大

.

任意のガ巳五が尺上代数的であることを示せばよい。これは定理

2.2 4 の証明の議論と同様に,次のように示される。等比数列 1, 汉妒, …



を考える。このとき, を十分に大きくとれば 1, 汉が, …, の間に尺上の



関係式

00

,

+ 010+ ひ ダ十 … 十 0 2

»

=0

(〇,ひ, ひの中の少なくともひとつは # 0) が存在する。実際,このような …, ことができないならば 1, ダ, …は五の中で無限次元の部分空間を張るこ だ,/?2,

とになるが, 五の次元は有限なので, これは不合理である。

このとき, /( 幻二ご〇 + 〇ズ十 … 十 (

これは 0 でない尺上の多 ”とすると, 項式で /(ガ) 0 である。よって, だは六:上代数的である。沒已五は任意であ

^





ったから, ! 上代数的であることが証明された。 以上で五の任意の元が /:



ガウスの補題の証明 2.4 付録 ,

.

ここでは, ガウスの補題(定理 1.2 3) の証明を与えよう。まず,次の補題

を示す。

.

補題 2.4 1

^

2レ] として,F ( x ) =

( x ) N ( x ) とする。素数 / が ^ F ( x ) のすベての係数を割り切るならば, 0 )のすベての係数

0 ( x1 /7( 4

^

)

^

力は

あるいは //( ズ)のすベての係数を割り切る。 を割り切るか,

。+ かズ十 … + 6;¢” /7 ズ ) = + Lx \ ^ ^^ ) ( F x — ^ + 01 X + … + 0 + ズ” ”

^( )

0

=6

0

( 0

»

-

… 51

とする。このとき,

«0 1)0 〇0, «1 6〇じ1十 61〇〇,

∼ , 6〇ご2 十 61〇1 十〇2ご。

-

02

一般に

+ 61

60

0*

^ ^

が成り立っ〇

- -1

^

6 1

ん-1〇1十〇(

^

0

衫十桃) (為二 0,1, …,

さて,補題を証明するために,その対偶を証明する。すなわち,素数 /( が

の少なくともひとつの係数を割り切らず,かつ 卩 つの係数を割り切らないとして, (

"

"

(1) の少なくともひと

の少なくともひとつの係数を割り切ら

ないことを示す。/) はん, んのどれかを割り切らない。よって, か, 彡で割 …, 《) で番号 / が最小のものをとる。同様に, り切れないか(/ = 0,1,…, 力で割

り切れない〇 左= /

…,)で番号プが最小のものをとる。このとき, 0'= 0,1, 紙

+7 とすると,

ぬ二

ひ十 … 十 62 -10+ 1 +; 6。 6¢ /+



… 十 6* 0



5 十か〇ノ十 ¢7

8

となるが,



,…, ケ! 5 は /) で割り切れる - は /) で割り切れるので, ( は /) で割り切れる , : 0 は /) で割り切れるので 0- , ,¢

參 60

,-



しかし, 山は /) で割り切れな 力は素数なので,6,0 は /) で割り切れないから, い。よって, /) は

( ズ)の少なくともひとつの係数 0* を割り切らないことがわ

かり,補題が証明された。

.

定理 1.2 3 を証明するために, 2 上の多項式 /( ズ ) 2レ] が, 〇上の定数で

ない多項式

^

二分 ⑴ み ⑴ と分解されたとする。 :), 办⑴ 已〇レ]によって /(文)

^

と /?( ズ)は,十分大きな正の整数をかければ(分母がすべて払われて)整 分( ズ ) 数係数になる。6 をトジ( ズ)が 2 上の多項式となるような正の整数とし, 〇 を

52

-

^

第 2 章体の代数拡大

),



11 ) が 2 上の多項式となるような正の整数とする0 (3( ズ)二如

/2(; ( ズ)= ¢ ¢) とする 0 また, 6¢= «とする 0 このとき,〇/

^

/

0

^ ^ ^^ )= 0

)

)

が成り立っ〇



,/(ズ) 0 )IIレ) が 定 数 で な い 2 上 の 多 項 式 に よ る /レ)の 《 > 1な ら ば, 分 解 で あ る。 〇 を 割 り 切 る 素 数 か が 存 在 す る。0 = 01 ヒする。 。 (?( ズ )ま た は 丑( ズ)を 割 り 切 る; ( ( ズ)が か こ の と き,補 題 2.4. 1か ら,九 は で 割 り 切 れ る な ら, 6( ズ )を か で 割 っ た も の(こ れ も 整 数 係 数 の 多 項 式)を, //( ズ) (3( ズ )が か で 割 り 切 れ な い な ら, 改めて ¢ « ) と す る。 がかで割り切れ 0; る の で,丑( ズ)を か で 割 っ た も の(こ れ も 整 数 係 数 の 多 項 式)を,改 め て 尺 )と す る。い ず れ に し て も, こ の と き 山/( 幻 二 以 ズ )// )と な る。 〇 二 1な ら ば



^

“ 〇1



得 ら れ て い た /(x) = 6レ)//( ズ )が 定 数 で な い 2 上 の 多 項 式 1な ら ば,

に よ る /( ズ)の 分 解 で あ る。〇1〉 1な ら ば, を 割 り 切 る 素 数 か が 存 在 す る。

0 = />202 !

と す る。 分( ズ) 0

+1 X 3

,/?( ) — 〇〇 + 〇 ”

‘ ^ ^^ : ^ “ — ^ , “ X

) 1

(ん # 0, ん8 # 0) とすると, »となるが, 分( ズ )办( ズ)の最高次の係数は 6»¢ である。ん, は整数なので, 1ま ! ん 办( ズ) はモニックである。後 1である。前者の場合は, ズ ),

/(1) はモニックなのでん

たはん =: 6 =





者の場合, ( ズ)= 1一分( ズ ( ))一み(1)}であり,ージ る。

.

以上で定理 1.2 3 の証明が完了した。

), 一 /2( ズ)はモニックであ

53

2.5 付録 ‘ アイゼンシュタイン既約判定法の証明

.

ここでは, アイゼンシュタイン既約判定法(定理 1.2 5) の証明を与えよう。

証明は,/( ズ)が〇上可約であるとして矛盾を導くことで行われる(背理 定数でない 2 上の多項式 法)。ゾ( ズ)が〇上可約ならば,



/( x )=9( x )I ( x )と分解される。

^

+^ ^ = (x )

9( x ) =

^

)1 X

)0

+

^ ^^ 0

+… -



),み( ズ)によって

^

X \

\~ 〇1

キ 0, 桃, VII I~ )2, 6« (たたし, 〇1% 〇) とする 0 6〇(?〇二〇〇で〇〇は /) で X 21,

割り切れるから,60,¢ 〇〇はグでは 0 のどちらかは /) で割り切れる。しかし, 必 割り切れないので,60,¢ 0 のどちらか一方のみが /) で割り切れる。そこで,

を入れ換えて,60 は /) で割り切れ,¢ 1 ) と /1( ズ ) 要なら ; : 0 は力で割り切れな



いとしてよい。 0»= 一方,

んもひも /) で割り切れない 0 〇で 0»は /) で割り切れないので,

…,6,-, ,か, は . 6“

主張 1

»

»

^

/

で割り切れる。

肌 - 1) が /) で割り切れることを, 灸についての数学的帰納 ん (& = 0,1,,

法によって示そう。6。が /) で割り切れるのは,すでに述べた通り。そこで

-,

), , 1) -1 (1$ 左 桃一 1) までが /) で割り切れるとする 0 このとき, 6〇,1!

3

*

で あ る。

= 6¢ 04

泔く桃十/

VI

+ ^ 7*- + +1 - 〇 + 6* 〇〇 1(

) 11 1 1

!

なので

0*

は /) で 割 り 切 れ る。 よ っ て,

¢ ん¢ 0 = 似 一 十… 十 ん- ズ 〇 は /) で 割 り 切 れ る が, 0 は /) で 割 り 切

れないので, 6* は力で割り切れる。以上で主張は示された。

主張の証明の議論をさらに進めて しかし,

-

!十 0.111 二 60 ¢ » »十 1)10«

…十 0



— 1(?1十 6 ¢

! »

欲1 なので 0»は /) で割り切れ,

いから, んは /) で割り切れることになってしまう。これは上で 54

第2 章体の代数拡大



が /) で割り

背理法により /( ズ)が 0 上既約で 切れないと述べたことに矛盾する。よって, あることが' 示された。



55

第3章 方 程 式 の ガ ロ ア 群

おそらく最も難しいことのひとつは,ガロア群と ガロア理論で最も重要で,

いう概念を定義することである。ガロア群を導入することは, それ自体がとて 大抵の場合はずっと後回しになってしまう。しかし, も難しいことなので,

我々はここで多少なりとも直観的でよいから,手早くガロア群というものの感

触を知っておきたいと思う。

1 方程式のガロア群とは何か? 1 . 1 4 次方程式の例 代数方程式のガロア群というものについて,まずは直観的でインフォーマル

な説明から始めたい。そこで前回の復習も兼ねて,ひとつの例を計算しよう。

ノ2 — /3 とする。

例題 1.1.1 ( 第 2 章の復習)

^

の〇上の最小多項式を求めよ。

〇 '= 2 - /3 = ¢— =

"

«

4

4び2 + 4

な の で,〇2 ~2

^

で あ る。 よ っ て, レ し 2)2

^ びは 4 次多項式 となる。よって, ~

4 2 1( x ) = x - 4 x + 1

(

.

の解(31ページ注意 2.3 3(2)を参照)である。ヴレ)が〇上既約であることが 57

この ¢ (1) が求める最小多項式である。その証明は,演習問題と 示されれば,

する。 辦



棟 !9(幻ニズ 4 一む2 十1 が 0 上既約であることを示し,例題 !

1.1.1 の解を完成させよ。

1.2 ガロア群のインフォーマルな定義 ガロア群という概念を導入するには,もちろんその前に「群」という概念を

導入しなければならない。しかし,ここでは直観的に「根の入れ換え(置換 )

の適当な集まり」として理解しておく。

.

定義 1.2 1 (ガロア群の直観的な定義)

〇上の 次代数方程式 /( ズ )= 0 の(複素数の)解が(重複も込めて)



«1, 012 , " - , 0! » であるとする。方程式 /(1) = 0 の〇上のガロア群とは, の(/ = 1,2,

一の置換で,四則演算と整合的になっている(この意味は以下 …, で説明される)もの全体(のなす群)である。これは 個の文字 1,2,



の置換全体のなす群レ次対称群)5»の中の部分群をなす。

ここでは方程式 /レ)= 0 のガロア群を定義するために,そのすベての解を 使っている。もちろん,一般に代数方程式の解をすべて具体的に書き下すとい

普通はできないので, ここでいう定義も, うことは, あくまで理屈の上でのこ とである。実際, 代数方程式のガロア群は大抵の場合, 直接的に計算すること

は困難であり,群論を用いて間接的に計算されたりすることが多い。

先に計算した 9( ズ)=

算してみよう。これは 〇1

58

— 4ズ2 十 1を例にとって,その〇上のガロア群を計 2 - /3 を含めて, 次の 4 つの解をもつ。

^^

^

ゾ2 — ノ〇 , 012

第 3 章方程式のガロア群

"

2+7 3 ,

― 2―V3 ,

^

〇4

― ゾ2 十 V 3

の置換で, « ) のガロア群は 山, (1,2,3,4}の置換,つまり(の, ぬ, ぬ) ¢0: 四則演算と整合的なものということになる。 (1,2,3,4}の置換のすべては 4 != 24 個あるのであるが,そのすべてが

^

"

とする。

以上より,

八 1: 1((3( / 2 ! /

2 )= 2

=

( 0 + ゐ / )= 13 + 6ノ2 ¢ 12 のとき, =0— のとき, 01 = ― 7

01 —
( / そこで ¢ =¢ 1) と "

0

5 は恒等写像 1 (1である。 なので, ¢ "

という写像になる。これをび

び) ))=(! 1( ,

% 。 ( 位数 2 の巡回群 」と呼ばれる群である) 「

2.4 ガロア群のフォーマルな定義

この章の目標だった〇上の代数方程式のガロア群のフォーマルな定義は, 以下で与えられる。

,.

一定義 2.4 1 (方程式のガロア群) ? 次代数方程式 / ⑴ 〇上の;



0 の〇上のガロア群〇31げル)とは,

の最小分解体尺の自己同型群久讥( 六 /( ズ) :/⑴ のことである。

.

この定義と, 先に述べたインフォーマルな定義(定義 1.2 1) との関係につ

いて述べよう。実は, 2 つの定義は本質的に同じことを述べているのである。 まず,次の補題を示そう。

« 4 第 4 章 1.2 節を参照。

72

第 3 章方程式のガロア群

.

補題 2.4 2

^

尺/〇を任意の拡大とし, /( ズ)を〇上の多項式とする。このとき,

《6 尺について 任意のおよび任意の

ブ( ⑹)= ¢>( /( 00 ) が成り立つ0

〇 已⑦ …, 暖筵 !/(ズ)= 0。+ 01ズ + 02ズ 十 … + 0 ズ”(00,〇 , 2

1

»

.

(1

とする。

/レ))を計算しよう 0 自己同型の定義(定義 2.3 2) の条件 ⑷ から, 免は



たし算を保つので



1- 0»«)

>( /( « 0 )二沪 〇十〇1ぴ十 02〇2 ¢

+

>( « ) 1« 二央(〇0 )十 ¢

炉(〇2め十

" … 十 ¢( «»”) 3

«

.

となるが,自己同型の定義(定義 2.3 2) の条件(5)から, 炉はかけ算を保つの



““

( 与式)二炉(〇〇)十 ¢>( « 1)

.

)

)

〇2 炉 ⑷

》十

2

>(£ /') 二( ¢ (7 の部分群である すな は 01¢)( «) — 〇 0

わち, 152

第 7 章ガロア対応 (1)

⑶ 対応 //

4

五〃 と対応が

4

朽 (似)によって,6 の部分群全体

と, ! の中間体全体は 1対 1に対応する。すなわち, 五//:

( I ぴ 1~

+ «2

補題 1.3.1

写 像/ は 群 準 同 型 で あ り 単 射 で あ る 。 特 に ,

)(

)

》 » 4 1十 》 3 二氏

)(山十的)= 03

び2 十〇?1

となっていて,確かに不変である。 (6 )),… を考えても, それらは必ず長さ 3 の巡回置換をすべて含み, 決 の (£

して単位元だけの群にはなり得ない。 以上より,背理法によって,5»(«25) が可解群でないことがわかる。 口 ところで,打 $ 4 のときは 5»はすべて可解群である。実際,51二 (4 と 52

はァーべル群なので可解である 0 また, 3 次方程式の解法(第 8 章 2 節)で見

たように,53 は

⑴ 3 2 #二 び ) び, (1,

2

33 という「巡回群によるハシゴ」をもっている(ここでび =(12 3)とした)の で可解群である。最後に, 4 次方程式の解法(第 10 章 1節)で見たように, 54 の「アーべル群によるハシゴ」としては

⑴ 2x2

3 (T ) = A4 # 二〈尺,

2

0 = 54 がとれるので 54 も可解群である。

205

《 < 5 のときは可解 以上より, 次対称群 5«は找 25 のとき非可解であり,

である。

206



第 11 章方程式の可解性( 2 )

第 12 章作図問題

我々の目標であった「代数方程式のガロア理論」についての議 前章までで,

論は終わった。この最後の章では,ガロア理論の応用のひとつについて述べよ

う。ガロア理論にはたくさんの重要な応用がある。この章で述べる「作図問題」 も,重要な応用のひとつである。これはギリシャの三大難問(角の 3 等分問 題, 立方体の倍積問題 ‘ 円積問題)として知られている古典的な問題の一部に

正多角形の, 解答を与えるだけの威力がある。また, 作図可能性についての古 典的な問題にも, 完全な解答を与えることができる。

1 作図 1.1 作図可能な点 まず最初に, 「作図」とか「作図できる」とかいう言葉の意味することを数

学的に厳密に定義する必要がある(さもないと,作図の問題とガロア理論を結

作図問 作図の概念をきちんと定義すれば, びつけることができない )。実は, 題をきれいに体の拡大の言葉に乗せることができる。その重要な骨子は, すぐ

.

後に現れる定理 1.1 1の中に,すでにすベて現れていると言ってもよい。 ここで作図と言っているのは定規とコンバスによる作図というものである。

ここで定規とは目盛りのない,ただ 2 点を通る直線を引くことができるだけの 道具であり,コンパスも与えられた線分を半径とする円を描くことができるだ つまり長さや角度を測ることはで けの道具である。目盛らがないということ,

きないということが,ここでは重要だ。長さや角度を測るといった計量的な操 純粋に点と線の幾何学だけで作図できる図形を考えようというのが 作なしで, 趣旨である。

したがって, 大事なのは「作図可能な図形」とは何かということを,数学的 207

に定式化することだ。しかし,平面上の図形はすべて点と線でできているから 基本的には

.

「作図可能な点」 を定義することに帰着する 。そこで,平面を複素

数平面として考え,その上の点 (二複素数)が作図可能という条件を考えるこ

とになる 。複素数平面上の図形の中で 「 ( 定規とコンパスで)作図可能な図形」

というものを定めたい。これは次の条件で定められる則。

(3) 0 と 1 は作図可能である 。 (5) 作図可能な 2 点を通る直線は作図可能である 。 (〇) 作図可能な点を中心とし作図可能な点を通る円は作図可能である 。 (¢ 1) 作図可能な 2 つの図形の交点は作図可能である 。

(6) 以上のようにして得られる点や図形のみが作図可能である 。 条件 (6) はいくぶん不正確であるが, これは 0 と 1 から出発して ⑹ から ⑷

までの操作を有限回繰り返して得ることのできる点のみが作図可能な点である ,

ということを要求した条件である 。 複素数平面上の作図可能な点全体のなす部分集合を尺とする 。

广定理 1.1.1

-

尺は複素数体の部分体である 。

) 1

明 匿1

^

実軸は作図可能である。また,実数〇が作図可能であるこ

とと一〇が作図可能であることは同値であり,さらに ととも同値である。

が作図可能であるこ



«1 これらの条件は, ユークリッド 『原論』 第 1 巻における作図の概念をもとに定められていると見ることも できる 。

208

第 12 章作図問題

-

図 12.1 演習問題 12 1 の作図

-

演習問題 12 2

実数

6 が作図可能であることと, 複素数び十 6 / が作図

可能であることは同値である 。

-

図 12.2 演習問題 12 2 の作図

作図可能な実数〇, 6 に対して 0 + 6 も作図可能である 。し

演習問!

たがって , 作図可能な複素数 % 演習問題

-

12 4

"

に対して 《 + /8 も作図可能である 。

作図可能な実数〇, 6 に対して 《6 も作図可能である 。した 209

がって, 作図可能な複素数び,がに対してばも作図可能である 。

1)1

I

0

-

図 12.3 演習問題 12 4 の作図

崎謂關松身作図可能な 0 でない実数〇に対して〇— 1 も作図可能である 。 したがって,作図可能な 0 でない複素数

11(1

^

に対してぴ一1 も作図可能である

0

0

-

図 12.4 演習問題 12 5 の作図

1.2 作図可能な点の特徴付け 以上で作図可能な複素数平面全体尺は, 複素数体むの部分体であることが

わかった 。すなわち,尺は四則演算で閉じている 。次の定理は,尺は四則演 210

第 12 章作図問題

算だけでなく平方根をとる( 2 次方程式を解く)という操作でも閉じているこ

とを示している。

, . 一定理 1.2 1

,



であるとき, すなわち, 6 が作図可能な複素数であるとき,

2 次方程式ゼ十〇ズ十 6 二 0 の解も作図可能である。

2

— 46 ズ 2 ニゴと同値 とすると, 4 である。よって, この形の方程式ゼニゴ(ゴは作図可能複素数)の解が作図可

題意の方程式は,X = x +

^^



,



1

(

能であることを示せばよい。 2 ; ( 二ーゴの正の解 V— ゴを原点の : 【ステップ 1 】 ゴが実数のとき 。ゴく〇なら 周りで回転させて, 虚軸にとり直せばよい。よって, ゴ > 0 とする。直径 1十ゴ の半円を描き,その直径をゴ:1に内分した点をとる。この点から直径に垂線

:ゴなので を立てて, ( とすると, 半円との交点となす線分の長さを; 1:1=1 : である。

.

図 12.5 定理 1.2 1の証明のステップ 1の作図

【ステップ 2 】 ゴが一般の複素数のとき ゴニバ ⑺が + 血めと極座標表示 さらに角 (9 を 2 等分する。ステップ 1から / 0) して, を作図し, レ〉 0

^

を作図することは可能なので, 原点中心の半径 /7 の円と角 0 の 2 等分線と

の交点を考えればよい。

211

.

定理 1.2 1に基づいて,作図可能な複素数は次のように特徴付けられる。

广定理 1.2.2 複素数

^

が作図可能ならば,次を満たす体拡大の列

が存在する。 參〇口於 一 1に つ い て

” つまり,ある複素数

VI

+1: /



2

が作図可能であるための必要十分条件は,それが有

“ 2 次方程式を解くことで得られることであると 理数から出発して高々有限回の いうわけだ。

11 〇, 1から出発して,定規とコンパスによる作図で

^

その に至るまで,

“ 途中では直線と直線との交点, 直線と円との交点, 円と円との交点を何回か求

めている。その際, 交点を求めるために解かれる方程式は,高々 2 次方程式で

ある。よって, 交点を求めるそれぞれの段階で,その交点によって生成される

拡大体は,高々 2 次拡大であり, はその積み重ねとして得られた拡大体の中

^

に人る。

.

定理 1.2 2 によって,作図可能な複素数がどのようなものか明確にわかった

作図可金でない複素数も明確になった。これによって,ギリシャ以 と同時に, 来の作図問題の数々に取り組むことができる。

212

第 12章作図問題

2 作図問題 2.1 角の 3 等分問題 次の定理は,角の 3 等分は我々が最初に設けた意味での「作図」のルールで

は一般的に不可能であることを示している。

.

定理 2.1 1 (角の 3 等分の不可能性)

^

作図可能な角(作図可能な 3 点によって作られる角度)の 3 等分を与

える点は一般に作図不可能である。

題意が可能であるためには, 一般の角沒に対して,¢ 030 から 003( 0/3) が作図できなければならない。1= 008( 0/3) とすると, 3 倍角公式により Ax3 - x =

^

0& 9

^

である。¢ そのような一般 05 没が有理数になるような没は無限に多くあるが,

その根 の沒に対しては /( ズ)二む3 — 31— ¢ 030 は 0 上既約である。よって, のひとつを

, “

とすると, びが作図可能 0( «)は 0 上の 3 次拡大である。一方, /' かつ [厂:〇] が 2 のべきになるものがとれる。 /〇で 日;

“ なら,拡大体

一は尸の部分体なので, ) 〇] は [厂:〇] の約数であり,よって 2 の [〇(び: (« ): べきでなければならないが, [1¢

これは矛盾である。 = 3 なので, ¢



2.2 立方体の倍積問題

一定理 2.2.1 (立方体倍積の不可能性)一般の作図可能な長さ〇に対して, 体積が 2〇3 になるような立方体の

一片の長さを作図することは不可能である。 213

^ ^ 11

これは

"

が作図不可能であるこ とを示せば十分である 。

打の〇

が作 2 であるから [〇(め :11 = 3 である 。よって “ 図可能であるとすると 定理 2.1.1 の証明と同様の矛盾が生じる 。 3

上の最小多項式はズ









2.3 正多角形の作図可能性 1796 年 3 月 30 日の朝に 19 歳の青年ガウスが目覚めると同時に,正 17 角形

が作図可能であることを発見したということである 。一般に,力を素数とする

とき ,正力角形が作図可能であるための必要十分条件は,次の定理で与えられ る。 定理 2.3. 1 (作図可能な正素数角形の特徴付け )

^

を素数とする 。正 /) 角形が作図可能であるための必要十分条件は,

夕が 力 = 2*" 十 1

( 衫は 0 以上の整数)の形であることである 。

題意は 1 の原始 /) 乗根





が作図可能であることである 。 の〇上の最

小多項式は

。¢ -

: ( = /> である 。特にぬ ( )

パ—1 十?—2 十 … 十;¢+ 1 1 なので,らが作図可能ならば,々一 1 が 2 の

べきである ,すなわち

/> = 2** +! の形である 。 十 1 は素数であるが, もし桃が奇数の素数 9 で割り切れるとす ここで,2”

ると,» 1= 叩ヒして,

214

第 12 章作図問題

2

+!=(2

十 1 ( 28 十 1)((2卞-1-(2亇-2 十 … 十 1) 二

という分解が存在してしまう。よって,抓の素因数分解に現れる素数は 2 し かない。すなわち, 171

2”の形である。よって, カニ 22”十 1の形である。

逆に, が /)二 2 屮1の形であるとする。五二〇匕)は / 》

^

) の最小分解体 ^ 〃 [五: ]= / — 1= 2 である。そのガロア群 なので〇上のガロア拡大であり,

0

)

を(3 とすると,これは位数力一 1 の巡回群である。実際,法力の原始根を尸



》 その生成元となる。そこでびが(/ = 0,1,…, とすると, び二 (こ倍写像)が, *)

とすると

で生成される 6 の部分群を



(5 2



2

…2



, 《6}



となる。よって, ガロア理論の基本定理より,





二2 :(3, -十」

‘ として

[尸 。 ハ …: 五| ( ( ),[ハ〇 : 厂, ] ”

: [

.

となり,定理 1.2 2 より





2

:

は作図可能である。

注意 2.3. 2 (フェルマー素数) 一般に, カニ 22" 十 1の形の素数をフェルマー素数という 0 これは 4 について,

= «

-

0,1, ,

3,5,17,257,65537 これらはすべて素数である。正 3 角形が作図可能であること であり, ユークリッド 『原論』 第 1巻の最初の命題 は古典的に知られており,

で述べられている。また, 正 5 角形が作図可能であることも古典的で, ユークリッド 『原論』 では第 4 巻に述べられている。於 = 17,257,

65537 についての作図可能性はガウスによるもので,ギリシヤ数学以

来の進展であった。

215

注意 2.3.3

”+ 1の形の数はすべて素数であると予想したが,こ

フェルマーは 2

れは正しくなかった。実際,VI

225 十 1



5 のときはオイラーによって

4294967297

^

641 X 6700417

という素因数分解が与えられている。現在までのところ,打 25 で素 数になるものは見つかっていない。

216

第 12 章作図問題

演習問題略解

第 1章

.

11 整数全体 2 は 0 でない数の割り算で閉じていない。実際, 1/2 (整数 1を

整数 2 で割ったもの)は整数ではない。

.+

1-2

0

2, 0

ひき算 , かけ算は 2 0 (¢ / )のたし算 , (!

+

"

^ ^ ^^ ^

=( 0 + ¢ ( 0 + 6 2 )十(〇十 )+ ( ¢十(1) 2 (〇十ろ/ ) —( ¢+ ¢/ /2 )= — + (6 — ゴ )/ , (